(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571414
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20190826BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20190826BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20190826BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
H01L21/60 301N
H01L21/88 T
H01L21/88 S
H01L21/90 J
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-131484(P2015-131484)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-17152(P2017-17152A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島崎 洸一
【審査官】
安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−214633(JP,A)
【文献】
特開平05−226339(JP,A)
【文献】
実開平03−053843(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/768
H01L 23/522−538
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面に設けられた絶縁膜の上に設けられたボンディングパッドを覆うパッシベーション膜の膜厚が前記ボンディングパッドの膜厚よりも薄い半導体装置であって、前記ボンディングパッドの周囲に空隙を介して最上層の配線層が配置され、前記空隙の幅が、前記パッシベーション膜の膜厚以上であり前記パッシベーション膜の側壁厚の2倍以下であり、前記最上層の配線層が前記ボンディングパッドの周囲に環状に配置され、前記最上層の配線層の上に前記パッシベーション膜が除去されたスリットが前記ボンディングパッドの周囲に環状に設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記最上層の配線層が前記ボンディングパッドの周囲に2重以上に配置されていることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記空隙上のパッシベーション膜の縦方向膜厚が前記ボンディングパッド上のパッシベーション膜の縦方向膜厚より厚いことを特徴とする特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディングパッドを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置におけるボンディングパッド周辺の構造は、
図6に示すように、半導体基板101上に絶縁膜201を設け、絶縁膜201上に最上層の配線層によってボンディングパッド301が形成されており、ボンディングパッド301の周辺に空隙を介してダミー配線302を設置し、半導体装置を保護するためのパッシベーション膜401はボンディングパッド301の膜厚以上の膜厚であり、ボンディングパッド301とボンディングワイヤとを接続するための開口部501をボンディングパッド301上に露出させる構造である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ワイヤボンディング時のストレスや、熱応力によってパッシベーション膜にクラックが発生するのを防止するために、ボンディングパッドの周辺のパッシベーション膜の強度を高くすることでパッシベーションクラックを抑制できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−226369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パッシベーション膜の膜厚がボンディングパッドの膜厚より薄い場合、パッシベーション膜の強度は低下し、ワイヤボンディングや熱応力によってパッシベーションクラックが発生してしまうことがある。
【0006】
本発明は、上記不具合に鑑みてなされ、パッシベーション膜がボンディングパッド膜厚より薄い場合でも、ボンディング時のストレスや熱応力耐性の高い半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、ボンディングパッドと空隙を介し配線層が配置され、パッシベーション膜は前記ボンディングパッドを形成する配線層の膜厚より薄く、前記空隙の幅は前記パッシベーション膜厚以上かつ前記パッシベーション膜厚の2倍以下であり、前記パッシベーション膜堆積後の前記空隙に充填された前記パッシベーション膜厚は前記ボンディングパッド上部のパッシベーション膜より厚くなっていることを特徴とする半導体装置とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ボンディングパッドの上部に堆積したパッシベーション膜より、ボンディングパッド側壁のパッシベーション膜を厚くすることで、ボンディング時のストレス耐性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態を示す半導体装置の断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態を示す半導体装置の断面図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態を示す半導体装置の断面図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態を示す半導体装置の平面図である。
【
図5】本発明の第5の実施形態を示す半導体装置の平面図である。
【
図6】従来の半導体装置におけるボンディングパッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態について、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、第1の実施形態によるボンディングパッドとその周辺は、半導体基板101の表面に設けられた絶縁膜201と、絶縁膜201上に形成されたボンディングパッド301と、ボンディングパッド301の脇の空隙601を介して配置された最上層の配線層303と、ボンディングパッド301と配線層303上に設置された半導体基板101を保護するためのパッシベーション膜401と、ボンディングワイヤを接続するためにボンディングパッド301を露出させている開口部501とを有する構造となっている。
【0011】
最上層の配線層303は、ボンディングパッド301の一辺に沿って部分的に1列を配置しても良く、ボンディングパッド301の周囲を一重に取り囲んで配置しても良い。
図1はボンディングパッド301の対向する2辺に沿って最上層の配線層303がそれぞれ配置された状態を示している。
【0012】
ここで、最上層の配線層303およびボンディングパッド301の厚みは、最上層の配線層上のパッシベーション膜401の縦方向厚みより厚いことが特徴であり、ボンディングパッド301と最上層の配線層303との空隙601の幅は、最上層の配線層上のパッシベーション膜401の縦方向の厚み以上であり、そのパッシベーション膜が最上層の配線層303からなる孤立したパターンの側壁に堆積された場合の厚みである側壁厚の2倍以下である。このような設定とすることでボンディングパッド301と最上層の配線層との空隙601にはパッシベーション膜401が埋め込まれ、ボンディングパッド301の側壁を覆うパッシベーション膜401の厚みは、最上層の配線層303が配置されていることにより、ボンディングパッド301の上部のパッシベーション膜401より厚くなる。そして、ボンディングパッド301の側壁を覆うパッシベーション膜401の縦方向の厚みはボンディングパッド301の縦方向の厚みよりも厚いものとなる。
【0013】
なお、絶縁膜201内には他の配線層が含まれていても構わない。また、最上層の配線層の電位はボンディングパッド301と同電位でも、異なる電位でも、浮遊電位でも構わない。
【0014】
また、一般にボンディングパッド301は長方形あるいは正方形の矩形であるが、他の形状であっても構わない。さらに、パッシベーション膜401上にさらにポリイミドなどの樹脂が堆積されていても構わない。
【0015】
ワイヤボンディングがボンディングパッド301上になされた時、ボンディングパッド301は変形し、ボンディングパッド301の側壁から水平方向にパッシベーション膜401を押し込む圧力がかかるが、ボンディングパッド301の側壁を覆うパッシベーション膜401の膜厚が厚いために、ボンディング時のストレス耐性が高くパッシベーション膜401のクラック発生を抑制することができる。さらには、ボンディングパッドの側壁を覆うパッシベーション膜の高さが一様であるため、パッシベーション膜の上部で破壊され易いという従来の欠点も解消できる。
【0016】
図2は本発明の第2の実施形態を示す半導体装置の断面図である。第1の実施形態は最上層の配線層303をボンディングパッド301に隣接して1列もしくは1重に配置した。これに対して、第2の実施形態は最上層の配線層303を少なくとも2列もしくは2重以上設置している。このようにすることでボンディングパッド301の側壁を覆うパッシベーション膜401および最上層の配線層303の横方向の厚みは第一の実施形態よりも厚くなり、一層パッシベーション膜401のクラック発生をより効果的に抑制することができる。
【0017】
図3は本発明の第3の実施形態を示す半導体装置の断面図である。第1の実施形態では最上層の配線層303上のパッシベーション膜401は分断されることなく最上層の配線層303を覆っていた。これに対して、第3の実施形態は最上層の配線層303上の一部においてパッシベーション膜401がスリット701により分断されている。即ち、ボンディングパッドとは異なる配線層303の上においてパッシベーション膜401が除去された領域であるスリットが設けられている。パッシベーション膜401を分断している領域であるスリットが変形のストレスを緩和するので、本構造においても第一の実施形態同様にパッシベーション膜401のクラック発生を抑制することができる。
【0018】
図4は本発明の第4の実施形態を示す半導体装置の平面図である。ボンディングパッド301の周囲には空隙601を介して設置された最上層の配線層303が1重で分断されることなく環状に設置されている。パッシベーション膜401のクラック発生を抑制することができる。
【0019】
図5は本発明の第5の実施形態を示す半導体装置の平面図である。ボンディングパッド301の周囲には空隙601を介して設置された最上層の配線層303が1重で分断して設置されている。最上層の配線層303が分断されていても、パッシベーション膜401のクラック発生を抑制することができる。
図1から
図5に示した実施形態の組み合わせによって形成される半導体装置も、同様にパッシベーション膜401のクラック発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0020】
101 半導体基板
201 絶縁膜
301 ボンディングパッド
302 ダミー配線
303 最上層の配線層
401 パッシベーション膜
501 開口部
601 配線層の間の空隙
701 パッシベーション膜に設けられたスリット