特許第6571430号(P6571430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571430
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   B60H1/22 651C
   B60H1/22 611C
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-143787(P2015-143787)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2017-24511(P2017-24511A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】515134276
【氏名又は名称】サンデン・オートモーティブクライメイトシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 謙一
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 竜
(72)【発明者】
【氏名】山下 耕平
【審査官】 町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−231261(JP,A)
【文献】 特開2014−213765(JP,A)
【文献】 特開2015−039998(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/175254(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、
該空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて前記車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、
前記車室外に設けられて冷媒を吸熱させる室外熱交換器と、
制御手段とを備え、
該制御手段により、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記室外熱交換器にて吸熱させて前記車室内を暖房する車両用空気調和装置において、
前記放熱器に対して、前記空気流通路を流れる空気の上流側に設けられた補助加熱手段を備え、
前記制御手段は、前記補助加熱手段と前記放熱器により前記車室内に供給される空気を加熱する協調運転を実行すると共に、
前記放熱器の入口冷媒温度Tcxinが当該放熱器の出口冷媒温度TCIより低くなる条件(Tcxin<TCI)が成立したことに基づき、前記圧縮機を停止することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、
該空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて前記車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、
前記車室外に設けられて冷媒を吸熱させる室外熱交換器と、
制御手段とを備え、
該制御手段により、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記室外熱交換器にて吸熱させて前記車室内を暖房する車両用空気調和装置において、
前記放熱器に対して、前記空気流通路を流れる空気の上流側に設けられた補助加熱手段を備え、
前記制御手段は、前記補助加熱手段と前記放熱器により前記車室内に供給される空気を加熱する協調運転を実行すると共に、
前記放熱器と前記補助加熱手段が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotalと前記補助加熱手段が発生する暖房能力である補助暖房能力Qhtrとの差が所定値X1より小さくなる条件((Qtotal−Qhtr)<X1)が成立したことに基づき、前記圧縮機を停止することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項3】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、
該空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて前記車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、
前記車室外に設けられて冷媒を吸熱させる室外熱交換器と、
制御手段とを備え、
該制御手段により、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記室外熱交換器にて吸熱させて前記車室内を暖房する車両用空気調和装置において、
前記放熱器に対して、前記空気流通路を流れる空気の上流側に設けられた補助加熱手段を備え、
前記制御手段は、前記補助加熱手段と前記放熱器により前記車室内に供給される空気を加熱する協調運転を実行すると共に、
前記放熱器と前記補助加熱手段が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotalと前記補助加熱手段が発生する暖房能力である補助暖房能力Qhtrとの差(Qtotal−Qhtr)と、前記圧縮機の消費電力Phpとの比が所定値X2より小さくなる条件((Qtotal−Qhtr)/Php<X2)が成立したことに基づき、前記圧縮機を停止することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項4】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、
該空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて前記車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、
前記車室外に設けられて冷媒を吸熱させる室外熱交換器と、
制御手段とを備え、
該制御手段により、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記室外熱交換器にて吸熱させて前記車室内を暖房する車両用空気調和装置において、
前記放熱器に対して、前記空気流通路を流れる空気の上流側に設けられた補助加熱手段を備え、
前記制御手段は、前記補助加熱手段と前記放熱器により前記車室内に供給される空気を加熱する協調運転を実行すると共に、
前記放熱器の入口冷媒温度Tcxinが当該放熱器の出口冷媒温度TCIより低くなる条件(Tcxin<TCI)と、
前記放熱器と前記補助加熱手段が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotalと前記補助加熱手段が発生する暖房能力である補助暖房能力Qhtrとの差が所定値X1より小さくなる条件((Qtotal−Qhtr)<X1)と、
前記放熱器と前記補助加熱手段が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotalと前記補助加熱手段が発生する暖房能力である補助暖房能力Qhtrとの差(Qtotal−Qhtr)と、前記圧縮機の消費電力Phpとの比が所定値X2より小さくなる条件((Qtotal−Qhtr)/Php<X2)のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせが成立したことに基づき、前記圧縮機を停止することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項5】
前記補助加熱手段は、PTCヒータであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項6】
前記制御手段は前記協調運転において、要求される放熱器の暖房能力である要求暖房能力TGQと前記放熱器が発生する暖房能力Qhpとを比較し、該暖房能力Qhpが前記要求暖房能力TGQより不足する分を前記補助加熱手段の加熱により補完することを特徴とする請求項1乃至請求項5のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記条件が成立した状態が所定時間継続した場合、前記圧縮機を停止することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記圧縮機の起動初期には前記条件の成立を判定しないことを特徴とする請求項1乃至請求項7のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記圧縮機の起動後、所定時間経過するまで前記条件の成立を判定しないことを特徴とする請求項8に記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室内を空調するヒートポンプ方式の空気調和装置、特にハイブリッド自動車や電気自動車に適用可能な空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題の顕在化から、ハイブリッド自動車や電気自動車が普及するに至っている。そして、このような車両に適用することができる空気調和装置として、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路に設けられて冷媒を放熱させる放熱器と、空気流通路に設けられて冷媒を吸熱させる吸熱器と、車室外側に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させる室外熱交換器を備え、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器において放熱させ、この放熱器において放熱した冷媒を室外熱交換器において吸熱させる暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を少なくとも放熱器において放熱させ、放熱器において放熱した冷媒を少なくとも吸熱器において吸熱させる除湿モードと、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器において放熱させ、吸熱器において吸熱させる冷房モードの各運転モードを切り換えて実行するものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1では放熱器の空気上流側に電気ヒータから構成された補助加熱手段を設け、上記暖房モードにおいて放熱器による暖房能力が不足する場合、この補助加熱手段(電気ヒータ)を発熱させ、空気流通路から車室内に供給される空気を加熱して暖房能力を補完(放熱器と補助加熱手段の協調運転)するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−213765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、この種車両用空気調和装置においては上記の如き補助加熱手段としてPTC(Positive Temperature Coefficient:正温度係数)ヒータが採用される場合が多い。PTCヒータはその特性上、当該PTCヒータに流入する空気温度が低い方が性能を発揮できるため(抵抗値が高くならない)、放熱器よりも空気上流側に設けることが効率的である。
【0006】
一方、車室内の暖房運転の時間が経過して室外熱交換器に着霜が成長した場合、外気との熱交換効率が低下する関係上、外気からの吸熱量が低下するため、放熱器が発生する暖房能力も低下する。また、外気温度が低くなった場合には圧縮機に吸い込まれる冷媒の密度が低下するため、この場合にも放熱器が発生する暖房能力が低下してくる。他方、前述した如く補助加熱手段(PTCヒータ)は係る放熱器の暖房能力の低下分を補うかたちで発熱されるため、放熱器の暖房能力が低下してくると、やがて補助加熱手段の暖房能力が放熱器の暖房能力より大きくなる場合が発生する。
【0007】
この様子を図6及び図7を用いて説明する。図6においてTGQは要求される放熱器の暖房能力である要求暖房能力であり、Qhpは放熱器が発生する暖房能力(HP能力)である。Qhtrは補助加熱手段が発生する補助暖房能力であり、Qtotalはこれら放熱器の暖房能力Qhpと補助加熱手段の補助暖房能力Qhtrの和である全体能力(Qtotal=Qhp+Qhtr)である。
【0008】
暖房モードの運転初期には室外熱交換器の着霜等は生じていないため、図7の左側に示すように放熱器の暖房能力Qhpと補助加熱手段の補助暖房能力Qhtrを合計したものが全体能力Qtotalとなり、これが要求能力TGQを満たすように圧縮機や補助加熱手段が制御される。
【0009】
しかしながら、前述した如き要因で放熱器の暖房能力Qhpが低下してくると、図6に示すようにやがて補助加熱手段の補助暖房房力Qhtrが放熱器の暖房能力Qhpを上回るようになる。そして、このような状況となると、図6の右端に示す如く全体能力Qtotalが低下する現象が生じる。その理由は、補助加熱手段が放熱器の空気上流側に設けられている場合、補助加熱手段で加熱された空気が放熱器に流入するかたちとなるため、放熱器が放熱せずに逆に空気から熱を吸収するかたちとなるためである。
【0010】
このように放熱器が吸熱する状況(放熱器の吸熱現象)に陥ると、図7の右側に示すように全体能力Qtotalは低下し、要求暖房能力TGQを満足することができなくなって車室内を快適に暖房することができなくなると共に、放熱器の暖房能力を発生するための圧縮機の動力が無駄となり、余分な電力を消費することになる(図6に示す余剰消費動力)。
【0011】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、所謂ヒートポンプ方式の空気調和装置において、特に補助加熱手段を放熱器の空気上流側に設ける場合に発生する無駄な消費電力を低減し、快適な車室内暖房も実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、この空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、車室外に設けられて冷媒を吸熱させる室外熱交換器と、制御手段とを備え、この制御手段により、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させて車室内を暖房するものであって、放熱器に対して、空気流通路を流れる空気の上流側に設けられた補助加熱手段を備え、制御手段は、補助加熱手段と放熱器により車室内に供給される空気を加熱する協調運転を実行すると共に、放熱器の入口冷媒温度Tcxinが当該放熱器の出口冷媒温度TCIより低くなる条件(Tcxin<TCI)が成立したことに基づき、圧縮機を停止することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、この空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、車室外に設けられて冷媒を吸熱させる室外熱交換器と、制御手段とを備え、この制御手段により、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させて車室内を暖房するものであって、放熱器に対して、空気流通路を流れる空気の上流側に設けられた補助加熱手段を備え、制御手段は、補助加熱手段と放熱器により車室内に供給される空気を加熱する協調運転を実行すると共に、放熱器と補助加熱手段が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotalと補助加熱手段が発生する暖房能力である補助暖房能力Qhtrとの差が所定値X1より小さくなる条件((Qtotal−Qhtr)<所定値X1)が成立したことに基づき、圧縮機を停止することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、この空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、車室外に設けられて冷媒を吸熱させる室外熱交換器と、制御手段とを備え、この制御手段により、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させて車室内を暖房するものであって、放熱器に対して、空気流通路を流れる空気の上流側に設けられた補助加熱手段を備え、制御手段は、補助加熱手段と放熱器により車室内に供給される空気を加熱する協調運転を実行すると共に、放熱器と補助加熱手段が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotalと補助加熱手段が発生する暖房能力である補助暖房能力Qhtrとの差(Qtotal−Qhtr)と、圧縮機の消費電力Phpとの比が所定値X2より小さくなる条件((Qtotal−Qhtr)/Php<X2)が成立したことに基づき、圧縮機を停止することを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、この空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、車室外に設けられて冷媒を吸熱させる室外熱交換器と、制御手段とを備え、この制御手段により、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させて車室内を暖房するものであって、放熱器に対して、空気流通路を流れる空気の上流側に設けられた補助加熱手段を備え、制御手段は、補助加熱手段と放熱器により車室内に供給される空気を加熱する協調運転を実行すると共に、放熱器の入口冷媒温度Tcxinが当該放熱器の出口冷媒温度TCIより低くなる条件(Tcxin<TCI)と、放熱器と補助加熱手段が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotalと補助加熱手段が発生する暖房能力である補助暖房能力Qhtrとの差が所定値X1より小さくなる条件((Qtotal−Qhtr)<所定値X1)と、放熱器と補助加熱手段が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotalと補助加熱手段が発生する暖房能力である補助暖房能力Qhtrとの差(Qtotal−Qhtr)と、圧縮機の消費電力Phpとの比が所定値X2より小さくなる条件((Qtotal−Qhtr)/Php<X2)のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせが成立したことに基づき、圧縮機を停止することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において補助加熱手段は、PTCヒータであることを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御手段は協調運転において、要求される放熱器の暖房能力である要求暖房能力TGQと放熱器が発生する暖房能力Qhpとを比較し、この暖房能力Qhpが要求暖房能力TGQより不足する分を補助加熱手段の加熱により補完することを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御手段は、前記条件が成立した状態が所定時間継続した場合、圧縮機を停止することを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御手段は、圧縮機の起動初期には前記条件の成立を判定しないことを特徴とする。
【0020】
請求項9の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御手段は、圧縮機の起動後、所定時間経過するまで前記条件の成立を判定しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明では、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、この空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、車室外に設けられて冷媒を吸熱させる室外熱交換器と、制御手段とを備え、この制御手段により、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させて車室内を暖房する車両用空気調和装置において、放熱器に対して空気流通路を流れる空気の上流側に補助加熱手段が設けられており、制御手段が、補助加熱手段と放熱器により車室内に供給される空気を加熱する協調運転を実行すると共に、放熱器の入口冷媒温度Tcxinが当該放熱器の出口冷媒温度TCIより低くなる条件(Tcxin<TCI)が成立したことに基づき、圧縮機を停止するようにした。
【0022】
ここで、放熱器の入口冷媒温度Tcxinが当該放熱器の出口冷媒温度TCIより低くなるということは、放熱器において吸熱現象が生じているということである。請求項1の発明では条件(Tcxin<TCI)が成立したことに基づき、制御手段が圧縮機を停止するようにしたので、放熱器の暖房能力が低下して、補助加熱手段により加熱された空気から放熱器が逆に吸熱する状況に陥ったときに、圧縮機を停止してそれ以上無駄に電力が消費される不都合を解消することができるようになる。また、補助加熱手段で加熱された空気の温度が低下することも無くなるので、車室内の快適な暖房も確保されるようになるものである。
【0023】
請求項2の発明では、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、この空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、車室外に設けられて冷媒を吸熱させる室外熱交換器と、制御手段とを備え、この制御手段により、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させて車室内を暖房する車両用空気調和装置において、放熱器に対して空気流通路を流れる空気の上流側に補助加熱手段が設けられており、制御手段が、補助加熱手段と放熱器により車室内に供給される空気を加熱する協調運転を実行すると共に、放熱器と補助加熱手段が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotalと補助加熱手段が発生する暖房能力である補助暖房能力Qhtrとの差が所定値X1より小さくなる条件((Qtotal−Qhtr)<X1)が成立したことに基づき、圧縮機を停止するようにした。
【0024】
ここで、全体能力Qtotalと補助暖房能力Qhtrとの差が所定値X1より小さくなるということは、放熱器が発生する暖房能力が低下し、放熱器において吸熱現象が生じている可能性が高いということである。請求項2の発明では条件((Qtotal−Qhtr)<X1)が成立したことに基づき、制御手段が圧縮機を停止するようにしたので、放熱器の暖房能力が低下して、補助加熱手段により加熱された空気から放熱器が逆に吸熱する状況に陥った危険性が高くなったときに、圧縮機を停止してそれ以上無駄に電力が消費される不都合を解消することができるようになる。また、同様に補助加熱手段で加熱された空気の温度が低下することも無くなるので、車室内の快適な暖房も確保されるようになるものである。
【0025】
請求項3の発明では、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、この空気流通路に設けられ、冷媒を放熱させて車室内に供給される空気を加熱する放熱器と、車室外に設けられて冷媒を吸熱させる室外熱交換器と、制御手段とを備え、この制御手段により、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させて車室内を暖房する車両用空気調和装置において、放熱器に対して、空気流通路を流れる空気の上流側に補助加熱手段が設けられており、制御手段が、補助加熱手段と放熱器により車室内に供給される空気を加熱する協調運転を実行すると共に、放熱器と補助加熱手段が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotalと補助加熱手段が発生する暖房能力である補助暖房能力Qhtrとの差(Qtotal−Qhtr)と、圧縮機の消費電力Phpとの比が所定値X2より小さくなる条件((Qtotal−Qhtr)/Php<X2)が成立したことに基づき、圧縮機を停止するようにした。
【0026】
ここで、全体能力Qtotalと補助暖房能力Qhtrとの差(Qtotal−Qhtr)と、圧縮機の消費電力Phpとの比は圧縮機の成績係数(COP)を意味し、これが所定値X2より小さくなるということは、放熱器が発生する暖房能力が低下し、同様に放熱器において吸熱現象が生じている可能性が高いということである。請求項3の発明では条件((Qtotal−Qhtr)/Php<X2)が成立したことに基づき、制御手段が圧縮機を停止するようにしたので、放熱器の暖房能力が低下して、補助加熱手段により加熱された空気から放熱器が逆に吸熱する状況に陥った危険性が高くなったときに、圧縮機を停止してそれ以上無駄に電力が消費される不都合を解消することができるようになる。また、同様に補助加熱手段で加熱された空気の温度が低下することも無くなるので、車室内の快適な暖房も確保されるようになるものである。
【0027】
請求項4の発明では上記請求項1乃至請求項3の条件のうちの何れか、若しくは、それらの組み合わせが成立したことに基づき、制御手段が圧縮機を停止するようにしたので、放熱器の暖房能力が低下して、補助加熱手段により加熱された空気から放熱器が逆に吸熱する状況に陥っていることをより確実に判定し、圧縮機を停止してそれ以上無駄に電力が消費される不都合を解消することができるようになると共に、同様に補助加熱手段で加熱された空気の温度が低下することも無くなり、車室内の快適な暖房を確保することができるようになるものである。
【0028】
以上のことは放熱器の空気上流側に設けられるべき請求項5の発明の如きPTCヒータを補助加熱手段として用い、請求項6の発明の如く制御手段が、要求される放熱器の暖房能力である要求暖房能力TGQと放熱器が発生する暖房能力Qhpとを比較し、この暖房能力Qhpが要求暖房能力TGQより不足する分を補助加熱手段の加熱により補完する協調運転を行う場合に特に有効である。
【0029】
また、請求項7の発明の如く制御手段が、前記条件が成立した状態が所定時間継続した場合に圧縮機を停止するようにすれば、一時的な変動による誤判定を廃し、放熱器の暖房能力が低下して、補助加熱手段により加熱された空気から放熱器が逆に吸熱する状況に陥っていることをより的確に判定して、圧縮機を停止することができるようになる。
【0030】
また、請求項8の発明の如く制御手段が、圧縮機の起動初期には前記条件の成立を判定しないようにすれば、例えば請求項9の発明の如く圧縮機の起動後、所定時間経過するまで前記条件の成立を判定しないことにより、運転状態の変動が大きい状況での誤判定を廃し、より的確に放熱器による吸熱現象の発生を判断することが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明を適用した一実施形態の車両用空気調和装置の構成図である。
図2図1の車両用空気調和装置のコントローラの電気回路のブロック図である。
図3図2のコントローラが行う放熱器における吸熱現象発生の判定動作を説明する図である。
図4図2のコントローラが行う放熱器における吸熱現象発生のもう一つの判定動作を説明する図である。
図5図2のコントローラが行う放熱器における吸熱現象発生の更にもう一つの判定動作を説明する図である。
図6】放熱器において吸熱現象が発生する状況を説明する図である。
図7】放熱器において吸熱現象が発生したときの各能力の関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【0033】
図1は本発明の一実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。本発明を適用する実施例の車両は、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)であって、バッテリに充電された電力で走行用の電動モータを駆動して走行するものであり(何れも図示せず)、本発明の車両用空気調和装置1も、バッテリの電力で駆動されるものとする。即ち、実施例の車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路を用いたヒートポンプ運転により暖房を行い、更に、除湿暖房や除湿冷房、冷房等の各運転モードを選択的に実行するものである。
【0034】
尚、車両として電気自動車に限らず、エンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車にも本発明は有効であり、更には、エンジンで走行する通常の自動車にも適用可能であることは云うまでもない。
【0035】
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機2と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が冷媒配管13Gを介して流入し、この冷媒を車室内に放熱させる放熱器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室外膨張弁6と、冷房時には放熱器として機能し、暖房時には蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させる吸熱器9と、吸熱器9における蒸発能力を調整する蒸発能力制御弁11と、アキュムレータ12等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。尚、室外熱交換器7には、室外送風機15が設けられている。この室外送風機15は、室外熱交換器7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させるものであり、これにより停車中(即ち、車速VSPが0km/h)にも室外熱交換器7に外気が通風されるよう構成されている。
【0036】
また、室外熱交換器7は冷媒下流側にレシーバドライヤ部14と過冷却部16を順次有し、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷房時に開放される電磁弁(開閉弁)17を介してレシーバドライヤ部14に接続され、過冷却部16の出口が逆止弁18を介して室内膨張弁8に接続されている。尚、レシーバドライヤ部14及び過冷却部16は構造的に室外熱交換器7の一部を構成しており、逆止弁18は室内膨張弁8側が順方向とされている。
【0037】
また、逆止弁18と室内膨張弁8間の冷媒配管13Bは、吸熱器9の出口側に位置する蒸発能力制御弁11を出た冷媒配管13Cと熱交換関係に設けられ、両者で内部熱交換器19を構成している。これにより、冷媒配管13Bを経て室内膨張弁8に流入する冷媒は、吸熱器9を出て蒸発能力制御弁11を経た低温の冷媒により冷却(過冷却)される構成とされている。尚、蒸発能力制御弁11は、この内部熱交換器19の冷媒下流側に設けても良い。
【0038】
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは分岐しており、この分岐した冷媒配管13Dは、暖房時に開放される電磁弁(開閉弁)21を介して内部熱交換器19の下流側における冷媒配管13Cに連通接続されている。更に、放熱器4の出口側の冷媒配管13Eは室外膨張弁6の手前で分岐しており、この分岐した冷媒配管13Fは除湿時に開放される電磁弁(開閉弁)22を介して逆止弁18の下流側の冷媒配管13Bに連通接続されている。
【0039】
また、室外膨張弁6には並列にバイパス配管13Jが接続されており、このバイパス配管13Jには、冷房モードにおいて開放され、室外膨張弁6をバイパスして冷媒を流すための電磁弁(開閉弁)20が介設されている。尚、これら室外膨張弁6及び電磁弁20と室外熱交換器7との間の配管は13Iとする。
【0040】
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(図1では吸込口25で代表して示す)、この吸込口25には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環モード)と、車室外の空気である外気(外気導入モード)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
【0041】
また、図1において57は実施例の車両用空気調和装置1に設けられた補助加熱手段としての電気ヒータを示している。この電気ヒータ57は実施例ではPTCヒータ(Positive Temperature Coefficient:正温度係数ヒータ)から構成されており、放熱器4に対して空気流通路3の流れる空気の上流側となる空気流通路3内に設けられている。そして、電気ヒータ57に通電されて発熱すると、吸熱器9を経て電気ヒータ57に流入した空気流通路3内の空気は加熱され、下流側の放熱器4に流入するよう構成されている。即ち、この電気ヒータ57が所謂ヒータコアとなり、車室内の暖房を補完する。尚、PTCヒータから成る電気ヒータ57が放熱器4の空気上流側に設けられている理由は既に述べた通りである。
【0042】
また、この電気ヒータ57の空気上流側における空気流通路3内には、内気や外気の放熱器4への流通度合いを調整するエアミックスダンパ28が設けられている。更に、放熱器4の空気下流側における空気流通路3には、フット、ベント、デフの各吹出口(図1では代表して吹出口29で示す)が形成されており、この吹出口29には上記各吹出口から空気の吹き出しを切換制御する吹出口切換ダンパ31が設けられている。
【0043】
次に、図2において32はマイクロコンピュータから構成された制御手段としてのコントローラ(ECU)であり、このコントローラ32の入力には車両の外気温度を検出する外気温度センサ33と、外気湿度を検出する外気湿度センサ34と、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれる空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ36と、車室内の空気(内気)の温度を検出する内気温度センサ37と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ38と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO2濃度センサ39と、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41と、圧縮機2の吐出冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力センサ42と、圧縮機2の吐出冷媒温度を検出する吐出温度センサ43と、圧縮機2の吸込冷媒圧力を検出する吸込圧力センサ44と、放熱器4の出口の冷媒の温度(出口冷媒温度TCI)を検出する放熱器出口温度センサ46と、放熱器4の入口の冷媒の温度(入口冷媒温度Tcxin)を検出する放熱器入口温度センサ49と、放熱器4の冷媒圧力PCIを検出する放熱器圧力センサ47と、吸熱器9の温度Teを検出する吸熱器温度センサ48と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ51と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ52と、設定温度や運転モードの切り換えを設定するための空調(エアコン)操作部53と、室外熱交換器7の温度TXOを検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の冷媒圧力を検出する室外熱交換器圧力センサ56の各出力が接続されている。また、コントローラ32の入力には更に、電気ヒータ57の温度Thtrを検出する電気ヒータ温度センサ61の出力も接続されている。
【0044】
一方、コントローラ32の出力には、前記圧縮機2と、室外送風機15と、室内送風機(ブロワファン)27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、吸込口切換ダンパ31と、室外膨張弁6、室内膨張弁8と、各電磁弁22、17、21、20と、電気ヒータ57と、蒸発能力制御弁11が接続されている。そして、コントローラ32は各センサの出力と空調操作部53にて入力された設定に基づいてこれらを制御する。
【0045】
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作を説明する。コントローラ32は実施例では大きく分けて暖房モードと、除湿暖房モードと、内部サイクルモードと、除湿冷房モードと、冷房モードの各運転モードを切り換えて実行する。先ず、各運転モードにおける冷媒の流れについて説明する。
【0046】
(1)暖房モードの冷媒の流れ
コントローラ32により或いは空調操作部53へのマニュアル操作により暖房モードが選択されると、コントローラ32は電磁弁21を開放し、電磁弁17、電磁弁22及び電磁弁20を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は室内送風機27から吹き出された空気が電気ヒータ57及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
【0047】
放熱器4内で液化した冷媒は放熱器4を出た後、冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。尚、電気ヒータ57の通電制御及び作用については後述する。室外膨張弁6に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13D及び電磁弁21を経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。電気ヒータ57及び放熱器4にて加熱された空気は吹出口29から吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
【0048】
コントローラ32は吐出圧力センサ42又は放熱器圧力センサ47が検出する冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の温度及び放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度を制御する。この暖房モードにおける圧縮機2及び室外膨張弁6の制御については後に詳述する。
【0049】
(2)除湿暖房モードの冷媒の流れ
次に、除湿暖房モードでは、コントローラ32は上記暖房モードの状態において電磁弁22を開放する。これにより、放熱器4を経て冷媒配管13Eを流れる凝縮冷媒の一部が分流され、電磁弁22を経て冷媒配管13F及び13Bより内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至るようになる。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0050】
吸熱器9で蒸発した冷媒は蒸発能力制御弁11、内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cにて冷媒配管13Dからの冷媒と合流した後、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより車室内の除湿暖房が行われることになる。コントローラ32は吐出圧力センサ42又は放熱器圧力センサ47が検出する冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御する。
【0051】
(3)内部サイクルモードの冷媒の流れ
次に、内部サイクルモードでは、コントローラ32は上記除湿暖房モードの状態において室外膨張弁6を全閉とする(全閉位置)と共に、電磁弁21、17も閉じる。この室外膨張弁6と電磁弁21、17が閉じられることにより、室外熱交換器7への冷媒の流入、及び、室外熱交換器7からの冷媒の流出は阻止されることになるので、放熱器4を経て冷媒配管13Eを流れる凝縮冷媒は電磁弁22を経て冷媒配管13Fに全て流れるようになる。そして、冷媒配管13Fを流れる冷媒は冷媒配管13Bより内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0052】
吸熱器9で蒸発した冷媒は蒸発能力制御弁11、内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを流れ、アキュムレータ12を経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱されるので、これにより車室内の除湿暖房が行われることになるが、この内部サイクルモードでは室内側の空気流通路3内にある放熱器4(放熱)と吸熱器9(吸熱)の間で冷媒が循環されることになるので、外気からの熱の汲み上げは行われず、吸熱器9における吸熱と圧縮機2の消費動力を合わせた分の暖房能力が発揮される。除湿作用を発揮する吸熱器9には冷媒の全量が流れるので、上記除湿暖房モードに比較すると除湿能力は高いが、暖房能力は低くなる。
【0053】
コントローラ32は吸熱器9の温度、又は、前述した冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。このとき、コントローラ32は吸熱器9の温度によるか高圧圧力によるか、何れかの演算から得られる圧縮機目標回転数の低い方を選択して圧縮機2を制御する。
【0054】
(4)除湿冷房モードの冷媒の流れ
次に、除湿冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21、電磁弁22及び電磁弁20を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は室内送風機27から吹き出された空気が電気ヒータ57及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
【0055】
放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至り、開き気味で制御される室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
【0056】
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は逆止弁18を経て冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
【0057】
吸熱器9で蒸発した冷媒は蒸発能力制御弁11、内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱(暖房時よりも放熱能力は低い)されるので、これにより車室内の除湿冷房が行われることになる。コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、前述した冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI)を制御する。
【0058】
(5)冷房モードの冷媒の流れ
次に、冷房モードでは、コントローラ32は上記除湿冷房モードの状態において電磁弁20を開き(この場合、室外膨張弁6は全開(弁開度を制御上限)を含む何れの弁開度でもよい)、エアミックスダンパ28は電気ヒータ57及び放熱器4に空気が通風されない状態、又は、通風量が制御される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気は通風されない、又は、わずかに通風されるのみとなり、放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て電磁弁20及び室外膨張弁6に至る。
【0059】
このとき電磁弁20は開放されているので冷媒は室外膨張弁6を迂回してバイパス配管13Jを通過し、そのまま室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
【0060】
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は逆止弁18を経て冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却される。
【0061】
吸熱器9で蒸発した冷媒は蒸発能力制御弁11、内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過すること無く吹出口29から車室内に吹き出されるので、これにより車室内の冷房が行われることになる。この冷房モードにおいては、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
【0062】
(6)暖房モードにおける圧縮機2及び室外膨張弁6の制御並びに当該暖房モードでの電気ヒータ57による暖房補完
次に、前記暖房モードにおける圧縮機2及び室外膨張弁6の制御と、当該暖房モードでの電気ヒータ57による暖房補完制御について説明する。
【0063】
(6−1)圧縮機2及び室外膨張弁6の基本的制御
コントローラ32は下記式(I)から目標吹出温度TAOを算出する。この目標吹出温度TAOは、吹出口29から車室内に吹き出される空気温度の目標値である。
TAO=(Tset−Tin)×K+Tbal(f(Tset、SUN、Tam))
・・(I)
ここで、Tsetは空調操作部53で設定された車室内の設定温度、Tinは内気温度センサ37が検出する車室内空気の温度、Kは係数、Tbalは設定温度Tsetや、日射センサ51が検出する日射量SUN、外気温度センサ33が検出する外気温度Tamから算出されるバランス値である。そして、一般的に、この目標吹出温度TAOは外気温度Tamが低い程高く、外気温度Tamが上昇するに伴って低下する。
【0064】
コントローラ32はこの目標吹出温度TAOから目標放熱器温度TCOを算出し、次に、この目標放熱器温度TCOに基づき、目標放熱器圧力PCOを算出する。そして、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力)PCIとに基づき、コントローラ32は圧縮機2の回転数Ncを算出し、この回転数Ncにて圧縮機2を運転する。即ち、コントローラ32は圧縮機2の回転数Ncにより放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力)PCIを制御する。
【0065】
また、コントローラ32は目標吹出温度TAOに基づき、放熱器4の目標放熱器過冷却度TGSCを算出する。一方、コントローラ32は、放熱器圧力PCIと放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の温度(放熱器温度TCI)に基づき、放熱器4における冷媒の過冷却度(放熱器過冷却度SC)を算出する。そして、この放熱器過冷却度SCと目標放熱器過冷却度TGSCに基づき、室外膨張弁6の目標弁開度(目標室外膨張弁開度TGECCV)を算出する。そして、コントローラ32はこの目標室外膨張弁開度TGECVVに室外膨張弁6の弁開度を制御する。
【0066】
コントローラ32は目標吹出温度TAOが高い程、目標放熱器過冷却度TGSCを上げる方向に演算を行うが、それに限らず、後述する要求暖房能力TGQと暖房能力Qhpの差(能力差)や放熱器圧力PCI、目標放熱器圧力PCOと放熱器圧力PCIの差(圧力差)に基づいて算出してもよい。その場合コントローラ32は、能力差が小さい程、圧力差が小さい程、室内送風機27の風量が小さい程、又は、放熱器圧力PCIが小さい程、目標放熱器過冷却度TGSCを下げることになる。
【0067】
(6−2)電気ヒータ57(補助加熱手段)の制御(暖房補完)
また、コントローラ32は、この暖房モードにおいて放熱器4による暖房能力が不足すると判断した場合、電気ヒータ57に通電して発熱させて放熱器4に流入する空気流通路3内の空気を加熱する。この場合、コントローラ32は式(II)、式(III)を用いて要求される放熱器4の暖房能力である要求暖房能力TGQと、放熱器4が発生する暖房能力Qhpを算出する。
【0068】
TGQ=(TCO−Te)×Cpa×ρ×Qair ・・(II)
Qhp=f(Tam、Nc、BLV、VSP、FANVout、Te)・・(III)
ここで、Teは吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度、Cpaは放熱器4に流入する空気の比熱[kj/kg・K]、ρは放熱器4に流入する空気の密度(比体積)[kg/m3]、Qairは放熱器4を通過する風量[m3/h](室内送風機27のブロワ電圧BLV等から推定)、VSPは車速センサ52から得られる車速、FANVoutは室外送風機15の電圧である。
【0069】
尚、式(II)においてはQairに代えて、或いは、それに加えて、放熱器4に流入する空気の温度、又は、放熱器4から流出する空気の温度を採用してもよい。また、式(III)の圧縮機2の回転数Ncは冷媒流量を示す指標の一例であり、ブロワ電圧BLVは空気流通路3内の風量を示す指標の一例であり、放熱器4が発生する暖房能力Qhpはこれらの関数から算出される。また、室外送風機15の電圧FANVoutは停車中(VSPが0)のときの室外熱交換器7の通過風量を示す指標となる。また、Qhpはそれらと放熱器4の出口冷媒圧力、放熱器4の出口冷媒温度TCI、放熱器4の入口冷媒圧力、及び、放熱器4の入口冷媒温度Tcxinのうちの何れか、若しくは、組み合わせから算出してもよい。
【0070】
そして、コントローラ32は、上記式(II)を用いて算出した要求暖房能力TGQが、式(III)を用いて算出した放熱器4が発生する暖房能力Qhpより大きいか否か判断する。そして、要求暖房能力TGQに対して放熱器4の暖房能力Qhpが足りている場合は電気ヒータ57の通電を停止し、放熱器4が要求暖房能力TGQを発生するように冷媒回路Rの圧縮機2他の機器を運転する。
【0071】
一方、放熱器4が発生する暖房能力Qhpが要求暖房能力TGQに対して不足する場合は、コントローラ32は冷媒回路Rの放熱器4と電気ヒータ57の協調運転を実行する。即ち、コントローラ32は電気ヒータ57に通電することにより、冷媒回路Rの放熱器4による加熱に加えて、電気ヒータ57による加熱を開始する。
【0072】
このとき、コントローラ32は電気ヒータ温度センサ61の出力に基づき、電気ヒータ57の要求暖房能力TGQhtr=要求暖房能力TGQ−暖房能力Qhpとして、電気ヒータ57が発生する補助暖房能力Qhtrがこの要求暖房能力TGQhtrとなるように電気ヒータ57の通電を制御する。即ち、コントローラ32は要求暖房能力TGQに対して放熱器4が発生する暖房能力Qhpが不足する分を、電気ヒータ57による加熱(補助暖房能力Qhtr)で補完する。これにより、快適な車室内暖房を実現し、且つ、室外熱交換器7の着霜も抑制することができるようになる。
【0073】
また、放熱器4による暖房能力が不足している状況下で電気ヒータ57による加熱を実行するので、電気ヒータ57の運転に伴う効率の悪化も最小限に抑えることが可能となる。これにより、実施例のような電気自動車においては航続距離が低下する不都合を効果的に抑制することが可能となる。
【0074】
(6−3)放熱器4における吸熱現象発生の判定動作と圧縮機2の制御(その1)
次に、図3を用いて放熱器4における吸熱現象発生の判定動作と、その場合の圧縮機2の制御について説明する。暖房モードの運転時間が経過して室外熱交換器7に着霜が成長した場合等には、外気との熱交換効率が低下する関係上、外気からの吸熱量が低下するため、前述したように放熱器4が発生する暖房能力Qhpも低下する。
【0075】
一方、前述した如く電気ヒータ57は係る放熱器3の暖房能力Qhpの低下分を補うかたちで発熱されるため、放熱器4の暖房能力Qhpが低下してくると、やがて電気ヒータ57の補助暖房能力Qhtrが放熱器4の暖房能力Qhpより大きくなり、この大きくなった補助暖房能力Qhtrで加熱された空気が放熱器4に流入するようになるため、やがて放熱器4が放熱せずに逆に吸熱する現象が発生する。
【0076】
ここで、放熱器4が放熱しているときは、出口冷媒温度TCIは入口冷媒温度Tcxinより低くなる。しかしながら、放熱器4で吸熱が行われるようになると、入口冷媒温度Tcxinが出口冷媒温度TCIより低くなる。実施例では、コントローラ32は放熱器入口温度センサ49と放熱器出口温度センサ46が検出する放熱器4の入口冷媒温度Tcxin(図3の破線)と出口冷媒温度TCI(図3の実線)を監視しており、条件(Tcxin<TCI)が成立したか否かを暖房モードにおいて常時判定している。
【0077】
そして、例えば、図3の時刻t1でこの条件(Tcxin<TCI)が成立した場合、コントローラ32は放熱器4で吸熱現象が発生しているものと判定して、圧縮機2を停止する(Nc=0)。以後は、電気ヒータ57の要求暖房能力TGQhtr=要求暖房能力TGQとして、電気ヒータ57が発生する補助暖房能力Qhtrがこの要求暖房能力TGQhtrとなるように電気ヒータ57の通電を制御する。
【0078】
この例では、以上のように放熱器4の入口冷媒温度Tcxinが放熱器4の出口冷媒温度TCIより低くなるという条件(Tcxin<TCI)が成立したことで、放熱器4において吸熱現象が生じていることを判定し、コントローラ32が圧縮機2を停止するようにしたので、放熱器4の暖房能力が低下して、電気ヒータ57により加熱された空気から放熱器4が逆に吸熱する状況に陥ったときに、圧縮機2を停止してそれ以上無駄に電力が消費される不都合を解消することができるようになる。また、電気ヒータ57で加熱された空気の温度が低下することも無くなるので、車室内の快適な暖房も確保されるようになる。
【0079】
尚、コントローラ32は所定の復帰条件、例えば、室外熱交換器7の除霜を行った場合、或いは、圧縮機2の停止から所定時間経過した場合、若しくは、停止後に外気温度が上昇し、着霜状態ではなくなったことが想定される場合等に圧縮機2を再び起動して放熱器4と電気ヒータ57による協調運転に復帰するものとする(以下の例も同様)。
【0080】
(6−4)放熱器4における吸熱現象発生の判定動作と圧縮機2の制御(その2)
次に、図4を用いて放熱器4における吸熱現象発生のもう一つの判定動作と、その場合の圧縮機2の制御について説明する。暖房モードの運転時間が経過して室外熱交換器7に着霜が成長した場合等には、前述したように放熱器4が発生する暖房能力Qhpも低下してくる。
【0081】
一方、電気ヒータ57は前述した如く係る放熱器3の暖房能力Qhpの低下分を補うかたちで発熱されるため、放熱器4の暖房能力Qhpが低下してくると、やがて電気ヒータ57の補助暖房能力Qhtrが放熱器4の暖房能力Qhpより大きくなり、放熱器4と電気ヒータ57が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotal(=Qhp+Qhtr)に近づいていく。
【0082】
ここで、全体能力Qtotalと補助暖房能力Qhtrとの差が小さくなったということは、放熱器4が発生する暖房能力Qhpが低下し、放熱器4において吸熱現象が生じている可能性が高いということである。そこで、この例でコントローラ32は、全体能力Qtotalと補助暖房能力Qhtrとの差(Qtotal−Qhtr)を算出し、当該差(Qtotal−Qhtr)が所定値X1(例えば200W)より小さくなったか否かを常時判定しており、図4の時刻t2でこの条件((Qtotal−Qhtr)<X1)が成立したものとすると、コントローラ32は圧縮機2を停止する(図4のHP停止判断)。そして、以後は電気ヒータ57の要求暖房能力TGQhtr=要求暖房能力TGQとして、電気ヒータ57が発生する補助暖房能力Qhtrがこの要求暖房能力TGQhtrとなるように電気ヒータ57の通電を制御する(図4の実線Qhtr)。
【0083】
このように、放熱器4の暖房能力Qhpが低下して、電気ヒータ57により加熱された空気から放熱器4が逆に吸熱する状況に陥った危険性が高くなったときに、コントローラ32は圧縮機2を停止してそれ以上無駄に電力が消費される不都合を解消する。また、同様に電気ヒータ57で加熱された空気の温度が低下することも無くなるので、車室内の快適な暖房も確保されるようになる。
【0084】
(6−5)放熱器4における吸熱現象発生の判定動作と圧縮機2の制御(その3)
次に、図5を用いて放熱器4における吸熱現象発生の更にもう一つの判定動作と、その場合の圧縮機2の制御について説明する。暖房モードの運転時間が経過して室外熱交換器7に着霜が成長した場合等には、前述したように放熱器4が発生する暖房能力Qhpも低下してくる。
【0085】
そして、電気ヒータ57は前述した如く係る放熱器3の暖房能力Qhpの低下分を補うかたちで発熱されるため、放熱器4の暖房能力Qhpが低下してくると、やがて電気ヒータ57の補助暖房能力Qhtrが放熱器4の暖房能力Qhpより大きくなり、放熱器4と電気ヒータ57が発生する全体の暖房能力である全体能力Qtotal(=Qhp+Qhtr)に近づいていき、それらの差である暖房能力Qhp(=Qtotal−Qhtr)も小さくなっていく。
【0086】
一方、コントローラ32はこの差(Qtotal−Qhtr)と圧縮機2の消費電力Phpの比(Qtotal−Qhtr)/Phpを算出している。この比(Qtotal−Qhtr)/Phpは圧縮機2の成績係数(COP)を意味しており、この比(Qtotal−Qhtr)/Phpが例えば「1」等の所定値X2より小さくなったか否かの条件((Qtotal−Qhtr)/Php<X2)を常時判定している。圧縮機2の成績係数が「1」より小さくなるということは、放熱器4が発生する暖房能力Qhpが低下し、放熱器4において吸熱現象が生じている可能性が高いということである。
【0087】
そこで、図5の時刻t3でこの条件((Qtotal−Qhtr)/Php<X2)が成立したものとすると、コントローラ32は圧縮機2を停止する(図5のHP停止判断)。そして、以後は電気ヒータ57の要求暖房能力TGQhtr=要求暖房能力TGQとして、電気ヒータ57が発生する補助暖房能力Qhtrがこの要求暖房能力TGQhtrとなるように電気ヒータ57の通電を制御する(図5の実線Qhtr)。
【0088】
このように、この例の場合も放熱器4の暖房能力Qhpが低下して、電気ヒータ57により加熱された空気から放熱器4が逆に吸熱する状況に陥った危険性が高くなったときに、コントローラ32は圧縮機2を停止してそれ以上無駄に電力が消費される不都合を解消する。また、同様に電気ヒータ57で加熱された空気の温度が低下することも無くなるので、車室内の快適な暖房も確保されるようになる。
【0089】
(6−6)放熱器4における吸熱現象発生の判定動作と圧縮機2の制御(その4)
ここで、コントローラ32により上記各実施例における条件(Tcxin<TCI)、条件((Qtotal−Qhtr)<X1)、及び、条件((Qtotal−Qhtr)/Php<X2)のうちの何れか二つの組み合わせ、或いは、全てを判定し、それら組み合わせ、或いは、全ての条件が成立した場合に放熱器4で吸熱現象が発生しているものと判定して圧縮機2を停止するようにしてもよい。
【0090】
それにより、放熱器4の暖房能力Qhpが低下して、電気ヒータ57により加熱された空気から放熱器4が逆に吸熱する状況に陥っていることをより確実に判定し、圧縮機2を停止してそれ以上無駄に電力が消費される不都合を解消することができるようになると共に、同様に電気ヒータ57で加熱された空気の温度が低下することも無くなり、車室内の快適な暖房を確保することができるようになる。
【0091】
(6−7)放熱器4における吸熱現象発生の判定動作と圧縮機2の制御(その5)
また、前述した実施例では各条件が成立したことで圧縮機2を停止するようにしたが、それに限らず、コントローラ32が、前記各条件が成立した状態が所定時間(例えば30秒等)継続した場合に圧縮機2を停止するようにしてもよい。そのように所定時間継続することを条件に加えることにより、一時的な変動による誤判定を廃し、放熱器4の暖房能力Qhpが低下して、電気ヒータ57により加熱された空気から放熱器4が逆に吸熱する状況に陥っていることをより的確に判定して、圧縮機2を停止することができるようになる。
【0092】
(6−8)放熱器4における吸熱現象発生の判定動作と圧縮機2の制御(その6)
更に、コントローラ32が、圧縮機2の起動初期には前記各条件の成立を判定しないようにしてもよい。例えば圧縮機2の起動後、所定時間(例えば2分等)が経過するまで前記各条件の成立を判定しないことにより、運転状態の変動が大きい状況での誤判定を廃し、より的確に放熱器4による吸熱現象の発生を判断することが可能となる。
【0093】
尚、実施例では暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モードの各運転モードを切り換えて実行する車両用空気調和装置1について本発明を適用したが、それに限らず、暖房モードのみ行うものにも本発明は有効である。
【0094】
また、上記各実施例で説明した冷媒回路Rの構成や各数値はそれに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0095】
1 車両用空気調和装置
2 圧縮機
3 空気流通路
4 放熱器
6 室外膨張弁
7 室外熱交換器
8 室内膨張弁
9 吸熱器
11 蒸発能力制御弁
17、20、21、22 電磁弁
23 熱媒体循環回路(補助加熱手段)
26 吸込切換ダンパ
27 室内送風機(ブロワファン)
28 エアミックスダンパ
32 コントローラ(制御手段)
57 電気ヒータ(補助加熱手段)
R 冷媒回路
図1
図2
図3
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図5
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図7