特許第6571432号(P6571432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6571432-排気浄化装置 図000002
  • 特許6571432-排気浄化装置 図000003
  • 特許6571432-排気浄化装置 図000004
  • 特許6571432-排気浄化装置 図000005
  • 特許6571432-排気浄化装置 図000006
  • 特許6571432-排気浄化装置 図000007
  • 特許6571432-排気浄化装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571432
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   F01N3/24 Q
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-146030(P2015-146030)
(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公開番号】特開2017-25814(P2017-25814A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 智之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 昇
(72)【発明者】
【氏名】近江 嘉治
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−121140(JP,A)
【文献】 特開2007−321593(JP,A)
【文献】 特開2011−196211(JP,A)
【文献】 特開2007−224877(JP,A)
【文献】 特開2006−328995(JP,A)
【文献】 特開2014−009615(JP,A)
【文献】 特開2014−126009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスが流通する排気系路の途中に、排気ガスを浄化する浄化材を抱持したケーシングを設置し、該ケーシングに対しセンサの検出子を挿し込んで排気ガスに関する計測を行うよう構成した排気浄化装置であって、
前記ケーシングの出側には、前記浄化材の後方から下流側へ向けて縮径する縮径部を備え、前記ケーシングの長手方向に沿った排気ガスの流れ方向を前記縮径部の内壁で変更して前記ケーシングの出口へと誘導するよう構成すると共に、前記縮径部の内壁に前記センサの検出子が突き出すように設置され、
前記ケーシングの内部に、前記検出子の上流側に配されて前記ケーシングの長手方向に沿った排気ガスの流れが前記検出子に接触することを防止する板状のリアクタ部を備えた整流リアクタを装備し
前記整流リアクタは、前記リアクタ部における前記ケーシングの長手方向に関して左右両側から前記縮径部の内壁に向かって延長され、前記検出子を両側から挟むように配置される板状の側方整流部を備え、
前記縮径部の内壁と、前記リアクタ部と、前記側方整流部とで、前記検出子の周囲に閉断面による流路を形成したことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
前記リアクタ部は、前記縮径部の内壁に沿った面を成しており、前記縮径部の内壁と、前記リアクタ部と、前記側方整流部とで形成される前記流路は、断面積が略一定であることを特徴とする請求項に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記整流リアクタは、前記リアクタ部から上流側に向かって延長され、前記ケーシングの長手方向に沿った面を成す板状の上流整流部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
排気ガスが流通する排気系路の途中に、排気ガスを浄化する浄化材を抱持したケーシングを設置し、該ケーシングに対しセンサの検出子を挿し込んで排気ガスに関する計測を行うよう構成した排気浄化装置であって、
前記ケーシングの出側には、前記浄化材の後方から下流側へ向けて縮径する縮径部を備え、前記ケーシングの長手方向に沿った排気ガスの流れ方向を前記縮径部の内壁で変更して前記ケーシングの出口へと誘導するよう構成すると共に、前記縮径部の内壁に前記センサの検出子が突き出すように設置され、
前記ケーシングの内部に、前記検出子の上流側に配されて前記ケーシングの長手方向に沿った排気ガスの流れが前記検出子に接触することを防止する板状のリアクタ部を備えた整流リアクタを装備し、
前記整流リアクタは、前記リアクタ部から上流側に向かって延長され、前記ケーシングの長手方向に沿った面を成す板状の上流整流部を備えていることを特徴とする排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンにおいては、排気ガスが流通する排気系路の途中に、酸素共存下でも選択的にNOx(窒素酸化物)を還元剤と反応させる性質を備えた選択還元型触媒を装備し、該選択還元型触媒の上流側に必要量の還元剤を添加して該還元剤を選択還元型触媒上で排気ガス中のNOxと還元反応させ、これによりNOxの排出濃度を低減し得るようにしたものがある。
【0003】
他方、プラント等における工業的な排煙脱硝処理の分野では、還元剤にアンモニア(NH)を用いてNOxを還元浄化する手法の有効性が既に広く知られているところであるが、自動車の場合には、アンモニアそのものを搭載して走行することに関し安全確保が困難であるため、近年においては、毒性のない尿素水を還元剤として使用することが研究されている。
【0004】
即ち、尿素水を選択還元型触媒の上流側で排気ガス中に添加すれば、該排気ガスの熱によって尿素水が次式によりアンモニアと炭酸ガスに加水分解され、選択還元型触媒上で排気ガス中のNOxがアンモニアにより良好に還元浄化されることになる。
[化1]
(NHCO+HO→2NH+CO
【0005】
他方、ディーゼルエンジンの排気浄化を図る場合、排気ガス中のNOxを除去するだけでは十分ではなく、排気ガス中に含まれるパティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質、PM)についてもパティキュレートフィルタを通して捕集する必要があるが、この種のパティキュレートフィルタを採用する場合には、目詰まりにより排気抵抗が増加しないうちにパティキュレートを適宜に燃焼除去してパティキュレートフィルタの再生を図る必要がある。
【0006】
このため、パティキュレートフィルタの前段に、フロースルー型の酸化触媒を付帯装備させ、パティキュレートの堆積量が増加してきた段階で前記酸化触媒より上流の排気ガス中に燃料を添加してパティキュレートフィルタを強制再生することが考えられている。
【0007】
つまり、酸化触媒より上流の排気ガス中に燃料を添加すれば、その添加燃料(HC)が前段の酸化触媒を通過する間に酸化反応するので、その反応熱で昇温した排気ガスの流入により直後のパティキュレートフィルタの触媒床温度が上げられてパティキュレートが燃やし尽くされ、パティキュレートフィルタの再生化が図られることになる。
【0008】
この種の排気浄化装置においては、排気系路の各所に各種のセンサ類を搭載することが一般的に行われている。例えば、パティキュレートフィルタの強制再生は上述の如くパティキュレートの堆積量が増加してきた段階で実行されるが、この強制再生を適切なタイミングで実行するために、パティキュレートフィルタの前後に圧力センサ(差圧計)を備えて該差圧計の検出値としてパティキュレートの堆積量を把握し、検出値が所定の閾値を超えた場合に強制再生を実行するといったことが行われている。また、強制再生の実行にあたって排気温度を適切に管理するために、酸化触媒やパティキュレートフィルタの前後の適宜位置に温度センサを備え、温度を監視しつつ燃料の添加量を制御するといったことも必要になる。
【0009】
さらに、近年の排ガス規制のもとでは、上記パティキュレートフィルタや選択還元型触媒等の各種浄化材が正しく機能しているかどうかを監視し、故障があれば検知することが求められている。このために、パティキュレートフィルタの下流側にPMセンサを備えてパティキュレートフィルタに捕集されずに流れてくるパティキュレートを検出したり、選択還元型触媒の下流側にNOxセンサを備えてNOx濃度を検出し、選択還元型触媒に異常がないか判定する等の手段が講じられている。このように、排気浄化装置にはその目的に応じた多種多様のセンサ類が装備される。
【0010】
こうしたセンサ類を排気系路に取り付けるにあたっては、例えば、排気系路を構成する排気管にセンサを挿し込み、排気管内を流通する排気ガスに該センサの検出子を露出させ、該検出子によって排気ガス内の物質濃度等を直接測定するようにしている。図6はそうしたセンサ類の配置の一例を示すもので、排気系路の途中にケーシング1を介装し、該ケーシング1内に浄化材2を抱持している。ケーシング1の出側は、浄化材2の後方から下流側へ向け徐々に縮径するコーン形状の縮径部1aとなっており、その出側端に出口パイプ3が接続されて該出口パイプ3に排気ガス4が収束されるようになっている。この出口パイプ3には、その内部を安定して流れる排気ガス4にセンサ5の検出子5aが挿し込まれ、浄化材2を通過した後の排気ガス4に関して各種の計測を行うようになっている。センサ5は、出口パイプ3に対しセンサボス6を介して装着されている。
【0011】
一方、図7はセンサ5の別の配置例を示すもので、ケーシング1の出側の縮径部1aにおける出口パイプ3の直前にセンサ5を備えるようにしており、縮径部1aのコーン形状により収束された排気ガス4の流れに対し検出子5aを挿し込んで計測を行うようにしている。
【0012】
尚、図6図7に示した浄化材2は、上記したパティキュレートフィルタや酸化触媒、選択還元型触媒のいずれかであっても良いし、また、NOxの還元に使われずに残ったアンモニアの排出を防止するためのアンモニア低減触媒や、あるいは排気中のHC、CO、NOxを同時に低減する三元触媒であっても良い。その他、浄化材2としては、排気浄化装置に用いられる浄化材として考えられる各種のものを想定し得る。また、センサ5についても、上記した温度センサや圧力センサ、PMセンサ、NOxセンサのいずれかであっても良いし、その他、排気浄化装置に設置され得る各種のセンサが想定される。
【0013】
いずれにしても、排気ガス4に関して各種の計測を精度良く行うためには、センサ5の検出子5aに対し一定量の排気ガス4を誘導することが効果的であることが多く、このためには出口パイプ3の途中(図6)や直前(図7)にセンサ5を配置することが好適である。
【0014】
尚、この種の排気浄化装置やセンサに関連する先行技術文献としては、本発明と同じ出願人による下記の特許文献1や2等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2010−261329号公報
【特許文献2】特開2015−105633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、排気系路内には車両の運転中、排気ガス4が流通するので、排気系路に設置した前記各種センサ5の検出子5aは非常な高温に曝されることになる。一方、センサ5の種類によっては検出子5aがセラミック等、急激な温度変化に弱い素材で構成されている場合もある。そうした検出子5aが高温になっているときに、液体の水等がかかって急激に冷やされると、温度差によって検出子5aに割れが生じる虞がある。
【0017】
例えば、車両の高圧洗浄等に伴って水が排気系路の出口から系路内に侵入することがあるが、ここでセンサ5が排気系路の出口付近に位置していると、検出子5aが出口から侵入してきた水と接触することがある。特に、センサ5が図6に示す如き位置に配置されている場合には、出口側からの水7と検出子5aを隔てるものがないために検出子5aが被水してしまいやすい。
【0018】
図7に示した配置では、センサ5が出口パイプ3ではなく、より上流側のケーシング1の縮径部1aに位置しているため、下流側の出口から侵入してきた水7と検出子5aが接触する虞は少ないが、一方でこの配置の場合、検出子5aが排気ガス4中に生じる凝縮水8と接触しやすいという欠点がある。
【0019】
すなわち、エンジンから排出される排気ガス4中には、吸気にもともと含まれていた水蒸気のほか、燃料あるいはパティキュレートの燃焼やNOxの還元浄化の結果発生した水蒸気が含まれており、この水蒸気を含んだ排気ガス4が排気系路を流れる間にその温度を下げていくと、その温度が露点を下回った時点で水蒸気が凝縮して排気ガス4中に凝縮水8が発生する。そして、図7に示す配置では、センサ5の検出子5aが浄化材2を通り抜けてきた排気ガス4に直接曝されているため、凝縮水8を含んで流れてきた排気ガス4が検出子5aと接触してしまいやすい。
【0020】
また、特に外気温の低い時季等においては、低温になった排気系路内に凝縮水8が発生し、図7中に示す如くケーシング1の下部に溜まる場合がある。このような状態で運転を開始すると、排気ガス4の流通によって凝縮水8が飛沫となって跳ね上げられ、やはり検出子5aが被水してしまうことがあり、被水した時点で検出子5aが排気ガス4によって高温になっていれば破損する虞がある。縮径部1aにおける検出子5aの取付位置を十分に高くしておけばこのような可能性を低くすることはできるものの、車両におけるレイアウト等の関係から、そのような位置に検出子5aを取り付けることができるとは限らない。
【0021】
本発明は、斯かる実情に鑑み、センサの被水を回避してセンサの破損を防止し得る排気浄化装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、排気ガスが流通する排気系路の途中に、排気ガスを浄化する浄化材を抱持したケーシングを設置し、該ケーシングに対しセンサの検出子を挿し込んで排気ガスに関する計測を行うよう構成した排気浄化装置であって、前記ケーシングの出側には、前記浄化材の後方から下流側へ向けて縮径する縮径部を備え、前記ケーシングの長手方向に沿った排気ガスの流れ方向を前記縮径部の内壁で変更して前記ケーシングの出口へと誘導するよう構成すると共に、前記縮径部の内壁に前記センサの検出子が突き出すように設置され、前記ケーシングの内部に、前記検出子の上流側に配されて前記ケーシングの長手方向に沿った排気ガスの流れが前記検出子に接触することを防止する板状のリアクタ部を備えた整流リアクタを装備し、前記整流リアクタは、前記リアクタ部における前記ケーシングの長手方向に関して左右両側から前記縮径部の内壁に向かって延長され、前記検出子を両側から挟むように配置される板状の側方整流部を備え、前記縮径部の内壁と、前記リアクタ部と、前記側方整流部とで、前記検出子の周囲に閉断面による流路を形成したことを特徴とする排気浄化装置にかかるものである。
【0023】
而して、このようにすれば、ケーシングの長手方向に沿った排気ガスの流れが検出子に接触することが防止され、凝縮水を含まない排気ガスのみを検出子に接触させることができる。また、前記流路によって排気ガスの流れが整流され、検出器の周囲に一定量の排気ガスが安定して供給される。
【0025】
本発明の排気浄化装置において、前記リアクタ部は、前記縮径部の内壁に沿った面を成しており、前記縮径部の内壁と、前記リアクタ部と、前記側方整流部とで形成される前記流路は、断面積が略一定であることが好ましく、このようにすれば、前記流路に流入する排気ガス同士が衝突したり、該排気ガスの間に気流の乱れが発生することが防止される。
【0026】
本発明の排気浄化装置において、前記整流リアクタは、前記リアクタ部から上流側に向かって延長され、前記ケーシングの長手方向に沿った面を成す板状の上流整流部を備えていることが好ましく、このようにすれば、排気ガスの流れが前記上流整流部に沿って誘導され、排気ガスが前記検出子の周囲にスムーズに流入する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の排気浄化装置によれば、以下の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0028】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、凝縮水を含んだ排気ガスが検出子に接触することがないので、センサの被水を回避してセンサの破損を防止し得る。また、センサの検出子周辺に形成した流路に一定量の排気ガスが安定して供給されるので、前記センサにおける検出値のばらつきを少なくして計測の精度を高めることができる。
【0030】
II)本発明の請求項2〜4に記載の発明によれば、整流リアクタを設置したことによる排気抵抗の増加を最低限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施による排気浄化装置の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施に用いる整流リアクタの形態の一例を示す斜視図である。
図3】本発明の実施による排気浄化装置の要部を示す拡大図であり、図1のIII−III矢視相当図である。
図4】本発明の作動を説明する概念図である。
図5】本発明の作動を説明する概念図である。
図6】従来の排気浄化装置におけるセンサの配置の一例を示す概略断面図である。
図7】従来の排気浄化装置におけるセンサの配置の別の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0033】
図1図3は本発明を実施する形態の一例を示すものであって、図中、図6図7と同一の符号を付した部分は同一物を表している。
【0034】
本実施例の排気浄化装置の基本的な構成は図7に示すものと同様であり、排気ガス4が流通する排気系路の途中に、排気ガス4を浄化する浄化材2を抱持したケーシング1を設置し、このケーシング1の出側に排気系路からの排気ガス4を抜き出す出口パイプ3を接続している。ケーシング1には、浄化材2の後方から下流側へ向け徐々に縮径するコーン形状の縮径部1aを備え、該縮径部1aの所定位置には、如く径部1aの内壁に検出子5aが突き出すようにセンサ5を設置している。
【0035】
尚、ここでは縮径部1aがコーン形状の場合を例に説明しているが、縮径部1aは必ずしもこのような形状をとる必要はない。例えば、縮径部1aの内壁はケーシング1の長手方向に対して略垂直の面を成していても良い。ケーシング1の長手方向に沿った排気ガス4の流れ方向を縮径部1aの内壁で変更してケーシング1の出口へと誘導するよう構成されていれば良い。
【0036】
そして、本実施例の場合、図1に示す如く、ケーシング1の内部におけるセンサ5の設置された位置に、縮径部1aの内壁に突き出した検出子5aを覆うように整流リアクタ9を設置している。
【0037】
この整流リアクタ9は図2に示す如き形状を有する金属製の部材であり、検出子5aの上流側に配され、縮径部1aにおけるセンサ5の設置された部分の内壁に沿った面を成す(図1参照)板状のリアクタ部9aと、該リアクタ部9aから屈曲しつつ上流側に向かって延長され、ケーシング1の長手方向に沿った面を成す(図1参照)板状の上流整流部9bと、リアクタ部9aにおけるケーシング1の長手方向に関して左右両側から屈曲しつつ縮径部1aの内壁に向かって延長され、該縮径部1aの内壁に突き出した検出子5aを両側から挟むように配置される(図1参照)板状の側方整流部9c,9cとを備えてなる。該各側方整流部9cの端部にはフランジ9dが備えられ、該フランジ9dが縮径部1aの内壁に対して溶接されることで整流リアクタ9全体をケーシング1に対し固定するようになっている。尚、この整流リアクタ9は一枚の板材を屈曲させることで形成することができ、リアクタ部9aと上流整流部9bとの間は曲線状に滑らかに連続している。
【0038】
リアクタ部9aは、図1に示す如く、その上側端部がセンサ5の検出子5aのケーシング1内における露出部分の上端よりも上に位置しており、また、下側端部がセンサ5の検出子5aのケーシング1内における露出部分の下端よりも下に位置している。
【0039】
また、図3に示す如く、縮径部1aの内壁と、該内壁に沿った面を成す整流リアクタ9のリアクタ部9a、及び、該リアクタ部9aと縮径部1aの内壁とを繋ぐ側方整流部9c,9cとでセンサ5の検出子5aの周囲を取り囲み、これにより、検出子5aの周囲に、縮径部1aの内壁に沿って断面積が略一定の閉断面による流路を形成している。
【0040】
このように、整流リアクタ9は、縮径部1aの内壁に突き出した検出子5aを取り囲みつつ、検出子5aの周囲に排気ガス4の流れる流路を形成するように設置される。
【0041】
尚、本実施例におけるケーシング1の縮径部1aは前述の如くコーン形状であるが、整流リアクタ9の取付部分においてはフランジ9dを溶接しやすいよう、コーン形状を適宜変形させる等して縮径部1aに部分的に平面を形成し、フランジ9dの座面としても良い。
【0042】
次に、上記した本実施例の作動を説明する。
【0043】
エンジンの運転に伴って発生する排気ガス4中には上述の如く水蒸気が含まれており、排気系路を流れる間に排気ガス4の温度が低下した結果、排気ガス4中に凝縮水8が発生する場合がある(図1参照)。この凝縮水8は、排気ガス4の流れに従って下流へと運ばれていき、そのうち一部は排気ガス4と共にケーシング1の縮径部1aに備えたセンサ5の検出子5aに吹き付けようとする。
【0044】
ところが、本実施例においては、この検出子5aの上流側に整流リアクタ9が設置されている。したがって、図4に示す如く、ケーシング1の長手方向に沿って流れてきた排気ガス4及び凝縮水8は、検出子5aに吹き付ける前に整流リアクタ9のリアクタ部9aに衝突し、検出子5aに直接接触することが防止される。
【0045】
ここで、上述の如く、リアクタ部9aの上側端部はセンサ5の検出子5aのケーシング1内における露出部分の上端よりも上に位置しており、且つ、下側端部はセンサ5の検出子5aのケーシング1内における露出部分の下端よりも下に位置しているので、ケーシング1の長手方向に沿って吹き付ける排気ガス4及び凝縮水8が検出子5aに接触することは確実に回避される。
【0046】
整流リアクタ9のリアクタ部9aに衝突した排気ガス4は、検出子5aに接触することなく、リアクタ部9aの表面に沿って流れを変えられ、出口パイプ3に向かって誘導される。高温となったリアクタ部9aに排気ガス4が衝突する際、該排気ガス4に含まれる凝縮水8は気化し、排気ガス4は凝縮水8を取り除かれた状態で出口パイプ3に流れる。
【0047】
一方、排気ガス4のうち別の一部は、縮径部1aの内壁及び整流リアクタ9のリアクタ部9a、側方整流部9c,9cによって形成された流路に沿って流入し、検出子5aに接触する(図3参照)。すなわち、ケーシング1の下流側はコーン形状の縮径部1aになっており、また整流リアクタ9のリアクタ部9aは縮径部1aに沿った面を成しているので、ケーシング1の長手方向に沿って流れてきた排気ガス4は、縮径部1aの内壁やリアクタ部9aに衝突し、出口パイプ3の接続されたケーシング1の出口に向かって縮径部1aの内壁に沿うように流れを変更され、一部が前記流路に流入して検出子5aに接触しながら下流に流れていく。
【0048】
ここで、縮径部1aに沿った向きに流れて検出子5aに接触する排気ガス4は、この向きに流れる前に、縮径部1aの内壁に一旦衝突することで流れを変えられている。そして、排気ガス4に凝縮水8が含まれていた場合、この凝縮水8は高温となった縮径部1aの内壁に衝突する際に気化する。したがって、検出子5aに接触する排気ガス4は、予め凝縮水8が取り除かれた状態である。
【0049】
このように、ケーシング1の長手方向に沿って流れて検出子5aに吹きつけようとする排気ガス4は整流リアクタ9のリアクタ部9aによって検出子5aとの接触を防がれ、また、縮径部1aの内壁に沿って流れて検出子5aと接触する排気ガス4は予め凝縮水8を取り除かれた状態であるので、凝縮水8による検出子5aの被水は整流リアクタ9により防止されることになる。
【0050】
また、エンジンの停止中にケーシング1の下部に溜まった凝縮水8(図1参照)が排気ガス4によって跳ね上げられるようなことがあっても、検出子5aは整流リアクタ9によって覆われているので、凝縮水の飛沫が検出子5aに接触することは防がれる。
【0051】
尚、本実施例の場合、センサ5をケーシング1の縮径部1aに備えているので、図6に示した従来例の如きセンサ5を出口パイプ3に備える配置とは異なり、出口側からの水の侵入により検出子5aが被水する心配は少ない。
【0052】
さらに、本実施例の場合、縮径部1aの内壁と、整流リアクタ9のリアクタ部9a及び側方整流部9c,9cにより、上述の如く検出子5aの周囲に閉断面による流路が形成されている。この流路は縮径部1aの内壁に沿って流れる排気ガス4の向きに沿ったものであり、このため、前記流路には一定量の排気ガス4が安定して供給される。排気ガス4に関して各種の計測を行うためにはセンサ5の検出子5aに対し一定量の排気ガス4を誘導するのが効果的であることは前に述べた通りであるが、本実施例ではこのようにして、整流リアクタ9の設置によって排気ガス4の流れを整流し、センサ5における検出値のばらつきを少なくして計測の精度を高めることができるようになっている。
【0053】
また、本実施例の場合、整流リアクタ9を設置する結果その周囲において排気ガス4の流れが変更されることになるが、これによって生じる排気抵抗の増加を、上流整流部9bを設けることによって極力抑えるようにもしている。すなわち、例えば図5に示す如く上流整流部9bを欠いて整流リアクタ9を構成した場合、ケーシング1の長手方向に沿って流れてきてリアクタ部9aの上端に衝突した排気ガス4は、その流れ方向を上下に分かれるように変更されることになるが、このとき、上または下方向に流れようとする排気ガス4の流れと、その上下でケーシング1の長手方向に沿って流れようとする排気ガス4の流れが衝突すると、気流に乱れが発生して排気抵抗の原因になる。本実施例の場合、図2に示す如く、リアクタ部9aの上端に達しようとする排気ガス4の流れはその前に上流整流部9bに沿って誘導されるので、リアクタ部9aの上端で上下方向に分かれることは防止され、上流整流部9bの上面に沿って流れてきた排気ガス4は検出子5aの周囲にスムーズに流入する。一方、上流整流部9bの下面に沿って流れてきた排気ガス4はリアクタ部9aに衝突することになるが、この際、リアクタ部9aと上流整流部9bとが曲線状に滑らかに連続していることにより、やはりスムーズにリアクタ部9aに沿って流れを変更される。
【0054】
加えて、上記したように整流リアクタ9のリアクタ部9aは縮径部1aの内壁に沿った面を成し、該縮径部1aの内壁、リアクタ部9a及び側方整流部9c,9cにより縮径部1aの内壁に沿って形成される流路は断面積が略一定となっているので、前記流路に流入する排気ガス4同士が衝突したり、該排気ガス4の間に気流の乱れが発生することが防止される。このように、前記流路の形成によってセンサ5の検出子5aに対し一定量の排気ガス4を安定して供給しつつも、整流リアクタ9の設置による排気抵抗の増加は極力抑えられるようになっている。
【0055】
以上のように、上記本実施例においては、排気ガス4が流通する排気系路の途中に、排気ガス4を浄化する浄化材2を抱持したケーシング1を設置し、該ケーシング1に対しセンサ5の検出子5aを挿し込んで排気ガス4に関する計測を行うよう構成した排気浄化装置に関し、ケーシング1の出側には、浄化材2の後方から下流側へ向けて縮径する縮径部1aを備え、ケーシング1の長手方向に沿った排気ガス4の流れ方向を縮径部1aの内壁で変更してケーシング1の出口へと誘導するよう構成すると共に、縮径部1aの内壁にセンサ5の検出子5aが突き出すように設置され、ケーシング1の内部に、検出子5aの上流側に配されてケーシング1の長手方向に沿った排気ガス4の流れが検出子5aに接触することを防止する板状のリアクタ部9aを備えた整流リアクタ9を装備しているので、ケーシング1の長手方向に沿った排気ガス4の流れが検出子5aに接触することが防止され、凝縮水8を含まない排気ガス4のみを検出子5aに接触させることができる。その結果、凝縮水8を含んだ排気ガス4が検出子5aに接触することがなく、センサ5の被水を回避してセンサ5の破損を防止することができる。
【0056】
また、本実施例において、整流リアクタ9は、リアクタ部9aにおけるケーシング1の長手方向に関して左右両側から縮径部1aの内壁に向かって延長され、検出子5aを両側から挟むように配置される板状の側方整流部9c,9cを備え、縮径部1aの内壁と、リアクタ部9aと、側方整流部9c,9cとで、検出子5aの周囲に閉断面による流路を形成しているので、該流路によって排気ガス4の流れが整流され、検出器5の周囲に一定量の排気ガス4が安定して供給されることにより、センサ5における検出値のばらつきを少なくして計測の精度を高めることができるようになっている。
【0057】
また、本実施例において、リアクタ部9aは、縮径部1aの内壁に沿った面を成しており、縮径部1aの内壁と、リアクタ部9aと、側方整流部9c,9cとで形成される前記流路は、断面積が略一定であるので、前記流路に流入する排気ガス4同士が衝突したり、該排気ガス4の間に気流の乱れが発生することが防止され、その結果、整流リアクタ9の設置による排気抵抗の増加が極力抑えられる。
【0058】
また、本実施例において、整流リアクタ9は、リアクタ部9aから上流側に向かって延長され、ケーシング1の長手方向に沿った面を成す板状の上流整流部9bを備えているので、排気ガス4の流れが上流整流部9bに沿って誘導され、排気ガス4が検出子5aの周囲にスムーズに流入し、その結果、整流リアクタ9の設置による排気抵抗の増加が極力抑えられる。
【0059】
尚、本発明の排気浄化装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 ケーシング
1a 縮径部
2 浄化材
4 排気ガス
5 センサ
5a 検出子
9 整流リアクタ
9a リアクタ部
9b 上流整流部
9c 側方整流部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7