(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補正部は、前記トリガ信号を基準とする遅延時間が略同一となるようになるように前記補正データと前記診断画像生成用の磁気共鳴信号とを互いに対応付け、前記トリガ信号からの各遅延時間における前記補正データを用いて、前記補正データに対応付けられた前記診断画像生成用の磁気共鳴信号を補正する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記データ収集部は、前記補正データ生成用の磁気共鳴信号を第1のパルスシーケンスを用いて収集し、前記診断画像生成用の磁気共鳴信号を第2のパルスシーケンスを用いて収集し、前記第1のパルスシーケンスの種類と、前記第2のパルスシーケンスの種類は、互いに異なる種類に設定することができる、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
前記データ収集部は、前記診断画像生成用の磁気共鳴信号の収集期間の中に複数の前記補正データ取得期間を挿入し、隣接する前記補正データ取得期間の間隔を、前記冷凍サイクルの周期よりも短く設定する、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
(1)全体構成
図1は、本実施形態における磁気共鳴イメージング装置1の全体構成を示すブロック図である。実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、磁石架台100、寝台200、制御キャビネット300、コンソール400等を備えて構成される。
【0011】
磁石架台100は、静磁場磁石10、傾斜磁場コイル11、RFコイル12等を有しており、これらの構成品は円筒状の筐体に収納されている。寝台200は、寝台本体20と天板21を有している。
【0012】
一方、制御キャビネット300は、静磁場用電源30、傾斜磁場電源31(X軸用31x、Y軸用31y、Z軸用31z)、RF受信器32、RF送信器33、シーケンスコントローラ34等を備えている。また、コンソール400は、プロセッサ40、記憶部41、入力部42、表示部43等を有するコンピュータとして構成されている。
【0013】
磁石架台100の静磁場磁石10は、概略円筒形状をなしており、被検体(患者)の撮像領域であるボア(静磁場磁石10の円筒内部の空間)内に静磁場を発生させる。静磁場磁石10は超電導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超電導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石10は、励磁モードにおいて静磁場用電源30から供給される電流を超電導コイルに印加することで静磁場を発生し、その後、永久電流モードに移行すると、静磁場用電源30は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石10は長時間、例えば1年以上に亘って、大きな静磁場を発生し続ける。
【0014】
傾斜磁場コイル11も概略円筒形状をなし、静磁場磁石10の内側に固定されている。この傾斜磁場コイル11は、傾斜磁場電源(31x、31y、31z)から供給される電流によりX軸,Y軸,Z軸の方向に傾斜磁場を被検体に印加する。
【0015】
寝台200の寝台本体20は天板21を上下方向に移動可能であり、撮像前に天板21に載った被検体を所定の高さまで移動させる。その後、撮影時には天板21を水平方向に移動させて被検体をボア内に移動させる。
【0016】
RFコイル12は全身用コイルとも呼ばれ、傾斜磁場コイル11の内側に被検体を取り囲むように概略円筒形状に固定されている。RFコイル12は、RF送信器33から伝送されるRFパルスを被検体に向けて送信する一方、また、水素原子核の励起によって被検体から放出される磁気共鳴信号を受信する。
【0017】
RF送信器33は、シーケンスコントローラ34からの指示に基づいて、RFコイル12にRFパルスを送信する。一方、RF受信器32は、RFコイル12によって受信された磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号をデジタル化して得られる生データをシーケンスコントローラ34に対して送信する。
【0018】
シーケンスコントローラ34は、コンソール400による制御のもと、傾斜磁場電源31、RF送信器33およびRF受信器32をそれぞれ駆動することによって被検体のスキャンを行う。そして、シーケンスコントローラ34は、スキャンを行ってRF受信器32から生データを受信すると、その生データをコンソール400に送信する。
【0019】
コンソール400は、磁気共鳴イメージング装置1全体を制御する。具体的には、検査技師等のマウスやキーボード等(入力部42)の操作によって撮像条件その他の各種情報や指示を受け付ける。そして、プロセッサ40は、入力された撮像条件に基づいてシーケンスコントローラ34にスキャンを実行させる一方、シーケンスコントローラ34から送信された生データに基づいて画像を再構成する。再構成された画像は表示部43に表示され、或いは記憶部41に保存される。
【0020】
冷凍機110は、例えば、磁石架台100の上部に設置される冷凍機本体(コールドヘッドとも呼ばれる)と、熱交換機とから構成される。冷凍機本体にはシリンダが内蔵されている。シリンダ内のピストン機構の機械的な動きによって、シリンダ内に熱交換機を介して供給されるヘリウムガスを周期的に圧縮及び膨張させる。この圧縮及び膨張が冷凍サイクルであり、冷凍サイクルを繰り返すことにより、液体ヘリウム容器内に収納されている超電導コイルの超電導状態を維持している。
【0021】
冷凍機110は、冷凍サイクルの周期に同期したトリガ信号を出力するように構成されている。このトリガ信号はシーケンスコントローラ34に対して出力される。シーケンスコントローラ34は、受け取ったトリガ信号を、さらにコンソール400に伝送する。
【0022】
前述したように、永久電流モードに移行すると、静磁場磁石10は長時間に亘って、大きな静磁場を発生し続けるように構成されている。このため、冷凍機110を除く、磁気共鳴イメージング装置1の電源が夜間等の非検査時にオフとなった場合でも、冷凍機110は動作を継続する。
【0023】
冷凍サイクルの周期、即ち、冷凍機110のピストン機構の動作周期は、電源周波数にも因るが、例えば、約1秒の周期をもつ。一般に電源周波数は安定しており、この結果、冷凍サイクルの周期も安定している。
【0024】
冷凍機110は、磁石架台100に固定されるため、ピストン機構の周期的な機械的変動は、超電導磁石10に伝搬する。この結果、冷凍サイクルの周期に連動した静磁場変動が発生する。
【0025】
以下、この静磁場変動を抑制するための各実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図2は、静磁場変動の抑制に関する構成を含んだ第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1のブロック図である。
図2に示すように、磁気共鳴イメージング装置1は、表示部42、入力部43、補正部420、再構成部430を有している。また、補正部420は、その内部構成として、診断画像用MR信号保存部421、補正演算部422、補正データ算出部423、補正データ保存部424を有している。
【0026】
上記構成の内、表示部42及び入力部43の除く各構成の機能は、所定のプログラムコードを、コンソール400のプロセッサ40が実行することによって実現されるが、このようなソフトウェア処理に限らず、例えば、ASIC(application specific integrated circuit)やFPGA(field programmable gate array)等を用いたハードウェア処理で実現しても良いし、ソフトウェア処理とハードウェア処理とを組み合わせて実現しても良い。
【0027】
なお、
図2において、
図1に示す磁気共鳴イメージング装置1の構成のうち、コンソール400と冷凍機110を除いた構成の総称をデータ収集部500としている。また、
図2における入力部42及び表示部43は、
図1に示すものと同じであるため、同じ符号を付している。
【0028】
図2の撮像条件設定部410は、入力部43を介してユーザから入力された情報に基づいて、パルスシーケンス、解像度、撮像位置等の各種の撮像条件を、データ収集部500のシーケンスコントローラに設定する。以下の各実施形態では、補正データ収集用のパルスシーケンス(第1のパルスシーケンス)や、診断画像取得用のパルスシーケンス(第2のパルスシーケンス)を用いるが、これらのパルスシーケンスも、撮像条件設定部410がシーケンスコントローラ34に対して設定する。
【0029】
データ収集部500は、冷凍機110から出力されるトリガ信号に同期して、補正データ生成用の磁気共鳴信号(生データ、或いはMR信号。以下、MR信号と呼ぶ)、及び診断画像生成用のMR信号を収集する。収集した補正データ生成用のMR信号、及び診断画像生成用のMR信号は、補正部420に送られる。
【0030】
補正部420の補正データ算出部423は、補正データ生成用のMR信号から、冷凍機110の機械的変動に伴う静磁場の周期的な変動に起因して発生する位相変動、又は磁気共鳴周波数変動を補正データとして算出し、補正データ保存部424に保存する。
【0031】
なお、補正データ生成用のMR信号は、診断画像生成用のMR信号の収集に先立って予め収集される。例えば、本装置の据え付け時や本装置の起動時に、補正データ生成用のMR信号は収集される。或いは、診断画像生成用のMR信号の収集を本スキャンとするとき、この本スキャンの実行の都度、本スキャンの前に行うプレスキャンとして、補正データ生成用のMR信号を収集してもよい。また、補正データ生成用のMR信号は、人体(患者)から取得する必要は必ずしもなく、ファントムから取得しても良い。
【0032】
補正部420の診断画像用MR信号保存部421は、診断画像取得用の撮像(本スキャン)で収集したMR信号を一時的に保存し、補正演算部422に送る。診断画像生成用のMR信号も、冷凍機110の機械的変動に伴う静磁場の周期的な変動に起因する位相変動を伴っている。補正演算部422は、診断画像生成用のMR信号の位相変動を、補正データ保存部424に保存されている補正データを用いて補正する。補正部420にて補正された診断画像生成用のMR信号は、再構成部430で、逆フーリエ変換等の処理によって再構成され、診断画像が生成される。生成された診断画像は表示部42に表示される。
【0033】
補正部420のより具体的な動作を説明する前に、冷凍機110の機械的変動に起因して生じる位相変動の発生メカニズムと、この位相変動に起因して生じるアーティファクトについて、
図3及び
図4を用いて簡単に説明する。
【0034】
図3の一段目の図は、冷凍機110の冷凍サイクルの周期Tに対応して冷凍機110から出力される周期Tのトリガ信号を示す図である。冷凍サイクルの周期Tは、前述したように約1秒程度である。二段目の図は、冷凍サイクルTの周期で振動する冷凍機110の機械的変動によって、静磁場が正弦波状に変動する様子を模式的に示す図である。静磁場の変動波形は必ずしも正弦波状になるとは限らないが、静磁場の変動波形が周期性をもつ波形であれば、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置1は、静磁場変動に起因するアーティファクトを抑制することが可能である。
【0035】
図3の三段目の図は、静磁場の変動に伴って発生する磁気共鳴周波数の変動を示す図である。静磁場の変動がないときの磁気共鳴角周波数をω
0とし、静磁場の変動量をΔB
0とすると、磁気共鳴角周波数の変動量Δω
0は、次の(式1)で表される。
Δω
0=γ・ΔB
0 (式1)
ここで、γは、磁気回転比と呼ばれる定数である。
図3の四段目の図は、磁気共鳴角周波数が変動量Δω
0で変動した時に生じる位相変動φを示す図である。励起パルスからMR信号(エコー信号)のサンプリングの中心までの時間、即ちエコー時間をTEとするとき、位相変動φは次の(式2)で表される。
φ=TE・Δω
0 (式2)
【0036】
図4は、このような位相変動φが発生した時に、再構成画像に発生するアーティファクトの一例を示す図である。
図4の中央に示す色の濃い丸い像が真の画像であり、
図4の上下に示す色の薄い丸い像がアーティファクトである。位相変動φの周期は、
図3の四段目の図からも判るように、その変動周期は冷凍機110の変動周期と同じとなり、例えば、約1秒の周期をもつ。リードアウト方向の1ライン分のデータ収集期間は、この周期に比べて十分に小さいため、リードアウト方向のデータ収集期間中における位相変動は小さい。このため、リードアウト方向のゴースト(アーティファクト)は、ほとんど発生しない。これに対して、位相エンコード方向のデータの収集期間は、位相変動の約1秒の周期に比べて長くなることが多い。このような場合、位相エンコード方向のデータの収集期間の間に、位相変動の周期が複数含まれることになり、位相エンコードの各ラインは異なる静磁場の状態で収集される。この結果、位相エンコード方向の信号強度は静磁場の変動によって変調を受け、位相エンコード方向に真の画像のゴースト(アーティファクト)が発生する。
【0037】
以下、このようなアーティファクトを抑制する方法について具体的に説明する。前述したように、第1の実施形態におけるアーティファクト抑制方法は、補正データ生成用のMR信号を収集して補正データを算出する第1のフェーズと、算出した補正データを用いて診断画像用のMR信号を補正する第2のフェーズの2つのフェーズに分かれる。
図5は、このうち、第1のフェーズの処理の一例を示すフローチャートである。
【0038】
まず、
図5のステップST100において、補正データ生成用のMR信号を収集するための撮像条件を設定する。この撮像条件に含まれるパルスシーケンスを第1のパルスシーケンスとする。ステップST101で、冷凍機110からのトリガ信号が入力されるのを待つ。トリガ信号が入力されると、このトリガ信号に同期して第1のパルシーケンスを開始して、データ収集、即ち、補正データ生成用のMR信号の収集を開始する(ステップST102)。データ収集は、冷凍サイクル周期Tの期間以上の間、例えばK回繰り返される(ステップST103)。K回の繰り返しが終わると、データ収集を終了する(ステップST104)。
【0039】
図6は、以上のステップST101からステップST104までの処理を説明する図である。
図6の一段目は、冷凍機110から出力される周期Tのトリガ信号を示している。トリガ信号の周期Tは、冷凍機110の冷凍サイクルの周期Tに対応する。
図6の二段目は、冷凍機110の機械的変動に伴う静磁場変動を示しており、トリガ信号の周期と静磁場の変動周期は一致している。
図6の三段目は、第1のパルスシーケンスによるデータ収集が、冷凍サイクルの周期T以上に亘って、1番目からK番目までK回繰り返し行われることを示している。
【0040】
図6の下半分は、1つのデータ収集で使用される第1のパルスシーケンスの一例を示しており、上から、励起パルス、スライス選択傾斜磁場G
SS、位相エンコード用傾斜磁場G
PE、リードアウト用傾斜磁場G
RO、MR信号(エコー信号)を夫々例示している。
図6に例示する第1のパルスシーケンスは、グラディエントエコー(Gradient Echo)法(以下、GRE法と呼ぶ)のパルスシーケンスを示しているが、第1のパルスシーケンスの種類は、GRE法に限定されるものではなく、他の種類のパルスシーケンスでも良い。例えば、スピンエコー(Spin Echo)法(以下、SE法と呼ぶ)のパルスシーケンスでもよい。但し、静磁場の変動の影響は、SE法よりもGRE法の方が受けやすい。このことは、診断画像生成用の撮像(本スキャン)でも同様である。そこで、以下では、補正データ生成用のMR信号を収集するパルスシーケンス(第1のパルスシーケンス)と、診断画像生成用のMR信号を収集するパルスシーケンス(第2のパルスシーケンス)の両方で、GRE法のパルスシーケンスを用いるものとして説明する。
【0041】
GRE法による第1のパルスシーケンスとして、
図6の下半分に示すように、励起パルス間の間隔、即ち、繰り返し周期をTR
0として設定する。また、励起パルスからエコー中心までのエコー時間をTE
0として設定する。そして、
図6下半分の破線で囲んだブロックが、1番目からK番目までK回繰り返され、K個のMR信号が収集される。なお、冷凍機110の機械的変動に起因する静磁場変動は空間依存性が少ないと考えられるため、補正データを取得するための第1のパルスシーケンスでは、1番目からK番目の何れにおいても、位相エンコード量をゼロに設定している。
【0042】
図5に戻り、ステップST105では、収集したK個のMR信号の実部、虚部から位相変動を算出する。今、i番目(i=1〜K)のMR信号のサンプリング中心の実部、虚部の値を夫々、Real(i)、Img(i)とすると、i番目の位相変動φ(i)は、次の(式3)で算出される。
φ(i)=tan
-1[Img(i)/Real(i)] (i=1〜K) (式3)
位相変動量と、磁気共鳴角周波数及びエコー時間との間には(式2)に示す関係がある。ステップST106では、(式3)で算出した位相変動φ(i)と、第1のパルスシーケンスにおけるエコー時間TE
0とから、以下の(式4)によって、i番目の磁気共鳴周波数変動Δf
0(i)を算出する。
Δf
0(i)=[φ(i)/TE
0]/(2π) (i=1〜K) (式4)
ここで、エコー時間TE
0が冷凍サイクルの周期Tに比べて十分短く、エコー時間TE
0内での静磁場変動は無視できるものとしている。
【0043】
算出した磁気共鳴周波数変動Δf
0(i) (i=1〜K)は、補正データとして補正データ保存部424に保存される(ステップST107)。なお、磁気共鳴周波数変動Δf
0(i)に換えて、或いは磁気共鳴周波数変動Δf
0(i)に加えて、(式3)で算出した位相変動φ(i) (i=1〜K)を補正データとして保存してもよい。
【0044】
図7は、算出した補正データを用いて診断画像用のMR信号を補正する第2のフェーズの処理例を示すフローチャートである。第2のフェーズは、所謂本スキャンとして、患者の診断画像を取得するために行わる撮像である。
【0045】
図7のステップST200では、診断画像生成用のMR信号を収集するための撮像条件を設定する。この撮像条件に含まれるパルスシーケンスを第2のパルスシーケンスとしている。次に、ステップST201で、冷凍機110からのトリガ信号が入力されるのを待つ。トリガ信号が入力されると、このトリガ信号に同期して第2のパルシーケンスを開始して、データ収集、即ち、診断画像生成用のMR信号の収集を開始する(ステップST202)。
【0046】
図8及び
図9は、第2のパルスシーケンスの例を示す図である。第2のパルスシーケンスは、診断画像生成用のMR信号を収集するパルスシーケンスであり、第1のパルスシーケンスの種類に拘束されない。つまり、第2のパルスシーケンスの種類は第1のパルスシーケンスの種類と異なっても良い。例えば、第1のパルスシーケンスがGRE法であったときでも、第2のパルスシーケンスをSE法とすることができる。また、同じGRE法であっても、第2のパルスシーケンスの繰り返し時間TRやエコー時間TEを、第1のパルスシーケンスの繰り返し時間TRやエコー時間TEと異なる値に設定することができる。
【0047】
なお、前述したように、静磁場変動の影響は、SE法よりもGRE法の方が受けやすいため、
図8及び
図9に示す第2のパルスシーケンスの例においても、GRE法に基づくパルスシーケンスを示している。
【0048】
図8の一段目と二段目は、冷凍機110からのトリガ信号と、静磁場変動の様子を夫々示している。
図8の下半分に、第2のパルスシーケンスを例示している。
図8に示す例では、マルチスライス法によりM枚のスライス画像を一回の撮像で取得する。また、個々のスライスの位相エンコード数をPとしている。そして、スライス番号をm(m=1〜M)とし、位相エンコード番号をp(p=1〜P)としている。位相エンコード番号pが1からPまで増加するにしたがって、位相エンコード量は、例えば、ゼロから、正負の最大位相エンコード量まで増加する。また、GRE法による繰り返し時間TR
1の中で、M枚のスライスからそれぞれ1位相エンコード分のデータを収集するものとし、各スライスから1位相エンコード分のデータを収集する時間をTR
2としている。
【0049】
1位相エンコード分のデータを収集する時間TR
2内における具体的なパルスシーケンスを
図9に例示している。
図9の第2のパルスシーケンスの例では、第1のパルスシーケンスと同じGRE法ではあるものの、エコー時間TE
1が、
図5に示す第1のパルスシーケンスにおけるエコー時間TE
0と異なる値に設定されている。また、1つのMR信号を収集する時間に関しても、第1のパルスシーケンスの値(TR
0)と、第2のパルスシーケンスの値(TR
2)とは異なっている。
【0050】
第2のパルシーケンスは、トリガ信号が入力されると、このトリガ信号に同期して開始される。例えば、入力部43から撮像開始が指示されても直ぐには第2のパルスシーケンスは開始されず、撮像開始が指示後、最初のトリガ信号が冷凍機110から入力された時点で、シーケンスコントローラ34が、第2のパルシーケンスを開始する。一旦、第2のパルシーケンスが開始されると、その後のトリガ信号は無視される。そして、M枚のスライス画像を生成するためのMR信号の総て(即ち、P・M個のMR信号)が収集されるとデータ収集が終了する(
図7のステップST203)。
【0051】
このようにして収集したMR信号も静磁場変動の影響を受けている。したがって、収集したMR信号の位相も静磁場変動の影響による位相変動をもっている。この位相変動を、ステップST204、ステップST205で補正する。
【0052】
まず、ステップST204では、冷凍機110からのトリガ信号を基準とする遅延時間が略同一となるように、収集したMR信号と、補正データ保存部424に保存している補正データとを対応付ける処理を行う。この対応付け処理についてより詳しく説明する。
【0053】
データ収集開始時刻をt=0とすると、p番目の位相エンコード(1≦p≦P)のm番目のスライス(1≦m≦M)のデータ収集を開始する時刻t(p, m)は、
t(p, m)=TR1・(p−1) +TR2・(m−1) (式5)
と表せる。また、時刻t(p, m)の直前のトリガ信号から時刻t(p, m)までの遅延時間T
dTは、MOD(t(p, m), T)で表せる。ここで、MOD(A, B)は、AをBで除した剰余を意味している。この遅延時間MOD(t(p, m), T)とほぼ同じ遅延時間をもつ補正データ、即ち、(式4)で算出した磁気共鳴周波数変動Δf
0(i)の番号i(1≦i≦K)を、次式から求める。
i=INT(MOD(t(p, m), T)/TR
0) (式6)
ここで、INT(C)は、Cに最も近い整数を表わすものとしている。
そして、時刻t(p, m)における磁気共鳴周波数変動Δf(p, m)を、(式6)で求まる番号iの補正データに、以下のように対応付ける。
Δf(p, m)=Δf
0(i)=Δf
0(INT(MOD(t(p, m), T)/TR
0)) (式7)
【0054】
(式7)により、冷凍機110からのトリガ信号を基準とする遅延時間が略同一となるように、収集したMR信号と、補正データ保存部424に保存している補正データとを対応付けることができる。トリガ信号を基準とする遅延時間が同じであれば、診断画像生成用のMR信号と、補正データ生成用のMR信号とは、同じ静磁場変動に起因して、同じ共鳴周波数変動を受けていると考えることができる。したがって、(式7)は、時刻t(p, m)における磁気共鳴周波数変動Δf(p, m)が、補正データ保存部424に保存している補正データΔf
0(INT(MOD(t(p, m), T)/TR
0))と同じであると推定する式でもある。
【0055】
次に、各遅延時間における補正データΔf
0(i) (1≦i≦K)を用いて、補正データに対応付けられたMR信号の位相を補正する(ステップST205)。具体的には、次のように補正する。第2のパルシーケンスのエコー時間TE1とすると、診断画像生成用の時刻t(p, m)におけるMR信号に位相は、(式8)に示す位相変動φ(p, m)を受けていることになる。
φ(p, m)=(2π)・Δf(p, m)・TE
1 (式8)
ここで、p番目の位相エンコード、m番目のスライスに対応する補正前のMR信号をS(p, m)で表し、補正後のMR信号を、S’(p, m)で表すと、ステップST205では、以下の式によってMR信号を補正する。
S’(p, m)=S(p, m)・exp[-
jφ(p, m)] (式9)
つまり、(式9)による補正によって、冷凍機110の機械的変動によって生じたMR信号の位相変動φ(p, m)が取り除かれる。
【0056】
最後に、
図7のステップST206で、補正されたMR信号に対して2次元逆フーリエ変換等の再構成処理を行い、診断画像を生成する。上述した補正処理によって位相変動φ(p, m)が取り除かれているため、アーティファクトが抑制された診断画像を生成することができる。
【0057】
(第1の実施形態の変形例)
上述した第1の実施形態では、診断画像を取得するための撮像は、冷凍機110から入力されるトリガ信号に同期して開始される。
図8に示す例では、
図8の最も左側のトリガ信号が入力された時点で、第2のパルスシーケンスが開始されている。しかしながら、第2のパルスシーケンスは、必ずしもトリガ信号の入力と同時に開始される必要はなく、トリガ信号から予め定められた遅延時間T
D後に開始させてもよい。遅延時間T
Dが既知であれば、トリガ信号からの遅延時間MOD(t(p, m), T)を、MOD((t(p, m)+T
D), T)に置き換えることにより、トリガ信号から予め定められた遅延時間T
D後に開始させても上述した第1の実施形態は成り立つ。
【0058】
図10に示す第1の実施形態の変形例は、この考え方をさらに進めたものである。診断画像生成用の撮像では、心電同期法や呼吸同期法などのように、生体信号に同期させて撮像を開始させるものがある。例えば、
図10に示す例では、R波から検出した心電同期パルスから所定の遅延時間T
DLだけ遅延させてそれぞれのセグメントの撮像を開始している。ここでセグメントとは、位相エンコード方向を所定のセグメント数で分割した単位である。心電同期撮像法では、冷凍機110からのトリガ信号と、心電同期パルスとは、非同期である。このような撮像法においても、各心電同期パルスと、その直前のトリガ信号との間の遅延時間T
D1、T
D2、T
D3、T
D4、T
D5等を計測しておき、計測したこれらの遅延時間と、心電同期パルスからの既知の遅延時間T
DLとから、収集したMR信号とトリガ信号の時間関係を特定することができる。その結果、トリガ信号からの遅延時間が互いに同じとなる補正データと、収集したMR信号とを対応付けることが可能となる。そして、MR信号を対応付けられた補正データを用いて補正することにより、位相変動を除去することができる。
【0059】
このように、第1の実施形態の変形例では、冷凍機110のトリガ信号とは非同期な別の信号(心電同期パルスや、呼吸ゲート等)に同期させて行う撮像においても、位相変動を除去することが可能であり、アーティファクトの抑制された画像を生成することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、冷凍機110からのトリガ信号を用いて、第1のパルスシーケンス(補正データ生成用)、及び第2のパルスシーケンス(診断画像生成用)を開始するものとしていた。これに対して、第2の実施形態は、冷凍機110からのトリガ信号を用いることなく、第1のパルスシーケンスで補正データ生成用のMR信号を収集し、2のパルスシーケンスで診断画像生成用のMR信号を収集する。
【0061】
一般に、磁気共鳴イメージング装置では(本実施形態の磁気共鳴イメージング装置1を含め)、装置の電源が投入されている間、一定の周期のシステムクロックが動作しており、このシステムクロックに従ってパルスシーケンスが実行される。システムクロックと、冷凍機110からのトリガ信号は、通常非同期であるが、冷凍機110からのトリガ信号の周期、即ち冷凍機110の冷凍サイクルの周期は、システムクロックと同様に一定であり、安定した周期をもっている。
【0062】
第2の実施形態では、システムクロックの周期と、冷凍サイクルの周期がいずれも一定であるということに基づいて、システムクロックと冷凍サイクルとの時間的関係を少なくとも1回対応付ける。その上で、システムクロックに同期させて、補正データ生成用のMR信号と、診断画像生成用のMR信号とを収集する。
【0063】
図11は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の構成を示す図である。
図11では、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1が、一定のクロック周期で動作するシステムクロックを発生するクロック発生部341を具備することを明示している。クロック発生部341は、例えば、シーケンスコントローラ34に内蔵されている。システムクロックは、装置のパワーオンから動作するが、クロック発生部341は、パワーオン後、システムクロックをカウントアップし続けるシステムクロックカウンタ(図示せず)を内蔵している。
【0064】
また、第2の実施形態では、データ収集部500から冷凍機110に対して、冷凍サイクルをリセットするためのリセット信号が送信される。
【0065】
図12及び
図13は、第2の実施形態の動作を説明する図である。このうち、
図12は、補正データ生成用のMR信号収集時の動作を説明する図である。
【0066】
図12の一段目は、冷凍機110の冷凍サイクルに対応する静磁場の変動を示している。二段目の図は、システムクロックを示し、三段目は、システムクロックカウンタのカウントアップ状況を例示している。
図12の下半分の図は、補正データ生成用のMR信号収集で使用される第1のパルスシーケンスを示す図であり、第1の実施形態(
図6)と同じものである。
【0067】
装置をパワーオンすると、システムクロックが動作を開始し、同時にシステムクロックカウンタがカウントアップし始める。システムクロックカウンタが所定のカウント値になったとき、例えば、
図12の例では、カウント値「10」になったときに、データ収集部500から冷凍機110に対してリセット信号を送る。冷凍機110は、このリセット信号により、それまでの冷凍サイクルの周期をリセットし、新たな冷凍サイクルの開始タイミングを設定できるように構成されている。
【0068】
一方、データ収集部500は、冷凍機110をリセットした後、所定の遅延時間T
DA後に、システムクロックに同期して、第1のパルスシーケンスを開始し、補正データ生成用のMR信号を収集する。収集期間は、第1の実施形態と同様に、冷凍サイクルの周期T以上の期間である。
【0069】
図13は、診断画像生成用のMR信号収集時の動作を説明する図である。補正データ生成用のMR信号の収集は、毎日のシステム起動時に行うこともできるが、装置の据え付け時にのみ行うこともできる。この場合、補正データ生成用のMR信号を収集するときの装置のパワーオンと、診断画像生成用のMR信号を収集するときのパワーオンは、異なる日に行われることになる。そこで、
図13に示す例では、診断画像生成用のMR信号を収集するときには、あらためてパワーオンすることを前提としている。
【0070】
装置をパワーオンすると、システムクロックが動作を開始し、同時にシステムクロックカウンタがカウントアップし始める。システムクロックカウンタがカウント値「10」になったときに、データ収集部500から冷凍機110に対してリセット信号を送る。ここまでの動作は、補正データ生成用のMR信号の収集時と基本的に同じである。
【0071】
データ収集部500は、冷凍機110をリセットした後、所定の遅延時間T
DB後に、システムクロックに同期して、第2のパルスシーケンスを開始し、診断画像生成のMR信号を収集する。第2のパルスシーケンス自体は、第1の実施形態と同じである。
【0072】
リセットから第1のパルスシーケンスを開始するまでの遅延時間T
DAと、リセットから第2のパルスシーケンスを開始するまでの遅延時間T
DBは、双方の値が既知であれば、互いに異なっても良い。
【0073】
上述した第2の実施形態によれば、冷凍機110へのリセット動作によって、システムクロックのカウント値と冷凍サイクルの位相を曖昧さなく対応付けることができる。また、リセットからの遅延時間遅延時間T
DA及びT
DBが既知であるため、冷凍機110からのトリガ信号を用いることなく、補正データ生成用のMR信号と、診断画像生成用のMR信号とを、冷凍サイクルの位相が同じとなるように対応付けることができる。対応付け後の位相補正処理は第1の実施形態と同様に行うことができる。
【0074】
上述した第2の実施形態によれば、冷凍機110からのトリガ信号を用いることなく、冷凍機110の機械的変動に起因する位相変動を取り除くことができ、アーティファクトが抑制された診断画像を生成することができる。
【0075】
(第3の実施形態)
前述した第1及び第2の実施形態では、補正生成用のMR信号の収集を、例えば装置の据え付け時や、装置の起動時に予め行うものとしている。これに対して、第3の実施形態は、診断画像生成用のMR信号の収集期間中に挿入される所定の補正データ取得期間に、補正データ生成用のMR信号を収集する。
【0076】
図14は、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の構成例を示す図である。第3の実施形態の補正部420は、診断画像用/補正データ用MR信号保存部425と、補正データ用MR信号抽出部426を有している。これ以外の構成は、第1及び第2の実施形態と同じである。
【0077】
図15は、第3の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1で使用するパルスシーケンスの一例を示す図である。このパルスシーケンスでは、第1の実施形態(
図8参照)と同様に、位相エンコードの更新期間TR
1の中で、スライス番号1から番号MまでのM枚のスライスの診断画像生成用のMR信号を収集する一方、さらにスライス番号M+1において、補正データ生成用のMR信号をする。補正データ生成用のMR信号は、例えば、番号Mのスライスに隣接する領域から収集する。
【0078】
番号M+1で収集する補正データ生成用のMR信号は、
図15の下部に示すように、位相エンコード傾斜磁場を加えないGRE法に基づくパルスシーケンスであり、第1の実施形態(
図6参照)と同様である。番号1から番号Mまでのパルスシーケンスと、番号M+1のパルスシーケンスは異なっても良く、同じGRE法であっても異なるエコー時間を設定することができる。
【0079】
各位相エンコード番号のスライス番号M+1で収集される補正データ生成用のMR信号から、(式3)と同様にして位相変動φ
measure(p)を算出する。
φ
measure(p)=tan
-1[Img(p)/Real(p)] (式10)
ここで、pは、診断画像生成用のパルスシーケンスにおける位相エンコード番号である。位相変動φ(p)
measureを用いて、エコー時間TE
0における磁気共鳴周波数変動Δf0
measure(p)を次式で算出することができる。
Δf0
measure(p)=[φ
measure(p)/TE
0]/(2π) (式11)
この磁気共鳴周波数変動Δf0
measure(p)により、診断画像生成用の位相エンコード番号pにおけるMR信号の位相変動φ
image(p)は、
φ
image(p)=(2π)・Δf0
measure(p)・TE
3 (式12)
により算出することができる。TE
3は、診断画像生成用のMR信号収集で使用するエコー時間であり、補正データ生成用のMR信号収集で使用するエコー時間TE
0と異なっても良い。
【0080】
診断画像生成用の位相エンコード番号pにおける補正前のMR信号をS(p)とし、補正後のMR信号をS’(p)とすると、補正後のMR信号をS’(p)は、次の位相補正により算出される。
S’(p)=S(p)・exp[-
jφ
image(p)] (式13)
補正後のMR信号をS’(p)に対して、2次元逆フーリエ変換等の再構成処理を行うことにより、アーティファクトの抑制された診断画像を生成することができる。
【0081】
第3の実施形態によれば、冷凍機110からのトリガ信号を使用する必要がなく、また、冷凍機110に対するリセット処理を行う必要もない。加えて、診断画像生成用のMR信号の収集(本スキャン)の前に、補正データ生成用のMR信号を予め収集する必要もない。
【0082】
なお、上述した説明において、磁気共鳴周波数変動Δf0
measure(p)を測定するデータ収集を、1位相エンコード分のデータの収集期間TR
1において、Mスライス分のデータ収集後に1回行うことにしている。しかしながら、データ収集の順序はこれに限らず、例えば、Mスライス分のデータ収集前に行っても良いし、或いは、Mスライス分のデータ収集の途中に行っても良い。なお、いずれの場合も、1位相エンコード分のデータの収集期間TR
1の間の静磁場変動が無視できる程度に小さいものと仮定している。
【0083】
一方、磁気共鳴周波数変動Δf0
measure(p)を測定するデータ収集を、1位相エンコード分のデータの収集期間TR
1の最初と最後に2回行うなど、複数回行っても良い。その場合は、静磁場の変動速度が収集期間TR
1の間で一定である、即ち、静磁場が線形に変動すると仮定して、例えば、最初と最後に2回測定された磁気共鳴周波数変動を用いて、途中にあるMスライス分のMR信号が収集される各時刻における磁気共鳴周波数変動を線形補間によって求めることができる。この線形補間処理によって、より精度の高い位相補正が可能となる。
【0084】
以上説明してきたように、上述した各実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1によれば、補正用の磁場コイルなどの大規模なハードウェアを追加することなく、冷凍機の機械的変動に起因するアーティファクトを抑制することができる。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。