(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記断層プロファイル算出工程では、前記断層画像のうち前記粉体圧縮成形物の表面に対応する任意の一点における深さを基準として前記表面が一定になるように前記断層プロファイルを正規化することを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体圧縮成形物の評価方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように粉体圧縮成形物の被膜評価では、特許文献1のような溶出試験が一般的に用いられているが、溶出試験では溶液中に被膜が溶解するまでの期間を評価する必要があるため、比較的多くの時間を要し、製造効率の低下の一因となっている。また評価時間を抑えるためにはサンプリング個数を抑える必要があり、十分な評価精度を得ることが難しいという問題もある。
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態は上述の問題点に鑑みなされたものであり、効率的且つ精度よく評価可能な粉体圧縮成形物の評価方法及び評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態は、医療分野等における断層解析技術の一つとして近年注目を集めている光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)を利用することにより、上記課題を解決するものである。OCTは、光源光を被測定物に照射して、その反射光と参照光との干渉状態に基づいて、非測定物の表面や内部を解析する技術であり、例えば特開2013−208415号公報には、OCTを眼底検査に応用した例が開示されている。
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る粉体圧縮成形物の評価方法は上記課題を解決するために、表面に皮膜を有する粉体圧縮成形物の断層画像をOCT計測により取得するOCT計測工程と、前記断層画像に基づいて、前記粉体圧縮成形物からの反射光の深さ方向における強度分布を示す断層プロファイルを算出する断層プロファイル算出工程と、前記断層プロファイルに基づいて前記粉体圧縮成形物の溶出率を算出する溶出率算出工程とを備える。
【0009】
上記(1)の構成によれば、OCT計測によって光学的に取得した断層画像に基づいて、効率的且つ精度よく粉体圧縮成形物の溶出率を評価できる。本願発明者の鋭意研究によれば、この種の粉体圧縮成形物が有する皮膜は、圧縮された粉体間の微小な隙間に成分が入り込んだ複雑な形状を有するため、単純な膜厚計測では評価が困難であるが、後述するようにOCT計測を利用することによって、効果的な評価を行えることが見出された。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の構成において、前記断層プロファイルにおける光強度の深さに対する積分値と前記粉体圧縮成形物の溶出率との相関を予め作成する相関作成工程を更に備え、前記溶出率算出工程では、前記相関に基づいて、前記断層プロファイル算出工程で算出された断層プロファイルから求めた積分値に対応する溶出率を算出する。
【0011】
上記(2)の構成によれば、断層プロファイルにおける光強度の深さに対する積分値と粉体圧縮成形物の溶出率との相関を予め用意しておき、当該相関に基づいて評価対象となる粉体圧縮成形物から求められた積分値に対応する溶出率を算出することで、粉体圧縮成形物の評価を行う。本願発明者は、このように断層プロファイルにおける光強度の深さに対する積分値と粉体圧縮成形物の溶出率との間に所定の相関が存在することを見出し、これを利用することによって、粉体圧縮成形物の評価を効率的且つ精度よく実現した。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では上記(2)の構成において、前記相関は、前記積分値が増加するに従って、前記溶出率が減少するように規定されている。
【0013】
上記(3)の構成によれば、積分値が増加するに従って溶出率が減少するように上記方法に用いられる相関が規定されることで、実際の粉体圧縮成形物の特性に沿った相関に基づいて精度のよい評価が可能となる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では上記(1)から(3)のいずれか一構成において、前記断層プロファイル算出工程では、前記断層画像のうち前記粉体圧縮成形物の表面に対応する任意の一点における深さを基準として前記表面が一定になるように前記断層プロファイルを正規化する。
【0015】
上記(4)の構成によれば、粉体圧縮成形物の表面が曲率を有する場合には、断層画像のうち粉体圧縮成形物の表面に対応する任意の一点における深さを基準として表面が一定になるように前記断層プロファイルを正規化することにより、評価精度を向上することができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では上記(1)から(4)のいずれか一構成において、前記OCT計測工程では、前記粉体圧縮成形物についてOCT計測を複数回実施することにより複数の前記断層画像を取得し、前記溶出率算出工程では、前記複数の断層画像の各々について求めた溶出率を平均化する。
【0017】
上記(5)の構成によれば、評価対象である粉体圧縮成形物についてOCT計測を複数回実施して、その結果を平均化することにより、評価精度を向上できる。上述したように、本発明の少なくとも一実施形態は従来に比べて短時間で評価可能であるため、複数回の測定を伴う評価であっても効率的に実施可能である。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では上記(1)から(5)のいずれか一構成において、前記OCT計測工程では、前記粉体圧縮成形物に前記皮膜を形成する過程において、時系列的に複数回のOCT計測を実施する。
【0019】
上記(6)の構成によれば、粉体圧縮成形物に皮膜を形成する過程において、時系列的に複数回のOCT計測を実施することにより皮膜の形成状態をモニタリングし、皮膜の形成過程が適切に行われているか否かを評価することができる。上述したように、本発明の少なくとも一実施形態は従来に比べて短時間で評価可能であるため、複数回の測定を伴う評価であっても効率的に実施可能である。
【0020】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る粉体圧縮成形体の評価法装置は上記課題を解決するために、表面に皮膜を有する粉体圧縮成形物の断層画像をOCT計測により取得するOCT計測装置と、前記断層画像に基づいて、前記粉体圧縮成形物からの反射光の深さ方向における強度分布を示す断層プロファイルを算出する断層プロファイル算出部と、前記断層プロファイルに基づいて前記粉体圧縮成形物の溶出率を算出する溶出率算出部とを備える。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、前記断層プロファイルにおける光強度の深さに対する積分値と前記粉体圧縮成形物の溶出率との相関を予め記憶する記憶部を更に備え、前記溶出率算出部は、前記相関に基づいて、前記断層プロファイル算出工程で算出された断層プロファイルから求めた積分値に対応する溶出率を算出する。
【0022】
上記(7)及び(8)の構成によれば、上述の粉体圧縮成形物の評価方法(上記各種態様を含む)を好適に実施可能である。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では上記(7)又は(8)の構成において、前記粉体圧縮成形物を設置可能な受け部を複数有し、その各々が搬送路に沿って自動的に搬送可能に構成された搬送機構を更に備える。
【0024】
上記(9)の構成によれば、評価対象である粉体圧縮成形物が多数に及ぶ場合であっても、効率的且つ迅速に評価を行うことができる。例えば、従来の評価方法では、評価実施に多大な時間を要するため評価対象数を多くすることが困難であったが、本実施形態では、このような多数の評価対象を取り扱うことができ、その結果として、統計的に評価精度も向上できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、効率的且つ精度よく評価可能な粉体圧縮成形物の評価方法及び評価装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0028】
(粉体圧縮成形物)
まず本発明の少なくとも一実施形態に係る評価装置の評価対象である粉体圧縮成形物100について、
図1を参照して説明する。
図1は本発明の少なくとも一実施形態に係る評価装置の評価対象である粉体圧縮成形物100の外観を概略的に示す模式図である。
【0029】
粉体圧縮成形物100は粉状材料を圧縮することにより成形された固形物である。
図1には、この種の粉体圧縮成形物100の一例として、有効成分又は有効成分に賦形剤等を加えた粉状材料を圧縮することにより成形された固形の製剤、いわゆる錠剤が示されている。この粉体圧縮成形物100は上下方向に延在する中心軸101に対して上下面102及び103がそれぞれ略球面状に曲率を有しており、上下面102及び103は中心軸101を中心とする円柱形状を有する側面104を介して一体的に形成されている。
尚、
図1に示される粉体圧縮成形物100は一例に過ぎず、その形状、重量、色彩、用途(例えば内服用、口服用、外用)を問わない。
【0030】
粉体圧縮成形物100は、素錠に所定の被膜が施されている。被膜は素錠に比べて薄いため
図1では図示を略しており、粉体圧縮成形物100の安定化、矯味、矯臭等の目的で素錠の表面に均一に形成されている。具体的には粉体圧縮成形物100は例えば白糖によってコーティングされた糖衣錠、水溶性高分子によってコーティングされたフィルムコーティング錠、酸性では不溶性のコーティング剤によって皮膜された腸溶錠をはじめ、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、持続性錠、ワックスマトリックス錠、グラデュメット錠、多孔性皮膜錠、多層錠、有核錠、スペイスタブ、レジネートであってもよい。
【0031】
(OCT計測装置の原理)
続いて
図2乃至
図5を参照して、上述の粉体圧縮成形物100の評価装置に用いられるOCT計測の原理について説明する。
図2は本発明の少なくとも一実施形態に係る評価装置が備えるOCT計測装置10の構成を概略的に示す模式図であり、
図3は
図2のOCT計測装置10による断層画像の取得方法を工程毎に示すフローチャートであり、
図4は
図2のOCT計測装置10によって取得された断層画像の一例であり、
図5は
図2のOCT計測装置10の具体的構成例を示す模式図である。
【0032】
尚、以下の説明ではSD−OCT(スペクトルドメイン型OCT)を採用したOCT計測装置10について例示するが、特段の記載がない限りにおいて、TD−OCT(タイムドメイン型OCT)、FF−OCT(エリアOCT)、SS−OCT(スウェプトソ−ス型OCT)などの他の方式のOCT計測についても同様に本発明を適用可能である。
【0033】
まず光源1から所定波長λを有する光(光源光)が発せられる(ステップS11)。ここで、所定波長λは波長λ
0を含む所定波長範囲を有するか、時間的に波長走査している。すなわち、光源1は例えば予め波長に広がりを有するSLDやLED等であり、時間的に中心波長を変化させるスウェプトソース光源である。光源1からの光源光は、ハーフミラー2によって、照射光3と参照光4とに分波される。照射光3は対物レンズ5を介して、解析対象である塗装膜9に照射され、塗装膜9からの反射光が対物レンズ5で集光される。一方、参照光4は所定のリファレンス距離Lrを有するリファレンスミラー6との間を往復してハーフミラー2に戻った後、塗装膜9からの反射光と重ね合わせられることにより干渉光7となる。
【0034】
干渉光7は光検知器8によって検知され、電気信号に変換される(ステップS12)。光検知部8の検知結果は、コンピュータなどの演算器に取り込まれ、以下の処理が行われる。まず、照射光3(反射光)の光路長Lsと参照光4の光路長2Lrとの光路長差
d=2・|Lr−Ls| (1)
を用いて、検知された干渉波7は波長軸(λ)上において、次式
A(λ)=I・cos(2π・d/λ) (2)
で表わされる(ステップS13)。
【0035】
続いて、A(λ)の変数を波数(S=1/λ)に変換し(ステップS14)、フーリエ逆変換を行う(ステップS15)。これにより、光学的距離に基づいた断層構造に関する情報が得られ(ステップS16)、断層画像として出力される(ステップS17)。
【0036】
図4では、粉体圧縮成形物100の中心軸101をZ方向とし、該Z軸に垂直なXY平面とする三次元空間における断層画像が示されている。この断層画像では、粉体圧縮成形物100からの反射光の光強度Iについて分布状態が示されている。
図4(a)はXY平面における光強度分布を示しており、略円形状の粉体圧縮成形物100の輪郭に対応する形状が示されている。
図4(b)及び
図4(c)はYZ平面及びXZ平面における光強度分布をそれぞれ示している。
【0037】
図4(b)及び
図4(c)によれば、光強度が粉体圧縮成形物100の表面上だけでなく、深さ(Z)方向に沿っても分布していることが示されている。すなわち、粉体圧縮成形物100の表面近傍は、表面による反射光が最も強いことに対応して光強度Iが大きくなっているが、一方で表面から離れたある程度の深さZに至るまで光強度Iが分布していることが示されている。この結果は、錠剤のような粉体圧縮成形物100では、粉状の粒子が圧縮形成されていることから、粒子間に隙間が多く、コーティング成分が当該隙間に入り込むように分布していることを示している。このように粉体圧縮成形物100では、被膜が単純な層状ではなく複雑な分布を有しているため従来の評価では、精度のよい評価が困難であったが、この問題点は本実施形態によって良好に解決することができる。
【0038】
ここで上述したOCT計測装置10の具体的構成例が
図5に示されている。このOCT計測装置10は、光源ユニット12、リファレンスユニット14、測定プローブ16、スペクトロメータ18、及び、演算装置50を備える。光源ユニット12は
図2における光源1を収容しており、リファレンスユニット14、測定プローブ16及びスペクトロメータ18と、ハーフミラー2として機能する光カプラ22を介して分岐された光ファイバケーブル24a、24b、24c及び24dで互いに接続されている。これにより、光源ユニット22内に収納された光源1から発せられた光源光は、光カプラ22及び光ファイバ24によって
図2に示す光路に倣って照射光3と参照光4とに分光され、リファレンスユニット14及び測定プローブ16にそれぞれ入力され、得られた反射光及び参照光を重ね合わせた干渉光7がスペクトロメータ18で観測されるようになっている。
【0039】
光カプラ22によって分光された参照光4は、リファレンスユニット26に入力され、対物レンズ11を介して該対物レンズ15から所定距離Lr離れたリファレンスミラー6に入射する。ここでリファレンスミラー6は可動に構成されており、対物レンズとの間隔(所定距離Lr)が
図5に示す矢印方向に沿って調整可能になっている。本実施形態では特に、リファレンスユニット14は測定プローブ16と別ユニットとして独立に構成されることで、測定プローブ16の設計自由度が向上するようになっている。
【0040】
一方、分光された照射光3は測定プローブ16に入力される。測定プローブ16は光ファイバケーブル24cから入力された光を筐体16aの内壁に設置された反射ミラー16bによって光路を変えた後、集光用の対物レンズ5を介して、解析対象である塗装膜9に照射する。そして塗装膜9からの反射光は対物レンズ5によって集光された後、再び反射ミラー16bで反射されることにより、光ファイバケーブル24cに入力される。
【0041】
(評価方法)
続いて
図6A乃至
図7を参照して、OCT計測装置10によって取得した断層画像に基づいて、粉体圧縮成形物100を評価する方法について説明する。
図6Aは
図4の断層画像をX方向に沿って積算することにより形成した積算プロファイルの一例であり、
図6Bは
図6Aの積算プロファイルに基づいてZ方向に対する光強度Iの分布を示すグラフであり、
図7は異なる溶出率を有する粉体圧縮成形物100における光強度分布を示すグラフであり、
図8は
図6Bの光強度Iの分布から求めたプロファイル面積と粉体圧縮成形物100の溶出率との関係を示す相関データである。
【0042】
本願発明者の鋭意研究によれば、上述の断層画像に基づいて求められるプロファイル面積は、粉体圧縮成形物100の溶出率と密接な相関を有することが見出された。プロファイル面積は、断層画像を所定方向に沿って積算することで二次元の積算プロファイルを求め(
図6Aを参照)、当該積算プロファイルに基づいてZ方向に対する光強度Iの分布を求め(
図6Bを参照)、当該光強度分布のプロファイル面積(
図6Bの斜線ハッチングを参照)として求められる。
【0043】
このように算出されるプロファイル面積は、
図7に示されるように、粉体圧縮成形物100の溶出率と密接な相関を有する。
図7は、異なるロットで製造された様々な溶出率を有する粉体圧縮成形物100について積算プロファイルに基づいて求められたプロファイル面積を示している。本実施形態では、粉体圧縮成形物100は被膜を形成する際にドラム式噴霧コーティング法が採用されており、コーティングの実施時間が互いに異なるロット1乃至4について測定した積算プロファイルが示されている。特に、各ロットに対応する積算プロファイルは、それぞれ各ロットから10個の粉体圧縮成形物をサンプリングしたものに基づいて得た積算プロファイルを平均化して示している。
【0044】
図7のロット1乃至ロット4では、次第にコーティングの実施時間を多く設定したロットが示されており、これに伴って、Zが大きい領域における光強度Iが大きくなることが表されている。これは、コーティングの実施時間が多くなるに従ってコーティング量が増えるため、当該コーティングに起因して比較的深い領域からの反射光の強度が増加していることを意味している。
【0045】
各ロットの粉体圧縮成形物100は互いに異なる溶出率を有しており、溶出率とプロファイル面積とをプロットすると
図8に示す相関が得られる。
図8には、異なる試験条件下において相関を求めた例が2つ示されているが、いずれも溶出率が増加するに従ってプロファイル面積が減少する傾向が認められた。このようなプロファイル面積と溶出率との相関は、電子データとしてメモリ等の記憶装置に記憶されることにより、後述する評価実施に利用される。
【0046】
続いて
図9及び
図10を参照して、本発明の少なくとも一実施形態に係る評価装置及び該評価装置によって実施される評価方法の具体的内容について説明する。
図9は本発明の少なくとも一実施形態に係る評価装置の全体構成を示す模式図であり、
図10は
図9の評価装置によって実施される評価方法を工程毎に示すフローチャートである。
【0047】
評価装置は、表面に皮膜を有する粉体圧縮成形物の断層画像をOCT計測により取得するOCT計測装置10と、当該OCT計測装置10から測定結果を取得して解析を行うことで評価する演算装置110とを備える。演算装置110は例えばコンピュータのような電子演算装置であって、具体的には、断層プロファイルにおける光強度の深さに対する積分値と前記粉体圧縮成形物の溶出率との相関データ114を予め記憶する記憶部112と、前記断層画像に基づいて、前記粉体圧縮成形物からの反射光の深さ方向における強度分布を示す断層プロファイルを算出する断層プロファイル算出部116と、前記断層プロファイルに基づいて前記粉体圧縮成形物の溶出率を算出する溶出率算出部118とを備える。
【0048】
まずオペレータは互いに異なる溶出率を有する複数の粉体圧縮成形物100をサンプルとして用意し、これらの粉体圧縮成形物100について
図2乃至
図8を参照して説明した上記方法によって溶出率とプロファイル面積との相関データ114(
図8を参照)を求める(S21:相関データ作成工程)。このように求められた相関データ114は電子データとしてメモリ等の記憶装置に記憶され、適宜読み出し可能に用意される。
尚、溶出率が既知でない粉体圧縮成形物100をサンプルとして用いる場合には、公知の溶出試験によって溶出率を計測することとし、本願では詳細な説明は省略することとする。
【0049】
続いてオペレータは評価対象となる粉体圧縮成形物100を用意し、OCT計測により断層画像(
図4を参照)を取得する(S22:OCT計測工程)。ここで評価対象となる粉体圧縮成形物100は溶出率が未知のものであり、後述する各工程を経ることで、溶出率が求められることによって評価が行われる。
【0050】
続いてステップS22で取得された断層画像に基づいて、断層プロファイル(
図6Aを参照)を算出し、当該断層プロファイルに基づいて深さ方向(Z方向)における光強度分布(
図6Bを参照)を求める(S23:断層プロファイル算出工程)。
【0051】
尚、実際の粉体圧縮成形物100が
図1に示されるように表面に曲率を有する場合には、以下のように正規化処理を行うとよい。この場合、積算プロファイルは
図11に示されるように、Z方向における表面座標が一定ではない。ここで表面の任意の一点(本実施例では最もZ座標が大きな点Z0)を基準に光強度分布を正規化処理することにより、
図6AのようにZ方向における表面座標が一定になるように座標変換するとよい。その上で、
図6Bに示す光強度分布を算出することで、このような形状を有する粉体圧縮成形物100においても精度のよい評価が可能となる。
【0052】
続いてステップS23で求めた光強度分布に基づいてプロファイル面積を算出し(S24:積分パラメータ)、ステップS21で用意した相関データ114に照らし合わせることにより、対応する溶出率を求めて評価を行う(S25:評価工程)。
【0053】
このように本実施形態に係る評価方法によれば、粉体圧縮成形物100の溶出率に基づいてコーティング状態を精度よく評価することができる。
【0054】
尚、上述した粉体圧縮成形物100の評価方法を実施する際には、以下に示す評価装置を用いてもよい。
図12は本発明の少なくとも一実施形態に係る評価装置が備える搬送機構200を示す模式図であり、
図13は
図12の搬送機構200が備える受け部202を抽出して示す模式図であり、
図14は
図13の受け部202に粉体圧縮成形物100を設置した状態を示す模式図である。
【0055】
図12に示されるように、評価対象である複数の粉体圧縮成形物100について上記評価を実施する場合、各粉体圧縮成形物100を設置可能な受け部202を複数有し、各受け部202が搬送路に沿って自動的に搬送可能に構成された搬送機構200を用いるとよい。
図13に示されるように搬送機構200が備える受け部202は、粉体圧縮成形物100に適合する形状を有することにより、該受け部202上に投入された粉体圧縮成形物100の姿勢が安定するように構成されている。特に、受け部202は、
図14に示されるように、支持された粉体圧縮成形物100に対して、OCT計測装置10からの測定光が略垂直に照射されるように構成されている。これにより、上記評価結果が精度よく得られる。
【0056】
また搬送機構200は、このような受け部202を複数備える。これにより、評価対象である粉体圧縮成形物100が多数に及ぶ場合であっても、効率的且つ迅速に評価を行うことができる。例えば、従来の評価方法では、評価実施に多大な時間を要するため評価対象数を多くすることが困難であったが、本実施形態では、このような多数の評価対象を取り扱うことができる。その結果として、統計的に評価精度を向上できる。
【0057】
更に好ましくは、受け部202は、ヒンジ機構によって回動可能に構成されることにより、受け部202に投入された粉体圧縮成形物100を排出経路に自動的に排出することができる。これにより、評価実施時におけるオペレータの作業負担が軽減されるため、より多くの対象物に対して効率的に評価を実施することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、効率的且つ精度よく評価可能な粉体圧縮成形物の評価方法及び評価装置を提供できる。