(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571442
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】交流入力直流出力型電源およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/04 20060101AFI20190826BHJP
H03K 12/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
H02M7/04 E
H03K12/00
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-157120(P2015-157120)
(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公開番号】特開2017-38446(P2017-38446A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】片桐 慶彦
【審査官】
東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】
特開平8−62356(JP,A)
【文献】
特開昭53−129685(JP,A)
【文献】
実開平1−72737(JP,U)
【文献】
特開昭58−210425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00−7/40
H03K 12/00
H03L 7/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された交流電圧を入力電圧よりも高い周波数の第2の交流電圧に変換する周波数変換手段と、
前記第2の交流電圧をトランスの1次側に入力して前記トランスの2次側に2次電圧を生成し、前記2次電圧を第1の2次交流電圧と第2の2次交流電圧とに分岐して出力する電圧変換手段と、
前記第1の2次交流電圧を入力し所定の直流電圧を出力する直流電圧生成手段と、
前記第2の2次交流電圧を入力し矩形波電圧信号を出力する波形整形手段と、
前記矩形波電圧信号の周波数を所定の周波数に調整してクロック信号を出力する周波数調整手段と、
を有することを特徴とする交流入力直流出力型電源。
【請求項2】
交流電圧をトランスの1次側に入力してトランスの2次側に2次電圧を生成し、前記2次電圧を第1の2次交流電圧と複数の第2の2次交流電圧とに分岐して出力する電圧変換手段と、
前記第1の2次交流電圧を入力し所定の直流電圧を出力する直流電圧生成手段と、
前記複数の第2の2次交流電圧のそれぞれを入力しそれぞれの矩形波の電圧信号を出力する複数の波形整形手段と、
前記それぞれの矩形波の電圧信号の周波数を所定の周波数に調整してクロック信号を出力する複数の周波数調整手段と、
を有することを特徴とする交流入力直流出力型電源。
【請求項3】
前記周波数調整手段が、クロック信号の周波数を外部から設定する周波数設定手段を有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の交流入力直流出力型電源。
【請求項4】
前記周波数調整手段が、可変分周器を備えたPLL分周回路を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の交流入力直流出力型電源。
【請求項5】
前記可変分周器が、
入力パルスのパルス数をカウントするカウンタと、
前記カウントが所定値に達したときに一致信号を出力する一致回路と、
前記所定値を設定する所定カウント値設定手段と、
前記一致信号が入力されたときに出力を反転させるフリップフロップと、
を有することを特徴とする請求項4に記載の交流入力直流出力型電源。
【請求項6】
前記所定カウント値設定手段が、
前記所定値を手動で設定するスイッチ群であることを特徴とする請求項5に記載の交流入力直流出力型電源。
【請求項7】
前記所定カウント値設定手段が、
前記所定値を保持するレジスタである
ことを特徴とする請求項5に記載の交流入力直流出力型電源。
【請求項8】
入力された交流電圧を入力電圧よりも高い周波数の第2の交流電圧に変換し、
前記第2の交流電圧をトランスの1次側に入力して前記トランスの2次側に2次電圧を生成し
前記2次電圧を第1の2次交流電圧と第2の2次交流電圧とに分岐して出力し、
前記第1の2次交流電圧を入力して所定電圧の直流電圧を出力し、
前記第2の2次交流電圧の波形を整形して矩形波の電圧信号を生成し、
前記矩形波の電圧信号を入力して周波数を所定の周波数に調整してクロック信号を出力する、
ことを特徴とする交流入力直流出力型電源の制御方法。
【請求項9】
交流電圧をトランスの1次側に入力してトランスの2次側に2次電圧を生成し、
前記2次電圧を第1の2次交流電圧と複数の第2の2次交流電圧とに分岐して出力し、
前記第1の2次交流電圧を入力して所定の直流電圧を出力し、
前記複数の第2の2次交流電圧のそれぞれを入力しそれぞれの矩形波の電圧信号を出力し、
前記それぞれの矩形波の電圧信号の周波数を所定の周波数に調整してクロック信号を出力する
ことを特徴とする交流入力直流出力型電源の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流入力直流出力型電源およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商用電源を入力とした、交流入力直流出力型の電源が、広く利用されている。このような電源では、種々の観点から日々改良が試みられている。例えば特許文献1には、高効率化、低消費電力化を行う技術が開示されている。特許文献2には、電解コンデンサの破損を防止する技術が開示されている。特許文献3には、出力電圧の精度を向上する技術が開示されている。特許文献4には、ノイズを低減する技術が開示されている。
【0003】
上記のような電源を利用する電気・電子機器の多くは、クロック信号を利用して動作する。クロック信号の基準振動発生手段は、多くの場合、水晶振動子やセラミック振動子などが用いられているが、これらの精度はそれほど高くない。そこで、高い周波数精度を有する商用電源周波数を利用する方法が提案されている。商用交流電源の周波数偏差は、長期的に約0.167ppmであり、一般的に使用される水晶振動子に比べて30倍以上の精度を有している。例えば、特許文献5には、商用電源の周波数を用いて、計時カウンタを補正する時計装置の技術が開示されている。また、特許文献6には、PLL(Phase Locked Loop)回路を用いて商用周波数の整数倍のパルスを発生するパルス発生装置の技術が開示されている。
【0004】
上記の交流入力直流出力型電源とクロック発生装置を用いて、電気・電子機器に直流電圧とクロック信号とを供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−139024号公報
【特許文献2】特開2013−138608号公報
【特許文献3】特開2014−138523号公報
【特許文献4】特開2014−204544号公報
【特許文献5】特開2012−88202号公報
【特許文献6】実開平1−72737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1−4の交流入力直流出力型電源と特許文献5−6のクロック発生装置とを用いる方法では、電源とクロック発生装置とを別々に用意しなければならないという問題があった。別々に用意することで、小型化および低価格化が困難であった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、小型、低コストで直流電圧と高精度のクロック信号とを供給できる交流入力直流出力型電源を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の交流入力直流出力型電源は、交流電圧を入力して2次電圧を生成し前記2次電圧を第1の2次交流電圧と第2の2次交流電圧とに分岐して出力する電圧変換手段と、前記第1の2次交流電圧を入力し所定の直流電圧を出力する直流電圧生成手段と、前記第2の交流電圧を入力し矩形波電圧信号を出力する波形整形手段と、前記矩形波電圧信号の周波数を所定の周波数に調整してクロック信号を出力する周波数調整手段と、を有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果は、小型、低コストで直流電圧と高精度のクロック信号とを供給できる交流入力直流出力型電源を提供できることである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の交流入力直流出力型電源を示すブロック図である。交流入力直流出力型電源1000は、電圧変換手段100と、直流電圧生成手段200と、波形整形手段300と、周波数調整手段400と、を有している。
【0013】
電圧変換手段100は交流電圧1の入力を受けて、2次交流電圧に変換する。そしてその2次電圧を第1の2次交流電圧2と第2の2次交流電圧3に分岐して出力する。
【0014】
直流電圧生成手段200は、第1の2次交流電圧2を入力されて、所定の直流電圧4を出力する。
【0015】
波形整形手段300は、第2の2次交流電圧3の入力を受けて矩形波電圧信号5を出力する。
【0016】
周波数調整手段400は、矩形波電圧信号5の入力を受けて、周波数を所定値に調整し、クロック信号6を出力する。
【0017】
以上説明したように、本実施形態によれば、1つ交流電源から、直流電圧と、クロック信号を同時に出力する交流入力直流出力型電源を構成することができる。
【0018】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態を示すブロック図である。本実施形態では、交流入力直流出力型電源1000の具体的な構成の一例について説明する。交流入力直流出力型電源1000は、電圧変換手段としてトランス100aを有し、波形整形手段300としてコンパレータ300aを有している。また、この例では、商用交流電圧1aを入力としている。
【0019】
次に動作について説明する。トランス100aは、商用交流電圧1aを所定の2次電圧に変換し、第1の2次交流電圧2と、第2の2次交流電圧3とを出力する。直流電圧生成手段200は、第1の2次交流電圧から所定の直流電圧4を生成し出力する。直流電圧生成には各種の周知技術を用いることができる。
【0020】
コンパレータ300aは、第2の2次交流電圧の入力を受けて矩形波の電圧信号を出力する。例えば、入力電圧が閾値以上なら論理値1を、閾値未満なら理論値0を出力するように動作する。この動作により、正弦波等で入力された第2の2次交流電圧3から、矩形波電圧信号5を生成し出力する。周波数調整手段400は、矩形波電圧信号5の周波数を所定の値に調整し、クロック信号6を生成し出力する。周波数調整方法の詳細については後述する。
【0021】
以上説明したように、本実施形態によれば、簡易な構成で、1つ交流電源から、直流電圧と、クロック信号とを同時に出力する交流入力直流出力型電源を提供することができる。
【0022】
(第3の実施形態)
図3は周波数調整手段400の具体的な構成を示すブロック図である。周波数調整手段400は、位相周波数比較器410と、ループフィルタ420と、電圧制御発信器430と、可変分周器440と、を有している。この構成は、PLL(Phase Locked Loop)周波数シンセサイザと呼ばれるものである。また可変分周器440には分周比設定手段450が接続し、外部から可変分周器440の分周比を設定できるようになっている。周波数調整手段400は、周波数fiの基準信号から、分周比設定手段450で設定した分周比に応じた周波数foの出力パルス信号を出力する。
【0023】
位相周波数比較器410は、入力された2つのパルス信号の位相比較を行い、位相差に比例した電圧の誤差パルス信号を出力する。
【0024】
ループフィルタ420は、誤差パルス信号を平均化し直流信号にして出力する。
【0025】
電圧制御発信器430は、入力電圧に対して直線的に出力周波数が変化する領域を持った発振器である。ループフィルタが出力する直流信号を入力として、それに応じて周波数を調整したパルス信号を出力する。
【0026】
可変分周器440は、電圧制御発信器430から入力された周波数foの信号を周波数fo/Nにして出力する。
【0027】
次に動作について説明する。ここで、可変分周器440に分周比N(Nは整数)を設定しているとする。
【0028】
位相周波数比較器410に周波数fiの基準信号と周波数fo/Nの信号が入力される。位相周波数比較器410は、2つの信号の位相差に比例した電圧の誤差パルス信号を出力する。誤差パルス信号はループフィルタ420によって直流信号に変換され電圧制御発信器430に入力される。電圧制御発信器430は、fi>fo/Nであればfoが大きくなるように、fi<fo/Nであればfoが小さくなるように周波数を調整する。こうしてfi=fo/Nの状態を保つように周波数を調整する。その結果、fo=N*fiが出力信号の周波数となる。すなわち周波数調整手段400は、入力信号のN倍の周波数の信号を出力する。
【0029】
上述の分周比Nは、分周比設定手段450によって、外部から設定できる。このため、本実施形態によれば、出力するクロック周波数を所望の値に設定することができる。なお日本国内で商用電源を元電源とする場合には、周波数が50Hzと60Hzの場合があるが、分周比はそれを考慮して設定すればよい。
【0030】
(第4の実施形態)
本実施形態では、可変分周器440と分周比設定手段450の具体的な構成例について説明する。可変分周器440はカウンタ441と、一致回路442と、フリップフロップ443と、を有する。また分周比設定手段として、分周比設定スイッチ450aを有する。
【0031】
カウンタ441は入力されたパルス(ここでは周波数fo)をカウントする。ここでは、2進法でカウントし、各桁(
図4では4桁)が0(=Low)または1(=High)のカウント値CNTを出力するものとする。
【0032】
分周比設定スイッチ450aは各桁のスイッチに0(=Low)または1(=High)の値を設定する。
【0033】
一致回路442は、分周比設定スイッチ450aの設定値とカウント値CNTが一致したときに一致信号EQを出力する。
【0034】
EQ信号はフリップフロップ443に入力され、フリップフロップ443は、EQ信号が入力される毎に出力を反転する。また、EQ信号はカウンタ441にも入力され、カウンタ441はEQ信号が入力される毎に、カウント値をリセットする。
【0035】
以上のような構成とすると、入力パルスのカウント数が、設定スイッチで設定した値になる毎にフリップフロップ443の出力が反転する。このため、出力パルスの周期は入力パルスの周期×設定カウント数×2(=Nとする)になる。すなわち周波数が1/Nに分周される。以上のようにして、可変分周器に所望の分周比を設定することができる。なお、スイッチの実装形態は任意であるが、シンプルな形としては、例えば桁ごとに1、0を選択するディップスイッチとすることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、外部から簡単に分周比を設定できる。すなわち、簡単な操作で所望の周波数のクロック信号を電源から出力することができる。
【0037】
(第5の実施形態)
図5は第5の実施形態を示すブロック図である。本実施形態は、第4の実施形態の分周比設定スイッチ450aを、レジスタ450bに置き換えた構成となっている。レジスタ450bは、所望の分周比を得るための設定値を保持する。レジスタ450bの設定値は、例えば外部から入力する分周比制御信号7で設定することができる。可変分周器440の動作は、第4の実施形態と同様である。
【0038】
(第6の実施形態)
図6は、第6の実施形態を示すブロック図である。本実施形態の交流入力直流出力型電源1000は、第1の実施の形態の構成に加えて、電圧変換手段100の入力側に、周波数変換手段500を有している。周波数変換手段500は交流電圧1の周波数を異なる周波数に変換して、変換交流電圧1aを出力する。なお周波数変換手段500が変換する周波数の倍率は、可変としておくこともできる。変換交流電圧1aから直流電圧4と、クロック信号6とを出力する動作は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0039】
このように、元の電源の周波数を変換する一つのメリットは、出力するクロック信号6の周波数範囲を用途に合わせて変更できることである。例えば、周波数調整手段400の調整範囲を超えた高周波クロックがほしい場合には、元の周波数を高くしておくことによって、当該周波数を得ることが可能になる。
【0040】
変換交流電圧1aの周波数を高くする場合には、電圧変換手段100を小型化できるというメリットもある。電圧変換手段100に電磁誘導を利用したトランスを用いる場合、原理的に周波数が高いほどトランスは小さくできるからである。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、交流入力直流出力型電源から出力するクロック周波数の調整範囲を広くしたり、装置全体を小型化したりすることができる。
【0042】
(第7の実施形態)
図7は、第7の実施形態を示すブロック図である。本実施形態の交流入力直流出力型電源1000は、複数のクロック信号を出力することができる。そのために、第6の実施形態の構成に加えて、波形整形手段300の後段に、複数の周波数調整手段(400_1、400_2、・・・400_m)を有している。図中で、各周波数調整手段400に向かう点線矢印は、手動や制御信号による周波数の設定を表している。周波数調整手段400_1、400_2、・・・400_mの出力する周波数は、互いに独立に設定され、クロック信号6_1(CLK1)、6_2(CLK2)、・・・、6_m(CLKm)、を出力する。このような構成とすることにより、複数のクロック信号を同時に出力することができる。一般的に、電気、電子機器で用いられるクロックの周波数は、複数であることが多く、本実施形態はそのような場合に、好適である。
【0043】
なお、ここでは直流電圧4を1系統としているが、直流電圧を4の出力が複数ある構成としても良い、また、周波数変換手段500を用いない構成とすることもできる。
【0044】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 交流電圧
2 第1の2次交流電圧
3 第2の2次交流電圧
4 直流電圧
5 矩形波電圧信号
6 クロック信号
7 分周比制御信号
100 電圧変換手段
200 直流電圧生成手段
300 波形整形手段
400 周波数調整手段
410 位相周波数比較器
420 ループフィルタ
430 電圧制御発信器
440 可変分周器
450 分周比設定手段
500 周波数変換手段