(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
[第1の実施の形態]
{化粧材100の構成}
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る化粧材100の側面部分断面図である。
図1に示す化粧材100は、例えば、建物の内装(壁材、天井材、床材など)として用いられる。化粧材100は、基材シート10と、印刷シート20と、下層シート30と、上層シート40とを備える。
【0017】
化粧材100は、壁、天井、床など様々な場所に設置されるため、その設置状態によって上下方向が異なるが、以下の説明においては、
図1に示すように基材シート10が配置される側を下側、上層シート40が配置される側を上側として説明する。
【0018】
基材シート10、印刷シート20、下層シート30、及び上層シート40は、シート状の部材であり、化粧材100の全面にわたって配置される。
【0019】
印刷シート20は、基材シート10の上に積層される。下層シート30は、印刷シート20の上に積層される。上層シート40は、下層シート30の上に積層される。
【0020】
上層シート40の下面には、凹凸面が形成されている。上層シート40の下面は、領域40A〜40Cを有する。領域40Aは、
図1の左方に位置し、領域40Bは、
図1の右方に位置する。領域40A及び40Bには、それぞれ凹凸面が形成されている。領域40Cは、平坦な領域であり、領域40Aと40Bとの間に存在する。領域40Aにおける凹凸のパターンが、領域40Bにおける凹凸のパターンと異なる。具体的には、領域40Aにおける凸部の間隔は、領域40Bの凸部の間隔よりも大きい。凸部とは、領域40A及び40Bにおいて下側に突出した部分である。
【0021】
下層シート30の上面は、上層シート40の下面に接触している。このため、下層シート30の上面には、上層シート40の下面に形成された凹凸の形状に対応する凹凸が形成されている。下層シート30の下面には、凹凸面が形成されている。本実施の形態においては、下層シート30の下面に形成されている凹凸のパターンは、下層シート30の下面全体にわたって一様である。下層シート30の下面に形成されている凹凸パターンは、異なる複数のパターンを含んでいてもよい。
【0022】
下層シート30の下面は、印刷シート20の上面と接触している。従って、印刷シート20の上面には、下層シート30の下面の凹凸の形状に対応する凹凸が形成されている。印刷シート20の下面は、基材シート10の上面と接触している。
【0023】
このように、化粧材100の2つの境界面P1及び境界面P2には凹凸面が形成されている。具体的には、
図1に示すように、境界面P1は、印刷シート20と下層シート30との境界面である。境界面P2は、上層シート40と下層シート30との境界面である。このように、基材シート10の下面を基準にして、高さの異なる2つの位置に、凹凸面を有する境界面P1,P2が存在する。
【0024】
図2は、
図1に示す化粧材100を構成する各シートが積層される前の状態を示す側面部分断面図である。以下、
図2を参照しながら、基材シート10、印刷シート20、下層シート30および上層シート40の構成について説明する。
【0025】
{基材シート10}
基材シート10は、化粧材100の強度や寸法安定性を高めるためのバッキング材である。基材シート10は、化粧材100が取り付けられる内装の下地に対する密着性を向上させる。
【0026】
基材シート10は、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂により形成される。複数種類の熱可塑性樹脂を積層することにより、基材シート10を形成してもよい。また、熱可塑性樹脂の層の上に補強層を積層し、熱可塑性樹脂層と補強層とから基材シート10を構成してもよい。補強層は、例えば、不織布、織布などにより形成される。不織布、織布の素材として、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ガラスなどが好適に用いられる。
【0027】
化粧材100が床材として用いられる場合、化粧材100の上に様々な物が載せられるため、化粧材100は、ある程度の強度を有していることが望ましい。このため、化粧材100が床材である場合、基材シート10の厚さは、好ましくは、0.1mm以上10.0mm以下である。さらに好ましくは、基材シート10の厚さは、1.0mm以上5.0mm以下である。基材シート10は、薄すぎると強度が不足し、厚すぎると加工性が低下し、取り扱いが困難となる。基材シート10の厚さは、強度と加工性とのバランスを考慮して決定される。
【0028】
化粧材100が天井材又は壁材である場合、化粧材100の強度は、化粧材100が床材である場合の強度よりも低くてよい。従って、化粧材100が天井材又は壁材である場合、基材シート10の厚さは、好ましくは、0.1mm以上2.0mm以下である。さらに好ましくは、基材シート10の厚さは、0.1mm以上1.0mm以下である。
【0029】
{印刷シート20}
次に
図2を参照して印刷シート20の構成について説明する。印刷シート20は、基材シート10の上面に接して配置され、化粧材100に意匠性を付与する。化粧材100における意匠性は、印刷シート20だけでなく、下層シート30及び上層シート40の各々に形成された凹凸面によっても表現される。
【0030】
印刷シート20は、ベースフィルム21と、図柄模様層22とを備える。ベースフィルム21は、図柄模様層22の土台であり、基材シート10と同様に熱可塑性樹脂により形成される。図柄模様層22は下層シート30の下面に接触している。図柄模様層22は、ベースフィルム21の上面全体にインクを塗布することにより形成される。例えば、図柄模様層22として、マーブル模様や、幾何学的な模様などの様々な模様がベースフィルム21の上面全体に印刷される。あるいは、白色のインクなど、単色のインクをベースフィルム21の上面全体に印刷することによって図柄模様層22を構成してもよい。
【0031】
ベースフィルム21の厚さは、好ましくは、0.03mm以上1.0mm以下である。さらに好ましくは、ベースフィルム21の厚さは、0.05mm以上0.3mm以下である。ベースフィルム21は、薄すぎると強度が低下し、取り扱いが難しくなる場合がある。また、基材シート10の隠蔽性が低下して意匠性を低下させる場合がある。一方、ベースフィルム21が厚すぎると、ベースフィルム21に対する印刷作業が難しくなるなど、加工性が低下する。つまり、ベースフィルム21の厚さは、強度、加工性、及び基材シート10の隠蔽性のバランスを考慮して決定される。
【0032】
{下層シート30}
次に
図2を参照して下層シート30の構成について説明する。下層シート30は、印刷シート20の上面に接して配置される透明あるいは半透明のシートである。下層シート30は、下方に配置される印刷シート20を視認できる程度の透明度を有していればよい。下層シート30は、基材シート10と同様に、熱可塑性樹脂により形成される。例えば、下層シート30は、印刷シート20との密着性が良好で、強度、コストなどに優れる塩化ビニル樹脂が好適に用いられる。そして、本実施の形態の下層シート30には、後述するように、光輝性顔料が含有される。
【0033】
下層シート30の上面(上層シート40側の面)は平坦である。一方、下層シート30の下面(基材シート10側の面)には、窪み又は溝等の凹凸面が形成されている。凹凸面は、例えば下層シート30の下面全体にエンボス加工を施すことにより構成される。本実施の形態では、万線状溝が、下層シート30の下面全体に形成されている。万線状溝は、平行な直線上の複数の溝である。下層シート30の下面に形成される凹凸パターンは、平行な直線上の溝に限らず、曲線に沿った溝であってもよく、特に限定されるものではない。また、凹凸パターンの形成方法としては、エンボス加工に限らず、切削、押し出し成型などの他の方法を用いてもよい。
【0034】
化粧材100が床材である場合、好ましくは、下層シート30の厚さは、0.05mm以上2.0mm以下である。さらに好ましくは、下層シート30の厚さは、0.1mm以上0.5mm以下である。下層シート30は、薄すぎると耐摩耗性が低下する。一方、下層シート30は、厚すぎると透過度が低くなるため、意匠性が低下する。つまり、下層シート30の厚さは、意匠性及び耐摩耗性を考慮して決定される。
【0035】
化粧材100が壁材又は天井材である場合、化粧材100の耐摩耗性は、床材として用いられる場合よりも低くてよい。化粧材100が壁材又は天井材である場合、好ましくは、下層シート30の厚さは、0.05mm以上1.0mm以下である。さらに好ましくは、下層シート30の厚さは、0.1mm以上0.25mm以下である。
【0036】
下層シート30の下面に形成される凹凸の深さは、下層シート30の厚さに応じて決定されるが、0.05mm以上1.0mm以下であれば、人の目で意匠を視認しやすいので好ましい。さらに好ましくは、凹凸の深さは、0.1mm以上0.3mm以下である。例えば、下層シート30の厚さが0.3mmである場合、エンボス加工により形成される凹凸の深さは、好ましくは、0.15mmである。凹凸の深さは、下層シート30の厚さに対して、30%以上70%以下の大きさであり、さらに好ましくは、40%以上60%以下の大きさである。
【0037】
{上層シート40}
次に
図2を参照して上層シート40の構成について説明する。上層シート40は、下層シート30の上面に接して配置される透明あるいは半透明のシートである。上層シート40は、下方に配置される下層シート30および印刷シート20を視認できる程度の透明度を有していればよい。上層シート40は、基材シート10及び下層シート30と同様に、熱可塑性樹脂により形成される。上層シート40は、下層シート30と同様の厚さを有する。
【0038】
上層シート40の上面(下層シート30とは反対側の面)は、平坦である。一方、上層シート40の下面(下層シート30側の面)には、窪み又は溝等の凹凸面が形成されている。上層シート40の下面に形成される凹凸面は、下層シート30の下面に形成される凹凸面と同様に、例えばエンボス加工により形成される。凹凸パターンの形成方法としては、エンボス加工に限らず、切削、押し出し成型などの他の方法を用いてもよい。また、上層シート40の下面に形成される凹凸の深さの範囲は、好ましくは上層シート40の厚さに対して、30%以上70%以下の大きさであり、さらに好ましくは、40%以上60%以下の大きさである。
【0039】
上層シート40の下面に形成される凹凸面は、凹凸パターンの異なる複数の領域を有する。例えば、領域40A及び40Bには、万線状溝が形成される。領域40Aに形成される溝の条件は、領域40Bに形成される溝の向き、幅及び間隔と異なる。ここで、溝の条件とは、溝の向き(溝の成す角度)、溝の位相、幅、間隔、側面の傾斜など、溝の断面形状を決定するパラメータのことである。領域40A及び40Bに形成される万線状溝の条件は、下層シート30の下面に形成される万線状溝の条件と異なっていてもよい。
【0040】
領域40Cには、凹凸面が形成されない。領域40Cは、凹凸面が形成された領域40A及び40Bの各々の輪郭に沿って形成されることにより、領域40A及び40Bの各々の形状を強調することができる。なお、領域40Cは、領域40A及び40Bを縁取るだけでなく、幾何学的形状、花柄などの形状であってもよい。
【0041】
なお、上層シート40の上に保護層を設けてもよい。保護層は、上層シート40を保護し、傷付きなどを防止したり、耐摩耗性を向上させたりする。例えば、保護層は、紫外線硬化樹脂、ワックスなどによって形成される。
【0042】
{凹凸のパターンの具体例}
以下、下層シート30及び上層シート40に現れる凹凸のパターンの具体例について説明する。
【0043】
図3は、上層シート40に形成された凹凸パターンを上層シート40の下方から見た図である。
図3において、上層シート40の下面の一部を示している。領域40A及び40Bは、上層シート40の下面に区画された正方形の領域である。領域40A及び40Bは、モザイク状に配置される。万線状溝が領域40A及び40Bに形成されることにより、上層シート40の下面に凹凸面が形成される。なお、
図3では、領域40Cを省略している。
【0044】
図3において、斜めに引かれた1本の直線が、下面に形成された1本の溝に対応する。
図3に示すように、領域40Aにおいて、溝41,41,・・・が形成され、領域40Bにおいて、溝42,42,・・・が形成されている。
図3において、一部の溝に対する符号の表示を省略している。
【0045】
領域40Aに形成される溝41の向き、幅及び間隔は、領域40Bに形成される溝42の向き、幅及び間隔とそれぞれ異なる。従って、領域40A及び40Bにおける凹凸のパターンは、互いに異なる。領域40A及び40Bの両者に万線状溝が形成される場合、溝の向き(溝の成す角度)、溝の位相、溝の深さ、溝の幅、溝を形成する斜面の角度、互いに隣接する溝の間隔の少なくとも1つが、領域40A及び40Bにおいて互い異なる。
【0046】
領域40A及び40Bの少なくとも一方において、エンボス加工により、円形の窪みや曲線の溝などが形成されてもよい。すなわち、領域40Aに現れる凹凸のパターンが、領域40Bに現れる凹凸のパターンと異なっていればよい。
【0047】
図4は、下層シート30に形成された凹凸パターンを下層シート30の下方から見た図である。
図4において、下層シート30の下面の一部を示している。
図4において斜めに引かれた1本の直線が、1本の溝に対応する。下層シート30の下面に万線状溝が形成されることにより、凹凸が形成される。
【0048】
図4において、溝31を、溝41及び42を示す直線よりも細い直線で示している。図面上の区別をするため、細い直線は、下層シート30の下面に形成される溝であることを示し、太い直線は、上層シート40の下面に形成される溝であることを示している。
【0049】
下層シート30に形成される溝31の間隔は、上層シート40の領域40Aにおける溝41の間隔、領域40Bにおける溝42の間隔よりも狭い。つまり、下層シート30の下面に現れる凹凸のパターンは、上層シート40の領域40A及び40Bの各々に現れる凹凸のパターンと異なる。
【0050】
{各シートの積層}
図2を用いて説明した基材シート10、印刷シート20、下層シート30および上層シート40が積層されることにより
図1で示した化粧材100が製造される。化粧材100は、例えば、以下のようにして製造される。基材シート10と、印刷シート20と、下層シート30と、上層シート40とを積層し、積層されたこれらのシートを加熱、加圧する。加熱、加圧により、これらのシートが一体化されることにより化粧材100が製造される。化粧材100の製造には、プレス機、連続ラミネート機などが用いられる。また、基材シート10と、印刷シート20と、下層シート30と、上層シート40とを一体化する際に、接着剤を用いてもよい。
【0051】
上述したように、上層シート40の下面にはエンボス加工が施されることにより、凹凸面が形成されている。この上層シート40の下面と下層シート30の上面とが合わせられ、加熱、加圧加工により一体化される。このため、
図1に示すように、下層シート30の上面には上層シート40の下面の凹凸面に対応した凹凸面が形成される。つまり、下層シート30と上層シート40との境界面P2は凹凸面となっている。
【0052】
また、下層シート30の下面にもエンボス加工が施されることにより、凹凸面が形成されている。この下層シート30の下面と印刷シート20の上面とが合わせられ、加熱、加圧加工により一体化される。このため、
図1に示すように、印刷シート20の上面には下層シート30の下面の凹凸面に対応した凹凸面が形成される。つまり、印刷シート20と下層シート30との境界面P1は凹凸面となっている。同様に、基材シート10と印刷シート20との境界面も凹凸面となっている。
【0053】
{化粧材100における視覚効果}
図5は、化粧材100を上方から見た図であり、化粧材100に現れる凹凸のパターンを示している。つまり、
図5は、
図3に示す上層シート40と
図4に示す下層シート30とを重ね合わせた上で、左右を反転させた図(上方から見た図)である。
図5に示すように、下層シート30と上層シート40とを重ねることにより、化粧材100は、奥行きを表現することができる。以下、化粧材100が奥行きを表現することができる理由を説明する。奥行きの表現に関する説明において、領域40Aに対応する境界面P2の領域を単に「領域40A」と記載し、領域40Bに対応する境界面P2の領域を単に「領域40B」と記載する。
【0054】
上層シート40に入射した光の一部は境界面P2で反射する。また、上層シート40に入射した光の一部は境界面P2を通過し、下層シート30において反射する。あるいは境界面P2を通過した光は、境界面P1で反射する。例えば、下層シート30にパール顔料などの光輝性顔料を含有させることにより、上層シート40に入射した光を、境界面P2で反射させることや下層シート30において反射させることができる。あるいは、上層シート40と下層シート30の材料として光の屈折率の異なる材料を利用することによっても、上層シート40に入射した光を、境界面P2で反射させることや下層シート30において反射させることができる。
【0055】
このように、化粧材100の上方から入射した光は、上層シート40の上面、境界面P2、下層シート30、あるいは境界面P1など、様々な領域で反射する。化粧材100に入射した光が、上層シート40の下面であって凹凸面を有する境界面P2と下層シート30の下面であって凹凸面を有する境界面P1で反射することにより、奥行き感を出すことができる。
【0056】
また、化粧材100に入射した光が反射する経路が複数となることにより、光が強め合い明るくなる領域と光が弱め合って暗くなる(あるいは明るさの弱い)領域が存在することになる。そして本実施の形態に係る化粧材100は、上層シート40の下面には、凹凸パターンの異なる複数の領域、つまり、領域40Aと領域40Bを有している。
図3で示した例では、領域40Aと領域40Bでは、凹凸の向き、幅、間隔などが異なっている。これにより、境界面P2で反射する光の経路が領域40Aと領域40Bで異なる。したがって、領域40Aと領域40Bとでは、下層シート30で反射する光との干渉の条件あるいは境界面P1で反射する光との干渉の条件が異なる。これにより領域40Aの明るさの度合いと領域40Bの明るさの度合いに差が生じ、変化に富んだ意匠性の高い化粧材100を構成することができる。あるいは、領域40Aと領域40Bとで奥行きの違いを表現することができる。
【0057】
人間の視覚特性として、同一平面上に描かれる明るい部分は手前に位置するように見え、暗い部分は奥に位置するように見える。領域40Aが、明るい領域であれば、領域40Aが領域40Bよりも浮き出ているように見える視覚効果が得られる。この結果、化粧材100において奥行きが表現され、立体感が表現される。
【0058】
上述したように、本実施の形態の下層シート30は、光輝性顔料を含有する樹脂により形成される。光輝性顔料として、パール顔料や金属粒子、金属が蒸着されたプラスチックフィルムの破片等を用いることができる。以下、これらの顔料について具体的に説明する。
【0059】
・パール顔料
具体的には、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマスが、パール顔料として用いられる。あるいは、貝殻の内側の光沢部分や、真珠を粉砕することより生成される粉末をパール顔料として用いてもよい。特に、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔、酸塩化ビスマスは、意匠効果が優れているため、これらの顔料を用いることが望ましい。
【0060】
・金属粒子
具体的には、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン、銅等の粒子を光輝性顔料として用いることができる。上記に列挙した金属の合金(真鍮など)の粒子を用いてもよい。光輝性顔料は、上記に列挙した金属又は合金のうち、少なくとも1種類の金属の粒子を含んでいればよい。金属粒子の平均粒径は、特に限定されないが、5〜500nmであることが好ましく、10〜200nmであることがより好ましい。より一層好ましくは、平均粒径は、10〜80nmであることが望ましい。平均粒径が10〜80nmの範囲にある金属粒子を使用することにより、個々の金属粒子の粒状感が目立たず、滑らかな光輝性を有する下層シートを形成することができる。
【0061】
・蒸着されたプラスチックフィルムの破片
具体的には、ポリエチレンテレフタレートのフィルムに金属を蒸着させ、金属が蒸着したフィルムを粉砕することにより生成された破片を、光輝性顔料として用いることができる。蒸着に用いられる金属は、アルミニウム、銀、金、白金、ニッケル、クロム、錫、銅等の金属である。なお、蒸着された金属を着色した上でフィルムを粉砕することにより生成される破片を、光輝性顔料として用いてもよい。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態に係る化粧材100において、上層シート40の下面における領域40A及び40Bに、それぞれ異なるパターンの凹凸が形成される。上層シート40の下に配置される下層シート30の下面に、一様なパターンの凹凸が形成される。これにより、化粧材100において奥行きを表現でき、領域40Aが領域40Bより上に浮き出ているような立体感を表現することができる。
【0063】
上記実施の形態において、上層シート40の下面に正方形の領域40A及び40Bがモザイク状に配置される例を説明したが、これに限られない。上層シート40の下面には、3種類以上の異なる凹凸パターンがそれぞれ形成される3つ以上の領域があってもよい。
【0064】
上記実施の形態において、下層シート30の上面が、上層シート40の下面に接触する例を説明したが、これに限られない。
図6に示すように、下層シート30の上面全体に境界層35を形成してもよい。この場合、境界面P2は、上層シート40と境界層35との境界面となる。
【0065】
境界層35の色は特に限定されない。光沢を有しないインク(例えば、艶消しインク)を用いて所定の図柄を下層シート30の上面に印刷してもよい。あるいは、光輝性顔料を含有するインクを用いて所定の図柄を下層シート30の上面に印刷してもよい。光輝性顔料の詳細は上述のとおりである。また、光を透過することのできるアルミ箔などの金属箔を下層シート30の上面に配置することにより、境界層35を形成してもよい。金属箔は、下層シート30の上面全体に配置してもよいし、上面の一部に配置してもよい。境界層35として、例えば光輝性顔料を含む材料を利用することにより、上層シート40を通過した光を反射させることができる。境界層35を通過した光は下層シート30あるいは境界面P1で反射する。これにより、
図1で示した化粧材100と同様、意匠性に優れ、奥行き感のある化粧材を構成することができる。
【0066】
[第2の実施の形態]
{化粧材200の構成}
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る化粧材200の側面部分断面図である。
図7に示す化粧材200は、下記の点で
図1に示す化粧材100と異なる。すなわち、化粧材200は、第1の実施の形態における下層シート30に変えて下層シート60を備える。下層シート60に下方に、透明シート50を備える。下層シート60には、第1の実施の形態の下層シート30と同様、光輝性顔料が含有される。
【0067】
以下、化粧材100と異なる点を中心に、化粧材200の構造について説明する。下層シート60の上面が、上層シート40の下面に接触している。このため、下層シート60の上面には、上層シート40の下面に形成された凹凸の形状に応じた凹凸が形成されている。境界面R3は、上層シート40と下層シート60との境界面である。一方、本実施の形態においては、下層シート60の下面全体には、一様な凹凸のパターンが形成されている。下層シート60の下面に異なる複数の凹凸パターンが形成されていてもよい。
【0068】
透明シート50の上面は、下層シート60の下面に接触している。透明シート50の上面に形成されている凹凸の形状は、下層シート60の下面に形成された凹凸の形状に対応する。境界面R2は、透明シート50と下層シート60との境界面である。透明シート50の下面には、凹凸が形成されていない。透明シート50の下面は、印刷シート20の上面と接触している。境界面R1は、印刷シート20と透明シート50との境界面である。
【0069】
図8は、化粧材200を構成する各シートが積層される前の状態を示す側面部分断面図である。印刷シート20が基材シート10の上に積層される点は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0070】
透明シート50は、印刷シート20の上面に接して配置される透明のシートである。透明シート50は、基材シート10と同様に、熱可塑性樹脂により形成される。
図8に示す各シートを積層する前に、透明シート50の上面(上層シート40側の面)全体には、凹凸面が形成されている。例えば、複数の平行な直線状の溝(万線状溝)が、エンボス加工により、透明シート50の上面に形成されている。ただし、透明シート50の上面には、万線状溝ではなく、円形や曲線などの複数の窪みなどが形成されてもよい。また、凹凸パターンの形成方法としては、エンボス加工に限らず、切削、押し出し成型などの他の方法を用いてもよい。
【0071】
透明シート50の厚さ、及び透明シート50の上面に形成される凹凸の条件は、例えば上記第1の実施の形態に係る下層シート30と同様である。
【0072】
下層シート60は、透明シート50の上面に接して配置される透明あるいは半透明のシートである。下層シート60は、下方に配置される透明シート50および印刷シート20を視認できる程度の透明度を有していればよい。下層シート60は、基材シート10と同様に、熱可塑性樹脂により形成される。各シートを積層する前において、下層シート60の上面及び下面のいずれにも、凹凸面は形成されない。
【0073】
下層シート60の厚さは、透明シート50の上面に形成される凹凸の深さと、上層シート40の下面に形成される凹凸の深さとの合計値よりも大きい。これにより、
図8に示す各シートが積層された際に、透明シート50の上面が上層シート40の下面とは接触しないようにしている。
【0074】
図8を用いて説明した基材シート10、印刷シート20、透明シート50、下層シート60および上層シート40が積層されることにより
図7で示した化粧材200が製造される。化粧材200は、例えば、以下のようにして製造される。基材シート10と、印刷シート20と、透明シート50と、下層シート60と、上層シート40とを積層し、積層されたこれらのシートを加熱、加圧する。加熱、加圧により、これらのシートが一体化されることにより化粧材200が製造される。化粧材200の製造には、プレス機、連続ラミネート機などが用いられる。また、基材シート10と、印刷シート20と、透明シート50と、下層シート60と、上層シート40とを一体化する際に、接着剤を用いてもよい。
【0075】
第1の実施の形態と同様、上層シート40の下面にはエンボス加工が施されることにより、凹凸面が形成されている。この上層シート40と下層シート60が積層された状態で、加熱、加圧加工により一体化される。このため、
図7に示すように、上層シート40と下層シート60の境界面R3は凹凸面となっている。また、透明シート50の上面にはエンボス加工が施されることにより、凹凸面が形成されている。この透明シート50と下層シート60が積層された状態で、加熱、加圧加工により一体化される。このため、
図7に示すように、透明シート50と下層シート60の境界面R2は凹凸面となっている。
【0076】
{化粧材200における視覚効果}
第1の実施の形態と同様、例えば、下層シート60にパール顔料などの光輝性顔料を含有させることにより、上層シート40に入射した光を、境界面R3で反射させることや下層シート60において反射させることができる。あるいは、上層シート40と下層シート60の材料として光の屈折率の異なる材料を利用してもよい。
【0077】
下層シート60に入射した光の一部は境界面R2で反射する。また、下層シート60に入射した光の一部は境界面R2を通過し、透明シート50において反射する。あるいは境界面R2を通過した光は、境界面R1で反射する。例えば、透明シート50にパール顔料などの光輝性顔料を含有させることにより、下層シート60に入射した光を、境界面R2で反射させることや透明シート50において反射させることができる。あるいは、下層シート60と透明シート50の材料として光の屈折率の異なる材料を利用することによっても、下層シート60に入射した光を、境界面R2で反射させることや透明シート50において反射させることができる。
【0078】
このように、化粧材200の上方から入射した光は、上層シート40の上面、境界面R3、下層シート60、境界面R2、透明シート50あるいは境界面R1など、様々な領域で反射する。化粧材200に入射した光が、上層シート40の下面であって凹凸面を有する境界面R3と下層シート60の下面であって凹凸面を有する境界面R2で反射することにより、奥行き感を出すことができる。
【0079】
また、化粧材200に入射した光が反射する経路が複数となることにより、光が強め合い明るくなる領域と光が弱め合って暗くなる(あるいは明るさの弱い)領域が存在することになる。そして、上層シート40の下面には、凹凸パターンの異なる複数の領域、つまり、領域40Aと領域40Bが形成されている。
図7で示した例では、領域40Aと領域40Bでは、凹凸の方向、幅、間隔などが異なっている。これにより、境界面R3で反射する光の経路が領域40Aと領域40Bで異なる。したがって、領域40Aと領域40Bとでは、下層シート60で反射する光との干渉の条件あるいは境界面R2で反射する光との干渉の条件が異なる。これにより、第1の実施の形態と同様、領域40Aの明るさの度合いと領域40Bの明るさの度合いに差が生じ、変化に富んだ意匠性の高い化粧材200を構成することができる。あるいは、領域40Aと領域40Bとで奥行きの違いを表現することができる。
【0080】
以上説明したように、化粧材200において、上層シート40と透明シート50とは、凹凸が形成された面が対向するようにして配置される。これにより、下層シート60の上下面に凹凸が形成されるため、化粧材200は、化粧材100と同様に、奥行きを表現でき、例えば領域40Aが領域40Bより浮き出ているような立体感を表現することができる。
【0081】
また、上記第2の実施の形態において、
図9に示すように、下層シート60の上面全体に境界層61を形成してもよい。この場合、境界面R3は、上層シート40と境界層61との境界面となる。境界層61として、パール顔料など光輝性材料を利用することにより上層シート40を通過した光を反射させることができる。境界層61を通過した光は下層シート60あるいは境界面R2で反射する。これにより、
図7で示した化粧材200と同様、意匠性に優れ、奥行き感のある化粧材を構成することができる。
【0082】
あるいは、
図10に示すように、透明シート50の上面全体に境界層62を形成してもよい。この場合、境界面R2は、境界層62と下層シート60との境界面となる。境界層62として、パール顔料など光輝性材料を利用することにより、下層シート60に入射した光の一部が、境界面R2で反射する。
【0083】
上記第2の実施の形態において、
図11に示すように、化粧材200は、透明な下層シート60に代えて、半透明であり、かつ光輝性を有する下層シート70を用いてもよい。下層シート70は、入射する光を反射させる層であり、光輝性を有する層である。下層シート70に含有させる光輝性材料は特に限定されるものではないが、光を鏡面反射するような光輝性材料や、パール調の光輝性材料、玉虫色のような光輝性材料などを用いることができる。
【0084】
下層シート70が半透明で、かつ、光輝性を有することにより、下層シート70に入射する光は、境界面R1〜R3だけでなく、下層シート70の中で反射する。これにより、化粧材200の意匠性をさらに高めることができる。
【0085】
第2の実施の形態に係る下層シート60あるいは下層シート70は、上述したように、光輝性顔料を含有する樹脂により形成される。光輝性顔料としては、第1の実施の形態と同様、パール顔料や金属粒子、金属が蒸着されたプラスチックフィルムの破片等を用いることができる。
【0086】
また、上記第1の実施の形態において、下層シート30の下面に一様な凹凸のパターンが形成され、上記第2の実施の形態において、下層シート60の下面に一様な凹凸のパターンが形成される例を説明したが、これに限られない。例えば、
図12に示すように、化粧材100において、上層シート40の下面に形成される凹凸のパターンを一様にし、下層シート30の下面の領域30A及び30Bに異なる2つの凹凸のパターンを形成してもよい。また、化粧材100において、
図1に示す上層シート40と、
図12に示す下層シート30とを組み合わせて用いてもよい。つまり、化粧材100において、下層シート30の下面の異なる複数の領域に異なる複数の凹凸のパターンが形成されるか、又は、上層シート40の下面の異なる複数の領域に異なる複数の凹凸のパターンが形成されればよい。化粧材200についても、同様に、下層シート60の下面の異なる複数の領域に異なる複数の凹凸のパターンが形成されるか、又は、上層シート40の下面の異なる複数の領域に異なる複数の凹凸のパターンが形成されればよい。
【0087】
また、上記第1の実施の形態において、一体化される前の下層シート30の上面が平坦である例を説明したが、これに限られない。一体化される前の下層シート30の上面に凹凸を形成してもよい。この場合、下層シート30と上層シート40とが一体化されることにより、下層シート30に形成された凹凸の凸部と、上層シート40に形成された凹凸との凸部の形状を変化させることができる。これにより、化粧材100の意匠性を高めることができる。同様に、第2の実施の形態において、下層シート60の上面又は下面に凹凸を形成してもよい。
【0088】
また、上記実施の形態において、化粧材100及び200が正方形のタイル状である例を説明したが、これに限られない。化粧材100の形状は、長方形であってもよい。あるいは、化粧材100は、正方形及び長方形などの四角形ではなく、他の形状(六角形、八角形、円形など)であってもよい。