特許第6571467号(P6571467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

特許6571467絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法
<>
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000002
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000003
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000004
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000005
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000006
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000007
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000008
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000009
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000010
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000011
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000012
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000013
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000014
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000015
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000016
  • 特許6571467-絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571467
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20190826BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20190826BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   H01L29/78 658A
   H01L29/78 653A
   H01L29/78 652J
   H01L29/78 652C
   H01L21/265 R
   H01L21/265 V
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-186613(P2015-186613)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-63082(P2017-63082A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 徹
(72)【発明者】
【氏名】小野木 淳士
(72)【発明者】
【氏名】三角 忠司
(72)【発明者】
【氏名】山下 侑佑
(72)【発明者】
【氏名】竹内 有一
【審査官】 柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−016747(JP,A)
【文献】 特開2007−242852(JP,A)
【文献】 特開2009−81412(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/080471(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/265
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁ゲート型スイッチング素子の製造方法であって、
半導体基板に、第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の少なくとも一部上に配置されている第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域の少なくとも一部上に配置されている第1導電型の第2半導体領域の積層構造を形成する積層構造形成工程と、
前記半導体基板の表面を平面視したときに第1方向において第1幅を有する第1部分と前記第1方向において前記第1幅よりも広い第2幅を有する第2部分を有し、前記第1部分が前記表面から前記第2半導体領域と前記ボディ領域を貫通して前記第1半導体領域に達し、前記第2部分が前記表面から前記ボディ領域を貫通して前記第1半導体領域に達するゲートトレンチを形成するゲートトレンチ形成工程と、
前記ゲートトレンチの底面に露出する範囲に第2導電型の底部領域を形成する底部領域形成工程と、
前記表面において前記第1方向と直交する軸周りに前記表面に立てた法線に対して傾斜した照射角度で第2導電型不純物を照射することによって、前記第1部分の前記第1方向の端部を画定する第1側面と前記第2部分の前記第1方向の端部を画定する第2側面に前記第2導電型不純物を注入する斜め注入工程であって、前記第1幅、前記第2幅、及び、前記照射角度が、前記第1側面では前記第2半導体領域の下端の位置よりも下側の深さ範囲への前記第2導電型不純物の注入が抑制され、前記第2側面では前記第2半導体領域の下端の位置よりも下側の深さ範囲に前記第2導電型不純物が注入されるように設定されており、前記第2側面への前記第2導電型不純物の注入によって前記ボディ領域と前記底部領域を接続する第2導電型の接続領域が形成される斜め注入工程と、
前記ゲートトレンチ内に、ゲート絶縁層によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極を形成するゲート電極形成工程、
を有し、
前記接続領域が、前記半導体基板を平面視したときに前記第2半導体領域が存在しない範囲に形成される製造方法。
【請求項2】
第1導電型の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の少なくとも一部上に配置されている第2導電型のボディ領域と、
前記ボディ領域の少なくとも一部上に配置されている第1導電型の第2半導体領域と、
半導体基板の表面を平面視したときに第1方向において第1幅を有する第1部分と前記第1方向において前記第1幅よりも広い第2幅を有する第2部分を有し、前記第1部分が前記表面から前記第2半導体領域と前記ボディ領域を貫通して前記第1半導体領域に達し、前記第2部分が前記表面から前記ボディ領域を貫通して前記第1半導体領域に達するゲートトレンチと、
前記ゲートトレンチの底面に露出する範囲に配置されている第2導電型の底部領域と、
前記第2部分の前記第1方向の端部を画定する側面に露出する範囲に配置されており、前記ボディ領域と前記底部領域を接続している第2導電型の接続領域と、
前記ゲートトレンチ内に配置されており、ゲート絶縁層によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極、
を有し、
前記第1部分の前記第1方向の端部を画定する側面に露出する範囲における前記ボディ領域の第2導電型不純物濃度が、前記接続領域の上部で前記第2部分の前記第1方向の端部を画定する前記側面に露出する範囲における前記ボディ領域の第2導電型不純物濃度よりも低く、
前記接続領域が、前記半導体基板を平面視したときに前記第2半導体領域が存在しない範囲に形成されている絶縁ゲート型スイッチング素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、絶縁ゲート型スイッチング素子とその製造方法に関する。なお、本明細書において、絶縁ゲート型スイッチング素子は、半導体基板から絶縁されたゲート電極を有するスイッチング素子を意味する。絶縁ゲート型スイッチング素子には、例えば、MOSFETやIGBTが含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のMOSFETは、n型のドリフト領域、p型のボディ領域及びn型のソース領域の積層構造を備えている。半導体基板の表面に、ソース領域とボディ領域を貫通してドリフト領域に達するゲートトレンチが形成されている。ゲートトレンチは、半導体基板の表面において直線状に伸びている。ゲートトレンチの底面に露出する範囲に、p型の底部領域が形成されている。ゲートトレンチ内に、ゲート絶縁層によって半導体基板から絶縁されているゲート電極が配置されている。ゲートトレンチの長手方向の端部に配置されている側面(以下、長手方向側面という)に露出する範囲に、ボディ領域と底部領域を接続するp型の接続領域が配置されている。ゲートトレンチの短手方向の端部に配置されている側面(以下、短手方向側面という)では、ボディ領域と底部領域の間にドリフト領域が存在しており、接続領域が配置されていない。
【0003】
ゲート電極の電位をゲート閾値以上まで上昇させると、ボディ領域にチャネルが形成されて、MOSFETがオンする。ゲート電極の電位をゲート閾値未満に低下させると、ボディ領域からチャネルが消失して、MOSFETがオフする。MOSFETがオフすると、ボディ領域からドリフト領域内に空乏層が伸びる。さらに、接続領域によって底部領域がボディ領域と接続されているので、底部領域の電位はボディ領域の電位と略等しい。このため、MOSFETがオフすると、底部領域からもドリフト領域内に空乏層が伸びる。底部領域によって、ゲートトレンチの底部周辺への空乏層の伸展が促進される。このため、このMOSFETでは、ゲートトレンチの底部周辺において電界を緩和することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−118966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の接続領域は、ゲートトレンチの長手方向側面にp型不純物を注入することによって形成される。ここでは、ゲートトレンチの短手方向に平行な軸周りに傾斜した照射角度でp型不純物を照射することによって、ゲートトレンチの長手方向側面にp型不純物が注入する。この工程では、p型不純物の照射方向とゲートトレンチの短手方向側面とが平行となる関係に半導体基板を設置して、ゲートトレンチの短手方向側面へのp型不純物の注入を抑制する。しかしながら、p型不純物の照射方向と短手方向側面とが平行となるように半導体基板を正確に設置することが困難であること、及び、p型不純物の照射方向にばらつきが生じること等の理由により、ゲートトレンチの短手方向側面全体に所定量のp型不純物が注入される。ゲートトレンチの短手方向側面に露出する範囲のボディ領域にp型不純物が注入されると、その範囲内でボディ領域のp型不純物濃度が増加してゲート閾値(ボディ領域にチャネルを形成するために必要なゲート電位)が変化する。このため、特許文献1の技術では、MOSFETの量産時にゲート閾値のばらつきが大きいという問題があった。したがって、本明細書では、接続領域を有する絶縁ゲート型スイッチング素子において、ゲート閾値のばらつきを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する絶縁ゲート型スイッチング素子の製造方法は、積層構造形成工程と、ゲートトレンチ形成工程と、底部領域形成工程と、斜め注入工程と、ゲート電極形成工程を有する。前記積層構造形成工程では、半導体基板に、第1導電型の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の少なくとも一部上に配置されている第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域の少なくとも一部上に配置されている第1導電型の第2半導体領域の積層構造を形成する。前記ゲートトレンチ形成工程では、前記半導体基板の表面を平面視したときに第1方向において第1幅を有する第1部分と前記第1方向において前記第1幅よりも広い第2幅を有する第2部分を有し、前記第1部分が前記表面から前記第2半導体領域と前記ボディ領域を貫通して前記第1半導体領域に達し、前記第2部分が前記表面から前記ボディ領域を貫通して前記第1半導体領域に達するゲートトレンチを形成する。前記底部領域形成工程では、前記ゲートトレンチの底面に露出する範囲に第2導電型の底部領域を形成する。前記斜め注入工程では、前記表面において前記第1方向と直交する軸周りに前記表面に立てた法線に対して傾斜した照射角度で第2導電型不純物を照射することによって、前記第1部分の前記第1方向の端部を画定する第1側面と前記第2部分の前記第1方向の端部を画定する第2側面に前記第2導電型不純物を注入する。前記第1幅、前記第2幅、及び、前記照射角度が、前記第1側面では前記第2半導体領域の下端の位置よりも下側の深さ範囲への前記第2導電型不純物の注入が抑制され、前記第2側面では前記第2半導体領域の下端の位置よりも下側の深さ範囲に前記第2導電型不純物が注入されるように設定されている。前記斜め注入工程では、前記第2側面への前記第2導電型不純物の注入によって前記ボディ領域と前記底部領域を接続する第2導電型の接続領域が形成される。前記ゲート電極形成工程では、前記ゲートトレンチ内に、ゲート絶縁層によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極を形成する。
【0007】
なお、上述した第1導電型と第2導電型の一方がn型を意味し、他方がp型を意味する。
【0008】
また、第2部分は、少なくともボディ領域を貫通していればよい。ボディ領域上に第2半導体領域が存在する部分に第2部分を形成する場合には、第2部分が第2半導体領域とボディ領域を貫通してもよい。
【0009】
また、積層構造形成工程では、必ずしも第1半導体領域とボディ領域と第2半導体領域の全てを形成する必要はない。例えば、第1半導体領域に相当する第1導電型の半導体基板を準備し、その半導体基板にボディ領域と第2半導体領域を形成することで、積層構造を形成してもよい。また、積層構造形成工程の途中で他の工程を実施してもよい。例えば、第1半導体領域上にボディ領域を形成した後にゲートトレンチ形成工程を実施し、ゲートトレンチ形成工程の後で不純物注入等によって第2半導体領域を形成してもよい。また、前記ゲートトレンチ形成工程を前記積層構造形成工程より先に実施してもよい。前記ゲートトレンチ形成工程を前記積層構造形成工程の途中または前記積層構造形成工程より先に実施する場合には、「前記第1部分が前記表面から前記第2半導体領域と前記ボディ領域を貫通して前記第1半導体領域に達する」という構造は、前記積層構造形成工程を実施した段階で得られる。また、底部領域形成工程と斜め注入工程は、ゲートトレンチ形成工程より後であってゲート電極形成工程より前であれば、いつ行ってもよい。また、積層構造形成工程、底部領域形成工程及び斜め注入工程の実施順序は、適宜変更することができる。前記接続領域が「前記ボディ領域と前記底部領域を接続する」という構造は、積層構造形成工程、底部領域形成工程及び斜め注入工程の全てを実施した段階で得られればよい。なお、斜め注入工程を第2半導体領域を形成するよりも前に実施する場合には、斜め注入工程を実施する段階では第2半導体領域がまだ形成されていない。この場合、斜めイオン注入工程における「前記第2半導体領域の下端の位置」は、斜めイオン注入工程よりも後に形成される第2半導体領域の下端の位置を意味する。また、ゲート電極形成工程は、底部領域形成工程及び斜め注入工程よりも後の任意のタイミングで実施することができる。ゲート電極形成工程が、積層構造形成工程より前に実施されてもよい。
【0010】
上述した製造方法について、図16を参照しつつ、以下に説明する。なお、図16は、斜め注入工程の説明のために一例として示されたものであり、本明細書に開示の製造方法は図16の構成に限定されるものではない。例えば、図16では、第1半導体領域161、ボディ領域163、第2半導体領域162及び底部領域164が示されているが、これらの領域を形成する前に斜め注入工程が実施される場合もある。
【0011】
この製造方法では、ゲートトレンチが、第1方向における幅が狭い第1部分と第1方向における幅が広い第2部分を有している。斜め注入工程では、第1方向と直交する軸周りに傾斜した照射角度で第2導電型不純物を照射する。したがって、第2導電型不純物が、第1部分の第1方向の端部を画定する第1側面と、第2部分の第1方向の端部を画定する第2側面に注入される。例えば、図16では、ゲートトレンチが、第1方向150における幅が狭い第1部分110と、第1方向150における幅が広い第2部分120を有している。参照番号130に示す傾斜した照射角度によって第2導電型不純物が照射されると、第1部分110の第1方向150の端部を画定する第1側面112と第2部分120の第1方向150の端部を画定する第2側面122に第2導電型不純物が注入される。斜め注入工程で、各側面に第2導電型不純物が注入される深さ範囲は、第1方向におけるゲートトレンチの幅によって異なる。
【0012】
幅が狭い第1部分では、第1側面のうちの深い範囲(すなわち、第2半導体領域の下端の位置よりも下側の深さ範囲)への第2導電型不純物の注入が抑制される。したがって、この製造方法では、第1側面に露出する範囲のボディ領域で第2導電型不純物濃度が増加することを抑制することが可能である。このため、絶縁ゲート型スイッチング素子のゲート閾値のばらつきを抑制することができる。例えば、図16では、第1側面112の反対側の半導体層140等の陰になることで、第1側面112のうちの深い範囲への第2導電型不純物の注入が抑制される。このため、第1側面112のうちの第2半導体領域162の下端の位置162aよりも下側の深さ範囲への第2導電型不純物の注入が抑制される。つまり、ボディ領域163の深さ範囲への第2導電型不純物の注入が抑制される。これにより、絶縁ゲート型スイッチング素子のゲート閾値のばらつきを抑制することができる。
【0013】
他方、幅が広い第2部分では、第2側面のうちの深い範囲(すなわち、第2半導体領域の下端の位置よりも下側の深さ範囲)まで第2導電型不純物が注入される。これによって、ボディ領域と底部領域を接続する第2導電型の接続領域を形成することができる。例えば、図16では、第2部分120の第2側面122のうちの深い範囲(トレンチの底面近傍の範囲)まで第2導電型不純物が注入される。したがって、第2側面122では、第2半導体領域162の下端の位置162aよりも下側の深さ範囲に第2導電型不純物が注入される。これによって、第2側面122に露出する範囲に、ボディ領域163と底部領域164を接続する第2導電型の接続領域165を形成することができる。接続領域165によってボディ領域163と底部領域164が接続されるので、ゲートトレンチ近傍での電界の集中を抑制することができる。
【0014】
以上に説明したように、この製造方法によれば、接続領域を有する絶縁ゲート型スイッチング素子を製造することが可能であるとともに、量産時にゲート閾値のばらつきを抑制することができる。
【0015】
また、本明細書は、新たな絶縁ゲート型スイッチング素子を提供する。この絶縁ゲート型スイッチング素子は、第1半導体領域と、ボディ領域と、第2半導体領域と、ゲートトレンチと、底部領域と、接続領域と、ゲート電極を有している。前記第1半導体領域は第1導電型の領域である。前記ボディ領域は、前記第1半導体領域の少なくとも一部上に配置されている第2導電型の領域である。前記第2半導体領域は、前記ボディ領域の少なくとも一部上に配置されている第1導電型の領域である。前記ゲートトレンチは、半導体基板の表面を平面視したときに第1方向において第1幅を有する第1部分と前記第1方向において前記第1幅よりも広い第2幅を有する第2部分を有している。前記第1部分が、前記表面から前記第2半導体領域と前記ボディ領域を貫通して前記第1半導体領域に達している。前記第2部分が、前記表面から前記ボディ領域を貫通して前記第1半導体領域に達している。前記底部領域は、前記ゲートトレンチの底面に露出する範囲に配置されている第2導電型の領域である。前記接続領域は、前記第2部分の前記第1方向の端部を画定する側面に露出する範囲に配置されており、前記ボディ領域と前記底部領域を接続している第2導電型の領域である。前記ゲート電極は、前記ゲートトレンチ内に配置されており、ゲート絶縁層によって前記半導体基板から絶縁されている。前記第1部分の前記第1方向の端部を画定する側面に露出する範囲における前記ボディ領域の第2導電型不純物濃度が、前記接続領域の上部で前記第2部分の前記第1方向の端部を画定する前記側面に露出する範囲における前記ボディ領域の第2導電型不純物濃度よりも低い。
【0016】
この絶縁ゲート型スイッチング素子によれば、接続領域によって底部領域とボディ領域が接続されているので、ゲートトレンチ近傍での電界の集中を抑制することができる。また、この構造によれば、第1部分の側面に露出する範囲におけるボディ領域の第2導電型不純物濃度が低いので、この濃度にばらつきが生じ難い。したがって、ゲート閾値が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態のMOSFET10の平面図(上部電極14と層間絶縁膜39を省略した図)。
図2図1のII−II線における縦断面図。
図3図1のIII−III線における縦断面図。
図4】MOSFET10の製造工程の説明図。
図5】MOSFET10の製造工程の説明図。
図6】MOSFET10の製造工程の説明図(図2に対応する縦断面図)。
図7】MOSFET10の製造工程の説明図(図3に対応する縦断面図)。
図8】MOSFET10の製造工程の説明図(図2に対応する縦断面図)。
図9】MOSFET10の製造工程の説明図(図3に対応する縦断面図)。
図10】MOSFET10の製造工程の説明図(図2に対応する縦断面図)。
図11】MOSFET10の製造工程の説明図(図3に対応する縦断面図)。
図12】変形例のMOSFETの平面図。
図13】変形例のMOSFETの平面図。
図14図13のXIV−XIV線における縦断面図。
図15】変形例の製造方法の説明図。
図16】本明細書が開示する製造方法の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2、3に示すように、実施形態のMOSFET10は、半導体基板12と、上部電極14と、下部電極16を有している。半導体基板12は、SiCによって構成されている。上部電極14は、半導体基板12の上面12aを覆っている。下部電極16は、半導体基板12の下面12bを覆っている。なお、本明細書では、半導体基板12の厚み方向をz方向といい、z方向に直交する一方向(上面12aに平行な一方向)をx方向といい、z方向及びx方向に直交する方向をy方向という。
【0019】
図1に示すように、半導体基板12の内部には、半導体基板12の上面12aに露出するようにソース領域26とボディコンタクト領域24aが配置されている。以下では、半導体基板12の上面12aを平面視したときにソース領域26及びボディコンタクト領域24aが存在する範囲を素子範囲60といい、素子範囲60の外側を外部範囲62という。素子範囲60に、スイッチングを行うための構造が形成されている。
【0020】
図2、3に示すように、半導体基板12は、ドレイン層20、ドリフト層22、ボディ層24及び上述したソース領域26を有している。
【0021】
図2、3に示すように、ドレイン層20は、素子範囲60から外部範囲62に跨って配置されている。ドレイン層20は、n型不純物濃度が高いn型領域である。ドレイン層20は、半導体基板12の下面12bの全域に露出している。ドレイン層20は、下部電極16に接している。
【0022】
図2、3に示すように、ドリフト層22は、素子範囲60から外部範囲62に跨って配置されている。ドリフト層22は、ドレイン層20よりもn型不純物濃度が低いn型領域である。ドリフト層22は、ドレイン層20上に配置されている。ドリフト層22は、ドレイン層20に接している。
【0023】
図2、3に示すように、ボディ層24は、ドリフト層22上に配置されている。ボディ層24は、p型領域である。ボディ層24は、複数のボディコンタクト領域24aと低濃度ボディ層24bを有している。
【0024】
低濃度ボディ層24bは、p型不純物濃度が低いp型領域である。図2、3に示すように、低濃度ボディ層24bは、素子範囲60から外部範囲62に跨って配置されている。低濃度ボディ層24bは、ドリフト層22上に配置されており、ドリフト層22に接している。図1、3に示すように、低濃度ボディ層24bは、外部範囲62において半導体基板12の上面12aに露出している。
【0025】
図1、2に示すように、各ボディコンタクト領域24aは、素子範囲60内において低濃度ボディ層24bの一部の上部に配置されている。各ボディコンタクト領域24aは、低濃度ボディ層24bよりもp型不純物濃度が高いp型領域である。各ボディコンタクト領域24aは、低濃度ボディ層24bに接している。各ボディコンタクト領域24aは、半導体基板12の上面12aに露出している。各ボディコンタクト領域24aは、上部電極14に接している。図1に示すように、各ボディコンタクト領域24aは、x方向に長く伸びるストライプ状に形成されている。
【0026】
図1、2に示すように、各ソース領域26は、素子範囲60内において低濃度ボディ層24bの一部の上部に配置されている。各ソース領域26は、ドリフト層22よりもn型不純物濃度が高いn型領域である。各ソース領域26は、素子範囲60内のボディコンタクト領域24aが存在しない位置(ボディコンタクト領域24aに隣接する位置)で低濃度ボディ層24b上に配置されている。各ソース領域26は、低濃度ボディ層24bとボディコンタクト領域24aに接している。各ソース領域26は、半導体基板12の上面12aに露出している。各ソース領域26は、上部電極14に接している。図1に示すように、各ソース領域26は、ボディコンタクト領域24aに沿ってx方向に長く伸びるストライプ状に形成されている。
【0027】
図1に示すように、半導体基板12の上面12aには、複数のゲートトレンチ30が配置されている。なお、図1では、図の見易さのため、ゲートトレンチ30をハッチングにより示している。各ゲートトレンチ30は、上面12aにおいてx方向に長く伸びる第1部分31と、上面12aにおいてy方向に長く伸びる第2部分32を有している。すなわち、各ゲートトレンチ30は、上面12aにおいてL字状に延びている。第1部分31の大部分は素子範囲60内に位置しており、第1部分31の両端部が素子範囲60から外部範囲62に突出している。第2部分32は、第1部分31の一方の端部からy方向に伸びている。第2部分32の全体が、外部範囲62内に位置している。y方向に沿ってゲートトレンチ30の幅を測定した場合に、第2部分32の幅W2は、第1部分31の幅W1よりも広い。図2、3に示すように、第1部分31と第2部分32は、共に略同じ深さを有している。
【0028】
図1、2に示すように、各第1部分31は、素子範囲60内において、ソース領域26に隣接するとともにボディコンタクト領域24aから離れた位置に配置されている。z方向において、各第1部分31は、ソース領域26と低濃度ボディ層24bを貫通してドリフト層22に達している。したがって、底部近傍の範囲で、第1部分31の両側面にドリフト層22が露出している。ドリフト層22の上側の範囲で、第1部分31の両側面に低濃度ボディ層24bが露出している。低濃度ボディ層24bの上側の範囲で、第1部分31の両側面にソース領域26が露出している。
【0029】
図1、3に示すように、各第2部分32は、外部範囲62内に置いて、低濃度ボディ層24bに隣接する位置に配置されている。z方向において、各第2部分32は、低濃度ボディ層24bを貫通してドリフト層22に達している。したがって、上面12a近傍の範囲で第2部分32の両側面に低濃度ボディ層24bが露出している。
【0030】
図2、3に示すように、ゲートトレンチ30内(すなわち、第1部分31及び第2部分32内)には、底部絶縁層34、ゲート絶縁膜36及びゲート電極38が配置されている。底部絶縁層34は、ゲートトレンチ30の底部近傍に配置された厚い絶縁層である。底部絶縁層34よりも上側のゲートトレンチ30の側面は、ゲート絶縁膜36(絶縁体の薄膜)に覆われている。素子範囲60内で、ソース領域26、低濃度ボディ層24b及びドリフト層22が、ゲート絶縁膜36に接している。底部絶縁層34の上側のゲートトレンチ30内には、ゲート電極38が配置されている。ゲート電極38は、底部絶縁層34及びゲート絶縁膜36によって、半導体基板12から絶縁されている。また、ゲート電極38の上面は、層間絶縁膜39によって覆われている。ゲート電極38は、層間絶縁膜39によって上部電極14から絶縁されている。
【0031】
半導体基板12は、複数の底部領域40と、複数の接続領域42をさらに有している。
【0032】
底部領域40は、p型領域である。図2、3に示すように、各底部領域40は、ゲートトレンチ30の底面に露出する範囲に形成されている。各底部領域40は、対応するゲートトレンチ30の底面に沿って伸びている。各底部領域40は、対応するゲートトレンチ30の底面全域(すなわち、第1部分31の底面全域と第2部分32の底面全域)に露出している。各底部領域40は、ドリフト層22によって互いから分離されている。また、各底部領域40は、接続領域42が形成されている範囲を除いて、ドリフト層22によって低濃度ボディ層24bから分離されている。
【0033】
接続領域42は、p型領域である。図1、3に示すように、各接続領域42は、ゲートトレンチ30の第2部分32の一方の側面32a(y方向の一端を画定する側面)に露出する範囲に形成されている。各接続領域42は、対応する第2部分32の側面32aに沿って伸びている。各接続領域42の上端は低濃度ボディ層24bに接続されている。各接続領域42の下端は対応する底部領域40に接続されている。接続領域42によって、低濃度ボディ層24bと底部領域40が互いに接続されている。第2部分32の他方の側面(側面32aの反対側の側面)には、接続領域42が形成されておらず、底部近傍の範囲でドリフト層22が露出している。
【0034】
なお、接続領域42の上側で側面32aに露出している範囲の低濃度ボディ層24b(すなわち、低濃度ボディ層24bの側面32a近傍の部分)のp型不純物濃度は、第1部分31の側面近傍における低濃度ボディ層24bのp型不純物濃度よりも高い。これは、後述するように、接続領域42を形成するための斜め注入工程において、第2部分32の側面32aの全域にp型不純物が注入されるためである。
【0035】
下部電極16の電位が上部電極14の電位よりも高い場合のMOSFET10の動作について説明する。ゲート電極38にゲート閾値以上の電位を印加すると、ゲート絶縁膜36近傍の範囲の低濃度ボディ層24bにチャネル(反転層)が形成される。チャネルによって、ソース領域26とドリフト層22が接続される。すると、上部電極14から、ソース領域26、チャネル、ドリフト層22及びドレイン層20を経由して下部電極16に電子が流れる。すなわち、MOSFET10がオンして電流が流れる。なお、外部範囲62にはソース領域26が形成されていないので、外部範囲62には主電流は流れない。
【0036】
ゲート電極38の電位をゲート閾値未満に低下させると、チャネルが消失してMOSFET10がオフする。すると、低濃度ボディ層24bとドリフト層22の界面のpn接合に逆電圧が印加されるため、低濃度ボディ層24bからドリフト層22内に空乏層が広がる。また、各底部領域40は接続領域42によって低濃度ボディ層24bに接続されているので、各底部領域40の電位は低濃度ボディ層24bの電位と略等しい。このため、各底部領域40とドリフト層22の界面のpn接合にも逆電圧が印加される。したがって、各底部領域40からドリフト層22内にも空乏層が広がる。このように、低濃度ボディ層24bと底部領域40から広がる空乏層によって、ドリフト層22の略全域が空乏化される。したがって、オフ状態のMOSFET10が高い電圧を保持することができる。また、上記のように各底部領域40からドリフト層22内に空乏層が広がることで、ゲートトレンチ30の底部の周辺に迅速に空乏層が広がる。これによって、ゲートトレンチ30の底部近傍に高い電界が生じることが抑制される。したがって、このMOSFET10は、高い耐電圧特性を有している。
【0037】
上述したように、MOSFET10では、ゲートトレンチ30の第1部分31の側面近傍の低濃度ボディ層24bのp型不純物濃度が低い。このため、当該箇所の低濃度ボディ層24bにチャネルが形成され易く、MOSFET10のゲート閾値が低い。また、当該箇所の低濃度ボディ層24bのp型不純物濃度が低いので、そのp型不純物濃度にばらつきが生じ難い。したがって、MOSFET10のゲート閾値にばらつきが生じ難い。
【0038】
次に、MOSFET10の製造方法について説明する。上述したドレイン層20と略同じn型不純物濃度を有するSiC基板(加工前の半導体基板12)を準備する。まず、図4に示すように、エピタキシャル成長によって、ドレイン層20上にドリフト層22を形成する。次に、図4に示すように、エピタキシャル成長によって、ドリフト層22上に低濃度ボディ層24bを形成する。
【0039】
次に、図5に示すように、イオン注入によって、低濃度ボディ層24b上に配置されるように、ソース領域26とボディコンタクト領域24aを形成する。図1に示すように、ソース領域26とボディコンタクト領域24aは、半導体基板12の上面12aの一部の範囲(素子範囲60)内に形成する。したがって、外部範囲62では、図4に示すように、低濃度ボディ層24bが上面12aに露出している状態が維持される。
【0040】
次に、図6、7に示すように、半導体基板12の上面12aにレジスト50を形成し、レジスト50に開口部52を形成する。開口部52は、ゲートトレンチ30を形成すべき範囲に形成する。次に、レジスト50を介して半導体基板12の上面12aをエッチングして、ゲートトレンチ30を形成する。なお、レジスト50に代えて、酸化膜に開口部を設けたものをマスクとして使用してもよい。
【0041】
次に、図8、9に示すように、レジスト50を介して半導体基板12に向けてp型不純物を照射する。ここでは、p型不純物の照射方向が上面12aに対して垂直となるように照射角度を設定する。レジスト50によってp型不純物の上面12aへの注入が防止される。開口部52を通過したp型不純物が、ゲートトレンチ30の底面に注入される。これによって、各ゲートトレンチ30の底面に露出する範囲に底部領域40が形成される。なお、ゲートトレンチ30の側面と底面に予め厚みが薄い酸化膜を形成しておき、酸化膜を貫通して底面にp型不純物を注入してもよい。このように酸化膜を設けると、酸化膜によってゲートトレンチ30の側面へのp型不純物の注入を抑制することができる。
【0042】
次に、図10、11に示すように、レジスト50を介して半導体基板12に向けて斜めにp型不純物を照射する(斜め注入工程)。ここでは、p型不純物の照射方向が上面12aに立てた法線13に対してx方向に平行な軸周りに傾斜するように(すなわち、法線13と照射方向の間に傾斜角度θが設けられるように)照射角度を設定する。レジスト50によってp型不純物の上面12aへの注入が防止される。また、開口部52を通過したp型不純物が、ゲートトレンチ30のy方向の端部を画定する一方の側面31a、32aに注入される。すなわち、図10に示すように、第1部分31では、y方向の一方の側面31aにp型不純物が注入される。また、図11に示すように、第2部分32では、y方向の一方の側面32aにp型不純物が注入される。このとき、各側面31a、32aにp型不純物が注入される深さ範囲は、y方向におけるゲートトレンチ30の幅によって異なる。
【0043】
第1部分31では、y方向の幅W1が第2部分32のy方向の幅W2よりも狭いので、側面31aの反対側のレジスト50や半導体層の陰になることで、側面31aの深い位置へのp型不純物の注入が抑制される。したがって、第1部分31では、側面31aの浅い位置にp型不純物が注入される。第1部分31では、D1=W1/tanθの関係を満たす距離D1が、Ds>D1の関係を満たすように、幅W1が設定されている。図10に示すように、距離D1は、レジスト50の上面から、側面31aにp型不純物が注入される範囲の下端の位置までのz方向の距離と略一致する。図10に示すように、距離Dsは、レジスト50の上面から、ソース領域26の下端の位置までのz方向の距離を表している。Ds>D1が満たされることで、側面31aにおいて、ソース領域26の下端の位置よりも下側の深さ範囲にp型不純物が注入されることが抑制される。すなわち、側面31aでは、低濃度ボディ層24bが露出している深さ範囲へのp型不純物の注入が抑制される。
【0044】
第2部分32では、y方向の幅W2が第1部分31のy方向の幅W1よりも広いので、側面32aにp型不純物が注入される深さ範囲が広い。第2部分32では、D2=W2/tanθの関係を満たす距離D2が、Ds<D2の関係を満たすように、幅W2が設定されている。距離D2は、レジスト50の上面から、側面32aにp型不純物が注入される範囲の下端の位置までのz方向の距離と略一致する。Ds<D2の関係が満たされることで、側面32aにおいて、ソース領域26の下端の位置よりも下側の深さ範囲にp型不純物が注入される。また、図11の距離Dbは、レジスト50の上面から、側面32aに露出している範囲のボディ層24の下端の位置までのz方向の距離を表している。第2部分32では、Db<D2の関係が満たされるように、幅W2が設定されている。このため、第2部分32の側面32aでは、低濃度ボディ層24bの下端の位置よりも下側の深さ範囲(すなわち、ドリフト層22が露出している深さ範囲)にp型不純物が注入される。これによって、側面32aに露出している範囲のドリフト層22がp型化し、p型の接続領域42が形成される。接続領域42によって、低濃度ボディ層24bと底部領域40が接続される。なお、第2部分32では、上述した距離D2が、レジスト50の上面からゲートトレンチ30の底面までのz方向の距離Dt(図11参照)よりも大きくなるように設定されていることが好ましい。このように距離D2を設定することで、側面32aの深さ方向の全域にp型不純物を注入することができる。したがって、接続領域42が底部領域40に接続され易くなる。
【0045】
以上に説明したように、斜め注入工程では、傾斜角度θ、幅W1及び幅W2が、Ds>D1及びDs<D2の両方の関係を満たすように設定されている。これによって、第1部分31では低濃度ボディ層24bへのp型不純物の注入を抑制しながら、第2部分32に接続領域42を形成することが可能とされている。
【0046】
次に、半導体基板12を熱処理することで、半導体基板12に注入された不純物を活性化させる。
【0047】
次に、図2、3に示すように、底部絶縁層34、ゲート絶縁膜36及びゲート電極38をゲートトレンチ30内に形成する。次に、層間絶縁膜39を形成し、層間絶縁膜39を覆うように上部電極14をさらに形成する。次に、半導体基板12の下面12bに下部電極16を形成する。以上の工程によって、図1〜3に示すMOSFET10が完成する。
【0048】
上述した実施形態の斜め注入工程によれば、ゲートトレンチ30の第1部分31の側面31aにおいて、低濃度ボディ層24bの深さ範囲にp型不純物が注入されることを抑制することができる。側面31a近傍の低濃度ボディ層24bはチャネルが形成される領域であるので、この部分の低濃度ボディ層24bにp型不純物が注入されるとMOSFET10のゲート閾値が高くなる。実施形態の製造方法によれば、この部分の低濃度ボディ層24bへのp型不純物の注入を抑制できるので、ゲート閾値の上昇を抑制できる。したがって、この方法によれば、MOSFET10のゲート閾値のばらつきを抑制することができる。また、この部分の低濃度ボディ層24bのp型不純物濃度は、MOSFETのオン抵抗にも影響する。したがって、上述した斜め注入工程によれば、オン抵抗のばらつきも抑制することができる。また、この製造方法によれば、従来の製造方法に対して工程を追加することなく側面31a近傍の低濃度ボディ層24bへのp型不純物の注入を抑制することができる。したがって、この方法によれば、効率的にMOSFET10を製造することができる。
【0049】
なお、実施形態の製造方法では、図10に示すように、斜め注入工程において、ソース領域26の深さ範囲内で第1部分31の側面31aにp型不純物が注入される。しかしながら、ソース領域26にp型不純物が注入されてもMOSFET10の特性にほとんど影響はない。
【0050】
また、実施形態の製造方法では、図11に示すように、斜め注入工程において、低濃度ボディ層24bの深さ範囲内で第2部分32の側面32aにp型不純物が注入される。しかしながら、接続領域42の上部の低濃度ボディ層24bは電流経路とならないので、この部分の低濃度ボディ層24bにp型不純物が注入されても、MOSFET10の特性にほとんど影響はない。
【0051】
なお、図12に示すように、第1部分31のx方向の両端部に第2部分32が設けられていてもよい。
【0052】
また、図13に示すように、2つの第1部分31を接続するように第2部分32が設けられていてもよい。また、図13に示すように、素子範囲60内に接続領域42が設けられていても、特に問題はない。この場合、図14に示すように、ソース領域26と低濃度ボディ層24bを貫通するようにゲートトレンチ30の第2部分32が形成される。接続領域42は、第2部分32のy方向の一方の側面32aに沿って形成される。接続領域42は、ソース領域26の下部に形成される。このように、ソース領域26の下部に接続領域42を形成しても、低濃度ボディ層24bと底部領域40とを接続することができる。但し、図13に示すようにソース領域26の下部に接続領域42を形成すると、素子範囲60内の電流経路が少なくなる。したがって、接続領域42がソース領域26が配置されていない範囲(例えば、外部範囲62)に形成されている方がより好ましい。
【0053】
また、上述した実施形態では、ソース領域26及びボディコンタクト領域24aを形成してからゲートトレンチ30を形成した。しかしながら、ソース領域26及びボディコンタクト領域24aを、ゲート電極38を形成した後に形成してもよい。この場合、図15に示すように、斜め注入工程の実施時にソース領域26が存在していない。この場合、第1部分31の側面31aでは、後で形成されるソース領域26の下端の位置(図15の位置56)よりも上側にp型不純物が注入されるようにすることで、チャネルが形成される領域へのp型不純物の注入を抑制することができる。
【0054】
また、上述した実施形態では、低濃度ボディ層24bをエピタキシャル成長によって形成した。しかしながら、低濃度ボディ層24bをp型不純物のイオン注入によって形成してもよい。この場合、低濃度ボディ層24bを、ゲート電極38を形成した後に形成してもよい。
【0055】
また、上述した実施形態では、底部領域40へのp型不純物の注入工程を実施してから、斜め注入工程を実施した。しかしながら、これらの工程の実施順序を逆にしてもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、nチャネル型のMOSFETについて説明したが、本明細書に開示の技術を他の絶縁ゲート型スイッチング素子(例えば、pチャネル型のMOSFET、IGBT等)に適用してもよい。
【0057】
上述した実施形態の構成要素と請求項の構成要素との関係を説明する。実施形態のドリフト層22は、請求項の第1半導体領域の一例である。実施形態のソース領域26は、請求項の第2半導体領域の一例である。実施形態のy方向は、請求項の第1方向の一例である。実施形態のx方向に平行な軸(斜め注入工程における注入方向の傾斜軸)は、請求項の半導体基板の表面において第1方向と直交する軸の一例である。実施形態の側面31aは、請求項の第1側面の一例である。実施形態の側面32aは、請求項の第2側面の一例である。
【0058】
なお、上述した実施形態においては、接続領域が、半導体基板を平面視したときに第2半導体領域が存在しない範囲(例えば、外部範囲)に形成されることが好ましい。この構成によれば、絶縁ゲート型スイッチング素子の電流経路を減らすことなく接続領域を形成することができる。
【0059】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0060】
10 :MOSFET
12 :半導体基板
14 :上部電極
16 :下部電極
20 :ドレイン層
22 :ドリフト層
24 :ボディ層
26 :ソース領域
30 :ゲートトレンチ
31 :第1部分
32 :第2部分
34 :底部絶縁層
36 :ゲート絶縁膜
38 :ゲート電極
39 :層間絶縁膜
40 :底部領域
42 :接続領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16