(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571471
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、発泡体、微生物担体および発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/08 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
C08J9/08CES
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-189412(P2015-189412)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-66178(P2017-66178A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】笠田 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】金山 学
【審査官】
安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−163128(JP,A)
【文献】
特開2001−002818(JP,A)
【文献】
特表2007−515743(JP,A)
【文献】
特開2009−066592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00−9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形に用いられる熱可塑性樹脂、無機粉末、発泡剤、発泡助剤を含む原料を溶融混練した樹脂組成物であって、
前記発泡剤は重曹であり、
前記発泡助剤はポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)であり、
前記ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)の中和度は、COOH/COONa=65/35〜50/50(モル比)であり、
前記重曹およびポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)の量が前記熱可塑性樹脂と無機粉末の合計100重量部に対して重曹が1〜5重量部、かつポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)が2〜25重量部であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載した樹脂組成物を用いて作成された発泡体。
【請求項3】
請求項1に記載した樹脂組成物を用いて作成された発泡体からなる微生物担体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂、無機粉末、発泡剤、発泡助剤を含む原料を溶融混練して発泡成形する発泡体の製造方法において、
前記発泡剤に重曹を使用し、
前記発泡助剤にポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)を使用し、
前記ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)の中和度は、COOH/COONa=65/35〜50/50(モル比)であり、
前記重曹およびポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)の量が前記熱可塑性樹脂と無機粉末の合計100重量部に対して重曹が1〜5重量部、かつポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)が2〜25重量部であることを特徴とする発泡体の製造方法。
【請求項5】
前記発泡体が微生物担体用の発泡体であることを特徴とする請求項4に記載の発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形に好適な樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いて成形された発泡体、前記発泡体からなる微生物担体、および発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡成形の一つである押出発泡成形により微生物担体用発泡体を製造する方法として、オレフィン系樹脂、親水化剤としてのセルロース系粉末、発泡剤としての重曹を含む混練物を押出発泡する発泡体の製造方法がある(特許文献1)。
【0003】
従来の押出発泡成形では、発泡剤として重曹を用いているため、押出発泡時に重曹から生成されたNa
2CO
3が発泡体に含まれることになり、製造した発泡体を微生物担体として汚水等の処理水に投入すると、発泡体に含まれているNa
2CO
3が水中に溶出して処理水のpHが上昇するようになる。しかし、一般的に、水棲微生物の生育環境としてはpH6〜8が最適なため、発泡体の使用によってpHが上昇した処理水に対して何らかの中和処理が必要になる問題がある。
【0004】
なお、前記pH制御のためにクエン酸等の低分子多価酸を添加して押出発泡成形すると、過剰発泡してセルが不均一になり、良好な発泡体が得られなくなる。また、得られる発泡体は水に対する沈降性が低下し、微生物担体として使用する場合には処理効率が悪くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5650373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、水に投入した場合にpHの上昇を抑えることができ、微生物担体のようにpHの制御が必要な用途に好適な発泡体の製造に用いられる樹脂組成物、前記樹脂組成物を用いて成形された発泡体、前記発泡体からなる微生物担体および発泡体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、発泡成形に用いられる熱可塑性樹脂、無機粉末、発泡剤、発泡助剤を含む原料を溶融混練した樹脂組成物であって、前記発泡剤は重曹であり、前記発泡助剤はポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)であ
り、前記ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)の中和度は、COOH/COONa=65/35〜50/50(モル比)であり、前記重曹およびポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)の量が前記熱可塑性樹脂と無機粉末の合計100重量部に対して重曹が1〜5重量部、かつポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)が2〜25重量部であることを特徴とする樹脂組成物に係る。
【0009】
請求項
2の発明は、請求項
1に記載した樹脂組成物を用いて作成された発泡体に係る。
【0010】
請求項
3の発明は、請求項
1に記載した樹脂組成物を用いて作成された発泡体からなる微生物担体に係る。
【0011】
請求項
4の発明は、熱可塑性樹脂、無機粉末、発泡剤、発泡助剤を含む原料を溶融混練して発泡成形する発泡体の製造方法において、前記発泡剤に重曹を使用し、前記発泡助剤にポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)を使用
し、前記ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)の中和度は、COOH/COONa=65/35〜50/50(モル比)であり、前記重曹およびポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)の量が前記熱可塑性樹脂と無機粉末の合計100重量部に対して重曹が1〜5重量部、かつポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)が2〜25重量部であることを特徴とする。
【0013】
請求項
5の発明は、請求項
4において、前記発泡体が微生物担体用の発泡体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発泡助剤にポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)を使用するため、発泡剤を入手が容易かつ安価な重曹としても、水中へ投入した場合にpHの上昇を抑えることのできる発泡体を製造することができ、微生物担体のようにpHの制御が必要な用途に好適な発泡体を安価に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の樹脂組成物、発泡体、微生物担体および発泡体の製造方法について説明する。
本発明の樹脂組成物は、押出発泡成形や発泡射出成形等の発泡成形に好適なものであり、熱可塑性樹脂、無機粉末、発泡剤、発泡助剤を含む原料を溶融混練した樹脂組成物である。
【0016】
熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂が好適である。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリメタクリル酸メチル等を挙げることができ、それらを単独で使用または二種以上の混合物を使用することができる。なお、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の何れでもよい。
【0017】
無機粉末は、発泡体の比重調整、発泡時の気泡調整、他の材料の使用量低減のために使用される。無機粉末としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、亜リン酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、タルク、酸化チタン、チタン酸カルシウム、水酸化アルミニウム等を挙げることができ、それらを単独または組み合わせて使用することができる。無機粉末の量は、熱可塑性樹脂:無機粉末=30:70〜80:20(重量比)が好ましい。
【0018】
発泡剤は、重曹(重炭酸ナトリウム)が使用される。重曹は、分解温度が低く、かつ安価なため、発泡剤として好適なものである。重曹の量は、熱可塑性樹脂と無機粉末の合計100重量部に対して1〜5重量部が好ましい。
【0019】
発泡助剤は、発泡を良好に行わせるために添加される。発泡助剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)が必須である。ポリ(メタ)アクリル酸部分中和物は、非架橋型、架橋型の何れでもよく、また部分中和物であってもよい。ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)の量は、熱可塑性樹脂と無機粉末の合計100重量部に対し、重曹が1〜5重量部。これに対し、ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)が2〜25重量部が好ましい。ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)の量が少ないと発泡セルが不均一になり、かつ、水中へ投入した時にpH10以上になり、逆に多いと水中へ投入した時に増粘され、共に微生物担持体として好ましくない。また、ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)と共に他の発泡助剤を併用してもよい。ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)と併用可能な発泡助剤として、例えば脂肪酸グリセリンを挙げることができる。
【0020】
その他適宜添加される添加剤として多孔性鉱物が挙げられる。
多孔性鉱物は、吸水物質として添加され、パーライト、ゼオライト、バイコールガラス等が挙げられる。多孔性鉱物の量は、熱可塑性樹脂と無機粉末の合計100重量部に対して0〜50重量部が好ましい。
【0021】
発泡体の製造方法は、前記樹脂組成物で説明した熱可塑性樹脂、無機粉末、発泡剤、発泡助剤、その他適宜添加される添加剤を含む原料を溶融混練して発泡成形することにより発泡体を製造する。発泡成形は、押出発泡成形に限らず、発泡射出成形等を用いることもできる。以下、押出発泡成形の例について説明する。
発泡体の製造は、前記熱可塑性樹脂、無機粉末、発泡剤、発泡助剤及び適宜の添加剤を前記の量で押出機に投入し、押出機内で溶融混練してストランド上に押出して発泡させることにより発泡体を形成し、その発泡体を水中冷却槽を通して冷却硬化させペレタイザーで切断してペレット状の発泡体とすることにより行う。
【0022】
前記ペレットの断面形状は、円形、楕円形、三角形・四角形・十字形、等にすることができる。この場合、断面形状を円形以外の上記形状とすることにより、ペレット状発泡体の表面積が増大し、発泡体を微生物担体とする場合、微生物の付着効率が高まる効果があり、微生物担体の処理効率が向上する。
【0023】
前記押出機は単軸、二軸、三軸以上の多軸のいずれでもよい。二軸、多軸は混練効果が高く、より好ましい。押出条件の例として押出機の温度を150〜200℃、吐出量を20kg/hとする例を挙げる。また、ペレット状に切断して得られる発泡体の寸法は、発泡体の用途に応じて適宜の寸法とされるが、微生物担体用としては、直径1〜5mm、長さ1〜10mm程度が好ましい。
【0024】
前記の製造方法で得られた発泡体は、水中へ投入した場合にpHの上昇を抑えることができ、微生物の成育環境として好適なpH6〜8に近づけることができ、微生物担体として好適なものである。
【実施例】
【0025】
以下の成分を表1の配合にして、押出成形機(品名:KTX30、神戸製鋼製)で溶融混練し、直径3mmのストランド状に押し出して発泡させ、ペレタイザーで長さ3mmで切断し、各実施例及び各比較例のペレット状発泡体を製造した。溶融混練条件はバレルおよびダイ温度180℃、スクリュー回転数400rpm、吐出量20kg/hである。
【0026】
・ポリエチレン:高密度ポリエチレン(HDPE)、東ソー製「ニポロンハード2500」
・炭酸カルシウム:丸尾カルシウム製「R重炭」
・硫酸バリウム:丸尾カルシウム製「白バライト鉱石粉砕品」
・リン酸カルシウム:松尾薬品産業製「リン酸一水素カルシウム(無水物)」
(※「リン酸カルシウム」、「亜」は、不要。)
・パーライト:三井金属鉱業製「ロカヘルプ439」
・重曹:キシダ化学製「一級炭酸水素ナトリウム」
・脂肪酸グリセリン:理研ビタミン製「s−100」
・クエン酸:磐田化学製「クエン酸(結晶)」
・ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)(1):ポリアクリル酸部分中和物、中和度はCOOH/COONa=65/35(モル比)、昭和電工製[ビスコメートNP−800]
・ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)(2):ポリアクリル酸部分中和物、中和度はCOOH/COONa=50/50(モル比)、昭和電工製[ビスコメートNP−700]
【0027】
各実施例及び各比較例の発泡体に対し、pH、発泡セルの均一性、沈降性について測定及び判定を行った。
pHの測定は、発泡体50gを蒸留水300mlに投入し、5分間マグネチックスターラ―750rpmで撹拌した後に蒸留水のpHを堀場製作所製「pH METER F−12」で測定した。pHの測定結果に対する判定は、一般的に水棲微生物の生育に適するpH値が6〜8であることから、測定結果がpH7.9以下の場合に「◎」(最良)、pH8.0〜8.9の場合に「〇」(良)、pH9.0以上の場合に「×」(不良)とした。
発泡セルの均一性の判定は、発泡体の断面状態を目視で観察し、セルが全体に均一に分布し、且つ海綿状の場合に「◎」(最良)、セルが全体に均一に分布しているが海綿状ではない場合に「〇」(良)、セルが不均一に分布あるいは発泡していない場合に「×」(不良)とした。
沈降性の判定は、発泡体100個を300mLの水へ投入してマグネチックスターラ―750rpmにより撹拌し、撹拌開始後30分の時点と、1時間後の時点において、沈降済みの発泡体の個数を数え、撹拌開始後30分以内に沈降した発泡体個数が発泡体全個数の90%以上の場合に「◎」(最良)、撹拌開始後1時間以内に沈降した発泡体個数が発泡体全個数の90%以上の場合に「〇」(良)、撹拌開始後1時間経過しても沈降した発泡体が発泡体全個数の89%以下の場合に[×](不良)とした。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例1〜8は、pHの判定、発泡体セルの判定及び沈降性の判定が何れも「◎」又は「〇」であり、微生物担体として好適な発泡体であった。
【0030】
一方、比較例1〜8は、実施例1〜8に対応した例であって、ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)を使用しない例である。なお、比較例6では、ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)に代えてクエン酸を使用した。ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)およびクエン酸を使用しない比較例1〜5及び比較例7、8は、少なくともpHの判定が「×」であり、微生物担体として好ましくなかった。
また、ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)に代えてクエン酸を使用した比較例6は、pHの判定では「◎」であったが、発泡セル均一性の判定及び沈降性の判定が何れも「×」であり、微生物担体として好ましくなかった。
【0031】
比較例9〜12は、ポリ(メタ)アクリル酸(部分中和物)を含まない他の比較例であり、何れもpHの判定が「×」であり、微生物担体として好ましくなかった。
【0032】
このように、本発明の樹脂組成物、および発泡体の製造方法によって得られる発泡体は、発泡セルの均一性が良好であり、かつ水に投入した場合にpHの上昇を抑えることができ、しかも沈降性が良好なため、微生物担体として好適なものである。なお、本発明によって得られる発泡体は、微生物担体に限られるものではなく、水に投入した場合にpHの上昇が好ましくない用途、例えば、漁礁、藻礁、防波壁等にも適するものである。