(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1を
図1および
図2を用いて説明する。
図1は基板処理装置1の平面図である。
図2は基板処理装置1の内部側面図である。
この基板処理装置1は、基板の一例としての半導体ウエハW(以下、単に「基板W」という。)を1枚ずつ処理する枚葉型の装置である。基板処理装置1は、概略、複数枚のウエハWが格納されたカセットCを載置する複数のカセット載置台2、カセット載置台2に載置されたカセットCとの間で基板Wの搬出および搬入を行うインデクサロボットIRが配置されたインデクサエリア3、基板Wに対して洗浄処理・乾燥処理等の処理を行う複数の処理ユニット4および処理ユニット4に向けて基板Wを搬送するセンタロボットCRが配置された処理エリア5、並びに、インデクサエリア4と処理エリア5との間で基板Wの受渡しを行う受渡しエリア6を備えている。
【0016】
図3はカセットCの正面図である。カセットCは正面に開口C1が形成された筐体C2と、筐体C2の内部で基板Wの周縁部を基板Wの下面から支持する支持部C3と、開口C1を閉塞する図示しない蓋部材C4とを有している。上下に隣接する支持部C3同士の間隔は均一な距離C5とされているため、複数(ここでは4枚)の基板Wは筐体C2の内部において等間隔C5で支持される。なお、
図2では最大4枚の基板Wを格納するカセットCが例示されているが、カセットCに格納する基板Wの枚数は4枚に限らず、例えば25枚であってもよい。複数の基板Wの上下方向の位置は支持部C3により規定される。各基板Wが支持部C3に正常に載置されたときの各基板Wの上下位置を標準高さh1〜h4とする。
【0017】
図2に示すように、インデクサエリア3の基板載置台2に対向する側の隔壁7には開口8が形成されており、カセットC内の基板Wはこの開口8からインデクサエリア3に搬入される。開口8は通常はインデクサエリア3の内側から閉止部材9により閉止されている。閉止部材9は開閉部材10により隔壁7から離隔する方向(+X方向)および隔壁7に接近する方向(−X方向)に進退可能とされている。開口8を開放する際にはまずカセットCを隔壁7に密接させる。その上で、カセットCの蓋部材C4を閉止部材9に固着する。次に、開閉部材10は閉止部材9を+X方向に移動し、最後に
図2に示す位置から下方向に移動する。なお、閉止部材9の上面には、後述する撮像工程を実行するためのカメラ11が取り付けられている。カメラ11は閉止部材9が下方向に移動する際にカセットCの内部を撮影し、カセットC内部における各基板Wの保持位置および各基板Wの形状を取得する。
【0018】
インデクサエリア4にはインデクサロボットIRが配置されている。インデクサロボットIRは、基板Wを保持するための上下方向に重ねられた2本のハンド21、22を有している。インデクサロボットIRはハンド21および22を個別に水平方向に進退させるIR進退機構23を有している。インデクサロボットIRはさらに、ハンド21、22およびIR進退機構23を一体的に回動させるとともに、上下方向、X軸方向、およびY軸方向に移動させるIR移動機構24を有している。
【0019】
処理エリア5にはセンタロボットCRが配置されている。インデクサロボットIRは、基板Wを保持するための上下方向に重ねられた2本のハンド31、32を有している。センタロボットCRはハンド31および22はそれぞれ個別に水平方向に進退させるCR進退機構33を有している。センタロボットCRはさらに、ハンド31、32およびCR進退機構33を一体的に回動させるとともに、上下方向、X軸方向、およびY軸方向に移動させるCR移動機構34を有している。
【0020】
受渡エリア6には、上下方向に重ねられた2枚の載置板41、42が配置されている。下側の載置板42は未処理基板Wをインデクサエリア3から処理エリア5に受け渡す際に使用される。すなわち、インデクサロボットIRは下側のハンド22を使用してカセットCから未処理の基板WをカセットCから取り上げる。そして、その基板Wを下側の載置板42に載置する。センタロボットCRはその未処理基板Wを下側のハンド32により取り上げる。これにより未処理基板Wのインデクサエリア3から処理エリア5への受渡しが実行される。センタロボットCRは下側のハンド32が保持する基板Wを所望の処理ユニット4に搬入する。
【0021】
一方、上側の載置板41は処理ユニット4で処理された基板Wを処理エリア5からインデクサエリア3に戻す際に使用される。すなわち、センタロボットCRは上側のハンド31を使用して処理済の基板Wを処理ユニット4から取り上げる。次に、その基板Wを上側の載置板41に載置する。インデクサロボットIRはその処理済基板Wを上側のハンド21で取り上げる。これにより未処理基板Wのインデクサエリア3から処理エリア5への受渡しが実行される。インデクサロボットIRは上側のハンド31が保持する基板Wを所望の(通常は元の)カセットCに搬入する。
【0022】
図4は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。基板処理装置1は、基板処理装置1を制御する制御部50と、後述する各種データを記憶する記憶部60とを有している。
【0023】
制御部60は、カメラ11が撮像した撮像画像に基づいてカセットC内に配置された複数の基板Wのそれぞれの配置位置および形状を認識する形状認識部51と、記憶部60の後述する基準配置位置データ61、基準形状データ62および閾値データ63などに基づいて各種判定を行う判定部52と、判定部52の判定結果に基づいて記憶部60内の後述する基準ティーチングデータ64を補正し、補正後のティーチングデータ64(補正ティーチングデータ65)を記憶部60に出力するデータ補正部53と、判定部52による判定結果を参照して基板処理装置1における複数の基板Wの搬送計画を作成する搬送計画部54と、搬送計画部54が作成した搬送計画に沿ってIR進退機構23、IR移動機構24、CR進退機構33、およびCR移動機構34などを制御して基板Wの搬送を行わせる搬送制御部55、とを備えている。
【0024】
記憶部60は、基準配置位置データ60、基準基板形状データ61、閾値データ63、基準ティーチングデータ64を予め記憶している。基準配置位置データ60とは、カセットC内に正常に載置された基板Wの配置位置に関するデータである。基準基板形状データ61とは、基板処理装置1で一般的に使用される基板Wの形状に関するデータである。閾値データ63とは、インデクサロボットIRやセンタロボットCRが安全に基板Wを搬送することのできる、基準配置位置データ60および基準基板形状データ61からの逸脱量に関するデータである。基準ティーチングデータ64とは、基準位置に配置された基準形状の基板WをインデクサロボットIRやセンタロボットCRが搬送する際に、制御部50が指標とする位置座標データである。
【0025】
記憶部60には、また、後述するティーチングデータ補正処理によって生成される補正ティーチングデータ65を記憶できるように構成されている。
【0026】
次に、
図4および
図5を参照して基板処理装置1における基板搬送制御について説明する。
図5は、基板搬送制御を説明するためのフローチャートである。カセット載置台2には複数の基板Wを格納したカセットCが載置され、カセットCの開口C1は蓋部材C4により閉塞されているとする。この状態から、制御部50は開閉部材10を制御して閉止部材9に蓋部材C4を保持させる。次に、閉止部材9を+X方向に移動させて開口C1を開放する。その状態で閉止部材9を下降させる。閉止部材9が下降する際、カメラ11はカセットCの内部を撮像し、カセットC内部の二次元の撮像画像Imを取得する(撮像工程S1)。撮像画像Imは形状認識部51に送られ、カセットC内の各基板Wの保持位置や水平面に対する傾斜角度、厚み、輪郭、Z方向に対する湾曲状態などが認識される。
【0027】
図6は、撮像工程S1の結果取得される標準的な撮像画像Imの一例である(撮像画像Im1)。撮像画像Im1において、各基板W1〜W4の保持位置は標準高さh1〜h4と一致している。したがって、各基板W1〜W4は前述した支持部C3(
図3参照)に正常に載置されていることが分かる。標準高さh1〜h4は、前述した基準配置位置データ61の一例である。
【0028】
一方、基板WがカセットCの支持部C3上に正常に載置されないことがある。
図7はこの場合に撮像される撮像画像Imの一例である(撮像画像Im2)。撮像画像Im2においては、カセットCに収納されている基板W1、W3およびW4の保持位置は標準高さh1、h3およびh4と一致している。しかし、上から2枚目の基板W2がY方向に傾き、標準高さh2からずれている。また、
図8に示す撮像画像Im3では、基板W2が前後に(X軸方向に)傾斜している。
図8の基板W2は標準高さh2で保持されているが、前後に傾斜しているため見かけの厚みが増加している。
【0029】
さらに、基板処理装置1では特殊形状の基板Wが使用されることがある。
図9は特殊形状の基板Wの一例を示す撮像画像Imである(撮像画像Im4)。すなわち、各基板W1〜W4の保持位置は標準高さh1〜h4に一致しているが、上方に湾曲した形状を呈している。一方、
図10は特殊形状の基板Wの別例を示す撮像画像Imである(撮像画像Im5)。すなわち、各基板W1〜W4の保持位置は標準高さh1〜h4に一致しているが、下方に湾曲した形状を呈している。なお、図示は省略するが、通常とは異なる厚みの基板Wを特殊形状の基板として取り扱ってもよい。
【0030】
図5のフローチャートに戻る。撮像工程S1の実行後、基板W毎に、撮像画像Imを用いて、以下で説明する判定工程と、各種ティーチングデータTDの補正とが順次実行される。まず、第1判定工程S2が実行される。第1判定工程S2では、撮像工程S1の形状認識により取得された基板WがカセットC内の基準位置に保持されているかが、判定部52により判定する。例えば、基板Wの保持位置が標準高さh1〜h4のいずれかに一致する場合には位置ずれがないため「否定」と判定される。第1判定工程S2で「否定」と判定されると、工程S10に移行する。工程S10では、カセットCに格納されている全ての基板Wの判定作業が完了したか判断する。工程S10で「肯定」と判定されると工程S12に移行し、「否定」と判定されると工程S11に移行する。工程S11では判定対象の基板Wを次の基板Wに変更する。
【0031】
第1判定工程S2で「肯定」と判定された場合には、第2判定工程S3に移行する。
【0032】
第2判定工程S3では、判定部52は、判定対象の基板Wの保持位置と閾値データ63とを比較することで、保持位置のずれ量が許容可能な大きさか否か判定する。例えば、第1判定工程S2ではインデクサロボットIRのハンド21、22によりカセットC内から判定対象の基板Wが搬出可能であれば「肯定」と判定される。
【0033】
また、第2判定工程S3では、判定部52は、判定対象の基板Wの形状と閾値データ63とを比較することで、判定対象の基板Wの形状が、インデクサロボットIRによる基板Wの搬送や受渡エリア6へのアクセスに支障がないか、センターロボットCRによる基板Wの搬送や、受渡エリア6および処理ユニット4へのアクセスに支障がないかの判定も実行する。これらがいずれも支障なしと判定された場合には「肯定」と判定され、第3判定工程S4に移行する。一方、第2判定工程が「否定」と判定されると、工程S10に移行する。
【0034】
第3判定工程S4では、判定部52は、判定対象の基板Wが単に基準位置からずれてカセットCに保持されているだけなのか(
図7、
図8参照)、何等かの特殊形状(
図8、
図9参照)を有しているのかを、ステップS1で得られた形状認識の結果から判断する。
【0035】
第3判定工程S4で、判定対象の基板Wが単に基準位置からずれてカセットCに保持されているだけであると判定された場合には、第1TD補正工程S5に移行する。前述のように、記憶部60には、インデクサロボットIRがカセットC内の基準位置に保持された基板Wにアクセスする際のティーチングデータが基準ティーチングデータTD64として記憶されている。第1TD補正工程S5では、データ補正部53は、撮像工程S1で取得された基板Wの保持位置と基準位置とのずれ量に基づいて、基準ティーチングデータTD64を補正して補正ティーチングデータTD65を生成する。これにより、インデクサロボットIRは判定対象基板Wの保持位置に拘わらず、インデクサロボットIRはカセットCから基板Wを安全に搬出できるようになる。例えば、
図7の基板W2のように斜めに保持されている場合であれば、インデクサロボットIRのIR進退機構23およびIR移動機構24用のティーチングデータを補正して、ハンド22をX方向に回動させハンド22の基板保持面が基板W2の傾斜角に一致するように設定する。あるいは、
図8の基板W2のように前後に傾斜している場合であれば、ハンド22のカセットCに対する移動軌跡がX軸方向およびZ軸方向において通常と異るものとなるように、インデクサロボットIRのIR進退機構23およびIR移動機構24用のティーチングデータを補正する。
【0036】
一方、第4判定工程S4で、判定対象の基板Wが特殊形状基板Wであると判定された場合には、第2TD補正工程S6に移行する。第2TD補正工程S6では、データ補正部53は、撮像工程S1で取得された基板Wの形状に基づいて、インデクサロボットIRがカセットCにアクセスする際の基準ティーチングデータ64を補正して補正ティーチングデータ65を生成する。すなわち、対象基板Wの基準基板形状からのずれ量に応じて基準ティーチングデータ64を補正する。これにより、判定対象の基板Wが特殊形状であっても、インデクサロボットIRはカセットCから基板Wを安全に搬出でき、また、カセットCに基板Wを安全に搬入できるようになる。例えば、
図9および
図10の基板W1〜W4のように、+Z方向に湾曲している場合であれば、ハンド22のカセットCに対する移動軌跡がZ軸方向において通常と異なるものとなるように、インデクサロボットIRのIR進退機構23およびIR移動機構24用のティーチングデータ64を補正する。
【0037】
次に、第3TD補正工程S7に移行する。第3TD補正工程S7では、データ補正部53は、撮像工程S1で取得された基板Wの形状に基づいて、インデクサロボットIRが受渡エリア6にアクセスする際の基準ティーチングデータTD64を補正して補正ティーチングデータTD65を生成する。これにより、判定対象の基板Wが特殊形状であっても、インデクサロボットIRは受渡エリア6の載置板42に基板Wを安全に載置でき、また、載置位置41から基板Wを安全に基板を搬出できるようになる。例えば、
図9および
図10の基板W1〜W4のように、+Z方向に湾曲している場合であれば、ハンド21および22の受渡エリア6に対する移動軌跡がZ軸方向において通常と異なるものとなるように、インデクサロボットIRのIR進退機構23およびIR移動機構24用のティーチングデータ64を補正する。
【0038】
次に、第4TD補正工程S8に移行する。第4TD補正工程S8では、データ補正部53は、撮像工程S1で取得された基板Wの形状に基づいて、センタロボットCRが受渡エリア6にアクセスする際の基準ティーチングデータTD64を補正して補正ティーチングデータTD65を生成する。これにより、判定対象の基板Wが特殊形状であっても、センタロボットCRは受渡エリア6の載置板42から基板Wを安全に搬出でき、また、載置位置41に基板Wを安全に基板を載置できるようになる。例えば、
図9および
図10の基板W1〜W4のように、+Z方向に湾曲している場合であれば、ハンド31および32のカセットCに対する移動軌跡がZ軸方向において通常と異なるものとなるように、センタロボットCRのCR進退機構33およびCR移動機構34用のティーチングデータ64を補正する。
【0039】
次に、第5TD補正工程S9に移行する。第5TD補正工程S9では、データ補正部53は、撮像工程S1で取得された基板Wの形状に基づいて、センタロボットCRが処理ユニット4にアクセスする際の基準ティーチングデータTD64を補正して補正ティーチングデータTD65を生成する。これにより、判定対象の基板Wが特殊形状であっても、センタロボットCRは処理ユニット4に安全に搬入でき、また、処理済の基板Wを安全に処理ユニット4から搬出できるようになる。例えば、
図9および
図10の基板W1〜W4のように、Z方向に湾曲している場合であれば、ハンド31および32の処理ユニット4に対する移動軌跡がZ軸方向において通常と異なるものとなるように、センタロボットCRのCR進退機構33およびCR移動機構34用のティーチングデータ64を補正する。
【0040】
以上説明した工程S1〜工程S11が全ての基板Wについて実行されると(工程S10で「肯定」と判定されると)、搬送計画工程S12に移行する。搬送計画工程S12では、搬送計画部54は、カセットCに格納された各基板Wのうち、第2判断工程S3で「許容不可」と判断された基板W以外の各基板Wを処理ユニット4に搬送し、処理済の基板Wを再びカセットCまで搬送するための基板搬送計画を作成する。
【0041】
次に、基板搬送工程S13に移行する。基板搬送工程S13では、搬送制御部55は搬送計画部54が作成した基板搬送計画にしたがって、IR進退機構23、IR移動機構24、CR進退機構33およびCR移動機構34等を制御して、カセットCに格納されている全ての基板Wを順次搬送する。この際に、搬送される基板Wに対応する補正ティーチングデータ65が記憶部60から読み出されて、搬送制御部55に動的に適用される。これにより、搬送制御部55は、各基板Wの形状等に応じて作成された補正ティーチングデータ65に従ってIR進退機構23等を制御することが可能となる。このため、搬送制御部55は基板Wの形状等に拘わらず安全に基板Wを搬送することが可能となる。
【0042】
なお、前述の実施形態では、基板Wの湾曲量を基板W毎に取得し、この湾曲量に応じて補正ティーチングデータ65を基板W毎に作成した。しかし、典型的な基板形状が複数種類存在する場合には、これらの典型的な基板形状毎に補正ティーチングデータ65を予め記憶部60に記憶しておき、搬送する基板がいずれの形状に属するかを判断しつつ、これらのティーチングデータ65を切り替えて搬送制御部55に適用するようにしてもよい。
【0043】
前述の実施形態では、カメラ11で撮像することによりカセットC内の基板形状を取得したが、キーボード・マウス等の適宜の入力手段を用いて各基板の形状を制御部50に入力するようにしてもよい。