特許第6571479号(P6571479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571479
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】滑車及び該滑車を備えたデッキクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/04 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   B66D3/04 E
   B66D3/04 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-198633(P2015-198633)
(22)【出願日】2015年10月6日
(65)【公開番号】特開2017-71466(P2017-71466A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】310020482
【氏名又は名称】株式会社相浦機械
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 羊平
【審査官】 加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−327384(JP,A)
【文献】 特開平09−151072(JP,A)
【文献】 特開2011−225318(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/065183(WO,A1)
【文献】 実開昭56−121071(JP,U)
【文献】 特開昭59−153793(JP,A)
【文献】 米国特許第07347411(US,B1)
【文献】 米国特許第04640496(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 3/04
B66B 7/00− 7/12
B66B 11/08
B66C 19/00− 23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持軸を中心として回転自在に設けられるシーブと、
該シーブの外周面を覆うように設けられる保護カバーと
を備えた滑車において、
前記保護カバーは、前記シーブの外周面を覆う閉位置と、前記シーブの外周面を部分的に露出させる開位置との間で切換自在となるよう可動式に配置され
前記シーブは、
ロープ溝が外周部に形成されたシーブ本体と、
該シーブ本体のロープ溝に着脱自在に取り付けられる溝保護部材と、
該溝保護部材を該シーブ本体に固定する締結部材と
を備え、
前記保護カバーは、
固定カバー部と可動カバー部とに分割形成され、
該可動カバー部の一端が開閉部材によって前記固定カバー部に開閉自在となるよう取り付けられ、前記可動カバー部の他端が前記閉位置でロック部材によって固定され、
前記保護カバーを固定カバー部と可動カバー部とに分割形成する位置は、前記可動カバー部の長さが少なくとも前記溝保護部材より長く設定される位置とした滑車。
【請求項2】
請求項記載の滑車を備えたデッキクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑車及び該滑車を備えたデッキクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンテナ船やバラ物運搬船等の貨物船に配備されるデッキクレーンの場合、ドラムから巻き出されてシーブに掛け回されるワイヤロープにより吊荷を吊り上げ下げするようになっている。
【0003】
前記シーブには非常に大きな荷重が作用するため、強度の高い金属製のシーブが広く採用されている。
【0004】
一方、前記シーブに掛け回されるワイヤロープは、前記シーブのロープ溝との間で摩擦が生じるため、長期の使用によって損耗する。そこで、ワイヤロープの長寿命化を図るべく、シーブ本体を樹脂で構成したシーブが近年提案されている。こうした樹脂製のシーブは、金属製のシーブに比べて軟らかく且つ大きな弾性を有していることから、ワイヤロープの曲げ応力が小さくなる。又、ワイヤロープが樹脂を圧縮してロープ溝に深く食い込み、該ロープ溝とワイヤロープとの接触面積が大きくなって接触面圧が小さくなることにより、ワイヤロープの損耗が抑制され、ワイヤロープの長寿命化を図ることが可能となる。
【0005】
樹脂製のシーブは金属製のシーブに比べて、ワイヤロープの長寿命化を図ることが可能となる反面、製造コストが高くなることが避けられなかった。又、樹脂製のシーブは、そのロープ溝にワイヤロープによる索条痕が付きやすいため、シーブが劣化しているという印象を作業者に与えやすかった。このため、シーブが耐用年数に達していないにも拘わらずシーブの交換が要求され、結果的にシーブの使用年数が短縮されてしまう可能性があった。
【0006】
前記シーブの交換作業が頻繁に要求されると、新たに高価なシーブをデッキクレーンに取り付けざるを得なくなるため、更にコス卜が嵩んでしまうことが懸念されていた。又、シーブを交換する際には、交換前のシーブからワイヤロープを取り外す作業と、交換後のシーブにワイヤロープを掛け回す作業とが必要で、いずれも高所での非常に煩雑な作業となり、作業効率が低下する要因となっていた。
【0007】
前述のような問題を解決するために、金属製のシーブ本体のロープ溝に、樹脂製の溝保護部材を着脱自在に取り付け、ワイヤロープの長寿命化を図りつつ、コス卜の上昇並びに作業効率の低下を抑制できるようにしたシーブが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
ところで、前記シーブは、例えば、フックブロックのような滑車として使用される場合、フックブロックを構成するブロック本体に対し支持軸を中心として回転自在に取り付けられるようになっており、前記ブロック本体には、前記シーブの外周面を覆うように保護カバーが取り付けられている。
【0009】
尚、前記フックブロックのような滑車と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2014/065183号
【特許文献2】特開2014−189402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述の如く、シーブの外周面を覆うように保護カバーが取り付けられている滑車の場合、シーブはブロック本体及び保護カバーによって閉塞された空間に配置されているため、例えば、前記溝保護部材の交換作業等を含むシーブのメンテナンスを行う際には、滑車を分解しなければならなかった。
【0012】
一般に、前記シーブを覆うブロック本体は、強度を保持し且つシーブを保護する必要があるため、鋼板製であって重量が非常に重く、メンテナンス時に滑車を分解する場合に作業者が人力でブロック本体を支えることは困難である。従って、滑車を分解するためには、ブロック本体を吊り上げて支持するためのクレーン或いはチェーンブロック等の設備が不可欠となり、メンテナンス作業が容易ではなく、多大な労力と時間を要していた。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなしたもので、シーブのメンテナンス時における作業性向上を図ることができる滑車及び該滑車を備えたデッキクレーンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、支持軸を中心として回転自在に設けられるシーブと、
該シーブの外周面を覆うように設けられる保護カバーと
を備えた滑車において、
前記保護カバーは、前記シーブの外周面を覆う閉位置と、前記シーブの外周面を部分的に露出させる開位置との間で切換自在となるよう可動式に配置され
前記シーブは、
ロープ溝が外周部に形成されたシーブ本体と、
該シーブ本体のロープ溝に着脱自在に取り付けられる溝保護部材と、
該溝保護部材を該シーブ本体に固定する締結部材と
を備え、
前記保護カバーは、
固定カバー部と可動カバー部とに分割形成され、
該可動カバー部の一端が開閉部材によって前記固定カバー部に開閉自在となるよう取り付けられ、前記可動カバー部の他端が前記閉位置でロック部材によって固定され、
前記保護カバーを固定カバー部と可動カバー部とに分割形成する位置は、前記可動カバー部の長さが少なくとも前記溝保護部材より長く設定される位置とした滑車にかかるものである。
【0017】
又、上記課題を解決するために、本発明のデッキクレーンは、前記滑車を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の滑車及び該滑車を備えたデッキクレーンによれば、シーブのメンテナンス時における作業性向上を図ることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の滑車の実施例における保護カバーを閉位置に保持した状態を示す正面図である。
図2】本発明の滑車の実施例における保護カバーを閉位置に保持した状態を示す側面図である。
図3】本発明の滑車の実施例における保護カバーを開位置に展開させた状態を示す正面図である。
図4】本発明の滑車の実施例における保護カバーを開位置に展開させた状態を示す斜視図である。
図5】本発明の滑車の実施例におけるシーブを示す概要構成図であって、(a)は断面図、(b)は側面図である。
図6】本発明の滑車を備えたデッキクレーンの実施例を示す全体概要側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1図6は本発明の滑車及び該滑車を備えたデッキクレーンの実施例である。
【0022】
先ず、図6を用いてデッキクレーン1の概要を説明する。デッキクレーン1は、船舶としての貨物船SPの甲板Dに設置される支持台2と、該支持台2上に旋回自在に配置される旋回マスト3と、該旋回マスト3に設けられる運転室4と、前記旋回マスト3の下部に支点ピン5を介して俯仰自在に取り付けられたジブ6とを備えている。
【0023】
前記デッキクレーン1の旋回マスト3の内部には巻上ドラム7が配置され、該巻上ドラム7からワイヤロープ8が繰り出され、該ワイヤロープ8により、ジブ6の先端から滑車としてのフックブロック9を介して吊荷Cを吊り下げるようになっている。前記巻上ドラム7によってワイヤロープ8を巻き取ると、前記吊荷Cが上昇し、前記巻上ドラム7によってワイヤロープ8を繰り出すと、前記吊荷Cが下降するようになっている。
【0024】
又、前記デッキクレーン1の旋回マスト3の内部には、俯仰ドラム10が配置され、該俯仰ドラム10から繰り出されるワイヤロープ11が前記ジブ6の先端部もしくは旋回マスト3の頂部に根止めされている。前記俯仰ドラム10によってワイヤロープ11を巻き取ると、前記ジブ6が起立する方向へ駆動され、前記俯仰ドラム10によってワイヤロープ11を繰り出すと、前記ジブ6が倒伏する方向へ駆動されるようになっている。
【0025】
前記ワイヤロープ8及びワイヤロープ11は、前記旋回マスト3の上部並びにジブ6の先端部に配設されたシーブ20に掛け回されている。更に、前記ジブ6の先端部から垂下されるワイヤロープ8は、前記フックブロック9のシーブ20に掛け回されている。
【0026】
前記滑車としてのフックブロック9は、図1図4に示す如く、ブロック本体30と、シーブ20と、保護カバー40と、フック50とを備えている。前記ブロック本体30は、前記シーブ20を両面側から挟み付けるように二枚の鋼板製のブロック板30aが所要間隔をあけて配設され、該二枚のブロック板30aがボルト31a・ナット31b及び管状スペーサ31cからなる連結部材31によって連結固定される構造を有している。前記シーブ20は、前記ブロック本体30に対し支持軸32を中心として回転自在に取り付けられている。前記保護カバー40は、前記シーブ20の外周面における前記ワイヤロープ8が掛け回される下半分の部分を覆うよう前記ブロック本体30に取り付けられ、弛みによるワイヤロープ8のシーブ20からの脱落を防止すると共に、支持軸32の部分からのグリースの滴下を防止するようになっている。前記フック50は、前記ブロック本体30の下部に取り付けられた支持ピン33からシャックル51を介して吊り下げられている。
【0027】
そして、本実施例の場合、前記保護カバー40を、前記シーブ20の外周面を覆う閉位置(図1及び図2参照)と、前記シーブ20の外周面を部分的に露出させる開位置(図3及び図4参照)との間で切換自在となるよう可動式に配置した点を特徴としている。尚、前記保護カバー40は、前記シーブ20の外周面における下半分の部分を覆うよう前記ブロック本体30に取り付けられる形式に限定されるものではなく、前記ワイヤロープ8の掛け回し方に応じて、前記シーブ20の外周面における下半分以外の部分を覆うものにも適用可能なことは言うまでもない。
【0028】
前記保護カバー40は、固定カバー部40Aと可動カバー部40Bとに分割形成され、該可動カバー部40Bの一端が開閉部材としての蝶番41によって前記固定カバー部40Aに開閉自在となるよう取り付けられ、前記可動カバー部40Bの他端が前記閉位置でロック部材42によって前記ブロック本体30に固定されるようにしてある。
【0029】
前記可動カバー部40Bの他端には、図4に示す如く、前記支持軸32と平行に延びるスリーブ43が一体に固着され、前記ブロック本体30のブロック板30aの対応箇所に穿設された固定孔34と前記スリーブ43とに対し、図2に示す如く、前記ロック部材42を構成するボルト42aを貫通させてナット42bを締め付けることにより、前記可動カバー部40Bを閉位置に固定するようにしてある。
【0030】
一方、本実施例の場合、前記シーブ20は、図5(a)及び図5(b)に示す如く、シーブ本体21を備え、該シーブ本体21の外周部にはロープ溝22が形成されている。該シーブ本体21のロープ溝22には、溝保護部材23が締結部材24によって着脱自在に取り付けられている。前記シーブ本体21は、前記支持軸32に嵌装されるボス部21aと、前記ロープ溝22が形成されるリム部21bとを、半径方向へ延びるスポーク部21cによって連結してなる構成を有している。
尚、前記保護カバー40を固定カバー部40Aと可動カバー部40Bとに分割形成する位置に関しては、前記可動カバー部40Bの長さが少なくとも前記溝保護部材23より長く設定される位置とすれば良い。
【0031】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0032】
例えば、前記溝保護部材23の交換作業を行う際には、図1及び図2に示す状態から、ナット42bを緩めてボルト42aを抜き取る。
【0033】
続いて、保護カバー40の可動カバー部40Bを閉位置から蝶番41を支点として、図3及び図4に示す如く、開位置へ回動させる。
【0034】
前記保護カバー40の可動カバー部40Bを開位置へ回動させると、ワイヤロープ8をシーブ20から引き離して、該シーブ20の外周面を部分的に露出させることが可能となる。
【0035】
前記シーブ20の外周面を部分的に露出させると、図5に示す締結部材24を緩めて溝保護部材23を取り外し、新しいものと交換することが可能となる。
【0036】
前記シーブ20の外周面を覆うように保護カバー40が取り付けられている滑車としてのフックブロック9の場合、シーブ20はブロック本体30及び保護カバー40によって閉塞された空間に配置されているが、前述の如く、保護カバー40の可動カバー部40Bを開位置へ回動させることにより、前記溝保護部材23の交換作業等を含むシーブ20のメンテナンスを行う際にも、滑車としてのフックブロック9を分解しなくて済む。
【0037】
この結果、メンテナンスを行う際には、強度を保持し且つシーブ20を保護するために鋼板製であって重量が非常に重いブロック本体30を吊り上げて支持するためのクレーン或いはチェーンブロック等の設備が不要となり、メンテナンス作業が容易に行えるようになって、多大な労力と時間を浪費しなくて済む。
【0038】
又、特許文献2に開示された滑車としてのフックブロックの場合、カバー部材は、クレーンのブーム先端に備えられる継ぎ足しジブの基端側脚部等との干渉を回避するためのものであって、ワイヤロープの掛け替え作業時には完全に取り外されるものである。このため、前記カバー部材は、紛失したり、或いはワイヤロープの掛け替え作業完了後に付け忘れたりする虞がある。これに対し、本実施例のように、前記保護カバー40を、前記シーブ20の外周面を覆う閉位置(図1及び図2参照)と、前記シーブ20の外周面を部分的に露出させる開位置(図3及び図4参照)との間で切換自在となるよう可動式に配置すれば、保護カバー40を紛失したり、或いはシーブ20のメンテナンス作業完了後に保護カバー40を付け忘れたりする心配もない。
【0039】
こうして、シーブ20のメンテナンス時における作業性向上を図ることができる。
【0040】
そして、前記シーブ20は、ロープ溝22が外周部に形成されたシーブ本体21と、該シーブ本体21のロープ溝22に着脱自在に取り付けられる溝保護部材23と、該溝保護部材23を該シーブ本体21に固定する締結部材24とを備えている。このようなシーブ20の場合、溝保護部材23の交換作業が必要となるため、滑車としてのフックブロック9を分解しなくて済むことは作業効率を高める上でより有効となる。
【0041】
又、前記保護カバー40は、固定カバー部40Aと可動カバー部40Bとに分割形成され、該可動カバー部40Bの一端が開閉部材としての蝶番41によって前記固定カバー部40Aに開閉自在となるよう取り付けられ、前記可動カバー部40Bの他端が前記閉位置でロック部材42によって固定される。これにより、前記可動カバー部40Bは、前記固定カバー部40Aから完全に切り離されることがないため、可動カバー部40Bの紛失やシーブ20のメンテナンス作業完了後の可動カバー部40Bの付け忘れを防止できる。
【0042】
更に、前記滑車としてのフックブロック9を備えたデッキクレーン1では、海洋に面する厳しい腐食環境のもと、シーブ20のメンテナンス作業を効率良く行って、荷役作業を円滑に進めることができる。
【0043】
尚、本発明の滑車及び該滑車を備えたデッキクレーンは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、デッキクレーンに限らず、種々のクレーン装置や他の機械装置に広く適用可能なこと等、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 デッキクレーン
9 フックブロック(滑車)
20 シーブ
21 シーブ本体
22 ロープ溝
23 溝保護部材
24 締結部材
32 支持軸
40 保護カバー
40A 固定カバー部
40B 可動カバー部
41 蝶番(開閉部材)
42 ロック部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6