特許第6571483号(P6571483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571483
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】有機凝結剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20190826BHJP
   C02F 1/54 20060101ALI20190826BHJP
   C02F 1/56 20060101ALI20190826BHJP
   C02F 11/147 20190101ALI20190826BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   B01D21/01 111
   B01D21/01 101A
   C02F1/54 Z
   C02F1/56 Z
   C02F11/147
   B01D21/01 107A
   C08F220/00
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-204157(P2015-204157)
(22)【出願日】2015年10月16日
(65)【公開番号】特開2016-129882(P2016-129882A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2018年9月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-2907(P2015-2907)
(32)【優先日】2015年1月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 誠
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 真平
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−180648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−34
C02F 1/52−56、11/00−20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される水溶性カチオン性モノマー(a1)および下記一般式(2)で表される2価不飽和モノマー(b)を含有する不飽和モノマー(a)を構成単位とする水溶性(共)重合体(A)を含有してなり、前記不飽和モノマー(a)に基づいて、前記モノマー(a1)が50モル%以上であって、前記モノマー(b)が0.00001〜0.5モル%である有機凝結剤(P)

CH2=CR1−CO−X1−Q−N+234・Z- (1)

[式中、1はCH3;R2〜R4はH;1はOQはエチレン基-は、塩酸、硫酸及びメタンスルホン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種のプロトン酸のH+を除く残基を表す。]

CH2=CR5−CO−OCH2CH2−X2−CO−CR6=CH2 (2)

[式中、R5、R6はメチル基;X2はNHを表す。]
【請求項2】
水溶性(共)重合体(A)が下記の関係式を満足する請求項1記載の有機凝結剤。

10≦Vw/[η]≦50

[式中、Vwは1重量%水溶液の粘度(mPa・s、25℃)、[η]は固有粘度を表す。]
【請求項3】
請求項1または2記載の有機凝結剤(P)と、水溶性(共)重合体(B)を含有してなる高分子凝集剤(Q)とを組み合わせてなる汚泥または廃水用の凝結および凝集処理剤(Z)。
【請求項4】
水溶性(共)重合体(B)が、カチオン性(共)重合体(B1)および/または両性(共)重合体(B2)である請求項3記載の汚泥または廃水用の凝結および凝集処理剤。
【請求項5】
汚泥または廃水と、請求項1または2記載の有機凝結剤(P)とを、混合することを特徴とする汚泥または廃水の処理方法。
【請求項6】
汚泥または廃水と、請求項3または4記載の凝結および凝集処理剤(Z)とを、混合してフロックを形成させ、固液分離することを特徴とする汚泥または廃水の処理方法。
【請求項7】
請求項1または2記載の有機凝結剤(P)と、汚泥または廃水とを、混合した後、さらに高分子凝集剤(Q)を混合してフロックを形成させ、固液分離することを特徴とする汚泥または廃水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水またはし尿および工場廃水等の汚泥または廃水処理に用いる有機凝結剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水等の有機性汚泥や工場廃水等の、無機性汚泥、懸濁水、着色水、製紙工場の廃水およびその他の水溶液の凝結および脱色処理においては、無機凝結剤(例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄および消石灰)および有機凝結剤[例えば、ジメチルアミノエチルメタアクリレート塩化メチル4級塩の重合物(特許文献1,2)]が広く使用されている。
また、これらの有機性および無機性の汚泥または廃水の脱水処理に対しては、有機性または無機性の凝結剤を添加した後、両性またはカチオン性高分子凝集剤を使用して処理されている。例えば、縮合系ポリアミンの有機凝結剤および両性高分子凝集剤を併用する方法(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3697630号
【特許文献2】特開2012−115790号公報
【特許文献3】特開2000−225400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、無機凝結剤は上記の汚泥または廃水に対して膨大な添加量を必要とし、固液分離後のスラッジ量が増大する問題がある。また、近年の廃水規制の強化に伴い放流水中のCOD(化学的酸素要求量)を低減するニーズが高まってきており、特に有機凝結剤のより一層の性能向上が望まれている。
また、前記脱水処理においては、昨今の汚泥および廃水量の増加に伴う処理速度向上の観点から、より強いフロック形成能が望まれ、脱水ケーキの焼却または埋め立て処分コストの観点からは、脱水ケーキ中の含水率を低減する性能が望まれており、さらには脱水工程後の分離水の脱色およびCOD低減性能をも有する高分子凝集剤が望まれている。
上記の有機凝結剤は、無機凝結剤に比べて低添加量で済み、スラッジ量は大幅に低減できるものの、凝結および脱水の効果が不十分であった。また、上記の有機凝結剤と高分子凝集剤を併用する方法によってもまだ十分とは言えなかった。
【0005】
本発明の目的は、凝結、脱色効果に優れる有機凝結剤、並びにフロックの粗大化、フロック強度の増大、脱水ケーキの低含水率化、およびろ液の脱色およびCOD低減等の凝結および凝集性能に優れる凝結および凝集処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される水溶性カチオン性モノマー(a1)および2価不飽和モノマー(b)を含有する不飽和モノマー(a)を構成単位とする水溶性(共)重合体(A)を含有してなる有機凝結剤(P);該(P)と、水溶性(共)重合体(B)を含有してなる高分子凝集剤(Q)とを組み合わせてなる汚泥または廃水用の凝結および凝集処理剤(Z)である。

CH2=CR1−CO−X1−Q−N+234・Z- (1)

[式中、R1はHまたはCH3;R2〜R4はH;X1はOまたはNH;Qはヘテロ原子を有していてもよい炭素数2〜4の2価の炭化水素基;Z-はプロトン酸のH+を除く残基を表す。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の有機凝結剤(P)は下記の効果を奏する。
(1)汚泥または廃水に対して、凝結性能に優れる。
(2)該有機凝結剤と高分子凝集剤(Q)とを組み合わせてなる凝結および凝集処理剤(Z)は、優れた凝結および凝集性能を示す。
なお、本発明において凝結性能とは、分散している懸濁粒子の表面電荷を中和して該懸濁粒子同士を凝結させる性能をいい、後述する上澄み液清澄度、凝結性、上澄み液脱色性およびCODで評価できる。凝集性能とは、該凝結された微細粒子をさらに架橋吸着作用で凝集させて粗大フロックを形成する性能をいい、後述するフロック粒径、スラッジ体積比率、ろ液COD、ろ液清澄度およびケーキ含水率で評価できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[水溶性カチオン性モノマー(a1)]
本発明における水溶性カチオン性モノマー(a1)は下記一般式(1)で表される。なお、本発明において水溶性モノマーもしくは水溶性(共)重合体とは、水に対する溶解度が1g以上/水100g(20℃)であるものを意味し、後述する水不溶性モノマーとは、水に対する溶解度が1g未満/水100g(20℃)であるものを意味する。

CH2=CR1−CO−X1−Q−N+234・Z- (1)
【0009】
一般式(1)中、R1はHまたはCH3(好ましくはCH3)、R2〜R4はH、X1はOまたはNH(好ましくはO)、Qはヘテロ原子を有していてもよい炭素数(以下Cと略記することがある)2〜4(好ましくは2〜3)の2価の炭化水素基、Z-はプロトン酸のH+を除く残基を表す。
また、一般式(1)中、QのCが2未満のものは存在せず、5を超えると後述の(A)を含有してなる有機凝結剤(P)の凝結性能が悪くなる。
Qとしては、アルキレン(エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン等)基、ヒドロキシアルキレン(ヒドロキシエチレン、ヒドロキシプロピレン等)基等が挙げられる。有機凝結剤(P)の凝結性能の観点から、Qはアルキレン基が好ましく、エチレン基がさらに好ましい。
【0010】
-としては、下記(1)〜(6)のプロトン酸のH+を除く残基が挙げられる。
(1)無機酸、例えばハロゲン化水素(例えばHF、HCl、HBrおよびHI)、硫酸、硝酸およびリン酸;
(2)硫酸エステル、例えばC1〜30の硫酸エステル[例えばアルキルもしくはアルケニル硫酸(例えばメチル硫酸、エチル硫酸、ラウリル硫酸、ミリスチル硫酸、パルミチル硫酸、ステアリル硫酸、オレイル硫酸、リノール硫酸およびセチル硫酸)および高級アルコール(C10〜20)のエチレンオキサイド(以下、EOと略記)1〜10モル付加物の硫酸エステル];
【0011】
(3)スルホン酸、例えばC1〜30のスルホン酸〔例えばアルキル(C1〜10)スルホン酸(例えばメタンスルホン酸およびエタンスルホン酸)、アルキルアリール(C7〜30)スルホン酸(例えばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルフェノールスルホン酸およびアルキルナフタレンスルホン酸)、高級アルキル(C10〜30)スルホン酸、高級脂肪酸エステル(C10〜30)スルホン酸、高級アルコールエーテル(C10〜30)スルホン酸、スルホコハク酸エステル、高級脂肪酸アミド(C10〜20)のアルキル(C1〜10)スルホン酸、アルキル(C1〜10)ジフェニルエーテルスルホン酸およびアルキル(C1〜10)ベンズイミダゾールスルホン酸〕;
(4)リン酸エステル、例えばC1〜30のリン酸エステル〔例えばモノ−およびジアルキル(アルキルC1〜30)リン酸エステル、モノ−およびジアルケニル(アルケニルC1〜30)リン酸エステル、(ポリ)オキシアルキレン[EO1〜14モル付加および/またはプロピレンオキサイド(以下、POと略記)1〜9モル付加]アルキル(C1〜30)エーテルリン酸エステル、糖リン酸エステル(例えばグルコース−リン酸エステル、グルコースアミンリン酸エステル、マルトース−1−リン酸および蔗糖リン酸エステル)およびグリセリンリン酸(例えばホスファチジン酸);
【0012】
(5)ホスホン酸、例えばC1〜30のホスホン酸〔例えばアルキル(C1〜10)ホスホン酸(例えばメチルホスホン酸およびエチルホスホン酸)、アルキルアリール(C7〜30)ホスホン酸(例えばアルキルベンゼンホスホン酸およびアルキルフェノールホスホン酸)、高級アルキル(C10〜30)ホスホン酸、高級脂肪酸エステル(C10〜30)のホスホン酸、高級アルコールエーテル(C10〜30)のホスホン酸、高級脂肪酸アミド(C10〜20)のアルキル(C1〜10)ホスホン酸、アルキル(C1〜10)ジフェニルエーテルホスホン酸およびアルキル(C1〜10)ベンズイミダゾールホスホン酸〕;
(6)カルボン酸、例えばC1〜30のカルボン酸、例えば脂肪族[C1〜30のモノ−およびジカルボン酸、例えばギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、フマル酸およびアジピン酸];脂環式[C4〜30のモノ−およびジカルボン酸、例えばシクロペンタン(ジ)カルボン酸およびシクロヘキサン(ジ)カルボン酸];および芳香(脂肪)族[C7〜30のモノ−およびジカルボン酸、例えば安息香酸、フタル酸、キシリレンジカルボン酸]。
【0013】
上記プロトン酸のうち、(A)の凝結性能の観点から好ましいのは無機酸、硫酸エステル、スルホン酸、さらに好ましいのは塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、とくに好ましいのは硫酸、メタンスルホン酸である。
【0014】
[不飽和モノマー(a)]
本発明における不飽和モノマー(a)には、前記水溶性カチオン性モノマー(a1)、後述の2価不飽和モノマー(b)以外に、その他の水溶性モノマー(a2)〜(a4)を含有させることができる。該その他の水溶性モノマーとしては、(a1)以外のカチオン性モノマー(a2)、ノニオン性モノマー(a3)、アニオン性モノマー(a4)、およびこれらの混合物が含まれる。
【0015】
(a2)カチオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0016】
(a21)窒素原子含有(メタ)アクリレート
C5〜30のもの、例えばN,N−ジアルキル(アルキル基はC1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[N−モルホリノエチル(メタ)アクリレート等];
【0017】
(a22)(置換)アミノ基もしくはアンモニウム基を有するエチレン性不飽和化合物
C5〜30のもの、例えばN,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアミン、ビニルアニリン、(メタ)アリルアミン、p−アミノスチレン等;
(a23)アミンイミド基を有する化合物
C5〜30のもの、例えば1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド。
【0018】
上記(a2)のうち、凝結性能および工業上の観点から好ましいのは(a21)(a22)、さらに好ましいのはN,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレートの塩、ビニルアミン、(メタ)アリルアミン、とくに好ましいのはN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートの塩、ビニルアミン、(メタ)アリルアミン、最も好ましいのはN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩、ビニルアミンである。さらに、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩のうち好ましいのは無機酸塩、メチルクロライド塩、とくに好ましいのはメチルクロライド塩である。
【0019】
(a3)ノニオン性モノマー
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a31)(メタ)アクリレート
C4以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定は後述のゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]5,000以下のもの、例えば水酸基含有(メタ)アクリレート[例えばヒドロキシエチル−、ジエチレングリコールモノ−、ポリエチレングリコール(重合度3〜50)モノ−および(ポリ)グリセロール(重合度1〜10)モノ(メタ)アクリレート]およびアクリル酸アルキル(アルキル基はC1〜2)エステル(C4〜5、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル);
(a32)(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜3)(メタ)アクリルアミド[N−メチルおよび−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(C1〜2)(メタ)アクリルアミドのアルキレンオキシド(C2〜3、以下AOと略記。)1〜8モル付加物;
(a33) 前記(a1)、(a2)以外の窒素原子含有エチレン性不飽和化合物
C3〜30のもの、例えばアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルカルバゾールおよび2−シアノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルマレイミドのAO2〜10モル付加物。
【0020】
上記(a3)のうち、凝結性能の観点から好ましいのは(a32)、(a33)、さらに好ましいのはアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリルアミドである。
【0021】
(a4)アニオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等、以下同じ。)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等、以下同じ。)塩、アンモニウム塩およびアミン(C1〜20)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
(a41)不飽和カルボン酸
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、ビニル安息香酸、アリル酢酸;
(a42)不飽和スルホン酸
C2〜20の脂肪族不飽和スルホン酸(ビニルスルホン酸等)、C6〜20の芳香族不飽和スルホン酸(スチレンスルホン酸等)、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート[スルホアルキル(C2〜20)(メタ)アクリレート[2−(メタ)アクリロイルオキシエタン、−プロパンおよび−ブタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド[2−(メタ)アクリロイルアミノエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、2−および4−(メタ)アクリロイルアミノブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルアミノメチルベンゼンスルホン酸等]、アルキル(C1〜20)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[メチル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等]等;
(a43)(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(アルキレン基はC1〜3)硫酸エステル
(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン(EO)付加モル数2〜50]硫酸エステル等。
【0023】
上記(a4)のうち、凝結性能の観点から好ましいのは、(a41)、さらに好ましいのは(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸である。
【0024】
本発明におけるMnおよび後述の重量平均分子量(Mw)のGPC測定は次の測定条件に従うものとする。
<GPC測定条件>
GPC機種:HLC−8120GPC、東ソー(株)製
カラム :TSKgel GMHXL2本
+TSKgel Multipore HXL−M、東ソー(株)製
カラム温度:40℃
溶媒 :テトラヒドロフラン(THF)
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard
POLYSTYRENE)、東ソー(株)製
【0025】
不飽和モノマー(a)中の、前記(a1)〜(a4)の合計モル数に基づく
(a1)の割合は、後述の有機凝結剤(P)の凝結性能の観点から好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは60〜100モル%、とくに好ましくは80〜100モル%;
(a2)の割合は、同様の観点から好ましくは60モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下、とくに好ましくは20モル%以下;
(a3)の割合は、同様の観点から好ましくは60モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下、とくに好ましくは20モル%以下;
(a4)の割合は、(A)の水への溶解性の観点から好ましくは60モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下、とくに好ましくは20モル%以下である。
【0026】
[2価不飽和モノマー(b)]
本発明における2価不飽和モノマー(b)は、重合性不飽和基を2個有するものであり、後述のアクリレートモノマー(b1)、メタアクリレートモノマー(b2)、およびこれらのうちの2種またはそれ以上の混合物が含まれる。
(b)としては、下記一般式(2)で表される2価不飽和モノマーが好適に使用できる。
CH2=CR5−CO−OCH2CH2−X2−CO−CR6=CH2 (2)

上記一般式(2)中、R5、R6はHまたはメチル基(好ましくはメチル基);X2はOまたはNHを表す。
【0027】
(b1)としては、例えば、メタクリロイルオキシエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アクリロイルアミノエチルアクリレートが挙げられる。
(b2)としては、例えば、エチレングリコールジメタアクリレート、メタアクリロイルアミノエチルメタアクリレートが挙げられる。
【0028】
上記のうち、凝結性能の観点から好ましいのは(b2)、さらに好ましいのはエチレングリコールジメタアクリレートおよびメタアクリロイルアミノエチルメタアクリレート、とくに好ましいのはメタアクリロイルアミノエチルメタアクリレートである。
【0029】
前記2価不飽和モノマー(b)は、凝結性能および後述の水溶性(共)重合体(A)の水溶性の観点から、不飽和モノマー(a)に基づいて好ましくは0.00001〜0.5モル%、さらに好ましくは0.0001〜0.12モル%、とくに好ましくは0.001〜0.06モル%である。
【0030】
不飽和モノマー(a)には、本発明の効果を阻害しない範囲で前記水溶性カチオン性モノマー(a1)、(a1)以外の水溶性モノマー(a2)〜(a4)の他に必要により水不溶性モノマー(x)を併用してもよい。
水不溶性モノマー(x)としては、以下の(x1)〜(x5)、およびこれらの混合物が挙げられる。
(x1)C6〜23の(メタ)アクリレート
脂肪族または脂環式アルコール(C3〜20)の(メタ)アクリレート[プロピル−、ブチル−、ラウリル−、オクタデシル−およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等]およびエポキシ基(C4〜20)含有(メタ)アクリレート[グリシジル(メタ)アクリレート等];
【0031】
(x2)[モノアルコキシ(C1〜20)−、モノシクロアルコキシ(C3〜12)−もしくはモノフェノキシ]ポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコールは以下、PPGと略記)(重合度2〜50)の不飽和カルボン酸モノエステル
モノオール(C1〜20)もしくは1価フェノール(C6〜20)のプロピレンオキシド(以下POと略記)付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−メトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−エトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−プロポキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−ブトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−シクロヘキシルPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−フェノキシPPGモノ(メタ)アクリレート等]およびジオール(C2〜20)もしくは2価フェノール(C6〜20)のPO付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−ヒドロキシエチル(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等]等;
【0032】
(x3)C2〜30の不飽和炭化水素
エチレン、ノネン、スチレン、1−メチルスチレン等;
(x4)不飽和アルコール[C2〜4のもの、例えばビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール]のカルボン酸(C2〜30)エステル(酢酸ビニル等);
(x5)ハロゲン含有モノマー(C2〜30のもの、例えば塩化ビニル)。
【0033】
前記不飽和モノマー(a)に、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により併用してもよい(x)の量は、不飽和モノマー(a)の合計モル数に基づいて、(A)の水への溶解性の観点から、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、とくに好ましくは5%以下である。
【0034】
[水溶性(共)重合体(A)]
本発明における水溶性(共)重合体(A)は、上記不飽和モノマーを、公知の水溶液重合(例えば、特開昭55−133413号公報に記載の断熱重合、薄膜重合、噴霧重合等)や、公知の逆相懸濁重合(例えば特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報、特開平1−5808号公報に記載のもの)を含む種々の重合法[溶液滴下重合(例えば特開平6−211942号公報)、光重合(例えば特公平6−804公報に記載のもの)、沈澱重合(例えば特開昭61−123610公報に記載のもの)、逆相乳化重合(例えば特開昭58−197398号に記載のもの)等]で、ラジカル重合開始剤(d)を用いて製造することができる。該重合法のうち工業上の観点、分子量制御の観点から好ましいのは溶液滴下重合法である。
溶液滴下重合法としては、例えば溶媒の沸点下にモノマー、溶媒およびラジカル重合開始剤の溶液を滴下する方法を用いて製造することができ、溶媒として有機溶媒を使用した場合は、取り扱い危険性および環境保護の観点等の必要により通常脱溶媒し水を加えて製造される。
【0035】
溶液滴下重合法で使用する溶媒(g)としては、例えば水、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、ケトン(メチルエチルケトン、アセトン等)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびこれらの混合物等の極性溶媒、またはトルエン、キシレンなどの非極性溶媒が挙げられる。
これらのうちでモノマーおよび開始剤の溶解性、重合後の脱溶媒の観点から好ましいのは水もしくは水とアルコールの混合溶媒である。さらに好ましくは水もしくは水とイソプロピルアルコールの混合溶媒である。
【0036】
ラジカル重合開始剤(d)としては、種々のもの、例えばアゾ化合物〔水溶性のもの[アゾビスアミジノプロパン(塩)、アゾビスシアノバレリン酸(塩)等]および油溶性のもの[アゾビスシアノバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等]〕および過酸化物〔水溶性のもの[過酢酸、t−ブチルパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等]および油溶性のもの[ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロキシパーオキシド等]〕が挙げられる。
上記アゾ化合物における塩としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩およびアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0037】
上記過酸化物は還元剤と組み合わせてレドックス開始剤として用いてもよく、還元剤としては重亜硫酸塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等)、還元性金属塩[硫酸鉄(II)等]、遷移金属塩のアミン錯体[塩化コバルト(III)のペンタメチレンヘキサミン錯体、塩化銅(II)のジエチレントリアミン錯体等]、有機性還元剤〔アスコルビン酸、3級アミン[ジメチルアミノ安息香酸(塩)、ジメチルアミノエタノール等]等〕等が挙げられる。
また、アゾ化合物、過酸化物およびレドックス開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもいずれでもよい。
これらのうち、(A)の水不溶解分低減の観点からアゾ化合物が好ましい。
(d)は、通常重合系の水相に含有させるが、前記重合方法によっては水相(もしくは分散相)および/または油相(もしくは連続相)のいずれに存在させてもよい。
【0038】
(d)の使用量は、最適な分子量を得るとの観点から、(A)を構成する不飽和モノマーの全重量に基づいて、好ましくは0.001〜1.0%、さらに好ましくは0.005〜0.5%、とくに好ましくは0.01〜0.2%、最も好ましくは0.02〜0.15%である。
【0039】
重合に際しては、連鎖移動剤(e)を使用することができる。
(e)としては、0.01〜100、好ましくは0.05〜50、とくに好ましくは0.1〜10の連鎖移動定数を有するものが挙げられる。
連鎖移動定数の定義は、ジェー・ブランドルプおよびイー・エッチ・インマーグト編「ポリマー・ハンドブック(第4版)」、ジョン ウィレー アンド サンズ刊(J.Brandrup and E.H.Immergut編のPolymerHandbook
fourth edition,JOHN WILEY & SONS)の97〜98頁に記載されている。
本発明における連鎖移動定数は、「高分子合成の実験法」[化学同人(株)、1993年刊行]等に記載されている一般的な方法を用いて測定される、60℃のアクリルアミドへの連鎖移動定数であるものとする。
【0040】
該(e)としては、分子内に1個または2個以上のアミノ基を有する化合物[C0〜60のもの、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、n−およびi−プロパノールアミン]、分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物および(次)亜リン酸化合物〔亜リン酸、次亜リン酸、およびこれらの塩[アルカリ金属(Na、K等)塩等]、並びにこれらの誘導体等〕等が挙げられる。これらのうち、分子量制御の観点から好ましいのは分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物および(次)亜リン酸化合物である。
【0041】
(e)の使用量は、(A)を構成する不飽和モノマーの全重量に基づいて、水不溶解分低減および高分子量化の観点から、好ましくは0.0001〜10%、さらに好ましくは0.001〜5%、とくに好ましくは0.01〜3%、最も好ましくは0.05〜1%である。
【0042】
ラジカル重合法におけるモノマー水溶液中の不飽和モノマー濃度は、水溶液重合ではモノマー水溶液の全重量に基づいて、下限は通常1%、工業上の観点から好ましくは5%、さらに好ましくは10%、とくに好ましくは15%、最も好ましくは20%、上限は通常80%、重合時の温度コントロールの観点から好ましくは75%、さらに好ましくは70%、特に好ましくは65%;溶液滴下重合では、下限は通常5%、前記と同様の観点から好ましくは10%、さらに好ましくは15%、とくに好ましくは20%、最も好ましくは25%、上限は通常90%、前記と同様の観点から好ましくは85%、さらに好ましくは80%、とくに好ましくは75%、最も好ましくは70%;逆相懸濁重合では、下限は通常30%、前記と同様の観点から好ましくは40%、さらに好ましくは45%、とくに好ましくは50%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、前記と同様の観点から好ましくは85%、さらに好ましくは80%、とくに好ましくは78%、最も好ましくは75%;逆相乳化重合では、下限は通常10%、前記と同様の観点から好ましくは20%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは40%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、前記と同様の観点から好ましくは80%、さらに好ましくは75%、とくに好ましくは70%、最も好ましくは65%である。
【0043】
重合時のモノマー水溶液のpHは、特に限定されないが、重合速度、得られる水溶性重合体の溶解性の観点から、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1.5〜7、とくに好ましくは1.8〜6.5である。
【0044】
水溶性(共)重合体(A)の分子量は、固有粘度[η](dl/g、1N−NaNO3水溶液中、30℃で測定される値。以下同じ。)で表され、該固有粘度は、上澄み液の脱色性およびろ液の清澄性の観点から好ましくは0.1〜3.0、さらに好ましくは0.15〜2.5、とくに好ましくは0.2〜2.0である。なお、本発明において固有粘度[η]は1N−NaNO3水溶液中、30℃で測定した値である。
【0045】
水溶性(共)重合体(A)の1.0重量%水溶液の粘度(単位:mPa・s、25℃、以下Vwと表記)は凝結性能およびろ液の清澄性の観点から好ましくは1.0〜100、さらに好ましくは2.0〜80、とくに好ましくは3.0〜60である。なお、本発明において1.0%水溶液粘度[Vw]は、水溶性(共)重合体(A)が1.0重量%となるように、ジャーテスター等を用いて調整した水溶液を、25℃に温度調整し、B型粘度計を用いて、ローター回転数30rpmで測定した値である。
【0046】
水溶性(共)重合体(A)のVwの、(A)の固有粘度[η]に対する比Vw/[η]は、凝結性能およびろ液の清澄性の観点から好ましくは10〜50、さらに好ましくは12〜30である。
【0047】
上記Vwは、例えば、(A)を構成する全モノマーの重量に対する2価不飽和モノマー(b)の重量比で制御され、(b)の重量比が増えるほど、Vwは大きくなる。また、[η]は、(A)を構成する全モノマーの重量に対する、重合時に用いるラジカル重合用連鎖移動剤(e)の重量比で制御され、(e)の重量比が増えるほど[η]は小さくなる。従って、前記Vw/[η]を大きくするには、(b)および/または(e)を増やすことで制御でき、逆にVw/[η]を小さくする場合は、(b)および/または(e)を減らすことで制御できる。
【0048】
[有機凝結剤(P)]
本発明の有機凝結剤(P)は、前記水溶性(共)重合体(A)を含有してなる。
有機凝結剤(P)は、通常(A)の粉末、(A)の水溶液または(A)の分散液の形態で用いられ、好ましいのは、水溶液、分散液である。
該水溶液または分散液中の(A)の含有量(重量%)は、工業的観点および取り扱い性の観点から好ましくは5〜80%、さらに好ましくは10〜75%、とくに好ましくは15〜70%である。
【0049】
有機凝結剤(P)と、汚泥または廃水とを、混合する汚泥または廃水の処理方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
有機凝結剤(P)を汚泥または廃水に添加する方法としては、均一混合の観点から(A)の水溶液または分散液をさらに希釈水溶液にした後に汚泥または廃水に添加して十分に撹拌することが好ましいが、(A)をそのまま汚泥または廃水に添加して撹拌、混合してもよい。
(A)を希釈水溶液として用いる場合は、(A)の濃度(重量%)は好ましくは0.01〜20%、さらに好ましくは0.1〜5%である。
(A)の溶解方法および溶解後の希釈方法としては、例えば予め秤りとった水を、後述のジャーテスター等の撹拌装置を用いて撹拌しながら所定量の(A)を加え、数時間(約1〜4時間程度)撹拌して溶解させる方法等が採用できる。
【0050】
汚泥または廃水に添加する際の有機凝結剤(P)としての(A)の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁している粒子の含有量等によって異なるが、廃水、汚泥中の蒸発残留物重量(以下、TSと略記)に基づいて、ろ液の清澄性向上効果および凝集性能の観点から、好ましくは0.005〜10%、さらに好ましくは0.01〜8%、とくに好ましくは0.05〜5%、最も好ましくは0.1〜2%である。
【0051】
(P)は、汚泥または廃水への適用に際して、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により(P)以外の凝結剤(C)を併用することができる。該凝結剤としては、公知の無機凝結剤(C1)、公知の有機凝結剤(C2)が含まれる。
該公知の無機凝結剤(C1)としては、例えば硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄および消石灰が挙げられる。
該公知の有機凝結剤(C2)としては、例えばアニリン−ホルムアルデヒド重縮合物塩酸塩、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライド、(ジ)(メタ)アリルアミンマレイン酸共重合体、(ジ)(メタ)アリルアミンシトラコン酸共重合体、(ジ)(メタ)アリルアミンイタコン酸、(ジ)(メタ)アリルアミンフマル酸共重合体が挙げられる。
これらの公知の無機および有機凝結剤はそれぞれ1種単独または2種以上を使用しても、あるいは両者を併用してもいずれでもよい。
【0052】
前記公知の凝結剤(C)の使用量は、汚泥または廃水中のTSに基づいて、汚泥または廃水処理時の凝結性およびろ液の清澄向上効果の観点から、公知の有機凝結剤の場合、好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.05〜8%、とくに好ましくは0.1〜5%、最も好ましくは0.2〜2%である。同様の観点から公知の無機凝結剤の場合、汚泥または廃水中のTSに基づいて、好ましくは0.1〜10%、さらに好ましくは0.5〜9%、とくに好ましくは1〜8%、最も好ましくは2〜7%である。
【0053】
公知の凝結剤(C)を併用する場合は、本発明の有機凝結剤(P)と予め混合した上でこれを汚泥または廃水に適用する方法、または(P)と公知の凝結剤を別々に順不同で汚泥または廃水に適用する方法のいずれを採用してもよい。
【0054】
また、本発明の有機凝結剤(P)は必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤を併用することができる。
これらの添加剤のうち、ブロッキング防止剤を除く添加剤については、本発明の効果を阻害しない範囲で(A)の製造前のモノマー水溶液中に予め含有させてもよい。
【0055】
上記添加剤全体の使用量は、(A)の重量に基づいて、通常50%以下、添加効果および凝結性能の観点から好ましくは1〜40%、さらに好ましくは2〜30%である。
各添加剤の使用量については、上記と同様の重量に基づいて、通常、消泡剤は5%以下、キレート化剤は30%以下、pH調整剤は10%以下、界面活性剤およびブロッキング防止剤はそれぞれ5%以下、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤はそれぞれ5%以下;上記と同様の観点から好ましくは、消泡剤は1〜3%、キレート化剤は2〜10%、pH調整剤は1〜5%、界面活性剤およびブロッキング防止剤はそれぞれ1〜3%、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤はそれぞれ0.1〜2%である。
【0056】
有機凝結剤(P)は、廃水(紙パルプ、染色、自動車、金属加工、製鉄、食品、砂利採取、半導体関連およびクリーニング工業等の各種工場からの廃水)や下水等の処理で生じた汚泥(有機性汚泥または無機性汚泥)に添加することで、従来にない特異的な凝結効果やろ液の清澄性向上効果(COD低減、脱色)、ケーキ発生量およびケーキ含水率の低減効果を示す。
【0057】
[高分子凝集剤(Q)]
本発明における高分子凝集剤(Q)は前記モノマー(a1)、(a2)、(a3)および(a4)からなる群から選ばれる少なくとも1種を構成単位とする水溶性(共)重合体(B)を含有してなる。
【0058】
(共)重合体(B)において、2価不飽和モノマー(b)は、凝集性能および水溶性(共)重合体(B)の水溶性の観点から、全モノマーに基づいて好ましくは0.1モル%以下、さらに好ましくは0.00001〜0.06モル%、とくに好ましくは0.00001〜0.006モル%である。
(B)を構成するモノマー(a1)〜(a4)および水不溶性モノマー(x)としてはそれぞれ前記(共)重合体(A)に使用されるものが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0059】
(B)を構成するモノマーには、本発明の効果を阻害しない範囲で前記水溶性モノマー(a1)〜(a4)および水不溶性モノマー(x)の他に、前記(b)以外の公知の架橋性モノマー(y)を併用してもよい。
【0060】
(B)の分子量は、1N−NaNO3水溶液中30℃で測定した固有粘度[η](dl/g)で表した場合、下限は通常3.1、凝集性能(とくにフロック粒径の増大)の観点から好ましくは4、さらに好ましくは4.8、とくに好ましくは5.4、最も好ましくは6、上限は通常40、凝集性能(とくにフロック強度の向上)の観点から好ましくは30、さらに好ましくは20、とくに好ましくは15、最も好ましくは12である。
【0061】
水溶性(共)重合体(B)には、カチオン性水溶性(共)重合体(B1)、両性水溶性(共)重合体(B2)、アニオン性水溶性(共)重合体(B3)およびノニオン性水溶性(共)重合体(B4)が含まれる。
【0062】
カチオン性水溶性(共)重合体(B1)は、前記カチオン性モノマー(a1)および/または(a2)を必須構成単位とし、必要によりノニオン性モノマー(a3)および/またはモノマー(x)、(y)を構成単位としてさらに含有する(共)重合体であって、水に溶解した際にカチオン性を示す(共)重合体である。
(B1)を構成する不飽和モノマーの合計モル数に基づくモル割合(モル%)は、汚泥粒子表面の荷電中和の観点から、(a1)と(a2)の合計は好ましくは40%以上、さらに好ましくは60〜100%、(a3)は好ましくは60%以下、さらに好ましくは0〜40%である。
【0063】
両性水溶性(共)重合体(B2)は、前記カチオン性モノマー(a1)および/または(a2)並びにアニオン性モノマー(a4)を必須構成単位とし、必要によりノニオン性モノマー(a3)、必要によりモノマー(x)、(y)を構成単位としてさらに含有する共重合体である。
(B2)を構成する不飽和モノマーの合計モル数に基づくモル割合(モル%)は、凝集性能の観点から、(a1)および/または(a2)は好ましくは5〜90%、さらに好ましくは10〜80%、(a3)は好ましくは5〜90%、さらに好ましくは10〜80%、(a4)は好ましくは5〜50%、さらに好ましくは10〜40%である。
【0064】
(B)のうち、アニオン性水溶性(共)重合体(B3)は、前記アニオン性モノマー(a4)を必須構成単位とし、必要によりノニオン性モノマー(a3)および/またはモノマー(x)、(y)を構成単位としてさらに含有する重合体であって、水に溶解した際にアニオン性を示す重合体である。
(B3)を構成する不飽和モノマーの合計モル数に基づくモル割合(モル%)は、凝集性能の観点から、(a4)は好ましくは70%以上、さらに好ましくは80〜100%、(a3)は好ましくは30%以下、さらに好ましくは0〜20%である。
【0065】
また、ノニオン性水溶性(共)重合体(B4)は、ノニオン性モノマー(a3)を必須構成単位とし、必要によりモノマー(x)、(y)を構成単位としてさらに含有する共重合体である。
【0066】
上記(共)重合体(B)のうち、後述の凝集および凝結処理剤(Z)の凝結性能および凝集性能の観点から、好ましいのはカチオン性(共)重合体(B1)および両性(共)重合体(B2)である。
【0067】
高分子凝集剤(Q)を添加する方法としては、(Q)をそのまま添加してもよいが、均一混合の観点から好ましいのは(Q)を水溶液にした後に汚泥または廃水に添加する方法である。
(Q)を水溶液として用いる場合は、(Q)の濃度(重量%)は、凝集性および工業上の観点から好ましくは0.05〜1%、さらに好ましくは0.1〜0.5%である。
溶解方法、溶解後の希釈方法は特に限定はなく、前記有機凝結剤(P)の場合と同様である。とくに粉末状の高分子凝集剤(Q)を水に溶解する際、一度に(Q)を加えるとままこを生じて水に溶解しにくくなるため好ましくない。
【0068】
(B)の製造方法としては、特に限定はなく、公知の製法、例えば水溶液重合、逆相懸濁重合、沈殿重合および逆相乳化重合等のラジカル重合法を用いることができる。これらのうち、工業的観点から好ましいのは、水溶液重合、逆相懸濁重合および逆相乳化重合、さらに好ましいのは水溶液重合および逆相懸濁重合である。
【0069】
上記ラジカル重合法におけるラジカル重合開始剤(d)としては、(A)において挙げたものが使用できる。
ラジカル重合開始剤(d)の使用量は、(B)として最適な分子量を得るとの観点から、モノマーの合計重量に基づいて、好ましい下限は0.001%、さらに好ましくは0.005%、好ましい上限は1%、さらに好ましくは0.5%である。
【0070】
また、必要により連鎖移動剤(e)を使用しても良い。連鎖移動剤(e)としては、(A)において挙げたものが使用できる。
連鎖移動剤(e)を使用する場合の使用量は、(B)として最適な分子量を得るとの観点から、モノマーの合計重量に基づいて、好ましい下限は0.0001%、さらに好ましくは0.0005%、特に好ましくは0.001%、最も好ましくは0.005%、好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%、最も好ましくは1%である。
【0071】
ラジカル重合におけるモノマー水溶液中のモノマー濃度は、水溶液重合ではモノマー水溶液の全重量に基づいて、下限は通常20%、残存モノマー低減の観点に基づいて好ましくは25%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは40%、最も好ましくは50%、上限は通常80%、重合時の温度コントロールの観点に基づいて好ましくは75%、さらに好ましくは70%、特に好ましくは65%、最も好ましくは60%;逆相懸濁重合では、下限は通常30%、残存モノマー低減の観点に基づいて好ましくは40%、さらに好ましくは45%、とくに好ましくは50%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、重合時の温度コントロールの観点に基づいて好ましくは85%、さらに好ましくは80%、とくに好ましくは78%、最も好ましくは75%;逆相乳化重合では、下限は通常10%、残存モノマー低減の観点に基づいて好ましくは20%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは40%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、重合時の温度コントロールの観点に基づいて好ましくは80%、より好ましくは75%、とくに好ましくは70%、最も好ましくは65%である。
【0072】
重合温度は、水溶液重合では、下限は通常−10℃、(B)として最適な分子量を得るとの観点から好ましくは0℃、さらに好ましくは5℃、とくに好ましくは10℃、最も好ましくは15℃、上限は通常50℃、同様の観点から好ましくは40℃、さらに好ましくは30℃、とくに好ましくは25℃、最も好ましくは20℃である。また、重合中は所定温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱、冷却して調節してもよいし、調節しなくてもよい。また、断熱容器等内で断熱重合してもよい。断熱重合の際、重合熱により水の沸点(100℃)以上にならないように開始温度を調節することが好ましい。
【0073】
重合時のモノマー水溶液のpHは、(A)の場合と同様であり、好ましい条件も同様である。
【0074】
また、2種以上の(B)を用いる場合、予めそれぞれを製造した後に混合してもよいし、一方を予め製造しておき、他方の製造時に加えてもよい。
【0075】
[汚泥または廃水処理用の凝結および凝集処理剤(Z)]
本発明の汚泥または廃水用の凝結および凝集処理剤(Z)は前記有機凝結剤(P)および高分子凝集剤(Q)を組み合わせてなる。
本発明の凝結および凝集処理剤(Z)を用いた下水等の有機性汚泥や工場廃水等の無機性の汚泥または廃水の処理方法は、汚泥または廃水と、汚泥または廃水処理用の凝結および凝集処理剤(Z)とを、混合してフロックを形成させ、固液分離する方法であれば特に限定されることはない。
該処理剤(Z)を用いた汚泥または廃水の処理方法としては、例えば下記の(1)、(2)が挙げられる。
(1)まず、汚泥または廃水と、有機凝結剤(P)とを、混合して凝結処理し、さらに高分子凝集剤(Q)を添加、混合して凝集処理してフロックを形成させ、固液分離を行うことを目的とする処理剤(Z)。
(2)有機凝結剤(P)と高分子凝集剤(Q)とを予め溶解混合した上で、汚泥または廃水と混合して凝結および凝集処理してフロックを形成させ、その後固液分離を行うことを目的とする処理剤(Z);
上記処理方法のうち、凝結および凝集性能(例えばフロック粒径の増大および脱水ケーキの低含水率化)発揮の観点から好ましいのは、(1)の方法である。
【0076】
(1)の方法において、有機凝結剤(P)を汚泥または廃水に添加する方法としては、均一混合の観点から(P)を希釈水溶液にした後に汚泥または廃水に添加して十分に撹拌することが好ましいが、(P)をそのまま廃水に添加して撹拌、混合してもよい。(P)を希釈水溶液として用いる場合の(P)の濃度は、好ましくは0.02〜10重量%、さらに好ましくは0.2〜2.0重量%となる濃度である。
【0077】
(1)の方法において(Q)を、本発明の有機凝結剤(P)で処理後の汚泥または廃水に添加する方法としては、とくに限定はなく、(Q)をそのまま該汚泥または廃水に添加してもよいが、均一混合の観点から好ましいのは(Q)を水溶液にした後に該汚泥または廃水に添加する方法である。(Q)を水溶液として用いる場合の(Q)の濃度は、好ましくは0.05〜1重量%、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%である。
【0078】
また、(2)の方法における本発明の凝結および凝集処理剤(Z)の汚泥または廃水への添加方法としては、とくに限定はなく、(Z)をそのまま廃水に添加してもよいが、均一混合の観点から好ましいのは(Z)を水溶液にした後に汚泥または廃水に添加する方法である。(Z)を水溶液として用いる場合の(Z)の濃度は、好ましくは0.1〜6.0重量%、さらに好ましくは0.15〜2重量%となる濃度である。
【0079】
上記(1)、(2)のいずれにおいても(P)と(Q)の合計重量に基づく(P)の割合は、凝結および凝集処理剤(Z)の凝結性能および凝集性能の観点から好ましくは0.2〜90%、さらに好ましくは、2〜80%、とくに好ましくは10〜75%、最も好ましくは20〜65%である。
【0080】
本発明の凝結および凝集処理剤(Z)の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁粒子の含有量、凝結および凝集処理剤(Z)の分子量等により異なるが、とくに限定はなく、汚泥または廃水中のTSに基づいて、通常0.01〜10%、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1%、さらに好ましくは0.5%、とくに好ましくは1%、処理効率の観点から好ましい上限は5%、さらに好ましくは3%、とくに好ましくは2%である。
【0081】
本発明の凝結および凝集処理剤(Z)は必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤からなる群から選ばれる添加剤を併用することができる。
【0082】
消泡剤としては、シリコーン系(例えばMn100〜100,000のジメチルポリシロキサン)、鉱物油(例えばスピンドル油およびケロシン)、C12〜22の金属石ケン(例えばステアリン酸カルシウム);キレート化剤としては、C6〜12のアミノカルボン酸(例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸およびトリエチレンテトラミンヘキサ酢酸)、多価カルボン酸〔例えばマレイン酸、ポリアクリル酸(Mn1,000〜10,000)およびイソアミレン−マレイン酸共重合体(Mn1,000〜10,000)〕、C3〜10のヒドロキシカルボン酸(例えばクエン酸、グルコン酸、乳酸およびリンゴ酸)、縮合リン酸(例えばトリポリリン酸およびトリメタリン酸)およびこれらの塩〔例えばアルカリ金属(例えばナトリウムおよびカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えばカルシウムおよびマグネシウム)塩、アンモニウム塩、C1〜20のアルキルアミン(例えばメチルアミン、エチルアミンおよびオクチルアミン)塩およびC2〜12のアルカノールアミン(例えばモノ−、ジ−およびトリエタノールアミン)塩〕;
【0083】
pH調整剤としては、苛性アルカリ(例えば苛性ソーダ)、アミン(例えばモノ−、ジ−およびトリエタノールアミン)、無機酸(塩)[例えば無機酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸および炭酸)、およびこれらの金属(例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属)塩(例えば炭酸ソーダ、炭酸カリウム、硫酸ソーダ、硫酸水素ナトリウムおよびリン酸1ナトリウム)およびアンモニウム塩(例えば炭酸アンモニウムおよび硫酸アンモニウム)]、有機酸(塩)[例えば有機酸(例えばカルボン酸、スルホン酸およびフェノール)、およびこれらの金属(上記に同じ)塩(例えば酢酸ソーダおよび乳酸ソーダ)およびアンモニウム塩(例えば酢酸アンモニウムおよび乳酸アンモニウム)];
【0084】
界面活性剤としては、米国特許第4331447号明細書記載の界面活性剤、例えばポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルおよびジオクチルスルホコハク酸ソーダ];ブロッキング防止剤としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル、例えば、ポリエチレンオキシド変性シリコーンおよびポリエチレンオキシド・ポリプロピレンオキシド変性シリコーン;
【0085】
酸化防止剤としては、フェノール化合物[例えばハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)および2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)]、含硫化合物〔例えばチオ尿素、テトラメチルチウラムジサルファイド、ジメチルジチオカルバミン酸およびその塩[例えば金属(上記に同じ)塩およびアンモニウム塩]、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびその塩(上記に同じ)、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)およびジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)〕、含リン化合物[例えばトリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、トリフェニルホスファイト(TPP)およびトリイソデシルホスファイト(TDP)]および含窒素化合物[アミン(例えばオクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノールおよびN,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン)、尿素、グアニジン、およびグアニジンの上記無機酸塩];
【0086】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系(例えば2−ヒドロキシベンゾフェノンおよび2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン)、サリチレート系(例えばフェニルサリチレートおよび2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート)、ベンゾトリアゾール系[例えば(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールおよび(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール]およびアクリル系[例えばエチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートおよびメチル−2−カルボメトキシ−3−(パラメトキシベンジル)アクリレート];
防腐剤としては、例えば安息香酸、パラオキシ安息香酸エステルおよびソルビン酸が挙げられる。
【0087】
これらの添加剤は、有機凝結剤(P)および/または高分子凝集剤(Q)のいずれに含有させてもよいし、有機凝結剤(P)と高分子凝集剤(Q)を混合して凝結および凝集処理剤(Z)とした後に添加して含有させてもよい。また、ブロッキング防止剤を除く添加剤については、本発明の効果を阻害することがなければ(A)および/または(B)の重合前のモノマー水溶液中に予め含有させてもよい。
【0088】
上記添加剤全体の使用量は、添加剤を有機凝結剤(P)および/または(Q)あるいは(Z)に含有させる場合は、有機凝結剤(P)および/または(Q)の重量あるいは(Z)の重量に基づいて、またモノマー水溶液中に予め含有させる場合は、モノマー重量に基づいて、通常30%以下、本発明の効果(凝結性能または凝集性能)の観点から好ましくは0〜10%である。
各添加剤の使用量については、上記と同様の重量に基づいて、消泡剤は通常5%以下、好ましくは1〜3%、キレート化剤は通常30%以下、好ましくは2〜10%、pH調整剤は通常10%以下、好ましくは1〜5%、界面活性剤およびブロッキング防止剤はそれぞれ通常5%以下、好ましくは1〜3%、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤はそれぞれ通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
【0089】
本発明の凝結および凝集処理剤(Z)の形態は、粉末状(例えば破砕状、真球状および葡萄房状)、フィルム状、水溶液状、w/oエマルション状および懸濁液状等公知の任意形態でよい。
【0090】
上記凝結および凝集処理剤(Z)の処理方法により形成されたフロック状の汚泥または廃水の脱水方法(固液分離法)としては、例えば重力沈降、膜ろ過、カラムろ過、加圧浮上、および濃縮装置(例えばシックナー)および脱水装置(例えば遠心脱水機、ベルトプレス脱水機、フィルタープレス脱水機、スクリュープレス脱水機およびキャピラリー脱水機)を用いる方法が挙げられる。これらのうち本発明の高分子凝集剤の特異的な凝集性能である高フロック強度の観点から好ましいのは、脱水装置、とくに遠心脱水機、ベルトプレス脱水機、スクリュープレス脱水機およびフィルタープレス脱水機を用いる方法である。
【0091】
本発明の有機凝結剤(P)または凝結および凝集処理剤(Z)のその他の用途としては、例えば掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤(例えば製紙工業用地合形成助剤、濾水歩留向上剤、濾水性向上剤および紙力増強剤)、原油増産用添加剤(原油の二、三次回収用添加剤)、分散剤、スケール防止剤、凝結剤、脱色剤、増粘剤、帯電防止剤および繊維用処理剤が挙げられ、これらのうち好ましいのは掘削・泥水処理用凝集剤、製紙用薬剤および原油増産用添加剤である。
【実施例】
【0092】
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。固有粘度[η](dl/g)は1N−NaNO3水溶液中、30℃で測定した値である。なお、汚泥または廃水中のTS(蒸発残留物重量)、有機分(強熱減量)は、下水道試験方法(日本下水道協会、1984年度版)記載の分析方法に準じて行った。なお、以下において、実施例9、21、35は、それぞれ参考例1〜3である。
【0093】
実施例および比較例に使用した原料の組成、記号等は次のとおりである。
(1)水溶性カチオン性モノマー
(a1−1):アミノエチルメタクリレートメタンスルホン酸塩の80%水溶液
(a1−2):アミノエチルメタクリレート硫酸塩の80%水溶液
(a2−1):N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩
の78.3%水溶液
(a2−2):N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩
の80%水溶液
【0094】
(2)(a1)、(a2)以外の水溶性モノマー
(a3−1):アクリルアミドの50%水溶液
(a4−1):アクリル酸の80%水溶液
【0095】
(3)2価不飽和モノマー
(b−1):メタアクリロイルアミノエチルメタアクリレートの0.5%水溶液
(b−2):エチレングリコールジメタアクリレートの0.6%水溶液
【0096】
(4)ラジカル重合開始剤(d)
(d−1) :アゾビスアミジノプロパン塩酸塩[和光純薬工業(株)製、
「V−50」、10時間半減期温度:56℃]の10%水溶液
(d−2) :過酸化水素の1%の水溶液
(d−3) :アスコルビン酸の1%水溶液
(d−4) :硫酸鉄(II)の1%水溶液
【0097】
(5)連鎖移動剤(e)
(e−1) :次亜リン酸ナトリウムの10%水溶液
【0098】
(6)無機凝結剤
(C1−1):ポリ塩化アルミニウム(酸化アルミニウム10〜11%品)[商品名
「ポリ塩化アルミニウム」、多木化学(株)製]
【0099】
実施例中の有機凝結剤(P)、汚泥または廃水用の凝結および凝集処理剤(Z)の評価は以下の方法に従った。
【0100】
評価[1]〔有機凝結剤(P)の評価方法〕
(1)上澄み液清澄度(%)
ジャーテスター[型式「JMD−6HS−A」、宮本理研工業(株)製、以下同じ。]に板状の塩ビ製撹拌羽根(ヨコ5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字(半径2.5cm)になるように上下に連続して取り付けた撹拌装置を組み立てる。次に、500mlのビーカーに廃水200gを入れ、前記撹拌装置にセットする。ジャーテスターの回転数を300rpmにして撹拌しながら、所定量の0.2%の凝結剤水溶液を一気に添加し30秒間撹拌する。10分後上澄み液を分光光度計[UV−1200、(株)島津製作所製、以下同じ。]で波長590nmおよび700nmにおける透過率を測定し、ろ液清澄度を評価する。なお、透過率(%)は、イオン交換水の透過率を100%とした時の値を示す。
(2)凝結性(%)
上記評価[1](1)の評価後、測定液をビーカーに戻し、その後処理廃水を遠心分離機[形式LC06、(株)トミー精工製]を用いて2,000rpmにて10分間遠心分離を行い、全廃水体積に対する、沈降スラッジ(下層)体積%を測定し凝結性を評価する。該体積%が小さいほど凝結性に優れることを示す。
(3)遠心分離後の上澄み液の脱色性(%)
上記(2)の遠心分離後の上澄み液について、分光光度計で波長430nmおよび700nmにおける透過率を測定し脱色性を評価する。なお、透過率の数値(%)は、イオン交換水の透過率を100%としたときの値を示す。
(4)遠心分離後の上澄み液のCOD(mg/L)
上記(2)の遠心分離後の上澄み液について、JIS K−0102に記載のCODMn分析方法に準じて測定する。
【0101】
評価[2]〔汚泥または廃水処理用の凝結および凝集処理剤(Z)の評価方法〕
(1)フロック粒径(mm)
300mlのビーカーに汚泥または廃水200gを入れ、上記評価[1](1)と同じ撹拌装置にセットする。ジャーテスターの回転数を300rpmとし、徐々に汚泥または廃水を撹拌しながら、所定の濃度の有機凝結剤の水溶液、所定の濃度の高分子凝集剤の水溶液を所定の方法で添加し、30秒間撹拌した後、撹拌を止め形成されたフロックの粒径(mm)を目視にて観察した。
【0102】
(2)スラッジ体積比率(%)
T−1189のナイロン製ろ布[敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、500mlのメスシリンダーをセットし、上記フロック粒径試験後の処理水全量を一度に投入してろ過する。ろ過して得られたスラッジの量を測定し、全廃水体積に対する体積比率(%)を算出しスラッジ体積比率とする。
【0103】
(3)ろ液COD(mg/L)
上記(2)のろ過後のろ液について、上記評価[1](4)の分析方法で測定する。
(4)ろ液清澄度(%)
上記(2)のろ過後のろ液について、上記評価[1](1)の分光光度計を用いて評価する。
(5)ケーキ含水率(%)
上記(2)で濾過して得られたスラッジの一部をスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水する(加圧条件2kgf/cm2、60秒)。脱水されたケーキ約3gをシャーレに秤量(W3)して、循風乾燥機中で完全に水分が蒸発するまで(例えば、105±5℃で8時間)乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W4)として、次式からケーキ含水率を算出する。

ケーキ含水率(重量%)=[(W3)−(W4)]×100/(W3)
【0104】
実施例1[有機凝結剤(P−1)の製造](溶液滴下重合)
反応容器に、あらかじめスルファミン酸でpH=1.9に調整したイオン交換水500部[水相(2)]を仕込み、撹拌下、70℃に加熱した。別の容器に、表1に従って、モノマー(a1−1)、2価不飽和モノマー(b1−1)、連鎖移動剤(e−1)、ラジカル重合開始剤(d−1)、およびイオン交換水を仕込み均一溶液になるまで混合、撹拌してモノマー溶液[滴下溶液]とし、撹拌下、モノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながらスルファミン酸を用いて1.9に調整した[水相(1)]。該モノマー溶液を滴下ロートに移し、溶液温度20℃で、系内に窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気(2L/min)して充分に置換した(気相酸素濃度約10ppm)。
次に前記反応容器の系内に窒素を通気(5L/min)しながら67〜73℃に温度調整した反応容器(気相酸素濃度約10ppm)に還流、撹拌下、前記モノマー溶液を滴下ロートから2時間かけて滴下した。滴下後、同温度で3時間熟成し重合を完結させ、水溶性(共)重合体(A−1)を含有してなる有機凝結剤(P−1)の水溶液(濃度30.5%)980部を得た。
【0105】
実施例2〜12、比較例1
[有機凝結剤(P−2)〜(P−12)、(比P−1)の製造](溶液滴下重合)
実施例1において、モノマー水溶液配合組成(部)を表1に基づいて代えたこと以外は実施例1と同様にして、各有機凝結剤を得た。結果を表1に示す。
【0106】
製造例1
[高分子凝集剤(Q−1)の製造](水溶液重合)
反応容器に、表1に従って、モノマー(a1−1)、緩衝剤、連鎖移動剤(e−1)およびイオン交換水を配合したモノマー水溶液を系内が均一溶液になるまで混合、撹拌した。撹拌下、モノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら硫酸を用いて2.0に調整した。
次に、0℃の恒温水槽中で該反応容器の溶液温度を0℃に調整し、系内を窒素で充分に置換した(気相酸素濃度約10ppm)。その後、ラジカル重合開始剤(d−1)〜(d−4)をシリンジを用いて順次反応容器に仕込み、溶液温度0℃で重合を開始させ、重合により発生する熱により溶液温度が上昇し、溶液温度が80℃に達した時点で80℃の恒温槽内に反応容器を入れて10時間保温し重合を完結させた。なお重合中、内容物が高粘度となり撹拌が困難となったため、撹拌は途中で停止した。
その後、得られた含水ゲルを取り出し、ミートチョッパー機[型番「12VR−400K」、ROYAL(株)製、目皿の目開き6mm]により混合、混練、さらにミンチ状に細断し、80℃の熱風で2時間乾燥後、ジューサーミキサーで粉砕して、水溶性(共)重合体(B−1)を含有してなる高分子凝集剤(Q−1)990部を得た(収率99%、固形分含量92%)。結果を表1に示す。
【0107】
製造例2、3
[高分子凝集剤(Q−2)、(Q−3)の製造](水溶液重合)
製造例1において、モノマー水溶液配合組成およびモノマー水溶液中のモノマー濃度を表1に基づいて代えたこと以外は製造例1と同様にして、各高分子凝集剤を得た。結果を表1に示す。
【0108】
実施例13〜24、比較例2
[有機凝結剤(P)の性能評価]
上記得られた各有機凝結剤をそれぞれイオン交換水に溶解させて固形分含量0.2%の水溶液とした。M染色工場から採取した廃水[pH5.2、TS0.09% CODMn1,334mg/L。以下同じ。]200gずつを各500mLのビーカーに採り、上記有機凝結剤の各水溶液0.4部(このときの固形分添加量0.50%/TS)、さらにそれぞれに無機凝結剤(C1−1)を0.08部(このときの有姿添加量50%/TS)添加し、300rpmで30秒間撹拌し、廃水処理を行い、前記の評価[1]の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
表2から本発明の有機凝結剤(P)は比較のものに比べて、上澄み液清澄度、凝結性、上澄み液脱色性および上澄み液CODのいずれにおいても優れることがわかる。
【0112】
実施例25〜38、比較例3
[汚泥または廃水用の凝結および凝集処理剤(Z)の性能評価]
有機凝結剤(P−1)〜(P−12)、(比P−1)、および高分子凝集剤(Q−1)〜(Q−3)をそれぞれイオン交換水に溶解させて固形分含量0.2%の水溶液とした。
消化処理したA市処理場から採取した消化汚泥[pH7.5、TS2.9%、SS2.6%、有機分65%、アルカリ度1,542mg−CaCO3/L]200gずつを各500mLのビーカーに採り、(C1−1)1.75部(このときの有姿添加量30%/TS)を添加し300rpmで30秒間撹拌した。
次に、表3に示す通り、上記有機凝結剤の各水溶液2.9部(このときの固形分添加量0.1%/TS)添加し、それぞれ300rpmで30秒間撹拌した。
さらに、実施例25〜32、35〜38、比較例3では、高分子凝集剤(Q−1)の水溶液、実施例33では高分子凝集剤(Q−2)の水溶液、実施例34では、高分子凝集剤(Q−3)をそれぞれ29部ずつ添加(このときの固形分添加量1.00%/TS)し、前記の評価[2]の方法で性能を評価した。結果を表3に示す。
【0113】
実施例39
[汚泥または廃水用の凝結および凝集処理剤(Z−11)の性能評価]
イオン交換水で固形分濃度0.2%に調整した有機凝結剤(P−2)の水溶液50部と、イオン交換水で固形分濃度0.2%に調整した高分子凝集剤(Q−1)の水溶液500部をビーカーに測り取り、ジャーテスターを用いて10分間よく混合し、凝結および凝集処理剤(Z−11)を得た。
実施例25〜38、比較例3の手順と同様に処理した(C1−1)添加攪拌後の汚泥に、(Z−11)の水溶液31.9部を添加(このときの固形分添加量1.1%/TS)し、前記の評価[2]の方法で性能を評価した。結果を表3に示す。
【0114】
【表3】
【0115】
表3から、本発明の汚泥または廃水用の凝結および凝集処理剤(Z)は比較のものと比べ、フロック粒径、ろ液のCODおよび清澄度において優れ、しかもスラッジ体積率が少なく、ケーキ含水率が低いことから、凝結および凝集性能に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の有機凝結剤(P)、汚泥または廃水処理用の凝結および凝集処理剤(Z)は、汚泥脱水処理用、製紙工場廃水等の廃水のCOD低減処理用や、着色成分の脱色用に用いられる他、染料固着剤、製紙用薬剤(例えば製紙工業用地合形成助剤、濾水歩留向上剤、濾水性向上剤および紙力増強剤)等の幅広い用途に用いることができることから、極めて有用である。