(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
装置本体と、前記装置本体の先端に設けられ、前記装置本体に対して回転可能なカッタヘッドと、前記装置本体の後端部を取り囲み、前記装置本体の後方に延びる筒状部材と、を備えたトンネル掘削装置を用いたトンネル掘削方法であって、
前記カッタヘッドを前記装置本体に対して回転し、地盤を掘削する第1の掘削ステップと、
前記トンネル掘削装置を前進させる装置前進ステップと、
すでに構築されているライナー支保工の前端部と連続するように、前記筒状部材内においてライナーを環状に組み立てるライナー組立ステップと、
前記カッタヘッドにより掘削された地盤の壁面と、環状に組み立てた前記ライナーとの間の円環状断面空間に充填剤を注入する裏込め注入ステップと、を備え、
前記裏込め注入ステップは、前記円環状断面空間の所定の高さ以下の部分に前記充填剤を注入する第1の注入工程と、前記円環状断面空間の所定の高さよりも上方の部分に前記充填剤を注入する第2の注入工程と、を含み、
前記トンネル掘削装置は、後端部下方に前後方向に延びるように配置され後方に向かって伸縮可能な推進ジャッキを有し、
前記装置前進ステップでは、前記第1の注入工程により地盤と一体化されたライナーの下部に反力をとって、前記トンネル掘削装置を前進させる、ことを特徴とするトンネル掘削方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなRCライナーによる支保工を採用する場合には、トンネル内壁とRCライナーとの間の空間の容積が非常に大きく、裏込めモルタルが大量に必要となり、コスト高の原因となってしまう。裏込めモルタルの量を減らすため、RCライナーとトンネル内壁との間に玉石、砕石を投入することも行われているが、この玉石、砕石を投入する工程が追加されることにより、トンネルの掘削速度が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、ライナー方式の支保工を用いた場合であっても、トンネル掘削速度を低下させることなく、コストを削減することができるトンネル掘削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトンネル掘削方法は、装置本体と、装置本体の先端に設けられ、装置本体に対して回転可能なカッタヘッドと、装置本体の後端部を取り囲み、装置本体の後方に延びる筒状部材と、を備えたトンネル掘削装置を用いたトンネル掘削方法であって、カッタヘッドを装置本体に対して回転し、地盤を掘削する第1の掘削ステップと、トンネル掘削装置を前進させる装置前進ステップと、すでに構築されているライナー支保工の前端部と連続するように、筒状部材内においてライナーを環状に組み立てるライナー組立ステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
従来は、装置本体内の空間でライナーの組立を行っていたため、装置本体の内径よりも小さい外径のライナー支保工しか構築することができなかった。これに対して、上記構成の本発明によれば、掘削装置の後端部を取り囲み、装置本体の後方に延びる筒状部材内においてライナーを環状に組み立てるため、装置本体の外径と等しいような外径を有するライナー支保工を構築することができる。これにより、環状に組み立てたライナーとカッタヘッドにより掘削された地盤の壁面との間の空間の容積を小さくすることができ、この空間に充填する充填剤の量を削減することができる。このように、ライナーとトンネル内壁との間に玉石等を投入することなく、充填剤の量を減らすことができるため、トンネル掘削速度を低下させることなく、コストを削減することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、カッタヘッドは円環状であり、第1の掘削ステップでは、環状に地盤を掘削し、さらに、地盤の環状に掘削された内側の部分を、装置本体内で掘削する第2の掘削ステップを備える。
【0009】
上記構成の本発明によれば、円環状のカッタヘッドで先行して地盤を円環状に掘削し、これと並行して環状に掘削された内側の部分を装置本体内で掘削するため、地盤の掘削速度を向上することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、さらに、カッタヘッドにより掘削された地盤の壁面と、環状に組み立てたライナーとの間の円環状断面空間に充填剤を注入する裏込め注入ステップを備え、裏込め注入ステップは、円環状断面空間の所定の高さ以下の部分に充填剤を注入する第1の注入工程と、円環状断面空間の所定の高さよりも上方の部分に充填剤を注入する第2の注入工程と、を含む。
【0011】
環状に組み立てたライナーとカッタヘッドにより掘削された地盤の壁面との間の下部には、地盤を掘削して生じた掘削土が入り込んでおり、この入り込んだ掘削土は上方をトンネル掘削装置が通過しているため、締め固められている。このため、第1の注入工程で少量の充填剤を注入するのみで、ライナーを地盤と一体化させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、トンネル掘削装置は、装置後方の下部に後方に向けて伸長可能なジャッキを有する。
上述の通り、組み立てられたライナーの下部は第1の注入工程で先行して地盤と一体化されている。このため、上記構成の本発明によれば、ライナーの下部にジャッキにより反力をとることができるため、より強い力でカッタヘッドを地盤に押さえつけた状態で地盤を掘削することができる。
【0013】
本発明のトンネル掘削装置は、地盤を掘削するためのトンネル掘削装置であって、装置本体と、装置本体の先端に設けられ、装置本体に対して回転することにより地盤を掘削するカッタヘッドと、を備え、装置本体の後端部を取り囲み、装置本体の後方に延び、内部でライナーを環状に組み立てる組立作業が行われる筒状部材が取り付けられている、ことを特徴とする。
本発明において好ましくは、カッタヘッドは円環状であり、環状に地盤を掘削する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ライナー方式の支保工を用いた場合であっても、トンネル掘削速度を低下させることなく、コストを削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のトンネル掘削システム及びトンネル掘削方法の一実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1乃至
図7は、本発明の一実施形態によるトンネル掘削装置を示し、
図1は斜視図、
図2は長手方向鉛直断面図、
図3は
図5におけるIII−III断面図、
図4は正面図、
図5は
図2におけるV−V断面図、
図6は
図2におけるVI−VI断面図、
図7は
図2におけるVII−VII断面図である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、掘削装置10は、円筒状の殻体12と、殻体12の掘削進行方向(以下、前方という)の先端に設けられた掘削機構14と、地盤を掘削して発生した掘削土を搬出するための掘削土搬出機構16と、掘削機構14を推進させるための推進機構18とを備える。
【0018】
殻体12は、前方から順次接続された回転部殻体20と、第1の固定部殻体22と、第2の固定部殻体24と、第3の固定部殻体26とにより構成される。
【0019】
回転部殻体20は、先端面を形成する円環状の先端面部20Aと、先端面部20Aの外周縁から後方に延びる円筒状の外筒体20Bと、先端面部20Aの内周縁から後方に延びる円筒状の内筒体20Cと、を有する。
【0020】
また、第1の固定部殻体22と、第2の固定部殻体24と、第3の固定部殻体26とは、それぞれ、回転部殻体20の外筒体20Bと略同径に形成された円筒状の外筒体22B、24B、26Bと、外筒体22B、24B、26B内に配置され、第1の固定部殻体22の内筒体20Cよりも大径に形成された円筒状の内筒体22C、24C、26Cと、内筒体22C、24C、26Cと外筒体22B、24B、26Bを結ぶように設けられた複数の支持部材(図示せず)とにより構成される。これら殻体20、22、24、26はそれぞれ鋼材からなる。なお、回転部殻体20の内筒体20Cの後端は、第1の固定部殻体22の内筒体22Cの前端との間に隙間20Dが形成されるように、第1の固定部殻体22の内筒体22Cの前端よりも前方において終端している。
【0021】
回転部殻体20、第1の固定部殻体22、第2の固定部殻体24、及び第3の固定部殻体26を構成する内筒体20C、22C、24C、26C、及び外筒体20B、22B、24B、26Bは、後に詳述するカッタ部30の回転軸と同心同軸に配置されており、これにより、内筒体20C、22C、24C、26Cと外筒体20B、22B、24B、26Bとの間に環状空間が形成される。支持部材は、棒状又は板状の鋼材からなり、外筒体20B、22B、24B、26Bに作用する土圧を支持可能な本数、内筒体20C、22C、24C、26Cの中心軸を中心として放射状に、周方向及び軸方向に適宜な間隔をあけて、これら内筒体20C、22C、24C、26Cと外筒体20B、22B、24B、26Bを結ぶように設けられている。そして、内筒体20C、22C、24C、26Cと、外筒体20B、22B、24B、26Bとの間の環状空間内に推進機構18が収容されている。
【0022】
回転部殻体20は第1の固定部殻体22に対して回転可能に接続されている。なお、回転部殻体20と第1の固定部殻体22との間に、ベアリング等を介在させることにより滑りを向上することができる。
【0023】
また、第2の固定部殻体24の内筒体24C及び外筒体24Bの前端部は、第1の固定部殻体22の内筒体22Cと外筒体22Bの後端部の間の空間内に収容されている。かかる構成により、第2の固定部殻体24は第1の固定部殻体22に対して軸方向に摺動可能に接続されている。
【0024】
これと同様に、第3の固定部殻体26の内筒体26C及び外筒体26Bの前端部は、第2の固定部殻体24の内筒体26Cと外筒体26Bの後端部の間に収容されている。かかる構成により、第3の固定部殻体26は第2の固定部殻体24に対して軸方向に摺動可能に接続されている。なお、第1の固定部殻体22と第2の固定部殻体24の接続部、及び、第2の固定部殻体24と第3の固定部殻体26の接続部に、軸方向の摺動を案内するガイド部材を設けてもよい。
【0025】
第3の固定部殻体26の後端部には後方に延びるように筒状の筒状部材110が設けられている。筒状部材110は、例えば厚さ20mm以上(本実施形態では22mm)の鉄板からなる。筒状部材110は、第3の固定部殻体26の後端部の外周を取り囲んだ状態で第3の固定部殻体26に固定されている。後述するように、筒状部材110の内側ではライナーを環状に組み立てる組立作業が行われる。なお、筒状部材110には軸方向に延びるスリットが形成されていてもよい。また、筒状部材110を円弧断面形状の複数の部材で構成し、複数の円弧断面形状の部材の間には隙間を設けてもよい。
【0026】
図1及び
図2に示すように、掘削機構14は、回転部殻体20の先端面部20Aに形成された複数の削孔ビットを含むカッタ部30と、第1の固定部殻体22内に配置された減速機32及びモータ34と、を備える。
【0027】
図1及び
図4に示すように、回転部殻体20の先端面部20Aには、周方向に間隔をあけて複数の開口36が形成されており、外部と回転部殻体20内の空間20Eとがこの開口36を通して連通している。
【0028】
図4に示すように、カッタ部30は、回転部殻体20の先端面部20Aに周方向に間隔をあけて設けられた複数のローラービット38と、先端面部20Aに形成された開口36の縁に設けられた削孔ビット40と、を備える。
また、
図2に示すように、回転部殻体20の後端部には、リング33を介してピンラック35が取り付けられている。
【0029】
図2に示すように、第1の固定部殻体22内に配置されたモータ34には減速機32が接続されており、この減速機32にはピニオン37が取り付けられている。そして、減速機32に取り付けられたピニオン37が、回転部殻体20に取り付けられたピンラック35と噛み合っている。これにより、モータ34が回転すると、この回転力が減速機32を介してトルクが増幅されて回転部殻体20に伝達され、回転部殻体20が中心軸を中心として第1〜第3の固定部殻体22、24、26に対して回転する。
【0030】
各ローラービット38は、半径方向に異なる位置に配置されている。これにより、回転部殻体20が周方向に回転した際に、各ローラービット38が通過する軌跡が、半径方向に略等間隔な同心円となり、径によらず均質な掘削を行うことができる。
【0031】
また、削孔ビット40は、先端が鋭利なビットからなり、回転部殻体20が回転することにより、ローラービット38により切削された切削面を平坦に整えるように掘削する。
【0032】
図7に示すように、掘削土搬出機構16は、回転部殻体20内の空間20Eを周方向に複数の室20Fに分割するように回転部殻体20の内部の空間20Eに設けられた複数の板材42と、第1の固定部殻体22の内筒体22Cの前端部に固定され、回転部殻体20の内筒体20Cの後端に向かって延出するように取り付けられた閉鎖プレート44と、地盤に向かって水を噴射するように、その噴出口が回転部殻体20の先端面部20Aの表面に設けられたジェットノズル(図示せず)と、を備えている。
【0033】
各板材42は、先端がそれぞれ、回転部殻体20の先端面部20Aの削孔ビット40が取り付けられた箇所の裏面に接続されている。なお、本実施形態では、板材42は先端面部20Aに対して垂直に設けてられているが、これに限らず、後方に向かって回転部殻体20の周方向に傾斜するように設けられてもよい。このように、回転部殻体20内に板材42を設けることにより、回転部殻体20の剛性を向上することができる。
【0034】
閉鎖プレート44は、回転部殻体20の内筒体20Cの後端と、第1の固定部殻体22の内筒体22Cの前端との間の隙間20Dを、周方向に最下部から所定の高さまでの部分(本実施形態では、最下部から周方向両側にそれぞれ約120°の部分)を閉鎖するように設けられている。
【0035】
図2〜
図4に示すように、推進機構18は、前方の軸方向ジャッキ52と、後方の軸方向ジャッキ50と、前方の径方向ジャッキ54と、後方の径方向ジャッキ56と、補助用の推進ジャッキ57とにより構成される。
【0036】
前方の軸方向ジャッキ52は、第1の固定部殻体22から第2の固定部殻体24にわたって、内筒体22C、24Cと外筒体22B、24Bとの間に収容されており、先端が第1の固定部殻体22の支持部材に固定され、後端が第2の固定部殻体24の支持部材に固定されている。
【0037】
後方の軸方向ジャッキ50は、第2の固定部殻体24から第3の固定部殻体26にわたって、内筒体24C、26Cと外筒体24B、26Bとの間に収容されており、先端が第2の固定部殻体24の支持部材に固定され、後端が第3の固定部殻体26の支持部材に固定されている。
【0038】
これら、前方の軸方向ジャッキ52、及び、後方の軸方向ジャッキ50は、他の部材と干渉しないように、周方向に適宜な間隔をあけて複数設置されている。
【0039】
前方の径方向ジャッキ54は、第1の固定部殻体22内に収容されている。第1の固定部殻体22の外筒体22Bは、前方の径方向ジャッキ54に対応した位置に開口が形成されており、前方の径方向ジャッキ54はこの開口から掘削装置10の径方向外方に向かって突出するように伸縮可能である。
【0040】
後方の径方向ジャッキ56は、第3の固定部殻体26内に収容されている。第3の固定部殻体26の外筒体26Bは、後方の径方向ジャッキ56に対応した位置に開口が形成されており、後方の径方向ジャッキ56はこの開口から掘削装置10の径方向外方に向かって突出するように伸縮可能である。
【0041】
推進ジャッキ57は、掘削装置10の後端部下方に前後方向に延びるように配置されており、掘削装置10の後方に向かって伸縮可能である。
なお、これら前方の軸方向ジャッキ52、後方の軸方向ジャッキ50、前方の径方向ジャッキ54、後方の径方向ジャッキ56、及び、推進ジャッキ57は、制御装置(図示せず)に接続されており、制御装置により油圧が供給される。
【0042】
また、
図2及び
図3に示すように、掘削装置10は、掘削土搬出機構16として、掘削土受板100と、岩破砕機106と、コンベア81と、を備える。
掘削装置10の内側空間の後部には、架台70が水平に保持されている。
【0043】
掘削土受板100は、回転部殻体20の内側から後方に向かって水平に延びる板材である。掘削土受板100は、回転部殻体20の内筒体20Cの内面の下端と等しい高さに設けられており、回転部殻体20及び第1の固定部殻体22の内筒体20C、22Cとの間に隙間が生じないような幅を有している。なお、掘削土受板100は、架台70よりも低い高さ位置に設けられている。
【0044】
コンベア81は、その先端が岩破砕機106の下方に位置し、後方に向かって延びている。なお、第1の固定部殻体22、第2の固定部殻体24、及び第3の固定部殻体26の内筒体22C、24C、26Cの下方は所定の幅にわたって切りかかれており、この切りかかれた部分にコンベア81は配置されている。コンベア81は後方に向かって延び、掘削装置10の後部では斜め上方に向かって傾斜している。
【0045】
岩破砕機106は、スクリュー形状の破砕ビットを有する2軸形式の破砕機である。このような破砕機としては、例えば、MMD社製のサイザー等を用いることができる。破砕機106は前部上端が掘削土受板100の後端に接続され、後端が架台70の下方に位置するように、コンベア81の直上に配置されている。
【0046】
以下、本実施形態のトンネル掘削装置によりトンネルを構築する方法を説明する。
本実施形態では、先行して、掘削装置10により円環断面状に地盤72を掘削する第1の掘削ステップと、掘削装置10を前進させる装置前進ステップとを繰り返すことにより地盤を円環状に掘削する。そして、これと並行して掘削装置10により掘削された内側の残された中心部の地盤72を掘削装置10内でブレーカ62によって掘削する第2の掘削ステップを行うことにより円形断面のトンネルを構築する。
また、これと並行して掘削装置10の後部において、すでに構築されているライナー支保工の前端部と連続するように、ライナーを円環状に組み立ててライナー支保工を構築するライナー組立ステップと、円環状に組み立てたライナーと掘削装置により掘削された地盤の壁面との間にモルタルを注入してライナー支保工を地盤と一体化する裏込め注入ステップを行う。
【0047】
以下、掘削装置10により円環断面状に地盤を掘削する方法を説明する。
まず、推進機構18により、掘削装置10を推進させる方法について説明する。なお、この推進作業は、回転部殻体20を固定部殻体22、24、26に対して回転させるとともに、掘削土搬出機構16により掘削土を排出させながら行う。
【0048】
図8は、掘削装置10の推進方法及びライナーの組立作業を説明するための図である。なお、同図では、説明のため、後方の軸方向ジャッキ50と、後方の径方向ジャッキ56と、推進ジャッキ57とを同一平面内に示している。掘削装置10を推進させるためには、まず、後方の径方向ジャッキ56を径方向外方に向けて伸長させて周囲の地盤を押圧する(
図8の(A))。そして、後方の径方向ジャッキ56により周囲の地盤に反力をとった状態で、後方の軸方向ジャッキ50を伸長させる(
図8の(B))。この際、推進ジャッキ57を伸長させて、すでに構築したライナー支保工120に反力をとることが望ましい。これにより、第3の固定部殻体26に対して、回転部殻体20、第1の固定部殻体22、及び第2の固定部殻体24が前方に押し出される。この際、回転部殻体20が回転することにより、ローラービット38及び削孔ビット40により地盤が円環状に掘削される。
【0049】
なお、この際、前方の軸方向ジャッキ52のそれぞれを異なる長さ伸長させることにより、掘削装置10の掘削進行方向を調整することができる。すなわち、例えば、装置上方に位置する前方の軸方向ジャッキ52の伸長長さに比べて、装置下方に位置する前方の軸方向ジャッキ52の伸長長さを長くすることにより、回転部殻体20及び第1の固定部殻体22を、第2の固定部殻体24に対して斜め上方に向けることができる。
【0050】
次に、前方の径方向ジャッキ54を径方向外方に向けて伸長させて周囲の地盤を押圧するとともに、後方の径方向ジャッキ56を収縮させる。そして、前方の径方向ジャッキ54により周囲の地盤に反力をとった状態で、後方の軸方向ジャッキ50を収縮させる(
図8の(C))。これにより、第1の固定部殻体22及び第2の固定部殻体24に対して、第3の固定部殻体26が引き寄せられる。上記の工程を繰り返すことにより、掘削装置10を前進させることができる。
【0051】
上記の推進作業とともに、回転部殻体20を回転させて地盤を掘削し、掘削することで生じた掘削土を装置後方へと送る。
すなわち、推進機構18により回転部殻体20のカッタ部30を地盤に押し付けた状態で、掘削機構14のモータ34を回転させる。モータ34の回転力は減速機32に伝達されてトルクが増幅され、ピニオン37及びピンラック35を介して回転部殻体20を回転させる。回転部殻体20が回転すると、まず、地盤がカッタ部30のローラービット38により断面鋸形状に掘削され、さらに、削孔ビット40により表面の凹凸が削りとられる。これにより円環状に地盤を掘削することができる。
【0052】
カッタ部30により地盤を掘削することで生じた掘削土は、ジェットノズルから噴射される水と攪拌されて、流動性が向上される。そして、掘削土は、回転部殻体20の先端面部20Aに形成された開口36から回転部殻体20内の室20Fに収容される。そして、室20F内に収容された掘削土は、隙間20Dから掘削装置10の内側空間(すなわち、内筒体22Cの内側)へ排出される。
【0053】
この際、閉鎖プレート44により、回転部殻体20の内筒体20Cの後端と、第1の固定部殻体22の内筒体22Cの前端との間の隙間20Dを、周方向に最下部から所定の高さまでの部分が閉鎖されているため、所定の高さまで回転した室20F内の掘削土が内筒体の内側空間へ排出される。これにより、装置内側に運ばれた掘削土が、下方にたまってしまい、回転部殻体20の内筒体20Cの後端と、第1の固定部殻体22の内筒体22Cの前端との間の隙間20Dを閉塞することを防止できる。
【0054】
また、上記の掘削装置10により地盤を円環状に掘削する作業と並行して、掘削装置10により円環状に掘削された部分の内側の地盤72をブレーカ62により掘削する。
【0055】
次に、このように地盤を掘削することにより生じた掘削土を掘削装置10の後方のズリ出し区域まで搬送する方法を説明する。
上述の通り、カッタ部30により円環状に地盤が掘削されると、掘削により生じた岩石等を含む掘削土は、回転部殻体20内に収容され、隙間20Dの閉鎖プレートにより閉鎖されていない部分から落下して、掘削装置10の内側空間へ排出される。そして、回転部殻体20から排出された掘削土は掘削土受板100上に堆積する。
【0056】
また、カッタ部30により円環状に地盤が掘削されて残った円柱状の地盤72は、ブレーカ62により破砕される。ブレーカ62により地盤を破砕することにより生じた掘削土は、カッタ部30により掘削された掘削土とともに破砕機106へと送られ、細かく破砕される。破砕機106により破砕された掘削土は、コンベア81上に落下し、コンベア81によりズリだし区域9まで運ばれ、ダンプカー等によりトンネル外へ排出される。
【0057】
また、上記の掘削装置10による掘削工程と並行して、掘削装置10の後方においてライナー支保工の構築作業が行われる。ライナー支保工の構築作業はライナーを環状に組み立てる組立作業と、環状に組み立てたライナーの外周にモルタルを充填する裏込め注入作業とを含む。
【0058】
まず、ライナーを環状に組み立てる組立作業について説明する。
ライナーの組立作業は、
図8(A)〜(C)を参照して説明した通りに掘削装置10を前進させる作業と並行して筒状部材110内において行う。まず、
図8(C)を参照して説明した通り、前方の径方向ジャッキ54を径方向外方に向けて伸長させて周囲の地盤を押圧した状態で、後方の軸方向ジャッキ50を収縮させる。このように後方の軸方向ジャッキ50を収縮させた状態において、筒状部材110の後端はすでに構築されたライナー支保工120の外周に位置している。
【0059】
次に、
図8(C)に示すように、推進ジャッキ57を収縮させる。これにより、推進ジャッキ57の後端と、すでに構築されたライナー支保工120との間に隙間が生じる。次に、
図8(D)に示すように、筒状部材110の内部においてライナー120Aを筒状部材110の内面に沿って円環状になるように周方向に連結する。ライナー120Aは、例えば、円弧状に形成された鉄筋コンクリート製のRCライナーからなる。RCライナーは工場等で製造してもよいが、現場で製造することが望ましい。また、ライナー120Aには裏込め注入作業においてモルタルを充填するための注入孔120B(
図9)が表裏面の間で貫通している。また、ライナー120Aを円環状に連結するとともに、すでに構築されたライナー支保工120の先端部に連結する。なお、ライナー120Aの連結方法としては従来周知の方法を用いることができ、例えば、連結用の金物等を用いればよい。
【0060】
次に、このようにして構築されたライナー支保工120の外周にモルタルを充填する裏込め注入作業について説明する。裏込め注入作業は、掘削装置10が前進し、ライナー支保工120と掘削装置10により掘削された地盤122の壁面との間に筒状部材110が介在していない領域において実施する。
【0061】
図9は、裏込め注入作業を実施する方法を説明するための図である。
図9(A)に示すように、まず、掘削装置10の後方の所定の区間(
図9(A)における区間A)において、ライナー支保工120と周囲の地盤122との間の円環状断面の空間のうち所定の高さ以下も下方の領域にモルタルを充填する第1の注入工程を行う。この第1の注入工程においてモルタルを充填する領域は例えば、
図9(B)に示すようなトンネルの鉛直断面において、下方の120°の範囲(鉛直下方から左右に60°の範囲)とするとよい。
図9(B)に示すように、先行してモルタルを充填する際には、下方の120°の範囲に位置するライナー120Aのうちの最も高いライナー120Aの注入孔120B(
図9(A)、(B)に矢印aで示す注入孔120B)からモルタル130を注入するとよい。この際、
図9(C)に示すように、ライナー支保工120と周囲の地盤122との間の円環状断面の空間の下部には、掘削装置10により地盤を掘削して生じた掘削土132が入り込んでいる。さらに、この掘削土132は上方を掘削装置10が通過しているため、締め固められている。このように、ライナー支保工120と周囲の地盤122との間の円環状断面の空間の下部に掘削土132が入り込んでいるため、少量のモルタルでライナー支保工120の下部を周囲の地盤122と一体化することができる。
【0062】
次に、先行してモルタルを充填する区間の後方の所定の区間(
図9(B)における区間B)において、ライナー支保工120と周囲の地盤122との間の円環状断面の空間のうち所定の高さよりも上方の領域にモルタルを充填する第2の注入工程を行う。この第2の注入工程においてモルタルを充填する際には、環状に連結されたライナー120Aのうち、最上部のライナー120Aの注入孔120B(
図9(A)、(B)に矢印bで示す注入孔120B)からモルタル130を注入するとよい。このように、第1の注入工程及び第2の注入工程を行うことにより、ライナー支保工120の外周に裏込めモルタルが充填され、地盤を強固に支持することが可能になる。
【0063】
本実施形態によれば、以下の作用効果が奏される。
本実施形態では、掘削装置10の後端部を取り囲み、装置本体の後方に延びる筒状部材110内においてライナー120Aを環状に組み立てるため、外径が装置本体の外径と等しいようなライナー支保工120を組み立てることができる。これにより、環状に組み立てたライナー120Aとカッタ部30により掘削された地盤の壁面との間の隙間の間隔を小さくすることができ、この隙間に充填する充填剤の量を削減することができる。そして、このようにライナー120Aとトンネル内壁との間に玉石等を投入することなく、充填剤の量を減らすことができるため、施工速度を低下させることなく、コストを削減することができる
【0064】
また、本実施形態によれば、円環状のカッタ部30で先行して地盤を円環状に掘削し、これと並行して環状に掘削された内側の部分を装置本体内で掘削するため、地盤の掘削速度を向上することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、カッタ部30により掘削された地盤の壁面と、環状に組み立てたライナー120Aとの間の円環状断面空間にモルタルを注入する裏込め注入ステップにおいて、円環状断面空間の所定の高さ以下の部分に充填剤を注入する第1の注入工程と、円環状断面空間の所定の高さよりも上方の部分に充填剤を注入する第2の注入工程とを行っている。環状に組み立てたライナー120Aとカッタ部30により掘削された地盤の壁面との間の下部には、地盤を掘削して生じた掘削土132が入り込んでおり、この入り込んだ掘削土132は上方をトンネル掘削装置10が通過しているため、締め固められている。このため、第1の注入工程で少量の充填剤を注入するのみで、ライナー支保工120の下部を地盤と一体化させることができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、トンネル掘削装置10は、装置後方の下部に後方に向けて伸長可能な推進ジャッキ57を有する。上述の通り、ライナー120Aの下部は第1の注入工程で先行して地盤と一体化されている。このため、本実施形態によれば、ライナー120Aの下部に推進ジャッキ57により反力をとることができるため、より強い力でカッタ部30を地盤に押さえつけた状態で地盤を掘削することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、円環状のカッタ部30により地盤を円環状に掘削する場合について説明したが、これに限らず、カッタ部30を円形とし、円形状に地盤を掘削してもよい。