(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571486
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】アンテナ装置およびセクタアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/18 20060101AFI20190826BHJP
H01Q 21/08 20060101ALI20190826BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
H01Q19/18
H01Q21/08
H01Q13/08
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-206515(P2015-206515)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-34644(P2017-34644A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-150082(P2015-150082)
(32)【優先日】2015年7月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】天野 義久
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−225013(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0169468(US,A1)
【文献】
米国特許第04876554(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0151560(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 13/02
H01Q 13/08
H01Q 19/18
H01Q 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの平面基体上に複数のアンテナ素子を電界偏波方向に沿って並べ、導電接続した1次アンテナと、
前記1次アンテナが配置された前記平面基体に対して、前記1次アンテナを挟んで、それぞれ任意の角度を有する方向に延設された金属板からなる2次アンテナと、
から構成され、
前記2次アンテナの金属板は、前記金属板の方向が前記1次アンテナの電界偏波方向に沿って配置されるとともに、それぞれ前記1次アンテナから開口端に向かって広がる空間ギャップを有し、前記金属板の放射方向への長さが放射される電波波長λ以上であり、前記2次アンテナの形状が、前記1次アンテナから放射される電波ビームを放射する方向に前記開口端を形成するよう傾斜して前記平面基体上に設けたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記1次アンテナは、導体グランドパターン面と前記1次アンテナ形成面とする誘電体基板からなる前記1つの平面基体の前記1次アンテナ形成面に導体パターンによって印刷形成された複数のパッチアンテナであり、
これら複数のパッチアンテナが導体パターンにより接続され、該接続された導体パターンの端部または中央付近の1箇所に入力ポートを設け、前記金属板の前記平面基体の延面方向が、前記接続された導体パターンの接続方向と平行であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記金属板が、アルミ・銅・金・鉄・ステンレスのいずれかの板金部品であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記金属板が、金属メッキ層を有する樹脂部材で成形された金属メッキ層を備えた板状部品又はブロック状部品であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記平面基体が、前記2次アンテナが形成される第2の平面基体と、
前記第2の平面基体と空気層を介して設けられ、前記1次アンテナが配置されるとともに、前記第2の平面基体と接する面の裏面に導体グランドパターン面を設けた第1の平面基体、からなる多層構造であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1の平面基体と前記第2の平面基体との間に金属製スペーサを設け、
前記金属製スペーサは、前記1次アンテナを構成する素子と接触しない位置に前記第2の平面基体を前記第1の平面基体上に配置し、かつ、前記第2の平面基体が前記第1の平面基体に対して平行状態を保って配置されていることを特徴とする請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のアンテナ装置を単位アンテナ装置として、該単位アンテナ装置を複数設け、
前記複数のアンテナ装置はスイッチ回路により選択可能に並列接続されており、かつ、前記複数のアンテナ装置において前記2次アンテナを構成する2つの金属板は、前記1次アンテナ毎に電波ビームを放射したい方向に傾斜して設けられていることを特徴とするセクタアンテナ装置。
【請求項8】
前記複数の単位アンテナ装置に対応する少なくとも2つの金属板は、前記1次アンテナの形成面から開口端に向かって広がる空間ギャップを有するように形成され、前記金属板の端部に形成される前記電波ビームの放射端である前記金属板の開口面は、前記電波ビームの放射方向に応じて、前記平面基体側に傾斜するように形成されており、前記複数の単位アンテナ装置が並列して配置された中央部で隣接する単位アンテナ装置間では、前記金属板を共用化して空間ギャップを形成し、前記複数の単位アンテナ装置の両端側に配置された隣接する単位アンテナ装置間では、前記金属板を単位アンテナ装置毎にそれぞれ少なくとも2つの金属板により空間ギャップを形成することを特徴とする請求項7に記載のセクタアンテナ装置。
【請求項9】
前記複数の単位アンテナを覆うケースを設け、前記それぞれの金属板が、前記ケースに固定された筐体アンテナを構成することを特徴とする請求項7または請求項8に記載のセクタアンテナ装置。
【請求項10】
前記2次アンテナの金属板と前記1次アンテナとを非導通としたことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記2次アンテナの金属板と前記1次アンテナ及び前記導体グランドパターン面とを非導通としたことを特徴とする請求項2から請求項9のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記2次アンテナの金属板は、前記1次アンテナとは非導通とする一方、前記導体グランドパターン面とは導通させたことを特徴とする請求項2から請求項9のいずれかに記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波ビームを放射するアンテナ装置およびセクタアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、車両の世界では、以前から60/77GHz帯の電波による長距離レーダ(LRR:Long Range Radar)が用いられてきた。その監視エリアは、前方進行方向に遠くまで伸びた細長い1次元線状が普通であった。
【0003】
ここで、電波レーダ装置のキーパーツの1つは、電波ビームを放射・受信するアンテナである。今まで、様々な構造のアンテナが試行錯誤されてきたが、車載レーダ特有の偏波面やビーム断面形状等の諸条件を考慮した結果、最も低コストかつ効果的であるとされてきた代表的な構造が、非特許文献1のFig.3.2a〜2dに開示されている。この図を引用した図が
図8である。
【0004】
図8に示すように、この電波レーダ装置は、誘電体基板(902)の裏面が導体のベタGND層(901)になっており、一方の面に、導体により所望の幾何学的パターニング(911〜913)を施した、いわゆるマイクロストリップ線路系を形成した平面パッチアンテナ構造をしている。その幾何学的パターニングは、電波波長をλとすると、一辺がλ/2に近い寸法の複数のパッチアンテナ(912)を、やはり長さがλ/2に近い複数の細い導体パターン(913)で串団子状に貫き、その一端に対して入力ポート(911)から高周波電気信号を与える構造になっている。
【0005】
ここで、設計パラメータとして重要な電界偏波方向(951)は、串の延設方向と同じである。また、
図8は串が一方向にのみ伸びている基本形の構造だが、この変形として、中央の給電点から2本の串が180度反対方向へ伸びている構造も好んで使われる。
【0006】
図8のアンテナ構造は、現在も車載レーダの世界で最も広く使われ続けている構造だが、しかし、近年になって限界が生じ始めており、再び試行錯誤が始まっている。
【0007】
こうした試行錯誤のきっかけとなったのは、近年急速に普及してきた、24GHz帯の短距離レーダ(SRR:Short Range Radar)である。このSRRの監視エリアは、特許文献1に開示されたR−CTA(Rear Cross Traffic Alert)が代表だが、後方や側方へ扇形の2次元面状に広がったものが多い。
【0008】
この種のレーダ装置の視野角、即ち扇形の開き角度は、90度以上にもなることが珍しくない。レーダ装置の視野角を90度以上にするためには、もはや1本の電波ビームだけでは難しく、何らかの形で複数の電波ビームを組み合わせることが必要になってくる。例えば、非特許文献1はその
図3において、送信アンテナのみだが、4方向のセクタアンテナを採用したことによって、視野角130度の車載レーダを実現したことを報告している。
【0009】
同図において不足している説明を補って
図29に示した。互いに異なる方向(1061〜1064)を向いた4個のアンテナ(1021〜1024)のうち任意の1個が、何らかの高周波スイッチ機能(1007)によって適宜選択され、その方向にのみ電波ビームが放射される。
【0010】
車載レーダで広く使われてきた
図8のアンテナ構造だが、これをセクタアンテナに組み込もうとした場合は、問題が生じる。
図8のアンテナ構造は、非特許文献1のFig.3.2eに開示された通り、基本的には基板に垂直な真正面方向にしか電波ビームを放射できない。単純に
図8のアンテナを同一誘電体基板(902)上に4個並べても、4個とも同じ方向にしか電波ビームが飛ばないため、
図29のようなセクタアンテナ動作はできないのである。したがって、
図8のアンテナの拡張をして、斜めの任意方向への電波ビーム放射を可能にする技術が求められ始めている。なお、非特許文献1はこの問題については触れず、送信アンテナ構造の詳細は明かしていない。
【0011】
このように斜め方向の電波ビームを自由に生成できる可能性がある技術として、特許文献2では、立体ホーンアンテナ構造を用いた車載レーダ用セクタアンテナ技術を開示している。この技術は、
図8やその他の平面1次アンテナが発生した電磁波ビームを、立体ホーンアンテナ部品によって任意方向に捻じ曲げようというものである。以下、
図30によって詳細に説明する。
【0012】
図30において、立体加工された導体部品の中に溝が掘られ、6個のホーンアンテナ(1181〜1186)を形成している。6個のホーンアンテナ(1181〜1186)は、互いに異なる方向を向いている。中心には、ミリ波回路基板(1102)があり、
図29のスイッチ機能(1007)に相当する機能もこの上に載っている。ミリ波回路基板(1102)上で生成されたミリ波レーダ信号は、そのスイッチ機能の働きで6個の1次アンテナ(1121)のどれかへと供給され、その先にある2次アンテナである6個のホーン(1181〜1186)のどれかから放射される。
【0013】
なお、ホーンアンテナを使えばセクタアンテナを構成することが容易であること自体は古くから公知であり、特許文献2もそのこと自体を権利主張したものではない。
【0014】
特許文献2は、ミリ波回路基板(1102)とホーンアンテナ(1181〜1186)の間を接続する1次アンテナ(1121)の構造について、何も言及していない。この1次アンテナには、
図8のような低コスト平面パッチアンテナを使うことも可能であることが公知であり、例えば特許文献3や非特許文献3に開示されている。
【0015】
特許文献3と非特許文献3の図の構造は一見すると異なるように見えるが、これを整理して
図32に示した。1次アンテナであるパッチ・アンテナ(1421)の真上には、金属製のホーンアンテナ(1101)が置かれる。ホーンアンテナ(1101)は、ただ上に置いて電位が浮いた状態で放置するのではなく、通常はパッチアンテナ(1421)の周囲を囲って設けられたグランドパターン(1312)との間で、半田付け等の手段により導通・固定される。グランドパターン(1312)は、VIAホール(1306)によって、誘電体基板(1302)の裏面の導体ベタグランド層(1024)に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2013−45142号公報
【特許文献2】特開2004−158911号公報
【特許文献3】特開2001−168632号公報
【特許文献4】特開2006−339759号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】J. Schoebel and P. Herrero, “Planar Antenna Technology for mm−Wave Automotive Radar, Sensing, and Communications”, 2009, http://cdn.intechweb.org/pdfs/6894.pdf
【非特許文献2】大口他、「自動車用79GHz帯超広帯域レーダ」、富士通テン技報、Vol.31、No.1、2014
【非特許文献3】須賀他、「地上デジタル放送波測定用のMSA給電型ホーンアンテナに関する基礎的検討」、2012年電子情報通信学会総合大会C−15−9
【非特許文献4】丸山他、「無線通信分野における電磁界シミュレーションの活用」、神戸製鋼技報、Vol.51、No.3、2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、非特許文献2と
図30で説明した今までのセクタアンテナは、特に車載レーダへの適用を考えた場合、コスト・サイズ・性能に問題を抱えていた。以下、3つに分けて説明する。
【0019】
第1に、ホーンアンテナの構造体である複雑な金属立体部品(1114)が原因で、コストあるいは性能のどちらかで問題が起きる。つまり、このような金属立体部品(1114)はアルミダイキャスト法で量産される場合が多い。しかし、アルミダイキャスト法の仕上がり表面は粗く、24GHz準ミリ波信号が減衰してしまうという問題がある。また、鏡面化工程を追加するとしても、まず、研磨法の場合は、部品寸法が10cm超もあり凹凸も複雑過ぎるため、極めて高コストになってしまう。さらに、Crメッキ等による鏡面化の場合には、表面電気抵抗が大きくなって24GHz準ミリ波信号が減衰し、性能が劣化する。
【0020】
第2に、24GHz帯車載レーダには、不向きな厚型デザインになってしまうという問題がある。ミリ波回路基板(1102)は、近年では、低コスト化のために複数設けることなく、1枚に集約する方向に向かっている。そのため、寸法的には小さくはない。ましてや、仮に、1次アンテナとして
図8のような構造まで搭載した場合には、ミリ波回路基板(1102)の寸法は、24GHz帯では、10cm程度になるのが一般的である。
図30においては、そのミリ波回路基板(1102)が装置全体の半円の中心に同一平面に構成されており、さらに、周囲にさらにホーン(1181〜1186)が広がっていて、その装置全体の半円の半径は15cm程度にはなると推測される。一般的な24GHz帯車載レーダ製品の大半は、車体の側面や角のバンパー裏側等に貼り付けて搭載する意図で設計されており、その厚み5cm以下の薄型デザインが一般的である。それに対して、
図31は、この装置(1292)を車体(1291)の側面に搭載した模式図だが、この状態では前述のように厚みが15cmにもなるため、車体から突出してしまうという問題がある。
【0021】
第3に、
図30の構造が最初から「レドーム」について考慮しておらず、このコストが高くなる。ここで、レドームとは、アンテナが放射するミリ波電波を遮ることなく、雨・風等の環境変化だけを遮断するためのカバーである。通常は、高価なテフロン(登録商標)樹脂材が使われる。したがって、低コストのレーダ装置を設計する際には、レドームを安く作れるように小型・単純に設計することもポイントの1つである。ところが、
図30の装置の場合は、レドーム設計を工夫する余地は全く無く、推定で半径15cmにはなる。そのため、装置全体を半円状に覆うように設計するしかない。その結果、大型のテフロン(登録商標)樹脂部品を専用金型で射出成型するしか製造方法が無く、コスト高になるという問題がある。
【0022】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、小型で低コストのアンテナ装置およびセクタアンテナ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の1またはそれ以上の実施形態は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
【0024】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、1つの平面基体上に複数のアンテナ素子を電界偏波方向に沿って並べ、導電接続した1次アンテナと、前記1次アンテナが配置された前記平面基体に対して、前記1次アンテナを挟んで、それぞれ任意の角度を有する方向に延設された金属板からなる2次アンテナと、から構成され、前記2次アンテナの金属板は、前記金属板の方向が前記1次アンテナの電界偏波方向に沿って配置されるとともに、それぞれ前記1次アンテナから開口端に向かって広がる空間ギャップを有し、前記金属板の放射方向への長さが放射される電波波長λ以上であり、前記2次アンテナの形状が、前記1次アンテナから放射される電波ビームを放射する方向に前記開口端を形成するよう傾斜して前記平面基体上に設けたことを特徴とするアンテナ装置を提案している。
【0025】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記1次アンテナは、導体グランドパターン面と前記1次アンテナ形成面とする誘電体基板からなる前記1つの平面基体の前記1次アンテナ形成面に導体パターンによって印刷形成された複数のパッチアンテナであり、これら複数のパッチアンテナが導体パターンにより接続され、該接続された導体パターンの端部または中央付近の1箇所に入力ポートを設け、前記金属板の前記平面基体の延面方向が、前記接続された導体パターンの接続方向と平行であることを特徴とするアンテナ装置を提案している。
【0026】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記金属板が、アルミ・銅・金・鉄・ステンレスのいずれかの板金部品であることを特徴とするアンテナ装置を提案している。
【0027】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記金属板が、金属メッキ層を有する樹脂部材で成形された金属メッキ層を備えた板状部品又はブロック状部品であることを特徴とするアンテナ装置を提案している。
【0028】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記平面基体が、前記2次アンテナが形成される第2の平面基体と、前記第2の平面基体と空気層を介して設けられ、前記1次アンテナが配置されるとともに、前記第2の平面基体と接する面の裏面に導体グランドパターン面を設けた第1の平面基体、からなる多層構造であることを特徴とするアンテナ装置を提案している。
【0029】
形態6;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記第1の平面基体と前記第2の平面基体との間に金属製スペーサを設け、前記金属製スペーサは、前記1次アンテナを構成する素子と接触しない位置に前記第2の平面基体を前記第1の平面基体上に配置し、かつ、前記第2の平面基体が前記第1の平面基体に対して平行状態を保って配置されていることを特徴とする請求項5に記載のアンテナ装置を提案している。
【0030】
形態7;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、上記のいずれかのアンテナ装置を単位アンテナ装置として、該単位アンテナ装置を複数設け、前記複数のアンテナ装置はスイッチ回路により選択可能に並列接続されており、かつ、前記複数のアンテナ装置において前記2次アンテナを構成する2つの金属板は、前記1次アンテナ毎に電波ビームを放射したい方向に傾斜して設けられていることを特徴とするセクタアンテナ装置を提案している。
【0031】
形態8;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記複数の単位アンテナ装置に対応する少なくとも2つの金属板は、前記1次アンテナの形成面から開口端に向かって広がる空間ギャップを有するように形成され、前記金属板の端部に形成される前記電波ビームの放射端である前記金属板の開口面は、前記電波ビームの放射方向に応じて、前記平面基体側に傾斜するように形成されており、前記複数の単位アンテナ装置が並列して配置された中央部で隣接する単位アンテナ装置間では、前記金属板を共用化して空間ギャップを形成し、前記複数の単位アンテナ装置の両端側に配置された隣接する単位アンテナ装置間では、前記金属板を単位アンテナ装置毎にそれぞれ少なくとも2つの金属板により空間ギャップを形成することを特徴とするセクタアンテナ装置を提案している。
【0032】
形態9;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記複数の単位アンテナを覆うケースを設け、前記それぞれの金属板が、前記ケースに固定された筐体アンテナを構成することを特徴とするセクタアンテナ装置を提案している。
【0033】
形態10;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記2次アンテナの金属板と前記1次アンテナとを非導通としたことを特徴とするアンテナ装置を提案している。
【0034】
形態11;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記2次アンテナの金属板と前記1次アンテナ及び前記導体グランドパターン面とを非導通としたことを特徴とするアンテナ装置を提案している。
【0035】
形態12;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記2次アンテナの金属板は、前記1次アンテナとは非導通とする一方、前記導体グランドパターン面とは導通させたことを特徴とするアンテナ装置を提案している。
【発明の効果】
【0036】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、車載レーダに適したアンテナ装置および当該アンテナ装置を用いた薄型・小型の広角セクタアンテナ装置を実現することができるという効果がある。
また、金属板によって指向性を持たせているため、簡単な構成とすることができ、さらに各構成の接続を簡素化することで低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の側面図である。
【
図3】
図1に示すアンテナ装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図4】
図1に示すアンテナ装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態における導波路の透過斜視図を用いてTEモードを説明する図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態における導波路の透過斜視図を用いてTMモードを説明する図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る導波路の透過上面図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る1次アンテナの構成図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の変形例に係る図である。
【
図10】本発明の第1の実施形態の変形例に係る図である。
【
図11】本発明の第1の実施形態の変形例に係る図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態の変形例に係る図である。
【
図13】本発明の第1の実施形態の変形例に係る図である。
【
図14】本発明の第1の実施形態の変形例に係る図である。
【
図15】本発明の第1の実施形態の変形例に係る図である。
【
図16】本発明の第1の実施形態の変形例に係る図である。
【
図17】本発明の第1の実施形態の変形例に係る図である。
【
図18】本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【
図19】本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の側面図である。
【
図20】
図10に示すアンテナ装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図21】
図10に示すアンテナ装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図22】本発明の第3の実施形態に係るセクタアンテナ装置の側面図である。
【
図23】本発明の第3の実施形態の変形例に係るセクタアンテナ装置の側面図である。
【
図24】
図13、14に示すセクタアンテナ装置のシミュレーション結果を示す図である。
【
図25】本発明の第4の実施形態に係るセクタアンテナ装置を示す図である。
【
図26】本発明の第4の実施形態に係るセクタアンテナ装置の分解断面図である。
【
図27】本発明の第4の実施形態の変形例に係る図である。
【
図28】関連技術に係る導波路の透過斜視図である。
【
図29】本発明の第4の実施形態に係るセクタアンテナ装置の模式図である。
【
図30】関連技術に係るセクタアンテナ装置の構成図である。
【
図31】
図30のセクタアンテナ装置を車に搭載した場合の模式図である。
【
図32】関連技術に係るアンテナ装置の構成図である。
【
図33】関連技術に係るアンテナ装置における1次アンテナと2次アンテナとの関係を示した図である。
【
図34】本発明の実施形態に係るアンテナ装置における1次アンテナと2次アンテナとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて、詳細に説明する。
なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組み合わせを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0039】
<第1の実施形態>
図1から
図4および
図5から
図8を用いて、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1、
図2は、本実施形態に係るアンテナの基本構造の一例を示したものである。
図1は、アンテナの構造全体の俯瞰図であり、
図2は、アンテナの断面構造の模式図である。
【0040】
図1において、誘電体基板102の上には、1次アンテナ121として、その一端に高周波電気信号を与えるための入力ポート111を有する串団子状アレーアンテナが形成されている。ここで、この串団子状アレーアンテナの電界偏波方向151は串の方向(アレーアンテナの配置方向)と同じになる。誘電体基板102の裏面には、導体ベタグランド層101が形成されている。
【0041】
この串団子状アレーアンテナに沿うように、誘電体基板102上に、2次アンテナとして働く2つの金属板131〜132からなる平行平板導波路が設けられている。この平行平板導波路は、電界偏波方向151と平行である。したがって、TMモードで電磁波を誘導する。
【0042】
2つの金属板の間の空間ギャップは、誘電体基板102から離れるほど広がっており、断面はラッパ形状(末広がりな形状)となっている。金属板の長さLは、24GHz電波の波長である1.25cmよりも長い。
【0043】
なお、
図3、
図4に示すシミュレーションでは、L=3cmとしている。このシミュレーションでは、
図2に示すように、電波ビームの放射方向161を30度傾けており、その放射方向を得るためにラッパ形状全体を誘電体基板102の垂線に対して30度傾けている。
【0044】
1次アンテナ121と2次アンテナ131〜132は、単に近くに置かれているだけであり、金属どうしは、直接接触していない。つまり、
図3のシミュレーション結果で示すように、非接触電磁界結合によって一体動作できることがわかった。そのため、1次アンテナ121と2次アンテナ131〜132の間で半田付け等の導通工程は一切不要である。これは、後述する第4の実施形態で示す「筐体アンテナ」というコンセプトを実現する上で極めて重要な特徴であり、大幅なコストダウンを可能にする。
【0045】
2次アンテナとなる平行平板導波路を構成する2つの金属板131〜132は、非常に単純な構造である。そのため、例えば、アルミ板金部品等で低コストに製造できる。この点も、第4の実施形態で示す「筐体アンテナ」というコンセプトを実現する上で極めて重要な特徴である。なお、金属板131〜132はまっすぐ平らである必要はなく、湾曲した設計にしても構わない。また、板金部品に限定される訳ではなく、後述するように、他の材質や形状であってもよい。さらに、誘電体基板102の裏面の導体ベタグランド層101に2次アンテナとして働く2つの金属板131〜132を接続しても構わない。
【0046】
図1、
図2のアンテナ構造の原理は、導波路の種類と伝播モードとが異なる。しかしながら、ラッパ形状の開口面171からの電磁波放射は、ホーンアンテナに近いメカニズムで発生する。そのため、ホーンアンテナと同様に、開口面171を電波ビームを放射させたい方向161に向けて設計した際に最良性能となる。
【0047】
図1、
図2の構造を有するアンテナ装置の電磁界シミュレーション結果を、
図3、
図4に示す。シミュレータには、3次元有限要素法の市販シミュレータfemtet(登録商標)を用いた。
図3は、近傍界のシミュレーション結果であり、ある時刻における電界強度分布を示している。1次アンテナである串団子状アレーアンテナが放射した電磁界が、平行平板導波路で誘導されて曲げられ、誘電体基板102の垂線に対して30度傾いた開口面171からまっすぐその方向161へ放射されていることが確認できる。
図4は、遠方界の放射パターンのシミュレーション結果であり、半径方向は絶対アンテナ利得dBiでプロットされている。30度の方向に、サイドローブがほとんど無く電波ビーム放射が行われていることが確認できる。
【0048】
なお、本実施形態においては、「2つの金属板131〜132からなる平行平板導波路」を例示したが、
図9に示すように、2つの金属板の開放端側をラッパ状に広げたり、
図10に示すように、2つの金属板の開放端側に溝を設けたり、
図11に示すように、2つの金属板の開放端側を曲げる等してもよい。これは、本実施形態のアンテナにおいて、実験を繰り返した結果、金属板の開放端側で放射される電波の損失があるとの知見に基づくものであり、
図9から
図11に示す上記の構造とすることにより、放射される電波の損失を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態では、「2つの金属板からなる2次アンテナ」を例示したが、
図12に示すように、1枚の金属板133に対して、曲げ加工を行い、例えば、開放端側から見たときに、コの字型の金属板で1次アンテナを3方向から囲むようにしてもよい。
【0050】
また、本実施形態における誘電体基板の一例として、高コストとなる問題はあるが、樹脂基板を使用し、例えば、
図13に示すように、この樹脂基板に1次アンテナを配置する溝を設け、その溝の底面に1次アンテナを配置するとともに、その1次アンテナの挟むように位置する両側面に金メッキ処理を施してもよい。または、
図14に示すように、樹脂で形成された平面が台形の四角柱(ブロック状部材)内に1次アンテナをインサート成形し、その四角柱の両側面に金メッキ処理を施してもよい。また、射出成型した板状の樹脂部品の表面に単純にメッキを施してもよい。
【0051】
また、本実施形態においては、1次アンテナを形成するパッチを直線状に1列に配置する例を示したが、例えば、
図15に示すように、複数列で構成してもよい。また、2列で構成した場合には、一方の列に移送線路を設けることにより、ビームの射出方向を曲げやすくできる可能性がある。
【0052】
また、本実施形態においては、1次アンテナを構成する複数のパッチに対して、串団子状に貫くように給電する例を示したが、
図16のような構成でトーナメント給電するようにしてもよい。さらに、1次アンテナを構成するパッチの大きさを
図17に示すように、変化させてもよい。このような形態とすることにより、1次アンテナの性能向上が期待できる。また、パッチアンテナで示した1次アンテナをスロットアンテナで構成してもよい。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態によれば、2次アンテナが、矩形導波管ではなく、2方向が金属で囲まれずに開放された
図5、
図6に示す平行平板導波路を用いている。このように、平行平板導波路を用いることにより、単純な板金部品により製造可能であるため、格段に低コスト化できるうえ、単純な板金部品は表面鏡面仕上げが容易であるため、ミリ波信号に対して低ロス化も容易に実現できる。
【0054】
また、平行平板導波路は、2つの金属板の一方をプラス電位に、他方をマイナス電位とし、電界偏波面851を
図5のように平行平板831〜832に対して垂直な方向にして、いわゆるTEモードで使うのが一般的である。しかしながら、本実施形態においては、1次アンテナが
図8に示すように、串団子状アレーアンテナになっているため、電界偏波面851は、上記のような方向にはなっていない。そのため、本実施形態では、
図6に示すように、平行平板831〜832に対して平行な方向、いわゆるTMモードで励振する。
【0055】
さらに、
図5、
図6に示すような開放的な平行平板導波路では、両端部881の開放端において電磁波の漏洩が発生し易い。そのため、本実施形態においては、このような漏洩を防ぐ方法として、1次アンテナ821が、一般的に、複数素子をアレー化した状態で使われることに着目し、
図5、
図6のように平行平板と平行な方向に素子を並べたアレー化を行っている。
図7は、
図5、
図6を上から見た模式図であるが、上記のように、アレー化の効果により、4素子の1次アンテナ821から放射される電波ビームは整形され、中央に集中した分布となる。そのため、両端部881の開放端に対しては、もともと電磁場の放射自体が少なく、したがって漏洩を防ぐことができる。
【0056】
<第2の実施形態>
図18から
図21を用いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態においては、
図1に示すように、2つの金属板131〜132が誘電体基板102の真上に配置された構造であるために、両者は、接触していて隙間がなかった。しかし、実際の製品においては、ここに隙間を開けて、2種類の層を挿入したい場合が少なくない。この点を改良したものが、本実施形態である。以下、この点について、詳細に説明する。
【0057】
図18に本実施形態に係るアンテナ装置の構造を示す。このような構造を採用することにより、ミリ波電子部品と1次アンテナ321とを同じ誘電体基板302の片面に集約して実装することができる。
【0058】
図19において、誘電体基板302と2つの金属板331〜332の間には隙間が形成されている。すなわち、誘電体基板302の上に空気層303を形成して、金属板331〜332が配置された樹脂層304が設けられている。また、この空気層303は、ミリ波電子部品307を表面実装するための空間としての機能も有する。また、この空間を形成するため、樹脂層304を誘電体基板302上に支え、樹脂層304の下面がミリ波電子部品307と接触しないようにするために、
図18に示すように、金属製スペーサ306が配置されている。
【0059】
この金属製スペーサ306は、2つの金属板331〜332に沿って真下に置かれ、1次アンテナ321が放射した電磁場が横方向に逃げずに平行平板導波路の方へ確実に誘導するための、電磁波ガイドの役割も果たしている。金属製スペーサ306は誘電体基板302の裏面グランド301と半田付け等で導通させておくことが望ましいが、必ずしも必要なわけではない。
【0060】
樹脂層304は、いわゆるアンテナレドームとしての役割を果たす。この樹脂層304は、テフロン等の高周波ロスが小さい材質でできており、ミリ波電波は通しつつ、雨風等の環境変化からは内部の部品を守るためのカバーとなる。このように、アンテナレドームの役割をする樹脂層304を配置する構成を達成するため、
図30等の従来のアンテナ装置と比べて、本実施形態に係るアンテナレドームを単純な薄い板材とすることができるので、低コスト化が可能である。
【0061】
図18、
図19の構造の電磁界シミュレーション結果を
図20、
図21に示す。なお、本実施形態では、空気層303と樹脂層304の厚みを1mmとし、樹脂層304の材質をテフロンとした。また、金属製スペーサ306は裏面グランド301と導通させていない。
図20、
図21のシミュレーション結果は、第1実施形態に対するシミュレーション結果である
図3、
図4と大差なく、本実施形態においては、このような柔軟な層構成でも、所望の性能を確保できることを確認できた。
【0062】
<第3の実施形態>
第1の実施形態および第2の実施形態においては、セクタ化する前の単位アンテナ装置を説明した。本実施形態では、単位アンテナ装置を
図29のように複数接続してセクタアンテナ化する場合の特徴を説明する。ここで、焦点となるのは、複数の単位アンテナ装置をどう設計、配置すれば装置全体が小型化、薄型化するかである。
【0063】
図22、
図23は、8本の1次アンテナ521〜528を束ねて、15度間隔で互いに異なる方向へ電波ビームを放射させる場合を例示したものである。既に説明したように、第1の実施形態および第2の実施形態に係るアンテナ装置は、2次アンテナとして機能する開口面571〜578が電波ビームの方向に対してまっすぐ向く場合に最良性能となる。したがって、最も単純に配置するとすれば、8つの開口面571〜578は、
図22のように略円周上に並ぶことになる。それに対して、1次アンテナ521〜528は、誘電体基板502上に一直線に並んでいるため、両者の間で形状に不整合が生じる。そのため、
図22のように、両者を結びつける金属板を構成する板金部品531〜539は、屈曲したデザインが必要になる。なお、板金部品531〜539は、小型化、低コスト化のため、隣接する1次アンテナ521〜528間で共有されている。
【0064】
図22のデザインでも用途によっては十分であり、また全体として幅Wに関しては最小化されたデザインにもなっている。しかしながら、厚みHに関しては大型化してしまい、車載レーダとして車体の側面に貼り付けるようなニーズには対応が困難となる。そこで、本実施形態においては、
図23のデザインによって薄型化を可能にする。
【0065】
具体的には、複数の単位アンテナ装置が並列して配置された中央付近の4個の1次アンテナ523〜526は互いに接近しており、5枚の板金部品535〜539を1次アンテナ523〜526の隣接するアンテナが共有する構成としている。しかし、その並列して配置された複数の単位アンテナ装置の両端の各2個の1次アンテナ521〜522、527〜528は、中央付近の4個の1次アンテナ523〜526から少し離れてそれぞれ孤立して配置されており、それに伴って、この両端の各2個の1次アンテナ521〜522、527〜528の板金部品531〜534、540〜543は、隣接するアンテナ同士で共有されることなく、1次アンテナ521〜522、527〜528毎に独立した構成となっている。この1次アンテナ間の距離は、例えば、左端の2個の1次アンテナ527〜528で説明すると、1次アンテナ527が開口面577から放射する電波ビームが、隣の1次アンテナ528に付属する板金部品542に当たらない距離を目安に設計される。
【0066】
このように設計すると、
図23から明らかなように、幅Wについてはやや大きくなるものの、板金部品542に屈曲部を設ける必要がないため、板金部品542の長さを短くすることができるので、厚みHに関しては大幅な薄型化が可能になる。
【0067】
このようにして、実際に設計した24GHz帯セクタアンテナの放射パターンの一例を
図20に示す。板金部品531〜543の長さ、即ちホーンアンテナとしてのラッパ形状の長さを長くするほど性能が良くなる傾向があるが、一例として、寸法Hは3cmで設計したところ、幅Wは14cm程度になった。
図24から明らかなように、8方向のアンテナからなる非常に大規模なセクタアンテナであり、しかも、それを狭い面積の中に集積しながら、各アンテナはサイドローブがほとんど無い綺麗な電波ビーム放射が可能であることを確認できた。
【0068】
<第4の実施形態>
図25、
図26を用いて、本発明の第4の実施形態について説明する。
携帯電話の世界では、装置全体として低コスト化・小型化を図ることが可能な設計法として、「筐体アンテナ」が盛んに研究されている。この技術は、製品全体の樹脂製ケースを流用し、その内部にアンテナを作り込んでしまうものである。
【0069】
既に説明したように、第1の実施形態から第3の実施形態に係るアンテナ構造には、1次アンテナ121と2次アンテナは、接近して配置され、半田付けが不要である。また、2次アンテナは、単純なアルミ板金等で実現できる。これら特徴を活かせば、「筐体アンテナ」を容易に実現でき、やはり低コスト化・小型化が可能になる。
【0070】
図25は、第1の実施形態から第3の実施形態に係るアンテナ技術を用いたレーダ装置全体の模式図である。
図25は、正面斜視図であり、
図26は、断面模式図である。樹脂製ケースの曲面部(表面側ケース)741の背後には、
図22、
図23のようなアンテナ構造が隠れており、複数の方向に電波ビーム751〜754を放射することができる。樹脂製ケースは、曲面部を含む表面側ケース741とそれ以外の裏面側ケース742の2部品から構成されている。なお、表面側ケース741は、レドームとしての機能を果たす。
【0071】
図22、
図23のようなアンテナ構造のうち、
図26に示すように、1次アンテナを載せた誘電体基板702については普通の電気製品と同様で、例えば裏面側ケース742の上に単純にネジ708により固定される。本実施形態においては、2次アンテナたる金属板を構成する複数の金属板(731〜734)は、特別な追加の固定具等を必要とせず、予め一体形成されたスロット穴743等によって表面側ケース741上に固定される。組立て途中では、1次アンテナと2次アンテナは全く別部品に分かれており、当然ながら半田付け等の電気的導通は一切されていない。しかし、組立てが進んで表面側ケース741と裏面側ケース742が閉じられると、1次アンテナと2次アンテナは非接触電磁結合し、一体アンテナとして動作し始める。
【0072】
本実施形態においては、
図26に示すように、複数のアンテナ全体を1つのレドームで覆う場合を例示したが、
図27に示すように、2次アンテナで区切られている領域ごとにレドームを設けてもよい、このような構成とすることにより、レンズ効果を利用して、ビームの広がる形を変化させることが可能となる。
【0073】
以上、説明したように、本実施形態によれば、「筐体アンテナ」を容易に実現することが可能であり、装置全体の設計や製造工程を考えた場合、大幅な低コスト化を可能にする。
【0074】
これまで説明したように、本発明の実施形態では、そのアンテナ構造が、単純化して説明すればパッチアンテナ1023の両脇に金属板1431〜1432を置いた
図34の構造である。そのため、
図33に示した特許文献4の構造と似ていると混同し易いとも考えられる。以下では、この両者の違いについて説明する。この両者の違いを端的にいえば、本発明の実施形態における金属板1431〜1432は、平行平板導波路であり、
図33に示す技術における金属板1181〜1186は反射板である。この相違点から以下のことが言える。
【0075】
第1に、2枚の金属板1431〜1432は、本発明の実施形態では、
図34に示すように、平行平板導波路を形成し、必ず2枚ペアとなっている。一方で、
図33に示す関連技術における反射板では特にはそのような制約や発想が無く、特許文献4には、2枚の金属板1431〜1432が全く無関係に動かされていることが明示されている。
【0076】
第2に、金属板1431〜1432の方向が、
図34に示すように、本発明の実施形態に係る導波路では、誘導したい電波ビームとほぼ同じ方向1461〜1462を向くが、
図33に示す関連技術に係る反射板では一般的に入射角(A)と反射角(B)の関係から決まる全く別の方向を向く。
【0077】
第3に、金属板1431〜1432の長さLが、
図34に示すように、本発明の実施形態に係る導波路では電波波長λよりも長いが、
図33に示す関連技術に係る反射板では、特にはそのような制約が無く、特許文献4には、パッチアンテナの寸法が通常λ/2程度に設計され、金属板1431〜1432の長さLが、一貫してこのパッチアンテナよりも小さく描かれている。
【0078】
第4に、
図34に示す本発明の実施形態では、上記のように、電波ビームの方向を曲げる機能を有する。一方で、
図33に示す関連技術では、特許文献4の
図4(d)に示すように、ビーム幅を変える機能を有するものの、ビーム方向を曲げる機能は無い。
図33に示す関連技術において、ビーム方向を変えたい時は、
図33の構造全体をその方向へ回転させて対応していることが明記されている。
【0079】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0080】
101、301、501、1301;GND
102、302、502、702、1102、1302;誘電体基板
103;入力ポート
804;矩形導波管
306;金属製スペーサ
1306;VIAホール
307;電子部品
1007;高周波スイッチ
708;ネジ
111、311;入力ポート
912〜913、1312;導体パターン
1114;立体金属部品
121、321、521〜528、1021〜1024、1121、1221、1421;アンテナ
131〜132、331〜332、531〜543、731〜734、831〜832、1431〜1432;金属板
741;表面側ケース
742;裏面側ケース
743;スロット穴
151、351、951;電界偏波方向
751〜754、851;電波ビーム
161、1061〜1064、1461〜1462;電波ビーム放射方向
171、571〜578、871、1471;開口面
881;側面の開口面
1181〜1186、1381;ホーンアンテナ
1291;車体
1292;レーダ装置