特許第6571495号(P6571495)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6571495磁気共鳴イメージング装置及び画像生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571495
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及び画像生成方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20190826BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   A61B5/055 372
   G01N24/00 530Y
   A61B5/055ZDM
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-218826(P2015-218826)
(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公開番号】特開2017-86337(P2017-86337A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹島 秀則
(72)【発明者】
【氏名】油井 正生
(72)【発明者】
【氏名】重田 高志
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−516276(JP,A)
【文献】 特表2007−536970(JP,A)
【文献】 特表2015−510812(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0300416(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
G01R 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスシーケンスの実行を制御することによって、k空間に配置される磁気共鳴信号を、撮像パラメータが第1の範囲に含まれる場合には、k空間の中心を含む第1領域を第1のサンプリング密度で収集するとともに、前記第1領域とは異なる第2領域を前記第1のサンプリング密度とは異なる第2のサンプリング密度で収集し、前記撮像パラメータが、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲に含まれる場合には、前記第1領域を前記第1のサンプリング密度よりも低いサンプリング密度で収集するとともに、前記第2領域を前記第2のサンプリング密度よりも高いサンプリング密度で収集するシーケンス制御部と、
前記磁気共鳴信号を撮像パラメータ軸上の各点に対するk空間データとしてk空間に配置する配置部と、
前記k空間データに基づいて、画像を生成する画像生成部と、
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記撮像パラメータは、TI(Inversion Time)であり、
前記シーケンス制御部は、90度よりも大きいRF(Radio Frequency)パルスを照射するためのパルス制御を含む前記パルスシーケンスの実行を制御することによって前記磁気共鳴信号を収集し、
前記画像生成部は、前記k空間データに基づいて、T1マッピング画像を生成する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記撮像パラメータは、TE(Echo Time)であり、
前記シーケンス制御部は、マルチエコー収集を行うためのパルス制御を含む前記パルスシーケンスの実行を制御することによって前記磁気共鳴信号を収集し、
前記画像生成部は、前記k空間データに基づいて、T2マッピング画像を生成する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記撮像パラメータは、TSL(Spin Lock Time)であり、
前記シーケンス制御部は、スピンロックパルスを照射するためのパルス制御を含む前記パルスシーケンスの実行を制御することによって前記磁気共鳴信号を収集し、
前記画像生成部は、前記k空間データに基づいて、T1ρマッピング画像を生成する、請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1の範囲は、対応する画素値の変化の度合いが所定値以上となる範囲であり、前記第2の範囲は、対応する画素値の変化の度合いが所定値未満となる範囲である、請求項1〜4の何れか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記画像生成部は、前記第1領域及び第2領域の少なくとも1つの領域内で、k空間データとして収集されていない位置のk空間データを、当該位置に対応する値の撮像パラメータとは異なる値の撮像パラメータにおける前記位置と同一の位置のk空間データを利用して生成する、請求項1〜5の何れか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記画像生成部は、前記第1領域及び第2領域の少なくとも1つの領域内で、k空間データとして収集されていない位置のk空間データを、当該位置から所定の範囲内の位置のk空間データを利用して生成する、請求項1〜5の何れか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記シーケンス制御部は、前記磁気共鳴信号を、前記第1領域を前記第1のサンプリング密度で収集し、前記第2領域を前記第2のサンプリング密度で収集した後に、前記第1領域を前記第1のサンプリング密度よりも低いサンプリング密度で収集し、前記第2領域を前記第2のサンプリング密度よりも高いサンプリング密度で収集する、請求項1〜7の何れか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
パルスシーケンスの実行を制御することによって、k空間に配置される磁気共鳴信号を、撮像パラメータが第1の範囲に含まれる場合には、k空間の中心を含む第1領域を第1のサンプリング密度で収集するとともに、前記第1領域とは異なる第2領域を前記第1のサンプリング密度とは異なる第2のサンプリング密度で収集し、前記撮像パラメータが、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲に含まれる場合には、前記第1領域を前記第1のサンプリング密度よりも低いサンプリング密度で収集するとともに、前記第2領域を前記第2のサンプリング密度よりも高いサンプリング密度で収集するシーケンス制御ステップと、
前記磁気共鳴信号を撮像パラメータ軸上の各点に対するk空間データとしてk空間に配置する配置ステップと、
前記k空間データに基づいて、画像を生成する画像生成ステップと、
を含む、画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及び画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置)は、磁場中に配置された水素などの原子が、様々な周波数の電磁波のうち、原子及び磁場の種類に依存して決まる周波数の電磁波のみを選択的に吸収・放出するという性質を利用して、被検体内部の原子分布を非破壊的に可視化する装置である。
【0003】
MRI装置では、データ収集においてRFパルスおよび磁場をパルスシーケンスと呼ばれる制御の流れに従って制御する。パルスシーケンスの種類に依存するが、パルスシーケンスは、例えば、フリップアングル、TR(Repetition Time)、TE(Echo Time)、TI(Inversion Time)、TSL(Spin Lock Time)、TSR(saturation recovery time)といった撮像条件を有する。撮像条件の一部を段階的に変化させてコントラストが異なる複数の画像を生成した上で、これらの複数の画像のコントラストの違いを利用してT1値やT2値といった対象組織に依存したパラメータを推定し、推定したパラメータを画像化することにより、T1マッピングやT2マッピングといったパラメータマッピング画像を生成する技術がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J. Tsao et al., `k-t BLAST and k-t SENSE: Dynamic MRI with High Frame Rate Exploting Spatiotemporal Correlations,’ MRM 50: 1031-1042 (2003).
【非特許文献2】F. Huang et al., `k-t GRAPPA: A k-space Implementation for Dynamic MRI with High Reduction Factor,’ MRM 54: 1172-1184 (2005).
【非特許文献3】H. Pedersen et al., ‘k-t PCA: Temporally Constrained k-t BLAST Reconstruction Using Principal Component Analysis,’ MRM 62: 706-716 (2009).
【非特許文献4】Lingala S. G. et al, `Accelerated dynamic MRI exploiting sparsity and low-rank structure: k-t SLR,’ IEEE Trans. Med. Imaging. 2011 May;30(5):1042-54.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、パラメータマッピングにおけるパラメータを効率良く推定することができる磁気共鳴イメージング装置及び画像生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御部と、配置部と、画像生成部とを備える。シーケンス制御部は、パルスシーケンスの実行を制御することによって、k空間に配置される磁気共鳴信号を、前記撮像パラメータが第1の範囲に含まれる場合には、k空間の中心を含む第1領域を第1のサンプリング密度で収集するとともに、前記第1領域とは異なる第2領域を前記第1のサンプリング密度とは異なる第2のサンプリング密度で収集し、前記撮像パラメータが、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲に含まれる場合には、前記第1領域を前記第1のサンプリング密度よりも低いサンプリング密度で収集するとともに、前記第2領域を前記第2のサンプリング密度よりも高いサンプリング密度で収集する。配置部は、前記磁気共鳴信号を撮像パラメータ軸上の各点に対するk空間データとしてk空間に配置する。画像生成部は、前記k空間データに基づいて、画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るMRI装置を示すブロック図。
図2図2は、Look−Locker法によるT1回復の曲線の一例を示す図。
図3図3は、SASHA法によるT1回復の曲線の一例を示す図。
図4図4は、マルチエコースピンエコー撮像時のT2減衰の曲線の一例を示す図。
図5図5は、T1マッピングの例を示す図。
図6図6は、T2マッピングの例を示す図。
図7図7は、実施形態に係るパラメータマッピングのための収集を行う処理の流れの一例を示すフローチャート。
図8図8は、実施形態に係るサンプリング密度制御の一例を示す図。
図9図9は、実施形態に係るビューシェアリング法を利用してMR信号を推定する処理の流れの一例を示すフローチャート。
図10図10は、実施形態に係るサンプル値の推定方法の一例を説明するための図。
図11図11は、変形例に係るサンプリング密度制御の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置、及び、画像生成方法を詳細に説明する。
【0009】
(実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置100を示すブロック図である。図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石101と、傾斜磁場コイル102と、傾斜磁場電源103と、寝台104と、寝台制御回路105と、送信コイル106と、送信回路107と、受信コイルアレイ108と、受信回路109と、シーケンス制御回路110と、計算機システム120とを備える。なお、MRI装置100に被検体P(例えば、人体)は含まれない。
【0010】
静磁場磁石101は、中空の円筒形状(円筒の軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。静磁場磁石101は、例えば、永久磁石、超伝導磁石などである。
【0011】
傾斜磁場コイル102は、中空の円筒形状(円筒の軸に直交する断面が楕円状となるものを含む)に形成されたコイルであり、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル102は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、傾斜磁場電源103から個別に電流の供給を受けて、X、Y、Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生する。ここで、傾斜磁場コイル102によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じてMR信号(磁気共鳴信号)の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。
【0012】
傾斜磁場電源103は、傾斜磁場コイル102に電流を供給する。例えば、傾斜磁場電源103は、傾斜磁場コイル102を形成する3つのコイルのそれぞれに、個別に電流を供給する。
【0013】
寝台104は、被検体Pが載置される天板104aを備え、寝台制御回路105による制御のもと、天板104aを、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル102の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台104は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように設置される。
【0014】
寝台制御回路105は、計算機システム120による制御のもと、寝台104を駆動して天板104aを長手方向及び上下方向へ移動するプロセッサである。
【0015】
送信コイル106は、傾斜磁場コイル102の内側に配置され、送信回路107からRF(Radio Frequency)パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。
【0016】
送信回路107は、対象とする原子の種類及び磁場の強度で決まるラーモア周波数に対応するRFパルスを送信コイル106に供給する。
【0017】
受信コイルアレイ108は、傾斜磁場コイル102の内側に配置され、高周波磁場の影響によって被検体Pから発せられる磁気共鳴信号(以下、MR信号と称する)を受信する。受信コイルアレイ108は、MR信号を受信すると、受信したMR信号を受信回路109へ出力する。なお、第1の実施形態において、受信コイルアレイ108は、1以上、典型的には複数の受信コイルを有するコイルアレイである。
【0018】
受信回路109は、受信コイルアレイ108から出力されるMR信号に基づいてMRデータを生成する。例えば、受信回路109は、受信コイルアレイ108から出力されるMR信号をデジタル変換することによってMRデータを生成する。また、受信回路109は、生成したMRデータをシーケンス制御回路110へ送信する。
【0019】
なお、受信回路109は、静磁場磁石101や傾斜磁場コイル102などを備える架台装置側に備えられていてもよい。ここで、第1の実施形態において、受信コイルアレイ108の各コイルエレメント(各受信コイル)から出力されるMR信号は、適宜分配・合成されることで、チャネルなどと呼ばれる単位で受信回路109に出力される。このため、MRデータは、受信回路109以降の後段の処理においてチャネル毎に取り扱われる。コイルエレメントの総数とチャネルの総数との関係は、同一の場合もあれば、コイルエレメントの総数に対してチャネルの総数が少ない場合、あるいは反対に、コイルエレメントの総数に対してチャネルの総数が多い場合もある。以下において、「チャネル毎」のように表記する場合、その処理が、コイルエレメント毎に行われてもよいし、あるいは、コイルエレメントが分配・合成されたチャネル毎に行われてもよいことを示す。なお、分配・合成のタイミングは、上述したタイミングに限られるものではない。MR信号若しくはMRデータは、後述する再構成処理の前までに、チャネル単位に分配・合成されればよい。
【0020】
シーケンス制御回路110は、計算機システム120から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源103、送信回路107及び受信回路109を駆動することによって、被検体Pの撮像を行う。シーケンス制御回路110は、被検体Pの撮像を行うことにより、MRデータを収集する。なお、収集されるMRデータは、MR信号に基づいて生成されるため、シーケンス制御回路110は、MR信号を収集するともいえる。例えば、シーケンス制御回路110は、プロセッサにより実現される。ここで、シーケンス情報は、撮像を行うための手順を定義した情報である。シーケンス情報には、傾斜磁場電源103が傾斜磁場コイル102に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信回路107が送信コイル106に送信するRFパルスの強さやRFパルスを印加するタイミング、受信回路109がMR信号を検出するタイミングなどが定義される。
【0021】
なお、シーケンス制御回路110は、傾斜磁場電源103、送信回路107及び受信回路109を駆動して被検体Pを撮像した結果、受信回路109からMRデータを受信すると、受信したMRデータを計算機システム120へ転送する。
【0022】
計算機システム120は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行う。計算機システム120は、インタフェース回路121、記憶回路122、処理回路123、入力回路124、及びディスプレイ125を有する。
【0023】
インタフェース回路121は、シーケンス情報をシーケンス制御回路110へ送信し、シーケンス制御回路110からMRデータを受信する。また、インタフェース回路121は、MRデータを受信すると、受信したMRデータを記憶回路122に格納する。記憶回路122に格納されたMRデータは、処理回路123の後述する配置機能123aによってk空間に配置される。この結果、記憶回路122は、複数チャネル分のk空間データを記憶する。このようにして、k空間データが配置される。インタフェース回路121は、例えば、ネットワークインタフェースカードにより実現される。
【0024】
記憶回路122は、インタフェース回路121によって受信されたMRデータや、後述する配置機能123aによってk空間に配置されたk空間データ、後述する画像生成機能123bによって生成された画像データなどを記憶する。また、記憶回路122は、各種のプログラムを記憶する。記憶回路122は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。
【0025】
入力回路124は、医師や診療放射線技師等の操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。入力回路124は、例えば、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード等によって実現される。入力回路124は、処理回路123に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号に変換して処理回路123へと出力する。
【0026】
ディスプレイ125は、処理回路123による制御のもと、各種GUI(Graphical User Interface)や、後述する画像生成機能123bによって生成された各種の画像等を表示する。
【0027】
処理回路123は、MRI装置100の全体制御を行う。具体的には、処理回路123は、入力回路124を介して操作者から入力される撮像条件(撮像パラメータ)に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御回路110に送信することによって撮像を制御する。また、処理回路123は、撮像の結果としてシーケンス制御回路110から送られるMRデータに基づいて行われる画像の生成(再構成)を制御したり、ディスプレイ125による表示を制御したりする。処理回路123は、プロセッサにより実現される。処理回路123は、配置機能123aと、画像生成機能123bとを有する。
【0028】
ここで、例えば、処理回路123の構成要素である配置機能123a及び画像生成機能123bの各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路122に記憶されている。処理回路123は、各プログラムを記憶回路122から読み出し、読み出した各プログラムを実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路123は、図1の処理回路123内に示された各機能を有することとなる。なお、図1においては、単一の処理回路123にて、配置機能123a及び画像生成機能123bの各処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路123を構成し、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。配置機能123a及び画像生成機能123bについては後述する。
【0029】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central preprocess unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。なお、記憶回路122にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0030】
ここで、パルスシーケンスは、例えば、上述したように、フリップアングル、TR(Repetition Time)、TE(Echo Time)、TI(Inversion Time)、TSL(Spin Lock Time)、TSR(saturation recovery time)といった撮像パラメータを有する。これらの撮像パラメータのいずれかを変化させることで、MRI装置によって得られる画像のコントラストは変化する。これらのコントラストは撮像対象となる組織(対象組織)に依存したT1値やT2値により変化するため、複数の撮像パラメータによるコントラストの違いを利用することで、操作者は、撮像対象について詳しく知ることができる。そこで、撮像パラメータの一部を段階的に変化させてコントラストが異なる複数の画像を生成した上で、これらの複数の画像のコントラストの違いを利用してT1値やT2値といった対象組織に依存したパラメータを推定し、推定したパラメータを画像化することにより、T1マッピングやT2マッピングといったパラメータマッピング画像を生成する技術がある。
【0031】
例えば、T1マッピング画像は、Look−Locker法、心電同期を用いたMOLLI(modified look-locker inversion recovery)法、又は、SASHA(saturation-recovery single-shot acquisition)法といった手法により得ることができる。また、T2マッピング画像は、マルチスピンエコー法により撮像されたTEの異なる複数の画像を利用して得ることができる。ここで、撮像パラメータを段階的に変化させた複数の画像を並べると、時系列画像に類似した画像が得られる。MRI装置は、各画素が撮像パラメータに依存した曲線に従うと考えてその曲線の係数を推定し、得られた係数からT1値やT2値を推定し、推定したT1値やT2値を画像化することにより、T1マッピングやT2マッピングといったパラメータマッピング画像を生成する。
【0032】
一方、MRI装置を利用して心臓のシネ撮像等の時系列撮像を行う分野においては、撮像空間であるk空間の一部を間引いてデータ収集を行うことで、撮像時間を短縮する手法が知られている。撮像時間の短縮手法を大別すると、(1)常にk空間全域について均一の割合で間引く方法、(2)k空間中心付近をフルサンプリングし、k空間中心付近以外の部分を間引く手法、の2種類が知られている。(1)の手法としてはk−t SENSE(sensitivity encoding)法やk−t PCA(principal component analysis)法、(2)の手法としてはk−t GRAPPA(generalized auto calibrating partially parallel acquisition)法や圧縮センシング法が知られている。
【0033】
上述したように、MRI装置は、パラメータマッピング画像を生成する際に、T1値やT2値などのパラメータを推定する。そして、MRI装置は、パラメータを推定する際に、撮像パラメータの一部を段階的に変化させてコントラストが異なる複数の画像を生成する。このように、MRI装置は、複数の画像を生成するため、パラメータを推定する際に時間がかかり、効率良くパラメータを推定することが困難である。また、この結果、撮像時間が長くなり、MRI装置は、効率良くパラメータマッピング画像を生成することが困難である。
【0034】
そこで、以下に説明するように、本実施形態に係るMRI装置100は、効率良くパラメータを推定することができるように各種の処理を実行する。
【0035】
配置機能123aは、シーケンス制御回路110により収集されたMRデータを、後述するp軸上の各点に対するk空間データとしてk空間に配置する。なお、上述したように、MRデータは、MR信号に基づいて生成されるため、配置機能123aは、MR信号を、後述するp軸上の各点に対するk空間データとしてk空間に配置するともいえる。
【0036】
画像生成機能123bは、配置機能123aにより配置されたk空間データに基づいて、画像を生成する。例えば、画像生成機能123bは、上述した撮像パラメータの一部を段階的に変化させてコントラストが異なる複数の画像を生成する。なお、ここでいう画像は、後述するパラメータマッピングを生成する際に用いられる原画像である。そして、画像生成機能123bは、生成した複数の画像のコントラストの違いを利用してT1値やT2値といった対象組織に依存したパラメータを推定する。そして、画像生成機能123bは、推定したパラメータを画像化することにより、T1マッピングやT2マッピングといったパラメータマッピング画像を生成する。
【0037】
ここで、画像生成機能123bが生成する各種のパラメータマッピング画像について説明する。以下、パラメータマッピング画像の例を4つ挙げて説明するが、画像生成機能123bが生成するパラメータマッピング画像は、以下の例に限られない。
【0038】
(T1マッピング画像)
まず、T1マッピング画像について説明する。被検体PにRFパルスを与えていない状態では、被検体Pの撮像対象の領域(対象領域)における磁化ベクトルの向きは静磁場の方向であるZ方向となる。ここで、磁化ベクトルの強さ(大きさ)をM0とする。被検体Pがラーモア周波数に対応したRFパルスを受けると、被検体Pの対象領域のZ方向(縦方向)の磁化ベクトルの強さはM0よりも弱い値になり、その後、徐々にM0まで回復していく。RFパルスを受けた直後の時刻をt=0で表し、t=0におけるZ方向の磁化ベクトルの強さをM1で表すと、Z方向の磁化ベクトルの強さM(t)は、以下の式(1)で表される。
M(t)=M0+(M1−M0)exp(−t/T1) (1)
【0039】
T1緩和と呼ばれる、式(1)で表される回復の過程は、撮像の際に、所定の撮像パラメータ、例えば、TIを段階的に変化させながら撮像し、各TIで撮像された各画像を生成することで、各画像に対するコントラストの変化として間接的に画像化できる。TIを変化させながら撮像する手法はLook−Locker法として知られている。また、心臓のように動きの激しい部位では、MOLLI法やSASHA法といった方法が用いられる。Look−Locker法やMOLLI法は180度、あるいは90度よりも大きく180度に近いRFパルスを被検体Pに照射することでM1=−M0とする撮像法である。また、SASHA法はM1=0とする撮像法である。T1マッピングとは、先に示したいずれかの撮像パラメータを段階的に変化させながら各画素のT1値を推定し、推定したT1値を画像に反映させる技術である。画像生成機能123bは、このような技術を用いて、k空間データに基づいて、T1マッピング画像を生成する。なお、MOLLI法については、「D. R. Messroghli et al. ``Modified Look-Locker Inversion Recovery (MOLLI) for High-Resolution T1 Mapping of the Heart,’’ Magnetic Resonance in Medicine 52: 141-146 (2004).」等の文献に記載されている。
【0040】
(T2マッピング画像)
次に、T2マッピング画像について説明する。被検体Pがラーモア周波数に対応したRFパルスを受けた直後は、磁化ベクトルのXY平面の成分は乱雑さが最も少ない状態になる。その後、磁化ベクトルのXY平面の成分は徐々に減衰していく。磁場の不均一性に影響されない減衰の時定数をT2値と呼び、磁場の不均一性の影響も含めた減衰の時定数をT2*値と呼ぶ。これらの減衰の時定数は、複数のエコー時間(TE)に対応した複数の画像を撮像し、撮像した複数の画像の違いを利用することで画像に反映させることができる。具体的には、例えば、T2マッピングでは、XY平面での磁化ベクトルの強さM(t)が初期時刻での磁化ベクトルの強さM0に対し、以下の式(2)で示すように減衰することを利用し、複数のTEに対するT2値を推定し、推定したT2値を画像に反映させることで、T2マッピング画像を生成する。
M(t)=M0exp(−TE/T2) (2)
【0041】
また、T2*マッピングでは、T2マッピングと同様に、複数のTEに対するT2*値を推定し、推定したT2*値を画像に反映させることで、T2*マッピング画像を生成する。画像生成機能123bは、上述したT2マッピングやT2*マッピングの技術を用いて、k空間データに基づいて、T2マッピング画像やT2*マッピング画像を生成する。なお、T2値はマルチエコーのスピンエコーシーケンスにより磁場の不均一性の影響を除去しながら繰り返し撮像することで推定できる。また、T2*値はマルチエコーのグラディエントエコーシーケンスを用いることで推定できる。
【0042】
(T1ρマッピング画像)
次に、T1ρマッピング画像について説明する。例えば、MRI装置の磁場強度として1〜7T程度を考えると、T1緩和は数十〜数百MHzのラーモア周波数で起こる分子の動きに対応する。一方、数kHzといった低周波数で起こる分子の動きには、磁化移動や化学交換といった分子構造や組成による動きが含まれるため、このような低周波数での緩和を計測する方法としてT1ρパルスシーケンスがある。T1ρパルスシーケンスでは、Z方向の磁化ベクトルの強さM0に対し専用のプリパルスを加えT1ρに依存した強さで減衰させてから、任意のパルスシーケンスで撮像するパルスシーケンスである。専用のプリパルスは、Z方向の磁化ベクトルをXY方向に倒してから、ラーモア周波数とは別の低周波数に対応したパルスであるスピンロックパルスをTSL時間だけ照射し続けた後、磁化ベクトルをZ方向に戻すというものである。このプリパルスにより、収集信号の強さSは、TSLがない場合の信号の強さをS0とし、またスピンロックパルスの強度を変えないものとすれば、以下の式(3)で表される。
S(TSL)=S0exp(−TSL/T1ρ) (3)
【0043】
T1ρマッピングとは、TSLを段階的に変化させながら各画素のT1ρ値を推定し、推定したT1ρ値を画像に反映させる技術である。画像生成機能123bは、このような技術を用いて、k空間データに基づいて、T1ρマッピング画像を生成する。
【0044】
(ADC画像)
任意のパルスシーケンスの前に拡散強調用プリパルスを加えて拡散に依存した信号減衰を発生させてから、任意のパルスシーケンスで収集を行うことで、分子の拡散(Diffusion)を画像に反映させることができる。パルスシーケンスで用いる撮像パラメータをまとめた値をb値と呼ぶ。プリパルスを適用しない場合の信号の強さをS0、プリパルスを適用した場合の信号の強さをS(b)、分子の拡散係数をADCで表すと、理想的には、以下の式(4)で表される。
S(b)=S0exp(−b・ADC) (4)
【0045】
理想的でない場合でも、S(b)は、b値が大きくなるほど減衰することが多い。Diffusionの目的の1つは、b値を段階的に変化させることで各画素のADC値を推定し、推定したADC値を画像に反映させて、ADC画像を生成することである。なお、理想から外れた部分を考慮に入れ、より複雑なモデルを用いて拡散を分析するDKI(Diffusional Kurtosis Imaging)やQSI(Q-Space Imaging)と呼ばれる技術も存在する。この場合もb値を変化させながら撮像する部分は同じであるが、複雑なモデルを推定するためにb値の種類を増やすことが多い。本実施形態では、Diffusionもパラメータマッピングの1例として考える。画像生成機能123bは、このような技術を用いて、k空間データに基づいて、ADC画像を生成する。
【0046】
(パラメータマッピングとサンプリング)
上述したように、パラメータマッピング技術とは、注目する撮像パラメータを段階的に変化させ、その信号減衰の程度から何らかのパラメータを推定し、推定したパラメータを画像に反映させる技術と考えられる。以下の説明では、撮像パラメータのうち段階的に変化させる撮像パラメータを注目撮像パラメータと呼ぶ。また、注目撮像パラメータの軸をp軸と呼ぶ。以下の説明では特に断らない限り、p軸が1次元の場合の例について説明するが、2次元以上でもあっても良く、この場合には、各次元について、以下で述べる方法をそのまま適用すればよい。
【0047】
パラメータマッピング技術では、T1値、T2値、T2*値、T1ρ値及びADC値などのパラメータを推定する際に、p軸上で複数の点に対する複数の画像を生成する必要がある。例えば、p軸が、TIの軸である場合には、TIの複数の値に対する複数の画像を生成する必要がある。複数の画像を生成する際の撮像時間は1枚の画像を生成する場合と比べ長くなることが多い。したがって、MRI装置100において、効率良くパラメータを推定することが重要な課題である。効率良くパラメータを推定することができれば、撮像時間の短縮につながる。
【0048】
パラメータマッピングの対象とする画像の各画素における、信号強度(Intensity)と注目撮像パラメータの値との関係を示す曲線は、注目撮像パラメータの値を段階的に変化させると、指数曲線もしくは類似の曲線となる。具体的な例を挙げて説明する。図2は、Look−Locker法によるT1回復の曲線の一例を示す図である。図3は、SASHA法によるT1回復の曲線の一例を示す図である。図4は、マルチエコースピンエコー撮像時のT2減衰の曲線の一例を示す図である。
【0049】
図2の例に示す曲線210は、画像201〜204内の領域205内の各画素における、信号強度とTIの値との関係を示す。信号強度は、絶対値で表されている。このため、−1から1まで回復するT1回復の曲線が、図2の例では、後述するヌルポイントで折り返された曲線210として示されている。曲線210は、領域205内の各画素における、TIの値「TI1」に対応する信号強度、TIの値「TI2」に対応する信号強度、TIの値「TI3」に対応する信号強度、及び、TIの値「TI4」に対応する信号強度を示す。
【0050】
また、曲線211は、画像201〜204内の領域206内の各画素における、信号強度とTI値との関係を示す。例えば、曲線211は、領域206内の各画素における、TIの値「TI1」に対応する信号強度、TIの値「TI2」に対応する信号強度、TIの値「TI3」に対応する信号強度、及び、TIの値「TI4」に対応する信号強度を示す。
【0051】
ここで、領域205と領域206は、被検体Pの異なる組織に対応する。また、組織ごとに、磁場強度が一定であれば、T1値は特有である。このため、図2の例に示すように、信号強度とTIの値との関係を示す曲線210、211は、組織毎に特有となる。
【0052】
また、図3の例に示す曲線310は、画像301〜304内の領域305内の各画素における、信号強度とTSRの値との関係を示す。例えば、曲線310は、領域305内の各画素における、TSRの値「TSR1」に対応する信号強度、TSRの値「TSR2」に対応する信号強度、TSRの値「TSR3」に対応する信号強度、及び、TSRの値「TSR4」に対応する信号強度を示す。
【0053】
また、曲線311は、画像301〜304内の領域306内の各画素における、信号強度とTSR値との関係を示す。例えば、曲線311は、領域306内の各画素における、TSRの値「TSR1」に対応する信号強度、TSRの値「TSR2」に対応する信号強度、TSRの値「TSR3」に対応する信号強度、及び、TSRの値「TSR4」に対応する信号強度を示す。
【0054】
ここで、領域305と領域306は、被検体Pの異なる組織に対応する。また、上述したように、磁場強度が一定であれば、組織ごとに、T1値は特有である。このため、図3の例に示すように、信号強度とTSRの値との関係を示す曲線310、311は、組織毎に特有となる。
【0055】
また、図4の例に示す曲線410は、画像401〜404内の領域405内の各画素における、信号強度とTEの値との関係を示す。例えば、曲線410は、領域405内の各画素における、TEの値「TE1」に対応する信号強度、TEの値「TE2」に対応する信号強度、TEの値「TE3」に対応する信号強度、及び、TEの値「TE4」に対応する信号強度を示す。
【0056】
また、曲線411は、画像401〜404内の領域406内の各画素における、信号強度とTE値との関係を示す。例えば、曲線411は、領域406内の各画素における、TEの値「TE1」に対応する信号強度、TEの値「TE2」に対応する信号強度、TEの値「TE3」に対応する信号強度、及び、TEの値「TE4」に対応する信号強度を示す。
【0057】
ここで、領域405と領域406は、被検体Pの異なる組織に対応する。また、組織ごとに、T2値は特有である。このため、図4の例に示すように、信号強度とTEの値との関係を示す曲線410、411は、組織毎に特有となる。
【0058】
推定対象のパラメータについて十分な推定精度が得られるように、収集データの量を確保する必要がある。このとき、少ないデータ量の収集データでも推定対象のパラメータの推定に十分な精度が得られるなら、短時間で効率良くパラメータを推定することができ、ひいては、撮像時間を短縮することができる。なお、パラメータマッピングでは、パラメータマッピングの収集を行うパルスシーケンスによって、p軸上における画像を撮る位置の間隔やフェーズエンコード数に制約が存在することがある。たとえば、Look−Locker法やマルチエコー収集では、p軸上において固定のパラメータ間隔で、同一のフェーズエンコード数のデータ収集を繰り返す。これは、p軸上の収集位置およびフェーズエンコード数を自由に制御できないことを意味する。
【0059】
そこで、本実施形態では、p軸上で収集可能な位置、撮像マトリックスサイズ、及び、収集可能なフェーズエンコード数が与えられたときに、画素ごとに、これらの軸に対応するパラメータ(例えば、T1、T2、T2*、T1ρ又はADC)を高い精度で求めるために、フェーズエンコードの並び方を制御する。
【0060】
具体的には、実施形態に係るシーケンス制御回路110は、p軸上で画素値の変化が激しい領域では、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍に偏らせる。また、シーケンス制御回路110は、p軸上で画素値の変化が緩やかな領域では、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍にあまり偏らせることなく、k空間の周辺部を相対的に多く収集する。ここで、画素値の変化が激しい領域とは、例えば、画素値の変化の度合いが所定値以上となる領域を指し、先の図2〜4における各種の曲線において、接線の傾きの絶対値が所定値以上となる領域を指す。また、画素値の変化が緩やかな領域とは、例えば、画素値の変化の度合いが所定値未満となる領域を指し、各種の曲線において、接線の傾きの絶対値が所定値未満となる領域を指す。
【0061】
ここで、p軸と曲線とが接する又は交差する点(ヌルポイント(null point))は、T1値などのパラメータを推定する際に用いられる重要な情報を含んでいる。そこで、シーケンス制御回路110は、ヌルポイントを含む領域では、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍に偏らせてもよい。また、シーケンス制御回路110は、ヌルポイントを含まない領域では、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍にあまり偏らせることなく、k空間の周辺部を相対的に多く収集してもよい。
【0062】
すなわち、シーケンス制御回路110は、p軸上で画素値の変化が激しい領域及びヌルポイントを含む領域の少なくとも1つの領域では、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍に偏らせてもよい。また、シーケンス制御回路110は、p軸上で画素値の変化が緩やかな領域及びヌルポイントを含まない領域の少なくとも1つの領域では、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍にあまり偏らせることなく、k空間の周辺部を相対的に多く収集してもよい。
【0063】
図5及び図6を参照して、フェーズエンコードの並び方を制御する方法の一例を説明する。
【0064】
図5は、T1マッピングの例を示す図である。図5の例では、範囲501は、TIの値が、「TI5」以上「TI6」未満の範囲である。範囲501は、TIの軸上で画素値の変化が激しい領域及び2つのヌルポイントP1、P2を含む領域に対応する範囲である。
【0065】
また、範囲502は、TIの値が、「TI6」以上「TI7」未満の範囲である。範囲502は、TIの軸上で画素値の変化が緩やかな領域及び2つのヌルポイントP1、P2を含まない領域に対応する範囲である。
【0066】
シーケンス制御回路110は、範囲501では、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍に偏らせる。また、シーケンス制御回路110は、範囲502では、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍にあまり偏らせることなく、k空間の周辺部を相対的に多く収集する。
【0067】
図6は、T2マッピングの例を示す図である。図6の例では、範囲601は、TSRの値が、「TSR5」以上「TSR6」未満の範囲である。範囲601は、TSRの軸上で画素値の変化が激しい領域及びヌルポイントP3を含む領域に対応する範囲である。
【0068】
また、範囲602は、TSRの値が、「TSR6」以上「TSR7」未満の範囲である。範囲602は、TSRの軸上で画素値の変化が緩やかな領域及びヌルポイントP3を含まない領域に対応する範囲である。
【0069】
シーケンス制御回路110は、範囲601では、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍に偏らせる。また、シーケンス制御回路110は、範囲602では、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍にあまり偏らせることなく、k空間の周辺部を相対的に多く収集する。
【0070】
ここで、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍に偏らせる領域と、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍にあまり偏らせることなく、k空間の周辺部を相対的に多く収集する領域とを決定する方法の一例について説明する。例えば、MRI装置の静磁場強度及び被検体Pの部位ごとに、収集画像の画素値の変化が激しい領域及びヌルポイントを含む領域を事前学習などで予めデータベース化しておく。そして、シーケンス制御回路110は、被検体Pの撮像対象の部位に対応する、画素値の変化が激しい領域及びヌルポイントを含む領域をデータベースから取得する。そして、シーケンス制御回路110は、取得した領域を、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍に偏らせる領域として扱う。また、シーケンス制御回路110は、取得した領域以外の領域を、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍にあまり偏らせることなく、k空間の周辺部を相対的に多く収集する領域として扱う。
【0071】
なお、p軸上で収集する点列の中央より前の領域を画素値の変化が激しい領域、p軸上で収集する点列の中央より後の領域を画素値の変化が緩やかな領域というように、別途定めた基準で画素値の変化が激しい領域と画素値の変化が緩やかな領域を与えても良い。
【0072】
また、MRI装置ごとの静磁場強度及び被検体の組織と、T1値との関係は既知である。このため、撮像部位を構成する複数の組織のそれぞれと、MRI装置100の静磁場強度とに対応するT1値を算出しておく。そして、組織ごとに算出したT1値のうち、最大のT1値を上述の式(1)に適用して、式(1)からヌルポイントを特定し、特定したヌルポイントが含まれる領域を、上述のデータベースに登録してもよい。また、最大のT1値に所定値(例えば、1.4や0.6等)を乗じた値を、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍に偏らせる領域と、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍にあまり偏らせることなくk空間の周辺部を相対的に多く収集する領域とを区切るために用いてもよい。
【0073】
また、操作者によって、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍に偏らせる領域と、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍にあまり偏らせることなくk空間の周辺部を相対的に多く収集する領域とを変更可能にさせてもよい。
【0074】
(処理の流れ)
図7を参照して、上述したパラメータマッピングのための収集を行う処理の流れの一例について説明する。図7は、実施形態に係るパラメータマッピングのための収集を行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0075】
シーケンス制御回路110は、注目撮像パラメータに応じて上述した各領域のサンプリング密度を制御し、MR信号を収集する(ステップS701)。シーケンス制御回路110により制御されるサンプリング密度は、シーケンス制御部110に送られるパルスシーケンスに基づいたものである。MR信号は、受信コイルアレイ108により収集される。
【0076】
ここで、図8を参照して、ステップS701で実行されるサンプリング密度の制御(サンプリング密度制御)の一例について説明する。
【0077】
(サンプリング密度制御)
図8は、実施形態に係るサンプリング密度制御の一例を示す図である。図8は、Look−Locker法をベースとしたT1マッピングにおける、TIに対するサンプリング密度の制御方法の一例を示す。なお、図8の例では、アンダーサンプリングされたk空間データのフルサンプリングに対するサンプル数の割合「Reduction Factor」を「R」で表している。以下の説明においても、「Reduction Factor」を「R」で表すこととする。また、図8の例では、フェーズエンコード(Phase Encode)の軸に加え、リードアウト(RO(readout))970の軸が示されている。リードアウト970の軸は、フェーズエンコードの軸に直交する。
【0078】
Look−Locker法の撮像では、TIが所定値よりも小さい範囲901では生成される画像の信号強度の変化が大きく、TIが先の所定値よりも大きい範囲902では生成される画像の信号強度の変化が小さいものとみなすことができる。医療用途では、対象物の組織がとり得るT1値の範囲は経験的に分かっているため、とり得るT1値の範囲を利用して、先の所定値を調整することが可能である。医療用途でない場合には、対象物の組成からとり得るT1値の範囲を予め調べておくことで、先の所定値の調整が可能である。
【0079】
図8の例では、シーケンス制御回路110は、範囲901では、k空間の中心を含む領域903のRを「1」とし、k空間の周辺の領域904、905のRを「4」より大きくなるように調整している。また、シーケンス制御回路110は、範囲902では、k空間の中心を含む領域903のRを「2」とし、k空間の周辺の領域904、905のRを「4」となるように調整している。ここで、シーケンス制御回路110は、例えば、リードアウト970方向のどの位置においても、上述したように、Rを調整している。したがって、図8の例に示すk空間データ全体では、Rが「3」程度になる。このため、本実施形態に係るMRI装置100によれば、k空間データ全体におけるRの値が比較的大きい「3」程度であるため、MR信号の収集に時間がかからない。そのため、MR信号の収集の開始からT1値やT2値などのパラメータを推定するまでの時間がかからない。そのため、MRI装置100によれば、効率良くパラメータを推定することができる。また、MRI装置100によれば、同様の理由で、効率良くパラメータマッピング画像を生成することができる。
【0080】
このように、シーケンス制御回路110は、範囲901では、領域903のRを下げ、領域904、905のRを上げるように調整している。また、シーケンス制御回路110は、範囲902では、領域903のRを範囲901よりも上げ、領域904、905のRを範囲901よりも下げるようにしている。
【0081】
すなわち、シーケンス制御回路110は、パルスシーケンスを実行することにより、k空間に配置されるMR信号を、注目撮像パラメータであるTIが範囲901に含まれる場合には、k空間の中心を含む領域903をR=1に対応するサンプリング密度で収集する。また、シーケンス制御回路110は、領域903とは異なる領域904、905を、R=1に対応するサンプリング密度とは異なるR>4に対応するサンプリング密度で上述のMR信号を収集する。なお、範囲901は、対応する画素値の変化の度合いが所定値以上となる範囲であり、第1の範囲の一例である。領域903は、第1領域の一例である。R=1に対応するサンプリング密度は、第1のサンプリング密度の一例である。R>4に対応するサンプリング密度は、第2のサンプリング密度の一例である。
【0082】
また、シーケンス制御回路110は、先のMR信号を、TIが範囲901とは異なる範囲902に含まれる場合には、領域903では、R=1に対応するサンプリング密度よりも低いサンプリング密度で収集するとともに、領域904、905では、R>4に対応するサンプリング密度よりも高いサンプリング密度で収集する。範囲902は、対応する画素値の変化の度合いが所定値未満となる範囲であり、第2の範囲の一例である。
【0083】
なお、シーケンス制御回路110は、範囲901では、領域903でデータ収集を行うフェーズエンコード数を「16」とし、領域904、905でのフェーズエンコード数を「7」としている。また、シーケンス制御回路110は、範囲902では、領域903でのフェーズエンコード数を「12」とし、領域904、905でのフェーズエンコード数を「9」としている。範囲901におけるフェーズエンコード数「30」と、範囲902におけるフェーズエンコード数「30」とは一致する。すなわち、シーケンス制御回路110は、範囲901におけるフェーズエンコード数と、範囲902におけるフェーズエンコード数とを一致させるようにしている。なお、異なる範囲で、フェーズエンコード数は異なっていてもよい。
【0084】
また、範囲902において収集されたMR信号(MRデータ)に基づいて、位相補正を行うことができるため、この場合には、シーケンス制御回路110は、ヌルポイントを含む領域を、収集対象とするフェーズエンコードをk空間の中心近傍に偏らせる領域として扱わなくともよい。
【0085】
図7の説明に戻り、配置機能123aは、受信コイルアレイ108によって収集されたMR信号に基づくMRデータをk空間データに変換し、注目撮像パラメータに対応したk空間データとして記憶回路122に配置する(ステップS702)。
【0086】
そして、画像生成機能123bは、注目撮像パラメータの各値に対応したk空間データに基づいて、先に説明した方法によりパラメータマッピング画像を生成する(ステップS703)。パラメータマッピング画像の例としては、T1マッピング画像、T2マッピング画像、T2*マッピング画像、T1ρマッピング画像、ADC画像のいずれか、又は、これらの組み合わせがあげられる。
【0087】
(画像生成方法)
本実施形態では、画像生成機能123bによる画像生成方法は、特に限定されない。以下、画像生成方法の一例として、p軸方向のビューシェアリング法、および、k−p法の2種類の手法について説明する。
【0088】
(p軸方向のビューシェアリング法)
ビューシェアリング法とは、時系列データを撮像する際に、ある時刻でサンプリングしなかった点のサンプル値を、その点をサンプリングした別の時刻のサンプル値を利用して推定する手法である。本実施形態では、p軸を時間軸のように扱うことでこのビューシェアリング法を利用する。
【0089】
p軸上の位置に応じて収集密度を制御すると、p軸上のある位置においてMR信号が収集されたk空間上の点において、p軸上の別の位置ではMR信号が収集されない、ということが起こり得る。そこで、画像生成機能123bは、MR信号が収集されなかった点に対しては、p軸をビューシェアリング法における時間軸のように扱い、ビューシェアリング法を利用して、MR信号を推定する。
【0090】
図9は、実施形態に係るビューシェアリング法を利用してMR信号を推定する処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図9に示す処理を実行する前に、画像生成機能123bは、p軸上の全p位置に対応するk空間データを保持するだけのメモリを確保しておき、また、サンプリングされたサンプル値をメモリ上にコピーしておくものとする。
【0091】
図9の例に示すように、画像生成機能123bは、p軸上で注目p位置を設定する(ステップS801)。
【0092】
そして、画像生成機能123bは、注目p位置に対応するk空間上で注目サンプル位置を設定する(ステップS802)。なお、ステップS802において、画像生成機能123bは、パラレルイメージング、圧縮センシング、あるいはパラレルイメージングと圧縮センシングの組み合わせによって画像の生成が可能な、先のRが所定値、例えば、「3」以下の領域については、注目サンプル位置を設定しないようにしてもよい。この場合には、画像生成機能123bは、パラレルイメージング、圧縮センシング、あるいはパラレルイメージングと圧縮センシングの組み合わせによって画像の生成が困難な、Rが所定値、例えば、「3」より大きい領域について、注目サンプル位置を設定する。
【0093】
そして、画像生成機能123bは、注目サンプルが欠落しているか否かを判定する(ステップS803)。欠落していない場合(ステップS803:No)には、画像生成機能123bは、ステップS805へ進む。一方、注目サンプルが欠落している場合(ステップS803:Yes)には、画像生成機能123bは、p位置が注目p位置とは異なり、かつ、注目p位置における注目サンプル位置と同一のサンプル位置にあるサンプル値を利用して、欠落している注目サンプルのサンプル値を推定する(ステップS804)。例えば、画像生成機能123bは、最もp位置が近い位置のサンプル値をコピーする。なお、画像生成機能123bは、p軸上における位置の差の大きさを重みとして複数のサンプル値の重みつき平均を注目サンプルのサンプル値としてもよい。
【0094】
図10は、実施形態に係るサンプル値の推定方法の一例を説明するための図である。図10の例では、フェーズエンコードの軸に加え、リードアウト971の軸が示されている。リードアウト971の軸は、フェーズエンコードの軸に直交する。図10の例では、シーケンス制御回路110により、TIが所定値よりも小さい範囲921では、k空間の中心を含む領域913のRが「1.5」となり、k空間の周辺の領域914、915のRが「6」となるように調整されている。また、シーケンス制御回路110により、TIが先の所定値よりも大きい範囲922では、領域913のRが「3」となり、領域914、915のRが「9」となるように調整されている。ここで、シーケンス制御回路110は、例えば、リードアウト971方向のどの位置においても、上述したように、Rを調整している。
【0095】
図10の例に示す場合において、例えば、画像生成機能123bは、注目サンプル位置942の注目サンプルが欠落しているので、p位置が注目p位置とは異なり、かつ、注目p位置における注目サンプル位置942と同一のサンプル位置943にあるサンプル値を、注目サンプル位置942のサンプル値としてコピーする。
【0096】
なお、ステップS804において、画像生成機能123bは、図10の例に示すように、p位置が注目p位置と同一であり、かつ、注目p位置における注目サンプル位置941に最も近いサンプル位置940のサンプル値を、注目サンプル位置941のサンプル値としてコピーしてもよい。
【0097】
図9の説明に戻り、画像生成機能123bは、注目p位置におけるすべてのサンプル位置を処理したか否かを判定する(ステップS805)。全てのサンプル位置を処理した場合(ステップS805:Yes)には、画像生成機能123bは、ステップS806へ進む。一方、全てのサンプル位置を処理していない場合(ステップS805:No)には、画像生成機能123bは、S802に戻って次の注目サンプル位置を設定する。
【0098】
そして、画像生成機能123bは、全てのp位置を処理しているか否かを判定する(ステップS806)。全てのp位置を処理している場合(ステップS806:Yes)には、処理を終了する。一方、全てのp位置を処理していない場合(ステップS806:No)には、画像生成機能123bは、S801に戻って次の注目p位置を設定する。
【0099】
なお、S802において設定する注目サンプル位置は必ずしも再構成画像の解像度と等しい(フルサンプリングに対応した)サンプル位置である必要はない。この場合には、ビューシェアリング法の適用後に得られるk空間データはアンダーサンプリング状態のデータになる。画像生成機能123bは、ビューシェアリング法によってフルサンプリングに対応したk空間データを生成した場合には、フーリエ変換による再構成により再構成画像を生成できる。
【0100】
一方、ビューシェアリング法の適用後に得られたk空間データがアンダーサンプリング状態である場合には、画像生成機能123bは、パラレルイメージング、圧縮センシング、あるいはパラレルイメージングと圧縮センシングの組み合わせによって再構成することにより、再構成画像を生成できる。すなわち、画像生成機能123bは、ビューシェアリング法の適用後に得られたk空間データ全体のRが、パラレルイメージング、圧縮センシング、あるいはパラレルイメージングと圧縮センシングの組み合わせによって再構成画像を生成可能な値(例えば、「3」)以下となるように、k空間データに対してビューシェアリング法を適用する。例えば、先の図10の例では、画像生成機能123bは、ビューシェアリング法の適用後に得られたk空間データ全体のRが、「3」となるように、k空間データに対してビューシェアリング法を適用する。なお、画像生成機能123bが、k空間データ全体のRが所定値となる条件を満たすように、k空間データに対してビューシェアリングを適用する例について説明したが、画像生成機能123bは、この条件を考慮せずに、k空間データに対してビューシェアリングを適用してもよい。
【0101】
なお、画像生成機能123bは、p軸上である値に対応するk空間データと、p軸上で別の値に対応するk空間データとの間で相互に欠落サンプルを補っても良い。
【0102】
(k−p法)
アンダーサンプリング状態の時系列データを直接再構成する方法はk−t法と総称され、様々なk−t法が知られている。本実施形態に係る画像生成機能123bは、p軸を時間軸のように扱うことで、このk−t法を利用して再構成画像を生成することができる。p軸を時間軸のように扱うことから、便宜上、この方法をk−p法と呼ぶことにする。
【0103】
k−p法に利用できるk−t法は大別して2グループに分けられる。第1グループは、非特許文献1に記載されたk−t BLAST、非特許文献2に記載されたk−t GRAPPA、及び、非特許文献3に記載されたk−t PCAのように、アンダーサンプリング状態に規則性を仮定した方法であり、便宜上、これらのk−t法を規則パターンk−t法と呼ぶことにする。第2グループは、非特許文献4に記載されたk−t SLRなどのアンダーサンプリング状態に規則性を仮定しない方法であり、便宜上、このk−t法を任意パターンk−t法と呼ぶことにする。
【0104】
画像生成機能123bは、k−p法として規則パターンk−t法を用いる場合には、先に説明したp軸方向のビューシェアリング法を適用し、k空間データが規則性が有するように、再構成に必要なサンプルデータを推定してから規則パターンk−t法を適用して、画像を生成すれば良い。また、画像生成機能123bは、k−p法として任意パターンk−t法を用いる場合には、配置機能123aにより配置されたk空間データに対してそのまま任意パターンk−t法を適用して、画像を生成すれば良い。
【0105】
以上、実施形態に係るMRI装置100について説明した。上述したように、MRI装置100によれば、効率良くパラメータを推定することができる。
【0106】
(実施形態に係る変形例)
なお、上述した実施形態では、MRI装置100が、注目撮像パラメータの値を2つの範囲に分けて、各範囲に対応するサンプリング密度制御を行う場合について説明した。しかしながら、MRI装置100は、注目撮像パラメータの値を3つ以上の範囲に分けて、各範囲に対応するサンプリング密度制御を行ってもよい。そこで、このような変形例を実施形態に係る変形例として説明する。以下、図11を参照して、MRI装置100が、注目撮像パラメータの値を3つの範囲に分けて、各範囲に対応するサンプリング密度制御を行う例について説明する。
【0107】
図11は、変形例に係るサンプリング密度制御の一例を示す図である。図11は、Look−Locker法をベースとしたT1マッピングにおける、TIに対するサンプリング密度の制御方法の一例を示す。なお、図11の例では、フェーズエンコードの軸に加え、リードアウト972の軸が示されている。リードアウト972の軸は、フェーズエンコードの軸に直交する。
【0108】
図11の例に示す範囲951は、画像の信号強度の変化が所定値よりも大きい範囲である。また、範囲952は、ヌルポイントP1、P2を含む範囲である。また、変形例に係る範囲902は、上述した実施形態に係る範囲902と同様の範囲である。
【0109】
図11の例では、シーケンス制御回路110は、範囲951では、k空間の中心を含む領域953のRを「1.5」とし、k空間の周辺の領域954、955のRを「4」より大きい値となるように調整している。また、シーケンス制御回路110は、範囲952では、k空間の中心を含む領域953のRを「1」とし、k空間の周辺の領域954、955のRを「4」より大きい値となるように調整している。また、シーケンス制御回路110は、範囲902では、k空間の中心を含む領域953のRを「2」とし、k空間の周辺の領域954、955のRを「4」となるように調整している。ここで、シーケンス制御回路110は、例えば、リードアウト972方向のどの位置においても、上述したように、Rを調整している。したがって、図11の例に示すk空間データ全体では、Rが「3」程度になる。このため、変形例に係るMRI装置100によれば、k空間データ全体におけるRの値が比較的大きい「3」程度であるため、MR信号の収集に時間がかからない。そのため、MR信号の収集の開始からT1値やT2値などのパラメータを推定するまでの時間がかからない。したがって、変形例に係るMRI装置100によれば、効率良くパラメータを推定することができる。また、変形例に係るMRI装置100によれば、同様の理由で、効率良くパラメータマッピング画像を生成することができる。
【0110】
なお、実施形態の説明では2次元の収集について説明してきたが、3次元の収集に対しても適用可能である。また、3次元のk−p法で用いる場合、その任意パターンとしては、例えば、スタックオブスターズパターン、ポアソンディスクパターンを用いることができる。
【0111】
(画像生成プログラム)
上述した実施形態の中で示した処理手順に示された指示は、ソフトウェアであるプログラム(画像生成プログラムとも称される)に基づいて実行されることが可能である。汎用の計算機システムが、この画像生成プログラムを予め記憶しておき、この画像生成プログラムを読み込むことにより、上述した実施形態のMRI装置による効果と同様な効果を得ることも可能である。上述した実施形態で記述された指示は、コンピュータに実行させることのできる画像生成プログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又はこれに類する記録媒体に記録される。コンピュータ又は組み込みシステムが読み取り可能な記憶媒体であれば、その記憶形式は何れの形態であってもよい。コンピュータは、この記録媒体から画像生成プログラムを読み込み、この画像生成プログラムに基づいて画像生成プログラムに記述されている指示をCPUで実行させれば、上述した実施形態のMRI装置と同様な動作を実現することができる。もちろん、コンピュータが画像生成プログラムを取得する場合又は読み込む場合はネットワークを通じて取得又は読み込んでもよい。
【0112】
また、記憶媒体からコンピュータや組み込みシステムにインストールされた画像生成プログラムの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)や、データベース管理ソフト、ネットワーク等のMW(ミドルウェア)等が、上述した実施形態を実現するための各処理の一部を実行してもよい。
【0113】
さらに、記憶媒体は、コンピュータあるいは組み込みシステムと独立した媒体に限らず、LAN(Local Area Network)やインターネット等により伝達された画像生成プログラムをダウンロードして記憶又は一時記憶した記憶媒体も含まれる。
【0114】
また、記憶媒体は1つに限られず、複数の媒体から、上述した実施形態における処理が実行される場合も、実施形態における記憶媒体に含まれ、媒体の構成は何れの構成であってもよい。
【0115】
なお、コンピュータ又は組み込みシステムは、記憶媒体に記憶されたプログラムに基づき、上述した実施形態における各処理を実行するためのものであって、パソコン、マイコン等の1つからなる装置、複数の装置がネットワーク接続されたシステム等の何れの構成であってもよい。
【0116】
また、コンピュータとは、パソコンに限らず、情報処理機器に含まれる演算処理装置、マイコン等も含み、プログラムによって実施形態における機能を実現することが可能な機器、装置を総称している。
【0117】
以上述べた少なくとも一つの実施形態又は変形例に係るMRI装置、及び、画像生成方法によれば、効率良くパラメータを推定することができる。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、被検体として人体を例として説明したが、被検体は人体や生体に限定されない。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0119】
100 MRI装置
110 シーケンス制御回路
123a 配置機能
123b 画像生成機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11