特許第6571499号(P6571499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571499
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】ゴム摩擦摩耗試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/56 20060101AFI20190826BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   G01N3/56 G
   G01M17/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-224738(P2015-224738)
(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公開番号】特開2017-90407(P2017-90407A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕子
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−247301(JP,A)
【文献】 特開2005−233797(JP,A)
【文献】 特開2006−300725(JP,A)
【文献】 特開2010−078416(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0719912(KR,B1)
【文献】 韓国公開特許第10−2005−0043455(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00−3/62;19/02
G01M 17/02
G01L 5/00;5/20
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転台を回転させるとともに、その回転台の台上に押し当てられた円盤状のゴム試験部材を転動させて摩擦摩耗特性を試験するゴム摩擦摩耗試験方法であって、
前記ゴム試験部材に付与したい荷重、前後力、及び横力を含む試験条件を設定する工程と、
前記設定された荷重及び前後力の条件下で、異ならせた複数のスリップ角にて前記ゴム試験部材を転動させて横力を計測し、複数のスリップ角と対応する横力との関係式を求める工程と、
前記関係式からスリップ角が0°のときの横力であるゼロ時横力を算出し、前記設定された横力にゼロ時横力を加算して補正横力を求める工程と、
前記補正横力を発生させるスリップ角を前記関係式から導出する工程と、
前記導出されたスリップ角を前記ゴム試験部材に付与し、前記設定された荷重及び前後力の条件下で摩擦摩耗特性を試験する工程と、を備えることを特徴とするゴム摩擦摩耗試験方法。
【請求項2】
回転台を回転させるとともに、その回転台の台上に押し当てられた円盤状のゴム試験部材を転動させて摩擦摩耗特性を試験するゴム摩擦摩耗試験方法であって、
前記ゴム試験部材に付与したい荷重、前後力、及び横力を含む試験条件を設定する工程と、
前記設定された荷重及び前後力の条件下で、異ならせた複数のスリップ角にて前記ゴム試験部材を転動させて横力を計測し、複数のスリップ角と対応する横力との関係式を求める工程と、
前記関係式からスリップ角が0°のときの横力であるゼロ時横力を算出し、前記設定された横力にゼロ時横力を加算して補正横力を求める工程と、
前記補正横力を発生させるように前記ゴム試験部材のスリップ角を調整し、前記設定された荷重及び前後力の条件下で摩擦摩耗特性を試験する工程と、を備えることを特徴とするゴム摩擦摩耗試験方法。
【請求項3】
前記関係式は、所定数以上のスリップ角を前記ゴム試験部材に付与して横力を計測し、スリップ角と計測された横力の関係をプロットし、プロットされた各点を線形近似して得られた近似直線を表す式であることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム摩擦摩耗試験方法。
【請求項4】
前記ゴム試験部材は、タイヤのトレッドゴムと同じ配合のゴムで成形されており、前記タイヤについてすべり量とせん断力から求まる摩擦エネルギー及び接地圧を予め計測する工程をさらに備え、
前記試験条件を設定する工程は、前記予め計測された摩擦エネルギー及び接地圧と同様となるような荷重、前後力、及び横力を設定することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のゴム摩擦摩耗試験方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムの摩擦摩耗特性を試験するために使用されるゴム摩擦摩耗試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤなどのゴム製品に関して、ゴム材料の摩擦摩耗特性を短時間で評価するために、一般にラボ試験が実施されている。そのための試験装置として、円盤状の砥石の外周面に、その砥石の回転軸と平行な回転軸を有する円盤状のゴム試験部材を押し当て、双方を回転させることによりゴム試験部材を摩耗させる、ランボーン試験機が周知である。このような試験装置は、例えば下記特許文献1に開示されている。
【0003】
ランボーン試験機では、ゴム試験部材の周速に対する、ゴム試験部材と砥石との周速差の百分率、即ちスリップ率を適宜に付与することが可能である。それ故、スリップ率を所定の値に保持した条件下で摩耗試験を行うことができ、例えば、基準になるゴム材料と新しく開発したゴム材料とのそれぞれに対応するゴム試験部材を所定時間で摩耗させ、その摩耗量の比較によって耐摩耗性能を評価できる。
【0004】
また、ラボ試験においては、評価精度を高めるうえで、模擬路面の性状を実際の路面に近付けることが有効であり、模擬路面に硬質な骨材を接着剤で固着させて、アスファルト路面などを形成することが行われている。但し、上記のように円盤の外周面を模擬路面とするランボーン試験機では、骨材を取り付けるのに煩雑な作業が強いられることになる。
【0005】
これに対し、図6,7のような回転台91の台上で円盤状のゴム試験部材92を転動させる場合には、ランボーン試験機と同様にスリップ率を付与して試験できるうえ、模擬路面となる回転台91の台上に骨材を取り付ける作業が簡単になって都合が良い。
【0006】
しかしながら、図6,7の如き試験では、回転台91の周速が一定であっても、円周Aを通る接地面の内側と円周Bを通る接地面の外側とで周速差が生じることになる。図7に示した上向きの矢印は周速の大きさを表しており、接地面の外側では内側よりも周速が大きい。このため、ゴム試験部材92においては、接地面の内側が外側に引きずられて時計回りのモーメントが発生し、それが余計な横力LFを生じて偏摩耗の原因となり、評価精度を低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−174821号公報
【特許文献2】特開2012−247301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、回転台の台上でゴム試験部材を転動させる際に、接地面内の周速差に伴う横力の影響を考慮して評価精度を高めることができるゴム摩擦摩耗試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明のゴム摩擦摩耗試験方法は、回転台を回転させるとともに、その回転台の台上に押し当てられた円盤状のゴム試験部材を転動させて摩擦摩耗特性を試験するゴム摩擦摩耗試験方法であって、
前記ゴム試験部材に付与したい荷重、前後力、及び横力を含む試験条件を設定する工程と、
前記設定された荷重及び前後力の条件下で、異ならせた複数のスリップ角にて前記ゴム試験部材を転動させて横力を計測し、複数のスリップ角と対応する横力との関係式を求める工程と、
前記関係式からスリップ角が0°のときの横力であるゼロ時横力を算出し、前記設定された横力にゼロ時横力を加算して補正横力を求める工程と、
前記補正横力を発生させるスリップ角を前記関係式から導出する工程と、
前記導出されたスリップ角を前記ゴム試験部材に付与し、前記設定された荷重及び前後力の条件下で摩擦摩耗特性を試験する工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のような回転台を回転させるとともに、その回転台の台上に押し当てられた円盤状のゴム試験部材を転動させて摩擦摩耗特性を試験する、いわゆるターンテーブル式の摩擦摩耗試験において、スリップ角が0°の場合であっても接地面内の周速差によってゴム試験部材に横力(本発明ではゼロ時横力と称する)が発生する。本発明のゴム摩擦摩耗試験方法によれば、ゼロ時横力を予め算出し、ゴム試験部材に付与したい横力にゼロ時横力を加算して補正した横力(本発明では補正横力と称する)を求め、この補正横力を発生させるスリップ角にて摩擦摩耗試験を行なうため、接地面内の周速差に伴う横力の影響を考慮して評価精度を高めることができる。
【0011】
また、本発明のゴム摩擦摩耗試験方法は、回転台を回転させるとともに、その回転台の台上に押し当てられた円盤状のゴム試験部材を転動させて摩擦摩耗特性を試験するゴム摩擦摩耗試験方法であって、
前記ゴム試験部材に付与したい荷重、前後力、及び横力を含む試験条件を設定する工程と、
前記設定された荷重及び前後力の条件下で、異ならせた複数のスリップ角にて前記ゴム試験部材を転動させて横力を計測し、複数のスリップ角と対応する横力との関係式を求める工程と、
前記関係式からスリップ角が0°のときの横力であるゼロ時横力を算出し、前記設定された横力にゼロ時横力を加算して補正横力を求める工程と、
前記補正横力を発生させるように前記ゴム試験部材のスリップ角を調整し、前記設定された荷重及び前後力の条件下で摩擦摩耗特性を試験する工程と、を備えるものでもよい。
【0012】
本発明のゴム摩擦摩耗試験方法によれば、ゼロ時横力を予め算出し、ゴム試験部材に付与したい横力にゼロ時横力を加算して補正した横力を求め、この補正横力を発生させるようにゴム試験部材のスリップ角を調整して摩擦摩耗試験を行なうため、接地面内の周速差に伴う横力の影響を考慮して評価精度を高めることができる。
【0013】
また、本発明のゴム摩擦摩耗試験方法において、前記ゴム試験部材は、タイヤのトレッドゴムと同じ配合のゴムで成形されており、前記タイヤについてすべり量とせん断力から求まる摩擦エネルギー及び接地圧を予め計測する工程をさらに備え、前記試験条件を設定する工程は、前記予め計測された摩擦エネルギー及び接地圧と同様となるような荷重、前後力、及び横力を設定することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ゴム摩擦摩耗試験で得られる摩擦摩耗特性と実際のタイヤの摩擦摩耗特性との相関が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ゴム摩擦摩耗試験装置を概略的に示す斜視図
図2図1のゴム摩擦摩耗試験装置を概略的に示すブロック図
図3】回転台とゴム試験部材を示す平面図
図4】本発明のゴム摩擦摩耗試験方法を示すフローチャート
図5】スリップ角と横力の関係を表す図
図6】回転台の台上でゴム試験部材を転動させる態様を示す斜視図
図7図6の回転台とゴム試験部材を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1及び図2には、本実施形態で使用されるゴム摩擦摩耗試験装置が概略的に示されている。この試験装置は、円盤状のゴム試験部材2を、模擬路面となる回転台1の台上で転動させる構成になっている。回転台1は、上下方向に延びる回転軸11を有しており、その回転軸11にサーボモータなどの回転駆動部12が連結されている。この回転駆動部12により、回転台1は回転軸11を介して回転駆動可能に構成されている。
【0017】
ゴム試験部材2には、水平方向に延びる軸部材21が取り付けられており、その軸部材21にサーボモータなどの回転駆動部22が連結されている。軸部材21は、ゴム試験部材2の中心部に嵌め込まれ、ゴム試験部材2に対して回転方向の位置ずれを生じないように固定されている。この回転駆動部22により、ゴム試験部材2は軸部材21を介して回転駆動可能に構成されている。
【0018】
図1では記載を省略しているが、軸部材21は軸受を介して支持具3により支持されている。支持具3は、公知のアクチュエータで構成しうる昇降機構31によって上下方向に変位可能であり、その下方への変位によって、回転台1の台上にゴム試験部材2が上から押し当てられる。このように、支持具3は、軸部材21を介して、回転台1の台上に押し当てたゴム試験部材2を転動自在に支持する。
【0019】
横力検出器4は、回転台1の台上で転動するゴム試験部材2に生じた横力を検出する。横力検出器4としては、例えばロードセルを用いることができる。本実施形態では、横力検出器4を支持具3に設置しているが、ゴム試験部材2の横力を検出できれば、これに限られない。また、図示していないが、ゴム試験部材2に作用する荷重や前後力を検出することを目的とした、ロードセルなどの検出器も設置されている。
【0020】
揺動機構5は、ゴム試験部材2が旋回して前後方向を変えるように、支持具3を揺動させる機能を有する。
【0021】
回転駆動部12、回転駆動部22、昇降機構31及び揺動機構5は、それぞれ制御部6に電気的に接続されていて、制御部6からの指令信号により各動作の必要性に応じて適宜に制御されるように構成されている。
【0022】
制御部6は、回転駆動部12及び回転駆動部22を制御し、回転台1とゴム試験部材2との間に周速差を生じさせて、所定のスリップ率を付与する。スリップ率は、ゴム試験部材2の周速に対する上記周速差の百分率として表される。
【0023】
また、制御部6は、支持具3の変位量または検出される縦荷重に基づいて昇降機構31を制御し、ゴム試験部材2に所定の荷重を負荷する。
【0024】
また、制御部6は、揺動機構5の制御により支持具3を揺動させ、延いてはゴム試験部材2のスリップ角(図3(b)に示す角度SA)を制御する。制御部6には、横力検出器4による検出結果が入力される。ここで、スリップ角とは、進行方向とゴム試験部材2の前後方向(回転方向)とがなす角であって、換言すると進行方向に対するゴム試験部材2のずれ角度であり、タイヤにおけるスリップアングルや横滑り角に相当する。
【0025】
図3(a)では、ゴム試験部材2が回転軸11の真横に配置されており、その図面での上下方向が進行方向DDとなる。円周Cは、回転軸11を中心とし、且つ、支持具3の揺動に伴うゴム試験部材2の旋回運動の中心点Pを通る仮想ラインである。進行方向DDは、点Pにおける円周Cの接線と平行である。ゴム試験部材2の軸部材21(図3では不図示)は、点Pにおける円周Cの法線方向に延びており、それに直交するゴム試験部材2の前後方向LD(回転方向)は、点Pにおける円周Cの接線と平行になる。
【0026】
図3(a)において、ゴム試験部材2は、スリップ率を所定の値に保持した条件下で回転台1の台上を転動しており、その進行方向DDと前後方向LDとがなす角、即ちスリップ角は0°である。円周A,Bは、回転軸11を中心とした同心円であって、それぞれゴム試験部材2の接地面の内側,外側を通る仮想ラインである。既述のように、回転台1の周速が一定であっても、円周Aを通る接地面の内側と円周Bを通る接地面の外側とに周速差が生じるため、それに伴ってゴム試験部材2に余計な横力LF1が作用する。
【0027】
図3(b)は、図3(a)の状態からゴム試験部材2を時計回りに旋回した図である。このようにスリップ角SAを0°以外に設定した場合、ゴム試験部材2には、スリップ角SAによる横力に加えて、接地面内の周速差に伴う横力が作用し、全体として横力LF2が作用する。
【0028】
上記の装置を用いたゴム摩擦摩耗試験方法の一例について説明する。
【0029】
まず、ステップS100において、摩耗摩擦特性を評価したい実際のタイヤについて、滑り量とせん断力から求まる摩擦エネルギー、及び接地圧を計測する。摩擦エネルギー及び接地圧の測定は、従来公知の方法により行なうことができる。
【0030】
次のステップS101において、ステップS100にて計測された摩擦エネルギー及び接地圧と同様となるようなゴム試験部材2に与える試験条件を設定する。ここで設定される試験条件としては、荷重Fz、前後力Fx、及び横力Fyである。
【0031】
次のステップS102において、ステップS101で設定された荷重Fz及び前後力Fxの条件下で、異ならせた複数のスリップ角にてゴム試験部材2を転動させて、そのときの横力を横力検出器4により計測する。その後、複数のスリップ角と計測された横力の関係をプロットする。具体的には、所定数以上のスリップ角をゴム試験部材2に付与してそれぞれ横力を計測し、複数のスリップ角と計測された横力を、図5のようにスリップ角を横軸、横力を縦軸としてプロットする。この例では、スリップ角を−5°〜+5°の範囲で1°ずつ変更しながら横力を計測し、合計11点をプロットしている。
【0032】
次のステップS103において、複数のスリップ角とこれに対応する横力との関係式を求める。具体的には、ステップS102にてプロットされた各点を線形近似して近似直線を表す式を求める。この例では、直線の式が、y=12.364x+25.455となっている。
【0033】
次のステップS104において、スリップ角と横力の相関係数Rの2乗(R)が0.9以上であるか否か判定する。この例では、Rが0.9735となっている。Rが0.9以上の場合、ステップS105に進み、一方、Rが0.9よりも小さい場合、ステップS102に戻って、スリップ角の点数を増やして横力を計測し、Rが0.9以上となるまでステップS102〜S104を繰り返す。
【0034】
次のステップS105において、ステップS103で得られた関係式からスリップ角が0°のときの横力であるゼロ時横力Fy0を算出し、ステップS101で設定された横力Fyにゼロ時横力Fy0を加算して補正横力Fy’(=Fy+Fy0)を求める。
【0035】
次のステップS106において、補正横力Fy’を発生させるスリップ角SAをステップS103で得られた関係式から導出する。
【0036】
次のステップS107において、ステップS106で導出されたスリップ角SAをゴム試験部材2に付与し、ステップS101で設定された荷重Fz及び前後力Fxの条件下で摩擦摩耗試験を行ない、ゴム試験部材2の摩擦摩耗特性を評価する。
【0037】
以上によれば、回転台の台上でゴム試験部材を転動させる際に、接地面内の周速差に伴う横力の影響を考慮して摩擦摩耗試験を行なうことができるため、評価精度を高めることができる。また、これにより、ゴム摩擦摩耗試験で得られる摩擦摩耗特性と実際のタイヤの摩擦摩耗特性との相関を良好にできる。
【0038】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であり、装置の構成や制御内容などは適宜に変更することが可能である。例えば、回転台は、その中心に位置する回転軸を介して回転するものに限られず、それに隣接させた回転体により回転駆動してもよく、かかる構成によれば回転速度を高精度で制御しやすくなる。
【0039】
前述の実施形態では、ステップS102において、スリップ角と対応する横力を11点プロットしているが、これに限定されず、11点より少なくても多くてもよい。
【0040】
[他の実施形態]
前述の実施形態では、補正横力Fy’を発生させるスリップ角を事前に関係式から求め、このスリップ角をゴム試験部材2に付与している(スリップ角制御)が、補正横力Fy’が発生するようにゴム試験部材2のスリップ角を試験中に調整するようにしてもよい(横力制御)。すなわち、本発明に係るゴム摩擦摩耗試験方法は、回転台1を回転させるとともに、その回転台1の台上に押し当てられた円盤状のゴム試験部材2を転動させて摩擦摩耗特性を試験するゴム摩擦摩耗試験方法であって、ゴム試験部材2に付与したい荷重Fz、前後力Fx、及び横力Fyを含む試験条件を設定する工程と、設定された荷重Fz及び前後力Fxの条件下で、異ならせた複数のスリップ角にてゴム試験部材2を転動させて横力を計測し、複数のスリップ角と対応する横力との関係式を求める工程と、前記関係式からスリップ角が0°のときの横力であるゼロ時横力Fy0を算出し、設定された横力Fyにゼロ時横力Fy0を加算して補正横力Fy’を求める工程と、補正横力Fy’を発生させるようにゴム試験部材2のスリップ角を調整し、設定された荷重Fz及び前後力Fxの条件下で摩擦摩耗特性を試験する工程と、を備えるものでもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。接地面内の周速差に伴う横力の影響を考慮せずにゴム試験部材の摩擦摩耗試験をしたものを比較例1,2とし、本発明に係る方法によりゴム試験部材の摩擦摩耗試験をしたものを実施例1,2とした。比較例1と実施例1は同じ配合aのゴムとし、比較例2と実施例2は同じ配合bのゴムとした。
【0042】
各ゴム試験部材と同じ配合のトレッドゴムを有するタイヤについて摩耗試験を行ない、その摩耗評価結果を指数化し、各ゴム試験部材について摩耗試験を行ない、その摩耗評価結果を指数化した。このタイヤとゴム試験部材の摩耗評価指数の差が小さいほど、ゴム摩擦摩耗試験で得られる摩擦摩耗特性と実際のタイヤの摩擦摩耗特性との相関が良好である。これらの結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1のように、実施例1及び2は、比較例1及び2に比べ、タイヤとゴム試験部材の摩耗評価結果の差が小さくなった。
【符号の説明】
【0045】
1 回転台
2 ゴム試験部材
4 横力検出器

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7