特許第6571504号(P6571504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 名古屋電機工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6571504-制御機 図000002
  • 特許6571504-制御機 図000003
  • 特許6571504-制御機 図000004
  • 特許6571504-制御機 図000005
  • 特許6571504-制御機 図000006
  • 特許6571504-制御機 図000007
  • 特許6571504-制御機 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571504
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】制御機
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/696 20160101AFI20190826BHJP
   E01F 9/608 20160101ALI20190826BHJP
【FI】
   E01F9/696
   E01F9/608
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-231382(P2015-231382)
(22)【出願日】2015年11月27日
(65)【公開番号】特開2017-96042(P2017-96042A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243881
【氏名又は名称】名古屋電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100117466
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 渉
(72)【発明者】
【氏名】大橋 由治
(72)【発明者】
【氏名】阿部 宏明
【審査官】 湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−082019(JP,U)
【文献】 特開2012−085438(JP,A)
【文献】 特開2008−121302(JP,A)
【文献】 実開平05−056723(JP,U)
【文献】 実開昭59−196664(JP,U)
【文献】 特開平08−177304(JP,A)
【文献】 実開平01−024278(JP,U)
【文献】 実開昭51−043842(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0006513(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/696
E01F 9/608
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に設置される表示板の制御機であって、
前記表示板の支柱から延びる取付部に取り付けられ、配線によって前記表示板と接続される接続部が内部に設けられた筐体と、
前記筐体に取り付けられ、前記支柱側に開口するように開けられる観音開きの扉を備える開閉部と、
を備え
前記筐体が前記取付部に取り付けられた状態において、前記支柱と前記扉の回転中心との距離は、前記扉の回転半径よりも大きいことを特徴とする
制御機。
【請求項2】
前記筐体は、
前記支柱側に開口する開口部と、
前記開口部が存在する開口面に隣接し、かつ、前記支柱の軸に平行な側面とを備え、
前記開閉部は、
前記側面に沿ってスライド可能である、
請求項1に記載の制御機。
【請求項3】
前記開閉部は、
大径部、および前記大径部と同軸であって当該軸に垂直な一方向における幅が前記大径部より小さい小径部、を有する柱状部と、
前記大径部の直径より僅かに大きい直径の円形穴、および前記円形穴に連結されるとともに前記小径部の幅より僅かに大きい幅のスリット、を有する扉支持部材とを備え、
前記扉支持部材は、
前記大径部が前記円形穴に支持された状態で前記扉の回転中心となって回転し、前記スリットが延びる方向が水平かつ前記側面に平行となるように、前記側面に対して取り付けられる、
請求項2に記載の制御機。
【請求項4】
前記開閉部は、
前記扉の回転可能な角度範囲を所定範囲以内に規制する規制部を備える、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の制御機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に設置される表示板等の制御機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、支柱に取り付けた表示板に交通情報等を表示する技術が知られている。当該表示板においては、表示板における表示の制御を行うなどのために制御機が併設される。当該制御機は、通常、表示板の支柱に取り付けられ、筐体内に表示制御のための制御装置(表示制御のための操作部、非常用の電源部、通信部、配線によって表示板と接続される接続部等)が設けられる。当該筐体においては、制御装置を風雨から守る等のために扉が設けられ、必要に応じて扉が開けられることによって内部の制御装置に対するアクセスが可能になる。このような制御機としては、例えば、特許文献1のような技術が知られている。当該特許文献1においては、制御機の一面が支柱に接触するように当該制御機が支柱に対して取り付けられている。このような構成において、従来は、支柱の反対側に位置する制御機の面に扉が設けられ、当該扉によって制御機内の制御装置に対するアクセスが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−283378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、設置スペースが限られた道路において、制御機の据付時や保守時の作業に支障が出る場合があった。例えば、道路の分離帯や防音壁に隣接する道路の路肩等に制御機を設置する場合、設置位置や設置の方向が制限される場合がある。また、制御機の扉が回転して開閉する場合、開閉によって扉が筐体の外側の道路上に達するといった問題の他、防音壁の近くなどにおいては扉が防音壁等に干渉して制御機の扉が開閉できないといった問題が発生した。さらに、支柱の反対側に扉が設けられる構成においては、操作者や作業者によるアクセスが必要な全ての部分を扉側に集中して配置する必要があるため、各部分の配置に対する設計上の制約が生じる他に、結線や保守の際の作業スペースが制限されるため作業性を大きく損ねるといった問題が生じた。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、限られた設置スペースであっても高い作業性および保守性を確保可能な状態で設置することが可能な制御機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、制御機は、取付部を介して支柱に取り付けられる。従って、支柱の周囲のスペースが限られている場所であっても、支柱の周囲に制御機と同等のスペースが存在すれば設置可能であるため、制御機を容易に設置することができる。また、制御機においては、開閉部によって支柱側を開口させることができるように構成されている。従って、制御機が支柱に取り付けられた状態で、支柱と制御機との間に向けて筐体が開口するため、支柱の周囲の設置スペースが限られていたとしても、支柱側から制御機内に手を挿入して接続部に対する保守作業等を行うことができる。このため、制御機から見て支柱と反対側(後述する実施形態に示す方向における裏面側)から作業者が結線や保守等を行う必要はなく、当該支柱の周囲の設置スペースが限られていたとしても作業者は支柱側から制御機内の接続部等に対して容易にアクセスすることができる。
【0006】
ここで、筐体は、配線によって表示板と接続される接続部が内部に設けられた箱であれば良く、形状は限定されない。従って、筐体は直方体であっても良いし、一部の面が曲面であっても良く種々の構成を採用可能である。接続部は、表示板と接続される端子等を備えていればよい。筐体内には、接続部の他にも種々の機能を有する装置、回路等を備えて良く、操作部、非常用の電源部、通信部等が備えられていてよい(すなわち、表示板を制御する制御装置のいかなる部分が備えられていてもよい)。
【0007】
表示板の態様は種々の態様を採用可能であり、矩形や多角形など任意の形状であってよく、表示面も平面の他、曲面であってもよく、種々の形状を採用可能である。支柱は、表示板および筐体を支持する柱であれば良く、円柱であっても良いし多角形からなる角柱であっても良い。なお、取付部は、支柱から筐体側に延び、当該取付部に取り付けられた筐体を支持することができればよく、形状や材料は特に限定されない。
【0008】
開閉部は、筐体に取り付けられ、開閉によって発生し得る開口部が支柱側に開口するように構成されていれば良い。このような構成は、例えば、取付部に取り付けられた筐体が支柱側に開口する開口部を備えており、開閉部によって当該開口部を開閉する構成によって実現可能である。
【0009】
さらに、開閉部の動作が他の物体(作業者や車両等)の妨げとならないように、開閉部の可動範囲を制限できるように構成されていても良い。このような構成としては、例えば、筐体が、支柱側に開口する開口部と、開口部が存在する開口面に隣接し、かつ、支柱の軸に平行な側面とを備え、開閉部が、側面に沿ってスライド可能である構成が挙げられる。
【0010】
すなわち、筐体の開口部を開口させることによって開口部から離れた部分(観音扉等)を、筐体の側面側に沿ってスライドさせることによって開口部から退避させることが可能である。この構成によれば、開口部から離れた部分が側面に沿った状態となり、当該部分が側面から垂直な方向に張り出すことを防止することができ、開閉部が他の物体の妨げになることを防止することができる。
【0011】
扉としては開閉部が観音開きの扉を備えることが好ましい。この構成によれば、ヒンジによって回転する少なくとも2枚の扉によって簡易に開口部を開閉させることが可能である。また、開閉部が観音開きの扉を備える構成においては、筐体が取付部に取り付けられた状態において、支柱と扉の回転中心との距離が扉の回転半径よりも大きい構成であることが好ましい。この構成によれば、支柱と干渉させることなく観音開きの扉を開閉することが可能になる。また、支柱と扉の回転中心との距離が扉の回転半径よりも僅かに大きい構成とすれば、支柱と制御機との間の距離を最小にすることができるため重量の重い制御機の支柱に対する負荷を最小に押さえることができる。
【0012】
開閉部を筐体の側面に沿ってスライドさせるための構成としては、種々の構成を採用可能である。例えば、筐体の側面に沿って延びる移動方向規制部(レールや溝、スリット等)を側面に取り付け、当該移動方向規制部によって開閉部を移動させることによって、当該開閉部を側面に沿ってスライドさせる構成等を採用可能である。移動方向規制部が移動方向を規制する部分は、扉自体であっても良いし、扉に取り付けられた部材(ヒンジ等)であっても良く、種々の構成を採用可能である。
【0013】
後者の構成例としては、例えば、開閉部が、大径部、および当該大径部と同軸であって当該軸に垂直な一方向における幅が前記大径部より小さい小径部、を有する柱状部と、大径部の直径より僅かに大きい直径の円形穴、および円形穴に連結されるとともに小径部の幅より僅かに大きい幅のスリット、を有する扉支持部材とを備え、大径部が円形穴に支持された状態で扉の回転中心となって回転し、前記スリットが延びる方向が水平かつ前記側面に平行となるように、扉支持部材が側面に対して取り付けられる構成であっても良い。
【0014】
すなわち、開閉部を構成する扉には柱状部が連結されており、当該柱状部の大径部が扉支持部材に設けられた円形穴において回転可能に支持される。従って、扉は当該柱状部の軸を中心にして回転可能である。また、扉支持部材に設けられた円形穴はスリットに連結されているが、スリットの幅は大径部の直径より狭いため、円形穴の内側に大径部が存在する状態において、柱状部はスリット側に移動しない。従って、円形穴の内側に大径部が存在する状態であれば、円形穴に柱状部が保持された状態で扉を開閉させることが可能である。
【0015】
一方、柱状部は大径部と小径部とを有するため、軸方向に扉を移動させることによって柱状部の小径部を扉支持部材の円形穴の内側に配置させることができる。スリットの幅は小径部の幅より僅かに大きいため、小径部が扉支持部材の円形穴の内側に配置された状態において扉をスライドさせると、柱状部の小径部がスリットの内側を移動する。この移動により、扉が筐体の側面に沿って移動することになる。
【0016】
柱状部は、大径部および小径部を有し、軸方向に延びる柱状の部位である。柱状部の長さや大きさは種々の態様を採用可能であるが、大径部の外周は円形状である。従って、柱状部は少なくとも円柱状の部位を含む。また、大径部と小径部とは同軸であるため柱状部は外径の異なる部分を有する柱状の部位である。ただし、小径部の外周は円形でなくてもよい。すなわち、大径部と同軸の部分において大径部より幅が小さい小径部が存在することにより、小径部がスリットの間を通ってスライドできるように構成されていれば良い。従って、小径部の形状は円形であっても良いし、円形と異なる形状(例えば、卵形、長円形(長方形の対辺に半円が連結された形状)、楕円形等)であっても良い。なお、柱状部は、ネジ等によって固定されるためにネジ穴が形成されていても良く、当該ネジ穴が軸方向に貫通しているのであれば柱状部は筒状部となる。
【0017】
円形穴は、大径部の直径より僅かに大きい直径であれば良く、これにより、大径部の外周が円形穴の内周に囲まれた状態で回転できるように構成されていれば良い。スリットの幅は、小径部の幅より僅かに大きければよい。すなわち、スリットの間を小径部がスライド移動できるように構成されており、かつ、大径部がスリットの間に移動できないように構成されていれば良い。
【0018】
扉支持部材は筐体の側面に対して取り付けられるが、この際、大径部を回転中心とした扉の回転と、小径部を利用した扉のスライドが行われるように扉支持部材が筐体の側面に取り付けられる。従って、円形穴の位置が扉の回転中心となるように扉支持部材の位置および向きが調整されて、扉支持部材が筐体の側面に取り付けられる。また、スリットが延びる方向は、小径部の移動方向(=扉の移動方向)を規定するため、スリットが延びる方向が水平かつ側面に平行となるように向けられて扉支持部材が筐体の側面に取り付けられることにより、扉の移動方向を水平かつ側面に沿った方向となるように規定することができる。なお、本明細書において、水平、平行などの方向は概略の方向であれば良く、制御機10の設置場所の傾斜や施工時の誤差等によって水平や平行などの方向と僅かに異なっていてもよい。
【0019】
さらに、開閉部が、扉の回転可能な角度範囲を所定範囲以内に規制する規制部を備える構成であっても良い。この構成によれば、扉が過度に回転することを防止することができ、扉が過度に回転することによって他の物体(作業者や車両等)の妨げとなることを防止することができる。規制部の構成としては、種々の構成を採用可能である。例えば、扉が閉じた状態から開く過程において、ある角度になると扉と干渉する部材が設けられていても良いし、扉がある角度に達した状態において扉の角度が略一定に維持された状態で扉が筐体の側面に沿ってスライドする構造が形成されていても良く、種々の構成が採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1Aは本発明の一実施形態にかかる制御機を備える表示システムの正面図、図1Bは表示システムの側面図である。
図2図2A図2Cは制御機を示す図である。
図3図3A図3Cはヒンジを示す図であり、図3D図3Eは柱状部を示す図である。
図4図4A図4Dは扉支持部材の上面図である。
図5図5A図5Cはヒンジの動作を説明する図である。
図6図6A図6Gは取付部を説明する図である。
図7図7Aは支柱と制御機との位置関係を説明する図であり、図7B図7Cは柱状部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)表示システムの構成:
(2)制御機の構成:
(2−1)開閉部の構成:
(2−2)扉支持部材の構成:
(3)取付部の構成:
(4)他の実施形態:
【0022】
(1)表示システムの構成:
図1Aは本発明の一実施形態にかかる制御機を備える表示システムの正面図、図1Bは表示システムの側面図である。本実施形態において表示システム1は、ベース2、支柱3、表示板4、制御機10を備え、ベース2が道路に埋設されることによって表示システム1が道路に設置される。
【0023】
支柱3は、ベース2の上部に取り付けられて上方に延びる円柱状の部材であり、支柱3の上部には支柱3の軸方向に垂直に延びる円柱状の支持部(梁柱)3a,3bが連結されている。表示板4は支持部3a,3bに取り付けられており、本実施形態においては、道路上を車両の進行方向に走行する者が表示内容を視認できるように表示板4が支持部3a,3bに取り付けられている。
【0024】
表示板4は、複数の表示素子を備えており、支持部3a,3bおよび支柱3の内部を通る配線によって電力および信号が供給され、当該信号が示す交通情報を表示することができる。なお、本実施形態においては、車両の進行方向を基準に方向を記述する。例えば、車両の進行方向は前方、車両の進行方向を前方とした左右が左右方向となる。また、図1Aは車両の進行方向の後方側から前方側を眺めた状態を示しており、この状態の図を正面図と呼ぶ。従って、本実施形態においては、支柱部3と反対側における制御機10の面を開口させる扉(後述する扉12)を正面と呼ぶ呼び方とは逆の呼び方になる。
【0025】
(2)制御機の構成:
本実施形態において制御機10は、直方体の筐体を備えており、筐体の内部に、配線によって表示板と接続される接続部が備えられている。図2Aおよび図2Bは制御機10の左側面図、図2Cは制御機10の正面図を示している。ただし、図2Bにおいては制御機10の筐体が備える遮熱板11や扉20が備えるヒンジ21等が取り外された状態を示している。
【0026】
図2A図2Cに示すように、制御機10の筐体は直方体であり、上面および下面が支柱3の軸に垂直(すなわち水平)に配向し、正面、裏面および側面が軸に平行(すなわち鉛直)に配向する。なお、本実施形態においては、筐体の上面および側面に対して、各面に平行な遮熱板11が取り付けられている。制御機10の筐体は、正面が支柱3側を向くように取付部40〜43によって支柱に取り付けられている(後に詳述)。
【0027】
制御機10の前方側には扉12、後方側には扉20が取り付けられている。扉12はヒンジ12aによって側面に対して連結されており、ヒンジ12aの回転中心を軸にして扉12を回転させることにより、前方側に向けて扉12を開くことができる。なお、制御機10の筐体において、前方側には扉12によって開閉される矩形の開口部が形成されており、扉12の開閉によって開口部を外部に露出させ、また、閉じることが可能である。
【0028】
扉20は、2枚の扉を備えており、正面図において各扉は上下方向に長い長方形である。各扉においては、左右の端部の3カ所にヒンジ21が連結されており、ヒンジ21は、側面13に取り付けられた扉支持部材(後述)に回転可能に支持されている。従って、ヒンジ21の回転中心を軸にして扉20のそれぞれを回転させることにより、後方側に向けて扉20を開くことができる。制御機10の筐体において、後方の面(正面20b)には開口部20aが形成されており、扉20の開閉によって当該開口部20aを外部に露出させ、また、閉じることが可能である。以上のように、扉20は二枚であり左右側の端部に回転中心を有するため観音開きの扉である。本実施形態において、開口部20aは正面20bに形成されており、正面20bと側面13とは隣り合う面である。従って、側面13は、開口部20aが存在する正面20b(開口面)に隣接し、かつ、支柱3の軸に平行な面である。
【0029】
以上の構成において、扉20は後方に向けて開くため、扉20を開くことにより筐体を支柱3側に開口させることができる。従って、支柱3の周囲(図1に示す前方や左右方向)におけるスペースが限られていても制御機10を容易に設置することができる。また、支柱3側から制御機10内に手を挿入して制御機10内の図示しない接続部等に関する作業を行うことができる。従って、支柱3側や左右方向のスペースが限られていたとしても作業者は支柱3側から制御機10内の接続部等に容易にアクセスすることができる。
【0030】
(2−1)開閉部の構成:
図3A図3Eは、ヒンジ21を示す図であり、図3Aはヒンジ21の左側面図、図3Bはヒンジ21の正面図、図3Cはヒンジ21の上面図である。また、図3Dおよび図3Eは、ヒンジ21を構成する柱状部21dを抜き出して示す図であり図3Dは柱状部21dの上面図、図3E図3Aに示す状態における柱状部21dの正面図である。なお、図3Aにおいては、後述する扉支持部材30も図示されている。
【0031】
ヒンジ21は、板状の部材21a,21b,21cを備えている。部材21aはネジ穴を有しており、当該ネジ穴を介してネジによって扉20の側面に連結される。部材21b,21cは、一方に長い板状の部材の端部が直角に曲げられたような形状であり、一方の端部が部材21aに連結されている。部材21b,21cは、柱状部21dを挿入可能な円形の穴を有しており、上方に位置する部材21bにおける円形の穴の直径は、下方に位置する部材21cにおける円形の穴の直径よりも大きい。
【0032】
すなわち、柱状部21dは上部と下部とで直径が異なるとともに上部の直径D1は下部の直径D2より大きい。部材21bにおける円形の穴は直径D1より僅かに大きく、部材21cにおける円形の穴は直径D2より僅かに大きい。そして、ヒンジ21の部材21aに対して部材21bは上部、部材21cは下部に連結されるため、柱状部21dにおける直径D1の部位を上方、直径D2の部位を下方に向けた状態で部材21b,21cの間に柱状部21dを挟むことができる。柱状部21dにおいては、軸Aに沿ってネジ穴が形成されており、部材21b,21cの間に柱状部21dを挟んだ状態で当該ネジ穴を介してネジによって部材21b,21cおよび柱状部21dが固定される。なお、柱状部21dを部材21b,21cに固定する方法としては、上記の方法の他に、部材21b,21cにネジ穴を直接に開けて、ネジで柱状部21dを挟んだ形で固定してもよい。
【0033】
柱状部21dは軸Aに沿って延びる部材であり、軸Aに垂直な面内の形状が直径D1の円形である大径部21d1と、当該大径部21d1に連結された小径部21d2とを有している。小径部21d2は、軸Aに垂直な面内の形状が幅D2の長円形である部位と直径D2の円形である部位とが上下に連結されることによって構成されている。すなわち、小径部21d2は、軸A方向に延びる直径D2の円柱が、一定の幅D2で一方に突出して形成される形状である。
【0034】
上述のように、部材21aが扉20の側面に連結され、部材21b,21cが直角に屈曲して一方に延びるため、部材21b,21cは扉20の側面から制御機10の側面に沿って前方へ延びる状態となる。部材21b,21cにおいては、当該前方側に円形の穴が形成されており、柱状部21dが固定されている。従って、ヒンジ21は、扉20の側面から前方に向けて延び、前方の端部よりで柱状部21dが保持された状態になっている。
【0035】
(2−2)扉支持部材の構成:
本実施形態において、柱状部21dは、筐体の側面に取り付けられた扉支持部材30に挿入される。図4A図4Dは、扉支持部材30の上面図であり、図4A図4C図4Dは筐体の側面10aに扉支持部材30が取り付けられた状態を示しており、図4Bは扉支持部材30を抜き出した状態で示している。また、図4A図4C図4Dにおいて、筐体と扉は水平方向に切断した状態で示している。
【0036】
扉支持部材30は、一方に長い板状の部材であり、長手方向に延びる線が折り曲げ線となる状態で直角に曲げられている。曲げられた状態で互いに垂直に配向する一方の面はネジ穴を有しており、当該ネジ穴を介してネジによって筐体の側面10aに連結される。この際、扉支持部材30の長手方向は前後方向に向けられる。従って、扉支持部材30においては、板状の部位が側面10aに垂直な方向に張り出すとともに、当該張り出した部分が前後方向に延びる状態で側面10aに連結されている。
【0037】
扉支持部材30において、側面10aに垂直な方向に張り出した部分には、円形穴30aおよびスリット30bが設けられている。円形穴30aは直径Daの円形の穴である。スリット30bは幅Dbであり、円形穴30aに連結されるとともに前後方向に延びている。円形穴30aの直径Daは、柱状部21dにおける大径部21d1の直径D1より僅かに大きい。従って、円形穴30aに大径部21d1が挿入されることにより、大径部21d1の軸A(図3D参照)を中心にして柱状部21dおよび柱状部21dに連結されたヒンジ21、扉20を回転させることができる。
【0038】
スリット30bは、前後方向に延びる一定の幅Dbの穴であり、後方の端部は円形穴30aに連結され、前方の端部は半円形である。スリット30bの幅Dbは、柱状部21dにおける小径部21d2の幅D2より僅かに大きい。従って、スリット30bの幅方向と小径部21d2の幅方向とが一致するように小径部21d2がスリット30bに挿入されることにより、小径部21d2および小径部21d2に連結されたヒンジ21、扉20を前後方向にスライドさせることができる。
【0039】
本実施形態においては、小径部21d2が図3Dに示すように幅D2の長円形の突出部を有しており、当該突出部が扉20の回転可能な角度範囲を90度以内に規制する規制部として機能する。図5A図5Cは、小径部21d2が回転角度を規制する規制部として機能する様子を説明する説明図であり、図5A図4Aに示す状態を左側面から見た図、図5B図4Cに示す状態を左側面から見た図、図5C図5Bに示す状態の扉20を上方に持ち上げた状態を示している。
【0040】
図4A図5Aに示す状態において、大径部21d1は扉支持部材30の円形穴30aに挿入された状態にあるため、大径部21d1の軸Aを中心にして扉20を回転させることができる。扉20が閉じた状態から90度回転させると、扉20は図4C図5Bに示す状態となる。小径部21d2は一方向に突出しており、図4Aに示す状態において突出方向は左右方向である。一方、扉20が図4C図5Bのように90度回転すると、小径部21d2の突出方向も90度回転し、図5Bにおいて破線の矢印Arで示すように突出方向が前後方向に平行になる。
【0041】
小径部21d2の突出方向に垂直な方向の幅D2はスリット30bの幅Dbよりも僅かに小さいため、図5Bに示す状態において扉20を上方に持ち上げることにより、図5Cに示すように小径部21d2を扉支持部材30の円形穴30aおよびスリット30bに挿入することができる。この状態においては、扉20を前後方向にスライドさせることが可能であるが、上方から見た小径部21d2の形状は図3Dに示すように長円形であるため、柱状部21dの軸Aを中心として扉20を回転させることはできない。なお、図5Cは扉20を小径部21d2の中間の位置まで少し持ち上げた状態を示している。
【0042】
従って、図4Aに示すように扉20が閉じている状態を0度とした場合に、扉20の回転角度は90度以下に規制される。また、扉20の回転角度が90度以下に規制された状態で扉20を前後方向にスライドさせることができる。この構成によれば、扉20が側面に沿った状態となり、扉20が側面から垂直な方向に張り出すことを防止することができ、扉20が他の物体の妨げになることを防止することができる。
【0043】
本実施形態においては、扉支持部材30に規制部材30cが取り付けられている。規制部材30cは、板状の部材を直角に曲げて形成した部材であり、一方の面がネジ等によって扉支持部材30に固定される。規制部材30cの他方の面は左右方向に平行になるように向けられ、当該面が円形穴から所定距離Lの位置となるように扉支持部材30に対して固定されている(図4D参照)。図4Cに示す状態から扉20を後方にスライドさせると、図4Dに示すように部材21bが規制部材30cに接触して停止するため、扉20は前後方向に距離Lだけスライド可能である。
【0044】
(3)取付部の構成:
図1Bに示すように、制御機10の筐体は取付部40〜43によって支柱3に対して取り付けられる。支柱3には、取付部40,42が連結されており、取付部40には取付部41がネジによって連結され、取付部42には取付部43がネジによって連結される。すなわち、取付部40は支柱3から前方に延びる円柱状の部材の前方の端部がフランジ状に形成されて構成されており、当該フランジ状の部位に取付部41が連結される。また、取付部42は支柱3から前方に延びるとともに前方の端部で鉛直下方に向けて曲げられた部位を有しており、当該前方の端部に取付部43が連結される。
【0045】
図6A図6Dは取付部41を示す図であり、図6Bは取付部41の上面図、図6Aは取付部41を後方から見た図、図6Cは取付部41を前方から見た図、図6Dは取付部41を右側面から見た図である。これらの図に示すように、取付部41の後方の端部はフランジ状の部位41aとなっており、部位41aが後方を向くようにネジ穴を介して取付部40に取り付けられる。
【0046】
フランジ状の部位41aからは、前方に向けて矩形の筒状体41bが突出している。筒状体41bの上端には、上面から見て矩形の板状の部材41cが連結されている。部材41cの下方には、部材41cと筒状体41bとに連結されたリブ41dが設けられており、部材41cの上面には、部材41cの複数の位置に形成されたネジ穴を介してネジによって筐体の下面が連結される。なお、部材41cおよび筒状体41bの上面には穴が形成されており、筐体の下面にも図示しない穴が形成されている。従って、筐体内に設けられる接続部から延びる電力線や信号線を当該穴から通し、支柱3内を通して表示板4に配線することができる。
【0047】
図6E図6Gは取付部43を示す図であり、図6Fは取付部43の上面図、図6Eは取付部43を後方から見た図、図6Gは取付部を右側面から見た図である。これらの図に示すように、取付部43は、板状の部材が直角に曲げられ、直角部分にリブ43cが設けられた構造である。直角に曲げられることによって得られた一方の面43aは鉛直方向に平行、他方の面43bは水平方向に平行に向けられ、面43aが後方を向くようにネジ穴を介して取付部42に取り付けられる。水平方向に平行な面43bには、ネジ穴を介してネジによって筐体の上面が連結される。
【0048】
以上のように、制御機10の筐体は、取付部43と取付部41とに上下を挟まれて固定され、取付部43および取付部41が取付部42および取付部40に連結されることにより、制御機10の筐体が支柱3に固定される。上述のように、部材41cおよび面43bにはネジ穴が形成されているため、当該ネジ穴の位置および取付部40〜43の大きさによって支柱3と制御機10との距離が規定されることになる。
【0049】
図7Aは、扉20と支柱3との位置関係を筐体の一部とともに抜き出して示す図であり、上方から見た状態で示している。本実施形態においては、扉20の回転中心(柱状部21dの軸A)から支柱3までの距離Lcが、扉20の回転半径R1よりも僅かに大きくなる(Lc>R1かつLc≒R1)ように取付部40〜43の大きさが規定されている。このため、扉20を回転させる際に、支柱3と干渉させることなく扉20を開閉することが可能になる。なお、距離Lcは回転半径R1より大きければ良いが、距離Lcが過度に大きいと前後方向に多くのスペースが必要になるため、距離Lc−回転半径R1は可能な限り小さいことが好ましい。例えば、Lc−R1が制御機10等の設置誤差の最大値(数cm、例えば、5cm、3cm、1cm以下等)であることが好ましい。以上により、支柱3と制御機10との離間スペースが短いにも拘わらず、観音開き扉による効果と相まって支柱3と制御機10の間に結線や保守等に必要なスペースが確保される。
【0050】
(4)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、支柱に取り付けられた制御機の筐体が支柱側に開口する開閉部を備えている限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、開閉部は、その動作によって筐体の開口部を開閉させることができればよく、構造は限定されない。具体的には、開閉部は、上述のような観音開きの扉に限定されず、片開きの扉であっても良い。より具体的には、支柱3側の筐体の開口部側には、端子や保守に必要な基板類を配置する専用スペースが確保できるため開閉できるのは片側の扉だけでもよく、片側は筐体の側面からの延長した筐体として閉じた構造としても良い。また、片開きの扉とする場合には、支柱3と制御機10との離間を若干拡げるか、或いは制御機10のみを防音壁等の障害物と反対側に専用の取付部で平行移動させることによって片開きの扉の幅の比を全幅の6〜7/10としても良い。さらに、扉の構造は、左右の扉の略中間を支点とする折り戸の構造を採用することが可能であり、右の扉の右端を施錠側として開閉できるようにし、図7Aに示す扉20、20が図面左側で蝶番等で内側に折重なった状態で、扉支持部材30に対してスライドできるようにしても良い。
【0051】
また、柱状部21dの小径部21d2は、一方向に突出する構成に限定されず、小径部21d2も大径部21d1と同様に円柱状であっても良い。図7B図7Cは、円柱状の小径部を有する柱状部210dの構成例を示す図であり、図7Bは上方から柱状部210dを眺めた状態を示し、図7Cは側面から柱状部210dを眺めた状態を示している。これらの図に示すように柱状部210dは直径D1の大径部210d1と直径D2の小径部21d2とを備えている。すなわち、柱状部210dは直径が異なる部位を有する柱状の部材である。
【0052】
柱状部210dは、ヒンジ21の部材21b,21cに挟まれて使用される。柱状部210dを有するヒンジ21が扉20に連結されている場合、大径部21d1が扉支持部材30の円形穴30aに挿入された状態で扉20が回転可能である。また、扉20を上方に移動させて小径部21d2が円形穴30aに挿入された状態とすれば、小径部21d2をスリット30bの間に通すことによって扉20を前後にスライド移動させることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10…制御機、11…遮熱板、13…側面、20…扉、21…ヒンジ、21d…柱状部、21d1…大径部、21d2…小径部、30…扉支持部材、30a…円形穴、30b…スリット、30c…規制部材、40〜42…取付部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7