特許第6571518号(P6571518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6571518-差動増幅回路 図000002
  • 特許6571518-差動増幅回路 図000003
  • 特許6571518-差動増幅回路 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571518
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】差動増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   H03F3/45
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-252370(P2015-252370)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-118351(P2017-118351A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】磯部 禎久
【審査官】 及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−154832(JP,A)
【文献】 特開2004−222015(JP,A)
【文献】 特開平08−056128(JP,A)
【文献】 特開2001−053559(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/168497(WO,A1)
【文献】 特開昭57−005404(JP,A)
【文献】 特開平05−218755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00−3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力電圧と第2の入力電圧の差分を増幅する差動増幅回路であって、
前記第1及び第2の入力電圧の差分を増幅し、第1の出力電圧と第2の出力電圧の差として出力する第1の増幅回路と、
前記第1の出力電圧が反転入力端子に入力され、前記第2の出力電圧が非反転入力端子に入力され、前記第1の増幅回路の出力電圧の差をさらに増幅する第2の増幅回路と、
直列接続された第1の出力トランジスタと第2の出力トランジスタと、を有し、
前記第1の出力トランジスタは、ゲートに前記第1の出力電圧が入力され、ソースが第2の電源端子に接続され、ドレインが出力端子に接続され、
前記第2の出力トランジスタは、ゲートに前記第2の増幅回路の出力電圧が入力され、ソースが前記出力端子に接続され、ドレインが第1の電源端子に接続され、
ていることを特徴とする差動増幅回路。
【請求項2】
前記第2の出力トランジスタのドレインは、スイッチとして機能するトランジスタを介して前記第1の電源端子に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の差動増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの入力電圧の差分を増幅する差動増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
差動増幅回路は、様々な電子機器で幅広く使用されている。特に、負帰還を掛けることで、高精度なアナログ信号処理が可能となり、今日の電子機器の発展に不可欠の技術となっている。
差動増幅回路の機能は、2つの入力電圧の差分を増幅することであるが、電池駆動のモバイル電子機器に代表されるように、低消費電流化と小型軽量化が常に求められている。
【0003】
図3に、従来の差動増幅回路を示す。従来の差動増幅回路は、2つの入力端子IP及びINの電圧差を増幅する1段目の増幅回路1と、増幅回路1の出力端子OP及びONの電圧差を増幅する2段目の増幅回路2及び6と、増幅回路2の出力GHよってゲートを制御されるP型MOSトランジスタの出力トランジスタ7と、増幅回路6の出力GLによって制御されるN型MOSトランジスタの出力トランジスタ3とからなる。
【0004】
上述したような差動増幅回路は、出力トランジスタ3及び7を設けることで出力端子OUTの低いインピーダンスを実現し、2段目の増幅回路2及び6を設けることで、出力トランジスタ3及び7が動作するバイアス設定を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−274911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の差動増幅回路は、増幅回路を3つ備えているため、消費電流が多くなり、回路面積が大きくなることが欠点であった。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するために考案されたものであり、低消費電流で回路面積の小さい差動増幅回路を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の課題を解決するために、本発明の差動増幅回路は以下のような構成とした。
2段の増幅回路と直列接続された2段の出力トランジスタを有し、2つの出力トランジスタうち一方の制御を1段目の増幅回路の出力により行い、他方を2段目の増幅回路の出力で制御されるドレイン接地回路(ソースフォロア)として構成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の差動増幅回路によれば、出力トランジスタ2つのうち一方の制御を1段目の増幅回路の出力により行うことで増幅回路が1つ削減され、低い出力インピーダンスと、出力トランジスタが動作するバイアス設定の容易性を損なうことなく、消費電流と回路面積を削減することが出来るという効果がある。
【0010】
さらに、2段目の増幅回路の出力で制御される出力トランジスタをドレイン接地回路とすることで電圧増幅利得を抑え、負帰還を掛けて使用するときに必要となる位相補償回路を削減することが出来るという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の差動増幅回路の回路図である。
図2】本実施形態の差動増幅回路の他の例を示す回路図である。
図3】従来の差動増幅回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態の差動増幅回路の回路図である。
本実施形態の差動増幅回路は、増幅回路1と、増幅回路2と、N型MOSトランジスタの出力トランジスタ3及び4とを備えている。
【0013】
増幅回路1は、二つの入力端子に差動増幅回路の入力端子IP及びINが接続され、二つの入力端子の電圧差を増幅した電圧を出力端子OPと出力端子ONの電圧差として出力する。増幅回路2は、二つの入力端子に増幅回路1の出力端子OP及びONが接続され、出力端子OPと出力端子ONの電圧差を増幅した電圧を出力端子GHに出力する。出力トランジスタ3は、ゲートに増幅回路1の出力端子ONが接続され、ソースはグラウンドに接続され、ドレインは出力端子OUTに接続されている。出力トランジスタ4は、ゲートに増幅回路2の出力端子GHが接続され、ドレインは電源端子に接続され、ソースは出力端子OUTに接続されている。
上述した図1の回路は、入力端子IP及びINの電圧差を増幅した電圧を出力端子OUTに出力する差動増幅回路を構成している。
【0014】
次に、本実施形態の差動増幅回路の動作について説明する。
差動増幅回路の入力端子IPとINの電圧差が正の場合、増幅回路1の出力端子OPと出力端子ONとの電位差も正となり、出力端子OPの電圧は電源電圧に近づき、出力端子ONの電圧はグラウンド電圧に近づく。そして、出力トランジスタ3は、ゲート電圧が小さくなるので、電流駆動能力は小さくなる。出力端子OPと出力端子ONの電位差が正の場合、増幅回路2の出力端子GHの電圧は電源電圧に近づく。そして、出力トランジスタ4は、ゲート電圧が大きくなるので、電流駆動能力は大きくなる。従って、差動増幅回路は、出力端子OUTに入力端子IPとINの電圧差に応じた高い電圧を出力する。
【0015】
差動増幅回路の入力端子IPとINの電圧差が負の場合、増幅回路1の出力端子OPと出力端子ONとの電位差も負となり、出力端子OPの電圧はグラウンド電圧に近づき、出力端子ONの電圧は電源電圧に近づく。そして、出力トランジスタ3は、ゲート電圧が大きくなるので、電流駆動能力は大きくなる。出力端子OPと出力端子ONの電位差が負の場合、増幅回路2の出力端子GHの電圧はグラウンド電圧に近づく。そして、出力トランジスタ4は、ゲート電圧が小さくなるので、電流駆動能力は小さくなる。従って、差動増幅回路は、出力端子OUTに入力端子IPとINの電圧差に応じた低い電圧を出力する。
【0016】
ここで、増幅回路1の出力端子OPと出力端子ONの電圧差は、入力端子IPと入力端子INの電圧差に対し増幅回路1の差動利得倍になる。また、出力端子ONの電圧の変化は、入力端子IPと入力端子INの電圧差に対し、増幅回路1の単相利得倍になる。増幅回路2の出力端子GHの電圧の変化は、増幅回路1の出力端子OPと出力端子ONの電圧差に対し、増幅回路2の利得倍になる。さらに、出力トランジスタ3は、ソース接地増幅回路を構成しており、増幅回路1の出力端子ONの電圧の変化に対し、増幅作用を備えている。
なお、増幅回路1の出力端子OPと出力端子ONの電圧の変化量の絶対値は、必ずしも同等である必要はなく、出力端子OPの電圧の変化量はゼロでも構わない。
【0017】
以上説明したように、図1の回路は、入力端子IPと入力端子INの電圧差を増幅した電圧を出力端子OUTに出力する、差動増幅回路として機能する。
上述したように、本実施形態の差動増幅回路は、出力トランジスタ3のゲートを増幅回路1の出力端子ONに接続する構成としたので、増幅回路が1つ削減され、従来技術に比較して消費電流と回路面積を削減することが可能となった。
【0018】
さらに、増幅回路2の出力端子GHがゲートに接続される出力トランジスタ4をドレイン接地回路とし、出力トランジスタ4の利得を抑えたので、従来技術に比較して負帰還を掛けて使用するときに必要となる位相補償回路を削減することが可能となった。なお、負帰還回路や位相補償回路は、同業者には一般に広く知られており図示していない。
【0019】
図2は、本実施形態の差動増幅回路の他の例を示す回路図である。図2の差動増幅回路は、図1の差動増幅回路に対し、新たにPMOSトランジスタ5を備えている。
PMOSトランジスタ5は、ゲートに制御信号端子ENBが接続され、ソースは電源に接続され、ドレインは出力トランジスタ4のドレインに接続されている。
PMOSトランジスタ5は、制御信号端子ENBがグラウンド電圧のときオン状態となり、制御信号端子ENBが電源電圧のときオフ状態になる、スイッチとして機能する。
【0020】
差動増幅回路は、増幅回路2の出力端子GHがグラウンド電圧になり、出力トランジスタ4がオフ状態の場合は、出力トランジスタ4にオフリークと呼ばれるリーク電流が流れる場合がある。これは、出力端子OUTの出力電圧をより電源電圧に近づけるため、出力トランジスタ4の閾値電圧を低くした場合により顕著になる。
【0021】
本実施形態の差動増幅回路では、出力トランジスタ4にリーク電流が流れる状況下において、制御信号ENBを電源電圧としPMOSトランジスタ5をオフ状態にすることでリーク電流を抑制することができる。
なお、通常、PMOSトランジスタ5のサイズは、オン状態では十分オン抵抗が小さく、オフ状態では十分リーク電流が小さくなるようにサイズを設定することが容易である。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の差動増幅回路は、出力トランジスタ4を、スイッチとして機能するPMOSトランジスタ5を介して電源と接続する構成としたので、出力トランジスタ4がオフ状態のときのリーク電流を抑え、消費電流を削減することが可能となった。
【0023】
なお、本実施形態の差動増幅回路では、出力トランジスタ4をPMOSトランジスタとして増幅回路1の出力と接続し、出力トランジスタ3をPMOSトランジスタとして増幅回路2の出力と接続し、スイッチとして機能するトランジスタ5をNMOSトランジスタとして出力トランジスタ3とグラウンドとの間に備えても、同様の効果が得られることは明らかである。
【符号の説明】
【0024】
1、2 増幅回路
3、4 N型MOSトランジスタ
5 P型MOSトランジスタ
図1
図2
図3