(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱源側ポンプの揚程は、前記復路から前記熱源部に熱源水を引き込んで、その熱源水を前記熱源部から前記往路における前記熱源部との接続箇所に供給する揚程に対応して設定され、
前記熱利用側ポンプの揚程は、前記往路における前記熱源部との接続箇所から前記往路を通して前記熱利用部に熱源水を引き込んで、その熱源水を前記熱利用部から前記復路に供給する揚程に対応して設定されている請求項2に記載の熱利用システム。
複数の前記熱利用部における合計熱負荷、及び、前記熱源部と前記熱利用部との間における熱源水の搬送距離の少なくとも一方に応じて、前記複数の熱源部の運転を制御する運転制御部が備えられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱利用システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のシステムでは、熱利用部に備えられたポンプにより往路及び復路にて熱源水を流通させており、往路及び復路の途中部位に逆止弁等を備えることで、往路及び復路における熱源水の流通方向を一方向としている。
【0005】
しかしながら、往路及び復路において熱源水の流通方向を一方向とすると、例えば、熱源部からの熱源水を往路を通して熱利用部に供給する場合には、熱源水の流通方向で並ぶ複数の熱利用部が熱源水の供給対象となる。よって、最も下流側に位置する熱利用部まで熱源水を搬送しなければならず、熱源水の搬送距離が長くなる。しかも、一方向のみの一系統で熱源水を流通させるので、その一系統当たりの熱源水の搬送流量が大きくなる。そして、復路においても熱源水の流通方向を一方向とすると、同様の問題を生じることになる。
【0006】
したがって、往路及び復路において、熱源水の搬送距離が長くなることで、ポンプの揚程(搬送能力)を大きくしなければならず、コストアップを招くことになる。しかも、一系統当たりの熱源水の搬送流量が大きくなると、配管サイズも大きくしなければならず、更なるコストアップを招くことになる。また、熱源水の搬送距離が長くなると、放熱等の熱ロスも大きくなる。
【0007】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、ポンプの搬送能力を小さくするとともに、往路及び復路の配管サイズも小さくしながら、複数の熱利用部に熱源水を供給して、コストの低減を図るとともに、省エネルギー化をも図ることができる熱利用システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1特徴構成は、複数の熱利用部と複数の熱源部とを備えた熱利用システムにおいて、
前記複数の熱利用部及び前記複数の熱源部に接続された環状の往路と、前記複数の熱利用部及び前記複数の熱源部に接続された環状の復路とを備え、前記往路は、前記往路及び前記復路以外の箇所に備えられたポンプの作動により、熱源水を双方向に流通可能として前記熱源部から前記熱利用部に熱源水を流通自在に構成され、前記復路は、前記ポンプの作動により、熱源水を双方向に流通可能として前記熱利用部から前記熱源部に熱源水を流通自在に構成されている点にある。
【0009】
本構成によれば、複数の熱源部から複数の熱利用部に往路を通して熱源水を供給する場合、往路における一部部位では熱源水が一方向に通流されるのが許容されるのと同時に、往路における別の一部部位では熱源水が一方向とは反対方向に通流されるのが許容されている。よって、一方向に熱源水が流通すると、熱利用部までの搬送距離が長くなる場合に、一方向とは反対方向に熱源水が流通して熱利用部に供給できるので、熱利用部までの熱源水の搬送距離を短くできる。しかも、一方向の一系統で熱源水を流通させるだけでなく、一方向とは反対方向の別の系統でも熱源水を流通させて、熱利用部に熱源水を供給できることから、一系統当たりの熱源水の搬送流量を小さくできる。また、復路においても、往路と同様に、熱源水を双方向に流通可能であるので、複数の熱利用部から複数の熱源部に復路を通して熱源水を供給する場合でも、熱源部までの搬送距離を短くするとともに、一系統当たりの熱源水の搬送流量を小さくできながら、熱源部に熱源水を供給できる。したがって、ポンプの搬送能力(揚程)を小さくできるとともに、往路及び復路の配管サイズも小さくできるので、コストの低減を図ることができる。しかも、熱源水の搬送距離が短くなることで、熱ロスの低減も図ることができ、省エネルギー性の向上を図ることができる。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、前記ポンプとして、前記熱源部側に備えられた熱源側ポンプと、前記熱利用部側に備えられた熱利用側ポンプとを有する点にある。
【0011】
本構成によれば、熱源側ポンプと熱利用側ポンプとを有することで、往路及び復路にポンプを備えることなく、熱源部から熱利用部に往路を通して熱源水を供給できるとともに、熱利用部から熱源部に復路を通して熱源水を供給することができる。そして、熱源水を搬送するための搬送能力の全てを、1つのポンプにて負担するのではなく、熱源側ポンプと熱利用側ポンプとで分担できるので、熱源側ポンプ及び熱利用側ポンプの搬送能力を極力小さくできる。
【0012】
本発明の第3特徴構成は、前記熱源側ポンプの揚程は、前記復路から前記熱源部に熱源水を引き込んで、その熱源水を前記熱源部から前記往路における前記熱源部との接続箇所に供給する揚程に対応して設定され、前記熱利用側ポンプの揚程は、前記往路における前記熱源部との接続箇所から前記往路を通して前記熱利用部に熱源水を引き込んで、その熱源水を前記熱利用部から前記復路に供給する揚程に対応して設定されている点にある。
【0013】
本構成によれば、往路における熱源部との接続箇所から往路を通して熱利用部に熱源水を引き込むだけの揚程(搬送能力)を熱利用側ポンプに負担させているので、熱源側ポンプの揚程を小さくできる。よって、熱源部を構成する際のコストの低減を図ることができるとともに、熱源部をコンパクトに構成でき、設置スペース等の面でも有利なものとなる。
【0014】
本発明の第4特徴構成は、複数の前記熱利用部における合計熱負荷、及び、前記熱源部と前記熱利用部との間における熱源水の搬送距離の少なくとも一方に応じて、前記複数の熱源部の運転を制御する運転制御部が備えられている点にある。
【0015】
本構成によれば、運転制御部は、複数の熱利用部における合計熱負荷に応じて、例えば、どの熱源部を運転させるか、どのような出力にて熱源部を運転させるか等、複数の熱源部の夫々の運転を制御できるので、複数の熱利用部における熱負荷を賄いながら、複数の熱源部を効率よい状態で運転できる。
【0016】
また、運転制御部が熱源部と熱利用部との間における熱源水の搬送距離に応じて複数の熱源部の運転を制御する場合には、例えば、熱源水の搬送距離が短い熱源部を優先して運転させることができる。よって、熱源水の搬送距離を短くできるので、搬送能力を抑えてポンプを運転させることができ、消費エネルギーの低減を図るとともに、熱ロスの低減をも図ることができ、省エネルギー性の向上を図ることができる。
【0017】
本発明の第5特徴構成は、前記熱利用部として、複数の熱負荷部が並列状態で備えられ、前記複数の熱負荷部における熱負荷に応じて、前記熱利用部側に備えられた熱利用側ポンプの出力を調整して流量制御する流量制御部が備えられている点にある。
【0018】
本構成によれば、流量制御部が、複数の熱負荷部における熱負荷に応じて、熱利用側ポンプの出力を調整して流量制御することで、熱負荷が変動してもその変動後の熱負荷を賄うのに見合った熱利用側ポンプの出力に調整することができ、無駄に熱利用側ポンプの出力を増大させることなく、複数の熱負荷部に熱源水を適切に供給して、熱負荷の変動に対して適切に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る熱利用システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この熱利用システムは、
図1及び
図2に示すように、複数の熱利用部4と、複数の熱源部3と、複数の熱利用部4及び複数の熱源部3に接続された環状の往路1と、複数の熱利用部4及び複数の熱源部3に接続された環状の復路2とを備えている。ちなみに、
図1及び
図2は、いずれも熱利用システムの概略構成を示す図であり、運転状態の熱源部3及び熱利用部4において運転状態の熱負荷部41を太線にて示しており、
図1と
図2とでは、運転状態の熱利用部4及び熱源部3が異なるだけである。
【0021】
往路1には、熱源部3と熱源部3との間に1つ又は複数の熱利用部4が位置する状態で複数の熱源部3及び複数の熱利用部4が接続されている。復路2にも、熱源部3と熱源部との間に1つ又は複数の熱利用部4が位置する状態で複数の熱源部3及び複数の熱利用部4が接続されている。
図1及び
図2に示すものでは、往路1及び復路2において、熱源部3と熱源部との間に1つの熱利用部4が位置する場合を例示している。
【0022】
熱利用部4には、複数の熱負荷部41が並列状態で備えられている。熱負荷部41は、例えば、建物に設置される空調装置にて構成されている。そして、熱負荷部41は、往路1からの熱源水を温熱源として熱利用する暖房運転と、往路1からの熱源水を冷熱源として熱利用する冷房運転とを実行可能に構成されている。例えば、1年間を通して冷房要求がある場合には、基本的には、冷房要求に応じて熱負荷部41が冷房運転を行うようにしておき、冬期の立ち上がり時等、暖房要求のみが生じる特別な期間だけ、暖房要求に応じて熱負荷部41が暖房運転を行うことができる。
【0023】
熱利用部4には、往路1と複数の熱負荷部41とを接続する熱利用側往路接続路42と、復路2と複数の熱負荷部41とを接続する熱利用側復路接続路43とが備えられている。熱利用側往路接続路42は、その途中部位から分岐する複数の分岐路の夫々が複数の熱負荷部41の夫々に接続され、往路1からの熱源水を複数の熱負荷部41の夫々に供給自在に構成されている。熱利用側復路接続路43は、複数の熱負荷部41の夫々に接続された複数の分岐路の夫々が合流されて復路2に接続され、複数の熱負荷部41の夫々からの熱源水を復路2に供給自在に構成されている。
【0024】
熱利用側往路接続路42には、熱源水の流通方向で、熱利用側第1開閉弁45、熱利用側ポンプ44、熱利用側第2開閉弁46の順に備えられ、熱利用側往路接続路42における複数の分岐路の夫々には、熱利用側第3開閉弁47が備えられている。熱利用側復路接続路43における複数の分岐路の夫々には、熱利用側第4開閉弁48が備えられている。熱利用側第3開閉弁47、及び、熱利用側第4開閉弁48は、複数の熱負荷部41の夫々に対応して備えられている。これにより、複数の熱利用側第3開閉弁47の夫々、及び、複数の熱利用側第4開閉弁48の夫々を開閉制御することで、複数の熱負荷部41の夫々に各別に熱源水を供給自在に構成されている。
【0025】
熱源部3側には、熱源部3と復路2とを接続する熱源側復路接続路31と、熱源部3と往路1とを接続する熱源側往路接続路32とが備えられ、熱源部3には、熱源側ポンプ33が備えられている。熱源側復路接続路31には、熱源側第1開閉弁34が備えられ、熱源側往路接続路32には、熱源側第2開閉弁35が備えられている。
【0026】
熱源部3は、熱源側復路接続路31にて復路2から供給される熱源水を加熱して熱源側往路接続路32にて往路1に供給する加熱運転と、熱源側復路接続路31にて復路2から供給される熱源水を冷却して熱源側往路接続路32にて往路1に供給する冷却運転とを実行可能に構成されている。そして、冷房要求に応じて熱負荷部41が冷房運転を行っている場合には、熱源部3が熱源水を低温側設定温度に冷却する冷却運転を行い、暖房要求に応じて熱負荷部41が暖房運転を行っている場合には、熱源部3が熱源水を高温側設定温度に加熱する加熱運転を行う。
【0027】
往路1は、熱源側ポンプ33及び熱利用側ポンプ44の作動により、熱源水を双方向に流通可能として熱源部3から熱利用部4に熱源水を流通自在に構成されている。復路2も、熱源側ポンプ33及び熱利用側ポンプ44の作動により、熱源水を双方向に流通可能として熱源部3から熱利用部4に熱源水を流通自在に構成されている。往路1及び復路2には、ポンプや逆止弁等が備えられておらず、熱源側ポンプ33及び熱利用側ポンプ44の作動のみにより、往路1及び復路2において熱源水が双方向に流通するように構成されている。
【0028】
これにより、複数の熱源部3から複数の熱利用部4に往路1を通して熱源水を供給する場合に、往路1における一部部位では熱源水が一方向に通流されるのが許容されるのと同時に、往路1における別の一部部位では熱源水が一方向とは反対方向に通流されるのが許容されている。また、複数の熱利用部4から複数の熱源部3に復路2を通して熱源水を供給する場合にも、復路2における一部部位では熱源水が一方向に通流されるのが許容されるのと同時に、復路2における別の一部部位では熱源水が一方向とは反対方向に通流されるのが許容されている。よって、熱源部3からの熱源水は、往路1において最短ルートで熱利用部4に供給されるとともに、熱利用部4からの熱源水も、復路2において最短ルートで熱源部3に供給されることになり、熱源水の搬送距離を短くできる。その結果、熱源側ポンプ33及び熱利用側ポンプ44の搬送能力(揚程)を小さくでき、コストの低減を図ることができる。
【0029】
例えば、往路1において一方向の一系統のみにて熱源水を流通させるものでは、熱利用部4に供給する熱源水の全量をその一系統にて流通させなければならず、一系統当たりの熱源水の搬送流量が大きくなる。それに対して、往路1において一方向の一系統だけでなく、一方向とは反対方向の別の系統にも熱源水が流通するので、2つの系統にて熱源水が流通して、熱利用部4に熱源水を供給できる。よって、一系統当たりの熱源水の搬送流量を小さくできるので、往路1の配管サイズを小さくして、コストの低減を図ることができる。そして、往路1だけでなく、復路2においても、同様に、一系統当たりの熱源水の搬送流量を小さくして、配管サイズを小さくし、コストの低減を図ることができる。
【0030】
熱源側ポンプ33及び熱利用側ポンプ44の作動により、複数の熱利用部4に熱源水を供給できるように、複数の熱源側ポンプ33と複数の熱利用側ポンプ44との搬送能力が設定されている。つまり、熱源水を搬送するための搬送能力を、複数の熱源側ポンプ33と複数の熱利用側ポンプ44とで分担するように設定されている。
【0031】
熱源側ポンプ33の搬送能力(揚程)は、復路2から熱源部3に熱源水を引き込んで、その熱源部3から熱源側往路接続路32を通して往路1において熱源側往路接続路32との接続箇所に熱源水を供給できるだけの搬送能力に設定されている。それに対して、熱利用側ポンプ44の搬送能力(揚程)は、熱源側往路接続路32と往路1との接続箇所から往路1、熱利用側往路接続路42の順に通して複数の熱負荷部41の夫々に供給し、複数の熱負荷部41の夫々から熱利用側復路接続路43を通して復路2に供給できるだけの搬送能力に設定されている。
【0032】
熱源部3から熱負荷部41に熱源水を供給する場合には、熱源部3から熱源側往路接続路32を通して往路1に至るまで熱源水を搬送する分を、熱源側ポンプ33が負担し、往路1において熱源側往路接続路32との接続箇所から往路1を通して熱利用側往路接続路42に至り、その熱利用側往路接続路42を通して熱負荷部41に至るまで熱源水を搬送する分を、熱利用側ポンプ44が負担している。
【0033】
また、熱負荷部41から熱源部3に熱源水を供給する場合には、熱負荷部41から熱利用側復路接続路43を通して復路2に至り、その復路2を通して熱源側復路接続路31との接続箇所に至るまで熱源水を搬送する分を、熱利用側ポンプ44が負担し、復路2において熱源側復路接続路31との接続箇所から熱源側復路接続路31を通して熱源部3に至るまで熱源水を搬送する分を、熱源側ポンプ33が負担している。
【0034】
これにより、熱源水を搬送するための搬送能力を、熱源側ポンプ33と熱利用側ポンプ44とで適切に分担しながら、熱源側ポンプ33の搬送能力(揚程)を小さくできる。
【0035】
ここで、熱源水を搬送するための搬送能力を、熱源側ポンプ33と熱利用側ポンプ44とでどのように分担するかは適宜変更が可能であり、上述の分担方法は一例である。
【0036】
例えば、熱負荷部41から熱源部3に熱源水を供給する場合に、熱負荷部41から熱利用側復路接続路43を通して復路2に至るまで熱源水を搬送する分を、熱利用側ポンプ44が負担するように搬送能力を設定することができる。この場合、復路2において熱利用側復路接続路43との接続箇所から復路2を通して熱源側復路接続路31に至り、その熱源側復路接続路31を通して熱源部3に至るまで熱源水を搬送する分を、熱源側ポンプ33が負担するように搬送能力を設定する。このように設定することで、熱負荷部41から熱源部3に熱源水を供給するための搬送能力については、熱源側ポンプ33よりも熱利用側ポンプ44の方を小さくできる。
【0037】
また、熱源部3から熱負荷部41に熱源水を供給するための搬送能力についても、熱源側ポンプ33と熱利用側ポンプ44とでどのように負担するかを変更設定することもできる。
【0038】
熱利用システムには、複数の熱利用部4における合計熱負荷に応じて、複数の熱源部3の運転を制御する運転制御部H1が備えられている。また、熱利用部4側には、複数の熱負荷部41における熱負荷に応じて、熱利用部4側に備えられた熱利用側ポンプ44の出力を調整して流量制御する流量制御部H2が備えられている。
【0039】
流量制御部H2は、例えば、複数の熱利用部4の夫々に対応して複数備えることができるが、
図1及び
図2では、1つだけ図示している。流量制御部H2と運転制御部H1との間で各種の情報を通信自在に構成されている。流量制御部H2は、複数の熱負荷部41の運転状況を管理しており、複数の熱負荷部41における熱負荷の大きさを把握している。運転制御部H1は、流量制御部H2との間での通信により複数の熱利用部4の夫々における熱負荷を取得しており、その熱負荷を加算することで、複数の熱利用部4における合計熱負荷を把握している。
【0040】
以下、熱利用システムの運転について説明する。
図1及び
図2において、冷房要求に応じて熱負荷部41が冷房運転している場合について説明する。
図1と
図2とでは、運転状態である熱負荷部41の数が異なっている。
【0041】
図1では、複数の熱利用部4における全ての熱負荷部41が冷房運転状態にあり、複数の熱利用部4における合計熱負荷が最大の熱負荷となっている場合を示している。全ての熱負荷部41における熱負荷を賄うために、運転制御部H1が複数の熱源部3a,3bの全てを冷却運転させるとともに、流量制御部H2が熱利用側ポンプ44の出力を調整して熱利用側往路接続路42及び熱利用側復路接続路43における熱源水の流量を調整している。
【0042】
複数の熱源部3a,3bの夫々では、熱源側第1開閉弁34及び熱源側第2開閉弁35を開状態に切り換え、熱源側ポンプ33の作動により、熱源側復路接続路31にて復路2から引き込んだ熱源水を冷却し、その冷却後の熱源水を熱源側往路接続路32にて往路1に供給している。
【0043】
複数の熱利用部4の夫々では、熱利用側第1開閉弁45及び熱利用側第2開閉弁46を開状態に切り換えるとともに、全ての熱利用側第3開閉弁47及び全ての熱利用側第4開閉弁48を開状態に切り換え、冷房運転状態である全ての熱負荷部41に対して熱源水を流通可能としている。そして、流量制御部H2は、熱利用側往路接続路42及び熱利用側復路接続路43における熱源水の流量が冷房運転状態である全ての熱負荷部41に熱源水を供給するための流量となるように、熱利用側ポンプ44の出力を調整して流量制御している。
【0044】
この場合には、複数の熱源部3a,3bの夫々からの熱源水が、熱源側往路接続路32により往路1に供給され、往路1を双方向に流通可能な状態で往路1において熱利用側往路接続路42との接続箇所まで流通し、熱利用側往路接続路42により複数の熱利用部4の夫々に供給される。そして、複数の熱利用部4の夫々において、冷房運転状態である全ての熱負荷部41に熱源水が供給される。熱負荷部41にて熱利用された利用後の熱源水は、熱利用側復路接続路43により復路2に供給され、復路2を双方向に流通可能な状態で復路2において熱源側復路接続路31との接続箇所まで流通し、熱源側復路接続路31により複数の熱源部3a,3bの夫々に供給される。
【0045】
図2では、複数の熱利用部4における一部の熱負荷部41(図中下方側に位置する2つの熱負荷部41)だけが冷房運転状態にある場合を示している。この一部の熱負荷部41における熱負荷を賄うために、運転制御部H1が複数の熱源部3a,3bの一部を冷却運転させるとともに、流量制御部H2が熱利用側ポンプ44の出力を調整して熱利用側往路接続路42及び熱利用側復路接続路43における熱源水の流量を調整している。
【0046】
図2では、運転制御部H1が、熱源部3aを運転停止させたままとし、熱源部3bのみを冷却運転させている。この冷却運転を行う熱源部3bの動作は、
図1における熱源部3bの動作と同様である。
【0047】
複数の熱利用部4の夫々では、熱利用側第1開閉弁45及び熱利用側第2開閉弁46を開状態に切り換えるとともに、冷房運転状態の熱負荷部41(図中下方側に位置する2つの熱負荷部41)に対応する熱利用側第3開閉弁47及び熱利用側第4開閉弁48のみを開状態に切り換え、冷房運転状態の熱負荷部41のみに対して熱源水を流通可能としている。そして、流量制御部H2は、熱利用側往路接続路42及び熱利用側復路接続路43における熱源水の流量が冷房運転状態の熱負荷部41に熱源水を供給するための流量となるように、熱利用側ポンプ44の出力を調整して流量制御している。
【0048】
この場合には、熱源部3bのみから熱源水が供給され、その熱源水が、熱源側往路接続路32により往路1に供給され、往路1を双方向に流通可能な状態で往路1において熱利用側往路接続路42との接続箇所まで流通し、熱利用側往路接続路42により複数の熱利用部4の夫々に供給される。そして、複数の熱利用部4の夫々において、冷房運転状態である熱負荷部41のみに熱源水が供給される。熱負荷部41にて熱利用された利用後の熱源水は、熱利用側復路接続路43により復路2に供給され、復路2を双方向に流通可能な状態で復路2において熱源側復路接続路31との接続箇所まで流通し、熱源側復路接続路31により熱源部3bのみに供給される。
【0049】
ちなみに、暖房要求に応じて熱負荷部41が暖房運転する場合には、冷房要求に応じて熱負荷部41が冷房運転する場合に対して、熱負荷部41が暖房運転を行い且つ熱源部3が加熱運転を行う点だけが異なり、熱源水の流通形態等は同様であるので、説明は省略する。
【0050】
このようにして、運転制御部H1は、複数の熱利用部4における合計熱負荷が大きくなるほど(運転状態となる熱負荷部41の数が多くなるほど)、運転状態とする熱源部3の数を増加させる形態で、複数の熱源部3の運転を制御している。また、流量制御部H2は、複数の熱負荷部41における熱負荷が大きくなるほど(運転状態となる熱負荷部41の数が多くなるほど)、熱利用側往路接続路42及び熱利用側復路接続路43における熱源水の流量を増加させる形態で、熱利用側ポンプ44の出力を調整して流量制御する。
【0051】
そして、運転制御部H1は、システム全体の効率を考慮して、運転状態とする熱源部3の出力を調整することもできる。熱源部3の効率と出力との関係は、例えば、出力が大きくなるほど効率が上昇し、出力が70%付近で効率が最大となり、100%出力に近づくにつれて効率が下降する。よって、運転状態の熱源部3を100%出力とすると、システム全体の効率が低下する場合がある。そこで、熱源部3を運転状態とする場合、運転制御部H1が、システム全体の効率が高くなるように、運転状態とする熱源部3の出力を調整している。そして、熱源部3では、熱源側ポンプ33の出力を調整して流量制御を行うことで、熱源部3の出力が調整される。
【0052】
ここで、熱源部3における熱源側ポンプ33は、可変流量のポンプに限らず、定流量のポンプにて構成することもできる。この場合には、例えば、
図1中点線で示すように、熱源側復路接続路31と熱源側往路接続路32とを接続して熱源部3をバイパスする第1バイパス路36と、その第1バイパス路36における流量を制御する第1流量制御弁37とを備える。熱源部3に供給される熱源水の流量及び熱源部3から熱利用部4側に供給される熱源水の流量を第1バイパス路36及び第1流量制御弁37にて調整できる。これにより、熱源部3に供給する熱源水の流量(熱源側ポンプ33の定流量)と熱利用部4にて要求している流量(往路1及び復路2を流通する熱源水の流量)とが異なる場合でも、熱源部3から熱利用部4側に所望流量の熱源水を供給できながら、熱源部3に供給する熱源水の流量も所望流量にできる。例えば、熱利用部4にて要求している熱源水の流量が熱源部3に供給する熱源水の流量よりも小さい場合には、熱源側往路接続路32を流通する熱源水の一部を第1バイパス路36にて熱源側復路接続路31に供給し、その熱源側復路接続路31に供給する熱源水の流量を第1流量制御弁37にて調整する。よって、熱源部3に供給する熱源水の流量(熱源側ポンプ33の定流量)と熱利用部4にて要求している流量(往路1及び復路2を流通する熱源水の流量)とが異なる場合でも、熱源部3側での熱源水の流量バランスを適切なバランスに維持できる。
【0053】
また、第1バイパス路36及び第1流量制御弁37に代えて、
図1中点線で示すように、復路2における熱源側復路接続路31との接続箇所に対する近傍箇所と往路1における熱源側往路接続路32との接続箇所に対する近傍箇所とを接続して熱源部3をバイパスする第2バイパス路38と、その第2バイパス路38における流量を制御する第2流量制御弁39を備えることもできる。この場合も、例えば、熱利用部4にて要求している熱源水の流量が熱源部3に供給する熱源水の流量よりも小さい場合には、往路1を流通する熱源水の一部を第2バイパス路38にて復路2に供給し、その復路2に供給する熱源水の流量を第2流量制御弁39にて調整できる。よって、熱源部3に供給する熱源水の流量(熱源側ポンプ33の定流量)と熱利用部4にて要求している流量(往路1及び復路2を流通する熱源水の流量)とが異なる場合でも、熱源部3から熱利用部4側に所望流量の熱源水を供給でき、熱源部3側での熱源水の流量バランスを適切なバランスに維持できる。ちなみに、
図1では、熱源部3aに対して、バイパス路36、38及び流量制御弁37、39を備えた例を示したが、熱源部3bに対しても、同様に、バイパス路36、38及び流量制御弁37、39を備えることができる。
【0054】
例えば、熱源部3a,3bを運転状態とする場合、運転制御部H1は、複数の熱利用部4における合計熱負荷を賄いながら、熱源部3a及び熱源部3bの夫々における効率が設定効率よりも高くなるように、熱源部3a及び熱源部3bの両方の出力を調整することができる。例えば、複数の熱利用部4における合計熱負荷の大きさが1つの熱源部3の150%出力に相当する場合に、運転制御部H1が、熱源部3aを75%出力(又は70%出力)とし且つ熱源部3bを75%出力(又は80%出力)とすることができる。
【0055】
また、運転制御部H1は、運転状態とする熱源部3をどのような出力とするかは適宜変更が可能であり、例えば、複数の熱利用部4における合計熱負荷の大きさが1つの熱源部3の150%出力に相当する場合に、運転制御部H1が、熱源部3aを100%出力とし且つ熱源部3bを50%出力とすることもできる。このように、運転制御部H1は、熱源部3の効率だけでなく、その他の条件等も考慮して、システム全体として効率よく熱源部3を運転するために、運転状態とする熱源部3の出力を調整することができる。
【0056】
以上の如く、運転制御部H1は、複数の熱利用部4における合計熱負荷に応じて、複数の熱源部3の運転を制御しているが、運転制御部Hは、合計熱負荷に加えて、又は、合計熱負荷に代えて、熱源部3と熱利用部4との間における熱源水の搬送距離に応じて、複数の熱源部3の運転を制御することもできる。この場合、運転制御部H1は、複数の熱源部3のうち、どの熱源部3を運転状態とするかを選択する際に、熱源部3と熱利用部4との間における熱源水の搬送距離が短いものから優先して選択する。
【0057】
例えば、
図3では、熱源部3aと熱源部3bとの間に複数の熱利用部4が配設されている。そして、図中左側中央部に位置する熱利用部4において、複数の熱負荷部41が運転状態(図中太線で示した熱負荷部41)であると、運転制御部H1は、その熱利用部4に隣接して配設された熱源部3aが熱源水の搬送距離が一番短い熱源部3であるとして、その熱源部3aを優先して運転状態としている。
【0058】
運転制御部H1は、熱源部3及び熱利用部4の配設状況等から、複数の熱源部3の夫々と複数の熱利用部4の夫々との間における熱源水の搬送距離を管理しておき、どの熱利用部4において熱負荷が発生しているかによって、その熱利用部4に対して熱源水の搬送距離が短い熱源部3から優先して運転状態とする。
【0059】
上述の如く、運転制御部H1が複数の熱源部3の運転を制御することで、熱源部3から熱利用部4への熱源水の供給が行われているが、例えば、故障中又はメンテナンス作業中の熱源部3が存在していても、熱源部3から熱利用部4への熱源水の供給を行うことができる。
【0060】
運転制御部H1は、故障中又はメンテナンス作業中の熱源部3以外の熱源部3を運転状態とする対象範囲として、複数の熱利用部4における合計熱負荷や熱源部3と熱利用部4との間における熱源水の搬送距離に応じて、対象範囲の熱源部3の運転を制御する。これにより、故障中又はメンテナンス作業中の熱源部3が存在しても、熱源部3から熱利用部4に熱源水を供給して熱利用部4での熱利用を適切に行える。
【0061】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、
図1及び
図2において、熱源部3と熱源部3との間に1つの熱利用部4を配設した場合を例示し、
図3において、熱源部3と熱源部3との間に2つの熱利用部4を配設した場合を例示しているが、熱源部3と熱源部3との間のいくつの熱利用部4を配設するかは適宜変更が可能である。
【0062】
(2)上記実施形態では、
図1及び
図2において、往路1及び復路2の長さ方向で熱源部3と熱利用部4とが交互に位置するように配設しているが、例えば、2つの熱源部3を隣接して配設することもでき、熱源部3と熱利用部4とをどのように配設するか及びその配設する数は適宜変更が可能である。
【0063】
(3)上記実施形態では、複数の熱利用部4の夫々において、複数の熱負荷部41が並列状態で備えられているが、複数の熱利用部4の夫々において、熱負荷部41をどのような状態で備えるか、及び、熱負荷部41の数は適宜変更が可能である。