(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571525
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】滅菌可能な光重合体血清セパレータ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/26 20060101AFI20190826BHJP
B04B 5/02 20060101ALI20190826BHJP
A61L 2/08 20060101ALI20190826BHJP
B04B 15/00 20060101ALI20190826BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20190826BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20190826BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
C12M1/26
B04B5/02 A
A61L2/08 100
A61L2/08 108
B04B15/00
A61L2/10
G01N1/10 N
G01N33/48 J
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-539634(P2015-539634)
(86)(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公表番号】特表2016-503291(P2016-503291A)
(43)【公表日】2016年2月4日
(86)【国際出願番号】US2013064228
(87)【国際公開番号】WO2014066049
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年10月7日
(31)【優先権主張番号】13/656,926
(32)【優先日】2012年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591052398
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
(73)【特許権者】
【識別番号】511140390
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メリーランド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】エマソン,ジェイン,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】アール‐シェイクリー,モハンマド
【審査官】
濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−511727(JP,A)
【文献】
特開平06−003356(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/105253(WO,A1)
【文献】
特表2012−508578(JP,A)
【文献】
特表2011−503543(JP,A)
【文献】
特開平04−175656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータ組成物を含む滅菌可能なセパレータ管であって、
前記セパレータ組成物は、複数の重合性化合物と、ラジカル捕捉剤と、重合開始剤と、を含み、
前記ラジカル捕捉剤は、0.5mMから50mMまでの量で存在し、前記ラジカル捕捉剤の量は、前記重合開始剤による前記重合性化合物の光重合の開始を可能にすると同時に、8kGyから25kGyまでのラジカルを発生させる放射線に前記セパレータ管の少なくとも一部を曝露させる際に、前記重合性化合物の重合を防止するのに有効であるように選択され、
前記重合開始剤は、UVまたは可視光源による照射に前記セパレータ管の少なくとも一部を曝露させる際に、前記重合性化合物の光重合を介して固体の架橋された組成物を形成するのに有効な量で存在する、セパレータ管。
【請求項2】
前記光源は、紫外線を放射する光源である、請求項1に記載のセパレータ管。
【請求項3】
前記ラジカル捕捉剤は、前記光重合の開始の10分以内に前記固体の架橋された組成物が形成されることを可能にするのに有効な量で存在する、請求項1に記載のセパレータ管。
【請求項4】
前記重合開始剤は、ラジカル光重合開始剤である、請求項1に記載のセパレータ管。
【請求項5】
前記ラジカル捕捉剤は、抗酸化剤、放射線防護剤、フリーラジカル抑制剤、フリーラジカルインターセプター、およびフリーラジカル捕捉剤からなる群から選択される、請求項1に記載のセパレータ管。
【請求項6】
前記複数の重合性化合物が、脂肪族ウレタンジアクリレートおよび脂肪族アクリレートの混合物を含む、請求項1に記載のセパレータ管。
【請求項7】
セパレータ管内において試料の相を分離するための方法であって、前記方法は、
0.5mMから50mMまでのラジカル捕捉剤を含み、およびラジカル重合に好適である、セパレータ組成物を含有し、それにより固体の架橋された組成物を形成するセパレータ管を提供するステップと、
8kGyから25kGyまでの電離放射線で前記セパレータ管を照射するステップであって、それにより滅菌に有効な量のラジカルを発生させるとともに、前記セパレータ管を照射するステップに起因する重合を防止するために、少なくとも一部の前記ラジカルをラジカル捕捉剤で捕捉するステップと、
前記セパレータ管内で試料を前記セパレータ組成物と混合するステップと、
前記セパレータ管を遠心分離し、それにより前記試料の高密度相から前記試料の低密度相を、前記セパレータ組成物の少なくとも一部が前記低密度相と前記高密度相との間に局在するように分離するステップと、
それによって固体架橋組成物を前記低密度相と前記高密度相の間に形成するために、前記セパレータ組成物のラジカル重合を開始するために、前記セパレータ管の少なくとも一部をUV光および可視光のうちの少なくとも一つで照射して、それにより前記低密度相と前記高密度相との間に固体の架橋された組成物を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記セパレータ管の照射は、遠心分離機内で起こる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ラジカル捕捉剤は、抗酸化剤、放射線防護剤、フリーラジカル抑制剤、フリーラジカルインターセプター、およびフリーラジカル捕捉剤からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記固体の架橋された組成物の形成は、前記照射するステップの10分以内に完了する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記照射するステップは、少なくとも15kGyの線量のガンマ線照射またはe−ビーム照射を用いて実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ラジカル捕捉剤は、2mMから8mMまでの濃度で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記セパレータ組成物は、脂肪族ウレタンジアクリレートおよび脂肪族アクリレートの混合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
セパレータ管内において使用するためのセパレータ組成物を調製する方法であって、前記方法は、
複数の重合性化合物、ラジカル捕捉剤、およびラジカル光重合開始剤を混ぜ合わせて、0.5mMから50mMまでの前記ラジカル捕捉剤を含むベース混合物を形成するステップと、
前記ベース混合物へ密度充填剤を混ぜ合わせて密度の調整されたセパレータ組成物を形成すること、および前記密度の調整されたセパレータ組成物をセパレータ管へと充填するステップと、
前記密度の調整されたセパレータ組成物および前記管を、ラジカルを発生させるエネルギー源からの8kGyから25kGyまでの放射線で照射して、前記密度の調整されたセパレータ組成物および前記管を滅菌するステップと、
(i)前記ベース混合物を所定の期間にわたってインキュベートすること、(ii)前記ベース混合物をさらに混合すること、および(iii)前記ベース混合物に前記密度充填剤を混ぜ合わせるステップの前に前記ベース混合物を清澄化すること、からなる群から選択される少なくとも1つのステップと、
を含み、
前記ラジカル捕捉剤は、(a)前記照射するステップによって発生するラジカルを捕捉して、それにより前記重合性化合物の重合を防止するのに有効な量で、および(b)前記ラジカル光重合開始剤を活性化させた際に、前記重合性化合物の重合を可能にするのに有効な量で存在する、方法。
【請求項15】
前記ラジカル捕捉剤は、前記ラジカル光重合開始剤を活性化させた際に、10分以内に前記重合性化合物の重合を可能にするのに有効な量で存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記照射するステップの後に、40℃と90℃との間の温度で前記密度の調整されたセパレータ組成物をインキュベートするステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記照射するステップは、ガンマ線またはe−ビーム放射線を使用して実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記ラジカル光重合開始剤の活性化は、UV光源およびVIS光源のうちの少なくとも1つを用いた前記ラジカル光重合開始剤の照射を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年10月22日に出願された、米国特許出願第13/656926号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明の分野は流体分離であり、特に分離された相と相の間に障壁を形成する組成物を使用する血清分離に関する。
【背景技術】
【0003】
血液試料の分析は、アッセイ前に全血を血清あるいは血漿画分と細胞含有画分とに分離することを必要とする場合が多い。これは一般的に、血液採取管または血液分離管内に血液試料を採取することによって実施される。理想的には、このような血液採取管または血液分離管は、試料の微生物汚染を防ぎ、長期保存を簡便化するために滅菌可能であるべきである。血液採取/分離管は大量に生産され、(採血を容易にするため)内部圧力が減圧された密封容器として提供されるため、このような滅菌は通常、ガンマ線照射またはe−ビーム照射などの電離放射線、あるいは密閉容器の中身の滅菌を可能にするその他の方法、を用いて実施される。試料採取の後、血液採取管または血液分離管は遠心分離機に移され、そこで比較的高速で回転させられる。この向心力の印加によって管内に密度勾配が生じて、血液試料の重い成分(例えば、血液細胞)が濃密相または濃密画分として管の底部に集まり、一方で軽い成分(例えば、血清または血漿)は軽い相または軽い画分として上部に向かって集まる。遠心分離機から取り出した後、分離管は分析器に移されるか、あるいは保管器に置かれてよい。
【0004】
残念ながら、血液がこのように一度分離されても、これらの相または画分は、拡散、撹拌、試料抽出中または保管器からの取り出し中の撹乱、あるいはその他の望ましくない相互作用によって再混合し得る。保管時の、密度の高い細胞含有画分内での細胞の破裂によって状況は悪化する。これによって画分間での汚染が生じる可能性があり、これはアッセイのパフォーマンスに悪影響を与え得る。従って理想的には、分析の前または最中に汚染が起こらないことを確実にするために、分離後は、血液画分が互いに隔離されたままであるべきである。
【0005】
全血画分を分離するシステムは一般に、全血の細胞含有画分と血清/血漿画分の中間の密度を有するセパレータ物質またはセパレータデバイスを含み、この中間の密度により、遠心分離中にセパレータ物質またはセパレータデバイスが自然にこれらの画分の間に局在できる。これによって、セパレータ物質またはセパレータデバイスは、拡散、撹拌およびその他の撹乱による混合に対する物理的障壁としてはたらくことが可能となる。好適な密度は一般に、1.01g/cm
3〜1.09g/cm
3である。全血がセパレータ物質を含有する採取管またはセパレータ管に加えられ、管が遠心分離されると、セパレータ物質は画分間の境界面に移動し、それにより、二つの画分を互いに分離させる。全血の分画においてセパレータ物質として流動性ゲルを利用する例示的な採取管を、米国特許第4,946,601号(Fiehler)に見出すことができる。全血からの画分の調製における流動性のセパレータ物質の別の例を、米国特許第6,248,844号および米国特許第6,361,700号(Gatesら)に見出すことができる。これらの特許において、セパレータ物質は、硬化して所望の粘度を達成するポリエステルである。本明細書に記載されるこれらの、およびその他の全ての、外部の資料は、その全体が参照により組み込まれる。組み込まれた参考文献内の用語の定義または使用が、本明細書において提供される当該用語の定義と矛盾するまたは反対である場合には、本明細書において提供される当該用語の定義が適用され、参考文献内の当該用語の定義は適用されない。
【0006】
流動性物質を提供することにより全血の画分を分離することが可能となるが、流動性物質は複数の欠点を有する。流動性物質は、遠心分離が完了した後でも流動性を残したままである。この物理的な不安定性の結果として、血液採取管を好適な状態のまま、撹拌から保護し続けるために適切な処置をとらない限り、試料の画分間での汚染というリスクが残る。これらの欠点を克服するために、十分な硬度の障壁を提供するのに十分なほどの高さの粘度で配合されるまたは構成されるゲル系の分離物質を使用することが可能であるが、このような分離物質はもはや、全血に対して適度な流動性を有さないことがあり、従って、許容されないほど長い遠心分離の時間を必要とする可能性がある。遠心分離の時間が短いことは、臨床検査室において大量処理を維持するために重要であり、血液分析の結果が迅速に必要とされる、生きるか死ぬかの状況において決定的に重要である可能性がある。
【0007】
この問題を解決するための一手法は、血液採取管内のセパレータ物質として揺変性ゲルを利用することである。揺変性ゲルは、それらに印加される剪断応力に応じて変化する粘度を有する。例えば、揺変性ゲルは、遠心分離によって印加される剪断応力下にある場合、比較的容易に流動することが可能となる低粘度を有してよいが、遠心分離後の静止時には、流動しにくい高粘度を有してよい。例えば、米国特許第4,818,418号(Saunders)では、血液採取管における揺変性ゲルの使用が議論される。しかし、揺変性ゲルに伴う問題点は、血液画分間に局在する比較的粘性のゲルが、少なくともいくらかは流動性を残しており、十分な硬度の分離障壁を形成しないことである。結果として、ピペットまたは類似のデバイスで試料が管から抽出される場合に、ピペットまたは類似のデバイスがこのような分離障壁に接触すると、このような分離物質がピペットを汚染、汚損、または塞ぐ可能性がある。さらに、分離物質の欠片が上相に浮き、累積的に分析器のプローブを塞ぐことも珍しくない。大部分の分析器は深度センサを有するが、このようなセンサは、セパレータ物質が浮くという問題を解決せず、また、このようなセンサの使用は、セパレータ物質の上のクリアランスを必要とするため血漿を無駄にもする。
【0008】
一部の医療装置製造業者による代替の手法は、可動性の、固体の障壁物質または障壁デバイスを血液採取管内に配置することである。このような固体物質の例には、特定の密度の重合体の球または粒が集合して障壁層を形成する、米国特許第3,647,070号(Adler)に見出される中間密度の重合体が包含される。同様に、米国特許第5,266,199号(Tsukagoshiら)では、細胞含有相からの血清の分離を制御する弾性管およびボールバルブアセンブリ(ball valve assembly)が記載される。しかし、このような物理的な障壁は、必然的に個々の成分間に空隙を含み、従って、分離された血液画分間に部分的な封を提供するに過ぎない。さらに、可動性の障壁についてのさらなる欠点は、このような容器は適切に充填されなければならず、画分の相対的な比率において差異を許してしまうことである。
【0009】
血液採取/セパレータ管において画分間に固体の障壁を提供するためのさらに別の手法が、米国特許第7,673,758号、米国特許第7,674,388号、米国特許第7,780,861号、米国特許第8,151,996号、および米国特許第8,206,638号(Emerson)に開示される。これらは、血液採取管または血液セパレータ管内における、遠心分離中に低粘度を有する揺変性ゲルの使用を開示し、その粘度により、揺変性ゲルが遠心分離中に比較的自由に流動して、高密度の細胞含有画分と比較的低密度の血清/血漿画分との間に局在することが可能となる。揺変性ゲルは、化学的架橋を形成可能な反応基を有する重合体と、重合開始剤と、を含む。遠心分離後の開始剤の活性化により、重合体の反応基は、ゲル内において重合体分子を架橋する共有結合を形成する。この架橋が、細胞含有画分と血清/血漿血液画分との間に固体の不浸透性重合体障壁を形成する。しかし、このような組成物を含有する血液採取管または血液セパレータ管を適切に滅菌するという問題については、対処されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
全血を分離するためのこれらの、およびその他の、解決策は、短い遠心分離時間を支持する一方で、全血の分離された画分の両方が、微生物の増殖ならびに試料画分/相間の望ましくない相互作用による汚染から効果的に保護されることを保証するために必要な特徴を欠いている。従って、遠心分離後に分離障壁が凝固され、および、それらを組み込むデバイスの効果的かつ経済的な滅菌を可能にする、液体分離技術が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の内容は、相間の汚染を低減するために、安定な実質的に固体の分離障壁を試料の相間に提供可能な装置、システムおよび方法を提供する。分離障壁は、滅菌可能なセパレータ管内で形成される。本発明の概念の一実施形態において、これは、セパレータ管内でセパレータ組成物を提供することによって達成されてよく、ここで、セパレータ組成物は1種以上の重合性化合物と、ラジカル捕捉剤と、重合開始剤(ラジカル光重合開始剤など)と、を含む。ラジカル捕捉剤の組成および濃度は、セパレータ管を滅菌するために十分な線量の電離放射線へのセパレータ管(またはその一部)の曝露が、重合性化合物の重合を生じさせないような組成および濃度である。好適なラジカル捕捉剤は、抗酸化剤、放射線防護剤、フリーラジカル抑制剤、安定化フリーラジカル抑制剤、フリーラジカルインターセプター(free radical interceptors)、およびフリーラジカル捕捉剤を包含してよい。驚くべきことに、電離放射線での滅菌処置の後でも、UVおよび/または可視光などの好適なエネルギー源により開始されるラジカル重合によって、セパレータ管(またはその一部)の照射の際に重合性化合物(脂肪族ウレタンジアクリレートおよび/または脂肪族アクリレートなど)から実質的に固体の架橋された組成物が依然として形成され得る。この架橋された組成物は、セパレータ管内で不浸透性分離障壁としてはたらくことができる。本発明の概念の一部の実施形態において、この分離障壁は、好適なエネルギー源を用いたセパレータ管(またはその一部)の照射の開始から約10分以内に実質的に完成する。
【0012】
本発明の概念の別の実施形態は、セパレータ管内で試料の相を分離するための方法であってよい。このような方法において、実質的に架橋された組成物を形成するためにラジカル重合に供されるセパレータ組成物を含むセパレータ管が提供される。このセパレータ管は、電離放射線を照射されてよく、それによって、例えば約15kGyまたはそれ以上の線量でガンマ線照射またはe−ビーム照射に曝露されることによって、セパレータ管を効果的に滅菌するのに十分な量のフリーラジカルが発生する。これらのフリーラジカルの一部はフリーラジカル捕捉剤によって捕捉され、驚くべきことに、これによって、後続のラジカル重合を依然として許容しつつも、この滅菌照射の結果として重合が相当な程度にまで生じることを防止できる。この目的のための好適なフリーラジカル捕捉剤としては、抗酸化剤、放射線防護剤、フリーラジカル抑制剤、フリーラジカルインターセプター、フリーラジカル捕捉剤、および安定化フリーラジカル捕捉剤が包含される。このようなフリーラジカル捕捉剤は、電離放射線を用いた滅菌中の重合を防止するのに有効な濃度で、例えば約2mM〜約8mMで、存在する。滅菌後、試料をセパレータ管に加えて、セパレータ組成物と混合してよく、その後、セパレータ管を遠心分離して、試料を低密度相と高密度相とに分離する。この工程において、セパレータ組成物の密度は、セパレータ組成物がこれらの低密度試料相と高密度試料相との間に局在するように選択されてよい。その後の、例えばUVおよび/または可視光を用いた、試料管の照射は、セパレータ組成物の重合性化合物(脂肪族ウレタンジアクリレートおよび/または脂肪族アクリレートなど)のラジカル重合を開始して、試料の相間での有効な障壁としてはたらくことが可能な実質的に固体の架橋された組成物を形成するために用いられてよい。この架橋された組成物の形成は、UVおよび/または可視光の照射の約10分以内に実質的に完了する可能性がある。本発明の概念の一部の実施形態において、UVおよび/または可視光を用いたセパレータ管の照射は、遠心分離機内で起こってよい。
【0013】
本発明の概念のさらに別の実施形態において、セパレータ管内において使用するためのセパレータ組成物の密度を調整するために、密度充填剤(density filler)が利用されてよい。密度充填剤の組み込みは、1種以上の重合性化合物、ラジカル捕捉剤、およびラジカル光重合開始剤を混ぜ合わせて、ベース混合物(a base mixture)を形成することによって達成されてよい。その後、密度充填剤が、ベース混合物へと混ぜ合わされて、セパレータ管に充填されてよい、密度の調整されたセパレータ組成物を形成することができる。セパレータ管は、ラジカルを発生させるエネルギー源(例えば、ガンマ線またはe−ビーム放射線)に、この照射がセパレータ組成物およびセパレータ管を滅菌するのに十分な時間、曝露されてよい。このような実施形態において、ラジカル捕捉剤は、滅菌照射の際に重合性化合物の重合を防止するが、ラジカル光重合開始剤の活性化の際には重合性化合物の重合を許容するのに十分な量で存在する。本発明の概念の一部の実施形態において、重合性組成物の実質的な重合は、光重合開始剤の活性化の約10分以内か、それよりも短い時間以内に起こる。このような活性化は、UV光源および/または可視光源を用いた光重合開始剤の照射によって行われてよい。本発明の概念の他の実施形態において、所定の期間にわたるベース混合物のインキュベーション、ベース混合物のさらなる混合、および/または密度充填剤を混ぜ合わせる前のベース混合物の清澄化などの、さらなる処理工程が想定される。さらに、密度の調整されたセパレータ組成物は、照射後に、より高温(例えば約40℃〜90℃)でインキュベートされてよい。
【0014】
本発明の内容の様々な目的、特徴、態様および利点は、同様の数字が同様の構成要素を表す添付の図面ならびに、以下の好ましい実施形態の詳細な説明から、より明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】セパレータ管の滅菌、その後の試料の添加、相の分離、およびその後の、分離された相間での固体の分離障壁の形成を示す、本発明のデバイスの実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の内容は、相間の汚染を低減するために、安定な実質的に固体の分離障壁を試料の相間に提供することができる装置、システムおよび方法を提供する。分離障壁は滅菌可能なセパレータ管内で形成される。以下の説明がセパレータ管および/または血液採取管に対してなされているが、様々な代替の構成も好適であると考えられ、シリンジ、バイアル、ボトル、フラスコ、ビウレット、管、カラム、漏斗を含む様々な分離デバイス、または試料の分離に適した任意の他のタイプの試料収容デバイスまたは試料分離デバイスを、個別的または集合的に操作して、使用してよいことが留意されるべきである。試料収容デバイスまたは試料分離デバイスは、試料の収容に好適な壁を有し、本発明の概念の実施形態において利用されるエネルギー源によって放出されるエネルギーに対して、少なくとも部分的に透過性であるか、または透明であるべきであることが理解されるべきである。また、本出願全体を通して使用される場合、流体なる用語は、液体、気体、懸濁液、半固体、および/または他の流動性物質を、単独または組み合わせのいずれかで意味し得ることも認識されるべきである。
【0017】
開示されるデバイスおよび方法は、滅菌可能なセパレータ管内の試料(例えば、流体試料)の分離された相間に、固体の不浸透性障壁を提供することを含む多くの有利な技術的効果を提供し、それによって、微生物の増殖による汚染、ならびに拡散、セパレータ管の撹乱、凍結/融解等の結果としての相間での混合による汚染を防止することが理解されるべきである。さらに、このような非流動性の固体の不浸透性障壁は、それに接触するピペット装置を汚染しない。
【0018】
以下の記載により、本発明の内容の多くの例示的実施形態が提供される。各実施形態は本発明の要素の単一の組合せを表すが、本発明の内容は、開示される要素の可能な組み合わせを全て含むと考えられる。従って、一実施形態が要素A、B、およびCを含み、第二の実施形態が要素BおよびDを含む場合、本発明の内容は、たとえ明示的に開示されていない場合であっても、A、B、CまたはDの他の残りの組み合わせを含むとも考えられる。
【0019】
本発明の概念の一実施形態において、セパレータ管へ試料を加える際にセパレータ組成物が混合されて、その後、画分の分離時に試料の画分(または相)の間に局在してよいような、セパレータ組成物を含有する滅菌可能なセパレータ管を供給することによって、実質的に固体(例えば、ショア00硬度計で少なくとも1)の障壁が、分離された流体画分/相の間に提供されてよい。この分離の後、セパレータ組成物は、実質的に固体の障壁を形成するために処理されてよい。本発明の概念の一部の実施形態において、これは、セパレータ管内で流動性ゲルの形態のセパレータ組成物を提供することによって達成されてよい。このゲルの密度は、分離される流体相または流体画分の密度間の中間であるように選択される。例えば、分離される流体が血液の場合、ゲルの密度は、1.01〜1.09g/cm
3の範囲である可能性がある。文脈上、相反することが規定されない限り、本明細書に記載される全ての範囲は、その端点を包含するものとして解釈されるべきであり、制限のない範囲は商業的に実用的な値を含むと解釈されるべきである。同様に、値の全てのリストは、文脈上、相反することが規定されない限り、中間の値を包含するとみなされるべきである。本発明の概念の好ましい実施形態において、ゲルは約1.04g/cm
3の密度を有する。本発明の概念の一部の実施形態において、セパレータ組成物は揺変性ゲルである。
【0020】
本発明の概念のさらに予期される実施形態において、セパレータ組成物は、(分離された相または画分の間での汚染に対する実質的に固体の障壁を形成するための架橋を支持する)1種以上の重合性化合物と、一種以上のラジカル捕捉剤と、一種以上の重合開始剤と、を含んでよい。本発明の概念のこのような実施形態において、重合性化合物は、2つ以上(すなわち複数)の反応基を有してよく、その他が単一の反応基を有してよい。本発明の概念の好ましい実施形態において、セパレータ化合物は、2つ以上の反応基を有する重合性化合物と単一の反応基を有する重合性化合物とを含む。これは有利にも、重合の度合いに対する制御を可能にし、従って、生じる重合した材料の物理的特性および化学的特性の制御を可能にする。例えば、このような混合物において単一の反応基を有する重合性化合物の割合を増加させると、分離管の内壁などの周囲の材料への接着力が向上した、重合した材料の生成が可能となることがある。セパレータ管は、オリゴマーのウレタンアクリレートおよび/または脂肪族アクリレートを含むことが一般に好ましいが、重合性材料の正確な種類は本発明の内容に限定されないこと、および多くの代替の重合性材料および重合体も好適であることが留意されるべきである。実際、シリコンオイル、ポリアミド、オレフィン系重合体、ポリアクリレート、ポリエステルならびにその共重合体、ポリシラン、およびポリイソプレンを含む、血液分離に好適な全ての公知の重合体が、本発明における使用に適切であると見なされる。好適な重合性材料は、米国特許第7,673,758号、米国特許第7,674,388号、米国特許第7,780,861号、米国特許第7,971,730号、米国特許第8,151,996号、および米国特許第8,206,638号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。好ましい実施形態において、セパレータ組成物はEBECRYL230(商標)およびEBECRYL113(商標)(Cytec Industries, Woodland Park, NJ USA 07424)を含む。
【0021】
上述のように、分離組成物は1種以上の重合開始剤を含んでよい。このような重合開始剤は、制御可能な方法で、例えば好適なエネルギー源を適用して、セパレータ組成物の重合性化合物の重合を開始するために利用されてよい。本発明の概念の好ましい実施形態において、重合開始剤は光重合開始剤である。このような光重合開始剤は、UVおよび/または可視光に曝露されると、好適な重合性化合物の重合を支持するフリーラジカルを発生させるために活性化されてよい。例示的な光重合開始剤としては、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ジアルコキシ−アセトフェノン、α−ヒドロキシ−アルキルフェノン、α−アミノ−アルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、ベンゾアミン、チオキサントン、チオアミン、およびチタセノンが含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、ラジカル開始剤はADDITOL(商標)(Cytec Industries, Woodland Park, NJ USA. 07424)である。本発明の概念の一部の実施形態において、光重合開始剤の活性化は、UVおよびまたは可視光の好適な光源にエネルギーを与えることによって行われてよい。このような光源としては、蛍光灯、アーク灯、水銀蒸気光源、キセノン光源、LED、レーザー、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。本発明の概念の一部の実施形態において、光重合開始剤と共に使用するための好適なエネルギー源は、セパレータ管の保管、取扱い、および/または処理に使用される設備内に組み込まれてよい。例えば、好適な光源が、分離のために利用される遠心分離機内、試料を含有する1つ以上のセパレータ管の保管のために利用される冷却装置またはインキュベータ内、試料を含有する1つ以上のセパレータ管の保管のために利用されるラック内、および/または研究室管理システムおよび/または分析システムの輸送/処理ライン内、に組み込まれてよい。あるいは、好適な光源が、セパレータ管を手動で曝露させるために使用される携帯型のユニット内に組み込まれてよい。
【0022】
1種以上の重合性化合物および重合開始剤に加えて、本発明の概念の分離化合物は1種以上のラジカル捕捉剤を含んでよい。好適なラジカル捕捉剤の例としては、抗酸化剤、放射線防護剤、フリーラジカル抑制剤、安定化フリーラジカル抑制剤、フリーラジカルインターセプター、およびフリーラジカル捕捉剤が含まれる(ただし、これらに限定されない)。これらのラジカル捕捉剤は、ラジカル重合プロセスを直接妨げ得るため、ラジカル重合を意図する組成物におけるラジカル捕捉剤の使用は、直感に反している。驚くべきことに、発明者は、セパレータ組成物へのラジカル捕捉剤の組み込みが、重度の重合を誘導することなく、ラジカル重合されやすい重合性化合物を含むセパレータ組成物の、電離放射線またはラジカル発生放射線による滅菌を可能にし、同時に、フリーラジカルを発生させる光重合開始剤を用いた、このような重合性化合物のその後の架橋または重合を実質的に妨げないことを見出した。これは有利にも、ガンマ線照射およびe−ビーム照射などの公知であり十分に確立された技術による、このようなセパレータ組成物を含有する分離管の滅菌を可能にする。本発明の概念の好ましい実施形態においてフリーラジカル捕捉剤は、4−ヒドロキシ−TEMPO(TEMPOL)などのニトロキシド、および/またはフェノチアジンなどのチアジンを含む。このようなフリーラジカル捕捉剤は、ラジカルを発生させる光重合の開始による重合の開始を可能にすると同時に、ラジカルを発生させる放射線による滅菌を可能にする濃度で存在してよい。本発明の概念の一部の実施形態において、フリーラジカル捕捉剤は、約0.5mM〜約50mMの範囲の濃度で存在する。本発明の概念の他の実施形態において、フリーラジカル捕捉剤は、約1mM〜約20mMの範囲の濃度で存在する。本発明の概念のさらに他の実施形態において、フリーラジカル捕捉剤は、約2mM〜約8mMの範囲の濃度で存在する。
【0023】
上述のように、本発明の概念の実施形態は、分離化合物を含有し、かつ、電離放射線またはラジカルを発生させる放射線を使用して滅菌されてよい、分離管を含む。これは有利にも、大規模で効果的に適用され得る十分に確立された滅菌技術の使用を可能にする。使用される電離放射線は、ガンマ線源(
60Coまたは
137Csなど)由来、またはe−ビーム由来であってよい。本発明の概念の一部の実施形態において、電離放射線は、約8kGy〜約25kGyにて、滅菌目的で適用される。本発明の概念の好ましい実施形態において、電離放射線は、約15kGy以上にて、滅菌目的で適用される。
【0024】
本発明の概念の一実施形態が
図1に模式的に示される。セパレータ組成物105を含有する滅菌可能なセパレータ管100は、ラジカルを発生させるエネルギー源110に曝露され、ラジカルを発生させるエネルギー源110は、ラジカルを発生させるエネルギー115(ガンマ線またはe−ビーム放射線など)を滅菌可能なセパレータ管100に適用して、滅菌されたセパレータ組成物125を含有する滅菌されたセパレータ管120をもたらす。セパレータ組成物105および滅菌されたセパレータ組成物125は両方とも流動性である。試料130、例えば血液、を滅菌されたセパレータ管に加えて混合し、試料と滅菌されたセパレータ組成物の混合物135を形成する。試料の相を(例えば、遠心分離によって)分離した後、この混合物は、試料130に由来する低密度相140ならびに高密度相145、および、低密度相140と高密度相145との間に位置する滅菌されたセパレータ組成物150の相に分かれる。その後、好適なエネルギー源155(例えば、UV光源または可視光源)への曝露により、低密度相140と高密度相145との間で不浸透性障壁としてはたらく実質的に固体の架橋された組成物165を形成するためにセパレータ組成物内でラジカル重合を開始させるエネルギー160が提供される。驚くべきことに、ラジカルを発生させるエネルギー115への曝露後に、架橋されていないセパレータ組成物105が有意に重合していないにもかかわらず、ラジカル重合によってこのような障壁を形成することが可能である。セパレータ組成物の重合の後、セパレータ管は、分離した相間での汚染のリスクなしに取り扱われ得る。隣接相による汚染のリスクあるいは相を分離する障壁材料(図示せず)によるピペッター/プローブの汚染または汚損のリスクなしに、デカンテーション、あるいはピペッターまたは液体取扱い用プローブ(liquid handling probe)を用いたセパレータ管からの吸引によって、相を容易かつ安全に移すことができる。
【0025】
上述のように、(滅菌、試料の添加、および画分/相の分離の後の)好適なエネルギー源へのセパレータ組成物の曝露により重合が生じ、セパレータ組成物が硬化して実質的に固体の、架橋された組成物を形成する。好ましくは、セパレータ物質は、重合の際に、ショア00硬度計で少なくとも1まで硬化するように配合される。本発明の概念の好ましい実施形態において、セパレータ化合物は、さらにショアA硬度計で少なくとも10まで硬化する。本発明の概念のさらに他の実施形態において、セパレータ化合物はなおもさらにショアD硬度計で少なくとも10まで硬化する。試料の処理のワークフローを容易にするために、本発明の概念の一部の実施形態において、セパレータ組成物が硬化するための時間は約30分未満である。本発明の概念の他の実施形態において、セパレータ組成物が硬化するための時間は約15分未満である。本発明の概念の好ましい実施形態において、セパレータ組成物が硬化するための時間は約10分以下である。このセパレータ組成物の急速な硬化は有利にも、できるだけ早く決定的に重要な試料の試験を完了させることが必要とされる、医療現場における本発明の実施形態の使用を支持する。
【0026】
上述のように、分離された画分または相の間に局在するために、セパレータ化合物は、それらの中間の密度で配合されてよい。例えば、所望の初期密度(一般的に約1.01〜1.09)を達成するために、密度は、分子組成によって、ならびに適切な充填剤材料(例えば、シリカ、ラテックス、または他の不活性材料)の包含によって、調整されてよいことが企図される。例えば、本発明の概念のセパレータ化合物を配合するために、重合性重合体、ラジカル捕捉剤、および重合開始剤が、ベース混合物を形成するために混ぜ合わされてよい。このベース混合物は、充填剤材料を加える前に、ある期間にわたって保存またはインキュベートされてよい。その後、充填剤材料(例えば、シリカ)が、一つ以上の画分においてベース混合物に混ぜ合わされて、密度を調整されたセパレータ組成物を生成してよく、密度を調整されたセパレータ組成物はその後、セパレータ管へと充填されてよい。本発明の概念の一部の実施形態において、追加の清澄ステップが実施されてよい。例えば、充填剤材料を加える前にベース混合物が清澄化されてよく、および/または、密度を調整された分離化合物が清澄化されてよい。清澄化は、(例えば)沈殿およびデカンテーション、遠心分離、ろ過、または他の好適な技術によって実施されてよい。本発明の概念のさらに他の実施形態において、追加の加熱ステップが実施されてよい。例えば、充填剤材料を加える前にベース混合物が加熱されてよく、密度を調整された分離化合物が加熱されてよく、および分離化合物を含有するセパレータ管が滅菌後に加熱されてよい。このような加熱ステップにおいて、材料の温度は約30℃〜約95℃まで上げられてよい。本発明の概念の他の実施形態において、材料の温度は約40℃〜約90℃まで上げられてよい。
【0027】
本発明の概念のセパレータ管が、異なる密度によって特徴付けられる複数のセパレータ組成物を含んでよいことがさらに企図される。このような実施形態において、遠心分離機などのデバイスにおける分離は、流体の試料から3つ以上の画分を生成してよく、それぞれの画分同士の間の境界面は、隣接する画分の密度の中間の密度を有するセパレータ組成物が存在することを特徴とする。本発明の概念のこのような実施形態において、セパレータ組成物は、異なる重合開始剤を含んでよく、それによって選択的な重合および画分間の障壁の硬化が可能となる。
【0028】
図1において、開放端と閉鎖端とを有する管が図示されるが、セパレータ管についての他の構成が企図される。本発明の概念の一部の実施形態において、セパレータ管は、閉鎖端が本質的に半球である、端が開放された管である。本発明の概念の他の実施形態において、セパレータ管は、材料を加えるまたは取り出すためにセパレータ管の内部にアクセスするために利用され得る、バルブアセンブリなどの、1つ以上のデバイスを含む。例えば、セパレータ管は、閉鎖端と、バルブアセンブリを含む端部と、を有してよく、ここで、バルブアセンブリにより、試料の相または画分の制御された取り出しが可能となる。あるいは、セパレータ管は、複数の試料の相または画分の制御された取り出しを可能にする、複数のバルブアセンブリ(例えば、各末端に1つずつ)を有してよい。試料相間での実質的に固体の架橋された障壁の生成は有利にも、例えば、必要に応じて、高密度の試料相への直接のアクセスを容易にするために分離管を反転させることを可能にすることによって様々な分離管構成を支持することが留意されるべきである。あるいは、低密度の試料相を取り出した後、ピペッター/プローブを汚染または汚損することなく、より高密度の試料相にアクセスするために、実質的に固体の架橋された障壁は、好適なピペッターまたはプローブを用いて穿孔されてよい。
【0029】
セパレータ管は、試料を含有するのに好適であり、かつ、滅菌に使用されるラジカルを発生させるエネルギーおよびセパレータ組成物の重合ならびに架橋の開始に使用されるエネルギーの伝達を許容するのに好適である、任意の材料で構成されてよい。好適な材料は、後の分析に干渉するべきでなく、生体適合性であってよく、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、フルオロポリマー、および/またはそれらの組み合わせなどの、ガラスおよび重合体組成物を含む(ただし、これらに限定されない)。好ましい実施形態において、セパレータ管は、VACUTAINER(商標)管(BD, Franklin Lakes, NJ USA 07417)に類似の血液採取管であり、血液と相性がよく、かつ、その中に保存された血液または血液画分に対して実施されるアッセイの結果に干渉しない材料(例えば、ガラスまたはポリカーボネート)で構成される。一部の実施形態において、セパレータ管は、試料と相互作用する追加の材料を含有してよい。例えば、セパレータ管は、試料安定化剤、抗菌剤、凍結防止剤、抗凝固剤、酵素阻害剤、および/または後のアッセイにおいて利用される試薬を含有してよい。抗凍結剤の例としては、グリコール、DMSO、MPD、スクロース、トレハロース、およびまたは不凍タンパク質が包含される(ただし、これらに限定されない)。抗凝固剤の例としては、キレート剤(EDTA、アスコルビン酸塩、クエン酸塩、およびシュウ酸塩など)、ヘパリン、および/またはヘパリン誘導体が包含される(ただし、これらに限定されない)。
【0030】
本発明の概念の一部の実施形態において、セパレータ管は、試料の採取および保存を援助する追加の特徴を含んでよい。例えば、本発明の概念のセパレータ管は、環境汚染も防止する一方で、試料採取を援助する部分真空をセパレータ管内に保持するためにはたらくエラストマーの蓋または栓を含んでよい。セパレータ管は、セパレータ管の内容物、追加的素材(例えば、抗凝血剤)の存在、の識別の役割を果たす印および/または試料に固有の識別子を含んでよい。このような印の例としては、色分けされたエラストマーの蓋または栓、英数字または色分けされたタグ、バーコード、RFIDチップ、磁気および/または電子メモリデバイスが包含される(ただし、これらに限定されない)。このような印は有利にも、このようなセパレータ管内に保持される試料(またはその画分)の保存および処理を容易にし、試料および結果の追跡を可能にする役割を果たすことがある。
【0031】
本発明の概念の別の実施形態は、セパレータ組成物を含有するセパレータ管を含むキットである。このキットは、密封された容器内に提供される、セパレータ組成物を含有する1つ以上の滅菌されたセパレータ管を含んでよい。好適な容器としては、箱、フタつきトレイ、および包み(envelope)が包含されるが、これらに限定されない。あるいは、このようなキットは、セパレータ組成物を含有する1つ以上の滅菌されたセパレータ管と、試料の採取において利用され得る追加の材料と、を含んでよい。このような追加の材料の例としては、保護手袋、滅菌済ワイプ、アルコールパッド(alcohol preparative pad)、止血体、静脈針(phlebotomy needle)、および/または包帯が包含されるが、これらに限定されない。
【0032】
血液の分離および分析の分野における本発明の有用性が詳細に説明されたが、本発明の概念の実施形態は、広範な種類の流体および流体懸濁液に適用されてよいことが理解されるべきである。このような流体および/または懸濁液は、浸軟した組織、細胞または組織培養懸濁液、糞便懸濁液、精液、核酸/タンパク質の単離混合物、有機合成の混合物、または分離可能な相または画分の間での汚染が懸念される任意の混合物を包含してよい。
【0033】
本明細書に記載の発明の概念から逸脱することなく、既に説明した変更に加えて、多くのさらなる変更が、可能であることは、当業者には明らかであるべきである。従って、添付の特許請求の範囲を除き、本発明の内容は制限されるべきではない。さらに、明細書および特許請求の範囲のいずれを解釈する場合においても、すべての用語は、文脈と整合する、可能な限り最も広範な様式で解釈されるべきである。特に、用語「含む(comprise)」は、非排他的に要素、構成要素、またはステップに対して言及するものとして解釈されるべきであり、言及された要素、構成要素、またはステップが、明示的に言及されていない他の要素、構成要素またはステップと共に、存在するか、または活用されるか、または組み合わされることを示す。明細書が主張し、A、B、C...およびNからなる群から選択される何かのうちの少なくとも1つに対して言及する場合、当該の文は、AプラスN、またはBプラスN等ではなく、群から1つの要素のみを必要とするものとして解釈されるべきである。