(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
<全体の構造>
図1Aと
図1Bに、本発明の触覚再現装置1A,1Bを使用している状態が示されている。
【0021】
図1Aに示す第1の実施の形態の触覚再現装置1Aは、装置本体10Aと入力装置20とから構成されている。
図1Aでは、入力装置20が1個使用され、この入力装置20が右手で操作されている。
【0022】
入力装置20はコード52によって装置本体10Aに接続されている。装置本体10Aには表示装置13が設けられている。表示装置13はカラー液晶表示パネルやエレクトロルミネッセンス表示パネルなどである。装置本体10Aはパーソナルコンピュータや、比較的大きな表示画面を有するデモンストレーション用の表示装置などである。
【0023】
図5に示すように、装置本体10Aには、表示装置13を駆動するための表示ドライバー14と、表示ドライバー14の表示形態を制御する制御部15とが設けられている。制御部15はCPUとメモリを主体として構成されている。また、制御部15とそれぞれの入力装置20との間で信号を授受するためのインターフェース16が設けられている。
【0024】
図1Bに示す第2の実施の形態の触覚再現装置1Bは、装置本体10Bと入力装置20とから構成されている。
図1Bでは、同じ入力装置20が2個使用され、入力装置20が右手と左手で操作されている。
【0025】
装置本体10Bは、目の前方に装着するマスク型本体11と、このマスク型本体11を頭部に装着するためのストラップ12を有している。
【0026】
装置本体10Bのマスク型本体11に、表示装置13が設けられている。この表示装置13は、操作者の目の前方に設置されて目視可能となっている。
図5に示す表示ドライバー14と制御部15およびインターフェース16などは、マスク型本体11に搭載されている。
【0027】
図2(A)には入力装置20を上方から外観が斜視図で示され、
図2(B)には入力装置20を下方から見た外観が斜視図で示されている。
図3は、入力装置20の分解斜視図である。
図4には、入力装置20に内蔵されている3組の触覚発生ユニットのうちの第1の触覚発生ユニット30Aの構造が示されている。
図2(A)と
図3および
図4には、入力装置20を基準としたX−Y−Z座標が示されている。入力装置20はZ方向が各操作体の押圧方向である。
【0028】
図1Aと
図1Bに示す使用例では、入力装置20は、Y方向が上下に向けられた姿勢で人の手に保持されている。
【0029】
図2に示すように、入力装置20は合成樹脂製のケース21を有している。ケース21は片手で保持可能な大きさである。ケース21は上部ケース22と下部ケース23とが組み合わされて構成されている。
図3に示すように、上部ケース22と下部ケース23は、Z方向に分割可能である。上部ケース22と下部ケース23は、ねじ止め手段などで互いに固定されており、2つのケース22,23の内部に機構収納空間が形成されている。
【0030】
上部ケース22はZ方向に向く表面が第1の面22aであり、下部ケース23はZ方向に向く表面が第2の面23aである。
図3に示すように、上部ケース22には、第1の面22aでZ方向に貫通する操作穴24,24が開口している。下部ケース23には、第2の面23aをZ方向に貫通する操作穴25が開口している。操作穴24,24はY方向に並んで形成されており、Y方向での開口寸法は、操作穴25が個々の操作穴24よりも大きくなっている。
【0031】
上部ケース22のY方向に向く端面には、コネクタ装着穴26が開口しており、下部ケース23のY方向に向く端面には、電源プラグ装着穴27が開口している。
【0032】
図3に示すように、ケース21の内部の機構収納空間に、機構シャーシ28が収納されている。機構シャーシ28は、金属板から折り曲げられて、X−Y平面と平行な取付け板部28aと、Y−Z平面と平行な区分板部28bとが形成されている。
【0033】
区分板部28bを挟んでX方向の一方の側に、第1の触覚発生ユニット30Aと第2の触覚発生ユニット30Bが固定されている。第1の触覚発生ユニット30Aと第2の触覚発生ユニット30Bは、Y方向に並んで配置されている。区分板部28bを挟んでX方向の他方の側に、第3の触覚発生ユニット40が1組設けられている。
【0034】
<触覚発生ユニットの構造>
図4には、第1の触覚発生ユニット30Aの構造が示されている。
【0035】
第1の触覚発生ユニット30Aは、金属板30を折り曲げたフレーム31を有している。このフレーム31が区分板部28bに固定されることで、機構シャーシ28に第1の触覚発生ユニット30Aが搭載されている。
【0036】
フレーム31に移動部材32Aが設けられている。移動部材32Aは合成樹脂材料で形成されており、その先部に第1の対向操作体33Aが固定されている。第1の対向操作体33Aは合成樹脂材料で形成されている。
図2に示すように、第1の対向操作体33Aは、上部ケース22に形成された操作穴24から外部に突出している。
【0037】
図1Aと
図1Bに示すように、入力装置20が右手で保持されているときは、第1の対向操作体33Aは人差し指で押されることになり、
図1(B)に示すように、入力装置20が左手で保持されているときは、第1の対向操作体33Aが中指で操作される。
【0038】
図4に示すように、フレーム31の一方の側板部31aにZ方向に延びる案内長穴31cが形成されている。移動部材32Aの側部には摺動突部32aが一体に形成されており、摺動突部32aが案内長穴31cの内部を摺動することで、移動部材32Aがフレーム31上でZ方向へ移動自在に支持されている。移動部材32Aは凹部32bを有している。この凹部32bの内部では、移動部材32Aとフレーム31の下端部との間の圧縮コイルばね34が介在している。この圧縮コイルばね34の弾性力によって、移動部材32Aは第1の対向操作体33Aが上部ケース22から突出する方向であるZ方向の図示上方に向けて付勢されている。
【0039】
フレーム31の一方の側壁部31aにモータ35Aが固定されている。モータ35Aの出力軸には出力歯車36aが固定されている。側壁部31aの外面に減速歯車36bが回転自在に支持されており、出力歯車36aと減速歯車36bとが噛み合っている。フレーム31の側壁部31aにギヤボックス37が固定されており、ギヤボックス37の内部に減速機構が収納されている。前記減速歯車36bの回転力は、ギヤボックス37内の減速機構で減速される。ギヤボックス37内の減速機構は、太陽歯車と遊星歯車などから構成されている。
【0040】
ギヤボックス37の減速出力軸にピニオン歯車37aが固定されている。移動部材32Aには厚肉部の表面にラック部32cが形成されており、ピニオン歯車37aとラック部32cとが噛み合っている。ピニオン歯車38aの歯部とラック部32cの歯部は、移動部材32Aの移動方向と直交するY方向に対して傾けられたはす歯である。
【0041】
前記圧縮コイルばね34を設けることで、ピニオン歯車38aとラック部32cとのバックラッシュを解消することができる。ただし、それぞれの触覚発生ユニットに圧縮コイルばね34が設けられていなくてもよい。
【0042】
この実施の形態では、モータ35Aと歯車36a,36bとギヤボックス37およびピニオン歯車37aとラック部32cとで、進退駆動部が構成されている。
【0043】
フレーム31の他方の側壁部31bに位置検知部38Aが固定されている。位置検知部38Aは、側壁部31bに固定されたステータ部と、ステータ部に対向して回転するロータ部とを有している。ロータ部に設けられたロータ軸がピニオン歯車37aと一緒に回転する。位置検知部38Aは抵抗変化式であり、ステータ部に円弧状の抵抗体パターンが設けられ、ロータ部に前記抵抗体パターンを摺動する摺動子が設けられている。なお、位置検知部38Aは磁気検知型であって、ロータ部に回転マグネットが固定され、ステータ部にGMR素子などの磁気検知素子が設けられて、ロータ部の回転角度が磁気検知素子によって検知されるものであってもよい。または、位置検知部38Aが、光学式の位置検知部であってもよい。
【0044】
図3に示すように、区分板部28bを挟んでX方向の一方の側に、第1の触覚発生ユニット30Aと並んで第2の触覚発生ユニット30Bが固定されている。第2の触覚発生ユニット30Bの構造は、第1の触覚発生ユニット30Aの構造と同じであるため、詳しい構造の説明は省略する。
【0045】
第2の触覚発生ユニット30Bでは移動部材32BのZ側の上部に第2の対向操作体33Bが固定されている。第2の対向操作体33Bは形状と寸法が第1の対向操作体33Aと同じである。
【0046】
また、第2の触覚発生ユニット30Bでは、モータを35Bで示し、位置検知部を38Bで示しているが、これらは、第1の触覚発生ユニット30Aに設けられたモータ35Aおよび位置検知部38Aと同じである。
【0047】
図1Aと
図1Bに示すように、入力装置20が右手で保持されているときは、第2の対向操作体33Bは中指で押されることになり、
図1(B)に示すように、入力装置20が左手で保持されているときは、第2の対向操作体33Bが人差し指で操作される。
【0048】
図3に示すように、機構シャーシ28の区分板部28bの他方の側に第3の触覚発生ユニット40が設けられている。
【0049】
第3の触覚発生ユニット40は、第1の触覚発生ユニット30Aおよび第2の触覚発生ユニット30Bと基本的な構造が同じであるが、第3の触覚発生ユニット40の方がやや大きく構成されている。第3の触覚発生ユニット40は、フレーム41に移動部材42がZ方向へ移動自在に支持されており、移動部材42の先部に親指操作体43が固定されている。親指操作体43は、下部ケース23の操作穴25から図示下方へ突出している。移動部材42は圧縮コイルばね44によって、親指操作体43が操作穴25から突出する方向へ付勢されている。なお前述のようにこの圧縮コイルばね44は省略することが可能である。
【0050】
親指操作体43は、Y方向の幅寸法が、第1の対向操作体33Aと第2の対向操作体33Bよりも大きく形成されており、第1の対向操作体33Aと第2の対向操作体33Bの双方が、親指操作体43とZ方向で対向している。
図1Aと
図1Bに示すように、入力装置20は右手で保持されるときと左手で保持されるときの双方において、親指操作体43が親指で操作される。
【0051】
第3の触覚発生ユニット40においても、フレーム41にモータ45が固定されており、モータ45の出力軸に固定された出力歯車46aが減速歯車46bと噛み合っている。前記減速歯車46bの回転力は、ギヤボックス47内の減速機構で減速され、その減速出力がピニオン歯車から、移動部材42に形成されたラック部に伝達される。そしてピニオン歯車の回転が位置検知部48で検知される。
【0052】
図2に示すように、第1の対向操作体33Aの端面に第1の感触発生部56Aが固定され、第2の対向操作体33Bの端面に第2の感触発生部56Bが固定されている。また親指操作体43の端面に第3の感触発生部55が固定されている。
【0053】
図4に示すように、第1の感触発生部56Aは、第1の対向操作体33Aの端面に固定される振動発生部57と、この振動発生部57に重ねられた熱可変素子58とを有している。第2の感触発生部56Bも振動発生部57とその上に重ねられた熱可変素子58を有している。同様に、第3の感触発生部55も、振動発生部57とその上に重ねられた熱可変素子58を有している。
【0054】
振動発生部57は、立方体形状のケースの内部に振動子が収納されている。振動子はケース内で板バネなどの弾性部材によってZ方向へ振動自在に支持されている。振動子にはコイルが巻かれており、ケース内には前記コイルに対向する磁石が固定されている。コイルに交流電流を与えることで、振動子が振動する。逆に、振動子が磁石で形成され、振動子に対向するコイルがケース内に固定されていてもよい。あるいは振動発生部57を圧電素子で構成してもよい。
【0055】
振動発生部57は、比較的高い周波数の振動を発生することができ、その振動の周波数は、第1の触覚発生ユニット30Aと第2の触覚発生ユニット30Bおよび第3の触覚発生ユニット40において、モータ35A,35B,45の駆動力で発生させることができる往復運動の周波数よりも高くすることが可能である。
【0056】
熱可変素子58は、いわゆるペルチェ素子であり、対向する2枚の金属板に直流電流を与えたときのペルチェ効果の熱の移動を利用したものであり、電流方向に応じてZ方向の表面側の金属板の熱量が変化する。電流方向と電流量を制御することで、熱可変素子58に触れた指に温かい温度や冷たい温度を感じさせることが可能である。
【0057】
図3に示すように、ケース21の内部には、信号コネクタ17と電源プラグ29が内蔵されている。信号コネクタ17は、上部ケース22に形成されたコネクタ装着穴26の内部に露出しており、電源プラグ29は、下部ケース23に形成された電源プラグ装着穴27の内部に露出している。
【0058】
図5のブロック図に示すように、第1の触覚発生ユニット30Aと第2の触覚発生ユニット30Bおよび第3の触覚発生ユニット40のそれぞれにモータドライバ51が設けられている。第1の触覚発生ユニット30Aに設けられたモータ35Aと第2の触覚発生ユニット30Bに設けられたモータ35Bおよび第3の触覚発生ユニット40に設けられたモータ45は、それぞれのモータドライバ51によって回転駆動される。
【0059】
それぞれのモータドライバ51はインターフェース17aを介して前記信号コネクタ17に接続されている。
【0060】
第1の触覚発生ユニット30Aに搭載された位置検知部38Aと第2の触覚発生ユニット30Bに搭載された位置検知部38Bおよび第3の触覚発生ユニット40に搭載された位置検知部48は、それぞれインターフェース17aを介して前記信号コネクタ17に接続されている。
【0061】
また、第1の触覚発生ユニット30Aに搭載された第1の感触発生部56Aと第2の触覚発生ユニット30Bに搭載された第2の感触発生部56Bおよび第3の触覚発生ユニット40に搭載された第3の感触発生部55も、それぞれインターフェース17aを介して前記信号コネクタ17に接続されている。
【0062】
図5に示すように、入力装置20のケース21の内部に姿勢検知部53が設けられている。姿勢検知部53は、例えば地磁気センサを検知する磁気センサであり、あるいは振動型ジャイロ装置であり、入力装置20の操作空間内での姿勢や操作空間上での位置を検知することができる。姿勢検知部53はインターフェース17aを介して前記信号コネクタ17に接続されている。
【0063】
図5に示すように、装置本体10A,10Bにインターフェース16が設けられ、個々のインターフェース16が接続されている信号コネクタと、個々のインターフェース17aが接続されている前記信号コネクタ17とがコード52で接続されている。前記コード52には電源ラインが含まれており、電源ラインが電源プラグ29に接続されている。この電源ラインを通じて装置本体10A,10Bから入力装置20に電力が供給される。
【0064】
なお、装置本体10A,10Bとそれぞれの入力装置20とがRF信号によって通信可能とされており、入力装置20に電池が内蔵されていてもよい。この場合には、装置本体10A,10Bと入力装置20とを繋ぐコード52が不要である。
【0065】
また、装置本体10A,10Bは、さらにサーバーとの通信機能を有しているものであってもよい。
【0066】
また、
図1Aに示す装置本体10Aと
図1Bに示す装置本体10Bには、いずれも発音装置が設けられている。発音装置は空間中に音を発するスピーカ、またが操作者の耳に音を与えるレシーバなどである。
【0067】
次に、前記触覚再現装置1の操作方法と動作について説明する。
<入力装置20の操作と反力付与制御>
図2に示すように、入力装置20は、ケース21の第1の面22aに第1の対向操作体33Aと第2の対向操作体33Bが突出し、第2の面22bに1個の親指操作体43が突出しており、2つの対向操作体33A,33Bと親指操作体43が、Z方向において互いに逆向きに突出している。
図1Aと
図1Bに示すように、1個の入力装置20が片方の手で保持されて、親指で親指操作体43が押圧操作され、人差し指と中指で第1の対向操作体33Aと第2の対向操作体33Bが押圧操作される。
【0068】
入力装置20では、制御部15の反力付与制御によりそれぞれのモータドライバ51に制御指令が与えられ、第1の触覚発生ユニット30Aのモータ35Aと第2の触覚発生ユニット30Bのモータ35Bおよび第3の触覚発生ユニット40のモータ45が前記制御指令に基づいて動作させられる。
【0069】
モータ35A,35Bとモータ45の回転を制御することにより、移動部材32A,32Bと移動部材42を任意の位置へ移動させて、その位置で停止させることができる。例えば、第1の対向操作体33Aと第2の対向操作体33Bおよび親指操作体43をケース21から最大限まで突出させた位置で停止させることができ、または各操作体33A,33B,43をケース21の内部に最大限に後退させた位置で停止させることができる。また、各操作体33A,33Bと操作体43を最大突出位置と最大後退位置の中間の任意の位置で停止させることもできる。
【0070】
また、モータ35A,35Bとモータ45に与えられる電力を制御することにより、ケース21から突出している各操作体33A,33B,40を指で押しても動かないように、モータ35A,35B,45のロータを強い力で保持させることができる。
【0071】
各移動部材32A,32B,42が移動できる状態のときに、第1の対向操作体33Aと第2の対向操作体33Bおよび親指操作体43のいずれかが押されて、移動部材32A,32B,42が押し込み方向へ移動すると、その移動位置が位置検知部38A,38Bまたは位置検知部48で検知されて、その検知出力が制御部15に与えられる。制御部15には、反力付与制御のために、移動距離と反力との関係を示す反力作用線(反力作用係数)に関するデータが保持されており、操作体33A,33B,43の押し込み位置に応じて、モータ35A,35Bまたはモータ45が前記反力作用線に応じたトルクを発生するように制御される。これによって、対向操作体33A,33Bを押圧している人差し指と中指、および親指操作体43を押圧している親指に反力が与えられる。
【0072】
図10(A)に、制御部15内のメモリに格納されている反力作用線(反力作用係数)のデータの例が示されている。いずれも横軸が操作体33A,33B,43の押し込み量(押し込み位置)であり、図示右方向に向かうにしたがって押し込み量が多くなっている。
【0073】
縦軸は、モータ35A,35B,45から各移動部材32A,32B,42に与えられる移動力であり、この移動力が対向操作体33A,33Bおよび親指操作体43から各指に与えられる反力となる。縦軸で上に向かうにしたがって、対向操作体33A,33Bおよび親指操作体43をケース21から突出させようとする力が大きくなり、指に感じる反力が大きくなる。
【0074】
図10(A)において実線で示す反力作用線は、各操作体33A,33B,43をケース21に向けて押し込んだときに、その押し込み量に比例して指に感じる反力が一次関数的に増大している。これは指で操作体を押し込めば押し込むほど反力が増加することを意味している。この場合の実線の傾きは、弾性体である仮想の被保持物体を指で押し込んだときの弾性係数に相当している。
【0075】
図10(A)において破線で示す反力作用線は、水平な直線となっている。これは、各操作体33A,33B,43をケース21に向けて押し込んだときにどの位置まで押し込んでも指に感じる反力が一定であることを意味している。これはほとんど弾性を発揮しない軟質な物体を指で押したときの動作を模したものである。
【0076】
このように、モータ35A,35B,45を制御することで、各操作体33A,33B,43を保持している指に、硬質感や軟質感を与えることができる。
【0077】
<入力装置20の操作と感触付与制御>
親指が親指操作体43に触れ、人差し指と中指が第1の対向操作体33Aと第2の対向操作体33Bに触れているときに、制御部15からの感触制御信号が、第1の触覚発生ユニット30Aに設けられた第1の感触発生部56Aと第2の触覚発生ユニット30Bに設けられた第2の感触発生部56Bおよび第3の触覚発生ユニット40に設けられた第3の感触発生部55に与えられる。
【0078】
感触制御信号により、各感触発生部55,56A,56Bの振動発生部57が個別にまたは同時に制御されて、指に振動が与えられる。また、感触制御信号により、各感触発生部55,56A,56Bの熱可変素子58が個別にまたは同時に制御されて、指で感じる温度が変化させられる。感触制御信号によって、振動発生部57と熱可変素子58が同時に駆動されて同時に制御されてもよいし、振動発生部57と熱可変素子58のいずれか一方のみが駆動されて制御されてもよい。
【0079】
したがって、各感触発生部55,56A,56Bは、振動発生部57のみで構成されもよいし、熱可変素子58のみで構成されてもよい。
【0080】
感触付与制御は、制御部15において位置検知部38A,38B,48からの検知信号を監視し、指によって各操作体33A,33B,43が押されたときのその押し込み量に応じて、振動発生部57で発生する振動の周波数や振動のデューティ比を変化させてもよいし、前記押し込み量に応じて熱可変素子58から指に感じさせる温度を変化させてもよい。
【0081】
または、制御部15では、姿勢検知部53からの検知信号に基づき、入力装置20の姿勢の変化に応じて、振動発生部57で発生する振動の周波数や振動のデューティ比を変化させ、熱可変素子58から指に感じさせる熱(温度)を変化させてもよい。
【0082】
あるいは、
図10(B)(C)に示すように、時間の経過に伴って振動発生部57で発生する振動の周波数や振動のデューティ比を変化させてもよく、時間の経過に伴って熱可変素子58から指に感じさせる熱を変化させてもよい。
【0083】
<軟質なコップに液体を注ぐ動作を模した操作>
触覚再現装置1A,1Bでは、複数種の仮想の被保持物体を手で保持するのを模した反力と感触を操作者の手に感じさせることができる。複数種の仮想の被保持物体の反力作用線(反力作用係数)のデータや感触制御情報は、制御部15に設けられたメモリに格納されている。また、制御部15で表示ドライバー14が制御され、
図1Aまたは
図1Bに示す表示装置13に複数種の仮想の被保持物体の画像が選択できるように表示され、また手の画像も表示される。これら表示はコンピュータグラフィックによるものである。
【0084】
図6には、表示装置13の表示画面13aに、仮想の被保持物体として軟質なコップ61が表示されている。このコップは、紙製または薄い合成樹脂材料で形成されたものを想定している。
【0085】
表示画面13aには手Hの画像が表示されており、所定の操作を行うことで、表示画面13aに現れている手Hの画像が移動し、手Hの画像でコップ61が保持されるように表示状態が変化する。例えば、入力装置20を手で保持して移動させると、その移動姿勢が姿勢検知部53で検知されて制御部15に姿勢に関する情報が与えられる。この情報により表示ドライバー14が制御されて、表示画面13aに現れている手Hの画像が移動して、コップ61を掴みに行くように表示される。あるいは、キーボードなどの他の操作部材で、被保持物体としてコップ61を選択すると、表示画面13aに現れている手Hがコップ61の画像を保持するように表示状態が変化する。
【0086】
仮想の被保持物体として軟質なコップ61が選択されると、各モータ35A,35B,45が制御されて、対向操作体33A,33Bおよび親指操作体43の初期位置が設定される。仮想の被保持物体がコップ61のときには、対向操作体33A,33Bおよび親指操作体43が、
図9(A)に示すようにケース21から最大限突出した初期位置に設定される。
【0087】
制御部15は、メモリから
図10(A)に示す反力作用線(反力作用係数)のデータを読み出し、制御部15は前記反力作用線のデータに基づいて各モータ35A,35B,45を制御する。第3の触覚発生ユニット40において、モータ45から移動部材42と親指操作体43に与えられる反力、および第1の触覚発生ユニット30Aにおいて、モータ35Aから移動部材32Aと第1の対向操作体33Aに与えられる反力、ならびに第2の触覚発生ユニット30Bにおいて、モータ35Bから移動部材32Bと第2の対向操作体33Bに与えられる反力は、
図10(A)に示すよう設定される。
【0088】
図10(A)に示す反力作用線では、3つの指による押し込み量が増加するにしたがって、各指に与えられる反力Fa,Fb,Fcがほぼ一次関数で増加するように制御される。すなわち、入力装置20を保持している3本の指によって、あたかも弾性変形可能なコップ21を保持し、コップ21から弾性反力を受けているように感じることができる。
【0089】
次に、所定の操作を行うと、
図6に示すようにコップ62に液体62が注がれるように表示画面13aの表示状態が変化する。この所定の操作は、例えば、左手で入力装置20を保持して軟質なコップ61を左手で保持しているかのような操作を行っているときに、右手で表示画面13aに表示されている液体サーバーを動作させるための起動ボタンを押す操作である。あるいは右手に保持している入力装置20の3個の操作体33A,33B,43のいずれかを押す操作である。
【0090】
または、
図7に示すように、右手で入力装置20を保持したときに、表示画面に右手でビン71を保持している画像が現れる。この表示状態において、右手で保持している入力装置20を反時計方向へ傾けると、その操作が姿勢検知部53で検知され、制御部15からの制御指令により、ビン71から液体62が流れ出て、
図6に示すように左手で保持しているコップ61の画像に液体62が注がれるように表示状態が変化するものであってもよい。
【0091】
このとき、メモリに記憶されている反力作用線(反力作用係数)によって、コップ61に注がれる液体の量の増加に応じて各指に与えられる反力Fa,Fb,Fcを徐々に大きくする制御が行われる。軟質なコップ61を左手に保持している状態でコップ61内の液体が増えていくと、コップ61を保持している指が内部の液体で押し返されて、コップ61が少し膨らむような感触を得ることになるが、前記のように反力を制御することで、入力装置20を保持している左手に対して、液体が満たされていく過程を模した操作感触を与えることができるようになる。
【0092】
さらに、
図6に示すように、表示画面13aにコップ61に液体が注がれている画像が表示されているときに、メモリに記憶されている感触付与情報に基づいて、制御部15で感触付与制御が行われる。
【0093】
まず、液体61が注がれているときに、各感触発生部55,56A,56Bに振動付与信号が与えられ、振動発生部57が振動を発するように制御される。例えば、
図10(B)に示すように、振動発生部57で比較的高い周波数fで振動を発生させ、この振動の発生期間tを徐々に短くする制御が行われる。このような振動が各感触発生部55、56A,56Bから指に与えられると、軟質なコップ61に液体が注がれているのと同様の振動(動き)を指に感じさせることができる。振動の発生期間tを徐々に短くし、振動の発生期間tの周波数を徐々に高くしていくことで、あたかもコップ61内に注がれる液体の量が増えていくような感触を指に与えることができる。
【0094】
また、コップ61に注ぐ液体62として冷たい飲み物を想定しているときは、制御部15から各感触発生部55,56A,56Bの熱可変素子58に熱制御信号が与えられ、コップ61に注がれる液体62が増えていくにしたがって、指に与える温度を徐々に低くしていく制御が行われる。この温度制御によって、操作体20を保持している指で感じる温度が変化し、あたかも冷たい液体がコップ61に徐々に満たされていくかのような感触を得ることができる。なお、液体62として熱い飲み物を想定しているときは、液体62の注がれる量が増えていくにしたがって、熱可変素子58から指に与える熱(温度)が高くなるように制御される。
【0095】
また、発音装置を動作させて、コップ61に液体62が注がれているときの音を発生することで、さらに臨場感を高めることができる。
【0096】
<ビンを傾けて液体を流出させる動作を模した操作>
図7には、仮想の被保持物体として液体62を内容物とするビン71を選択したときの表示例が示されている。
【0097】
コップ61を選択したときと同じように、右手で保持した入力装置20を移動させて、表示画面13a内に表示されている手Hの画像をビン71の画像の位置まで移動させることで、表示画面13aの表示状態を、手Hでビン71を掴んだ画像に変化させることができる。
【0098】
仮想の被保持物体としてビン71が選択されて表示画面13aに表示されているとき、入力装置20の第1の対向操作体33Aと第2の対向操作体33Bおよび親指操作体43の初期位置は、
図9(A)に示すように、ケース21から突出している状態に設定される。
【0099】
ビン71は、ガラスなどの硬質な物を想定しているため、各モータ35A,35B,45のトルクをほぼ最大に設定し、各操作体33A,33B,43が容易には動かないようにすることで、指に、硬質のビン71を保持しているのと同じ保持感触を与えることができる。なお、ビン71が合成樹脂製(PET製)などの軟質なものであるときは、
図10(A)に示したのと同様の反力作用線を設定することで、各操作体33A,33B,43の押し込み量が多くなるにしたがって指に作用する反力Fa,Fb,Fcを徐々に増加させ、指にビン71の弾性を感じさせるようにできる。
【0100】
入力装置20を保持した右手を目から見た方向で反時計方向へ回転させて入力装置20の姿勢を回転させると、その動作が
図5に示す姿勢検知部53で検知されて制御部15にその情報が与えられる。この姿勢情報に基づいて制御部15で表示ドライバー14が制御され、
図7に示すように、画面13aに表示されている手Hの画像とビン71の画像が反時計方向へ回動するように表示が変化し、さらに、ビン71の中から液体62が流出する画像が表示される。
【0101】
このとき、各感触発生部55,56A,56Bに設けられた振動発生部57で振動を発生することで、ビン71から液体62が流れ出すのと同じ振動を指に与えることができる。この場合も、振動の発生期間tを
図6(B)(C)と同様に変化させることで、液体62がビン71から徐々に流出しているかのような感触を指に与えることができる。
【0102】
また、冷たい液体62を想定しているときは、各熱可変素子58を制御し、液体62が流出していない段階で指に冷たい温度を感じさせ、液体62の流出量が増えていくにしたがって、徐々に温度を上げる感触付与制御を行うことで、入力装置20を保持している指に、あたかも冷たい液体62が徐々に流出していくかのような感触を与えることができる。
【0103】
なお、温かい液体62を想定しているときは、液体62の流出量が増えるにしたがって、指に感じさせる温度を徐々に低くする制御が行われる。
【0104】
また、発音装置を動作させて、ビン71から液体62が流れ出るときの音を発生することで、さらに臨場感を高めることができる。
<仮想の被保持物体としてスプレーボトルを操作するときの触覚反力>
図8には、仮想の被保持物体としてスプレーボトル80を選択したときの表示例が示されている。
【0105】
表示画面13aに表示されているスプレーボトル80の画像は、各種液体を収納していることを想定したボトル本体81と、ボトル本体71の開口端部に固定されたノズルキャップ82と、ノズルキャップ82に前方に向けて設けられた吐出ノズル83と、ノズルキャップ82に設けられた吐出ボタン84を有している。
【0106】
右手で保持した入力装置20を移動させて、表示画面13a内に表示されている手Hの画像をスプレーボトル80の画像の位置まで移動させることで、表示画面13aを、手Hでスプレーボトル80が掴まれた画像に変化させることができる。
【0107】
仮想の被保持物体としてスプレーボトル80の画像が選択されて表示画面13aに表示されると、モータ45によって移動部材42が引き込み方向へ移動させられ、モータ35Bによって移動部材32Bが引き込み方向へ移動させられる。その結果、入力装置20の初期状態は、
図9(B)に示すように、親指操作体43と第2の対向操作体33Bがケース21に向けて退行した状態となり、第1の対向操作体33Aのみがケース21から突出するものとなる。
【0108】
ケース21に向けて退行している親指操作体43を親指で保持し、同じく退行している第2の対向操作体33Bを中指で保持して、ケース21から突出している第1の対向操作体33Aを人差し指で押し込むと、
図8に示す表示画面13aに表示されている人差し指F2が動いて吐出ボタン84の画像が後退し、これとともに、表示画面13aに表示されている突出ノズル83から液体85が霧状に噴霧されるように画像が変化する。
【0109】
このとき、モータ35Aから第1の対向操作体33Aに与えられる反力の変化は、第1の対向操作体33Aを押すにしたがって、人差し指に作用する操作反力が徐々に増大するように制御する。
【0110】
図8に示す画像を見ながら入力装置20を操作し、さらにはスプレーボトル80から液体85が噴霧されるのを模した音(液体の吐出音)を発生させることで、操作者は実際にスプレーボトルを扱っているかのような操作感触を得ることができる。
【0111】
また、第1の対向操作体33Aに設けられた第1の感触発生部56Aの振動発生部57から振動を発生させることで、スプレーボトル80から液体85が噴霧されるときの振動を人差し指に感じさせることができる。
【0112】
<他の被保持物体の例>
また入力装置20を保持したときに表示画面13aに表示する被保持物体としては、液体の入った風船、マラカスなどの楽器、けん玉などの遊具など、種々のものに対して対応可能である。