特許第6571541号(P6571541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571541
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】車両用ポップアップフード装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/38 20110101AFI20190826BHJP
   B62D 25/10 20060101ALI20190826BHJP
   B62D 25/12 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   B60R21/38
   B60R21/38 323
   B62D25/10 E
   B62D25/12 N
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-4354(P2016-4354)
(22)【出願日】2016年1月13日
(65)【公開番号】特開2017-124703(P2017-124703A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2018年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592015271
【氏名又は名称】テクノエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】野村 祐幸
(72)【発明者】
【氏名】田口 輝貴
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−101268(JP,A)
【文献】 特開2014−015112(JP,A)
【文献】 特開2015−123774(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0087401(US,A1)
【文献】 特開2005−068783(JP,A)
【文献】 実開昭61−206062(JP,U)
【文献】 特開2010−037845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/38
B62D 25/12
E05B 83/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントフードのフード前端部の車両下方側に配置され、作動することによって前記フード前端部を閉止位置から車両上方側に持ち上げられた持上位置に移動させるフロントフード持上装置と、
前記フロントフードに設けられたフードストライカが係止されたロック状態と係止が解除されたロック解除状態との間を移動するラッチを有し、前記ラッチが前記ロック状態において、前記フロントフード持上装置による前記フード前端部の前記持上位置への移動に伴い車両上方側に移動するフードロック装置と、
前記フードロック装置を車両上下方向に移動可能に支持する支持部と、
前記フード前端部が前記閉止位置にあるときの前記フードロック装置の前記ロック状態の前記ラッチは当接し、前記ロック解除状態の前記ラッチ及び前記フード前端部と共に車両上方側に移動した前記フードロック装置の前記ロック状態の前記ラッチの両方が非当接となるように前記支持部に設けられた検知装置と、
を備えた車両用ポップアップフード装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ポップアップフード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車のフードに適する自動車用開閉体のロック装置に関する技術が開示されている。この先行技術では、ストライカと噛み合うラッチのラッチ軸に、ラッチの動きを検知する検知スイッチを取付けて、フードの開閉を検知している。
【0003】
また、特許文献2には、関連する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−4737号公報
【特許文献2】特開2015−101268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術では、フードストライカと噛み合ってロックするラッチのロック状態が変更されることによるフードの開閉状態の検知を行っている。
【0006】
しかし、歩行者との衝突時にフード前端部を含むフード全体を瞬時に持ち上げて衝撃を緩和するフロントポップアップフード装置を備えるフロントフードの場合は、フード前端部が持ち上がる際にストライカとラッチとが噛み合ったロック状態のまま車両上方側に移動することになる。
【0007】
したがって、ストライカと噛み合ってロックするラッチのロック状態を変更することなくフード前端部が持ち上げられた場合は、特許文献1の技術では、フード前端部の持ち上げを検知することはできない。よって、この点において改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮し、フードロック装置のロック解除とフード前端部の持上位置への移動とを検知することができる車両用ポップアップフード装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の車両用ポップアップフード装置は、フロントフードのフード前端部の車両下方側に配置され、作動することによって前記フード前端部を閉止位置から車両上方側に持ち上げられた持上位置に移動させるフロントフード持上装置と、前記フロントフードに設けられたフードストライカが係止されたロック状態と係止が解除されたロック解除状態との間を移動するラッチを有し、前記ラッチが前記ロック状態において前記フロントフード持上装置による前記フード前端部の前記持上位置への移動に伴い車両上方側に移動するフードロック装置と、前記フードロック装置を車両上下方向に移動可能に支持する支持部と、前記フード前端部が前記閉止位置にあるときの前記フードロック装置の前記ロック状態の前記ラッチは当接し、前記ロック解除状態の前記ラッチ及び前記フード前端部と共に車両上方側に移動した前記フードロック装置の前記ロック状態の前記ラッチの両方が非当接となるように前記支持部に設けられた検知装置と、を備えている。
【0010】
請求項1に記載の発明では、フードロック装置は車両上下方向に移動可能に支持する支持部に検知装置が設けられている。検知装置は、フード前端部が閉止位置にあるときのフードロック装置のロック状態のラッチは当接し、ロック解除状態のラッチ及びフロントフードと共に車両上方側に移動したフードロック装置のロック状態のラッチの両方が非当接となる。よって、フードストライカに係止するラッチのロック状態からロック解除状態になることによるロック解除と、フード前端部の閉止位置から車両上方側の持上位置に持ち上げと、を一つの検知装置で検知することができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、フードロック装置の解除とフード前端部の持上位置への移動とを一つの検知装置で検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の車両用ポップアップフード装置を備えた車両の前端部の要部を模式的に示した正面図である。
図2】本発明の一実施形態の車両用ポップアップフード装置を構成するフードロック装置のラッチがフードストライカに係止したロック状態を模式的に示す正面図である。
図3】本発明の一実施形態の車両用ポップアップフード装置を構成するフードロック装置のラッチがフードストライカとの係止が解除されたロック解除状態を模式的に示す正面図である。
図4】本発明の一実施形態の車両用ポップアップフード装置を構成するフードロック装置がフロントフードと共に車両上方側に移動した状態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図1図4を用いて本発明の一実施形態に係る車両用ポップアップフード装置について説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印OUTは、車両の前方向(進行方向)、上方向、車両幅方向の外側方向をそれぞれ示している。また以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0014】
<フロントフード>
図1に示されるように、車両用ポップアップフード装置40が設けられた車両10のフロントフード12は、車両前後方向及び車両幅方向に延在すると共に車両平面視で略矩形状に形成されている。このフロントフード12は、図示していないパワーユニットが収容されたパワーユニットルーム14を車両上方側から覆っている。また、フロントフード12の後端部は左右それぞれに配置された図示していない一対のフードヒンジによって回動可能に支持されている。
【0015】
フロントフード12のフード前端部12Aにおける車両幅方向の中間部には、フードストライカ20が設けられている。フードストライカ20の下端部には、フロントフード12が閉止された閉止位置において、車両前後方向に延びる係止部22を備えている。
【0016】
このフードストライカ20の係止部22が、車両前端部における車両幅方向の中間部に配置された後述する車両用ポップアップフード装置40を構成するフードロック装置50のラッチ52に係止されロックされることによって、フロントフード12がパワーユニットルーム14を閉止した閉止位置に保持される、即ち、フロントフード12の回動が規制されるようになっている。
【0017】
<車両用ポップアップフード装置>
本実施形態の車両用ポップアップフード装置40は、歩行者との衝突時にフード前端部12Aを含むフロントフード12全体を瞬時に持ち上げて衝撃を緩和する装置である。
【0018】
車両用ポップアップフード装置40は、作動することによってフロントフード12がパワーユニットルーム14を閉止した閉止位置(図1の実線で図示された状態)からフード前端部12Aを車両上方側の持上位置(図1の想像線(二点鎖線)で図示された状態)に持ち上げて移動させるフロントフード持上装置の一例としての左右一対のアクチュエータ30を備えている。
【0019】
また、車両用ポップアップフード装置40は、フロントフード12のフード前端部12Aを閉止位置から持上位置に至るまで保持するフードロック装置50と、フードロック装置50を構成する後述するラッチ52の状態を検知する検知スイッチ90と、を備えている。
【0020】
(アクチュエータ)
図1に示されるように、アクチュエータ30は、車両前端部におけるフードロック装置50の車両幅方向右側及び左側にそれぞれ設けられている。なお、車両幅方向右側に設けられたアクチュエータ30の構成及び車両幅方向左側に設けられたアクチュエータ30の構成は同一である。
【0021】
アクチュエータ30は、シリンダ部32と、シリンダ部32が挿入されるアクチュエータ本体部34と、を備えている。
【0022】
そして、フロントフード12が閉止位置に位置している状態においては(図1の実線で図示された状態)、フロントフード12とアクチュエータ30のシリンダ部32とは離間している。しかし、アクチュエータ30が作動するとシリンダ部32が上昇して当該シリンダ部32の上端部がフロントフード12のフード前端部12Aに当接し、更にシリンダ部32が上昇することによって、フード前端部12Aが閉止位置から持上位置に移動するようになっている(図1の想像線(二点鎖線)で図示された状態)。
【0023】
なお、フロントフード12のフード前端部12Aにおけるシリンダ部32が当接する部位は、厚肉の板材が接合されること等によって補強されている。
【0024】
(フードロック装置)
図2に示すように、フードロック装置50には、フードロック装置本体56と、このフードロック装置本体56を支持するベースプレート54と、を備えている。
【0025】
ベースプレート54には、車両幅方向両外側に延出するフランジ58が設けられている。
【0026】
フードロック装置本体56は、車両正面視で略矩形状に形成された本体プレート60を有しており、本体プレート60の上部には、フードストライカ20の係止部22が挿入されるU字形状部62が形成されている。
【0027】
また、フードロック装置本体56には、フードストライカ20の係止部22をU字形状部62の車両上下方向(深さ方向)の端部に保持するラッチ52を備えている。ラッチ52には、フードストライカ20の係止部22が嵌り係止される凹部52Aが形成されている。また、ラッチ52は、ラッチ回転軸53を回転中心に回転し、フードストライカ20の係止部22に凹部52Aが嵌り係止したロック状態(図2参照)と、係止部22から凹部52Aが外れたロック解除状態(図3参照)と、の間を回転移動するようになっている。
【0028】
車両正面視におけるラッチ52の左側下部には段差部52Bが形成されており、ラッチ52の右側下部にはラッチ凸部52Cが形成されている。
【0029】
また、車両前方側から見た正面視におけるラッチ52の左側に、隣接して解除レバー80が設けられている。この解除レバー80はレバー回転軸83を回転中心に回転するようになっている。車両正面視におけるこの解除レバー80の右側部にはレバー凸部80Aが形成され、このレバー凸部80Aがラッチ52の段差部52Bに当接している。
【0030】
そして、図3に示すように、解除レバー80をR方向に回転させることでレバー凸部80Aがラッチ52の段差部52Bからは離れ、ラッチ52が回転し、係止部22から凹部52Aが外れたロック解除状態となる。
【0031】
(支持部及び検知スイッチ)
図2に示すように、パワーユニットルーム14には、車両正面視で略矩形状に形成された板状の支持部70が設けられている。支持部70には、車両幅方向両側に車両上下方向を長手方向とする長孔72が形成されている。そして、この支持部70の長孔72に、フードロック装置50の車両幅方向両外側に延出するフランジ58が、スライド可能に締結されている。よって、フードロック装置50は、支持部70に車両上下方向に移動可能に設けられている。
【0032】
したがって、図4に示すように、ラッチ52がフードストライカ20の係止部22に凹部52Aが嵌り係止したロック状態のフードロック装置50は、アクチュエータ30(図1参照)によって持上位置に移動するフロントフード12(図1参照)と共に車両上方側に移動する。
【0033】
また、図2に示すように、支持部70には、検知装置の一例としての検知スイッチ90が固定されている。検知スイッチ90は、検知部の一例としての検知レバー92を有している。そして、この検知レバー92が押された状態がオン状態であり、検知レバー92が押されていない状態がオフ状態である。検知スイッチ90は、制御部98と電気的に接続されている。
【0034】
(固定装置及び固定解除装置)
本実施形態の車両用ポップアップフード装置40は、図示していない固定装置及び固定解除装置を有している。固定装置は、フードロック装置50のベースプレート54を支持部70に固定している。そして、固定解除装置は、アクチュエータ30が作動するとシリンダ部32がフロントフード12のフード前端部12Aに当接する前に固定装置による固定を解除する。これによりフードロック装置50が、フード前端部12Aと共に車両上方側に移動することが可能となる。
【0035】
<本実施形態の作用並びに効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0036】
図2に示すように、フロントフード12が閉止位置(図1参照)で且つロック状態のラッチ52においては、ラッチ52のラッチ凸部52Cが検知スイッチ90の検知レバー92に当接し、押しているので、検知スイッチ90はオン状態となっている。
【0037】
しかし、図3に示すように、ラッチ52が回転移動し、フードストライカ20の係止部22から凹部52Aが外れたロック解除状態になると、ラッチ52のラッチ凸部52Cが検知レバー92から離れ非当接となるので、検知スイッチ90はオフ状態となる。つまり、ラッチ52がロック解除状態を検知スイッチ90が検知する。また、ラッチ52がロック解除状態になるので、フロントフード12(図1参照)を開くことが可能となる。
【0038】
また、図4に示すように、ラッチ52がフードストライカ20の係止部22に凹部52Aが嵌り係止したロック状態において、フロントフード12のフード前端部12Aと共にフードロック装置50が車両上方側に移動すると、ラッチ52のラッチ凸部52Cが検知レバー92から離れ非当接となり、検知スイッチ90はオフ状態となる。つまり、ラッチ52がロック状態であってもフロントフード12のフード前端部12A(図1参照)が持上位置(図1を参照)に移動すると検知スイッチ90が検知する。
【0039】
このように、フードストライカ20に係止するラッチ52のロック状態(図2参照)及びロック解除状態(図3参照)の検知と、閉止位置から車両上方側の持上位置に持ち上げられたフード前端部12Aと共に車両上方側に移動したフードロック装置50のロック状態のラッチ52(図4参照)の検知と、を一つの検知スイッチ90で行うことができる。
【0040】
なお、図1図4に示す検知スイッチ90と電気的に接続された制御部98は、検知スイッチ90がオン状態である場合は、フロントフード12(図1参照)が閉止位置で且つラッチ52がロック状態(図2参照)であると判断する。
【0041】
しかし、ラッチ52が回転移動し、フードストライカ20の係止部22から凹部52Aが外れたロック解除状態(図3参照)になり検知スイッチ90がオフ状態となると、制御部98は警告等を発し盗難を防止するようになっている。
【0042】
また、ラッチ52がフードストライカ20の係止部22に凹部52Aが嵌り係止したロック状態であっても、フロントフード12のフード前端部12Aが持ち上げられると(図1参照)、フロントフード12と共にフードロック装置50が車両上方側に移動し、検知スイッチ90がオフ状態(図4参照)と、制御部98は警告等を発し盗難を防止するようになっている。
【0043】
(その他)
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0044】
本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
12 フロントフード
12A フード前端部
20 フードストライカ
30 アクチュエータ(フロントフード持上装置)
40 車両用ポップアップフード装置
50 フードロック装置
52 ラッチ
90 検知スイッチ(検知装置)
図1
図2
図3
図4