(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。まず、
図1〜
図3を参照して、一実施形態に係るロータ10について説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、ロータの回転軸線Oに沿う方向を示し、径方向とは、軸線Oを中心とする円の半径方向を示し、周方向とは、該円の円周方向を示す。また、便宜上、図中の矢印Aに示す方向を軸方向前方とする。
【0011】
ロータ10は、電動機のステータ(図示せず)の径方向内側に回転可能に配置され、該ステータとともに電動機を構成する。ロータ10は、回転シャフト12、ロータコア14、複数の磁石16、保護管18、および充填物20を備える。回転シャフト12は、軸方向に延びる円柱部材である。
【0012】
ロータコア14は、回転シャフト12の径方向外側に固定された筒状部材である。ロータコア14は、軸方向に積層された複数の電磁鋼板から構成され、軸線Oを中心とするように配置されている。ロータコア14の中心部には、貫通孔14aが形成されており、該貫通孔14aに、回転シャフト12が挿通されている。
【0013】
ロータコア14は、複数の突条部22、および複数の切り欠き24を有する。突条部22の各々は、ロータコア14の外周面26から径方向外側へ突出し、ロータコア14の軸方向後方の第1端面28から軸方向前方の第2端面30まで、軸方向に延在している。本実施形態においては、計8個の突条部22が、周方向に略等間隔で並ぶように設けられている。
【0014】
図3に示すように、突条部22の各々は、互いに対向する一対の側面40および42と、径方向外側の端面32とを有する。側面40および42は、略平面であって、外周面26から径方向外側へ向かって立ち上がり、軸方向へ延在している。端面32は、側面40と側面42との間で延在し、且つ軸方向へ延びている。
【0015】
切り欠き24の各々は、突条部22の径方向外側の端面32から径方向内方へ凹むように、ロータコア14に形成されている。
図3に示すように、切り欠き24の各々は、互いに対面する一対の側面34および36と、側面34と側面36との間で延在する底面38とによって、画定されている。
【0016】
側面34および36は、略平面であって、周方向に予め定められた距離だけ離隔して配置され、互いに略平行となるように軸方向へ延在している。底面38は、略平面であって、外周面26よりも径方向内方に位置し、軸方向に延在している。
【0017】
外周面26と、側面34、36、40および42と、底面38と、端面32とによって、ロータコア14の外周面44が形成されている。
【0018】
磁石16の各々は、軸方向へ延びる細長い磁性部材(たとえば、ネオジムまたはフェライト)であって、周方向に互いに隣り合う2つの突条部22の間に配置され、ロータコア14の外周面26の上に固定されている。本実施形態においては、計8個の磁石16が、周方向に略等間隔で配置されている。
【0019】
保護管18は、複数の磁石16を径方向外側から取り囲む筒状部材である。保護管18は、ステンレス等の非磁性材料から作製され、軸線Oを中心とするように配置されている。
【0020】
充填物20は、ロータコア14と保護管18との間の隙間に充填されている。より具体的には、充填物20は、磁石16の各々と保護管18との間、突条部22の各々と保護管18との間、および切り欠き24の内部に、それぞれ充填されている。一例として、充填物20は、樹脂である。
【0021】
次に、
図4〜
図8を参照して、ロータ10の製造方法について説明する。ステップS1において、製造者は、ロータコア14を作製する。具体的には、製造者は、プレス加工によって複数の電磁鋼板を打ち抜き、これら電磁鋼板を軸方向に積層させて、
図1および
図2に示すロータコア14を作製する。
【0022】
ステップS2において、製造者は、ステップS1にて作製したロータコア14の径方向外側に、複数の磁石16を配置する。具体的には、製造者は、磁石16の各々を、周方向に互いに隣り合う2つの突条部22の間、すなわち、ロータコア14の外周面26の上に、配置する。
【0023】
本実施形態においては、ロータコア14に設けられた突条部22によって、磁石16の周方向へのずれが規制されるので、製造者は、接着剤等を用いて磁石16をロータコア14の外周面26の上に接着させることなく、磁石16を外周面26の上に容易に位置決めすることができる。
【0024】
ステップS3において、製造者は、複数の磁石16を取り囲むように、保護管18’を配置する。具体的には、製造者は、保護管18’(
図5)を準備する。この保護管18’は、
図1および
図2に示す保護管18よりも小さい直径と、保護管18と同じ軸方向寸法とを有する筒状部材である。
【0025】
次いで、製造者は、ロータコア14の外周面26に固定された磁石16を径方向外側から取り囲むように、保護管18’を嵌着する。この状態を、
図5に示す。このステップS3によって、ロータコア14、磁石16、および保護管18’からなる組立体50が作製される。この組立体50においては、保護管18’の内周面は、磁石16の外面と当接している。
【0026】
ステップS4において、製造者は、ステップS3にて作製した組立体50を、射出成形機100の第1の金型102に設置する。以下、
図6を参照して、一実施形態に係る射出成形機100について説明する。
【0027】
射出成形機100は、第1の金型102、第2の金型104、充填物供給ユニット106、スプール107、およびホットランナ108を備える。第1の金型102には、円形状のキャビティー110が形成されている。
【0028】
第2の金型104は、第1の金型102に対して接近および離反する方向へ可動に設置されている。第2の金型104は、第1の金型102に面する加圧面104aを有する。充填物供給ユニット106は、加熱されて液状化した充填物を、スプール107内に供給する。スプール107に供給された充填物は、スプール107内を流動し、ホットランナ108に流入する。
【0029】
ホットランナ108は、ヒータ(図示せず)を含み、スプール107から流入した充填物を、液状化した状態のまま送給する。ホットランナ108の出口端には、複数のゲート112が設けられている。
【0030】
ゲート112の各々は、第1の金型104の加圧面104aの上で外部に開口している。ホットランナ108内に流入した充填物は、ホットランナ108内を流動して、ゲート112から外部へ射出される。
【0031】
ゲート112は、周方向に略等間隔で配列されている。これらゲート112の周方向位置は、ロータコア14に形成された切り欠き24の周方向位置にそれぞれ対応している。
【0032】
例えば、ホットランナ108には、計8個のゲート112が設けられ、これらゲート112の周方向位置が、計8個の切り欠き24の周方向位置に、それぞれ対応している。
【0033】
このステップS4において、製造者は、ステップS3にて作製した組立体50を、第1の金型102のキャビティー110内に、該キャビティー110と同心となるように、設置する。この状態を
図6に示す。
図6に示す状態においては、ロータコア14の軸方向前方の端面30は、キャビティー110を画定する底面114に当接する。
【0034】
ステップS5において、射出成形機100は、第2の金型104を第1の金型102へ向かって移動させ、第1の金型102のキャビティー110を、第2の金型104の加圧面104aで閉鎖(いわゆる、型締め)する。
【0035】
この状態を
図7に示す。
図7に示す状態においては、ロータコア14の軸方向後方の端面28は、加圧面104aに面接触する。また、保護管18’は、キャビティー110を画定する側面116から径方向内側に離隔している。
【0036】
また、ゲート112の各々は、ロータコア14に形成された切り欠き24の各々に面するように、配置される。
図8に、
図7に示す状態における、切り欠き24とゲート112との周方向の位置関係を概略的に示す。
【0037】
図8に示すように、ステップS5の終了時において、ゲート112は、切り欠き24に面して開口するように、該切り欠き24に対して位置決めされる。本実施形態においては、ゲート112は、突条部22の径方向外側の端面32よりも、底面38に近い位置に、配置される。
【0038】
ステップS6において、射出成形機100は、切り欠き24に充填物(例えば、樹脂)を射出する。具体的には、射出成形機100は、充填物供給ユニット106を駆動して、ホットランナ108内に充填物を供給し、ゲート112から切り欠き24内に充填物を射出する。
【0039】
切り欠き24内に射出された充填物は、該切り欠き24内を流動して、保護管18’とロータコア14との間の隙間に入り込む。射出された充填物の圧力によって、保護管18’は、径方向外側へ膨張し、キャビティー110の側面116に当接する。その結果、上述の保護管18が形成される。
【0040】
また、ゲート112から射出された充填物は、磁石16の各々と保護管18との間、突条部22の各々と保護管18との間、および切り欠き部24の内部に、それぞれ充填される。その結果、上述の充填物20が形成される。
【0041】
この状態を、
図9に示す。このステップS6によって、ロータコア14、磁石16、保護管18、および充填物20からなる組立体52が作製される。
【0042】
ステップ7において、製造者は、回転シャフト12を固定する。具体的には、製造者は、回転シャフト12を準備し、該回転シャフト12を、ステップS6にて作製した組立体52のロータコア14の貫通孔14aに嵌め入れて固定する。
【0043】
例えば、回転シャフト12は、ロータコア14の貫通孔14aに、焼き嵌めによって固定される。このステップS6によって、
図1に示す回転子10が製造される。
【0044】
上述したように、本実施形態においては、ロータコア14に切り欠き24を形成し、ステップS6にて該切り欠き24内に充填物を射出している。この構成によれば、ステップS6において保護管18’を均等に膨張させることができる。
【0045】
この作用効果について、以下に説明する。ここで、比較のために、切り欠き24が形成されていない場合について考える。この場合、ステップS6において、ゲート112は、突条部22の径方向外側の端面32と、保護管18’の内周面との間の隙間に配置されることになる。
【0046】
この場合、ゲート112は、
図8に示す配置と比べて、保護管18’により近い位置に配置されることになる。このようにゲート112を保護管18’に近い位置に配置させて充填物を射出すると、充填物の射出圧によって、保護管18’が、ゲート112に近い領域においてより大きく変形してしまい、これにより、保護管18が’不均等に変形してしまう虞がある。
【0047】
これに対して、本実施形態においては、切り欠き24を設けることによって、
図8に示すように、ゲート112を、保護管18’から径方向内側により離れた位置に、配置させることができる。
【0048】
これにより、ステップS6にてゲート112から充填物を射出したときに、ゲート112に近い領域において保護管18’に掛かる射出圧を低減させ、以って、射出圧に起因して保護管18’が不均等に変形してしまうのを防止することができる。
【0049】
さらには、切り欠き24が形成されていない場合、ステップS6においてゲート112を、突条部22の径方向外側の端面32と保護管18’との間の極狭い隙間に位置決めする必要がある。
【0050】
これに対して、本実施形態によれば、比較的大きな径方向寸法を有する切り欠き24に対してゲート112を容易に位置決めできるので、作業効率の向上にも繋がる。
【0051】
また、本実施形態においては、切り欠き24は、その底面38がロータコア14の外周面26よりも径方向内側に位置するように、形成されている。この構成によれば、ステップS6にてゲート112を保護管18’からより離れた位置に配置させることができるので、保護管18’が不均等に変形してしまうのを、より効果的に防止することができる。
【0052】
なお、切り欠き24には、種々の変形例が考えられ得る。一例として、切り欠き24を画定する側面34および36は、ロータコア14の軸方向後方の端面28から軸方向前方に向かうにつれて互いに接近するように軸線Oに対して傾斜するテーパ面によって、構成されてもよい。
【0053】
または、切り欠き24を画定する底面38は、ロータコア14の軸方向後方の端面28から軸方向前方に向かうにつれて径方向外側へ向かうように傾斜するテーパ面によって、構成されてもよい。
【0054】
これら変形例においては、切り欠き24の断面積が、ロータコア14の軸方向後方の端面28から軸方向前方に向かうにつれて徐々に小さくなる。このような場合においても、ステップS6において、充填物の射出圧を、ロータコア14の軸方向後方の端面28に近い位置において低減できるので、保護管18’の不均等な変形を防止できる。
【0055】
また、切り欠き24は、ロータコア14の軸方向後方の端面28から軸方向前方へ延びて、軸方向前方の端面30よりも軸方向後方の位置で終端するように、形成されてもよい。また、切り欠き24の底面38は、軸方向から見て、径方向内側へ向かって凹む円弧面であってもよい。
【0056】
また、本発明に係るロータの製造方法は、突起部22が形成されていないロータの製造に適用することもできる。このようなロータの一例を、
図10に示す。
【0057】
なお、
図10に示すロータ60において、上述のロータコア10と同様の要素には同じ符号を付している。ロータ60は、回転シャフト12、ロータコア62、複数の磁石16、保護管18、および充填物64を備える。
【0058】
ロータコア62は、円筒状の外周面66と、該外周面66から径方向内側へ凹む複数の切り欠き68とを有する。切り欠き68の各々は、ロータコア62の周方向に互いに隣り合う2つの磁石16の間に、配置されている。
【0059】
次に、
図4を参照して、
図10に示すロータ60の製造方法について説明する。ステップS1において、製造者は、
図10に示すロータコア62を作製する。
【0060】
ステップS2において、製造者は、複数の磁石16を、ロータコア62の径方向外側に周方向に略等間隔で整列するように、配置する。例えば、製造者は、複数の磁石16を、ロータコア62の外周面66に、接着剤等を用いて固定する。
【0061】
ステップS3において、製造者は、複数の磁石16を取り囲むように、保護管18’を配置する。これにより、ロータコア62、磁石16、および保護管18’からなる組立体が作製される。
【0062】
ステップS4において、製造者は、ステップS3にて作製した組立体を、上述の射出成形機100の第1の金型102に形成されたキャビティー110内に、該キャビティー110と同心となるように、設置する。
【0063】
ステップS5において、射出成形機100は、第2の金型104を第1の金型102へ向かって移動させ、第1の金型102のキャビティー110を、第2の金型104の加圧面104aで閉鎖(いわゆる、型締め)する。このとき、ゲート112の各々は、ロータコア62に形成された切り欠き68の各々に面するように、配置される。
【0064】
ステップS6において、射出成形機100は、切り欠き68に充填物(例えば、樹脂)を射出する。これにより、保護管18’は、射出された充填物の圧力によって、径方向外側へ膨張し、
図10に示す保護管18および充填物64が形成される。このステップS6によって、ロータコア62、磁石16、保護管18、および充填物64からなる組立体が作製される。
【0065】
ステップ7において、製造者は、回転シャフト12を固定する。具体的には、製造者は、回転シャフト12を、ステップS6にて作製した組立体のロータコア62の貫通孔70に嵌め入れて固定する。このステップS6によって、
図10に示す回転子60が製造される。
【0066】
本実施形態においては、上述の実施形態と同様に、切り欠き68を設けることによって、ゲート112を、保護管18’から径方向内側に離間して配置させることが可能となる。
【0067】
これにより、ステップS6にてゲート112から充填物を射出したときに、ゲート112に近い領域において保護管18’に掛かる射出圧を低減させ、以って、保護管18’が不均等に変形してしまうのを防止することができる。
【0068】
なお、切り欠き24、68の個数は、1個であってもよいし、または、N個(Nは、2以上、且つ磁石16の個数より少ない整数)であってもよい。
【0069】
また、ゲート112の個数は、1個であってもよいし、またはM個(Mは、2以上、且つ切り欠き24、68の個数より少ない整数)であってもよい。この場合においても、ステップS5において、1つのゲート112は、1つの切り欠き24、68に面するように、配置される。
【0070】
また、ステップS6において、保護管18’を膨張させることなく、ロータコア14と保護管18’との間の隙間に充填物を充填してもよい。この場合、
図11に示すようなロータ70が作製される。
【0071】
ロータ70は、組立体50と、該組立体50のロータコア14と保護管18’との間の隙間に充填された充填物72と、該組立体50のロータコア14の貫通孔14aに挿通された回転シャフト12とを備える。ロータ70においては、磁石16の外面と保護管18’と内周面とが面接触している。
【0072】
また、上述のステップS2およびS3の代わりに、製造者は、まず、ロータコア14を取り囲むように保護管18’を配置させ、次いで、複数の磁石16の各々を、ロータコア14の外周面26と保護管18’との間に圧入することによって、組立体50を作製してもよい。
【0073】
また、ステップS3において、
図1に示す保護管18を準備し、該保護管18を、ロータコア14の外周面26に固定された磁石16を径方向外側から取り囲むように配置してもよい。
【0074】
この場合、磁石16の外面と保護管18の内周面との間には隙間が形成されることになる。次いで、ステップS6において、保護管18を膨張させることなく、ロータコア14と保護管18との間の隙間に充填物20を充填し、
図1に示すロータ10を作製してもよい。
【0075】
以上、発明の実施形態を通じて本発明を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、本発明の実施形態の中で説明されている特徴を組み合わせた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得るが、これら特徴の組み合わせの全てが、発明の解決手段に必須であるとは限らない。さらに、上述の実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることも当業者に明らかである。
【0076】
また、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、工程、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」、「次いで」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。