特許第6571547号(P6571547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571547
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   A61B8/08
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-10478(P2016-10478)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2016-144636(P2016-144636A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2018年11月15日
(31)【優先権主張番号】特願2015-17560(P2015-17560)
(32)【優先日】2015年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】高田 優子
(72)【発明者】
【氏名】大住 良太
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−101729(JP,A)
【文献】 特開2015−84909(JP,A)
【文献】 特開平11−56852(JP,A)
【文献】 特開平10−108864(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/067938(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/054635(WO,A1)
【文献】 特開2000−107176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ状態の超音波プローブの放置を検出する検出部と、
前記超音波プローブからの出力に基づいて第1の画像を生成し、前記第1の画像とは異なる第2の画像を表示し、前記第2の画像上に前記第1の画像を所定の不透明度で表示する制御モードの起動中において、前記検出部によって前記超音波プローブの放置が検出された場合、
前記第1の画像を生成せず、前記第2の画像を表示する制御、
前記第1の画像を生成する一方で、前記第1の画像を表示せず、前記第2の画像を表示する制御、又は、
前記第1の画像を生成し、前記第2の画像を表示し、前記第2の画像上に前記第1の画像を前記所定の不透明度より低い不透明度で表示する制御、
を実行する処理部と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記第1の画像は、前記超音波プローブからの出力を処理することで算出された物理量に応じた色を空間的に分布させた画像であり、
前記第2の画像は、前記超音波プローブからの出力を処理することで算出された輝度値を空間的に分布させた画像である、
請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記物理量は、速度、変位、歪み、歪み率のいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記超音波プローブからの、最新のフレームを含む複数フレームに対応する出力を処理することで、アクティブ状態の前記超音波プローブの放置を検出する、請求項1乃至3のうちいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記超音波プローブからの出力を処理することで、前記複数フレームそれぞれに対応する統計値を算出し、当該算出された統計値のうち最大値と最小値の差を用いた閾値判断によって、アクティブ状態の前記超音波プローブの放置を検出する、請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記超音波プローブからの出力を処理することで、前記複数フレームそれぞれに対応する統計値を算出し、当該算出された統計値の全組合せにおける比較によって、前記超音波プローブの放置を検出する、請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記超音波プローブの位置に基づいて、アクティブ状態の前記超音波プローブの放置を検出する、請求項1乃至3のうちいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記超音波プローブの姿勢に基づいて、アクティブ状態の前記超音波プローブの放置を検出する、請求項1乃至3のうちいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記検出部は、前記超音波プローブがホルダに格納されているか否かに基づいて、アクティブ状態の前記超音波プローブの放置を検出する、請求項1乃至3のうちいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記検出部は、前記超音波プローブの位置及び姿勢に基づいて、アクティブ状態の前記超音波プローブの放置を検出する、請求項1乃至3のうちいずれかに記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、弾性イメージングに用いられる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査が行えるほか、システムの規模がX線、CT、MRIなど他の診断機器に比べて小さく、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便である。また、超音波診断はX線などのように被曝の影響がなく、産科や在宅医療等においても使用することができる。
【0003】
超音波診断の応用分野として、組織性状を定量化するという技術がある。超音波組織弾性イメージング(超音波エラストグラフィー)はそのひとつであり、超音波で検出可能な臓器に関して、その臓器の全体あるいは局所の硬さを非観血的に計測するものである。超音波エラストグラフィーの手法はいくつか存在する。例えば、超音波プローブの加振によって被検体に対する超音波プローブの接触圧力を積極的に変化させ、それに応じて生じた患者の体内の変化を計測するタイプのエラストグラフィー、超音波プローブの接触圧力を大きく変化させず、呼吸運動や心拍動などの生体機能によって生じた患者の体内の変化を計測するタイプのエラストグラフィー、および、音響放射圧によって生じた患者の体内の変化を計測するタイプのエラストグラフィーなどがある。
【0004】
この様な超音波エラストグラフィーにより、例えば、関心領域(ROI:Region Of Interest)内の各位置における変位や速度等の物理量が指標値(運動情報)としてその値に応じてカラー化され、Bモード画像等の組織構造画像にオーバーレイ表示される。医師等の観察者は、当該オーバーレイ表示される診断部位の組織構造、及び用手的加振等により各部位において発生する運動情報をリアルタイムに観察することができる。
【0005】
ところで、例えば用手的加振によるエラストグラフィーを行う場合、診断部位の加振を行っておらず超音波プローブを空中放置している状態(以下、単に「空中放置状態」と呼ぶ)では、速度を持った対象を撮影していないため、理論的には運動情報はカラー化され組織構造画像にオーバーレイ表示されないはずである。
【0006】
しかしながら、現実には、空中放置状態であっても、ノイズ信号などによる速度情報が検出されカラー化されて、例えば図13(a)に示す様にオーバーレイ表示されることがある。また、ゼリーを塗布した状態で超音波プローブを空中放置している場合、ゼリーを通して装置起因等の微細な振動が超音波プローブに伝わってしまい、人的に加振していないにもかかわらず当該振動が検出されカラー化され、例えば図13(b)に示す様にオーバーレイ表示されることがある。
【0007】
この様に装置等に起因し用手的加振とは関係のない情報がカラー化されオーバーレイ表示された場合、ユーザーや患者が、超音波エラストグラフィーを用いた画像診断に不安を抱いてしまう原因となる可能性がある。このため、従来の超音波診断装置では、超音波プローブの空中放置状態であっても、用手的加振とは関係のない情報をカラー表示しないようにするために、例えば以下の工夫が施されている。すなわち、図14に示す様に、現在のフレームに設定されたROI内の平均速度V0と、現在設定されている速度レンジ(スケール)において検出可能な最大速度(現在設定されている速度レンジの値)Vmaxとから割合Vr=V0/Vmaxを算出し、その値が所定の閾値(Tresh)以下である場合を空中放置と判定し、ROI内に関するカラー表示をしないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2−206442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の超音波診断装置では、次のような問題がある。すなわち、超音波プローブが空中放置状態であるか否かの上記判定に用いる閾値は、超音波プローブや速度レンジに関わらず固定された値となっている。これに対し、ノイズレベルや速度オフセットは、一般的に、超音波プローブや速度レンジによって異なる(例えば、速度レンジに対して比例関係にない)。このため、固定された閾値では超音波プローブが空中放置状態であるか否かの判定を常に正確に行うことはできず、空中放置状態であっても、組織構造画像上にノイズ信号や振動等に起因するカラーが表示されてしまうことがある。その結果、依然として、ユーザーや患者に対し、超音波エラストグラフィーを用いた画像診断に不安を与えてしまう可能性がある。
【0010】
また、現実の超音波画像診断において、フリーズ操作を忘れた状態で超音波プローブが空中放置される場合がある。係る場合に、通常の撮影状況下と同様の電力を超音波プローブに供給し続けることとすれば、結果的に、超音波プローブの劣化を早めてしまうこととなる。
【0011】
上記事情に鑑みて、例えば超音波エラストグラフィー等において、空中放置状態やゼリー塗布状態での放置状態など、人的加振がない状態をより正確に判定し、その結果に基づいて適切な制御を実行可能な超音波診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態に係る超音波診断装置は、検出部及び処理部を具備する。検出部は、アクティブ状態の超音波プローブの放置を検出する。処理部は、前記超音波プローブからの出力に基づいて第1の画像を生成し、前記第1の画像とは異なる第2の画像を表示し、前記第2の画像上に前記第1の画像を所定の不透明度で表示する制御モードの起動中において、前記検出部によって前記超音波プローブの放置が検出された場合、前記第1の画像を生成せず、前記第2の画像を表示する制御、前記第1の画像を生成する一方で、前記第1の画像を表示せず、前記第2の画像を表示する制御、又は、前記第1の画像を生成し、前記第2の画像を表示し、前記第2の画像上に前記第1の画像を前記所定の不透明度より低い不透明度で表示する制御、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成図を示している。
図2図2は、典型的な組織弾性イメージングにおける処理の流れを示したフローチャートである。
図3図3は、本プローブ状態検出機能を用いた表示制御の流れを示したフローチャートである。
図4図4は、時系列に取得された指標値画像に設定された各ROIと、各ROI内の平均速度を例示した図である。
図5図5は、5フレームに対応する平均速度V0、V1、V2、V3、V4を用いた全組み合わせを説明するための図である。
図6図6(a)、(b)は、ステップS15におけるプローブ状態検出ユニット37の判定処理の詳細を説明するための図である。
図7図7(a)、(b)は、ステップS15において「超音波プローブの空中放置状態を検出した」と判定され、ステップS17において現在のフレームに対応する指標値画像のROI内にカラー画像が表示されないように表示制御されたエラストグラフィーを説明するための図である。
図8図8は、現在のフレームに対応する指標値画像のROI内に設定された局所領域a、bと、現在のフレームから遡って3つ前までの各フレームに対応する指標値画像のROI内に設定された局所領域a、bとを示した図である。
図9図9(a)、(b)は、変形例に係るプローブ状態検出ユニット37の判定処理の詳細を説明するための図である。
図10図10は、従来の超音波診断装置において表示されるエラストグラフィーの一例を示した図である。
図11図11は、本変形例に係るプローブ状態検出機能を用いた表示制御によって表示されるエラストグラフィーを説明するための図である。
図12図12は、第2の実施形態に係るプローブ状態検出機能を用いた表示制御の流れを示したフローチャートである。
図13図13(a)、(b)は、従来のエラストグラフィーを説明するための図である。
図14図14は、従来のエラストグラフィーを説明するための図である。
図15図15は、第3の実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成図を示した図である。
図16図16は、第3の実施形態に係るプローブ状態検出機能を用いた表示制御の流れを示したフローチャートである。
図17図17は、第4の実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成を示した図である。
図18図18は、第4の実施形態に係るプローブ状態検出機能を用いた表示制御の流れを示したフローチャートである。
図19図19は、第5の実施形態に係る超音波診断装置のブロック構成を示した図である。
図20図20は、第5の実施形態に係るプローブ状態検出機能を用いた表示制御の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置1のブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置1は、超音波診断装置本体11、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14を具備している。本超音波診断装置本体11は、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、RAWデータメモリ25、ボリュームデータ生成ユニット26、画像処理ユニット28、表示処理ユニット30、制御プロセッサ(CPU)31、記憶ユニット32、インターフェースユニット33、指標値画像生成ユニット35、プローブ状態検出ユニット37を具備している。
【0016】
超音波プローブ12は、生体を典型例とする被検体に対して超音波を送信し、当該送信した超音波に基づく被検体からの反射波を受信するデバイス(探触子)であり、その先端に複数に配列された圧電振動子(超音波トランスデューサ)、整合層、バッキング材等を有している。圧電振動子は、超音波送信ユニット21からの駆動信号に基づきスキャン領域内の所望の方向に超音波を送信し、当該被検体からの反射波を電気信号に変換する。整合層は、当該圧電振動子に設けられ、超音波エネルギーを効率良く伝播させるための中間層である。バッキング材は、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止する。当該超音波プローブ12から被検体に超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送受信方向の速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。本実施形態においては、超音波プローブ12は、複数の超音波振動子が所定の方向に沿って配列された一次元アレイプローブであるとする。しかしながら、当該例に拘泥されず、超音波プローブ12は、ボリュームデータを取得可能なものとして、二次元アレイプローブ(複数の超音波振動子が二次元マトリックス状に配列されたプローブ)、又はメカニカル4Dプローブ(超音波振動子列をその配列方向と直交する方向に機械的に煽りながら超音波走査を実行可能なプローブ)などであってもよい。
【0017】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。
【0018】
モニター14は、表示処理ユニット30からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。また、モニター14は、組織弾性イメージングにおいて、超音波プローブが空中放置状態にあるか否かに応じて、カラー表示の有無が制御されたエラストグラフィーを表示する。
【0019】
超音波送信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。トリガ発生回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのトリガパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各トリガパルスに与えられる。パルサ回路は、このトリガパルスに基づくタイミングで、プローブ12に所定周波数の駆動パルスを所定の電圧で印加する。
【0020】
超音波受信ユニット22は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、遅延回路、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたアナログのエコー信号をデジタルエコー信号に変換する。遅延回路では、デジタル変換されたたエコー信号に対し受信指向性を決定し、受信ダイナミックフォーカスを行うのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0021】
Bモード処理ユニット23は、受信ユニット22からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。
【0022】
血流検出ユニット24は、受信ユニット22から受け取ったエコー信号から血流信号を抽出し、血流データを生成する。血流の抽出は、通常CFM(Color Flow Mapping)で行われる。この場合、血流信号を解析し、血流データとして平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0023】
RAWデータメモリ25は、Bモード処理ユニット23から受け取った複数のBモードデータを用いて、三次元的な超音波走査線上のBモードデータであるBモードRAWデータを生成する。また、RAWデータメモリ25は、血流検出ユニット24から受け取った複数の血流データを用いて、三次元的な超音波走査線上の血流データである血流RAWデータを生成する。なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、RAWデータメモリ25の後に三次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0024】
ボリュームデータ生成ユニット26は、空間的な位置情報を加味した補間処理を含むRAW−ボクセル変換を実行することにより、Bモードボリュームデータ、血流ボリュームデータを生成する。
【0025】
画像処理ユニット28は、ボリュームデータ生成ユニット26から受け取るボリュームデータ、ボリュームレンダリング、多断面変換表示(MPR:Multi Planar Reconstruction)、最大値投影表示(MIP:Maximum Intensity Projection)等の所定の画像処理を行う。なお、ノイズ低減や画像の繋がりを良くすることを目的として、画像処理ユニット28の後に二次元的なフィルタを挿入し、空間的なスムージングを行うようにしてもよい。
【0026】
表示処理ユニット30は、画像処理ユニット28において生成・処理された各種画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正、RGB変換等の各種を実行する。また、表示処理ユニット30は、組織弾性イメージングにおいて、指標値画像生成ユニット35において生成されたフレーム毎の指標値画像を用いて、任意に設定されるROI(以下、「エラストROI」又は単に「ROI」と呼ぶ)内の各位置における指標値を、Bモード等の組織構造画像上の対応する位置にマッピングしその値に応じてカラー表示(オーバーレイ表示)するための表示制御を実行する。さらに、表示処理ユニット30は、後述するプローブ状態検出機能を用いた表示制御において、超音波プローブが空中放置状態にあるか否かに応じて、カラー表示の有無に関する制御を実行する。なお、このカラー表示の有無は、例えば、カラーマッピングされたROI内の各画素の不透明度(オパシティ)の制御、或いはROI内の各位置における指標値のカラーマッピングの有無を制御することで実現できる。
【0027】
制御プロセッサ31は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、各構成要素の動作を制御する。また、制御プロセッサ31は、後述するプローブ状態検出機能を用いた表示制御、或いはプローブ状態検出機能を用いた超音波プローブの送信に関する制御を実行する。
【0028】
記憶ユニット32は、後述するプローブ状態検出機能を用いた表示制御、或いはプローブ状態検出機能を用いた超音波プローブの送信に関する制御を実現するためのプログラム、診断プロトコル、送受信条件、その他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、図示しない画像メモリ中の画像の保管などにも使用される。記憶ユニット32のデータは、インターフェースユニット33を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0029】
インターフェースユニット33は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインターフェースである。インターフェースユニット33を介して、他の装置を本超音波診断装置本体11に接続することも可能である。また、当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インターフェースユニット33よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0030】
指標値画像生成ユニット35は、例えば時系列のBモード画像を用いたトラッキング処理を実行し、その結果を用いて組織の運動を示す指標値(例えば、速度、変位、歪み、歪み率等。以下単に「指標値」と呼ぶ)の二次元分布を示す指標値画像を生成する。また、指標値画像生成ユニット35は、例えば組織ドプラモードによって得られたドプラ信号を周波数解析して指標値を計算し、これを用いて指標値画像を生成する。さらに、指標値画像生成ユニット35は、エコー信号(RF信号、I/Q信号)を用いた相関処理によって、上記組織の運動を示す指標値を計算することもできる。なお、本実施形態においては、説明を具体的にするため、複数のBモード画像を用いたトラッキング処理を実行し、その結果を用いて指標値の二次元分布を示す指標値画像を生成する場合を例とする。
【0031】
プローブ状態検出ユニット37は、時系列の組織の指標値を計算し、当該時系列の指標値の変化を計算し、その結果に応じて、超音波プローブ12の空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出する。このプローブ状態検出ユニット37の動作については、後で詳しく説明する。
【0032】
(プローブ状態検出機能を用いた表示制御)
図2は、典型的な組織弾性イメージングにおける処理の流れを示したフローチャートである。同図に示す様に、組織弾性イメージングにおいては、患者情報の入力/組織弾性イメージングを実行するためのシーケンスの選択/送受信条件の入力受/撮影開始指示の入力受(ステップS1)、超音波走査断面の決定(ステップS2)、圧迫・解放に伴う組織構造画像/指標値画像の撮影・生成(ステップS3)、超音波画像の表示(ステップS4)の各ステップが実行される。
【0033】
また、これらの一連の処理に従う組織弾性イメージングにおいて、必要に応じて、診断部位に用手的加振を与えないで超音波プローブを空中放置している状態(以下、単に「空中放置状態」と呼ぶ)となる場合がある。
【0034】
本プローブ状態検出機能を用いた表示制御は、この空中放置状態と、診断部位に用手的加振を与えながら超音波プローブを用いて超音波画像を撮影している等の状態(非空中放置状態)と、を区別して検出し、空中放置状態を検出した場合には、エラストグラフィーとして表示される超音波画像において、指標値画像のカラー表示を「無」とする表示制御を実行するものである。
【0035】
なお、本プローブ状態検出機能を用いた表示制御は、ステップS1の撮影開始入力をトリガとして、ステップS2、S3の処理と並行して繰り返し実行され、ステップS4の超音波画像の表示を制御するものである。
【0036】
図3は、本プローブ状態検出機能を用いた表示制御の流れを示したフローチャートである。同図に従って、各ステップにおける処理を以下説明する。
【0037】
図2のステップS1の撮影開始入力をトリガとして実行される超音波送受信により、所定のフレームレートに従って時系列の指標値画像が逐次取得される(本実施形態では、時系列に取得される画像の時間的な各区分(一単位)を「フレーム」と呼ぶ)。プローブ状態検出ユニット37は、時系列に取得される指標値画像のうち、所定期間に亘るn枚(ただし、nはn≧3を満たす整数)のフレームに対応する複数の指標値画像を取得する(ステップS11)。なお、n枚のフレームは、時間的に連続することが好ましいが、これに限定する趣旨ではない。例えば、長いスパンで観測したいが処理データ量は増やしたくない場合等には、3フレームおきに計5フレームピックアップするといったような、不連続な抽出方法も適用可能である。また、本実施形態では、説明を具体的にするため、現在のフレームと当該現在のフレームから遡って4フレーム分との、合計5フレーム分(すなわち、n=5)の指標値画像を取得するものとする。
【0038】
プローブ状態検出ユニット37は、図4に示す様に、取得した5フレームに対応する複数の指標値画像のそれぞれにROIを設定し、各ROI内の統計量(ここでは平均速度)を計算する(ステップS12)。なお、同図の例では、現在のフレームのROI内の平均速度をV0とし、各フレームにおけるROI内の平均速度を、現在より一つずつフレームが遡るに従ってそれぞれV1、V2、V3、V4とした。なお、プローブ状態検出ユニット37が計算するROI内の統計量としては、速度等の物理量の平均値に拘泥されず、中央値、分散値、最大値、最小値等の値であってもよい。
【0039】
次に、プローブ状態検出ユニット37は、5フレームに対応するV0、V1、V2、V3、V4のうちから二つの組み合わせを、所望の数m個(ただしmは1≦m≦5C2を満たす整数)抽出し、抽出した各組み合わせ(ペア)において、平均速度の差分値の絶対値を計算する(ステップS22、S23)。例えば、m=5C2=10とすれば、プローブ状態検出ユニット37は、5フレームに対応するV0、V1、V2、V3、V4を用いて図5に示す全ての組み合わせを抽出し、全組み合わせに対応する平均速度の差分値の絶対値(以下、単に「差分値」と言う)を計算する。例えば、図5の斜線部分に該当する組み合わせでは、差分値|V0−V3|が計算され、ドット領域に該当する組み合わせでは、差分値|V2−V4|が計算される。
【0040】
次に、プローブ状態検出ユニット37は、ステップS14において得られた各組み合わせに対応する各差分値と所定の閾値Tとの大小関係を比較し、その結果に基づいて、所定の閾値Tよりも大きい差分値が一つ以上あるか否かを判定する(ステップS15)。より具体的には、図6(a)に示す様に、全ての組み合わせに対応する全差分値が所定の閾値Tを下回る場合には、プローブ状態検出ユニット37は、「超音波プローブの空中放置状態を検出した」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(ステップS24のNo=(超音波プローブが)静止している)。一方、図6(b)に示す様に、全ての組み合わせに対応する全差分値のうち、一つでも所定の閾値と同じかそれを上回る場合(同図の例では、|V1−V4|>閾値T)には、プローブ状態検出ユニット37は、「超音波プローブの空中放置状態を検出していない」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(ステップS24のYes=(超音波プローブに)動きがある)。
【0041】
制御プロセッサ31は、プローブ状態検出ユニット37から「超音波プローブの空中放置状態を検出していない」旨の信号を受信した場合には、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいて指標値画像のROI内にカラー画像が表示されるように、表示処理ユニット30を制御する(ステップS16)。一方、プローブ状態検出ユニット37から「超音波プローブの空中放置状態を検出した」旨の信号を受信した場合には、制御プロセッサ31は、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいてにおいて指標値画像のROI内にカラー画像が表示されないように、表示処理ユニット30を制御する(ステップS17)。
【0042】
図7(a)は、従来の超音波診断装置において、空中放置状態下で表示されるエラストグラフィーの一例を示した図である。図7(b)は、ステップ15において「超音波プローブの空中放置状態を検出した」と判定され、ステップS17において現在のフレームに対応する指標値画像のROI内にカラー画像が表示されないように表示制御されたエラストグラフィーを説明するための図である。なお、図7(a)、(b)いずれにおいても、上段は「超音波プローブにゼリーの塗布なし」での空中放置状態を、下段は「超音波プローブにゼリーの塗布あり」での空中放置状態を、それぞれ示している。
【0043】
図7(b)に示す様に、ステップS17における表示制御の結果、「超音波プローブにゼリーの塗布なし」、「超音波プローブにゼリーの塗布あり」のいずれの空中放置状態であっても、「空中放置状態」が検出された場合には、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいて指標値画像のROI内にカラー画像が表示されることはない。これに対し、従来の超音波診断装置においては、超音波プローブの「空中放置状態」を検出することができず、図7(a)に示す様に、「空中放置状態」であっても現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいて指標値画像のROI内にカラー画像が表示されることになる。
【0044】
(変形例)
上記第1の実施形態に係る超音波診断装置は、ROI内の運動速度の平均値を計算し、所定期間内の各フレーム間の組み合わせ毎に平均値の差分値を計算し、その結果に基づいて指標値画像のカラー表示の有無を制御するものであった。これに対し、変形例に係る超音波診断装置は、ROI全体での速度平均値を用いるのではなく、ROI内にさらに複数の局所領域を設定し、各局所領域内の運動速度の平均値を計算し、所定期間内の各フレーム間の組み合わせ毎に対応する局所領域の平均値の差分値を計算し、その結果に基づいて指標値画像の局所領域に対してカラー表示の有無を制御するものである。
【0045】
図8は、現在のフレームに対応する指標値画像のROI内に設定された局所領域a、bと、現在のフレームから遡って3つ前までの各フレームに対応する指標値画像のROI内に設定された局所領域a、bとを示した図である。
【0046】
プローブ状態検出ユニット37は、時系列に取得される指標値画像のうち、所定期間に亘る4のフレームに対応する指標値画像を取得する(図3のステップS11に対応)。プローブ状態検出ユニット37は、取得した4フレームに対応する複数の指標値画像のそれぞれにROIを設定し、各ROI内の各局所領域についてそれぞれ平均速度を計算する(図3のステップS12に対応)。なお、同図の例では、現在のフレームの局所領域a内の平均速度をV0aとし、各フレームにおける局所領域a内の平均速度を、現在より一つずつフレームが遡るに従ってそれぞれV0a、V1a、V2a、V3aとした。同じく、現在のフレームの局所領域b内の平均速度をV0bとし、各フレームにおける局所領域b内の平均速度を、現在より一つずつフレームが遡るに従ってそれぞれV1b、V2b、V3bとした。
【0047】
次に、プローブ状態検出ユニット37は、4フレームに対応するV0a、V1a、V2a、V3a(V0b、V1b、V2b、V3b)のうちから二つの組み合わせを、所望の数m個(ただしmは1≦m≦4C2を満たす整数)抽出し、抽出した各組み合わせ(ペア)において、平均速度の差分値の絶対値を計算する(図3のステップS12、S13に対応)。例えば、m=4C2=6とすれば、プローブ状態検出ユニット37は、4フレームに対応するV0a、V1a、V2a、V3a(V0b、V1b、V2b、V3b)を用いて全ての組み合わせを抽出し、全組み合わせに対応する平均速度の差分値を、局所領域a、bのそれぞれについて計算する。
【0048】
次に、プローブ状態検出ユニット37は、各組み合わせに対応する各差分値と所定の閾値Tとの大小関係を、局所領域a、bのそれぞれについて比較し、その結果に基づいて、所定の閾値Tよりも大きい差分値が一つ以上あるか否かを判定する(図3のステップS15に対応)。係る判定において、全ての組み合わせに対応する全差分値が所定の閾値Tを下回る場合には、プローブ状態検出ユニット37は、当該局所領域については、「歪みを生じない生体組織である」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(図3のステップS15のNo=に対応)。一方、全ての組み合わせに対応する全差分値のうち、一つでも所定の閾値と同じかそれを上回る場合には、プローブ状態検出ユニット37は、当該局所領域については、「歪みを生じる生体組織である」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(図3のステップS15のYes=に対応)。
【0049】
より具体的には、局所領域aについては、各組み合わせに対応する各差分値と所定の閾値Tとの大小関係が、図9(a)に示す様に、全6個の組み合わせに係る差分値のうち、|V0a−V1a|、|V0a−V3a|、|V1a−V2a|、|V1a−V3a|、|V2a−V3a|の5つの差分値が、所定の閾値Tを上回ったとする。係る場合、プローブ状態検出ユニット37は、所定の閾値Tよりも大きい差分値が一つ以上存在することから、「歪みを生じる生体組織である」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す。
【0050】
一方、局所領域bについては、各組み合わせに対応する各差分値と所定の閾値Tとの大小関係が、図9(b)に示す様に、全6個の組み合わせに係る差分値の全てが所定の閾値Tを下回ったとする。係る場合、プローブ状態検出ユニット37は、所定の閾値Tよりも大きい差分値が一つも存在しないことから、「歪みを生じない生体組織である」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す。
【0051】
制御プロセッサ31は、プローブ状態検出ユニット37から「歪みを生じる生体組織である」旨の信号を受信した局所領域a(或いはその近傍を含む領域)については、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいて指標値画像のROI内の局所領域aにカラー画像が表示されるように、表示処理ユニット30を制御する(図3のステップS16に対応)。一方、プローブ状態検出ユニット37から「歪みを生じない生体組織である」旨の信号を受信した局所領域b(或いはその近傍を含む領域)については、制御プロセッサ31は、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいてに指標値画像のROI内の局所領域bにカラー画像が表示されないように、表示処理ユニット30を制御する(図3のステップS17に対応)。
【0052】
図11に示す様に、本変形例によれば、「歪みが生じない生体組織である」ことが検出された局所領域bについては、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいて指標値画像のROI内の局所領域bがカラー表示されることはない。
【0053】
これに対し、従来の超音波診断装置においては、図10に示す様に、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいて指標値画像のROI内の局所領域bにカラー画像が表示されることになる。
【0054】
なお、「歪みを生じない生体組織である」と判定された局所領域bは、気管内部・血管内部などの領域であると考えられる。エラストグラフィーでのカラー表示は、指標値画像に設定されたROI内の指標値(例えば、歪み値)を相対的にマッピングしたものである。本変形例によれば、局所領域bの様な気管内部・血管内部等の領域を除外しての指標値を計算することにより、組織の動きが検出される領域での歪みをより精度よく計算することが可能となる。
【0055】
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0056】
本超音波診断装置によれば、超音波プローブの空中放置状態と、診断部位に用手的加振を与えながら超音波プローブを用いて超音波画像を撮影している等の非空中放置状態と、を区別して検出し、空中放置状態を検出した場合には、エラストグラフィーとして表示される超音波画像において、指標値画像のカラー表示を「無」とする表示制御を実行する。従って、空中放置状態であるにも関わらず指標値画像のカラー表示が実行されてしまうといった事態を回避することができ、その結果、ユーザーや患者に対し、超音波エラストグラフィーを用いた画像診断に不安を与えるという不具合を解消することができる。
【0057】
また、本超音波診断装置では、エラストグラフィーROI全体での速度平均値を用いるのではなく、当該ROI内にさらに複数の局所領域を設定し、各局所領域内の指標値の平均値を計算し、所定期間内の各フレーム間の組み合わせ毎に対応する局所領域の平均値の差分値を計算し、その結果に基づいて指標値画像のカラー表示の有無を局所的に制御する。これにより、各局所領域を基準として指標値画像のカラー表示の有無を制御することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブの空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出し、空中放置状態を検出した場合には、超音波プローブに供給する電力(例えば駆動電圧、駆動周波数等)を低下させる等、超音波プローブの送信に関する制御を実行するものである。
【0059】
図12は、第2の実施形態に係るプローブ状態検出機能を用いた表示制御の流れを示したフローチャートである。同図に従って、各ステップにおける処理を以下説明する。
【0060】
図2のステップS1の撮影開始入力をトリガとして実行される超音波送受信により、所定のフレームレートに従って時系列の指標値画像が逐次取得される。プローブ状態検出ユニット37は、時系列に取得される受信信号(或いは、Bモード画像の同一位置の輝度情報等)のうち、超音波走査断面において同一位置に対応し所定期間に亘るn個(ただし、nはn≧3を満たす整数)の受信信号を取得する(ステップS21)。なお、n個の受信信号は、時間的に連続することが好ましいが、これに拘泥されないのは、前述の通りである。
【0061】
プローブ状態検出ユニット37は、取得したn個の受信信号のうちから二つの組み合わせを、所望の数m個(ただしmは1≦m≦nC2を満たす整数)抽出し、抽出した各組み合わせ(ペア)において、受信信号の差分値の絶対値を計算する(ステップS22、S23)。プローブ状態検出ユニット37は、ステップS23において得られた各組み合わせに対応する各差分値と所定の閾値Tとの大小関係を比較し、その結果に基づいて、所定の閾値Tよりも大きい差分値が一つ以上あるか否かを判定する(ステップS24)。その結果、全ての組み合わせに対応する全差分値が所定の閾値Tを下回る場合には、プローブ状態検出ユニット37は、「超音波プローブの空中放置状態を検出した」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(ステップS24のNo=(超音波プローブが)静止している)。一方、全ての組み合わせに対応する全差分値のうち、一つでも所定の閾値と同じかそれを上回る場合には、プローブ状態検出ユニット37は、「超音波プローブの空中放置状態を検出していない」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(ステップS24のYes=(超音波プローブに)動きがある)。
【0062】
制御プロセッサ31は、プローブ状態検出ユニット37から「超音波プローブの空中放置状態を検出していない」旨の信号を受信した場合には、超音波診断装置において設定された、超音波プローブ12の送信パワーを維持するように、超音波送信ユニット21を制御する(ステップS25)。一方、プローブ状態検出ユニット37から「超音波プローブの空中放置状態を検出した」旨の信号を受信した場合には、制御プロセッサ31は、超音波診断装置において設定された、超音波プローブ12の送信パワーを弱めるように、超音波送信ユニット21を制御する(ステップS26)。
【0063】
なお、本実施形態に係るプローブ状態検出機能についても、ステップS1の撮影開始入力をトリガとして、ステップS2、S3の処理と並行して繰り返し実行され、超音波プローブ12の送信パワーに関する制御を実行する。
【0064】
また、本プローブ状態検出機能を用いた超音波プローブの送信に関する制御は、第1の実施形態において説明したプローブ状態検出機能を用いた表示制御と併せて実行することも、もちろん可能である。
【0065】
以上述べた本超音波診断装置によれば、超音波プローブの空中放置状態と、診断部位に用手的加振を与えながら超音波プローブを用いて超音波画像を撮影している等の非空中放置状態と、を区別して検出し、空中放置状態を検出した場合には、超音波プローブに供給する電力を低下させる等、超音波プローブの送信に関する制御を実行する。例えばユーザーがフリーズ操作を忘れて超音波プローブを空中放置した場合、そのまま放置するとプローブの劣化を早める原因となるが、本装置によれば、超音波プローブの送信パワーを自動的に低下させることができる。その結果、従来の超音波診断装置と比較して、超音波プローブの劣化の早まりを防ぐことができる。
【0066】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。第1及び第2の実施形態に係る超音波診断装置においては、時系列に取得された指標値画像に設定された各ROI内の平均速度等に基づいて、超音波プローブの空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出する場合について説明した。本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブの位置に基づいて、当該超音波プローブの空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出する場合について説明する。
【0067】
図15は、本実施形態に係る超音波診断装置1Aのブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置1Aは、超音波診断装置本体11、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14を具備している。本超音波診断装置本体11は、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、RAWデータメモリ25、ボリュームデータ生成ユニット26、画像処理ユニット28、表示処理ユニット30、制御プロセッサ(CPU)31、記憶ユニット32、インターフェースユニット33、指標値画像生成ユニット35、プローブ状態検出ユニット37Aを具備している。超音波診断装置1Aには、走査断面位置センサ41が接続されている。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0068】
磁場発生装置39は、被検体の近傍に設けられる。磁場発生装置39は、超音波プローブ12に設けられる走査断面位置センサ41が操作断面の位置を計算するための磁場を発生する。磁場発生装置39の位置は、記憶ユニット32に予め記憶される。
【0069】
走査断面位置センサ41は、超音波プローブ12の所定の位置に設けられる。走査断面位置センサ41は、例えば磁気センサである。走査断面位置センサ41は、磁場発生装置39が発生する磁場を検出し、当該検出した磁場に基づいて走査断面の位置を計算する。計算された走査断面の位置は、インターフェースユニット33を介して装置本体11内へリアルタイムに送り出される。
【0070】
プローブ状態検出ユニット37Aは、走査断面位置センサ41からリアルタイムに送り出される走査断面の位置に基づいて、超音波プローブの空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出する。このプローブ状態検出ユニット37Aの動作については、後で詳しく説明する。
【0071】
図16は、第3の実施形態に係るプローブ状態検出機能を用いた表示制御の流れを示したフローチャートである。同図に従って、各ステップにおける処理を以下説明する。
【0072】
図2のステップS1の撮影開始入力をトリガとして実行される超音波送受信により、所定のフレームレートに従って時系列の指標値画像が逐次取得される。
【0073】
また、ステップS1の撮影開始入力をトリガとして磁場発生装置39は、磁場の発生を開始する。また、ステップS1の撮影開始入力をトリガとして走査断面位置センサ41は、磁場の検出及び走査断面の位置の計算を開始する。
【0074】
プローブ状態検出ユニット37Aは、走査断面位置センサ41からリアルタイムに送り出される走査断面の位置を取得する(ステップ31)。
【0075】
プローブ状態検出ユニット37Aは、取得した走査断面の位置と、記憶ユニット32に記憶された磁場発生装置39の位置とに基づいて、磁場発生装置39と超音波プローブ12の間の距離を計算する(ステップ32)。
【0076】
プローブ状態検出ユニット37Aは、磁場発生装置39と超音波プローブ12の間の距離が所定の閾値D以下か否かを判定する(ステップ33)。
【0077】
プローブ状態検出ユニット37Aは、磁場発生装置39と超音波プローブ12の間の距離が所定の閾値D以下であると判定した場合、「超音波プローブの空中放置状態を検出していない」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(ステップ33のYes=測定中)。
【0078】
プローブ状態検出ユニット37Aは、磁場発生装置39と超音波プローブ12の間の距離が所定の閾値Dを超えると判定した場合、「超音波プローブの空中放置状態を検出した」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(ステップ33のNo=非測定中)。
【0079】
制御プロセッサ31は、プローブ状態検出ユニット37Aから「超音波プローブの空中放置状態を検出していない」旨の信号を受信した場合には、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいて指標値画像のROI内にカラー画像が表示されるように、表示処理ユニット30を制御する(ステップS34)。一方、プローブ状態検出ユニット37Aから「超音波プローブの空中放置状態を検出した」旨の信号を受信した場合には、制御プロセッサ31は、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいてにおいて指標値画像のROI内にカラー画像が表示されないように、表示処理ユニット30を制御する(ステップS35)。
【0080】
また、本プローブ状態検出機能を用いた表示制御は、第2の実施形態において説明した超音波プローブの送信に関する制御と併せて実行することも、もちろん可能である。
【0081】
本超音波診断装置によれば、被検体の近傍に設けられた磁場発生装置の位置と、超音波プローブの走査断面の位置の間の距離に基づいて、超音波プローブの空中放置状態と、診断部位に用手的加振を与えながら超音波プローブを用いて超音波画像を撮影している等の非空中放置状態と、を区別して検出し、空中放置状態を検出した場合には、エラストグラフィーとして表示される超音波画像において、指標値画像のカラー表示を「無」とする表示制御を実行する。従って、空中放置状態であるにも関わらず指標値画像のカラー表示が実行されてしまうといった事態を回避することができ、その結果、ユーザーや患者に対し、超音波エラストグラフィーを用いた画像診断に不安を与えるという不具合を解消することができる。
【0082】
なお、上記説明では、磁場発生装置39と超音波プローブ12の間の距離と所定の閾値Dとの比較結果によって、超音波プローブの空中放置状態を検出したがこれに限定されない。例えば、所定の基準位置からの超音波プローブ12の相対的な位置に基づいて、超音波プローブの空中放置状態を検出してもよい。
【0083】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る超音波診断装置について説明する。第3の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブの位置に基づいて、当該超音波プローブの空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出する場合について説明した。本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブの姿勢と所定の姿勢の状態が維持される経過時間に基づいて、当該超音波プローブの空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出する場合について説明する。
【0084】
図17は、本実施形態に係る超音波診断装置1Bのブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置1Bは、超音波診断装置本体11、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14を具備している。本超音波診断装置本体11は、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、RAWデータメモリ25、ボリュームデータ生成ユニット26、画像処理ユニット28、表示処理ユニット30、制御プロセッサ(CPU)31、記憶ユニット32、インターフェースユニット33、指標値画像生成ユニット35、プローブ状態検出ユニット37Bを具備している。超音波診断装置1Bには、走査断面姿勢センサ43が接続されている。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0085】
走査断面姿勢センサ43は、超音波プローブ12の所定の位置に設けられる。走査断面姿勢センサ43は、例えばジャイロセンサである。走査断面姿勢センサ43は、予め設定された基準姿勢の情報を保持している。走査断面姿勢センサ43は、超音波プローブ12の移動により発生する角速度を検出する。走査断面姿勢センサ43は、基準姿勢の情報と検出した角速度に基づいて、超音波プローブ12の走査断面の姿勢を計算する。計算された走査断面の姿勢は、インターフェースユニット33を介して装置本体11内へリアルタイムに送り出される。
【0086】
プローブ状態検出ユニット37Bは、走査断面姿勢センサ43からリアルタイムに送り出される走査断面の姿勢に基づいて、超音波プローブの空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出する。このプローブ状態検出ユニット37Bの動作については、後で詳しく説明する。
【0087】
図18は、第4の実施形態に係るプローブ状態検出機能を用いた表示制御の流れを示したフローチャートである。同図に従って、各ステップにおける処理を以下説明する。
【0088】
図2のステップS1の撮影開始入力をトリガとして実行される超音波送受信により、所定のフレームレートに従って時系列の指標値画像が逐次取得される。
【0089】
また、ステップS1の撮影開始入力をトリガとして走査断面姿勢センサ43は、角速度の検出及び走査断面の姿勢の計算を開始する。
【0090】
プローブ状態検出ユニット37Bは、走査断面姿勢センサ43からリアルタイムに送り出される走査断面の姿勢を取得する(ステップ41)。
【0091】
プローブ状態検出ユニット37Bは、取得した走査断面の姿勢が上向きでないか否かを判定する(ステップ42)。「上向き」とは、例えば、超音波プローブ12の軸と鉛直方向とのなす角が所定の角度以内になった状態である。
【0092】
プローブ状態検出ユニット37Bは、走査断面の姿勢が上向きでないと判定した場合、「超音波プローブの空中放置状態を検出していない」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(ステップ42のYes=測定中)。
【0093】
プローブ状態検出ユニット37Bは、走査断面の姿勢が上向きであると判定した場合、走査断面の姿勢が上向きの状態が所定の時間以上継続するか否か判定する(ステップ43)。
【0094】
プローブ状態検出ユニット37Bは、走査断面の姿勢が上向きの状態が所定の時間以上継続した場合、「超音波プローブの空中放置状態を検出した」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(ステップ43のYes=非測定中)。
【0095】
プローブ状態検出ユニット37Bは、走査断面の姿勢が上向きの状態が所定の時間継続せず別の姿勢に変化した場合、「超音波プローブの空中放置状態を検出していない」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(ステップ43のNo=測定中)。
【0096】
制御プロセッサ31は、プローブ状態検出ユニット37Bから「超音波プローブの空中放置状態を検出していない」旨の信号を受信した場合には、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいて指標値画像のROI内にカラー画像が表示されるように、表示処理ユニット30を制御する(ステップS44)。一方、プローブ状態検出ユニット37Bから「超音波プローブの空中放置状態を検出した」旨の信号を受信した場合には、制御プロセッサ31は、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいてにおいて指標値画像のROI内にカラー画像が表示されないように、表示処理ユニット30を制御する(ステップS45)。
【0097】
また、本プローブ状態検出機能を用いたプローブ状態検出機能を用いた表示制御は、第2の実施形態において説明した超音波プローブの送信に関する制御と併せて実行することも、もちろん可能である。
【0098】
本超音波診断装置によれば、超音波プローブの姿勢と所定の姿勢の状態が維持される経過時間に基づいて、当該超音波プローブの空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出し、空中放置状態を検出した場合には、エラストグラフィーとして表示される超音波画像において、指標値画像のカラー表示を「無」とする表示制御を実行する。従って、空中放置状態であるにも関わらず指標値画像のカラー表示が実行されてしまうといった事態を回避することができ、その結果、ユーザーや患者に対し、超音波エラストグラフィーを用いた画像診断に不安を与えるという不具合を解消することができる。
【0099】
(第5の実施形態)
本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブの送受信状態及び当該超音波プローブがホルダに格納されているか否かに基づいて、当該超音波プローブの空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出する場合について説明する。
【0100】
図19は、本実施形態に係る超音波診断装置1Cのブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置1Cは、超音波診断装置本体11、超音波プローブ12、入力装置13、モニター14を具備している。本超音波診断装置本体11は、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、RAWデータメモリ25、ボリュームデータ生成ユニット26、画像処理ユニット28、表示処理ユニット30、制御プロセッサ(CPU)31、記憶ユニット32、インターフェースユニット33、指標値画像生成ユニット35、プローブ状態検出ユニット37Cを具備している。装置本体11の近傍には、プローブホルダ45が設けられている。また、超音波プローブ12には、プローブIDを記憶させたICカードチップが貼付けられている。なお、以下の説明において超音波プローブ12は、複数であるとする。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0101】
記憶ユニット32は、複数の超音波プローブ12のプローブ情報を記憶する。プローブ情報には、複数の超音波プローブ12のそれぞれに対応するプローブIDが含まれる。
【0102】
プローブホルダ45は、装置本体11の近傍に設けられる。プローブホルダ45は、撮影に使用していない超音波プローブ12を格納する。また、プローブホルダ45は、撮影中に超音波プローブ12を一時的に格納する。プローブホルダ45は、超音波プローブ12のプローブホルダ45への移動に伴う誘導起電力を発生させるためのコイル451を有する。また、プローブホルダ45は、格納検出センサ452を有する。
【0103】
格納検出センサ452は、超音波プローブ12のプローブホルダ45への格納を契機として、超音波プローブ12のプローブホルダ45への移動に伴う誘導起電力の変化に基づいて、超音波プローブ12を検出する。格納検出センサ452は、当該超音波プローブ12に貼付けられたICカードチップに記憶されたプローブIDをコイル451を用いて読み取ることで、超音波プローブ12を識別する。
【0104】
超音波プローブ12を検出した旨及び当該超音波プローブ12のプローブIDは、インターフェースユニット33を介して装置本体11内へリアルタイムに送り出される。
【0105】
プローブ状態検出ユニット37Cは、格納検出センサ452からリアルタイムに送り出される、超音波プローブ12を検出した旨及び当該超音波プローブ12のプローブIDに基づいて、超音波プローブの空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出する。プローブ状態検出ユニット37Cは、超音波送信ユニット21及び超音波受信ユニット22を監視し、超音波送受信状態を取得する。このプローブ状態検出ユニット37Cの動作については、後で詳しく説明する。
【0106】
図20は、第5の実施形態に係るプローブ状態検出機能を用いた表示制御の流れを示したフローチャートである。同図に従って、各ステップにおける処理を以下説明する。
【0107】
図2のステップS1の撮影開始入力をトリガとして実行される超音波送受信により、所定のフレームレートに従って時系列の指標値画像が逐次取得される。
【0108】
プローブ状態検出ユニット37Cは、ステップS1の撮影開始入力をトリガとして、超音波送信ユニット21及び超音波受信ユニット22を監視する(ステップ51)。
【0109】
プローブ状態検出ユニット37Cは、超音波送受信状態が超音波送受信中であるか否かを判定する(ステップ52)。
【0110】
プローブ状態検出ユニット37Cは、超音波送受信状態が超音波送受信中であった場合(ステップ52のYes)、格納検出センサ452からリアルタイムに送り出される、超音波プローブ12を検出した旨に基づいて、超音波プローブ12がプローブホルダ45に格納されているか否か判定する(ステップ53)。このとき、プローブ状態検出ユニット37Cは、超音波送受信中である超音波プローブ12に対応するプローブIDを記憶ユニット32から読み出す。
【0111】
プローブ状態検出ユニット37Cは、超音波プローブ12がプローブホルダ45に格納されていると判定した場合(ステップ53のYes)、格納検出センサ452から送り出されるプローブIDと、超音波送受信中である超音波プローブ12に対応するプローブIDとを比較することで、当該格納されている超音波プローブ12が、超音波送受信中でないか否か判定する(ステップ54)。
【0112】
プローブ状態検出ユニット37Cは、当該格納されている超音波プローブ12が、超音波送受信中でない場合、「超音波プローブの空中放置状態を検出していない」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(ステップ54のYes=測定中)。
【0113】
プローブ状態検出ユニット37Cは、当該格納されている超音波プローブ12が、超音波送受信中である場合、「超音波プローブの空中放置状態を検出した」と判定し、その旨を示す信号を制御プロセッサ31に送り出す(ステップ54のNo=非測定中)。
【0114】
制御プロセッサ31は、プローブ状態検出ユニット37Cから「超音波プローブの空中放置状態を検出していない」旨の信号を受信した場合には、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいて指標値画像のROI内にカラー画像が表示されるように、表示処理ユニット30を制御する(ステップS55)。一方、プローブ状態検出ユニット37Cから「超音波プローブの空中放置状態を検出した」旨の信号を受信した場合には、制御プロセッサ31は、現在のフレームに対応するエラストグラフィーにおいてにおいて指標値画像のROI内にカラー画像が表示されないように、表示処理ユニット30を制御する(ステップS56)。
【0115】
また、本プローブ状態検出機能を用いたプローブ状態検出機能を用いた表示制御は、第2の実施形態において説明した超音波プローブの送信に関する制御と併せて実行することも、もちろん可能である。
【0116】
本超音波診断装置によれば、超音波プローブの送受信状態及び当該超音波プローブがホルダに格納されているか否かに基づいて、当該超音波プローブの空中放置状態と非空中放置状態とを区別して検出し、空中放置状態を検出した場合には、エラストグラフィーとして表示される超音波画像において、指標値画像のカラー表示を「無」とする表示制御を実行する。従って、空中放置状態であるにも関わらず指標値画像のカラー表示が実行されてしまうといった事態を回避することができ、その結果、ユーザーや患者に対し、超音波エラストグラフィーを用いた画像診断に不安を与えるという不具合を解消することができる。
【0117】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0118】
(1)上記各実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0119】
(2)上記各実施形態においては、エラストグラフィーの対象とする領域を二次元領域(二次元断面)とする場合を例としたが、三次元領域を対象とすることも可能である。係る場合には、三次元領域をボリュームスキャンすると共に、三次元ROIを用いて既述のプローブ状態検出を実行し、その結果に基づいて指標値画像のカラー表示に関する制御及び超音波プローブの送信に関する制御のうち、少なくとも一方を実行すればよい。
【0120】
(3)上記各実施形態においては、組織構造画像としてのBモード画像、及びこれを用いて生成された指標値画像によるエラストグラフィーについて、プローブ状態検出機能を適用する場合を例示した。しかしながら、当該例に拘泥されず、例えば組織ドプラモードによって、組織構造画像及び指標値画像を取得するようにしてもよい。
【0121】
(4)図3のステップS15、図12のステップS24の判定において用いた所定の閾値Tは、例えばエラストグラフィーにおいて設定される速度レンジ(スケール)等に応じて、任意に変更可能であることが好ましい。これにより、圧迫・解放の強度に応じたプローブの状態検出を実現することができる。
【0122】
(5)一般に、超音波プローブの送信条件が変わると、オフセット成分も影響を受ける。このため、フレーム間で組織の動きを判定するためには、組織に対応する信号値(又は画素値)を基準とするのではなく、フレーム間の信号値(又は画素値)の変化量を基準とする必要がある。すなわち、上記各実施形態においては、所定期間に亘るn枚のフレームを用いた全ての組み合わせを集出し、組み合わせ毎の差分を計算し、所定の閾値Tとの比較を行った。しかしながら、フレーム間の信号値(又は画素値)の変化量を判定の基準とするものであれば、上記実施形態の例に拘泥されない。従って、例えば、所定期間に亘るnフレーム分のROI内の平均速度のうち、最大値と最小値との差と、所定の閾値との大小関係に基づいて、超音波プローブの空中放置状態を検出するようにしてもよい。
【0123】
(6)第3の実施形態では、被検体の近傍に設けられた磁場発生装置の位置と、超音波プローブ12の走査断面の位置の間の距離に基づいて、超音波プローブの空中放置状態と、診断部位に用手的加振を与えながら超音波プローブを用いて超音波画像を撮影している等の非空中放置状態と、を区別して検出したがこれに限定されない。例えば、プローブ状態検出ユニット37Aは、カメラ等で撮影された超音波プローブ及び被検体を含む画像診断の様子を表す画像を、入力装置13を介して取得する。プローブ状態検出ユニット37Aは、撮影した画像に基づいて超音波プローブの走査断面の位置と被検体の位置の間の距離を計算し、走査断面の位置と被検体の位置の間の距離に基づいて、超音波プローブの空中放置状態と、診断部位に用手的加振を与えながら超音波プローブを用いて超音波画像を撮影している等の非空中放置状態と、を区別して検出するようにしてもよい。
【0124】
(7)上記各実施形態においては、組織構造画像として、Bモード画像等を前提としたがこれに限定されない。例えば、組織構造画像は、X線CT画像等、超音波診断装置以外の他のモダリティにより取得された画像であってもよい。
【0125】
(8)上記各実施形態においては、組織弾性イメージングについて、プローブ状態検出機能を適用する場合を例示した。しかしながら、当該例に拘泥されず、カラードプラ法、減衰イメージング、パラメトリックイメージング、シアウェーブを用いた撮影、フュージョン撮影等の他の撮影方法にプローブ状態検出機能を適用してもよい。
【0126】
(9)上記第3乃至第5の各実施形態については、各実施形態を任意に組み合わせてもよい。例えば、第3の実施形態と第4の実施形態を組み合わせた場合、プローブ状態検出ユニットは、超音波プローブの位置及び姿勢に基づいて、アクティブ状態の前記超音波プローブの放置を検出する。
【0127】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1、1A、1B、1C…超音波診断装置、11…超音波診断装置本体、12…超音波プローブ、13…入力装置、14…モニター、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…血流検出ユニット、25…RAWデータメモリ、26…ボリュームデータ生成ユニット、28…画像処理ユニット、30…表示処理ユニット、31…制御プロセッサ、32…記憶ユニット、33…インターフェースユニット、35…指標値画像生成ユニット、37、37A、37B、37C…プローブ状態検出ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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