特許第6571548号(P6571548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571548
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】釣り用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/0155 20060101AFI20190826BHJP
   A01K 89/015 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   A01K89/0155
   A01K89/015 Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-10628(P2016-10628)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2017-127285(P2017-127285A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】沼田 史英
(72)【発明者】
【氏名】滝 憲和
(72)【発明者】
【氏名】石川 裕一朗
(72)【発明者】
【氏名】新妻 翔
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−034429(JP,A)
【文献】 特開2014−082938(JP,A)
【文献】 特開平04−104750(JP,A)
【文献】 特開昭63−087927(JP,A)
【文献】 特開2000−201601(JP,A)
【文献】 特開2013−172704(JP,A)
【文献】 特開平11−103736(JP,A)
【文献】 米国特許第04940194(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 − 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸を前方に繰り出す釣り用リールであって、
リール本体と、
前記リール本体に糸巻き取り方向と糸繰り出し方向とに回転可能に支持されるスプールと、
少なくとも前記スプールの糸繰り出し方向の回転によって前記スプールを発電制動するスプール制動部と、
前記スプール制動部の制動力を制御するためのスプール制御部と、
前記制動部で発電される電力で動作する電気部品と、
前記電気部品への供給電圧を昇圧する昇圧回路と、
を備える釣り用リール。
【請求項2】
前記昇圧回路は前記スプール制御部から出力される制御信号を昇圧する、請求項1に記載の釣り用リール
【請求項3】
前記スプール制動部は、
前記スプールと一体回転可能に連結され、周方向に複数の磁極を有する磁石と、
前記磁石の外周側に前記スプールの回転方向に並べて配置された複数のコイルと、を有する、請求項1または2に記載の釣り用リール。
【請求項4】
前記スプールの回転を検出する回転検出部と、
前記回転検出部の出力によって、前記スプールの回転速度を算出する回転速度算出部と、
前記回転速度算出部の算出結果に基づいて、前記スプールの減速度を算出する減速度算出部をさらに備え、
前記減速度算出部が所定の減速度以上の減速度を算出したとき、前記スプール制御部は、そのときの最大制動力で前記スプールを制動する、請求項1から3に記載の釣り用リール。
【請求項5】
前記スプール制動部が発電した電力を蓄える蓄電素子をさらに備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の釣り用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用リール、特にスプールの回転を発電制動する釣り用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
釣り用リールにおいて、糸繰り出し方向に高速回転するキャスティング時に、スプールを発電制動し、かつ得られた電力によって制動力を制御する両軸受リールが知られている。従来の両軸受リールでは、スプール制動部は、スプールと一体回転可能な磁石と、磁石の周囲に配置された複数のコイルと、を有する。磁石は回転方向に並べて配置された複数の磁極を有する。複数のコイルは、回転方向に並べて配置される。従来の両軸受リールでは、制御部によって、発電されてコイルを流れる電流をパルス幅変調し、デューティ比を制御することによって制動力を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−208630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の発電制動機構では、キャスティング後期において、スプールの回転速度が遅くなると、発電圧が低くなり、制御部への供給電圧や、スプールを制動するためのデューティ比などの制御信号の電圧が低下し、電気部品が正常に動作しないおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、制動によって生じる電力によって制御用の電気部品を動作させる釣り用リールにおいて、スプールの回転が低速で発電圧が低い場合においても、電気部品の動作が不安定になることを防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る釣り用リールは、釣り糸を前方に繰り出す釣り用リールである。釣り用リールは、リール本体と、スプールと、スプール制動部と、スプール制御部と、電気部品と、昇圧回路と、を備える。スプールは、リール本体に糸巻き取り方向と糸繰り出し方向と、に回転可能に支持される。スプール制動部は、少なくともスプールの糸繰り出し方向の回転によってスプールを発電制動する。スプール制御部は、スプール制動部の制動力を制御する。電気部品は、スプール制動部で発電される電力によって動作する。昇圧回路は、電気部品への供給電圧を昇圧する。
【0007】
この釣り用リールでは、昇圧回路によって、電気部品への供給電圧を昇圧させる。これによって、発電圧が低い場合においても、電気部品の動作が不安定になることを防ぐことができる。
【0008】
釣り用リールの昇圧回路はスプール制御部から出力される制御信号を昇圧するものであってよい。この場合、電圧低下の影響を受けやすく、かつ制御自体に大きな影響を及ぼす制御信号を昇圧するので、電気部品の動作、さらにそれに影響された制御自体の動作が不安定になることを防ぐことができる。
【0009】
スプール制動部は、磁石と、複数のコイルと、を有してもよい。磁石は、スプールと一体回転可能に連結され、周方向に複数の磁極を有してもよい。複数のコイルは、磁石の外周側にスプールの回転方向に並べて配置されてもよい。この構成によれば、スプールの回転によって容易に発電できる。
【0010】
釣り用リールは、回転検出部と回転速度算出部と減速度算出部とをさらに備えてもよい。回転検出部は、スプールの回転を検出する。回転速度算出部は、回転検出部の出力からスプールの回転速度を算出する。減速度算出部は、回転速度算出部の算出結果に基づいて、スプールの減速度を算出する。減速度算出部が所定の減速度以上の減速度を算出したとき、スプール制動部は、そのときの最大制動力でスプールを制動してもよい。この構成によれば、急減速時に、そのときの最大制動力(例えば、100パーセントデューティ)でスプールを制動するので、スプールの回転速度が急減速しても、バックラッシュが生じにくくなる。
【0011】
釣り用リールは、スプール制動部が発電した電力を蓄える蓄電素子をさらに備えてもよい。この構成によれば、蓄電素子に電力を蓄えることができるので、スプール制動部による発電が終了しても、蓄電素子が電力供給不能状態になるまで、制御動作を維持できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発電圧が低い場合においても、電気部品の動作が不安定になることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による釣り用リールである両軸受リールの斜視図。
図2】そのスプール制動機構を含む両軸受リールの分解斜視図。
図3】回路基板及びコイルをカバー部材で覆った状態のスプール制動部の断面図。
図4】スプール制動機構の斜視図。
図5】回路基板及び磁束遮蔽部材の分解斜視図。
図6】回路基板の第2面側の底面図。
図7】スプール制動機構の構成を示すブロック図。
図8】キャスティング時のスプールの回転速度と制動力の変化を説明するためのグラフ。
図9】スプール制御部の制御動作の一例を示すフローチャート。
図10】他の実施形態の図7に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<全体構成>
図1図2図3及び図7において、本発明の一実施形態による釣り用リールとしての両軸受リール100は、小型のベイトキャスティングリールである。両軸受リール100は、リール本体1と、ハンドル2と、スプール12と、スプール制動部22(図2及び図7参照)と、スプール制御部25を含む電気部品18(図7参照)と、回転検出部31(図7参照)と、昇圧回路41(図7参照)と、を備える。
【0015】
<リール本体>
リール本体1は、一体形成されたフレーム5と、フレーム5のハンドル2と反対側に配置される第1側カバー6と、ハンドル2側に配置される第2側カバー7と、を有する。
【0016】
フレーム5は、図2に示すように、ハンドル2と逆側に配置された第1側板5aと、第1側板5aと対向して配置される第2側板5bと、第1側板5aと第2側板5bとを連結する複数の連結部5cと、サムレスト9と、を有する。第1側板5aは、スプール12が通過可能な円形の開口5dを有する。複数の連結部5cのうち、第1側板5aと第2側板5bを下側で連結する連結部5cには、釣り竿に装着される竿取付脚5eが設けられる。開口5dの周囲で、フレーム5の第1側板5aにスプール制動機構20が着脱可能に設けられる。第1側カバー6は、フレーム5の第1側板5aに着脱可能に装着される。第1側カバー6は、カバー本体6aと、カバー本体6aの内側面6bに装着される軸支持部8と、を有する。
【0017】
カバー本体6aの内側面6bには、軸支持部8を固定するための複数(例えば3つ)の固定ボス部6cが形成される。また、内側面6bには、スプール制動機構20の後述する第1選択部32及び第2選択部34を回動自在に装着するための第1装着ボス部6d及び第2装着ボス部6eが各別に形成される。第1装着ボス部6dは、第1軸X1を中心に筒状に形成される。第2装着ボス部6eは、第1軸X1と平行な第2軸X2を中心に形成される。第2軸X2は、第1軸X1よりも前方かつ竿取付脚5eに接近して配置される。第1軸X1は、カバー本体6aが第1側板5aに装着された状態で、後述するスプール軸16と同芯に配置される。
【0018】
カバー本体6aは、サムレスト9に接触可能に配置され、サムレスト9の後述する第1張り出し部9aによって覆われる。カバー本体6aの第1張り出し部9aによって覆われる部分では、第1選択部32が露出可能な矩形の第1開口部6fが形成される。このため、第1選択部32は、図に示すように、第1側カバー6をフレーム5から外さないと操作できない。カバー本体6aの第2装着ボス部6eの下方には、第2選択部34が外部に突出可能な矩形の第2開口部6gが形成される。したがって、第2選択部34は、釣りを行っているときでも操作できる。
【0019】
軸支持部8は、スプール12のスプール軸16の一端を回転自在に支持する。軸支持部8は、扁平有底円筒状の部材である。軸支持部8の中心には、スプール軸16の一端を回転自在に支持するための軸受19が収納される筒状の軸受収納部8aが内側面から突出して形成される。軸支持部8の外周面8bには、軸支持部8を開口5dの周囲で第1側板5aに対して着脱するための着脱リング21が回動自在に装着される。着脱リング21は公知のバヨネット構造によって、軸支持部8を第1側板5aに着脱可能に装着する。着脱リング21は外周面に径方向外方に突出する複数(例えば3つ)の爪部21aと、着脱操作のための操作把手21bと、を有する。複数の爪部21aは、厚さが徐々に薄くなる傾斜面を有し、開口5dの周囲に形成された図示しない複数の係合溝に係合する。
【0020】
操作把手21bを指先で下方に操作して、着脱リング21を一方向(例えば図2の反時計回り)に回転させると、爪部21aが係合溝から離脱し、軸支持部8及び第1側カバー6が第1側板5aから外れる。また、操作把手21bを指先で例えば上方に操作して、着脱リング21を他方向に回転させると、爪部21aが係合溝に係合し、軸支持部8及び第1側カバー6が第1側板5aに固定される。軸支持部8は、複数本(例えば3本)のボルト部材23によって、スプール制動機構20の一部の構成とともに第1側カバー6に固定される。軸支持部8が第1側カバー6に固定された状態では、着脱リング21は、スプール軸方向の移動が規制され、軸支持部8に対して回転自在になる。
【0021】
サムレスト9は、図1及び図2に示すように、第1側板5aの上部に外側に張り出して形成される第1張り出し部9aと、第2側板5bの上部に外側に張り出して形成される第2張り出し部9bと、フレーム5の前部で第1側板5aと第2側板5bとを連結し前方に張り出して形成される第3張り出し部9cと、を有する。
【0022】
ハンドル2は、リール本体1に回転自在に支持される。スプール12は、第1側板5aと第2側板5bとの間でリール本体1に回転自在に保持される。ハンドル2の回転は、図示しない回転伝達機構を介してスプール12に伝達される。回転伝達機構の途中には、スプール12を自由回転可能なオフ状態と、ハンドル2からの回転をスプール12に伝達するオン状態と、に切り換え可能なクラッチ機構が設けられる。
【0023】
<スプール>
スプール12は、図3に示すように、釣り糸を巻き付け可能な糸巻き胴部12aと、糸巻き胴部12aと一体に形成されスプール軸16に固定される筒状部12bと、糸巻き胴部12aの両端部に大径に形成される一対のフランジ部12cと、を有する。筒状部12bの内周面にスプール軸16が一体回転可能に連結される。スプール軸16は、一端が軸支持部8に軸受19によって回転自在に支持される。スプール軸16の他端は第2側カバー7に図示しない軸受によって回転自在に支持される。
【0024】
<スプール制動機構>
スプール制動機構20は、図3及び図7に示すように、スプール制動部22と、スプール制動部22を制御するためのスプール制御部25と、を有する。
スプール制動部22は、スプール12の少なくとも糸繰り出し方向の回転により発電することによって、スプール12を電気的に制御可能に発電制動する。スプール制動部22は、スプール12と一体回転可能に設けられる磁石44及び直列接続された複数のコイル46を有する。磁石44は、スプール軸16に一体回転可能に装着される。この実施形態では、磁石44は、接着によってスプール軸16に固定される。磁石44は、極異方性着磁され、スプール12の回転方向に並べて配置された複数の磁極を有する円筒形の磁石である。
【0025】
複数のコイル46は、磁石44に対向して配置される。本実施形態では、磁石44の外周側に所定の隙間をあけて筒状に配置され、コイル取付部材47によって、後述する回路基板36に取り付けられる。複数のコイル46は、巻回された芯線が磁石44に対向して磁石44の磁場内に配置されるように、それぞれ略矩形に巻回されている。コイル46は、例えば4つ設けられる。各コイル46はそれぞれ円弧状に湾曲して形成される。複数のコイル46は、周方向に隙間をあけて配置され、全体として概ね筒状に形成される。直列接続された複数のコイル46の両端は、回路基板36に搭載されたスイッチ素子48に電気的に接続される。スイッチ素子48には整流回路49が接続される。整流回路49は、コイル46から出力される交流の電力を直流に整流する。
【0026】
<電気部品>
電気部品18は、スプール制動部22で発電される電力で動作する。電気部品18は、スプール制御部25、スプール制御部25によって制御されるスイッチ素子48等を含む。電気部品18は後述する回路基板36に搭載または接続される。スプール制御部25は制御部の一例である。スイッチ素子48はスプール制動部22の磁石44とコイル46との相対回転により発生する電流を、スプール制御部25から出力されたデューティ比Dに応じてオンオフする。この実施形態では、スイッチ素子48は、例えば、電界効果トランジスタによって構成される。スイッチ素子48は、制動力設定部29から出力される、デューティ比Dを制御する制御信号によって、オンオフ制御され、周波数変調された出力を整流回路49に出力する。オンオフされた電流は、整流回路49及び電源回路37を介して蓄電素子51に蓄えられる。
【0027】
<回転検出部>
回転検出部31は、回路基板36に搭載される。回転検出部31は、スプール12の回転を電気的に検出可能である。回転検出部31は、図3図5及び図6に示すように、回路基板36の第1面36aの内周側で、4つのコイル46の隙間に対向する位置に設けられる一つのホール素子31aを有する。ホール素子31aは、磁石44の所定の回転位置に応じてオンオフするセンサである。回転検出部31は、スプール12の回転速度ωを算出するために設けられる。また、スプール12の回転速度ωの時間変化によって、正負の回転加速度ωaの算出及び釣り糸に作用する張力Fも推定も可能である。
【0028】
<昇圧回路>
昇圧回路41は、図7に示すように、スプール制御部25と、電気部品18であるスイッチ素子48と、の間の制御信号線に配置される。昇圧回路41は、スプール制御部25から出力されたデューティ比Dの制御信号の電圧を上昇させる。昇圧回路41は、増幅器を含む。昇圧回路41は、制御信号を昇圧する。
【0029】
スプール制動部22は、磁石44とコイル46との相対回転により発生する電流を、スイッチ素子48によってオンオフすることにより、デューティ比Dを変更してスプール12を可変に制動する。スプール制動部22で発生する制動力は、スイッチ素子48のオン時間が長いほど(デューティ比Dが大きいほど)に強くなる。スイッチ素子48は、整流回路49及び電源回路37を介して蓄電素子51に接続される。蓄電素子51には、キャスティング時にコイル46から発生した電力が蓄えられる。蓄電素子51は、スプール制御部25及びスプール制御部25に接続される電気部品18に電力を供給する電源として機能する。蓄電素子51は、例えば、電解コンデンサによって構成される。
【0030】
スプール制御部25は、図7に示すように、ROM,RAM,CPUを含むマイクロコンピュータで構成される。スプール制御部25には、EEPROM、フラッシュメモリなどの不揮発メモリによって構成される記憶部26が接続される。スプール制御部25には、回転検出部31と、第1検出部52、第2検出部56と、が電気的に接続される。回転検出部31、第1検出部52、及び第2検出部56は、回路基板36に搭載されるハードウェアによって構成される。
【0031】
スプール制御部25は、ソフトウェアで実現される機能構成として、張力推定部27と、回転速度算出部28と、減速度算出部33と、制動力設定部29と、昇圧制御部30と、を有する。回転速度算出部28は、回転検出部31の出力信号によって、スプール12の回転速度ωを算出する。減速度算出部33は、回転速度算出部28の出力情報に基づいてスプール12の減速度−ωa、すなわち、負の回転加速度を算出する。張力推定部27は、回転速度算出部28の出力情報を元に、釣り糸に作用する張力Fを推定する。制動力設定部29は時間経過に応じて減少する基本となる第1デューティ比D1と第1デューティ比D1を補正する第2デューティ比D2とを設定する。
【0032】
張力Fは、スプール12の回転速度ωの変化率(Δω/Δt)とスプール12の慣性モーメントJとで推定することができる。キャスティングしているときにスプール12の回転速度が変化すると、このとき、もしスプール12が釣り糸からの張力を受けずに単独で自由回転していた場合の回転速度との差は釣り糸からの張力により発生した回転駆動力(トルク)によるものである。このときの回転速度の変化率を(Δω/Δt)とすると、駆動トルクTは、下記(1)式で表すことができる。
T=J×(Δω/Δt)・・・・・(1)
【0033】
式(1)から駆動トルクTが求められれば、釣り糸の作用点の半径(通常は15〜20mm)から張力Fを推定することができる。したがって、本実施形態では、張力Fは、回転速度ωの変化率から演算によって推定される。
【0034】
スプール制御部25は、スイッチ素子48をデューティ制御することによって制動力(デューティ比D)を変化させる。スプール制御部25は、張力推定部27で推定された張力Fと、制動モードに応じて設定される参照張力Frと、に応じて制動力を変化させる。なお、本実施形態では、参照張力Frは「0」である。記憶部26には、制動モードに応じた複数の種類のデータが記憶される。
【0035】
また、スプール制動機構20は、図5及び図7に示す回転検出部31、図2図3及び図4に示す第1選択部32、第2選択部34、回路基板36、カバー部材38、第1磁束遮蔽部材39、及び第2磁束遮蔽部材40、をさらに備える。回転検出部31は、図3図5及び図6に示すように、回路基板36の第1面36aの内周側で、4つのコイル46の隙間に対向する位置に設けられる一つのホール素子31aを有する。ホール素子31aは、磁石44の所定の回転位置に応じてオンオフするだけの安価なセンサである。回転検出部31は、スプール12の回転速度ωを算出するために設けられる。また、スプール12の回転速度ωの時間変化によって、回転加速度ωa及び釣り糸に作用する張力Fも算出可能である。
【0036】
第1選択部32は、スプール制動部22の、釣り糸の種類等に応じた複数の制動モードのいずれかを選択するために設けられる。この実施形態では、例えば、4つの制動モードを選択可能である。
【0037】
第1選択部32は、少なくとも1つ(例えば2つ)の第1磁石50aを有する第1選択操作部50、及び2つの第1磁石50aに対向し、第1選択操作部50の選択位置を検出する第1検出部52(図及び図参照)を有する。
【0038】
第1選択操作部50は、リール本体1に複数段階の第1範囲に移動可能に設けられる。この実施形態では、第1選択操作部50は、カバー本体6aの内側面6bに、例えば3段階の第1範囲に位置決め可能に回動自在に設けられる。第1選択操作部50は、例えば2つの第1磁石50aが装着されるレバー部材50bを有する。レバー部材50bは、先端に円弧状に湾曲し、表面に周方向に間隔を隔てて形成された複数の凸部50dを有する第1露出部50cを有する。レバー部材50bは、第1装着ボス部6dの外周面に第1軸X1回りに第1範囲で回動自在に取り付けられる。第1範囲は、例えば30度以下の範囲である。この実施形態では、第1装着ボス部6dがスプール軸16と同芯に配置されるので、第1選択操作部50は、スプール軸16回りに回動する。第1選択操作部50の第1露出部50cは、第1側カバー6に装着された状態で、第1開口部6fから突出して露出する。しかし、第1側カバー6が第1側板5aに装着された状態では、第1開口部6fがサムレスト9によって覆われるため、第1選択操作部50の第1露出部50cは、リール本体1内に隠れる。これによって、釣りをしているときに、使用者の意志に反して、調整された状態が変化しない。
【0039】
第1検出部52は、図及び図に示すように、磁石44から離れた回路基板36の第2面36bの外周側に配置される。第1検出部52は、第2面36bに2つの第1磁石50aに対向可能な位置に配置された2つのホール素子52a、52bを有する。2つのホール素子52a、52bは、ホール素子31aと同様な安価な素子であり、第1軸X1回りに間隔を隔てて配置される。
【0040】
第2選択部34は、基本となる制動力が異なる複数の制動タイプのいずれか一つを選択するために設けられる。本実施形態では、制動力が順に大きくなるタイプ1からタイプ8の8つの制動タイプを、第2選択部34によって選択可能である。第2選択部34は、少なくとも1つ(例えば3つ)の第2磁石54aを有する第2選択操作部54、及び3つの第2磁石54aに対向し、第2選択操作部54の調整位置を検出する第2検出部56を有する。
【0041】
第2選択操作部54は、リール本体1に複数段階の第2範囲に移動可能に設けられる。この実施形態では、第2選択操作部54は、カバー本体6aの内側面6bに、例えば5段階の第2範囲に位置決め可能に回動自在に設けられる。第2範囲は、例えば120度以下の範囲である。第2選択操作部54は、例えば3つの第2磁石54aが装着される操作部本体54bと、操作部本体54bに、例えば弾性係合によって固定される第2露出部54cと、を有する。操作部本体54bは、第2装着ボス部6eにねじ込まれるネジ部材55によって、カバー本体6aの内側面6bに第2軸X2回りに回動自在に取り付けられる。第2露出部54cは、第1側カバー6が第1側板5aに装着された状態で、第2開口部6gから露出する。これによって、釣りをしているときに、両軸受リール100をパーミングする指の先端で第2選択操作部54を調整可能である。
【0042】
第2検出部56は、図に示すように、磁石44から離れた回路基板36の第2面36bの外周側に配置される。第2検出部56は、回路基板36の第2面36bに第1検出部52と実質的に180度間隔を隔てて配置される。第2検出部56は、回路基板36の第2面36bに3つの第2磁石54aに対向可能な位置に配置された3つのホール素子56a、56b、56cを有する。3つのホール素子56a、56b、56cは、ホール素子31aと同様な安価な素子であり、第2軸X2回りに間隔を隔てて配置される。
【0043】
回路基板36は、貫通孔36cを有する円板状に形成される。回路基板36は、軸支持部8の軸受収納部8aの外周側でスプール12と対向する面に装着される。回路基板36は、コイル46が装着される第1面36aと、第1面36aと反対側の第2面36bと、を有する。回路基板36は、ボルト部材23によって、軸支持部8、カバー部材38、及び第2磁束遮蔽部材40とともに、第1側カバー6に固定される。
【0044】
カバー部材38は、図2及び図5に示すように、回路基板36、コイル46、及び回路基板36に搭載された電気部品18を絶縁するために設けられる合成樹脂製の段付き筒状の部材である。カバー部材38は、複数のコイル46の先端、内周部及び外周部を覆う第1カバー部38aと、回路基板36の外周部、内周部、第1面36a、及び第2面36bを覆い、第1カバー部38aと一体形成された第2カバー部38bと、を有する。第1カバー部38aは、磁石44の外周側に配置される。すなわち、カバー部材38は、コイル46及び検出部を含む電気部品18が装着された回路基板36の全面を覆って、回路基板36を封止する。
【0045】
第1磁束遮蔽部材39は、図3に示すように、スプール12の糸巻き胴部12aの内周面にスプール12と一体回転可能に設けられる。第1磁束遮蔽部材39は、鉄製の筒状の部材であり、コイル46の周囲で磁石44の磁束密度が高くなるようにするために設けられる。また、回転検出部31が磁石44の磁束の影響を受けにくくするために設けられる。
【0046】
第2磁束遮蔽部材40は、図5及び図6に示すように、例えば、鉄板製の円形の部材である。第2磁束遮蔽部材40は、第1検出部52及び第2検出部56に向かう磁石44の磁束を遮蔽するために設けられる。第2磁束遮蔽部材40を設けることによって、第1検出部52及び第2検出部56が磁石44の磁束の影響を受けることなく第1磁石50a及び第2磁石54aを精度よく検出できる。第2磁束遮蔽部材40は、軸支持部8及びカバー部材38によって封止された回路基板36とともに、ボルト部材23によって第1側カバー6に固定される。
【0047】
第2磁束遮蔽部材40は、コイル取付部材47に、例えば接着によって固定されるリング状の第1遮蔽部40aと、第1遮蔽部40aから断面が第1軸X1を中心に円弧状に形成された一対の第2遮蔽部40bと、を有する。第1遮蔽部40aは、回路基板36の第1面36aに間隔をあけて対向して配置される。
【0048】
一対の第2遮蔽部40bは、第1検出部52及び第2検出部56に磁石44の磁束が向かわないようにするために第1軸X1回りに180度間隔を隔てて設けられる。第2遮蔽部40bは、第1検出部52及び第2検出部56に対向する位置に配置される。第2遮蔽部40bは、回路基板36の第2面36bから、カバー部材38の第1側カバー6側の端面のわずかに手前側まで延びる軸方向長さを有する。この構造によって、第1検出部52及び第2検出部56に磁石44の磁束が向かわないようになる。なお、第2磁束遮蔽部材40はカバー部材38によって覆われるため、外部からは目視できない。
【0049】
このように構成されたスプール制動機構20では、以前使用した釣り糸と異なる釣り糸を使用する場合、第1側カバー6をリール本体1から外す。具体的には、両軸受リール100の後部に配置される操作把手21bを指先で下方に操作して、着脱リング21を一方向(例えば図2の反時計回り)に回転させると、回路基板36から第1側カバー6までのスプール制動機構20がリール本体1から外れる。この状態が図4に示す状態である。これによって、第1選択部32の第1選択操作部50が第1開口部6fから露出し、釣り糸の種類等に応じた制動モードに選択操作できる。この操作が終わると、スプール制動機構20を第1側板5aに密着させる。そして、操作把手21bを指先で例えば上方に操作して着脱リング21を他方向に回転させると、スプール制動機構20がフレーム5に装着される。
【0050】
次に、キャスティング時のスプール制御部25の概略の制御動作について図8のグラフを参照して説明する。なお、図8では、縦軸にスプール12の回転速度ω及び制動力のデューティ比Dを示し、横軸にキャスティング開始からの時間tの経過を示す。なお、本実施形態では、デューティ比Dは、基本となる第1デューティ比D1と、第2デューティ比D2と、によって決定される。第1デューティ比D1は、キャスティング開始からの時間tの経過によって徐々に小さくなる。第2デューティ比D2は、推定された張力Fが参照張力Frよりも小さいとき、第1デューティ比D1を増加させるために設定される。したがって、推定された張力Fが参照張力Frよりも小さいとき、デューティ比D=D1+D2となり、推定された張力Fが参照張力Frよりも小さくないとき、第2デューティ比D2は「0」になり、デューティ比D=D1となる。
【0051】
キャスティングが開始されてスプール12が回転すると、スプール制御部25に蓄電素子51から電力が供給され、制御が開始される。スプール制御部25に電力が供給されると、第1選択部32及び第2選択部34の操作位置に応じて、選択された制動モードに応じた第1デューティ比D1及び第2デューティ比D2のデータが記憶部26から読み出され、スプール制御部25にセットされる。このとき、キャスティングの初動時に実線で示すスプール12の回転速度ωが制動開始回転速度ωsになる。このタイミングが、制動開始のタイミングである。制動開始回転速度ωsは、例えば4000rpmから6000rpmの速度であり、本実施形態では、4000rpmである。
【0052】
また、スプール制御部25では、回転検出部31の出力から回転速度ω及び回転加速度ωaを算出し、算出された回転加速度ωa(=Δω/Δt)をもとに負の回転加速度、すなわち減速度−ωaを算出し、かつ張力Fを推定する。さらに、スプール制御部25は、推定された張力Fと参照張力Frとに応じた第2デューティ比D2を出力する。
【0053】
次に、スプール制御部25の具体的なスプール制御動作について、図9に示すフローチャート基づいて説明する。なお、図9に示す制御フローチャートは制御動作の一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0054】
キャスティングによりスプール12が回転して蓄電素子51に電力が蓄えられスプール制御部25に電源が投入されリセット電圧を超えると、スプール制御部25は、図9のステップS1で初期設定を行い、ステップS2に処理を進める。初期設定では、スプール制御部25は、各種のフラグやタイマ、及びデータをリセットする。ステップS2では、スプール制御部25は、回転検出部31からの出力パルスによって回転速度ωを算出し、処理をステップS3に進める。
【0055】
ステップS3では、スプール制御部25は、制動制御を開始したか否かを示す制動フラグBFがオンしているか否かを判断する。制動フラグBFがまだオンしていない、すなわち制動制御が開始されていないとスプール制御部25が判断すると、ステップS3からステップS4に処理を進める。ステップ4では、スプール制御部25は、算出された回転速度ωが制動開始回転速度ωsに到達しているか否かを判断する。回転速度ωが制動開始回転速度ωsに達していないと判断すると、スプール制御部25は、ステップS4からステップS2に処理を進める。スプール制御部25は、制動開始回転速度ωsに到達していると判断すると、ステップS4からステップS5に処理を進める。ステップS5では、スプール制御部25は、制動フラグBFをオンし、ステップS5からステップS6に処理を進める。
【0056】
ステップS6では、スプール制御部25は、スイッチ素子48に、前述したデューティ比Dを出力し、スイッチ素子48を出力したデューティ比Dでオンオフ制御し、ステップS6からステップS7に処理を進める。このデューティ比Dをスプール制御部25からスイッチ素子48に出力すると、昇圧回路41によって、デューティ比Dの制御信号の電圧が上昇する。このため、キャスティングの後期にスプール12の回転速度ωが低下しても、安定したデューティ比Dの制御信号をスイッチ素子48に与えることができる。一方、制動フラグBFがすでにオンしていると判断すると、スプール制御部25は、ステップS3からステップS6に処理を進める。
【0057】
ステップS7では、スプール制御部25は、算出された回転速度ωから負の回転加速度である減速度―ωaを算出し、ステップS7からステップS8に処理を進める。ステップS8では、スプール制御部25は、減速度−ωaが所定の減速度−ωa1よりも大きいか否かを判断する。この判断は減速度の絶対値の大小で判断する。減速度−ωaが所定の減速度−ωa1よりも大きいと判断すると、スプール制御部25は、ステップS8からステップS9に処理を進める。ステップS9では、スプール制御部25は、制動力設定部29を介して、そのときの最大制動力Dmax(例えば、100パーセントデューティ)をスイッチ素子48に出力し、ステップS10に処理を進める。このときも、デューティ比Dの制御信号が昇圧される。減速度−ωaが所定の減速度−ωa1よりも小さいと判断すると、スプール制御部25は、ステップS8からステップS10に処理を進める。
【0058】
ステップS10では、スプール制御部25は、スプール12の回転速度ωが仕掛けの着水を判断するための着水判断回転速度ωe以下に減速したか否かを判断する。着水判断回転速度ωeは、例えば、2300rpmである。回転速度ωが着水判断回転速度ωe以下まで減速していないと判断すると、スプール制御部25は、ステップS10からステップS2に処理を進める。着水判断回転速度ωe以下まで減速していると判断すると、ステップS10からステップS11に処理を進める。ステップS11では、スプール制御部25は、デューティ比Dの出力を止めて、ステップS11からステップS12に処理を進める。ステップS12では、スプール制御部25は、制動フラグBFをオフしてステップS12からステップS2に処理を進める。そして、蓄電素子51の出力電圧がスプール制御部25のリセット電圧よりも低くなると、スプール制御部25はリセットされ制御を終了する。次のキャスティングによって、スプール制動部22から電力が供給されると、スプール制御部25は再起動され、リセット電圧になるまで制動制御を行う。
【0059】
ここでは、スプール制御部25から出力される、制動制御において最も重要な制御信号であるデューティ比Dの制御信号を常時昇圧する。これによって、発電によって生じる電力によって電気部品18を動作させる釣り用リールにおいて、発電圧が低い場合でも、スプール制御部25によって制御される電気部品(例えば、スイッチ素子48)の動作が不安定になることを防ぐことができる。
【0060】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0061】
(a)上記実施形態では、スプール制動部22をスプール軸16に固定された磁石44と磁石44の径方向外側に磁石に対向して配置された複数のコイル46を例示したが本発明はこれに限定されない。例えば、スプールのフランジ部12cの外側面に複数の磁石を周方向に間隔を隔てて配置し、リール本体側に複数のコイルを、磁石に対向して配置してもよい。
【0062】
(b)上記実施形態では、昇圧回路41が、スプール制御部25から電気部品18としてのスイッチ素子48に供給されるデューティ比Dの制御信号を常時昇圧したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図10に示すように、スプール12の回転速度が所定の回転速度(例えば、3000rpmから5000rpm)以下になったとき、スプール制御部25を含む電気部品18への供給電圧を昇圧するように昇圧回路141を配置してもよい。例えば、整流回路49と電気部品18としての蓄電素子51と間に昇圧回路141を配置して構成してもよい。また、昇圧回路141を昇圧動作と非昇圧動作とを切り換える切換スイッチ135を昇圧回路141と整流回路49の間に配置している。切換スイッチ135は、スプール制御部125にソフトウェアによって実現される機能構成としての昇圧制御部130によって切換制御される。例えば、昇圧制御部130は、所定の回転速度以下になると整流回路49を昇圧回路141に接続する。これによって、昇圧回路141を介して昇圧された電力が蓄電素子51に蓄えられる。一方、所定の回転速度を超える場合は、整流回路49を蓄電素子51に接続する。もちろん、このような配置で、切換スイッチ135を設けずに、電気部品18への供給電圧をスプール12の回転速度によらず常時昇圧してもよい。
【0063】
(c)上記実施形態では釣り用リールとして、手巻きの両軸受リール100を開示したが本発明はこれに限定されない。釣り用リールは、片軸受リールや電動型の両軸受リールであってもよい。また、両軸受リールの場合、ドラグ機構に本発明を採用してもよい。
【0064】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0065】
(A)両軸受リール100は、釣り糸を前方に繰り出すリールである。両軸受リール100は、リール本体1と、スプール12と、スプール制動部22と、スプール制御部25と、昇圧回路41と、を備える。スプール12は、リール本体1に糸巻き取り方向と糸繰り出し方向と、に回転可能に支持される。スプール制動部22は、少なくともスプール12の糸繰り出し方向の回転によってスプールを発電制動する。スプール制御部25は、スプール制動部22の制動力を制御する。電気部品18は、スプール制動部22で発電される電力で動作する。昇圧回路41は、電気部品18への供給電圧を昇圧する。
【0066】
この両軸受リール100では、昇圧回路41によって、電気部品18への供給電圧が昇圧される。これによって、発電圧が低い場合において、電気部品18の動作が不安定になることを防ぐことができる。
【0067】
(B)昇圧回路41はスプール制御部25から出力される制御信号を昇圧してもよい。この構成によれば、電圧低下の影響を受けやすく、かつ制御自体に大きな影響を及ぼす制御信号を昇圧するので、電気部品18の動作、さらにそれに影響された制御自体の動作が不安定になることを防ぐことができる。
【0068】
(C)スプール制動部22は、磁石44と、複数のコイル46と、を有してもよい。磁石44は、スプール12と一体回転可能に連結され、周方向に複数の磁極を有してもよい。複数のコイル46は、磁石の外周側にスプール12の回転方向に並べて配置されてもよい。この構成によれば、スプール12の回転によって容易に発電できる。
【0069】
(D)両軸受リール100は、回転検出部31と回転速度算出部28と減速度算出部33とをさらに備えてもよい。回転検出部31は、スプール12の回転を検出する。回転速度算出部28は、回転検出部31の出力からスプール12の回転速度ωを算出する。減速度算出部33は、回転速度算出部28の算出結果に基づいて、スプール12の減速度−ωaを算出する。減速度算出部33が所定の減速度以上−ωa1の減速度−ωaを算出したとき、スプール制動部22は、そのときの最大制動力Dmaxでスプール12を制動してもよい。この構成によれば、急減速時に、そのときの最大制動力(例えば、100パーセントデューティ)でスプールを制動するので、スプール12の回転速度ωが急減速しても、バックラッシュが生じにくくなる。
【0070】
(E)両軸受リール100は、スプール制動部22が発電した電力を蓄える蓄電素子51をさらに備えてもよい。この構成によれば、蓄電素子51に電力を蓄えることができるので、スプール制動部22による発電が終了しても、蓄電素子51が電力供給不能状態になるまで、制御動作を維持できる。
【符号の説明】
【0071】
1 リール本体
12 スプール
18 電気部品
22 スプール制動部
25 スプール制御部
28 回転速度算出部
31 回転検出部
33 減速度算出部
41、141 昇圧回路
44 磁石
46 コイル
ω 回転速度
−ωa 減速度
−ωa1 所定の減速度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10