特許第6571553号(P6571553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571553
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】車載表示システム
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   B60R11/02 C
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-19699(P2016-19699)
(22)【出願日】2016年2月4日
(65)【公開番号】特開2017-136984(P2017-136984A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(72)【発明者】
【氏名】植田 正道
【審査官】 高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−216925(JP,A)
【文献】 特開2015−098316(JP,A)
【文献】 特開2005−280434(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0170181(US,A1)
【文献】 特開2010−125945(JP,A)
【文献】 特開2009−208594(JP,A)
【文献】 特開2008−207635(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0251719(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60N 1/00−99/00
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前席と後席とを備えた自動車に搭載される車載表示システムであって、
前記自動車の天井の前記後席の前方の位置に設置された前記自動車の左右方向を回転軸方向とする回転軸まわりに回動可能なディスプレイと、
前記前席のバックレストの傾斜角度を検出する角度検出手段と、
前記ディスプレイの利用の開始の指示を受け付ける指示受付手段と、
前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御する制御手段とを有し、
当該制御手段は、前記指示受付手段が前記ディスプレイの利用の開始の指示を受け付けたときに、前記角度検出手段が検出している前記バックレストの傾斜角度が所定の角度以上大きいときに、前記角度検出手段が検出している傾斜角度にバックレストが傾斜している状態にある前記前席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御し、前記バックレストの傾斜角度が所定の角度以上大きくないときに、前記後席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御することを特徴とする車載表示システム。
【請求項2】
前席と後席とを備えた自動車に搭載される車載表示システムであって、
前記自動車の天井の前記後席の前方の位置に設置された前記自動車の左右方向を回転軸方向とする回転軸まわりに回動可能なディスプレイと、
前記前席の座面の前記自動車の前後方向の位置を検出する位置検出手段と、
前記前席のバックレストの傾斜角度を検出する角度検出手段と、
前記ディスプレイの利用の開始の指示を受け付ける指示受付手段と、
前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御する制御手段とを有し、
当該制御手段は、前記指示受付手段が前記ディスプレイの利用の開始の指示を受け付けたときに、前記位置検出手段が検出している前記前席の座面の位置と前記角度検出手段が検出している前記前席のバックレストの傾斜角度とに基づいて、ユーザが前席から前記ディスプレイを利用しようとしているかどうかを推定し、前記ユーザが前席から前記ディスプレイを利用しようとしていると推定される場合に、前記位置検出手段が検出している位置に座面があり前記角度検出手段が検出している傾斜角度にバックレストが傾斜している状態にある前記前席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御し、前記ユーザが前席から前記ディスプレイを利用しようとしていると推定されない場合に、前記後席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御することを特徴とする車載表示システム。
【請求項3】
請求項2記載の車載表示システムであって、
前記制御手段は、前記位置検出手段が検出している前記前席の座面の位置と前記角度検出手段が検出している前記バックレストの傾斜角度とより求まる前記前席の後端の位置が、前記後席の前端の位置より後方にある場合に、前記ユーザが前席から前記ディスプレイを利用しようとしていると推定し、前記前席の後端の位置が、前記後席の前端の位置より後方にない場合に前記ユーザが前席から前記ディスプレイを利用しようとしていると推定しないことを特徴とする車載表示システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の車載表示システムであって、
前記制御手段は、前記前席からの視認に適した回転角度として、前記後席からの視認に適した回転角度よりも、前記ディスプレイの画面が下方を向く回転角度を設定することを特徴とする車載表示システム。
【請求項5】
請求項2または3記載の車載表示システムであって、
前記制御手段は、
前記前席からの視認に適した回転角度として、前記位置検出手段が検出している位置に
座面があり前記角度検出手段が検出している傾斜角度にバックレストが傾斜している状態にある前記前席に前記バックレストに沿った姿勢で標準的な体格の人間が着席したと仮定した場合に、当該人間の顔に、前記ディスプレイの画面ができるだけ対向することとなる回転角度を設定し、
前記後席からの視認に適した回転角度として、前記ディスプレイの画面が後方もしくは後席方向を向く回転角度、または、最後に前記後席から前記ディスプレイが利用されたときの当該ディスプレイの回転角度を設定することを特徴とする車載表示システム。
【請求項6】
請求項1または2記載の車載表示システムであって、
前記自動車は前記前席として運転席と助手席を備え、
前記ディスプレイは、前記自動車の上下方向を回転軸方向とする回転軸である垂直回転軸まわりに回動可能であり、
前記角度検出手段は、前記運転席と助手席のそれぞれについて、バックレストの傾斜角度を検出し、
前記制御手段は、前記指示受付手段が前記ディスプレイの利用の開始の指示を受け付けたときに、前記運転席と助手席のバックレストの傾斜角度の一方のみが予め定めた角度よりも大きい場合に、前記運転席と助手席のうちのバックレストの傾斜角度が当該予め定めた角度よりも大きい方を視聴席に設定すると共に、前記前席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御する際に、前記視聴席からの視認に適した前記垂直回転軸まわりの回転角度に、前記ディスプレイの前記垂直回転軸まわりの回転角度を制御することを特徴とする車載表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の天井に設置された表示装置の画面の向きを制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の天井に設置された表示装置の画面の向きを制御する技術としては、表示装置の試聴者が装着するヘッドホンに赤外光信号により音声信号を伝送すると共に、ヘッドホンにおける赤外光の反射位置を赤外カメラを用いて検出して、ヘッドホンを装着している視聴者の目の位置を算定し、算定した目の位置に適合するように表示装置の画面の向きを制御する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-224841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した赤外光を反射するヘッドホンを用いて表示装置の画面の向きを制御する技術は、表示装置の視聴にヘッドホンを用いる視聴環境に対してしか適用することができない。また、ヘッドホン、赤外光の光源、赤外カメラなどの、多くの装置を車内に設置することが必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、簡易な構成によって、自動車の天井に設置された表示装置の画面の向きを、視聴者の視認に適した向きに制御することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、前席と後席とを備えた自動車に搭載される車載表示システムに、前記自動車の天井の前記後席の前方の位置に設置された前記自動車の左右方向を回転軸方向とする回転軸まわりに回動可能なディスプレイと、前記前席のバックレストの傾斜角度を検出する角度検出手段と、前記ディスプレイの利用の開始の指示を受け付ける指示受付手段と、前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御する制御手段とを備えたものである。ただし、制御手段は、前記指示受付手段が前記ディスプレイの利用の開始の指示を受け付けたときに、前記角度検出手段が検出している前記バックレストの傾斜角度が所定の角度以上大きいときに、前記角度検出手段が検出している傾斜角度にバックレストが傾斜している状態にある前記前席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御し、前記バックレストの傾斜角度が所定の角度以上大きくないときに、前記後席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御するものである。
【0007】
また、前記課題達成のために、本発明は、前席と後席とを備えた自動車に搭載される車載表示システムに、前記自動車の天井の前記後席の前方の位置に設置された前記自動車の左右方向を回転軸方向とする回転軸まわりに回動可能なディスプレイと、前記前席の座面の前記自動車の前後方向の位置を検出する位置検出手段と、前記前席のバックレストの傾斜角度を検出する角度検出手段と、前記ディスプレイの利用の開始の指示を受け付ける指示受付手段と、前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御する制御手段とを備えたものである。ただし、制御手段は、前記指示受付手段が前記ディスプレイの利用の開始の指示を受け付けたときに、前記位置検出手段が検出している前記前席の座面の位置と前記角度検出手段が検出している前記前席のバックレストの傾斜角度とに基づいて、前記ユーザが前席から前記ディスプレイを利用しようとしているかどうかを推定し、前記ユーザが前席から前記ディスプレイを利用しようとしていると推定される場合に、前記位置検出手段が検出している位置に座面があり前記角度検出手段が検出している傾斜角度にバックレストが傾斜している状態にある前記前席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御し、前記ユーザが前席から前記ディスプレイを利用しようとしていると推定されない場合に、前記後席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御するものである。
【0008】
ここで、このような車載表示システムは、前記制御手段において、前記位置検出手段が検出している前記前席の座面の位置と前記角度検出手段が検出している前記バックレストの傾斜角度とより求まる前記前席の後端の位置が、前記後席の前端の位置より後方にある場合に、前記ユーザが前席から前記ディスプレイを利用しようとしていると推定し、前記前席の後端の位置が、前記後席の前端の位置より後方にない場合に前記ユーザが前席から前記ディスプレイを利用しようとしていると推定しないように構成してもよい。
【0009】
また、このような車載表示システムは、前記制御手段において、前記前席からの視認に適した回転角度として、前記位置検出手段が検出している位置に座面があり前記角度検出手段が検出している傾斜角度にバックレストが傾斜している状態にある前記前席に前記バックレストに沿った姿勢で標準的な体格の人間が着席したと仮定した場合に、当該人間の顔に、前記ディスプレイの画面が可及的に対向することとなる回転角度を設定し、前記後席からの視認に適した回転角度として、前記ディスプレイの画面が後方もしくは後席方向を向く回転角度、または、最後に前記後席から前記ディスプレイが利用されたときの当該ディスプレイの回転角度を設定するように構成してもよい。
【0010】
また、以上の各車載表示システムは、前記制御手段において、前記前席からの視認に適した回転角度として、前記後席からの視認に適した回転角度よりも、前記ディスプレイの画面が下方を向く回転角度を設定するようにしてもよい。
【0011】
また、以上の各車載表示システムは、前記自動車は前記前席として運転席と助手席を備えたものである場合には、前記ディスプレイを、前記自動車の上下方向を回転軸方向とする回転軸である垂直回転軸まわりに回動可能に構成し、前記角度検出手段において、前記運転席と助手席のそれぞれについて、バックレストの傾斜角度を検出するように構成した上で、前記制御手段において、前記指示受付手段が前記ディスプレイの利用の開始の指示を受け付けたときに、前記運転席と助手席のバックレストの傾斜角度の一方のみが予め定めた角度よりも大きい場合に、前記運転席と助手席のうちのバックレストの傾斜角度が当該予め定めた角度よりも大きい方を視聴席に設定すると共に、前記前席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの前記回転軸まわりの回転角度を制御する際に、前記視聴席からの視認に適した前記垂直回転軸まわりの回転角度に、前記ディスプレイの前記垂直回転軸まわりの回転角度を制御するようにしてもよい。
【0012】
以上のような本発明に係る車載表示システムによれば、前席のバックレストの傾斜角度や座面の位置より、前席の着席者がディスプレイを利用しようとしている推定される場合には、前席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの回転角度を制御し、そうでない場合には、後席からの視認に適した回転角度に前記ディスプレイの回転角度を制御する。よって、前席のバックレストの傾斜角度を検出するセンサや座面の位置を検出するセンサの他に特段の装置を必要としない簡易な構成において、ディスプレイの画面の向きを視聴者の視認に適した向きに制御することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、簡易な構成によって、自動車の天井に設置された表示装置の画面の向きを、視聴者の視認に適した向きに制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るモニタの配置を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係るフリップダウンモニタオープン制御処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係るフリップダウンモニタオープン制御処理の動作を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係るフリップダウンモニタオープン制御処理の動作を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る車載システムの他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
車載システムは自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、車載システムは、オーディオアンプやスピーカ等より構成される音声出力装置1、入力装置2、フロントモニタ3、フリップダウンモニタ操作スイッチ4、フリップダウンモニタ5、回転アクチュエータ6、シート位置センサ7、バックレスト角度センサ8、ナビゲーションシステムやAVシステムなどの機能を提供する機能ユニット9、以上の各部を制御する制御部10を備えている。
【0016】
ここで、図2aに示すように、フロントモニタ3は自動車のダッシュパネル内に配置される。
また、図2a、bに示すようにフリップダウンモニタ5は、車内の左右方向について中央の位置、前後方向について自動車の前席と後席の間の位置において、車内の天井に設置される。
次に、シート位置センサ7は、運転席と助手席それぞれの座面の前後方向位置Yを検出し、バックレスト角度センサ8は、運転席と助手席それぞれのバックレスト(背もたれ)の角度θ(リクライニング角度θ)を検出する。
【0017】
ここで、フリップダウンモニタ5は、図2c1に正面図、図2c2に側面図を示すように、自動車の天井に固定される本体部51と、本体部51に左右方向を回転軸として回動可能に連結したディスプレイパネル52とを備えている。そして、本体部51には回転アクチュエータ6が内蔵されており、回転アクチュエータ6は、ディスプレイパネル52が画面を上方に向けて本体部51に収容される回転角度と、ディスプレイパネル52が画面を下方に向ける本体部51の前方に位置する回転角度の間で、ディスプレイパネル52を回転する。また、本体部51の下面の後部には、フリップダウンモニタ操作スイッチ4が配置されている。
【0018】
このような車載システムの構成において、制御部10は、入力装置2で受け付けたユーザ操作に応じた機能ユニット9を動作の制御や、機能ユニット9の出力音声の音声出力装置1からの出力の制御や、機能ユニット9の出力映像のフロントモニタ3やフリップダウンモニタ5への出力の制御を行う。
【0019】
また、制御部10は、フリップダウンモニタ5のディスプレイパネル52が本体部51に収容されている状態にあるときに、フリップダウンモニタ操作スイッチ4または入力装置2でユーザからディスプレイパネル52のオープンを指示されると、フリップダウンモニタオープン制御処理を実行して、フリップダウンモニタ5のディスプレイパネル52の角度を、フリップダウンモニタ5の視聴者となるユーザの、ディスプレイパネル52の視認に適した角度に制御する。ここで、このフリップダウンモニタオープン制御処理の詳細については後述する。
【0020】
また、制御部10は、フリップダウンモニタオープン制御処理の終了後、フリップダウンモニタ操作スイッチ4または入力装置2でユーザからディスプレイパネル52のクローズの指示を受け付けるまで、フリップダウンモニタ操作スイッチ4または入力装置2でユーザからディスプレイパネル52の角度変更を指示されたならば、回転アクチュエータ6を制御して、ディスプレイパネル52の角度を変更する処理を行う。
【0021】
また、制御部10は、フリップダウンモニタオープン制御処理の終了後、フリップダウンモニタ操作スイッチ4または入力装置2でユーザからディスプレイパネル52のクローズの指示を受け付け、クローズの指示を受け付けたならば、後席視聴モードが設定されているかどうかを調べ、後席視聴モードが設定されていない場合には、回転アクチュエータ6を制御して、ディスプレイパネル52を本体部51に収容し、後席視聴モードが設定されている場合には、前回後席視聴時開閉角度を、現在のディスプレイパネル52の角度に更新した上で、回転アクチュエータ6を制御して、ディスプレイパネル52を本体部51に収容する処理を行う。ここで、後席視聴モードの設定は、以下に詳述するフリップダウンモニタオープン制御処理によって行われる。
【0022】
以下、上述したフリップダウンモニタオープン制御処理の詳細について説明する。
図3に、このフリップダウンモニタオープン制御処理の手順を示す。
図示するように、ユーザからディスプレイパネル52のオープンを指示され、フリップダウンモニタオープン制御処理を開始すると、制御部10は、まず、シート位置センサ7が検出している運転席と助手席それぞれの座面の前後方向位置Yと、バックレスト角度センサ8が検出している運転席と助手席それぞれのバックレストの角度θを取得する(ステップ302)。
【0023】
そして、ユーザが前席(運転席または助手席)からフリップダウンモニタ5を視聴しようとしているのかどうかを判定する(ステップ304)。
ここで、このステップ304の判定においては、まず、ステップ302で取得した運転席と助手席それぞれの座面の前後方向位置Yと、運転席と助手席それぞれのバックレストの角度θより、運転席と助手席のヘッドレストの最後端の前後方向の位置をそれぞれ算出し、算出した位置のうちの、より後方にある位置を、前席のヘッドレストの最後端の前後方向の位置FYとして算出する。
【0024】
そして、図4a、bに示すように、前席のヘッドレストの最後端の前後方向の位置FYが、後席の最前端の前後方向の位置BYより前方の位置である場合には、ユーザが前席ではなく後席からフリップダウンモニタ5を視聴しようとしていると判定し、図4c、dに示すように、前席のヘッドレストの最後端の前後方向の位置FYが、後席の最前端の前後方向の位置BYより後方の位置である場合には、ユーザが前席(運転席または助手席)からフリップダウンモニタ5を視聴しようとしていると判定する。なお、前席のヘッドレストの最後端の前後方向の位置FYが、後席の最前端の前後方向の位置BYより後方の位置である場合、その前席の後ろの後席の前に着席に充分なスペースが無くなるため、当該後席には着席者がいないと推定することができる。
【0025】
なお、ステップ304の判定は、より簡易化し、運転席と助手席のいずれかのバックレストが、所定角度(たとえば、垂直方向に対して60度)以上後方に傾いていれば、ユーザが前席からフリップダウンモニタ5を視聴しようとしていると判定するようにしてもよい。
【0026】
そして、ユーザが前席(運転席または助手席)からフリップダウンモニタ5を視聴しようとしてないと判定された場合には(ステップ304)、上述した後席視聴モードを設定し(ステップ312)、回転アクチュエータ6を制御して、前回後席視聴時角度に設定されている角度にディスプレイパネル52の角度を制御し(ステップ314)、フリップダウンモニタオープン制御処理を終了する。
【0027】
ここで、前述のように、前回後席視聴時角度には、最後にユーザが後席からフリップダウンモニタ5を視聴していたときのディスプレイパネル52の角度が設定されている。なお、ステップ314の実行時に、前回後席視聴時角度が設定されていない場合には、制御部10は、回転アクチュエータ6を制御して、後席視聴用のディフォルトの角度(たとえば、ディスプレイパネル52の画面がおおよそ後方を向く角度)にディスプレイパネル52の角度を制御する。また、ステップ314は、常に、後席視聴用のディフォルトの角度(たとえば、ディスプレイパネル52の画面が、おおよそ後方を向く角度)にディスプレイパネル52の角度を制御する処理としてもよい。
【0028】
一方、ステップ304において、ユーザが前席(運転席または助手席)からフリップダウンモニタ5を視聴しようとしていると判定された場合には、上述した後席視聴モードをクリアする(ステップ306)。
そして、前席からの視認に適したディスプレイパネル52の角度を算出し(ステップ308)、回転アクチュエータ6を制御して、算出した角度にディスプレイパネル52の角度を制御し(ステップ310)、フリップダウンモニタオープン制御処理を終了する。
【0029】
ここで、ステップ308の前席からの視認に適したディスプレイパネル52の角度の算出は次のように行う。
すなわち、運転席と助手席のうち、ヘッドレストの最後端の前後方向の位置が、より後方にある席を視聴席とする。そして、視聴席の座面の位置とバックレストの角度より、視聴席に座っているユーザの頭部の位置とその向きを推定し、推定したユーザの頭部に、ディスプレイパネル52の画面が、できるだけ正対することとなるディスプレイパネル52の角度を、前席からの視認に適したディスプレイパネル52の角度として算出する。
【0030】
より具体的には、視認に適したディスプレイパネル52の角度の算出は、たとえば、以下のように行うことができる。すなわち、視聴席の座面の位置とバックレストの角度より、予め設定した標準的な体格の人間が視聴席に視聴席のバックレストの傾きに沿った姿勢で座っている場合の、当該人間の両目の中間の位置を視点とする。そして、ディスプレイパネル52の画面の中心と視点とを結んだ直線と、ディスプレイパネル52の画面の中心からディスプレイパネル52の画面と垂直に引いた直線との角度差が最小となる、ディスプレイパネル52の角度を前席からの視認に適したディスプレイパネル52の角度として算出する。
【0031】
ただし、ステップ308は、常に、前席視聴用のディフォルトの角度(たとえば、ディスプレイパネル52の画面が、おおよそ下方を向く角度)を、前席からの視認に適したディスプレイパネル52の角度として算出する処理としてもよい。
【0032】
以上、フリップダウンモニタオープン制御処理について説明した。
このようなフリップダウンモニタオープン制御処理によれば、ユーザからディスプレイパネル52のオープンを指示されたときに、図5aに示すように、前席(運転席と助手席)の位置やバックレストの角度の状態が、前席の着席者がフリップダウンモニタ5を視聴するときに設定される状態である、座面を後方に下げてバックレストを大きく傾けた状態にないときには、後席の着席者がフリップダウンモニタ5を視聴するものと推定して、後席の着席者の視認に適した角度にディスプレイパネル52の角度が制御される。
【0033】
一方、ユーザからディスプレイパネル52のオープンを指示されたときに、図5b、cに示すように、前席(運転席と助手席)の位置やバックレストの角度の状態が、前席の着席者がフリップダウンモニタ5を視聴するときに設定される状態である、座面を後方に下げてバックレストを傾けた状態にあるときには、前席の着席者がフリップダウンモニタ5を視聴するものと推定して、前席の着席者の視認に適した角度にディスプレイパネル52の角度が制御されることとなる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明した。
ところで、以上の実施形態は、各座席の着席者の有無を検出する座席検出センサを設けると共に、図3に示したフリップダウンモニタオープン制御処理のステップ304において、座席検出センサで後席の着席者が存在することが検出されている場合には、無条件にユーザが前席ではなく後席からフリップダウンモニタ5を視聴しようとしていると判定するようにしてもよい。
【0035】
または、図3に示したフリップダウンモニタオープン制御処理のステップ304において、座席検出センサで、バックレストの角度が所定角度以上傾いている前席(運転席または助手席)、または、バックレストの最後端位置が後席の座面の前端より後方の前席(運転積または助手席)に着席者が存在することが検出されている場合にのみ、無条件にユーザが前席からフリップダウンモニタ5を視聴しようとしていると判定するようにしてもよい。
【0036】
また、以上の実施形態において、フリップダウンモニタ5を、図6a1に正面図、図6a2に側面図、図6a3に下面図を示すように、本体部51に対して、左右方向の回転軸に加え、垂直方向の回転軸まわりに回動可能に設けるようにしてもよい。また、この場合、図6b、図6cに示すように、図3に示したフリップダウンモニタオープン制御処理のステップ304において、ユーザが前席からフリップダウンモニタ5を視聴しようとしていると判定された場合には、運転席と助手席の一方のバックレストのみが所定角度(たとえば、垂直方向に対して60度)以上後方に傾いているかどうかを調べる。そして、図6bに示すように運転席と助手席の両方のバックレストが所定角度以上傾いている場合には、垂直方向の回転軸まわりへの回転を行わずに左右方向の回転軸まわり回転のみで、視聴席のユーザにできるだけ正対することとなる角度に、ディスプレイパネル52の角度を制御する。また、図6c、dに示すように運転席と助手席の一方のバックレストのみが所定角度以上傾いている場合には、左右方向の回転軸まわり回転と垂直方向の回転軸まわりへの回転を組み合わせて、上述した視聴席のユーザにできるだけ正対することとなる角度に、ディスプレイパネル52の角度を制御するようにする。なお、運転席と助手席の一方のバックレストのみが所定角度以上傾いている場合、運転席と助手席のうちの所定角度以上傾いている方の席が視聴席となる。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、前席のバックレストの傾斜角度や座面の位置より、前席の着席者がディスプレイパネル52を利用しようとしていると推定される場合には、前席からの視認に適した回転角度にディスプレイパネル52の回転角度を制御し、そうでない場合には、後席からの視認に適した回転角度にディスプレイパネル52の回転角度を制御する。よって、シート位置センサ7やバックレスト角度センサ8の他に特段の装置を必要としない簡易な構成において、ディスプレイパネル52の画面の向きを視聴者の視認に適した向きに制御することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…音声出力装置、2…入力装置、3…フロントモニタ、4…フリップダウンモニタ操作スイッチ、5…フリップダウンモニタ、6…回転アクチュエータ、7…シート位置センサ、8…バックレスト角度センサ、9…機能ユニット、10…制御部、51…本体部、52…ディスプレイパネル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6