(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記結合部の前記非接着面を有した前記シール材が、前記一方側壁部と前記他方側壁部との他方に対して、接着されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
前記非接着面を有した前記シール材が、前記一方側壁部と前記他方側壁部との外周縁相互の結合部に対応した形状の可撓性を有した基材に、接着される構成とするとともに、前記基材ごと、前記一方側壁部と前記他方側壁部との外周縁相互の間で、前記縫合糸を貫通させて配設されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構成のエアバッグの内部に、膨張時における一方側壁部と他方側壁部との相互の離隔距離を規制するためのテザーを、一方側壁部と他方側壁部とを連結するように配設させる場合、シール材を塗布させる前に、テザーを内部に配設させる必要がある。そして、テザー配設後に、シール材を塗布する場合、シール材をテザーに接触させないようにして、重なっている状態の一方側壁部と他方側壁部との一方を部分的にめくりつつ、シール材を塗布する作業が必要となることから、作業が煩雑であり、製造を簡便にする点に改善の余地が生ずることとなっていた。また、このような構成のエアバッグでは、シール材の塗布部位がテザーの近傍に位置する場合、シール材においてテザー近傍となる部位が、部分的に厚くなる場合もあった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、内部にテザーを配設させる構成であっても、簡便に製造することができて、結合部からのガス漏れを抑制可能なエアバッグ及びエアバッグの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアバッグは、膨張用ガスを流入させて対向する一方側壁部と他方側壁部とが離れるように膨張する構成として、
一方側壁部と他方側壁部との外周縁相互の結合部が、
一方側壁部と他方側壁部との外周縁相互の間に、弾性を有し、かつ、固化前に接着性を有したシール材を介在させて、形成されるとともに、
シール材の配設部位を貫通させる縫合糸を使用した縫合を利用して、形成されているエアバッグであって、
エアバッグの膨張時における一方側壁部と他方側壁部との相互の離隔距離を規制可能に、一方側壁部と他方側壁部とを連結するように、テザーが配設されるとともに、
結合部として、
シール材が、少なくとも一方側壁部と他方側壁部との一方に対して、固化後の非接着面を圧接させた状態として、縫合糸を貫通させて配設されている部位、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のエアバッグでは、結合部のシール材が、少なくとも一方側壁部と他方側壁部との一方に対して、固化後の非接着面を圧接させる構成とされていることから、シール材を予め形成しておき、テザー連結後に、シール材を介在させた状態で、一方側壁部と他方側壁部との外周縁相互を、縫着させることにより、結合部を形成することができる。また、本発明のエアバッグでは、結合部にシール材を配置させており、このシール材は、少なくとも一方側壁部と他方側壁部との一方に対して、非接着であるものの、固化後の非接着面を圧接される構成である。そのため、シール材を圧接される側の一方の壁部においては、縫合糸を貫通させることによって壁部に生じる穴(壁部と縫合糸との間に生じる隙間)が、シール材によって圧接されつつ閉塞されるような態様となって、この隙間からのガス漏れを抑制することが可能となる。そのため、膨張時における結合部の部位からのガス漏れを抑制することができる。
【0009】
したがって、本発明のエアバッグでは、内部にテザーを配置させる構成であっても、簡便に製造することができて、結合部からのガス漏れを抑制することができる。
【0010】
本発明のエアバッグにおいて、結合部のシール材を、一方側壁部と他方側壁部との他方に対して、接着させる構成とすれば、他方側壁部に、予めシール材を形成しておくことができ、また、シール材は一方側壁部と他方側壁部との他方に対して接着されることから、シール材を接着される側の他方の壁部側は、他方側の壁部と縫合糸との周囲を、シール材によって隙間なく覆われることととなり、他方の壁部側からのガス漏れを、従来のエアバッグと同様に、防止することが可能となる。そのため、膨張時における結合部の部位からのガス漏れを、一層抑制することが可能となって、好ましい。
【0011】
また、上記構成のエアバッグにおいて、一方側壁部と他方側壁部との他方におけるシール材の接着される接着側壁部に、シール材の外周側に第2のシール材を接着させた延設部位を、配設させ、
一方側壁部と他方側壁部との一方におけるシール材の非接着面を圧接させる非接着側壁部の外周縁を、
シール材と第2のシール材との非接着面に押圧された状態として、接着側壁部におけるシール材を設けた部位と、第2のシール材を設けた延設部位と、で挟持させるとともに、
シール材と第2のシール材とを含めて貫通する縫合糸による縫合により、接着側壁部と結合させる構成とすることが、好ましい。
【0012】
上記構成のエアバッグでは、非接着側壁部の外周縁が、シール材と第2のシール材とによって挟持された状態で、シール材と第2のシール材とを含めて貫通する縫合糸による縫合により、接着側壁部と結合されることから、非接着側壁部は、シール材の非接着面と第2のシール材の非接着面とにより、両面側から圧接される状態となる。そのため、非接着側壁部において、縫合糸を貫通させるように形成される穴(非接着側壁部と縫合糸との間に生じる隙間)は、シール材と第2のシール材とによって、両面側から圧接されつつ閉塞されるような態様となって、この穴からのガス漏れを一層的確に抑制することが可能となる。また、シール材と第2のシール材とは、ともに接着側壁部に対して接着されることから、シール材,第2のシール材を接着される側の接着側壁部側及び延設部位は、それぞれ、接着側壁部及び延設部位と、縫合糸と、の周囲を、それぞれ、シール材,第2のシール材によって隙間なく覆われることととなり、接着側壁部及び延設部位からのガス漏れを、防止することができる。その結果、結合部において、この非接着側壁部の部位からのガス漏れを的確に抑制することが可能となり、膨張時における結合部の部位からのガス漏れを一層的確に抑制することができる。
【0013】
また、本発明のエアバッグにおいて、シール材を、一方側壁部と他方側壁部との外周縁相互の結合部に対応した形状の可撓性を有した基材に、接着させる構成とするとともに、基材ごと、一方側壁部と他方側壁部との外周縁相互の間で、縫合糸を貫通させて配設させる構成としてもよい。
【0014】
エアバッグをこのような構成とすれば、一方側壁部と他方側壁部との縫合前に、予め準備しておいたシール材を設けた基材を、間に配置させて、縫合するだけで所定の結合部を形成することができて、一方側壁部と他方側壁部との一方にシール材を塗布して、固化後に一方側壁部と他方側壁部とを縫合させて製造する場合よりも、製造時の作業効率を良好とすることができて、好ましい。
【0015】
さらに、上記構成のエアバッグにおいて、結合部を、
非接着面を圧接させた状態として配置されるシール材を有する非接着結合部と、
シール材を、一方側壁部と他方側壁部との外周縁相互に、共に接着させるとともに、縫合糸を使用した縫合により結合された部位、を備えて構成される接着結合部と、
を備える構成とすることが、好ましい。
【0016】
このような構成のエアバッグでは、結合部が、一方側壁部と他方側壁部とにそれぞれ接着されてシール性の良好な接着結合部も、備える構成とされている。接着結合部は、シール性が良好であり、接着結合部からのガス漏れは、極力抑制できることから、非接着結合部に加えて接着結合部を配設させることにより、結合部全体を非接着結合部から構成する場合と比較して、結合部からのガス漏れを一層的確に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態では、歩行者用エアバッグ装置Mのエアバッグを例に採り、説明をする。歩行者用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と略す)Mは、
図1,14に示すように、車両Vのフードパネル10の後端10a付近における下面側において、左右のフロントピラー5(5L,5R)の間における車両Vの左右方向の中央付近に、配置される。実施形態の場合、エアバッグ装置Mは、フードパネル10の後端10aを上昇させるフード跳ね上げ装置20(
図1参照)とともに、作動される構成である。フード跳ね上げ装置20は、詳細な説明を省略するが、エアバッグ装置Mの図示しないインフレーターと略同時に作動して、フードパネル10の後端10aを押し上げ、フードパネル10の後端10aとカウル7との間に、エアバッグ60突出用の隙間を形成するために配置されている。
【0019】
なお、本明細書では、特に断らない限り、前後、上下、及び、左右の方向は、それぞれ、車両Vの前後、上下、及び、左右の方向と一致させて説明する。
【0020】
フードパネル10は、
図1に示すように、車両VにおけるエンジンルームERの上方を覆うように配設されるもので、左右両縁側における後端側の部位を、ヒンジ部13によって、車両Vのボディ側に連結されている。フードパネル10は、実施形態の場合、鋼板や、アルミニウム(アルミニウム合金)製の板材等から、構成されている。フードパネル10の後方には、
図14に示すように、ボディ側の剛性の高いカウルパネル7aと、カウルパネル7aの上方の合成樹脂製のカウルルーバ7bと、からなるカウル7が、配設されている。カウルルーバ7bは、後端側をフロントウィンドシールド4の下部4a側に連ならせるように、配設されている。また、フロントウィンドシールド4の左右の外方には、
図1に示すように、フロントピラー5(5L,5R)が、配設されている。
【0021】
エアバッグ装置Mは、
図1,14に示すように、エアバッグ60と、エアバッグ60に膨張用ガスを供給する図示しないインフレーターと、エアバッグ60とインフレーターとを収納するケース28と、を、備えて構成されている。実施形態の場合、図示を省略するが、インフレーターは、エアバッグ60の後述する流入口部68L,68Rに、それぞれ、接続されるもので、2個配設されている。
【0022】
ケース28は、実施形態の場合、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の軟質合成樹脂製として、上側のアッパケース30と下側のロアケース35との2つの部材から構成されている(
図14参照)。エアバッグ60の膨張時には、ケース28は、
図14に示すように、アッパケース30とロアケース35との後端側の部位を撓ませるようにして、エアバッグ60を突出可能な開口を形成し、この開口から、エアバッグ60を後方に展開膨張させる構成である。
【0023】
エアバッグ60は、
図2に示すように、膨張完了時の形状を、正面から見て、左右に幅広の略U字形状とされるもので、左右に延びてカウル7(カウルルーバ7b)の上面側を覆う横膨張部66と、横膨張部66の左右の端部付近からそれぞれ後方へ延びて左右のフロントピラー5L,5Rの上面(前面)5a側を覆う縦膨張部73(73L,73R)と、を備えて構成されている(
図1の二点鎖線参照)。エアバッグ60は、実施形態の場合、膨張完了時に上面側に位置する歩行者側壁部64(一方側壁部)と、歩行者側壁部64と対向するように下面側に位置する車体側壁部63(他方側壁部)と、の外周縁63a,64a相互を、後述する流入口部68の先端側を除いた全周にわたって形成される結合部105によって、結合させることにより袋状とされている。すなわち、エアバッグ60は、膨張用ガスを流入させて、対向して配置される歩行者側壁部64と車体側壁部63とを離すように膨張する構成とされている。歩行者側壁部64と車体側壁部63との外周縁63a,64a相互を結合させる結合部105は、後述するごとく、シリコーン樹脂製のシール剤を塗布して形成されるシール材106と、シール材106の配設部位を縫合糸Tを貫通させるようにして形成される縫合部位107と、を備える構成とされている。実施形態の場合、歩行者側壁部64と車体側壁部63とは、外形形状を略同一として、構成されている。
【0024】
横膨張部66は、膨張完了時に、カウル7の上方を、車幅方向(左右方向)の略全域にわたって覆い可能に構成されるもので、具体的には、膨張完了時に、
図1の二点鎖線及び
図14に示すように、カウル7からフロントウィンドシールド4の下部4a側にかけての領域の上面側を、覆うように構成されている。詳細には、横膨張部66は、
図2に示すように、膨張完了時の前縁側の領域を、フード側膨張部67とし、膨張完了時の後縁側の領域を、露出側膨張部71としている。フード側膨張部67は、エアバッグ60の膨張完了時に、フードパネル10の後端10aの下方側においてフードパネル10に隠れて配置される部位であり、露出側膨張部71は、フード側膨張部67の後側において、フードパネル10の後端10aから露出してカウル7からフロントウィンドシールド4の下部4a側にかけての領域を覆う部位である(
図14参照)。また、露出側膨張部71は、左右の端部付近で、縦膨張部73L,73Rと連通されるように構成されるもので、膨張完了時に、この左右の端部付近の部位で、左右のフェンダパネル9L,9Rの後端9a付近の上面側を覆うこととなる(
図1の二点鎖線参照)。
【0025】
実施形態のエアバッグ60では、横膨張部66におけるフード側膨張部67の前縁側に、図示しないインフレーターと接続される流入口部68(68L,68R)が、形成されている。各流入口部68は、左右のインフレーターを挿入可能に、左右方向側で対向して形成されている。実施形態の場合、各流入口部68は、インフレーターを挿入させる先端側の開口68aを、左右方向の内方に向けるように、形成されている。また、実施形態の場合、流入口部68L,68Rの内部には、耐熱性を高めるとともに、内部に流入する膨張用ガスを左右に分岐させるためのインナチューブ69が、配設されている。各インナチューブ69は、
図6に示すように、三叉状として、流入口部68の開口68a側に形成される開口69aと、後述する中央側厚さ規制部76の前側の領域において左右両端側に形成される開口69b,69cと、を備える構成とされている。
【0026】
実施形態のエアバッグ60では、フード側膨張部67の領域内に、膨張完了時の厚さを規制する中央側厚さ規制部76,端側厚さ規制部77(77L,77R)が、配設されている。中央側厚さ規制部76は、フード側膨張部67における左右方向の中央に形成されるもので、左右方向に略沿って配置される長尺の略棒状とされている。詳細には、中央側厚さ規制部76は、流入口部68L,68Rの後方側の領域まで延びるように形成されて、左右方向の端部側の領域で、流入口部68L,68Rの後方側の領域の後方側を左右の略全域にわたって覆うように配設されている。各端側厚さ規制部77は、中央側厚さ規制部76の左方若しくは右方において、中央側厚さ規制部76の端部と、フード側膨張部67における左右方向側の縁部と、の略中間となる位置に形成されている。各端側厚さ規制部77は、外形形状を略長円形状とされている。これらの中央側厚さ規制部76と端側厚さ規制部77L,77Rとは、車体側壁部63と歩行者側壁部64とを、直接接触させて結合させたシームテザー79により、構成されている。シームテザー79は、
図8に示すように、エアバッグ60の外周縁を結合する結合部105と同様に、シリコーン樹脂製のシール剤を塗布して形成されるシール材80と、シール材80の配設部位を縫合糸Tを貫通させるようにして形成される縫合部位81と、を備える構成とされている。また、このシームテザー79では、結合部105における後述する接着結合部109と同様に、シール材80は、車体側壁部63と歩行者側壁部64とに共に接着されている。また、シール材80は、縫合部位81を構成する縫合糸Tより幅広の線状とされている。縫合部位81は、歩行者側壁部64と車体側壁部63とに、間に介在されるシール材80を含めて、縫合糸Tを貫通させるようにして、形成されている。
【0027】
また、フード側膨張部67の前縁側(エアバッグ60の前縁60a側)において、左右の流入口部68L,68R付近となる部位には、詳細な図示を省略するが、ケース28側に連結固定されて、展開膨張時や膨張完了後のエアバッグ60の後方移動を規制する取付ベルト88(88L,88R)が、配置されている。取付ベルト88L,88Rは、詳細には、流入口部68L,68Rの開口68aにおける左右方向の内側に、近接して配置されている。各取付ベルト88の先端側には、図示しない取付手段としてのボルトを貫通させる取付孔88aが、形成されている。また、フード側膨張部67の前縁側において、左右の流入口部68L,68Rとエアバッグ60の左右の縁(左縁60c,右縁60d)との間の中間部位付近にも、詳細な図示を省略するが、それぞれ、ケース28側に連結されて、展開膨張時や膨張完了後のエアバッグ60の後方移動を規制する取付ベルト89(89L,89R)が、配設されている。各取付ベルト89の先端側にも、図示しない取付手段としてのボルトを貫通させる取付孔89aが、形成されている。
【0028】
また、エアバッグ60内には、膨張完了時における歩行者側壁部64と車体側壁部63との離隔距離を規制可能に、歩行者側壁部64と車体側壁部63とを連結する中央側テザー84と端側テザー86(86L,86R)とが、配設されている。
【0029】
中央側テザー84は、帯状として、実施形態の場合、
図2に示すように、露出側膨張部71から左右の縦膨張部73L,73Rの領域内にかけて配置されるもので、平らに展開した状態のエアバッグ60の後縁60bに略沿うように、全長にわたって緩やかな曲線状として、配設されている。詳細には、中央側テザー84は、中央側厚さ規制部76とエアバッグ60の後縁60bとの略中央となる位置において、左右の両端側を、縦膨張部73L,73Rの前後左右の略中央となる位置に配置させるように、湾曲して、配置されている。実施形態の場合、中央側テザー84は、
図3,4,9に示すように、車体側壁部63に結合される車体側部位98aと、歩行者側壁部64に結合される歩行者側部位98dと、の2枚のテザー用基布98から、形成されている。これらの車体側部位98aと歩行者側部位98dとは、車体側壁部63や歩行者側壁部64に縫合させた縁部98b,98eから離れた側の縁部98c,98f相互を縫着させることにより、中央側テザー84を、構成している。
【0030】
端側テザー86(86L,86R)は、中央側テザー84における左右両端側の部位の外方となる位置に配置されるもので、詳細には、左右の縦膨張部73L,73Rと横膨張部66における露出側膨張部71との交差部位付近に、配設されている。各端側テザー86は、左右方向の内側を前側に位置させ、左右方向の外側を後側に位置させるように、左右方向に対して傾斜して、配置されている。実施形態の場合、各端側テザー86は、
図4,9に示すように、車体側壁部63に結合される車体側部位99aと、歩行者側壁部64に結合される歩行者側部位99dと、の2枚のテザー用基布99から、形成されている。これらの車体側部位99aと歩行者側部位99dとは、車体側部位99aや歩行者側部位99dに縫合させた縁部99b,99eから離れた側の縁部99c,99f相互を縫着させることにより、端側テザー86を、構成している。なお、実施形態の場合、端側テザー86は、長さ寸法を、中央側テザー84の長さ寸法より若干大きくされて、膨張完了時における配置部位の歩行者側壁部64と車体側壁部63の離隔距離を、中央側テザー84の配置部位における歩行者側壁部64と車体側壁部63の離隔距離よりも、若干大きくするように、構成されている(
図4参照)。
【0031】
エアバッグ60は、
図9に示すように、車体側壁部63を構成する車体側用基布92と、歩行者側壁部64を構成する歩行者側用基布95と、インナチューブ69を構成するインナチューブ用基布97と、中央側テザー84を構成するテザー用基布98と、端側テザー86L,86Rを構成するテザー用基布99と、取付ベルト88を構成するベルト用基布101と、取付ベルト89を構成するベルト用基布102と、から構成されている。なお、これらの基布(素材)は、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布に、ガス漏れ防止用のシリコーン樹脂からなるコーティング剤を塗布させたコート布から、形成されている。また、実施形態では、車体側用基布92と歩行者側用基布95とは、コーティング剤を塗布して形成されるコート面を、内周面側に位置させている。
【0032】
歩行者側壁部64と車体側壁部63との外周縁63a,64a相互を結合させる結合部105は、シリコーン樹脂製のシール剤を塗布して形成されるシール材106と、シール材106の配設部位を縫合糸を貫通させるようにして形成される縫合部位107と、を備える構成とされている。
【0033】
シール材106は、
図6,7に示すように、歩行者側壁部64と車体側壁部63との外周縁63a,64a相互の間に、介在されるもので、実施形態の場合、縫合部位107を構成する縫合糸Tより幅広の線状として、結合部105の全域にわたって連続的に形成されている(
図2参照)。シール材106を構成するシリコーン樹脂は、上述したコーティング剤と同一の材料とされるもので、シール材106は、弾性を有し、塗布時における固化前の状態では、歩行者側壁部64,車体側壁部63の表面に接着可能な接着性を有している。
【0034】
縫合部位107は、シール材106上を通るように形成されるもので、歩行者側壁部64と車体側壁部63とに、間に介在されるシール材106を含めて、縫合糸Tを貫通させるようにして、結合部105全体にわたって連続的に形成される(
図2,6,7参照)。具体的には、縫合部位107は、ロックステッチにより形成されている。
【0035】
また、実施形態では、結合部105は、非接着結合部115と接着結合部109とを備える構成とされている。
【0036】
接着結合部109は、
図6に示すように、歩行者側壁部64と車体側壁部63との外周縁64a,63a相互に、共に接着させて形成される接着シール材110を備える構成とされ、接着結合部109における縫合部位111は、接着シール材110上を通るように、接着シール材110に縫合糸Tを貫通させるようにして配設される。この接着結合部109(接着シール材110)は、両端109aを結んだ線を、中央側テザー84,端側テザー86と交差、若しくは、その外側(前側)のエリアとなる位置に配置させるように、構成されている。実施形態の場合、接着結合部109は、両端109aを結んだ線を、中央側テザー84,端側テザー86と交差させるように、エアバッグ60を平らに展開した状態での前側半分程度の領域に配置されている。詳細には、接着結合部109は、エアバッグ60の左縁60c,右縁60dにおいて、それぞれ、前後の中央より前側となる領域から、エアバッグ60の前縁60aにかけて、形成されている(
図6参照)。
【0037】
非接着結合部115は、エアバッグ60を平らに展開した状態で、接着結合部109を除いた領域、具体的には、後半分程度の領域に配設されている。非接着結合部115は、実施形態の場合、
図7に示すように、車体側壁部63を接着側壁部として、車体側壁部63に対して接着されて、歩行者側壁部64を非接着側壁部として、歩行者側壁部64に対して非接着とされる非接着シール材116を、備える構成とされている。この非接着シール材116は、車体側壁部63にシール剤を塗布させた後固化させることにより、車体側壁部63側に接着されている面を除いた外表面側を、非接着面116aとして、構成されている。また、実施形態の非接着結合部115は、非接着シール材116の直上となる位置に配置される第2シール材117も、備える構成とされている。
【0038】
具体的には、実施形態のエアバッグ60では、接着側壁部である車体側壁部63が、非接着シール材116の外周側に、第2シール材117を接着させた延設部位63bを、備える構成とされている。第2シール材117は、非接着シール材116と同様に、車体側壁部63の延設部位63bにシール剤を塗布させた後固化させることにより、車体側壁部63側に接着されている面を除いた外表面側を、非接着面117aとして、構成されている。この第2シール材117は、延設部位63bを折り返した際に、間に、非接着側壁部である歩行者側壁部64の外周縁64aを介在させた状態で、非接着シール材116の直上となる位置に、形成されている(
図7参照)。また、この第2シール材117も、非接着シール材116と同様に、縫合部位118を構成する縫合糸Tより幅広の線状とされている。
【0039】
非接着結合部115では、縫合部位118は、それぞれ、非接着面116a,117aを歩行者側壁部64側に圧接させるようにして、歩行者側壁部64と車体側壁部63との間に介在される非接着シール材116と、歩行者側壁部64と延設部位63bとの間に介在される第2シール材117と、に、縫合糸Tを貫通させるようにして、非接着シール材116,第2シール材117上を通るように、配設される。すなわち、非接着結合部115は、非接着シール材116の非接着面116aと第2シール材117の非接着面117aとを歩行者側壁部64に圧接させるようにして、非接着側壁部である歩行者側壁部64の外周縁64aを、車体側壁部63の外周縁63aと延設部位63bとによって挟持させた状態で、非接着シール材116と第2シール材117とに、縫合糸Tを貫通させるようにして、非接着シール材116及び第2シール材117上を通る縫合部位118を形成することにより、構成されている。
【0040】
実施形態の場合、非接着結合部115は、
図2に示すように、縦膨張部73L,73Rの外周縁から横膨張部66の後縁にかけての領域において、湾曲して形成されていることから、車体側壁部63の外周縁63aから延びる延設部位63b(93)は、車体側壁部63を構成する車体側用基布92を平らに展開した状態において、部分的に切れ目を入れた状態で、車体側壁部63の外周縁63aから外方に延びるように断続的に、形成されている(
図9,10参照)。各延設部位63b(93)は、歩行者側壁部64の外周縁64a上への折り返し時に、端縁側に相互に重なって配置される部位を有する構成であり、第2シール材117は、各延設部位63b(93)を折り返した状態では、非接着シール材116上に、連続して形成されることとなる。
【0041】
次に、実施形態のエアバッグ60の製造について説明をする。まず、平らに展開した状態の車体側用基布92の内表面において、接着結合部109を形成する部位と、シームテザー79(中央側厚さ規制部76,端側厚さ規制部77L,77R)を形成する部位と、に、シール剤を塗布し(
図10のA,B参照)、シール剤の固化前に、歩行者側用基布95を重ねて、車体側用基布92(車体側壁部63)と歩行者側用基布95(歩行者側壁部64)とに共に接着される接着シール材110,シール材80を、形成する。そして、接着シール材110,シール材80の乾燥後に、接着シール材110,シール材80を含めて車体側用基布92(車体側壁部63)と歩行者側用基布95(歩行者側壁部64)と、縫合糸Tを貫通させて縫合させることにより、縫合部位111,81を形成し、接着結合部109と、中央側厚さ規制部76と、端側厚さ規制部77と、を形成する(
図11のA参照)。次いで、歩行者側用基布95を、接着結合部109の端部109aとなる部位で、折り返し、車体側用基布92の内表面側を露出させる。そして、車体側用基布92の内表面において、非接着結合部115の非接着シール材116を形成する部位と、第2シール材117を形成する延設部位93と、に、シール剤を塗布して固化させることにより、非接着面116a,117aを有した非接着シール材116,第2シール材117を形成する(
図11のB参照)。
【0042】
次いで、
図12のAに示すように、中央側テザー84と端側テザー86とを、歩行者側壁部64と車体側壁部63とに連結させるように、配置させる。詳細には、車体側用基布92に、テザー用基布99における車体側部位99a,99aの縁部99b,99bを縫着させ、テザー用基布98における車体側部位98aの縁部98bを縫着させる。同様に、歩行者側用基布95に、テザー用基布99における歩行者側部位99d,99dの縁部99e,99eを縫着させ、テザー用基布98における歩行者側部位98dの縁部98eを縫着させる。その後、車体側部位99aの縁部99cと歩行者側部位99dの縁部99fとを、それぞれ、縫着させて、端側テザー86を形成する。次いで、車体側部位98aの縁部98cと歩行者側部位98dの縁部98fとを縫着させて、中央側テザー84を形成する。
【0043】
その後、歩行者側用基布95を、車体側用基布92に平らに展開させるように重ね、車体側用基布92の各延設部位93を、歩行者側用基布95上に載せるように、折り返す。そして、歩行者側用基布95(歩行者側壁部64)と車体側用基布92(車体側壁部63)との外周縁63a,64aにおける後縁側の部位を、縫合糸Tを用いて縫着させ、縫合部位118を形成すると同時に、非接着結合部115を形成する(
図12のB参照)。このとき、
図13に示すように、非接着シール材116と第2シール材117との非接着面116a,117aを、歩行者側用基布95(歩行者側壁部64)の外周縁64aに圧接させるようにして、車体側用基布92(車体側壁部63)の外周縁63aと延設部位63b(93)とで、歩行者側用基布95(歩行者側壁部64)を挟持させた状態で、車体側用基布92(車体側壁部63)と歩行者側用基布95(歩行者側壁部64)の外周縁63a,64a相互と延設部位63bとを、非接着シール材116,第2シール材117を含めて、縫合糸Tを貫通させて縫合させることにより、縫合部位118が形成されることとなる。また、この縫合部位118形成時には、縫合部位118は、端末を、接着結合部109における縫合部位111の端末と重ねられて、縫合部位111と連なるように、形成されることとなる。
【0044】
その後、ベルト用基布101を前縁側に縫着させて取付ベルト88を形成し、ベルト用基布102を前縁側に縫着させて取付ベルト89を形成し、予め形成しておいたインナチューブ69を流入口部68内に挿入させれば、エアバッグ60を製造することができる。
【0045】
次いで、エアバッグ60を、ケース28内に収納可能に折り畳み、図示しないインフレーターを接続させて、インフレーターとともに、ケース28内に収納させて、エアバッグ装置Mを組み立てる。その後、図示しないインフレーターから延びるリード線を図示しない作動回路に接続するとともに、ケース28を、図示しない支持ブラケットを介して、フードパネル10に取り付ければ、エアバッグ装置Mを、車両Vに搭載することができる。
【0046】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、図示しない作動回路が、フロントバンパ6に配置される図示しないセンサからの信号に基づいて、車両Vの歩行者との衝突を検知した際に、フード跳ね上げ装置20が、フードパネル10の後端10aを押し上げるように作動されることとなり、そして、略同時に、インフレーターが作動されて、内部に膨張用ガスを流入させてエアバッグ60が膨張することとなり、膨張するエアバッグ60が、ケース28の後端側の部位を押し開いて、ケース28から後方側へ向かって突出しつつ、後上方に向かって展開膨張して、カウル7の上面とフロントピラー5L,5Rの前面(上面)5aとを覆うように、膨張を完了させることとなる(
図1の二点鎖線及び
図14参照)。
【0047】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mに使用されるエアバッグ60では、歩行者側壁部64と車体側壁部63との外周縁63a,64a相互を結合させる結合部105(非接着結合部115)のシール材106(非接着シール材116)が、歩行者側壁部64に対して、固化後の非接着面116aを圧接させる構成とされていることから、非接着シール材116を予め形成しておき、中央側テザー84,端側テザー86連結後に、非接着シール材116を介在させた状態で、歩行者側壁部64と車体側壁部63との外周縁63a,64a相互を、縫着させることにより、非接着結合部115を形成することができる。また、実施形態のエアバッグ60では、非接着結合部115に非接着シール材116を配置させており、この非接着シール材116は、歩行者側壁部64に対して、非接着であるものの、固化後の非接着面116aを圧接される構成である。そのため、非接着シール材116を圧接される歩行者側壁部64においては、縫合糸Tを貫通させることによって歩行者側壁部64に生じる穴(歩行者側壁部64と縫合糸Tとの間に生じる隙間H1)が、非接着シール材116によって圧接されつつ閉塞されるような態様となって、この隙間H1からのガス漏れを抑制することが可能となる。そのため、膨張時における非接着結合部115の部位からのガス漏れを抑制することができる。
【0048】
したがって、実施形態のエアバッグ60では、内部に中央側テザー84,端側テザー86を配置させる構成であっても、簡便に製造することができて、非接着結合部115からのガス漏れを抑制することができる。
【0049】
また、実施形態のエアバッグ60では、非接着結合部115の非接着シール材116は、車体側壁部63に対して、接着される構成であることから、エアバッグ60の製造時に、車体側壁部63に、予め非接着シール材116を形成しておくことができる。さらに、非接着結合部115の非接着シール材116は、車体側壁部63に対して接着されることから、車体側壁部63側においては、車体側壁部63と縫合糸Tとの周囲は、非接着シール材116によって隙間なく覆われることとなる。そのため、縫合糸Tと車体側壁部63との間に生じる隙間H2が、非接着シール材116によって閉塞されることから、車体側壁部63側からのガス漏れを、従来のエアバッグと同様に、防止することが可能となる。その結果、膨張時における非接着結合部115の部位からのガス漏れを一層抑制することができる。
【0050】
この実施形態のエアバッグ60は、車体側壁部63にシール剤を塗布して固化させることにより、非接着シール材116を形成した後に、中央側テザー84,端側テザー86を、車体側壁部63と歩行者側壁部64とを連結するように配設させ、その後、車体側壁部63と歩行者側壁部64との外周縁63a,64a相互を縫合糸Tを用いて縫着させて、非接着結合部115を形成して、製造される構成である。そのため、従来のエアバッグのごとく、重なっている状態の壁部相互の一方を部分的にめくりつつ、シール材を塗布する作業も不要であり、エアバッグ60を簡便に製造することができる。また、
図2に示すごとく、シール材の塗布部位(非接着シール材116)が端側テザー86L,86Rの近傍に位置していても、シール材においてテザー近傍となる部位が、部分的に厚くなることも抑制できることから、非接着結合部115に端側テザー86L,86Rが近接して配置される構成であっても、エアバッグ60を容易に製造することができる。
【0051】
また、実施形態のエアバッグ60では、非接着シール材116の接着される車体側壁部63に、非接着シール材116の外周側に第2シール材117を接着させた延設部位63bを、配設させており、非接着結合部115は、歩行者側壁部64の外周縁64aを、非接着シール材116と第2シール材117とによって挟持させた状態で、非接着シール材116と第2シール材117とを含めて貫通する縫合糸による縫合により、車体側壁部63と結合させて、形成されている。そのため、歩行者側壁部64は、非接着シール材116の非接着面116aと第2シール材117の非接着面117aとにより、両面側から圧接される状態となる。すなわち、歩行者側壁部64において、縫合糸Tを貫通させるように形成される穴(歩行者側壁部64と縫合糸Tとの間に生じる隙間H1)は、非接着シール材116と第2シール材117とによって、両面側から圧接されつつ閉塞されるような態様となって、この隙間H1からのガス漏れを一層的確に抑制することが可能となる。また、非接着シール材116と同様に、第2シール材117も、車体側壁部63の延設部位63bに対して接着されることから、第2シール材117を接着される側の延設部位63bは、延設部位63bと縫合糸Tとの周囲を、第2シール材117によって隙間なく覆われることとなる。そのため、縫合糸Tと延設部位63bとの間に生じる隙間H3が、第2シール材117によって閉塞されることから、延設部位63bからのガス漏れを、防止することができる。その結果、非接着結合部115において、歩行者側壁部64の部位からのガス漏れを的確に抑制することが可能となり、膨張時における非接着結合部115の部位からのガス漏れを一層的確に抑制することができる。なお、このような点を考慮なければ、非接着結合部115Aを、
図15に示すように、第2シール材を備えず、車体側壁部63に接着させる非接着シール材116Aのみを備える構成としてもよい。
【0052】
さらに、実施形態のエアバッグ60では、非接着面116aを圧接させた状態として配置される非接着シール材116を有する非接着結合部115に加えて、歩行者側壁部64と車体側壁部63との外周縁63a,64a相互に共に接着される接着シール材110を有する接着結合部109も、配設されている。接着結合部109は、シール性が良好であり、接着結合部109からのガス漏れは、極力抑制できることから、非接着結合部115に加えて接着結合部109を配設させることにより、結合部全体を非接着結合部から構成する場合と比較して、結合部105からのガス漏れを一層的確に防止することができる。そのため、実施形態のごとく、容量が大きく、かつ、膨張完了後に比較的長時間高い内圧維持を要求される歩行者保護用のエアバッグには、好適である。
【0053】
実施形態のエアバッグ60では、中央側テザー84,端側テザー86の配置に必要な領域を除いて、外周縁の前側の領域に、接着結合部109を、配置させている。具体的には、接着結合部109は、両端109aを結んだ線を、中央側テザー84,端側テザー86と交差させるようにして、結合部105の全長の半分程度の領域に、配置されている。そして、このように、接着結合部109を有する構成のエアバッグ60は、中央側テザー84,端側テザー86の歩行者側壁部64,車体側壁部63への連結前に、車体側壁部63に接着シール材110形成用のシール剤を塗布して、歩行者側壁部64と車体側壁部63との外周縁63a,64a相互をともに接着させ、縫合部位111を形成して接着結合部109を形成した後に、中央側テザー84,端側テザー86を、車体側壁部63と歩行者側壁部64とを連結するように配設させることとなる。そのため、歩行者側壁部64と車体側壁部63とに共に接着される接着シール材110(接着結合部109)を備える構成であっても、従来のエアバッグのごとく、重なっている状態の壁部相互の一方を部分的にめくりつつ、シール材を塗布する作業も不要であり、エアバッグ60を簡便に製造することができる。
【0054】
次に、他の形態のエアバッグ60Bについて、説明をする。エアバッグ60Bは、
図16に示すように、結合部105Bにおける非接着結合部122以外は、前述のエアバッグ60と同様の構成であり、同一の部材には、同一の図符号の末尾に「B」を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
エアバッグ60Bにおいて、非接着結合部122は、
図17に示すように、非接着結合部122に対応した帯状の基材123に接着させて形成される非接着シール材124を、歩行者側壁部64Bと車体側壁部63Bとの間に配置させて構成されるもので、非接着シール材124を、基材123ごと、歩行者側壁部64Bと車体側壁部63Bとの外周縁63a,64a相互の間に配置させ、非接着シール材124の配設部位を縫合糸Tを貫通させるようにして形成される縫合部位125を、備える構成とされている。
【0056】
基材123は、可撓性を有したシート体から構成されるもので、実施形態の場合、エアバッグ60,60Bを構成する基布と同一のポリエステル糸やポリアミド糸からなる織布にガス漏れ防止用のシリコーン樹脂からなるコーティング剤を塗布させたコート布から、形成されている。そして、基材123は、
図18に示すように、外形形状を、非接着結合部122(歩行者側壁部64B,車体側壁部63Bの外周縁63a,64aにおける後縁側の領域)に対応して湾曲した帯状とされている。また、この基材123は、コート面を歩行者側壁部64B側に向け、この歩行者側壁部64B側のコート面上に、非接着シール材124を接着させている。
【0057】
非接着シール材124は、基材123上にシール剤を塗布させた後固化させることにより、基材123に接着されている面を除いた外表面側を、非接着面124aとして構成されている。この非接着面124aは、実施形態の場合、歩行者側壁部64Bに圧接されることとなる。
【0058】
縫合部位125は、非接着シール材124上を通るように形成されるもので、歩行者側壁部64Bと車体側壁部63Bとに、間に介在される基材123及び非接着シール材124を含めて、縫合糸Tを貫通させるようにして、非接着結合部122全体にわたって連続的に形成される。
【0059】
このような構成のエアバッグ60Bでは、
図19のA,Bに示すように、製造時において、前述のエアバッグ60と同様に、接着結合部109Bと中央側厚さ規制部76Bと端側厚さ規制部77Bとを形成された状態の歩行者側壁部64Bと車体側壁部63Bとに、中央側テザー84B,端側テザー86Bを連結させた後、歩行者側壁部64Bと車体側壁部63Bとの間に、基材123ごと非接着シール材124を介在させ、非接着シール材124の非接着面124aを歩行者側壁部64Bに対して圧接させつつ、接着シール材110Bの配設部位に縫合糸Tを貫通させて、歩行者側壁部64Bと車体側壁部63Bとの外周縁63a,64a相互を縫合させて、縫合部位125を形成すれば、非接着結合部122を形成することができる。
【0060】
このような構成のエアバッグ60Bにおいても、非接着シール材124を予め形成しておき、中央側テザー84B,端側テザー86B連結後に、非接着シール材124を介在させた状態で、歩行者側壁部64Bと車体側壁部63Bとの外周縁63a,64a相互を、縫着させることにより、非接着結合部122を形成することができる。また、このような構成のエアバッグ60Bでは、非接着結合部122に配置される非接着シール材124は、車体側壁部63Bと歩行者側壁部64Bに対して、非接着であるものの、歩行者側壁部64Bに対しては、固化後の非接着面124aを圧接される構成である。そのため、非接着シール材124を圧接される歩行者側壁部64Bにおいては、縫合糸Tを貫通させることによって歩行者側壁部64に生じる穴(歩行者側壁部64Bと縫合糸Tとの間に生じる隙間H4)が、非接着シール材124によって圧接されつつ閉塞されるような態様となって、この隙間H4からのガス漏れを抑制することが可能となる。そのため、膨張時における非接着結合部122の部位からのガス漏れを抑制することができる。
【0061】
また、このような構成のエアバッグ60Bは、歩行者側壁部64Bと車体側壁部63Bとの縫合前に、予め準備しておいた非接着シール材124を設けた基材123を、間に配置させて、縫合するだけで非接着結合部122を形成することができることから、上述のエアバッグ60のごとく、車体側壁部63にシール材を塗布して、固化後に歩行者側壁部64と車体側壁部63とを縫合させて製造する場合よりも、製造時の作業効率を良好とすることができる。
【0062】
なお、実施形態のエアバッグ60,60Bでは、接着結合部109,109Bを備える構成であるが、エアバッグとして、接着結合部を設けず、外周縁の全域にわたって、非接着結合部115,115A,122を配置させる構成としてもよい。
【0063】
また、実施形態では、エアバッグとして、歩行者用エアバッグ装置に使用されるエアバッグを例に採り説明しているが、本発明を適用可能なエアバッグはこれに限られるものではなく、通常、内部にテザーを配設させる構成とされている膝保護用エアバッグ装置のエアバッグや、サイドエアバッグ装置のエアバッグにも、適用可能である。