特許第6571577号(P6571577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571577
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20190826BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20190826BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20190826BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20190826BHJP
   H01M 10/625 20140101ALN20190826BHJP
   H01M 10/647 20140101ALN20190826BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALN20190826BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   H01M2/10 S
   H01M10/613
   H01M10/6555
   H01M10/6557
   !H01M10/625
   !H01M10/647
   !H01M10/6563
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-68125(P2016-68125)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-183071(P2017-183071A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 篤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄介
(72)【発明者】
【氏名】刑部 友敬
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−059380(JP,A)
【文献】 特開2015−069768(JP,A)
【文献】 特開2015−082391(JP,A)
【文献】 特開2011−076779(JP,A)
【文献】 特開2005−347077(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/125605(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0293982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/613
H01M 10/6555
H01M 10/6557
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6563
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電池セルと、
前記第1電池セルに対して積層される第2電池セルと、
前記第1電池セルに向けて突出する突形状と、前記第2電池セルに向けて突出する突形状とが交互に繰り返す波状の断面形状を有し、前記第1電池セルおよび前記第2電池セルの間に介挿されるスペーサとを備え、
前記第1電池セルおよび前記第2電池セルの各電池セルは、
筐体形状を有するセルケースと、
前記セルケースに収容され、前記セルケースの内側面と接触して設けられる電極体とを含み、
前記スペーサは、
前記第1電池セルに向けて突出し、前記第1電池セルと接触する第1突部と、
前記第1突部より離れた位置に設けられ、前記第2電池セルに向けて突出し、前記第2電池セルと接触する第2突部と、
前記スペーサが有する複数の突形状のうち前記第1突部と隣り合い、前記第1突部および前記第2突部の間に設けられ、前記第2電池セルに向けて突出し、前記第2電池セルと接触する第3突部と、
前記第1電池セルおよび前記第2電池セルの積層方向に対して斜め方向に延び、前記第1突部および前記第3突部を接続する第1傾斜部と、
前記スペーサが有する複数の突形状のうち前記第2突部と隣り合い、前記第1突部および前記第2突部の間に設けられ、前記第1電池セルに向けて突出し、前記第1電池セルと接触する第4突部と、
前記第1電池セルおよび前記第2電池セルの積層方向に対して斜め方向に延び、前記第2突部および前記第4突部を接続する第2傾斜部と、
前記第3突部および前記第4突部の間に配置され、それぞれ、前記第1電池セルおよび前記第2電池セルに向けて突出し、前記第1電池セルおよび前記第2電池セルと非接触となるように設けられる第5突部および第6突部とを含み、
前記第1突部と前記第1電池セルとの接触面積は、前記第3突部と前記第2電池セルとの接触面積より大きく、
前記第2突部と前記第2電池セルとの接触面積は、前記第4突部と前記第1電池セルとの接触面積より大きく、さらに
前記スペーサに設けられる第1剛体部および第2剛体部の少なくとも一方を備え、
前記第1剛体部は、前記第1突部から前記第2電池セルに向けて突出し、前記第2電池セルと非接触となるように設けられ、
前記第2剛体部は、前記第2突部から前記第1電池セルに向けて突出し、前記第1電池セルと非接触となるように設けられ、
前記第1電池セルおよび前記第2電池セルの膨張時、前記第5突部および前記第6突部が、それぞれ、前記第1電池セルおよび前記第2電池セルと接触し、前記第1剛体部および前記第2剛体部の少なくともいずれか一方が、前記第2電池セルおよび/または前記第1電池セルと接触する、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の組電池に関して、たとえば、特開2008−124033号公報には、耐圧性能、冷却性能、耐振性を高め、コスト低減、小型軽量化を図り、組み立て容易性を解決し、車両搭載可能な電池モジュールの大量生産を実現することを目的とした、電池モジュールが開示されている(特許文献1)。特許文献1に開示された電池モジュールは、厚さ方向に積層される複数の電池セルと、電池セルを収容する外箱と、外箱内に間隙を形成するとともに、電池セルを加圧する可撓性のスペーサとを備える。スペーサは、Ω字形状、C字形状、または、O字形状にスリットを形成した形状の断面を有する。
【0003】
また、特開2012−59380号公報には、小型化を図るとともに、発電用ガスを流通させる流通層と冷媒媒体を流通させる冷却層とを互いに独立して設計し、かつ、それら流通層および冷却層の各高さを縮小することを目的とした、燃料電池スタックが開示されている(特許文献2)。特許文献2に開示された燃料電池スタックは、単位セル間に冷却媒体を流通させるための冷却層を区画形成する一対のセパレータと、それらセパレータに導通接触し、かつ、単位セルの膨張変形を吸収するための導電性の変形吸収材とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−124033号公報
【特許文献2】特開2012−59380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献に開示されるように、積層された電池セル間に可撓性を有するスペーサを介挿した組電池が知られている。このような組電池においては、スペーサから電池セルに対して、複数の電池セルを一体に拘束するために必要な一定以上の荷重を作用させることが求められる。
【0006】
一方、上記の組電池においては、充放電時のSOC(state of charge)変動や温度変動によって、電池セルの膨縮運動が発生する。スペーサの別の役割に、このような電池セルの膨縮運動を吸収することがある。
【0007】
しかしながら、電池セルの膨張量が増すに従って、スペーサから電池セルに加わる荷重が局所的に増大する。この場合、電池セルの内部抵抗がばらつき、適正な電池性能が得られないおそれがある。また、電池セルの膨張が過度に進むと、各電池セルにおいて、発熱体である電極体と、電極体を収容するセルケースとの接触面積が減少する。この場合、電極体からセルケースを通じての放熱が滞るため、電池セルの冷却効率が低下するおそれがある。
【0008】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、スペーサから電池セルに対して一定以上の荷重を作用させるとともに、電池セルの膨張時にあっても、適正な電池性能が得られ、かつ、電池セルの冷却効率が高く維持される組電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に従った組電池は、第1電池セルと、第1電池セルに対して積層される第2電池セルと、第1電池セルに向けて突出する突形状と、第2電池セルに向けて突出する突形状とが交互に繰り返す波状の断面形状を有し、第1電池セルおよび第2電池セルの間に介挿されるスペーサとを備える。第1電池セルおよび第2電池セルの各電池セルは、筐体形状を有するセルケースと、セルケースに収容され、セルケースの内側面と接触して設けられる電極体とを含む。スペーサは、第1電池セルに向けて突出し、第1電池セルと接触する第1突部と、第1突部より離れた位置に設けられ、第2電池セルに向けて突出し、第2電池セルと接触する第2突部と、スペーサが有する複数の突形状のうち第1突部と隣り合い、第1突部および第2突部の間に設けられ、第2電池セルに向けて突出し、第2電池セルと接触する第3突部と、第1電池セルおよび第2電池セルの積層方向に対して斜め方向に延び、第1突部および第3突部を接続する第1傾斜部と、スペーサが有する複数の突形状のうち第2突部と隣り合い、第1突部および第2突部の間に設けられ、第1電池セルに向けて突出し、第1電池セルと接触する第4突部と、第1電池セルおよび第2電池セルの積層方向に対して斜め方向に延び、第2突部および第4突部を接続する第2傾斜部と、第3突部および第4突部の間に配置され、それぞれ、第1電池セルおよび第2電池セルに向けて突出し、第1電池セルおよび第2電池セルと非接触となるように設けられる第5突部および第6突部とを含む。第1突部と第1電池セルの接触面積は、第3突部と第2電池セルの接触面積より大きく、第2突部と第2電池セルの接触面積は、第4突部と第1電池セルの接触面積より大きい。組電池は、スペーサに設けられる第1剛体部および第2剛体部の少なくとも一方をさらに備える。第1剛体部は、第1突部から第2電池セルに向けて突出し、第2電池セルと非接触となるように設けられる。第2剛体部は、第2突部から第1電池セルに向けて突出し、第1電池セルと非接触となるように設けられる。第1電池セルおよび第2電池セルの膨張時、第5突部および第6突部が、それぞれ、第1電池セルおよび第2電池セルと接触し、第1剛体部および第2剛体部の少なくともいずれか一方が、第2電池セルおよび/または第1電池セルと接触する。
【0010】
このように構成された組電池によれば、第1傾斜部に、第1突部および第3突部の間で座屈を引き起こす方向の力を発生させ、第2傾斜部に、第2突部および第4突部の間で座屈を引き起こす方向の力を発生させることにより、スペーサから第1電池セルおよび第2電池セルに対して一定以上の荷重を作用させることができる。
【0011】
また、第1電池セルおよび第2電池セルの膨張時、スペーサと、第1電池セルおよび第2電池セルとの接点を増やすことによって、スペーサから第1電池セルおよび第2電池セルに加わる荷重を分散させることができる。これにより、電池セルの膨張時にあっても適正な電池性能が得られる組電池を実現することができる。さらに、第1電池セルおよび第2電池セルの膨張時に、第1剛体部および第2剛体部の少なくともいずれか一方が第2電池セルおよび/または第1電池セルと接触することにより、電池セルの過度な膨張を防止できる。これにより、電極体がセルケースの内側面から離れることが抑制されるため、電池セルの冷却性能を高く維持することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上に説明したように、この発明に従えば、スペーサから電池セルに対して一定以上の荷重を作用させるとともに、電池セルの膨張時にあっても、適正な電池性能が得られ、かつ、電池セルの冷却効率が高く維持される組電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態における組電池を示す分解組み立て図である。
図2図1中のII−II線上に沿った組電池を部分的に示す断面図である。
図3図2中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲のスペーサを拡大して示す断面図である。
図4】電池セルの膨張時のスペーサを示す断面図である。
図5図1中の組電池によって奏される作用効果を説明するための断面図である。
図6】電池セルの内部構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態における組電池を示す分解組み立て図である。図2は、図1中のII−II線上に沿った組電池を部分的に示す断面図である。図1および図2を参照して、本実施の形態における組電池10は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関と、充放電可能なバッテリから電力供給されるモータとを動力源とするハイブリッド自動車や、外部充電が可能なプラグインハイブリッド自動車、電気自動車などに搭載される。
【0016】
まず、組電池10の全体構成について説明する。組電池10は、リチウムイオン電池である。組電池10は、複数の電池セル21と、スペーサ41と、ケース体14とを有する。
【0017】
複数の電池セル21は、矢印101に示す一方向に積層されている(以下、矢印101に示す方向を「電池セル21の積層方向」ともいう)。電池セル21は、略直方体の薄板形状を有する。複数の電池セル21は、各電池セル21が有する複数の側面のうちで最も面積が大きい側面25d同士が、隣り合う電池セル21間で向かい合わせとなるように積層されている。
【0018】
電池セル21は、電極体23と、セルケース25と、正極端子27および負極端子28とを有する。
【0019】
セルケース25は、略直方体の筐体形状を有し、電池セル21の外観をなす。セルケース25は、アルミニウム等の金属から形成されている。セルケース25には、電解液とともに電極体23が収容されている。電極体23は、正極シートと、セパレータを介して正極シートと重ね合わされた負極シートとから構成されている。電極体23は、正極シート、セパレータおよび負極シートの積層体を巻回した巻回タイプのものあってもよいし、正極シート、セパレータおよび負極シートを繰り返し積層した積層タイプのものであってもよい。
【0020】
正極端子27および負極端子28は、セルケース25の頂面25aに取り付けられている。正極端子27および負極端子28は、セルケース25の内部で電極体23に電気的に接続されている。正極端子27および負極端子28は、複数の電池セル21間で互いに電気的に直列に接続されている。
【0021】
スペーサ41は、互いに隣り合う電池セル21間に介挿されている。スペーサ41は、絶縁性材料から形成されている。スペーサ41は、樹脂から形成されている。スペーサ41は、その構成部位として、枠部43pおよび枠部43qと、板状部45pおよび板状部45qと、波状部46とを有する。
【0022】
枠部43pおよび枠部43qは、それぞれ、セルケース25の一対の側面25bおよび側面25cを覆うように設けられている。板状部45pは、枠部43pから、隣り合う電池セル21間の空間に向けて延出する先に設けられている。板状部45qは、枠部43qから、隣り合う電池セル21間の空間に向けて延出する先に設けられている。板状部45pおよび板状部45qは、電池セル21(電池セル21A)と、その電池セル21に隣り合う電池セル21(電池セル21B)との間で板状に延在している。
【0023】
波状部46は、板状部45pおよび板状部45qの間に設けられている。波状部46は、波状の断面形状を有する。波状部46は、電池セル21Aに向けて突出する突形状と、電池セル21Bに向けて突出する突形状とが交互に繰り返す波状の断面形状を有する。波状部46は、全体として、電池セル21の積層方向に直交する方向(図1および図2中の矢印102に示す方向)に沿って波状に延びている(以下、波状部46が全体として波状に延びる方向を、「波状部46の延伸方向」ともいう)。
【0024】
セルケース25の内部には、電極体23がセルケース25の内側面に密着しない空間121と、電極体23がセルケース25の内側面に密着する空間122とが規定されている。板状部45pおよび板状部45qは、電池セル21の積層方向において、空間121に投影される位置に設けられている。波状部46は、電池セル21の積層方向において、空間122に投影される位置に設けられている。
【0025】
スペーサ41(波状部46)が介挿されることによって、互いに隣り合う電池セル21間には、冷却風が流通される冷却風通路26が形成されている。図2中には、冷却風通路26における冷却風の流通方向に直交する平面により切断された場合の組電池10の断面が示されている。波状部46は、冷却風通路26における冷却風の流通方向において同一の断面形状を有する。
【0026】
ケース体14は、略直方体の筐体形状を有する。ケース体14には、複数の電池セル21と、互いに隣り合う電池セル21間に介挿されるスペーサ41とからなる積層体が収容される。このような構成により、複数の電池セル21がケース体14の内部で一体に拘束される。
【0027】
なお、図2中には、ケース体14に収容された状態における、複数の電池セル21およびスペーサ41からなる積層体の断面が示されている。
【0028】
続いて、スペーサ41の構造についてより詳細に説明する。図3は、図2中の2点鎖線IIIで囲まれた範囲のスペーサを拡大して示す断面図である。
【0029】
図2および図3を参照して、スペーサ41(波状部46)は、その構成部位として、第1突部51と、第2突部52と、第3突部53と、第4突部54と、第5突部55と、第6突部56と、第1傾斜部61と、第2傾斜部62とを有する。第1〜第6突部51〜56は、電池セル21Aまたは電池セル21Bに向けて突出する突形状をなす。
【0030】
第1突部51は、電池セル21Aに向けて突出する。第1突部51は、電池セル21Aに接触する。第1突部51は、電池セル21Aに向けて突出する先端で電池セル21Aに接触する。
【0031】
第2突部52は、波状部46の延伸方向において、第1突部51より離れた位置に設けられている。第2突部52は、第1突部51と連続して並んでいない。第2突部52は、電池セル21Bに向けて突出する。第2突部52は、電池セル21Bに接触する。第2突部52は、電池セル21Bに向けて突出する先端で電池セル21Bに接触する。
【0032】
第3突部53は、第1突部51および第2突部52の間に設けられている。第3突部53は、第1突部51と連続して並んでいる。第1突部51および第3突部53は、スペーサ41(波状部46)が有する複数の突形状のうちで、互いに隣り合って設けられている。第3突部53は、電池セル21Bに向けて突出する。第3突部53は、電池セル21Bに接触する。第3突部53は、電池セル21Bに向けて突出する先端で電池セル21Bに接触する。第3突部53は、電池セル21Bに向けて突出する先端で湾曲している。
【0033】
第1傾斜部61は、第1突部51および第3突部53の間を接続するように設けられている。第1傾斜部61は、電池セル21の積層方向に対して斜め方向に延びている。特に本実施の形態では、第1傾斜部61が、第1突部51および第3突部53の間で直線状に延びている。
【0034】
第4突部54は、第1突部51および第2突部52の間に設けられている。第4突部54は、第2突部52と連続して並んでいる。第2突部52および第4突部54は、スペーサ41(波状部46)が有する複数の突形状のうちで、互いに隣り合って設けられている。第4突部54は、電池セル21Aに向けて突出する。第4突部54は、電池セル21Aに接触する。第4突部54は、電池セル21Aに向けて突出する先端で電池セル21Aに接触する。第4突部54は、電池セル21Aに向けて突出する先端で湾曲している。
【0035】
第2傾斜部62は、第2突部52および第4突部54の間を接続するように設けられている。第2傾斜部62は、電池セル21の積層方向に対して斜め方向に延びている。特に本実施の形態では、第2傾斜部62が、第2突部52および第4突部54の間で直線状に延びている。
【0036】
なお、第1傾斜部61は、第1突部51および第3突部53の間で、湾曲しながら電池セル21の積層方向に対して斜め方向に延びてもよい。第2傾斜部62は、第2突部52および第4突部54の間で、湾曲しながら電池セル21の積層方向に対して斜め方向に延びてもよい。
【0037】
第5突部55は、第3突部53および第4突部54の間に設けられている。第5突部55は、第3突部53と連続して並んでいる。第5突部55は、第6突部56と連続して並んでいる。第5突部55は、第3突部53および第6突部56の間に設けられている。第5突部55は、電池セル21Aに向けて突出する。第5突部55は、電池セル21Aと非接触となるように設けられている。電池セル21Aに向けて突出する第5突部55の先端部は、電池セル21Aから離れている。第5突部55は、電池セル21Aに向けて突出する先端で湾曲している。
【0038】
第6突部56は、第3突部53および第4突部54の間に設けられている。第6突部56は、第4突部54と連続して並んでいる。第6突部56は、第4突部54および第5突部55の間に設けられている。第6突部56は、電池セル21Bに向けて突出する。第6突部56は、電池セル21Bと非接触となるように設けられている。電池セル21Bに向けて突出する第6突部56の先端部は、電池セル21Bから離れている。第6突部56は、電池セル21Bに向けて突出する先端で湾曲している。
【0039】
第1突部51および電池セル21Aの接触面積は、第3突部53および電池セル21Bの接触面積よりも大きい。第2突部52および電池セル21Bの接触面積は、第4突部54および電池セル21Aの接触面積よりも大きい。
【0040】
第5突部55および電池セル21Aの間の隙間の大きさと、第6突部56および電池セル21Bの間の隙間の大きさとは、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0041】
スペーサ41(波状部46)は、複数組の、第1〜第6突部51〜56および第1〜第2傾斜部61〜62を有する。より具体的には、各第1突部51の両側には、第1傾斜部61を介して第3突部53が設けられ、各第2突部52の両側には、第2傾斜部62を介して第4突部54が設けられている。各第3突部53および第4突部54の間には、第5突部55および第6突部56が設けられている。
【0042】
組電池10は、第1剛体部71および第2剛体部72をさらに有する。第1剛体部71および第2剛体部72は、スペーサ41に設けられている。
【0043】
第1剛体部71は、第1突部51から電池セル21Bに向けて突出するように設けられている。第1剛体部71は、第1突部51の両側に位置する第1傾斜部61の間に設けられている。第1剛体部71は、第1突部51と、第1突部51の両側に位置する第1傾斜部61とがなす谷部分に設けられている。第1剛体部71は、電池セル21Bと非接触となるように設けられている。第1突部51から電池セル21Bに向けて突出する第1剛体部71の先端部は、電池セル21Bから離れている。
【0044】
第2剛体部72は、第2突部52から電池セル21Aに向けて突出するように設けられている。第2剛体部72は、第2突部52の両側に位置する第2傾斜部62の間に設けられている。第2剛体部72は、第2突部52と、第2突部52の両側に位置する第2傾斜部62とがなす谷部分に設けられている。第2剛体部72は、電池セル21Aと非接触となるように設けられている。第2突部52から電池セル21Aに向けて突出する第2剛体部72の先端部は、電池セル21Aから離れている。
【0045】
第1剛体部71および第2剛体部72は、電池セル21の積層方向の力に対して、少なくともスペーサ41よりも高い剛性を備える。第1剛体部71および第2剛体部72は、電池セル21の膨張時に電池セル21と接触した場合に、変形しない程度の剛性を備える。第1剛体部71および第2剛体部72を形成する材料は、特に限定されず、たとえば、樹脂であってもよいし、金属であってもよい。樹脂を用いる場合、第1剛体部71および第2剛体部72は、スペーサ41と一体に成形されてもよい。
【0046】
第1剛体部71は、複数の第1突部51のうちの一部の第1突部51に設けられている。第2剛体部72は、複数の第2突部52のうちの一部の第2突部52に設けられている。このような構成に限られず、第1剛体部71は、全ての第1突部51に設けられてもよいし、第2剛体部72は、全ての第2突部52に設けられてもよい。また、本実施の形態では、スペーサ41に第1剛体部71および第2剛体部72が設けられる構成について説明したが、スペーサ41に第1剛体部71および第2剛体部72のいずれか一方が設けられる構成としてもよい。
【0047】
図4は、電池セルの膨張時のスペーサを示す断面図である。図4を参照して、電池セル21の膨張時、電池セル21Aおよび電池セル21Bの間の距離が短くなり、スペーサ41が変形する。このとき、第5突部55は、電池セル21Aと接触し、第6突部56は、電池セル21Bと接触する。第1剛体部71は、電池セル21Bと接触し、第2剛体部72は、電池セル21Aと接触する。
【0048】
図5は、図1中の組電池によって奏される作用効果を説明するための断面図である。続いて、図1中の組電池10によって奏される作用効果について説明する。
【0049】
図3から図5を参照して、電池セル21には、製造上の公差により、厚みが小さいものと大きいものとが存在する。スペーサ41の1つの役割として、電池セル21の厚みの公差を吸収することにより、複数の電池セル21をその積層方向において一定の長さで拘束すること(定寸拘束)がある。また、充放電時のSOC(state of charge)変動や温度変動によって、電池セル21の膨縮運動が発生する。スペーサ41の別の役割として、電池セル21の膨縮時の寸法変動を吸収することがある。
【0050】
一方、電池性能を維持するため、スペーサ41から電池セル21に加わる荷重には上限値が設定されている。上記の定寸拘束において、組電池10の小型化を実現するには、スペーサ41のバネ定数を低減すること(低バネ化)が必要である。他方、複数の電池セル21を一体に拘束するには、スペーサ41から電池セル21に対して一定以上の荷重を作用させることが必要である。また、電池セル21の膨張量が増すに従って、スペーサ41から電池セル21に加わる荷重が局所的に増大する。この場合、電極体23において正極および負極間の距離が不均一となり、内部抵抗がばらつく要因となる。このため、電池セル21の膨張時、スペーサ41から電池セル21に加わる荷重を分散することが求められる。
【0051】
これに対して、本実施の形態における組電池10では、荷重変換機構110を用いて、電池セル21からスペーサ41に加わる力の方向を変換し、バネ部115を弾性変形させることによって、スペーサ41の低バネ化を実現する。
【0052】
より具体的には、スペーサ41において、第1突部51、第1傾斜部61および第3突部53が、荷重変換機構110を構成し、同様に、第2突部52、第2傾斜部62および第4突部54が、荷重変換機構110を構成する。第5突部55および第6突部56は、バネ部115を構成する。
【0053】
このような構成において、電池セル21Aから第1突部51に対して電池セル21の積層方向の力(図5中の矢印131に示す力)が加わり、電池セル21Bから第2突部52に対して、電池セル21の積層方向の力であって、電池セル21Aから第1突部51に対して加わる力とは反対方向の力(図5中の矢印132に示す力)が加わる。
【0054】
このとき、第1傾斜部61に、第1突部51および第3突部53の間で座屈を引き起こす方向の応力が発生することにより、第1突部51に加えられた力の一部が、第1傾斜部61において第3突部53から第4突部54に近づく方向の力(図5中の矢印133に示す力)に変換される。また、第2傾斜部62に、第2突部52および第4突部54の間で座屈を引き起こす方向の応力が発生することにより、第2突部52に加えられた力の一部が、第2傾斜部62において第4突部54から第3突部53に近づく方向の力(図5中の矢印134に示す力)に変換される。
【0055】
第3突部53は、第3突部53および電池セル21Bの間の摩擦力に抗しながら、第4突部54に近づく方向に変位し、第4突部54は、第4突部54および電池セル21Aの間の摩擦力に抗しながら、第3突部53に近づく方向に変位する。第4突部54および第3突部53の変位に伴って、第5突部55および第6突部56が弾性変形する。これにより、電池セル21からスペーサ41に加わる力の一部を吸収して、スペーサ41の低バネ化を実現することができる。また、第1傾斜部61に、第1突部51および第3突部53の間で座屈を引き起こす方向の力を発生させ、第2傾斜部62に、第2突部52および第4突部54の間で座屈を引き起こす方向の力を発生させることにより、スペーサ41から電池セル21Aおよび電池セル21Bに対して、複数の電池セル21を一体に拘束するのに必要な一定以上の荷重を作用させることができる。
【0056】
バネ部115は、荷重変換機構110から受ける波状部46の延伸方向の力によって弾性変形可能である。スペーサ41は、そのバネ部115を構成する最小要素として、第5突部55および第6突部56を有する。
【0057】
すなわち、第3突部53および第4突部54の間には、第5突部55および第6突部56の2つの突部に限られず、さらに多くの突部が設けられてもよい。この場合に、互いに異なる高さを有する突部が設けられてもよい。バネ部115は、必ずしも電池セル21に向けて突出する複数の突部のみから構成されなくてもよい。たとえば、互いに隣り合う突部が、波状部46の延伸方向に延在する部位により接続されてもよい。
【0058】
ここで、第1突部51および第2突部52の間の全ての突部(すなわち、図5中のスペーサ41における第3〜第6突部53〜56)が電池セル21と非接触に設けられる場合を想定すると、電池セル21から第1突部51および第2突部52への力の入力を受けても、第1傾斜部61および第2傾斜部62において座屈を引き起こす方向の応力を発生させることができない。このため、波状部46は、波状部46の延伸方向に広がるように変形する。この場合、スペーサ41において、複数の電池セル21を一体に拘束するのに必要な反力が得られなかったり、電池セル21およびスペーサ41間の接点を適切にコントロールすることができないといった問題が生じる。
【0059】
本実施の形態では、スペーサ41に入力された力の方向を、相対的に剛性の高い第1傾斜部61および第2傾斜部62において変換し、その力を相対的に剛性の低い第5突部55および第6突部56で受けることによって、スペーサ41の低バネ化を実現している。このような観点から、第1傾斜部61が第1突部51および第3突部53の間で直線状に延び、第2傾斜部62が第2突部52および第4突部54の間で直線状に延びる構成によって、第1傾斜部61および第2傾斜部62の剛性を高めることができる。これにより、荷重変換機構110における力の方向の変換効率を向上させることができる。
【0060】
また、本実施の形態では、電池セル21の膨張時、第5突部55および第6突部56が、それぞれ、電池セル21Aおよび電池セル21Bと接触する。
【0061】
このような構成によれば、スペーサ41および電池セル21間の接点が増えることによって、スペーサ41から電池セル21に加わる荷重を分散させることができる。これにより、電池セル21の内部抵抗にばらつきが生じることを抑制できる。また、スペーサ41の内部応力を分散させて許容応力を増大させたり、スペーサ41を簡素化したり(低コストの材料の使用や薄肉化など)することができる。
【0062】
すなわち、本実施の形態では、電池セル21の膨張量が大きくなり、スペーサ41から電池セル21への反力が増大したタイミングで、スペーサ41および電池セル21間の接点数を増やす。
【0063】
電池セル21Aおよび第1突部51の接点の位置、ならびに、電池セル21Bおよび第2突部52の接点の位置は、スペーサ41の変形に伴って変化しないことが好ましい。この場合、スペーサ41の変形の予測性が高まって、電池セル21およびスペーサ41間の接点の位置をコントロールし易くなるため、所望の電池性能を実現することができる。
【0064】
本実施の形態では、第1突部51および電池セル21Aの接触面積が、第3突部53および電池セル21Bの接触面積よりも大きく、第2突部52および電池セル21Bの接触面積が、第4突部54および電池セル21Aの接触面積よりも大きい構成によって、第1突部51の位置が固定されたまま、第3突部53が第4突部54に近づく方向に移動し、第2突部52の位置が固定されたまま、第4突部54が第3突部53に近づく方向に移動する現象が得られ易くなる。
【0065】
図6は、電池セルの内部構造を模式的に示す断面図である。図6を参照して、各電池セル21において、電極体23は、セルケース25の内側面に接触した状態で収容されている。電極体23で発生した熱は、セルケース25を通じて、冷却風通路26(図1および図2を参照のこと)を流れる冷却風に放熱される。
【0066】
一方、電池セル21の膨張時、SOC変動や温度変動による内圧上昇によってセルケース25が膨らむと、発熱体である電極体23がセルケース25の内側面から離れる。この場合、電極体23からセルケース25を通じての放熱が滞り、電池セル21の冷却効率が低下するおそれがある。本実施の形態では、スペーサ41の低バネ化の実現によって電池セル21の膨張の進行を許すことになるため、このような課題の解決が特に強く求められる。
【0067】
図2から図4を参照して、これに対して、本実施の形態では、電池セル21の膨張時、第1剛体部71および第2剛体部72が、それぞれ、電池セル21Bおよび電池セル21Aと接触する。これにより、第1剛体部71および第2剛体部72が、電池セル21の膨張を止めるストッパーとして機能する。結果、電池セル21の膨張が過剰に進行することを防止して、電池セル21の冷却効率を高く維持することができる。
【0068】
以上に説明した、この発明の実施の形態における組電池10の構造についてまとめて説明すると、本実施の形態における組電池10は、第1電池セルとしての電池セル21Aと、電池セル21Aに対して積層される第2電池セルとしての電池セル21Bと、電池セル21Aに向けて突出する突形状と、電池セル21Bに向けて突出する突形状とが交互に繰り返す波状の断面形状を有し、電池セル21Aおよび電池セル21Bの間に介挿されるスペーサ41とを備える。電池セル21Aおよび電池セル21Bの各電池セル21は、筐体形状を有するセルケース25と、セルケース25に収容され、セルケース25の内側面と接触して設けられる電極体23とを含む。スペーサ41は、電池セル21Aに向けて突出し、電池セル21Aと接触する第1突部51と、第1突部51より離れた位置に設けられ、電池セル21Bに向けて突出し、電池セル21Bと接触する第2突部52と、スペーサ41が有する複数の突形状のうち第1突部51と隣り合い、第1突部51および第2突部52の間に設けられ、電池セル21Bに向けて突出し、電池セル21Bと接触する第3突部53と、電池セル21Aおよび電池セル21Bの積層方向に対して斜め方向に延び、第1突部51および第3突部53を接続する第1傾斜部61と、スペーサ41が有する複数の突形状のうち第2突部52と隣り合い、第1突部51および第2突部52の間に設けられ、電池セル21Aに向けて突出し、電池セル21Aと接触する第4突部54と、電池セル21Aおよび電池セル21Bの積層方向に対して斜め方向に延び、第2突部52および第4突部54を接続する第2傾斜部62と、第3突部53および第4突部54の間に配置され、それぞれ、電池セル21Aおよび電池セル21Bに向けて突出し、電池セル21Aおよび電池セル21Bと非接触となるように設けられる第5突部55および第6突部56とを含む。組電池10は、スペーサ41に設けられる第1剛体部71および第2剛体部72の少なくとも一方をさらに備える。第1剛体部71は、第1突部51から電池セル21Bに向けて突出し、電池セル21Bと非接触となるように設けられる。第2剛体部72は、第2突部52から電池セル21Aに向けて突出し、電池セル21Aと非接触となるように設けられる。電池セル21Aおよび電池セル21Bの膨張時、第5突部55および第6突部56が、それぞれ、電池セル21Aおよび電池セル21Bと接触し、第1剛体部71および第2剛体部72の少なくともいずれか一方が、電池セル21Bおよび/または電池セル21Aと接触する。
【0069】
このように構成された、この発明の実施の形態における組電池10によれば、スペーサ41から電池セル21に対して、複数の電池セル21を一体に拘束するのに必要な一定以上の荷重を作用させるとともに、スペーサ41の低バネ化を実現することができる。スペーサ41の低バネ化の実現により、複数の電池セル21の定寸拘束に際して、組電池10の小型化を図ることができる。また、スペーサ41の低バネ化に伴って電池セル21の拘束荷重が低減するため、複数の電池セル21の拘束に必要となる部品を簡略化したり、製造設備を簡素化したりすることができる。これにより、組電池10の製造コストを削減することができる。
【0070】
このようなスペーサ41において、電池セル21の膨張時に、スペーサ41と電池セル21との接点を増やすことによって、スペーサ41から電池セル21に加わる荷重を分散させることができる。これにより、電池セル21の膨張時にあっても適正な電池性能が得られる組電池10を実現することができる。
【0071】
また、本実施の形態では、第1剛体部71および第2剛体部72を電池セル21の膨張を止めるストッパーとして機能させる。これにより、電池セル21の膨張時にあっても、電池セル21の冷却効率を高く維持することができる。
【0072】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
この発明は、主に、積層された電池セル間に可撓性を有するスペーサを介挿して、複数の電池セルを一体に拘束する組電池に適用される。
【符号の説明】
【0074】
10 組電池、14 ケース体、21,21A,21B 電池セル、23 電極体、25 セルケース、25a 頂面、25b,25c,25d 側面、26 冷却風通路、27 正極端子、28 負極端子、41 スペーサ、43p,43q 枠部、45p,45q 板状部、46 波状部、51 第1突部、52 第2突部、53 第3突部、54 第4突部、55 第5突部、56 第6突部、61 第1傾斜部、62 第2傾斜部、71 第1剛体部、72 第2剛体部、110 荷重変換機構、115 バネ部、121,122 空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6