(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2弁の移動方向において、前記第2弁の前記溝が前記流路形成部材の前記連通路と重なる場合に前記第2凹部と前記連通路とが連通し、前記溝が前記連通路と重ならない場合に前記第2凹部と前記連通路とが連通しない
請求項2に記載の流路制御装置。
前記第2弁は円柱状であるとともに柱方向に移動し、前記流路形成部材の前記連通路は、前記第2弁の移動方向に見た場合に、前記第2弁の中心に対して前記第2凹部とは反対側に形成されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の流路制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る自動二輪車1の概略構成を示す図である。
自動二輪車1は、前側の車輪である前輪2と、後側の車輪である後輪3と、自動二輪車1の骨格をなす車体フレーム11、ハンドル12、エンジン13及びシート19などを有する車両本体10と、を備えている。
【0010】
また、自動二輪車1は、前輪2と車両本体10とを連結する懸架装置の一例としてのフロントフォーク21を有している。また、自動二輪車1は、後輪3と車両本体10とを連結するリヤサスペンション22を有している。なお、フロントフォーク21,リヤサスペンション22は、車両本体10と前輪2,後輪3の車軸との相対位置を変更する変更装置の一例である。
【0011】
また、自動二輪車1は、前輪2の左側に配置されたフロントフォーク21と前輪2の右側に配置されたフロントフォーク21とを保持する2つのブラケット14と、2つのブラケット14の間に配置されたシャフト15と、を備えている。シャフト15は、車体フレーム11に回転可能に支持されている。
また、自動二輪車1は、フロントフォーク21の後述する前輪側流路切替ユニット300を制御することで自動二輪車1の車高を制御する制御装置70を備えている。
【0012】
<フロントフォーク21の構成>
次に、フロントフォーク21について詳述する。
図2は、本発明の実施の形態に係るフロントフォーク21の断面図である。
本実施の形態に係るフロントフォーク21は、自動二輪車1の車両本体10と前輪2との間に配置されて前輪2を支えるとともに、後述するアウタ部材110が前輪2側に、インナチューブ210が車両本体10側に配置された、所謂正立型のフロントフォークである。
【0013】
フロントフォーク21は、アウタ部材110を有して前輪2の車軸に取り付けられる車軸側ユニット100と、インナチューブ210を有して車両本体10に取り付けられる本体側ユニット200と、を備えている。また、フロントフォーク21は、車軸側ユニット100と本体側ユニット200との間に配置されて、路面の凸凹に伴い前輪2が受ける振動を吸収する前輪側スプリング500を備えている。
【0014】
アウタ部材110及びインナチューブ210は、同軸的に配置された円筒状の部材であり、この円筒の中心線の方向(軸方向)を、以下では「上下方向」と称する場合がある。かかる場合、車両本体10側が「上」側、前輪2側が「下」側である。そして、フロントフォーク21は、車軸側ユニット100と本体側ユニット200とが上下方向(軸方向)に相対的に移動することにより、前輪2を支持しながら路面の凸凹を吸収して振動を抑制する。
【0015】
[車軸側ユニット100の構成]
車軸側ユニット100は、前輪2の車軸に取り付けられるアウタ部材110と、流体の一例としてのオイルの粘性抵抗を利用した減衰力を発生する減衰力発生ユニット130と、減衰力発生ユニット130を保持するロッド150と、ロッド150の下端部を保持するロッド保持部材160とを備えている。
また、車軸側ユニット100は、ロッド保持部材160の後述する軸方向凹部161aに挿入された球状のボール166と、ボール166の移動を制限する制限部材167とを備えている。
また、車軸側ユニット100は、前輪側スプリング500の下端部を支持するスプリング支持部材170と、スプリング支持部材170を保持する支持部材保持部材180と、インナチューブ210の軸方向の移動を案内する案内部材190とを備えている。
【0016】
(アウタ部材110の構成)
アウタ部材110は、インナチューブ210が挿入される円筒状の円筒状部111と、前輪2の車軸を取り付け可能な車軸ブラケット部112とを有している。
円筒状部111は、上端部に、インナチューブ210の外周面との間をシールするオイルシール113と、インナチューブ210の外周面との摺動を円滑にするためのスライドブッシュ114とを有している。
車軸ブラケット部112には、ロッド保持部材160が挿入される軸方向の軸方向貫通孔112aと、軸方向に交差する方向に貫通して前輪2の車軸を取り付け可能な車軸取付孔112bと、が形成されている。
【0017】
(減衰力発生ユニット130の構成)
減衰力発生ユニット130は、後述するシリンダ230の内側の空間に形成された作動油室50内を区画するピストン131と、ピストン131の上端側に設けられた上端側バルブ136と、ピストン131の下端側に設けられた下端側バルブ137とを備えている。また、減衰力発生ユニット130は、ピストン131、上端側バルブ136及び下端側バルブ137などを支持するピストンボルト140と、ピストンボルト140に締め付けられてピストン131、上端側バルブ136及び下端側バルブ137などの位置を定めるナット145とを備えている。
【0018】
ピストン131は、円筒状の部材であって、外周面に、シリンダ230との間の隙間をシールするシール部材を有している。ピストン131には、軸方向の貫通孔である第1貫通孔132及び第2貫通孔133が形成されている。また、ピストン131には、上端部にて径方向に延びて形成されると共に第1貫通孔132に連通する第1径方向連通路134と、下端部にて径方向に延びて形成されると共に第2貫通孔133に連通する第2径方向連通路135とが形成される。第1貫通孔132及び第2貫通孔133は、それぞれ周方向に複数(例えば3つ)形成されており、第1径方向連通路134,第2径方向連通路135は、それぞれ第1貫通孔132,第2貫通孔133に対応する位置に形成されている。
【0019】
上端側バルブ136は、円盤状の金属板が1枚で又は複数重ねられて構成される。上端側バルブ136は、それぞれの金属板の中央に貫通孔が形成され、その貫通孔にピストンボルト140の後述する軸部141が通されている。そして、上端側バルブ136は、第2貫通孔133を塞ぎ、かつ第1貫通孔132を開放する。
【0020】
下端側バルブ137は、円盤状の金属板が複数重ねられて構成される。下端側バルブ137は、それぞれの金属板の中央に貫通孔が形成され、その貫通孔にピストンボルト140の後述する軸部141が通されている。そして、下端側バルブ137は、第1貫通孔132を塞ぎ、かつ第2貫通孔133を開放する。
【0021】
ピストンボルト140は、上端側に設けられた円柱状の軸部141と、下端側に設けられるとともに軸部141の半径よりも大きな半径の円柱状の基部142とを有する。ピストンボルト140には、基部142の下端面から軸部141にかけて凹んだ凹部143が形成されている。なお、ピストンボルト140の基部142は、例えば六角柱など、角柱状であってもよい。
【0022】
軸部141の上端部には、ナット145に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじが形成されている。
凹部143における下端部の内周面には、ロッド150における上端部に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成されている。また、凹部143における上端部には、軸部141の外側と凹部143とを連通するように径方向に貫通された径方向貫通孔144が形成されている。
【0023】
ナット145には、上端部に、ピストンボルト140の雄ねじが締め付けられる雌ねじ146が形成され、雌ねじ146よりも下方には、下端面から凹むとともに雌ねじ146の谷の半径よりも大きな半径の円柱状の凹部147が形成されている。また、ナット145には、ナット145の外部と凹部147とを連通するように軸方向に傾斜する方向に貫通された傾斜方向貫通孔148が形成されている。また、ナット145の下端側には傾斜方向貫通孔148における開口部を覆う板バルブ149が設けられている。
【0024】
以上のように構成された減衰力発生ユニット130は、ピストンボルト140の凹部143に形成された雌ねじにロッド150の上端部に形成された雄ねじが締め付けられることでロッド150に保持される。そして、ピストン131が、その外周面に設けられたシール部材を介してシリンダ230の内周面に接触し、シリンダ230内の空間を、ピストン131よりも上方の第1油室51と、ピストンよりも下方の第2油室52とに区画する。
【0025】
(ロッド150の構成)
ロッド150は、円筒状の部材であり、上端部及び下端部における外周面には雄ねじが形成されている。上端部に形成された雄ねじは、減衰力発生ユニット130のピストンボルト140に締め付けられ、下端部に形成された雄ねじは、ロッド保持部材160の上端側円柱状部161に形成された雌ねじ161dに締め付けられる。また、下端部に形成された雄ねじにロックナット155が締め付けられることでロッド保持部材160に固定される。
また、ロッド150の下端部の内周面には雌ねじが形成されてもよい。
【0026】
(ロッド保持部材160の構成)
ロッド保持部材160は、それぞれ径が異なる複数の円柱状の部位を有する部材であり、上端部にある上端側円柱状部161と、下端部にある下端側円柱状部162と、上端側円柱状部161と下端側円柱状部162との間にある中間円柱状部163とを有している。
【0027】
上端側円柱状部161には、上端面から軸方向に凹んだ軸方向凹部161aと、外周面から径方向に全周に渡って凹んだ径方向凹部161bと、軸方向凹部161aと径方向凹部161bとを径方向に貫通する径方向貫通孔161cとが形成されている。
軸方向凹部161aには、ロッド150の下端部に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじ161dが形成されている。また、軸方向凹部161aには、内径が下方に行くに従って徐々に小さくなるように軸方向に対して傾斜した傾斜面161eが形成されている。
また、上端側円柱状部161における下端部には、支持部材保持部材180に形成された後述する雌ねじ181が締め付けられる雄ねじ161fが形成されている。
【0028】
中間円柱状部163の径は、アウタ部材110に形成された軸方向貫通孔112aの内径よりも小さく、中間円柱状部163は、アウタ部材110の軸方向貫通孔112aに嵌め込まれている。
下端側円柱状部162の外周面には雄ねじ162aが形成されている。
ロッド保持部材160は、下端側円柱状部162に形成された雄ねじ162aがアウタ部材110の軸方向貫通孔112aに挿入されたナット165に締め付けられることで、アウタ部材110に固定される。
【0029】
(制限部材167の構成)
制限部材167は、段付き円筒状の部材である。そして、制限部材167の上端部の外周面には雄ねじが形成されている。制限部材167は、この雄ねじが、ロッド150の下端部の内周面に形成された雌ねじに締め付けられることで、ロッド150に固定される。そして、制限部材167は、下端部にて、ロッド保持部材160の軸方向凹部161a内に挿入されたボール166の移動を制限する。
【0030】
(スプリング支持部材170の構成)
スプリング支持部材170は、円筒状の部材であり、支持部材保持部材180における上端部に固定される。固定方法としては、溶接、圧入又はストッパリングを用いた固定であることを例示することができる。
【0031】
(支持部材保持部材180の構成)
支持部材保持部材180は、円筒状の部材であり、下端部にはロッド保持部材160に形成された雄ねじ161fが締め付けられる雌ねじ181が形成されている。支持部材保持部材180は、雌ねじ181がロッド保持部材160に形成された雄ねじ161fに締め付けられることで、ロッド保持部材160に固定される。なお、支持部材保持部材180とロッド保持部材160とは、ストッパリングを用いて固定されてもよい。
支持部材保持部材180には、軸方向の位置においてロッド保持部材160の径方向凹部161bに対応する位置に、内外を連通する連通孔182が形成されている。
【0032】
(案内部材190の構成)
案内部材190は、円筒状の円筒状部191と、円筒状部191における下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部192とを有している。
案内部材190は、内向部192がロッド保持部材160とアウタ部材110との間に挟み込まれることによって、ロッド保持部材160とアウタ部材110との間に固定される。
そして、内向部192における下端部には面取りが形成されており、この面取りとロッド保持部材160との間に形成された空間にOリング等の封止部材195が嵌め込まれる。封止部材195は、案内部材190、ロッド保持部材160及びアウタ部材110間の隙間をシールする。これにより、アウタ部材110の円筒状部111の内部空間が液密に保持される。
【0033】
以上のように構成された車軸側ユニット100においては、アウタ部材110の内周面と、ロッド150や支持部材保持部材180の外周面との間には、フロントフォーク21内に密封されたオイルを貯留するリザーバ室40が形成される。
【0034】
[本体側ユニット200の構成]
本体側ユニット200は、両端が開口した円筒状のインナチューブ210と、インナチューブ210における上端部に取り付けられたキャップ220と、を備えている。
また、本体側ユニット200は、円筒状のシリンダ230と、シリンダ230における下端部に取り付けられてシリンダ230内の空間を密封する密封部材240とを備えている。
また、本体側ユニット200は、前輪側スプリング500の上端部を支持するとともに前輪側スプリング500の長さを調整(変更)する前輪側スプリング長変更ユニット250と、シリンダ230における上端部に取り付けられて流体の一例としてのオイルの流路を切り替える前輪側流路切替ユニット300とを備えている。
【0035】
(インナチューブ210の構成)
インナチューブ210は、円筒状の部材である。
インナチューブ210は、下端部に、アウタ部材110の円筒状部111の内周面との摺動を円滑にするための円筒状のスライドブッシュ211を備えている。
インナチューブ210における上端部には、キャップ220に形成された後述する雄ねじ221が締め付けられる雌ねじ213が形成されている。
【0036】
(キャップ220の構成)
キャップ220は略円筒状の部材である。キャップ220の外周面には、インナチューブ210に形成された雌ねじ213に締め付けられる雄ねじ221が形成され、内周面には、前輪側スプリング長変更ユニット250や前輪側流路切替ユニット300に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成されている。そして、キャップ220は、インナチューブ210に取り付けられるとともに、前輪側スプリング長変更ユニット250や前輪側流路切替ユニット300を保持する。
また、キャップ220は、インナチューブ210の内部空間を液密に保つためのOリング等の封止部材222を有している。
【0037】
(シリンダ230の構成)
シリンダ230は円筒状の部材である。シリンダ230における上端部の外周面には、前輪側流路切替ユニット300に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成され、下端部の内周面には、密封部材240に形成された雄ねじが締め付けられる雌ねじが形成されている。
【0038】
(密封部材240の構成)
密封部材240は円筒状の部材である。密封部材240の外周面には、シリンダ230の下端部の内周面に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじが形成されている。密封部材240は、雄ねじがシリンダ230の下端部の内周面に形成された雌ねじに締め付けられることでシリンダ230に保持される。
【0039】
密封部材240は、内周側に、ロッド150の外周面との摺動を円滑にするためのスライドブッシュ245を有している。また、密封部材240は、シリンダ230の内部空間を液密に保つために、ロッド150の外周面との間に配置されたOリング等の封止部材246とシリンダ230の内周面との間に配置されたOリング等の封止部材247とを有している。
また、密封部材240の上端部には、減衰力発生ユニット130との接触の際の衝撃を緩和する衝撃緩和部材248が取り付けられている。衝撃緩和部材248は、樹脂やゴムなどの弾性部材であることを例示することができる。
【0040】
(前輪側スプリング長変更ユニット250の構成)
前輪側スプリング長変更ユニット250は、キャップ220に固定されたベース部材260と、前輪側スプリング500の上端部を支持するとともにベース部材260に対して軸方向に相対移動することで前輪側スプリング500の長さを変更する上端部支持部材270とを備えている。
【0041】
ベース部材260は、略円筒状の部材である。ベース部材260の上端部には、突出部260aが形成されている。突出部260aは、キャップ220に固定される。
ただし、ベース部材260の上端部は、周方向の一部が径方向に突出した突出部260bが形成されており、突出部260bの内側と、後述する支持部材400の下端部における外周面との間に、シリンダ230内のオイルをリザーバ室40へ排出する排出流路41を形成する。
【0042】
ベース部材260は、下端部に、外周に嵌め込まれて、上端部支持部材270の内周面との摺動を円滑にする円筒状のスライドブッシュ261と、スライドブッシュ261の内側に設けられたOリング等の封止部材262とを有している。ベース部材260の内周面とシリンダ230の外周面との間には、環状の環状流路61が形成される。
【0043】
上端部支持部材270は、円筒状の円筒状部271と、円筒状部271における下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部272とを有している。上端部支持部材270は、シリンダ230の外周面及びベース部材260の下端部との間の空間に、ベース部材260に対する上端部支持部材270の位置を変更するオイルを収容するジャッキ室60を形成する。
【0044】
円筒状部271の内径は、ベース部材260に嵌め込まれたスライドブッシュ261の外径以下に設定されている。円筒状部271には、この円筒状部271の内外を連通するように径方向に貫通した径方向貫通孔273が形成されている。この径方向貫通孔273を介してオイルがジャッキ室60からリザーバ室40へ排出されることにより、ベース部材260に対する上端部支持部材270の移動量が制限される。
【0045】
内向部272は、内周側に、シリンダ230の外周面との間の隙間をシールすることによりジャッキ室60を液密に保つOリング等の封止部材274を有している。
ジャッキ室60へは、ベース部材260の内周面とシリンダ230の外周面との間に形成された環状流路61を介してシリンダ230内のオイルが供給される。その詳細については後で詳述する。
【0046】
(前輪側流路切替ユニット300の構成)
図3(a)は、前輪側流路切替ユニット300が後述する第1切替状態である場合の流路の開閉状態を模式的に示す図である。
図3(b)は、前輪側流路切替ユニット300が後述する第2切替状態である場合の流路の開閉状態を模式的に示す図である。
図3(c)は、前輪側流路切替ユニット300が後述する第3切替状態である場合の流路の開閉状態を模式的に示す図である。
図3(d)は、前輪側流路切替ユニット300が後述する第4切替状態である場合の流路の開閉状態を模式的に示す図である。
前輪側流路切替ユニット300は、後述するポンプ600にて吐出されたオイルをリザーバ室40へ供給するか、ポンプ600にて吐出されたオイルをジャッキ室60へ供給するか、ジャッキ室60に収容されたオイルをリザーバ室40へ供給するかを切り替える装置である。
前輪側流路切替ユニット300には、シリンダ230内とリザーバ室40とを連通する第1連通路R1と、シリンダ230内とジャッキ室60とを連通する第2連通路R2と、ジャッキ室60とリザーバ室40とを連通する第3連通路R3及び第4連通路R4とが形成されている。
そして、前輪側流路切替ユニット300は、第1連通路R1を開閉する第1開閉弁301と、第2連通路R2を開閉する第2開閉弁302と、第3連通路R3を開閉する第3開閉弁303と、第4連通路R4を開閉する第4開閉弁304とを有している。
【0047】
前輪側流路切替ユニット300が第1切替状態である場合には、
図3(a)に示すように、第1開閉弁301は開き、第3開閉弁303及び第4開閉弁304は閉じているので、ポンプ600から吐出されたオイルは、第1連通路R1を介してリザーバ室40に至る。かかる場合、ポンプ600から吐出されたオイルは第2開閉弁302を開くほど高圧ではないので、オイルは第2連通路R2を流通しない。言い換えれば、第1開閉弁301が開いているので、第2開閉弁302は閉じている。そして、この第1切替状態においては、ジャッキ室60のオイルは増減しない。
【0048】
前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合には、
図3(b)に示すように、第1開閉弁301、第3開閉弁303及び第4開閉弁304が閉じているので、ポンプ600から吐出されたオイルは、第2開閉弁302を開いて第2連通路R2を介してジャッキ室60に至る。この第2切替状態においては、ジャッキ室60のオイルの量が増える。そのため、ジャッキ室60が伸びる。
【0049】
前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態である場合には、
図3(c)に示すように、第1開閉弁301及び第4開閉弁304は閉じており、第3開閉弁303は開いているので、ジャッキ室60のオイルは、第3連通路R3を介してリザーバ室40に至る。この第3切替状態においては、ジャッキ室60のオイルの量が減る。そのため、ジャッキ室60が縮む。
【0050】
前輪側流路切替ユニット300が第4切替状態である場合には、
図3(d)に示すように、第1開閉弁301及び第3開閉弁303は閉じており、第4開閉弁304は開いているので、ジャッキ室60のオイルは、第4連通路R4を介してリザーバ室40に至る。後述するように第4連通路R4の流路面積は、第3連通路R3の流路面積よりも広いので、この第4切替状態においては、第3切替状態よりも、ジャッキ室60のオイルの量が高速で減る。そのため、ジャッキ室60が速く縮む。
【0051】
<前輪側流路切替ユニット300の具体的構成>
図4は、
図2のIV部の拡大図である。
図5は、
図4のV部の拡大図である。
前輪側流路切替ユニット300は、第1開閉弁301に対して第1連通路R1を閉じる方向の力を与える第1コイルスプリング311と、第2開閉弁302に対して第2連通路R2を閉じる方向の力を与える第2コイルスプリング312と、第3開閉弁303に対して第3連通路R3を閉じる方向の力を与える第3コイルスプリング313とを備えている。
【0052】
また、前輪側流路切替ユニット300は、第1開閉弁301の開閉を制御する制御弁305と、制御弁305の下方に設けられた制御弁コイルスプリング315と、制御弁コイルスプリング315のバネ力に抗して制御弁305を下方へ移動させる前輪側ソレノイド320とを備えている。
また、前輪側流路切替ユニット300は、第3開閉弁303の下方に設けられた第3コイルスプリング313のバネ力に抗して第3開閉弁303を下方へ移動させるプッシュロッド316を備えている。プッシュロッド316は、制御弁305により押されて下方へ移動する。
また、前輪側流路切替ユニット300は、ユニット本体330と、ユニット本体330に装着されるとともに第2開閉弁302を支持する第2開閉弁支持部材370とを備えている。また、前輪側流路切替ユニット300は、第4開閉弁304を支持する第4開閉弁支持部材380と、第4開閉弁支持部材380の開口部を覆う覆い部材395とを備えている。また、前輪側流路切替ユニット300は、第2開閉弁支持部材370と第4開閉弁支持部材380の後述する内向部382との間に配置されて、第2コイルスプリング312の上端部を支持するコイルスプリング支持部材388と板バネ389とを備えている。
【0053】
<第1開閉弁301関連>
第1開閉弁301は、円筒状の円筒状部301aと、外径が下方に行くに従って徐々に小さくなるように軸方向に対して傾斜した傾斜面301cを有する円錐状の円錐状部301bとを有する。
円筒状部301aの外周面301dとユニット本体330の後述する上端側円柱状部340と間には、Oリング等の封止部材306が嵌め込まれている。
円錐状部301bの中央部には、円筒状部301aの内部と、円錐状部301bの外部とを連通する軸方向の貫通孔301eが形成されている。貫通孔301eは、ユニット本体330の後述する軸方向連通孔351と、第1開閉弁301に対して下方向の力を与えるオイルが存在する空間(以下、「第1開閉弁背圧室B1」と称す。)とを連通する。なお、第1開閉弁背圧室B1は、後述する、前輪側ソレノイド320のケース325の下端面、スプリング支持部材307、ユニット本体330の中央凸部347などにて囲まれた空間である。
第1コイルスプリング311は、第1開閉弁301の円筒状部301aの内側に配置され、下端部が第1開閉弁301の円錐状部301bの上端面に支持されている。
【0054】
前輪側流路切替ユニット300は、第1コイルスプリング311の上端部を支持するスプリング支持部材307と、封止部材306の上方への移動を抑制する抜け止めリング308とを有している。
抜け止めリング308は、円筒状であり、内径が第1開閉弁301の円筒状部301aの外径よりも大きい。抜け止めリング308の外径は、ユニット本体330の後述する上端側円柱状部340の第1円柱状凹部346aの内径よりも大きく、第1円柱状凹部346aに圧入される。そして、抜け止めリング308は、封止部材306の上方向への移動を抑制する。なお、抜け止めリング308は、上端側円柱状部340と一体に形成されてもよい。
スプリング支持部材307は、中央部にユニット本体330の後述する中央凸部347の外径よりも大きな径の貫通孔が形成されたドーナツ状の薄板である。スプリング支持部材307は、第1開閉弁301、第1コイルスプリング311、封止部材306及び抜け止めリング308よりも上方に配置されて、第1開閉弁301及び第1コイルスプリング311の上方への移動を抑制する。
【0055】
<第4開閉弁304の構成>
第4開閉弁304は、径が互いに異なる2つの円柱状の第1円柱状部391と第2円柱状部392とを有する。第1円柱状部391の径は、第2円柱状部392の径よりも小さい。
また、第4開閉弁304には、軸方向に貫通する軸方向貫通孔393が形成されている。軸方向貫通孔393は、円柱状で径が互いに異なる第1貫通孔393aと第2貫通孔393bとを有している。第1貫通孔393aの孔径d1は、第2貫通孔393bの孔径d2よりも大きい。軸方向貫通孔393の内部をプッシュロッド316が通ることが可能なように、第2貫通孔393bの孔径d2は、プッシュロッド316の後述する第2軸部318の径よりも大きく、第1貫通孔393aの孔径d1は、プッシュロッド316の後述する第3軸部319の径よりも大きい。ただし、プッシュロッド316の下方への移動を抑制するために、第2貫通孔393bの孔径d2は、プッシュロッド316の第3軸部319の径よりも大きい。
第2円柱状部392には、下端面から凹んだ下端側凹部392aが形成されている。下端側凹部392aにおける第2貫通孔393bの開口部には、球状の第3開閉弁303の上端部の形状に沿う凹部が形成されている。
【0056】
<制御弁305の構成>
制御弁305は、円柱状の部材であり、外周面には、全周に渡って凹んだ溝305aが形成されている。また、制御弁305には、上端面から軸方向に凹んだ上端側凹部305bと、上端側凹部305bと制御弁305の下方の部位とを連通するように軸方向に対して傾斜した傾斜孔305cとが形成されている。
制御弁305は、上端側凹部305bに挿入された前輪側ソレノイド320の作動ロッド324により下方に押されることで、制御弁コイルスプリング315のバネ力に抗して下方へ移動する。他方、作動ロッド324が上方に移動した場合には、制御弁305は、制御弁コイルスプリング315のバネ力により上方へ移動する。
【0057】
<プッシュロッド316の構成>
プッシュロッド316は、
図4に示すように、上端部側に位置する円柱状の第1軸部317と、下端部側に位置する円柱状の第2軸部318と、第1軸部317と第2軸部318との間に位置する円柱状の第3軸部319とを備えている。第3軸部319の径は、第1軸部317及び第2軸部318の径よりも大きい。なお、第3開閉弁303とプッシュロッド316とは一体であってもよい。
【0058】
<前輪側ソレノイド320の構成>
前輪側ソレノイド320は、コイル321と、コイル321の内側に配置されたコア322と、コア322に案内されるプランジャ323と、プランジャ323に連結された作動ロッド324とを備えた、比例ソレノイドである。
また、前輪側ソレノイド320は、コイル321、コア322及びプランジャ323などを収容するケース325と、ケース325の開口部を覆うカバー326とを備えている。
【0059】
作動ロッド324は、中空であり、上端部はケース325の内部に収容され、下端部はケース325から突出している。
ケース325は、円筒状の円筒状部325aと、円筒状部325aにおける下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部325bとを有している。内向部325bには、作動ロッド324を通す貫通孔が形成されているとともに作動ロッド324の移動をガイドするガイドブッシュ325cが嵌め込まれている。
【0060】
以上のように構成された前輪側ソレノイド320は、キャップ220に装着されたコネクタ、リード線を介してコイル321に通電されることにより、通電電流に応じてプランジャ323に軸方向の推力が発生する。そして、プランジャ323の推力によってプランジャ323に連結された作動ロッド324が軸方向に移動する。本実施の形態に係る前輪側ソレノイド320は、コイル321への通電電流が大きくなるほど作動ロッド324のケース325からの突出量が大きくなるようにプランジャ323に軸方向の推力が発生する。
なお、コイル321への通電量は制御装置70にて制御される。
【0061】
<ユニット本体330の構成>
ユニット本体330は、上端側に設けられた円柱状の上端側円柱状部340と、上端側円柱状部340の下方に設けられ、円筒状でそれぞれ外径が互いに異なる第1円筒状部350及び第2円筒状部360とを有している。
上端側円柱状部340の外径は、第1円筒状部350の外径と略同じであり、第1円筒状部350の外径は第2円筒状部360の外径よりも大きい。
【0062】
上端側円柱状部340の中央部には、上端面341から下方向に凹んだ上端側中央凹部342と、下端面343から上方向に凹んだ下端側中央凹部344と、上端側中央凹部342と下端側中央凹部344とを連通する中央連通孔345とが形成されている。
図6は、ユニット本体330の上端側円柱状部340の斜視図である。
上端側中央凹部342は、制御弁305を移動可能に収容する収容部342aを有している。また、上端側中央凹部342は、軸方向と交差する径方向には収容部342aと連続するように、軸方向には後述する中央凸部347の上端面から制御弁305の移動範囲の下限よりも下方まで凹んだ側方凹部342bを有している。
【0063】
上端側円柱状部340における、上端側中央凹部342と外周面との中間には、上端面341から下方向に凹んだ上端側中間凹部346が形成されている。上端側中間凹部346は、径が互いに異なる3つの円柱状の第1円柱状凹部346aと、第2円柱状凹部346bと、第3円柱状凹部346cとを有する。そして、上端側円柱状部340には、第2円柱状凹部346bと外部とを軸方向と交差する方向に連通する孔である交差方向連通孔346dが形成されている。
また、上端側円柱状部340の中央部における、上端側中央凹部342の周囲には、上端面341から上方向に突出した中央凸部347が設けられている。
また、上端側円柱状部340は、上端部から半径方向に外側に向かうフランジ部348を有している。フランジ部348には、周方向の一部が切り欠かれた切り欠き部348aが形成されている。
【0064】
また、上端側円柱状部340には、上端側中央凹部342と切り欠き部348aとを連通する径方向の貫通孔である第1径方向連通孔349aと、下端側中央凹部344と外部とを連通する径方向の貫通孔である第2径方向連通孔349bとが形成されている。
第1径方向連通孔349aは、周方向には、上端側中央凹部342の側方凹部342bが形成されていない位置に1つ形成されている。本実施の形態においては、
図6に示すように、第1径方向連通孔349aと側方凹部342bとは中心線を挟んで反対側に形成されている。第1径方向連通孔349aは、円柱状の孔であり、孔径は、制御弁305の溝305aの軸方向の大きさと同じであることを例示することができる。
第2径方向連通孔349bは、周方向に上端側中間凹部346が形成されていない部位に1つ又は複数形成されている。
【0065】
第1円筒状部350には、第1円筒状部350の下方であって第2円筒状部360の外周面とシリンダ230の内周面との間に形成された空間と、上端側中間凹部346とを連通する軸方向の貫通孔である軸方向連通孔351が形成されている。軸方向連通孔351は、周方向に1つ又は複数形成されている。
第1円筒状部350の外周面には、全周に渡って径方向に凹んだ第1径方向凹部352及び第2径方向凹部353と、シリンダ230の上端部に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじ354が形成されている。
第1径方向凹部352には、前輪側スプリング長変更ユニット250のベース部材260との間の隙間をシールするOリング等の封止部材355が嵌め込まれている。
第2径方向凹部353には、シリンダ230との間の隙間をシールするOリング等の封止部材356が嵌め込まれている。
また、第1円筒状部350には、内部と外部とを連通する径方向の貫通孔である第3径方向連通孔357が形成されている。第3径方向連通孔357の軸方向の位置は、第1径方向凹部352と第2径方向凹部353との間である。
第2円筒状部360の内周面の下端部には、第2開閉弁支持部材370の外周面に形成された後述する雄ねじ373aが締め付けられる雌ねじ361が形成されている。
【0066】
<第2開閉弁支持部材370の構成>
第2開閉弁支持部材370は、上端部側に位置する円筒状の上端側円筒状部371と、中央部に位置する円柱状の円柱状部372と、下端部側に位置する円筒状の下端側円筒状部373とを有している。
上端側円筒状部371の外径は、ユニット本体330の第1円筒状部350の内周面の径よりも小さく、上端側円筒状部371がユニット本体330の第1円筒状部350に挿入される。
【0067】
円柱状部372には、中心線の周囲に周方向に等間隔に複数(本実施の形態においては3つ)の軸方向に貫通する軸方向貫通孔372aが形成されている。各軸方向貫通孔372aにおける上端側の開口部には、球状の第2開閉弁302の下端部の形状に沿う凹部が形成されている。円柱状部372の外周面には、全周に渡って溝372bが形成されており、この溝372bに、ユニット本体330との間の隙間をシールするOリング等の封止部材374が嵌め込まれている。
【0068】
下端側円筒状部373の内周面は、円柱状部372に形成された軸方向貫通孔372aよりも半径方向に外側に位置する。下端側円筒状部373の外周面には、ユニット本体330の下端部に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじ373aが形成されている。下端側円筒状部373の内側には、後述するポンプ600にて吐出されたオイルのごみを捕集する捕集部材375が設けられている。
【0069】
第2開閉弁支持部材370は、下端側円筒状部373の外周面に形成された雄ねじ373aがユニット本体330に形成された雌ねじ361に締め付けられることで、ユニット本体330に装着される。そして、上端側円筒状部371の内側に、周方向に等間隔に配置された3つの第2開閉弁302、第2コイルスプリング312及び3つの第2開閉弁302を押さえる第2開閉弁押さえ部材378を収容する。第2開閉弁302は、円柱状部372に形成された軸方向貫通孔372aにおける上端側の開口部に着座することで軸方向貫通孔372aを塞ぐ。
【0070】
<捕集部材375の構成>
捕集部材375は、円盤状の網376と、網376を内部に保持する円筒状の保持部材377とを有している。捕集部材375は、保持部材377が下端側円筒状部373に圧入されることで、下端側円筒状部373に装着されている。なお、捕集部材375は、第2開閉弁支持部材370の下端側円筒状部373に直接、例えば接着剤などにより貼り付けられた網376のみにて構成されていてもよい。また、捕集部材375と下端側円筒状部373とは、ストッパリングを用いて固定されてもよい。
【0071】
<第2開閉弁押さえ部材378の構成>
第2開閉弁押さえ部材378は、内径が同じで外径が互いに異なる2つの円筒状の第1円筒状部378aと第2円筒状部378bとを有する。第2開閉弁押さえ部材378の内径は、第4開閉弁支持部材380の円柱状部383の外径よりも少し大きい。第2開閉弁押さえ部材378は、第4開閉弁支持部材380の円柱状部383に支持されながら軸方向に移動する。
【0072】
第1円筒状部378aの外径は、第2コイルスプリング312の内径よりも小さい。
第2円筒状部378bの外径は、第2コイルスプリング312の内径よりも大きく、かつ、第2開閉弁支持部材370の上端側円筒状部371の内径よりも小さい。第2円筒状部378bは、上端面で第2コイルスプリング312の下端部を支持する。
第2開閉弁押さえ部材378は、第2コイルスプリング312から下方向の付勢力を受けて、第2円筒状部378bの下端面が3つの第2開閉弁302に接触する位置に位置決めされる。
【0073】
<第4開閉弁支持部材380の構成>
第4開閉弁支持部材380は、円筒状の円筒状部381と、円筒状部381における下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部382と、内向部382における下端部から下方向に向かう円柱状の円柱状部383とを有している。
【0074】
第4開閉弁支持部材380には、内向部382及び円柱状部383を軸方向に貫通する軸方向貫通孔384が形成されている。軸方向貫通孔384を介して、円筒状部381の内部と、円柱状部383よりも下方の部位とが連通する。
第4開閉弁支持部材380には、円筒状部381と第4開閉弁支持部材380の外側とを連通する径方向の貫通孔である径方向連通孔385が形成されている。径方向連通孔385は、周方向に等間隔に複数形成されている。
内向部382には、上端面から軸方向に上方に突出した凸部382aが設けられている。凸部382aにおける軸方向貫通孔384の開口部には、第3開閉弁303の下端部の形状に沿う凹部が形成されている。
【0075】
第4開閉弁支持部材380の円筒状部381内には、第4開閉弁304と、第3開閉弁303と、第3コイルスプリング313と、第3コイルスプリング313の上端部を支持する支持部材386と、第3開閉弁303の径方向への移動を抑制する抑制部材387と、が収容されている。
【0076】
支持部材386は、中央部に第3開閉弁303の径よりも小さな径の貫通孔が形成されたドーナツ状の薄板である。支持部材386は、中央部の貫通孔の周囲が第3コイルスプリング313の上端部に接触することで第3コイルスプリング313の上端部を支持する。第3開閉弁303は、支持部材386の中央部の貫通孔に嵌ることで下方向への移動が抑制される。支持部材386に生じる、第3開閉弁303が下方向へ移動しようとする力と、第3コイルスプリング313から受ける上方向の力とが釣り合う位置で、支持部材386の位置が定まる。本実施の形態においては、第3開閉弁303がプッシュロッド316から押されていない場合には、第3開閉弁303が第4開閉弁304の第2貫通孔393bの開口部を塞ぐように第3コイルスプリング313のバネ力が設定されている。他方、第3開閉弁303がプッシュロッド316から強く押されている場合には、第3開閉弁303が第4開閉弁支持部材380の内向部382の凸部382aに載り、第4開閉弁支持部材380に形成された軸方向貫通孔384の上側の開口部を塞ぐように、第3コイルスプリング313のバネ力が設定されている。
【0077】
抑制部材387は、中央部に第3開閉弁303の径よりも大きな径の中央貫通孔387aが形成されたドーナツ状の薄板である。抑制部材387の中央貫通孔387aの内側に第3開閉弁303が配置されることで、第3開閉弁303の径方向への移動が抑制される。そして、抑制部材387における中央貫通孔387aの周囲には、周方向に等間隔に複数の周囲貫通孔387bが形成されており、これら複数の貫通孔を介してオイルが軸方向に流通する。
【0078】
<覆い部材395の構成>
覆い部材395は、内径が同じで外径が互いに異なる3つの円筒状の第1円筒状部396と第2円筒状部397と第3円筒状部398とを有する。
第1円筒状部396の外径は、ユニット本体330の第1円筒状部350の内周面の径よりも小さく、かつ、第4開閉弁支持部材380の円筒状部381の内径よりも大きい。第4開閉弁支持部材380の円筒状部381の上端面が第1円筒状部396の下端面に突き当たることで第4開閉弁支持部材380の上方向への移動が抑制される。また、第1円筒状部396の外周面には、全周に渡って凹んだ溝396aが形成されている。溝396aに、ユニット本体330との間の隙間をシールするOリング等の封止部材399が嵌め込まれている。なお、覆い部材395は、ユニット本体330と一体に形成されてもよい。
【0079】
第2円筒状部397の外径は、第4開閉弁支持部材380の円筒状部381の内径と略同じである。第2円筒状部397が第4開閉弁支持部材380の円筒状部381の内側に嵌め込まれる。
第3円筒状部398の外径は、第4開閉弁支持部材380の円筒状部381の内径よりも小さい。第3円筒状部398と第4開閉弁支持部材380の円筒状部381との間にドーナツ状の樹脂やゴムなどの弾性部材であるシール部材314が圧入されている。第3円筒状部398の軸方向の大きさは、シール部材314の大きさよりも小さく、第4開閉弁304がシール部材314に接触することで、第4開閉弁304とシール部材314との間の流路がシールされる。
覆い部材395の内径は、プッシュロッド316の第3軸部319の径よりも大きく、覆い部材395の内側にプッシュロッド316が配置されている。
【0080】
<コイルスプリング支持部材388の構成>
コイルスプリング支持部材388は、中央部に第4開閉弁支持部材380の円柱状部383の外径よりも大きな径の貫通孔が形成され、軸方向に見た場合に十字状の薄板である。コイルスプリング支持部材388は、下端面で第2コイルスプリング312の上端部を支持する。
【0081】
コイルスプリング支持部材388における貫通孔の中心からの半径方向の大きさは、第2開閉弁支持部材370の上端側円筒状部371の内周面の半径よりも大きい。
コイルスプリング支持部材388は、第2開閉弁支持部材370の上端側円筒状部371の上端面に突き当たることで下方向への移動が抑制される。
コイルスプリング支持部材388は、板バネ389から受ける下方向の付勢力と、第2コイルスプリング312から受ける上方向の付勢力とが釣り合う位置に位置決めされる。
【0082】
<支持部材400の構成>
支持部材400は、
図4に示すように、円筒状の円筒状部401と、円筒状部401における下端部から半径方向の内側に向かうように形成された内向部402とを有している。
円筒状部401における上端部の外周面にはキャップ220に形成された雌ねじに締め付けられる雄ねじ403が形成されている。支持部材400は、円筒状部401の外周面に形成された雄ねじ403がキャップ220に形成された雌ねじに締め付けられることでキャップ220に保持される。また、支持部材400は、内向部402と前輪側ソレノイド320との間に、第4開閉弁支持部材380のフランジ部とユニット本体330のフランジ部とを挟み込むことで、第4開閉弁支持部材380及びユニット本体330を保持する。
【0083】
<ユニット本体330の上端側円柱状部340に形成された側方凹部342bと第1径方向連通孔349aとの位置関係について>
図7は、軸方向に垂直であってユニット本体330の上端側円柱状部340の第1径方向連通孔349aの孔中心を通る面での断面図である。
図7(a)は、制御弁305の溝305aの軸方向の位置と第1径方向連通孔349aの位置とが重なっている状態を示す図である。
図7(b)は、制御弁305の溝305aの軸方向の位置と第1径方向連通孔349aの位置とが重なっていない状態を示す図である。
以上のように構成された前輪側流路切替ユニット300においては、前輪側ソレノイド320のコイル321への通電が停止しているか又は予め定められた第1基準電流未満の電流が供給されている場合には、ケース325から突出した作動ロッド324の突出量が予め定められた第1基準量未満となる。本実施の形態においては、作動ロッド324の突出量が第1基準量未満である場合には、制御弁305の溝305aの軸方向の位置がユニット本体330の上端側円柱状部340に形成された第1径方向連通孔349aと重なる。例えば、前輪側ソレノイド320のコイル321への通電が停止して作動ロッド324の突出量が初期量である場合に、制御弁305は初期位置に位置する。制御弁305が初期位置にある場合には、制御弁305の溝305aの軸方向の中心位置と第1径方向連通孔349aの孔中心の位置とが同じとなり、溝305aと第1径方向連通孔349aとが重なる。そして、このとき、
図7(a)に示すように、ユニット本体330の上端側円柱状部340に形成された側方凹部342bと第1径方向連通孔349aとが、制御弁305の溝305aを介して連通し、第1開閉弁背圧室B1とリザーバ室40とが制御弁305の溝305aを介して連通する。
【0084】
前輪側ソレノイド320のコイル321へ第1基準電流以上の電流が供給されている場合には、作動ロッド324のケース325からの突出量が第1基準量以上となる。作動ロッド324の突出量が第1基準量以上である場合には、制御弁305の溝305aの軸方向の位置がユニット本体330の上端側円柱状部340に形成された第1径方向連通孔349aよりも下方の位置となるように作動ロッド324により制御弁305が押し下げられる。言い換えれば、作動ロッド324は、ケース325からの突出量が第1基準量以上である場合に、制御弁305の溝305aの軸方向の位置が、ユニット本体330の上端側円柱状部340に形成された第1径方向連通孔349aよりも下方に位置するまで制御弁305を押し下げる。制御弁305の溝305aが第1径方向連通孔349aよりも下方に位置する場合には、制御弁305の溝305aの軸方向の位置と第1径方向連通孔349aの位置とが重ならない。そして、このとき、
図7(b)に示すように、ユニット本体330の上端側円柱状部340に形成された側方凹部342bと第1径方向連通孔349aとが、制御弁305の溝305aを介して連通せず、第1開閉弁背圧室B1とリザーバ室40とが制御弁305の溝305aを介して連通しない。
なお、ケース325からの突出量の第1基準量は、ユニット本体330の上端側円柱状部340に形成された第1径方向連通孔349aの孔径の半分であることを例示することができる。
【0085】
前輪側ソレノイド320のコイル321へ、第1基準電流よりも大きい値に予め定められた第2基準電流以上の電流が供給されている場合には、作動ロッド324がさらに下方に移動し、作動ロッド324のケース325からの突出量が第1基準量よりも大きい値に予め定められた第2基準量以上となる。作動ロッド324の突出量が第2基準量以上である場合には、制御弁305がプッシュロッド316と接触するとともに第3開閉弁303と接触し、プッシュロッド316は、制御弁305と第3開閉弁303とで挟まれた状態となる。
【0086】
前輪側ソレノイド320のコイル321へ第2基準電流よりも大きい値に予め定められた第3基準電流以上の電流が供給されている場合には、作動ロッド324のケース325からの突出量が第2基準量よりも大きい値に予め定められた第3基準量以上となる。作動ロッド324のケース325からの突出量が第2基準量よりも大きくなると、制御弁305を介してプッシュロッド316を下方へ押す。下方へ移動したプッシュロッド316が第3開閉弁303を押し下げ、第3開閉弁303が第4開閉弁304の第2貫通孔393bの開口部から離れる。言い換えれば、プッシュロッド316は、ケース325からの作動ロッド324の突出量が第2基準量よりも大きい場合に制御弁305により押されて、第4開閉弁304の第2貫通孔393bの開口部から第3開閉弁303が離れるように第3開閉弁303を押す。第3基準量については、後で説明する。
【0087】
前輪側ソレノイド320のコイル321へ第3基準電流よりも大きい値に予め定められた第4基準電流以上の電流が供給されている場合には、作動ロッド324のケース325からの突出量が第3基準量よりも大きい値に予め定められた第4基準量以上となる。作動ロッド324の突出量が第4基準量以上である場合には、プッシュロッド316により押し下げられた第3開閉弁303が第4開閉弁支持部材380の内向部382の凸部382aに載り、軸方向貫通孔384の上側の開口部を塞ぐ。言い換えれば、プッシュロッド316は、ケース325からの作動ロッド324の突出量が第4基準量以上である場合に、第4開閉弁支持部材380に形成された軸方向貫通孔384の上側の開口部を塞ぐように第3開閉弁303を押す。
【0088】
以下では、コイル321への通電が停止しているか又は第1基準電流未満の電流が供給され、制御弁305の溝305aの軸方向の位置がユニット本体330の上端側円柱状部340に形成された第1径方向連通孔349aと重なり、第1開閉弁背圧室B1とリザーバ室40とが制御弁305の溝305aを介して連通する状態を第1切替状態と称す。
【0089】
また、コイル321へ第1基準電流以上第2基準電流以下の電流が供給され、作動ロッド324が制御弁305の溝305aがユニット本体330の第1径方向連通孔349aと重ならない位置まで制御弁305を押し下げ、第1開閉弁背圧室B1とリザーバ室40とが制御弁305の溝305aを介して連通しないとともに第3開閉弁303が第4開閉弁304の第2貫通孔393bの開口部を塞いでいる状態を第2切替状態と称す。
【0090】
また、コイル321へ第2基準電流よりも大きな電流が供給され、第1開閉弁背圧室B1とリザーバ室40とが制御弁305の溝305aを介して連通しないとともに、第3開閉弁303が第4開閉弁304の第2貫通孔393bの開口部と第4開閉弁支持部材380の軸方向貫通孔384の開口部との両方を塞がない状態を第3切替状態と称す。
【0091】
また、コイル321へ第4基準電流以上の電流が供給され、第1開閉弁背圧室B1とリザーバ室40とが制御弁305の溝305aを介して連通しないとともに、第3開閉弁303が第4開閉弁支持部材380の軸方向貫通孔384の開口部を塞いでいる状態を第4切替状態と称す。この第4切替状態においては、後述するように、第4開閉弁304がシール部材314から離れている。
【0092】
<フロントフォーク21の作用>
以上のように構成されたフロントフォーク21は、前輪側スプリング500が自動二輪車1の車重を支えて衝撃を吸収し、減衰力発生ユニット130が前輪側スプリング500の振動を減衰する。
図8は、フロントフォーク21の圧縮行程時の作用を説明するための図である。
フロントフォーク21の圧縮行程においては、減衰力発生ユニット130のピストン131が、白抜き矢印のようにシリンダ230に対して上方へ移動し、ピストン131の移動で第1油室51のオイルは押されて圧力が上昇する。その結果、第1貫通孔132を塞ぐ下端側バルブ137が開き、オイルは第1貫通孔132を通って第2油室52に流入する(矢印C1参照)。この第1油室51から第2油室52へのオイルの流れは、第1貫通孔132及び下端側バルブ137で絞られ、圧縮行程時における減衰力を得る。
【0093】
また、圧縮行程時にシリンダ230内部へロッド150が進入したことに起因して、ロッド進入体積分のオイルが、前輪側流路切替ユニット300の切替状態に応じて、ジャッキ室60又はリザーバ室40へ供給される(矢印C2参照)。前輪側流路切替ユニット300の切替状態に応じて、ジャッキ室60、リザーバ室40のいずれへ供給されるかについては後述する。なお、減衰力発生ユニット130、ロッド150及びシリンダ230などは、シリンダ230内のオイルをジャッキ室60又はリザーバ室40へ供給するポンプとして機能する。このポンプを「ポンプ600」と称す場合もある。
【0094】
図9は、フロントフォーク21の伸張行程時の作用を説明するための図である。
フロントフォーク21の伸張行程においては、減衰力発生ユニット130のピストン131が、白抜き矢印のようにシリンダ230に対して下方へ移動し、ピストン131の移動で第2油室52のオイルは押されて圧力が上昇する。その結果、第2貫通孔133を塞ぐ上端側バルブ136が開き、オイルは第2貫通孔133を通って第1油室51に流入する(矢印T1参照)。この第2油室52から第1油室51へのオイルの流れは、第2貫通孔133及び上端側バルブ136で絞られ、伸張行程時における減衰力を得る。
【0095】
また、伸張行程時にシリンダ230内部からロッド150が退出したことに起因して、ロッド退出体積分のオイルが、リザーバ室40から第1油室51へ供給される。つまり、ピストン131が下方へ移動したことに起因して低圧となった第1油室51へ、リザーバ室40のオイルが進入する。つまり、リザーバ室40のオイルは、支持部材保持部材180の連通孔182、ロッド保持部材160の径方向貫通孔161cを通ってロッド保持部材160の軸方向凹部161aに進入した後にボール166を上方へ移動させてロッド150内部へ進入する(矢印T2参照)。そして、ロッド150内部へ進入したオイルは、ピストンボルト140の凹部143,径方向貫通孔144、ナット145の傾斜方向貫通孔148を通って第1油室51へ至る(矢印T3参照)。なお、ナット145の下端側には傾斜方向貫通孔148の開口部を覆う板バルブ149が設けられているので、第1油室51からロッド150内部へオイルが逆流するのが抑制される。
【0096】
このように、支持部材保持部材180の連通孔182、ロッド保持部材160の径方向貫通孔161c、ロッド保持部材160の軸方向凹部161a、ロッド150内部、ピストンボルト140の凹部143,径方向貫通孔144、ナット145の傾斜方向貫通孔148は、リザーバ室40からシリンダ230内(第1油室51)へオイルを吸入する吸入路として機能する。また、ボール166は、リザーバ室40からロッド150内部へのオイルの流入を許容するとともにロッド150内部からリザーバ室40へのオイルの排出を抑制するチェック弁として機能する。以下では、ボール166を、「吸入側チェック弁Vc」と称す。
【0097】
<前輪側流路切替ユニット300の切替状態に応じたオイルの流通状態>
図10は、前輪側流路切替ユニット300が第1切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
フロントフォーク21の圧縮行程時に前輪側流路切替ユニット300が第1切替状態である場合、減衰力発生ユニット130、ロッド150及びシリンダ230などにより構成されるポンプ600から吐出されたオイルは、
図10に示した矢印P1のように、ユニット本体330に形成された軸方向連通孔351を通って上方へ向かう。第1開閉弁背圧室B1のオイルは、
図7(a)に示すように、ユニット本体330の側方凹部342b、制御弁305の溝305a、ユニット本体330の第1径方向連通孔349aを通ってユニット本体330の外部に排出される。そして、ユニット本体330の外部に排出されたオイルは、
図10に示した矢印P1のように、ユニット本体330の切り欠き部348aと支持部材400との間の隙間、ベース部材260の突出部260bと支持部材400の下端部との間に形成された排出流路41を通ってリザーバ室40に向かう。
【0098】
また、前輪側流路切替ユニット300が第1切替状態である場合、第1開閉弁背圧室B1の圧力は低いことから、ポンプ600から吐出されてユニット本体330に形成された軸方向連通孔351を通って上方へ向かったオイルは、第1開閉弁301を上方へ移動させて、第1開閉弁301の傾斜面301cをユニット本体330の第3円柱状凹部346cの開口部から離間させる。そして、第1開閉弁301の傾斜面301cと、ユニット本体330との間の隙間を通ったオイルは、ユニット本体330に形成された交差方向連通孔346dを通り、ベース部材260の突出部260bと支持部材400の下端部との間に形成された排出流路41を通ってリザーバ室40に向かう。
言い換えれば、前輪側流路切替ユニット300が第1切替状態である場合、第1開閉弁背圧室B1の圧力は、ポンプ600から吐出されてユニット本体330に形成された軸方向連通孔351を通って上方へ向かったオイルが第1開閉弁301をユニット本体330から離間させるのを困難にするほど高くない。その結果、ポンプ600から吐出されたオイルは、リザーバ室40に向かう。
【0099】
このように、ユニット本体330の軸方向連通孔351、交差方向連通孔346d、排出流路41は、シリンダ230内とリザーバ室40とを連通する第1連通路R1(
図3参照)として機能する。
また、ユニット本体330の軸方向連通孔351、第1開閉弁301の貫通孔301e、ユニット本体330の側方凹部342b、制御弁305の溝305a、ユニット本体330の第1径方向連通孔349a、排出流路41は、シリンダ230内とリザーバ室40とを連通する第1連通路迂回路R5として機能する。制御弁305は、第1連通路迂回路R5を開閉することで第1開閉弁301の開閉を制御する弁として機能する。
また、ユニット本体330に形成された、側方凹部342b、収容部342a及び第1径方向連通孔349aは、オイルが第1開閉弁背圧室B1からリザーバ室40へ向かう排出流路として機能する。制御弁305は、排出流路を開閉することで第1開閉弁301の開閉を制御する弁として機能する。
【0100】
図11は、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
フロントフォーク21の圧縮行程時に前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合、第1開閉弁背圧室B1とリザーバ室40とが制御弁305の溝305aを介して連通しないので、第1開閉弁背圧室B1のオイルは、制御弁305の溝305aを通ってリザーバ室40に向かわない。一方、ユニット本体330に形成された軸方向連通孔351と第1開閉弁背圧室B1とは、第1開閉弁301の貫通孔301eを介して連通している。
それゆえ、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合、第1開閉弁背圧室B1の圧力は、ポンプ600から吐出されてユニット本体330の軸方向連通孔351を通って上方へ向かったオイルが、第1開閉弁301を上方へ移動させる(第1開閉弁301を開かせる)のを困難にするほど高い。
このように、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合、第1開閉弁301が第1連通路R1を閉じているので、ポンプ600から吐出されたオイルは、
図11に示した矢印P2のように、ジャッキ室60へ向かう。つまり、ポンプ600から吐出され、第2開閉弁支持部材370の軸方向貫通孔372aを通ったオイルは、第2コイルスプリング312の付勢力に抗して第2開閉弁302を押し上げ、第4開閉弁支持部材380の外周面と、ユニット本体330の内周面との間の隙間を通って上方へ向かう。そして、第4開閉弁支持部材380の外周面とユニット本体330の内周面との間の隙間を通って上方へ向かったオイルは、ユニット本体330の第3径方向連通孔357を通ってユニット本体330の外側に向かう。第3径方向連通孔357を通ったオイルは、その後、シリンダ230の外周面と前輪側スプリング長変更ユニット250のベース部材260の内周面との間に形成された環状流路61を通ってジャッキ室60に向かう。
【0101】
このように、第2開閉弁支持部材370の軸方向貫通孔372a、第4開閉弁支持部材380の外周面とユニット本体330の内周面との間の隙間、ユニット本体330の第3径方向連通孔357、及び環状流路61は、シリンダ230内とジャッキ室60とを連通する第2連通路R2(
図3参照)として機能する。第2開閉弁302は、シリンダ230内からジャッキ室60へのオイルの流れを許容するとともにジャッキ室60からシリンダ230内へのオイルの流れを妨げるチェック弁でもある。
【0102】
なお、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合、第3開閉弁303が第4開閉弁304の第2貫通孔393bの開口部を塞いでいる。それゆえ、第4開閉弁支持部材380の円筒状部381の内周面と、第4開閉弁304の第2円柱状部392の下端面と、第4開閉弁支持部材380の内向部382の上端面とにより囲まれた空間S1と、ジャッキ室60とは、第4開閉弁支持部材380の軸方向貫通孔384や、球状である、一の第2開閉弁302と他の第2開閉弁302との間の隙間を介して連通している。
また、第4開閉弁支持部材380の円筒状部381の内周面と第4開閉弁304の第1円柱状部391の外周面との間の空間S2と、ジャッキ室60とは、第4開閉弁支持部材380の径方向連通孔385を介して連通している。
その結果、第4開閉弁304に対して上方向の力を加えるオイルである空間S1内のオイルの圧力と、第4開閉弁304に対して下方向の力を加えるオイルである空間S2内のオイルの圧力とは同じである。そして、第4開閉弁304における、空間S1内のオイルの圧力を受ける受圧面積A1(第2円柱状部392の下端面の面積)の方が、空間S2内のオイルの圧力を受ける受圧面積A2(第2円柱状部392の上端面の面積)よりも大きいので、第4開閉弁304は、シール部材314に接触したままとなる。
【0103】
図12は、前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態である場合、
図12に示した矢印P3のように、ジャッキ室60のオイルは、リザーバ室40に向かう。つまり、ジャッキ室60のオイルは、シリンダ230の外周面と前輪側スプリング長変更ユニット250のベース部材260の内周面との間に形成された環状流路61、ユニット本体330の第3径方向連通孔357、第4開閉弁支持部材380の外周面とユニット本体330の内周面との間の隙間を通って下方へ向かい、第2開閉弁支持部材370の上端側円筒状部371の内周面と第4開閉弁支持部材380の円柱状部383の外周面との間の隙間G1に進入する。そして、隙間G1のオイルは、球状である、一の第2開閉弁302と他の第2開閉弁302との間の隙間、第4開閉弁支持部材380の軸方向貫通孔384、第3開閉弁303と第4開閉弁304との間の隙間、第4開閉弁304の第2貫通孔393bの内周面とプッシュロッド316の外周面との間の隙間を通って上方へ向かう。上方へ向かったオイルは、ユニット本体330の第2径方向連通孔349b、ベース部材260の突出部260bと支持部材400の下端部との間に形成された排出流路41を通ってリザーバ室40に向かう。
【0104】
このように、環状流路61、ユニット本体330の第3径方向連通孔357、第4開閉弁支持部材380の外周面とユニット本体330の内周面との間の隙間、第4開閉弁支持部材380の軸方向貫通孔384、第3開閉弁303と第4開閉弁304との間の隙間、第4開閉弁304の第2貫通孔393bの内周面とプッシュロッド316の外周面との間の隙間、ユニット本体330の第2径方向連通孔349b、排出流路41が、ジャッキ室60とリザーバ室40とを連通する第3連通路R3(
図3参照)として機能する。また、第3開閉弁303が、この第3連通路R3を開閉する。
また、第3連通路R3の内、空間S1の上流側にある、環状流路61、ユニット本体330の第3径方向連通孔357、第4開閉弁支持部材380の外周面とユニット本体330の内周面との間の隙間、第4開閉弁支持部材380の軸方向貫通孔384が、ジャッキ室60から空間S1へ向かう流入流路として機能する。第3開閉弁303が、この流入流路をも開閉する。
【0105】
なお、前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態である場合、第3開閉弁303と第4開閉弁304の第2貫通孔393bの開口部との間の隙間G2が第3連通路R3における最小絞り部となるように、第3開閉弁303が第2貫通孔393bの開口部から離れている。第3開閉弁303が第2貫通孔393bの開口部から離れている状態では、第4開閉弁304に対して上方向の力を加える空間S1内のオイルの圧力は、第4開閉弁304に対して下方向の力を加えるオイルである空間S2内のオイルの圧力よりも小さいが、受圧面積A1の方が受圧面積A2よりも大きいので、第4開閉弁304は、シール部材314に接触したままとなる(空間S1内のオイルの圧力×受圧面積A1>空間S2内のオイルの圧力×受圧面積A2)。
【0106】
言い換えれば、前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態である場合に第4開閉弁304がシール部材314に接触したままとなるように、以下のように設定されている。すなわち、隙間G2により形成される流路の面積を、第4開閉弁支持部材380の軸方向貫通孔384の流路面積(流入流路の最小面積)や、プッシュロッド316の第2軸部318の外周面と第4開閉弁304の第2貫通孔393bの内周面との間の隙間G3により形成される流路の面積(隙間G2よりも下流側の流路の最小面積)よりも小さくして隙間G2が最小絞り部となるように第3基準量が設定されている。また、第3開閉弁303が開いたことにより小さくなる空間S1内のオイルの圧力と受圧面積A1とを乗算した値が、空間S2内のオイルの圧力と受圧面積A2とを乗算した値よりも大きくなるように(空間S1内のオイルの圧力×受圧面積A1>空間S2内のオイルの圧力×受圧面積A2)、受圧面積A1及び受圧面積A2を考慮して第3基準量が設定されている。
【0107】
図13は、前輪側流路切替ユニット300が第4切替状態である場合のオイルの流通状態を示す図である。
前輪側流路切替ユニット300が第4切替状態である場合、第3開閉弁303が第4開閉弁支持部材380の軸方向貫通孔384の開口部を塞いでいるため、第4開閉弁304に対して上方向の力を加える空間S1内にオイルの流入が少ないか又はオイルが流入しない。そのため、空間S1内のオイルの圧力が、前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態である場合よりも小さくなり、受圧面積A1の方が受圧面積A2より大きくても、第4開閉弁304に加わる下方向の力が上方向の力よりも大きくなる(空間S1内のオイルの圧力×受圧面積A1<空間S2内のオイルの圧力×受圧面積A2)。その結果、第4開閉弁304は、シール部材314から離れる。そして、
図13に示した矢印P4のように、ジャッキ室60のオイルは、第4開閉弁304とシール部材314との間の隙間を通って、リザーバ室40に向かう。つまり、ジャッキ室60のオイルは、環状流路61、ユニット本体330の第3径方向連通孔357、第4開閉弁支持部材380の径方向連通孔385、第4開閉弁304とシール部材314との間の隙間、ユニット本体330の第2径方向連通孔349b、ベース部材260の突出部260bと支持部材400の下端部との間に形成された排出流路41を通ってリザーバ室40に向かう。
【0108】
このように、環状流路61、ユニット本体330の第3径方向連通孔357、第4開閉弁支持部材380の径方向連通孔385、第4開閉弁304とシール部材314との間の隙間、ユニット本体330の第2径方向連通孔349b、排出流路41が、ジャッキ室60とリザーバ室40とを連通する第4連通路R4(
図3参照)として機能する。また、第4開閉弁304が、この第4連通路R4を開閉する。
【0109】
<車高の昇降について>
以上述べたように作用するフロントフォーク21において、前輪側流路切替ユニット300が第2切替状態である場合、圧縮行程時に、ポンプ600から吐出されたオイルがジャッキ室60に流入し、ジャッキ室60のオイル量が増す。そして、ジャッキ室60のオイル量が増すことによって前輪側スプリング長変更ユニット250のベース部材260に対して上端部支持部材270が下方へ移動する。上端部支持部材270がベース部材260に対して下方へ移動することで前輪側スプリング500のバネ長が短くなると、上端部支持部材270がベース部材260に対して移動する前と比べて前輪側スプリング500が上端部支持部材270を押すバネ力が大きくなる。その結果、車体フレーム11から前輪2側へ力が作用したとしても両者の相対位置を変化させない初期セット荷重(プリロード)が大きくなる。かかる場合、車体フレーム11(シート19)側から軸方向に同じ力が作用した場合には、フロントフォーク21の沈み込み量が小さくなる。それゆえ、上端部支持部材270がベース部材260に対して移動することで前輪側スプリング500のバネ長が短くなると、上端部支持部材270がベース部材260に対して移動する前と比べて、シート19の高さが上昇する(車高が高くなる)。
【0110】
他方、前輪側流路切替ユニット300が第3切替状態や第4切替状態である場合、ジャッキ室60のオイル量が減少することによって前輪側スプリング長変更ユニット250のベース部材260に対して上端部支持部材270が上方へ移動する。上端部支持部材270がベース部材260に対して上方に移動することで前輪側スプリング500のバネ長が長くなると、上端部支持部材270がベース部材260に対して移動する前と比べて前輪側スプリング500が上端部支持部材270を押すバネ力が小さくなる。かかる場合、初期セット荷重(プリロード)が小さくなり、車体フレーム11(シート19)側から軸方向に同じ力が作用した場合のフロントフォーク21の沈み込み量が大きくなる。それゆえ、上端部支持部材270がベース部材260に対して上方に移動することで前輪側スプリング500のバネ長が長くなると、上端部支持部材270がベース部材260に対して移動する前と比べて、シート19の高さが下降する(車高が低くなる)。なお、前輪側流路切替ユニット300が第4切替状態である場合には、第3切替状態である場合よりもジャッキ室60のオイルの量が高速で減るので、第3切替状態である場合よりも高速で車高が低くなる。
【0111】
なお、前輪側流路切替ユニット300が第1切替状態である場合、圧縮行程時にポンプ600から吐出されたオイルはリザーバ室40に流入するので、ジャッキ室60のオイル量は増減しない。それゆえ、シート19の高さが維持される(車高が維持される)。
【0112】
このように、本実施の形態に係る前輪側流路切替ユニット300は、供給される電流量に応じて、第1連通路R1、第2連通路R2及び第3連通路R3のいずれかの連通路を開くことが可能である。つまり、前輪側流路切替ユニット300は、供給される電流量に応じて、前輪側ソレノイド320の作動ロッド324の軸方向への移動量を制御することで、車高を高くしたり、車高を低くしたり、車高を維持したりすることができる。言い換えれば、前輪側流路切替ユニット300は、1つのユニットにて、車高を上昇させる上昇モード、車高を下降させる下降モード、車高を維持する維持モードの3つの制御モードを、電流量に応じて制御することができる。また、前輪側流路切替ユニット300は、下降モードにおいては、車高を低速で下降させることが可能な低速下降モードと、車高を高速で下降させることが可能な高速下降モードとを実現することができる。
【0113】
そして、上述した機能を実現する前輪側流路切替ユニット300は、インナチューブ210の内側において、シリンダ230の上端部に取り付けられる構成である。つまり、前輪側流路切替ユニット300は、インナチューブ210の外側に配置されているのではない。また、3つの制御モードを実現するために複数の電磁アクチュエータ(ソレノイドなど)を必要としない。それゆえ、本実施の形態に係る前輪側流路切替ユニット300によれば、フロントフォーク21の構成を簡易にして省スペース化を実現できるとともに、上記機能を実現することができる。言い換えれば、周囲のスペースが限られたフロントフォーク21に本実施の形態に係る前輪側流路切替ユニット300を適用することで、フロントフォーク21は、自身の大きさを大きくすることなく、3つの制御モードに切り替えることができる。
【0114】
また、本実施の形態に係る前輪側流路切替ユニット300は、供給される電流が第1基準電流未満である場合には維持モード、供給される電流が第1基準電流以上であって第2基準電流未満である場合には上昇モード、供給される電流が第2基準電流以上である場合には下降モードとなる。つまり、供給される電流量が大きくなるのに応じて、維持モード、上昇モード、下降モードへと順に遷移する。
このように、本実施の形態に係る前輪側流路切替ユニット300は、供給される電流量が大きくなるのに応じて、維持モード、下降モード、上昇モードへと順に遷移するのではない。維持モード、下降モード、上昇モードへと順に遷移する構成である場合には、車高を高くした状態でその車高を維持するために電流量を下げると、一旦電流量が下降モードに対応する電流量となり車高が下降するおそれがある。
これに対して、本実施の形態に係る前輪側流路切替ユニット300においては、供給される電流量が大きくなるのに応じて、維持モード、上昇モード、下降モードへと順に遷移するので、車高を高くした状態でその車高を維持するために電流量を下げたとしても車高が下降することはない。
【0115】
上述したように本実施の形態に係る流路制御装置の一例としての前輪側流路切替ユニット300は、供給されたオイルが第1室の一例としてのリザーバ室40に向かう第1流路の一例としての第1連通路R1を開閉する第1弁の一例としての第1開閉弁301と、第1開閉弁301を閉状態とする方向の力を第1開閉弁301に加えるオイルを収容する第2室の一例としての第1開閉弁背圧室B1からリザーバ室40に向かう第2流路の一例としての排出流路を形成する流路形成部材の一例としてのユニット本体330とを備える。ユニット本体330には、第1開閉弁背圧室B1から凹んだ第1凹部の一例としての収容部342aと、収容部342aとリザーバ室40とを連通する連通路の一例としての第1径方向連通孔349aと、収容部342aと連続し第1径方向連通孔349aとは連続しないように第1開閉弁背圧室B1から凹んだ第2凹部の一例としての側方凹部342bとが形成され、第1径方向連通孔349aと側方凹部342bとを介して第1開閉弁背圧室B1からリザーバ室40に向かう第2流路の一例としての排出流路を形成する。そして、前輪側流路切替ユニット300は、外面から凹んだ溝305aが形成されているとともにユニット本体330の収容部342aに嵌め込まれて、溝305aが側方凹部342bと第1径方向連通孔349aとを連通する位置と、溝305aが側方凹部342bと第1径方向連通孔349aとを連通しない位置との間を移動することで第2流路の一例としての排出流路を開閉する第2弁の一例としての制御弁305を備えている。
【0116】
以上のように構成された前輪側流路切替ユニット300によれば、制御弁305が、溝305aが側方凹部342bと第1径方向連通孔349aとを連通する位置にある場合には、第1開閉弁背圧室B1のオイルがリザーバ室40に向かうため第1開閉弁背圧室B1の圧力は低い。その結果、第1開閉弁301を閉状態とする方向の力が小さくなり、第1開閉弁301が開き、ポンプ600から供給されたオイルがリザーバ室40に向かう。
他方、制御弁305が、溝305aが側方凹部342bと第1径方向連通孔349aとを連通しない位置にある場合には、第1開閉弁背圧室B1のオイルがリザーバ室40に向かい難くなるため第1開閉弁背圧室B1の圧力は高い。その結果、第1開閉弁301を閉状態とする方向の力が大きくなり、第1開閉弁301が閉じ、ポンプ600から供給されたオイルがリザーバ室40に向い難くなる。このように本実施の形態に係る前輪側流路切替ユニット300によれば、制御弁305の位置を制御することで第1開閉弁301の開閉を制御することができるので、ポンプ600から供給されたオイルをリザーバ室40に向かわせるのか否かを確度高く制御することができる。それゆえ、たとえ、路面の凸凹の間隔が小さくて前輪2が高速で振動したり、路面の凸凹が大きくて前輪2の振動の振幅が大きかったりすることに起因して、ポンプから多量のオイルが吐出されるとしても、ポンプ600から供給されたオイルをリザーバ室40に向かわせるのか否かを確度高く制御することができるので、ジャッキ室60のオイル量を確度高く制御することができる。
【0117】
ここで、ユニット本体330の側方凹部342bは、制御弁305の移動方向と同方向に凹み、第1径方向連通孔349aは、制御弁305の移動方向と交差する方向に形成されていてもよい。これにより、制御弁305を移動することで容易に側方凹部342bと第1径方向連通孔349aとを連通させるか否かを確度高く制御することができる。
また、制御弁305の移動方向において、制御弁305の溝305aがユニット本体330の第1径方向連通孔349aと重なる場合に側方凹部342bと第1径方向連通孔349aとが連通し、溝305aが第1径方向連通孔349aと重ならない場合に側方凹部342bと第1径方向連通孔349aとが連通しないように構成してもよい。これにより、ユニット本体330の第1径方向連通孔349aの位置に制御弁305の溝305aの位置を合わせるか否かで簡易に第1開閉弁301の開閉を制御することができる。
【0118】
図14は、溝305aが側方凹部342bと第1径方向連通孔349aとを連通しない位置にある場合の制御弁305の外周面と第1径方向連通孔349aの開口部との位置関係を示す図である。
制御弁305は円柱状であるとともに柱方向に移動し、ユニット本体330の第1径方向連通孔349aは、制御弁305の移動方向に見た場合に、制御弁305の中心に対して側方凹部342bとは反対側に形成されていてもよい。これにより、制御弁305が、側方凹部342b内のオイルにより、第1径方向連通孔349aの方へ向かう力を受ける。その結果、特に、制御弁305の移動方向の位置が、溝305aが第1径方向連通孔349aと重ならない位置である場合には、
図14に示すように、制御弁305の外面が第1径方向連通孔349aの開口部を塞ぐ。それゆえ、たとえ制御弁305の外面よりも収容部342aの内面の方が大きく、制御弁305の外面と収容部342aの内面との間に隙間が生じる寸法関係であったとしても、第1開閉弁背圧室B1のオイルがリザーバ室40に向かい難くなるため第1開閉弁背圧室B1の圧力を高く維持することができる。
なお、制御弁305が、側方凹部342b内のオイルにより、第1径方向連通孔349aの方へ向かう力を受けるのであれば、制御弁305の中心に対して第1径方向連通孔349aと側方凹部342bとは正反対に形成されていなくてもよい。なお、制御弁305は角柱状であってもよい。
【0119】
上述したように本実施の形態に係る流路制御装置の一例としての前輪側流路切替ユニット300は、第1室の一例としてのジャッキ室60から第2室の一例としてのリザーバ室40へ向かう第1流路の一例としての第4連通路R4を閉じる閉状態と閉状態から第3室の一例としての空間S1の方へ移動することで第4連通路R4を開いた開状態に遷移するととともに、第4連通路R4と空間S1とを連通する連通路の一例としての軸方向貫通孔393が形成され、閉状態でジャッキ室60の圧力を受ける第1受圧面積の一例としての受圧面積A1が空間S1の圧力を受ける第2受圧面積の一例としての受圧面積A2よりも小さい第1弁の一例としての第4開閉弁304を備える。また、前輪側流路切替ユニット300は、ジャッキ室60から第4開閉弁304の軸方向貫通孔393を通ってリザーバ室40へ向かう第2流路の一例としての第3連通路R3上の空間S1に設けられて、軸方向貫通孔393を閉じるとともにジャッキ室60から空間S1へ向かう流入流路を開いた第1状態と、流入流路を閉じるとともに軸方向貫通孔393を開いた第2状態とに遷移する第2弁の一例としての第3開閉弁303を備える。
【0120】
以上のように構成された前輪側流路切替ユニット300によれば、第3開閉弁303が第4開閉弁304の軸方向貫通孔393を閉じるとともにジャッキ室60から空間S1へ至る流入流路を開いた第1状態である場合、ジャッキ室60と第4開閉弁304の背圧室となる空間S1とは同圧となる。そして、閉状態でジャッキ室60の圧力を受ける第4開閉弁304の受圧面積A1が空間S1内の圧力を受ける受圧面積A2よりも小さいので、第4開閉弁304は閉状態となる。また、第3開閉弁303が第4開閉弁304の軸方向貫通孔393を閉じているので第3連通路R3も閉じている。それゆえ、ジャッキ室60のオイルはリザーバ室40に至らない。
他方、第3開閉弁303がジャッキ室60から空間S1へ至る流入流路を閉じるとともに第4開閉弁304の軸方向貫通孔393を開いた第2状態である場合、第4開閉弁304の背圧室となる空間S1にはオイルが供給されないのでジャッキ室60よりも低圧となる。それゆえ、第4開閉弁304が空間S1の方へ移動し易くなり、第4開閉弁304は開状態となり易くなる。そして、本実施の形態に係る前輪側流路切替ユニット300においては、第3開閉弁303が第2状態である場合は、第4開閉弁304が開状態となるように設定されている。その結果、ジャッキ室60のオイルは第4連通路R4を通ってリザーバ室40に至り易くなる。
このように本実施の形態に係る前輪側流路切替ユニット300によれば、第3開閉弁303の開閉を制御することで第4開閉弁304の開閉を制御することができるので、ジャッキ室60のオイルをリザーバ室40に向かわせるのか否かを確度高く制御することができる。
【0121】
ここで、第3開閉弁303は、第4開閉弁304の軸方向貫通孔393の開口部との間の隙間G2が第3連通路R3の最小絞り部となるように軸方向貫通孔393及び流入流路を開いた第3状態に遷移してもよい。第3開閉弁303が第3状態である場合、第4開閉弁304の軸方向貫通孔393及び流入流路は開かれているので、第3連通路R3は開いており、ジャッキ室60のオイルは第3連通路R3を通ってリザーバ室40へ至る。そして、第4開閉弁304の背圧室となる空間S1は、ジャッキ室60よりも低圧となる。ただし、第4開閉弁304の軸方向貫通孔393の開口部との間の隙間G2が第3連通路R3の最小絞り部となるので、第4開閉弁304の軸方向貫通孔393よりも空間S1の方が高圧となる。それゆえ、閉状態でジャッキ室60の圧力を受ける第4開閉弁304の受圧面積A1と空間S1内の圧力を受ける受圧面積A2の大きさにより第4開閉弁304の位置が定まる。
そして、第4開閉弁304の受圧面積A2は、第3開閉弁303が第3状態である場合に、第4開閉弁304を閉状態とするように受圧面積A1よりも大きくてもよい。これにより、第3開閉弁303が第3状態である場合に、第4開閉弁304を閉状態にしつつ、ジャッキ室60のオイルが第3連通路R3を通ってのみリザーバ室40へ至るようにすることが可能となる。そして、第3連通路R3の流路面積を第4連通路R4の流路面積よりも小さくすることで、第3開閉弁303が第2状態である場合よりも第3開閉弁303が第3状態である場合の方がジャッキ室60のオイルがリザーバ室40へ至る速度を小さくすることが可能となる。また、第3開閉弁303が第3状態である場合に第4開閉弁304が閉状態であることにより、第3開閉弁303が第3状態である場合に第4開閉弁304が開状態である場合よりも、ジャッキ室60のオイルを減らして車高を低くしている状態からジャッキ室60のオイル量を維持して車高を維持している状態への変化をより迅速に行うことが可能となる。
【0122】
上述したように本実施の形態に係る車高調整装置の一例としてのフロントフォーク21は、一端が車体側に支持され、他端が車輪側に支持されたスプリング500と、オイルを収容する収容室の一例としてのジャッキ室60のオイルの量に応じてスプリング500の長さを変更する変更装置の一例としてのスプリング長変更ユニット250と、ポンプ600から供給されたオイルが貯留室の一例としてのリザーバ室40に向かう第1流路の一例としての第1連通路R1を開閉する第1弁の一例としての第1開閉弁301と、第1開閉弁301を閉状態とする方向の力を第1開閉弁301に加えるオイルを収容する背圧室の一例としての第1開閉弁背圧室B1からリザーバ室40へ向かう排出流路を開閉する背圧調整弁の一例としての制御弁305と、第1開閉弁301が閉状態である場合に、ポンプ600から供給されたオイルがジャッキ室60に向かう第2流路の一例としての第2連通路R2を開閉する第2開閉弁302とを備える。
【0123】
以上のように構成された本実施の形態に係るフロントフォーク21によれば、制御弁305が、第1開閉弁背圧室B1からリザーバ室40へ向かう排出流路を開いている場合には、第1開閉弁背圧室B1のオイルがリザーバ室40に向かうため第1開閉弁背圧室B1の圧力は低い。その結果、第1開閉弁301を閉状態とする方向の力が小さくなり、第1開閉弁301が開き、ポンプ600から供給されたオイルがリザーバ室40に向かう。他方、制御弁305が、第1開閉弁背圧室B1からリザーバ室40へ向かう排出流路を閉じている場合には、第1開閉弁背圧室B1のオイルがリザーバ室40に向い難くなるため第1開閉弁背圧室B1の圧力は高い。その結果、第1開閉弁301を閉状態とする方向の力が大きくなり、第1開閉弁301が開き難くなり、ポンプ600から供給されたオイルがリザーバ室40に向かい難くなる。そして、本実施の形態に係るフロントフォーク21は、第1開閉弁301が閉状態である場合に、第2開閉弁302が第2連通路R2を開くので、ポンプ600から供給されたオイルが第2連通路R2を通ってジャッキ室60に向かう。このように本実施の形態に係るフロントフォーク21によれば、制御弁305の位置を制御することで第1開閉弁301の開閉を制御することができるので、ポンプ600から供給されたオイルをリザーバ室40に向かわせるのか、ジャッキ室60に向かわせるのかを確度高く制御することができる。それゆえ、制御弁305の位置を制御することでスプリング500の長さを確度高く制御することができ、車高を精度よく調整することができる。
【0124】
また、フロントフォーク21は、第1開閉弁背圧室B1から凹んだ凹部の一例としての上端側中央凹部342を介して第1開閉弁背圧室B1からリザーバ室40へ向かう排出流路を形成する流路形成部材の一例としてのユニット本体330をさらに備え、制御弁305は、排出流路を開く位置と閉じる位置とに移動可能にユニット本体330の上端側中央凹部342に嵌め込まれていてもよい。これにより、制御弁305の位置を制御することで第1開閉弁背圧室B1の圧力を確度高く制御することができ、第1開閉弁301の開閉を確度高く制御することができる。その結果、車高を精度よく調整することができる。
【0125】
また、フロントフォーク21は、制御弁305の位置に応じて移動して、ジャッキ室60からリザーバ室40へ向かう第3流路の一例としての第3連通路R3を開閉する第3弁の一例としての第3開閉弁303をさらに備えてもよい。これにより、制御弁305の位置を制御することで第3開閉弁303の位置を制御することができ、ジャッキ室60からリザーバ室40へ向かう第3連通路R3の開閉を確度高く制御することができる。それゆえ、ジャッキ室60のオイルをリザーバ室40に向かわせてジャッキ室60のオイル量を減らすのか、ジャッキ室60のオイル量を維持するのかを確度高く制御することができ、車高を精度よく調整することができる。
【0126】
また、フロントフォーク21は、第3開閉弁303の位置に応じて移動して、ジャッキ室60からリザーバ室40へ向かう流路であって第3連通路R3よりも流路面積が大きい第4流路の一例としての第4連通路R4を開閉する第4弁の一例としての第4開閉弁304をさらに備えてもよい。これにより、第3開閉弁303の位置を制御する制御弁305の位置を制御することで第4開閉弁304の位置を制御することができ、ジャッキ室60からリザーバ室40へ向かう第4連通路R4の開閉を確度高く制御することができる。それゆえ、流路面積が大きい第4連通路R4を通ってジャッキ室60のオイルをリザーバ室40に向かわせてジャッキ室60のオイル量を高速で減らすのか、流路面積が小さい第3連通路R3を通ってジャッキ室60のオイルをリザーバ室40に向かわせてジャッキ室60のオイル量を低速で減らすのかを確度高く制御することができ、車高を精度よく調整することができる。
【0127】
また、第3開閉弁303は、第3連通路R3上であって、第4開閉弁304を閉状態とする方向の力を第4開閉弁304に加えるオイルを収容する第4弁背圧室の一例としての空間S1に設けられて、ジャッキ室60から空間S1へ至る流入流路を開く位置と、流入流路を閉じる位置との間を移動してもよい。第3開閉弁303がジャッキ室60から空間S1へ至る流入流路を閉じる位置にある場合、第4開閉弁304の背圧室となる空間S1にはオイルが供給されないのでジャッキ室60よりも低圧となる。それゆえ、第4開閉弁304が空間S1の方へ移動し易くなり、第4開閉弁304は開状態となり易くなる。他方、第3開閉弁303が流入流路を開く位置にある場合、第4開閉弁304の背圧室となる空間S1にはオイルが供給されるので第3開閉弁303が流入流路を閉じる位置にある場合よりも低圧となる。それゆえ、第4開閉弁304は空間S1の方へ移動し難く、第4開閉弁304は開状態となり難い。このように本実施の形態に係るフロントフォーク21によれば、第3開閉弁303の位置を制御することで、第4開閉弁304の開閉状態を確度高く制御することができる。
【0128】
<制御弁305の変形例>
上述した実施の形態に係る制御弁305においては、供給される電流量が大きくなるのに応じて、維持モード、上昇モード、下降モードへと順に遷移させるべく、作動ロッド324の突出量と制御弁305の溝305aの位置との関係が定められている。すなわち、作動ロッド324の突出量が第1基準量未満である場合には、制御弁305の溝305aの軸方向の位置がユニット本体330の第1径方向連通孔349aと重なり、作動ロッド324の突出量が第1基準量以上である場合には、溝305aの軸方向の位置が第1径方向連通孔349aよりも下方の位置となる。これに対して、作動ロッド324の突出量が第1基準量未満である場合には、制御弁305の溝305aの軸方向の位置がユニット本体330の第1径方向連通孔349aよりも上方の位置となり、作動ロッド324の突出量が第1基準量以上である場合に、溝305aの軸方向の位置が第1径方向連通孔349aと重なるように溝305aを形成することで、供給される電流量が大きくなるのに応じて、上昇モード、維持モード、下降モードへと順に遷移させることができる。すなわち、制御弁305の溝305aの位置を変更することのみで、上昇モード、維持モード、下降モードへと順に遷移する前輪側流路切替ユニット300を実現することができる。
【0129】
<前輪側流路切替ユニット300の変形例>
上述した実施の形態に係る前輪側ソレノイド310は、コイル311への通電電流が大きくなるほど作動ロッド314のケース315からの突出量が大きくなるようにプランジャ313に軸方向の推力が発生するものであるが、特にかかる態様に限定されない。例えば、前輪側ソレノイド310は、コイル311への通電電流が大きくなるほど作動ロッド314のケース315からの突出量が小さくなるようにプランジャ313に軸方向の推力が発生してもよい。このように構成された前輪側流路切替ユニット300においても、1つのユニットにて、車高を上昇させる上昇モード、車高を下降させる下降モード、車高を維持する維持モードの3つの制御モードを、電流量に応じて制御することができる。
【0130】
なお、上述した実施の形態においては、上昇モード、下降モード及び維持モードの3つの制御モードに切り替え可能な前輪側流路切替ユニット300を、フロントフォーク21に適用した構成を例示しているが、特に限定されない。上述した実施の形態に係る前輪側流路切替ユニット300を、リヤサスペンション22に適用してもよい。