(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
遠心ファンは、家電機器、OA機器、産業機器などの各種機器における冷却、換気、空調等の用途や、車両用の空調、送風などに広く用いられている。従来、この種の遠心ファンとして、例えば、特許文献1の遠心ファンがある。この遠心ファンでは、インペラとロータヨークを結合させているが、インペラとロータヨークとの結合手段として、例えば、特許文献2の遠心ファンがある。特許文献2の遠心ファンは、インペラの下面に一体に形成された突起部をバックヨークのフランジ部に形成した孔に嵌入し、フランジ部の裏面から突出した突起部の先端部分を熱で溶融して熱カシメ固定している。
【0003】
しかしながら、特許文献2の遠心ファンでは、樹脂の射出成形でインペラの下面に一体に成形した突起部の径と、フランジ部の孔の径との公差により隙間が生じ、突起部の先端部分を熱カシメ固定した場合、インペラの結合にガタツキが発生する虞がある。このような突起部の熱カシメ固定におけるガタツキが発生することを低減する手段として、例えば特許文献3の手段がある。
【0004】
特許文献3で開示された構造(
図10参照)は、回路基板に対して、保護カバー体等の合成樹脂製部品を、当該部品から突出したピン6を回路基板1のピン孔7に挿入した後、ピン6の突出端部6aを熱でカシメ変形して取り付ける構造において、回路基板1のピン孔7の内径Dを、回路基板1の裏面側において大径に段付き状に拡大した段付き孔に構成することによって、ガタツキが発生することを低減したものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(全体の構造)
以下、発明を利用した遠心ファンについて説明する。
図1および
図2には遠心ファン1が示されている。遠心ファン1は、上ケーシング3と下ケーシング4により構成されるケーシング2を備えている。ケーシング2の内部には、モータ21およびモータ21によって回転させられるインペラ8が収納されている。
【0015】
上ケーシング3と下ケーシング4の間にはインペラ8が回転可能な状態で収納されている。インペラ8の回転に伴い、上ケーシング3に形成された吸い込み口35からインペラ8内に空気が吸入される。この吸入された空気は、インペラ8の羽根10の間を通過し、ケーシング2の側面に形成された吹き出し口36からケーシング2の外方(径外方向)に向けて排出される。吹き出し口36は、上ケーシング3と下ケーシング4の間に介装された複数(この場合、4つ)の円筒状の支柱7の間に形成されている。
【0016】
下ケーシング4は、中央部に矩形状の凹部5aが形成されている金属製(例えば、鉄板)のモータベース5と、樹脂製のベースプレート6とを重ね合わせた構造を有している。モータベース5の中心には、略筒形状の軸受保持部26が固定されている。軸受保持部26の内側には、回転軸となるシャフト16が軸受27,28を介して回転可能に支持されている。
【0017】
モータベース5の凹部5aの底面には、アウタロータ型のブラシレスDCモータであるモータ21が装着されている。モータ21は、後述するインシュレータ24を構成する下インシュレータ24bを備え、下インシュレータ24bの下面には、回路基板30が固定されている。回路基板30は、下インシュレータ24bに一体成形され下方に突出する複数のピンの先端を熱カシメすることで、下インシュレータ24bに接合されている。
図2には、この熱カシメされた部分24cが示されている。
【0018】
軸受保持部26の外側には、モータ21を構成するステータ22が固定されている。ステータ22は、軟磁性材料からなる鋼板等の薄板状のコアを所定枚数積層してなるステータコア23と、ステータコア23の軸方向両側から装着された樹脂製の上インシュレータ24aおよび下インシュレータ24bからなるインシュレータ24と、インシュレータ24を介してステータコア23のティースに巻回されたコイル25とから構成されている。
【0019】
ステータコア23を構成する薄板状のコアは、環状ヨークから径外方に延在する複数のティース(遠心ファン1では6個のティースを有している)を備えており、複数のコアを積層させてステータコア23が構成されている。ステータコア23の中央には開口が形成され、その開口に軸受保持部26が嵌合している。ステータ22の下部(コイル25の下側部分)と回路基板30は、モータベース5の凹部5aの内部に収納された状態となっており、これにより軸方向寸法の低減すなわち薄型化が図られている。
【0020】
図1に示すように、ベースプレート6の外周端の4箇所には下方に延在する側部6aが形成されている。この側部6aの内側がモータベース5の4辺の外周に当接することでモータベース5とベースプレート6相互の位置決めがなされている。
【0021】
モータ21は、ステータ22とロータ15とから構成されている。
図4には、ロータ15が示されている。ロータ15は、シャフト16、シャフト16に装着されたボス部17(
図2参照)と、ボス部17にカシメにより固定された円筒カップ状のロータヨーク18と、ロータヨーク18の内側に固着された環状のマグネット19とから構成されている。
図2に示すように、組み立てられた状態において、環状のマグネット19の内周面は、ステータコア23のティースの外周面に隙間を有した状態で対向している。
【0022】
図4に示すように、ロータヨーク18は、円錐部18a、円錐部18aの外縁から軸方向に延在する円筒部18b、円筒部18bの下縁から径外方に延在するフランジ部18cを有している。円錐部18aの上部は円盤形状を有し、その中央に開口が形成され、この開口にボス部17(
図2参照)が嵌め込まれて固定されている。
【0023】
ロータ15とインペラ8は、フランジ部18cを利用して結合している。この結合の構造については後述する。インペラ8は、環状のシュラウド9と、複数の羽根10と、円板状の主板11とから構成されている。羽根10と主板11は樹脂の一体成形にて形成されており、これらが樹脂にて成形されたシュラウド9に接合されている。なお、インペラ8は、(A)環状のシュラウド9と羽根10を一体成形した部材と、主板11からなる部材を超音波溶着などの手段で一体に形成した構成や、(B)主板11と羽根10を一体成形した部材と、環状のシュラウド9からなる部材を2色成形で一体に形成した構成も可能である。
【0024】
羽根10は、主板11から軸方向に立設して形成されている。羽根10は回転方向に対して後向きに湾曲傾斜した形状を有し、回転方向に対して後向き羽根の構造(いわゆる、ターボ型)を有している。羽根10はすべて同じ形状で、羽根10とシュラウド9との接合は、例えば、超音波溶着によって行われている。
【0025】
インペラ8の主板11は内周側部分と外周側部分とを有し、内周側が外周側より軸方向上方に位置している。そして、内周側部分と外周側部分とは傾斜部11aでつながっている。羽根10は、外周側部分に立設されている。主板11の最内周には内周円筒部11bが垂下する状態に形成され、内周円筒部11bの内側にロータヨーク18の円筒部18bが固定され、円筒部18bの内側に環状のマグネット19が固定されている。
【0026】
図4に示すように、主板11の内周円筒部11bの下端には軸方向(シャフト16の延在方向)に延在する複数のピン11cが形成されている。ここで、主板11は、樹脂製であり、ピン11cは、樹脂を材料とする一体成型により、主板11と一体に形成されている。
【0027】
図3に示すように、上記のピン11cをフランジ部18cにカシメ固定することで、ロータヨーク18と主板11とが接合され、これによりロータ15とインペラ8とが結合されている。この構造によれば、インペラ8は、モータ21の駆動によって回転するロータ15とともにシャフト16を回転軸として回転する。ピン11cを用いたカシメ固定については後述する。
【0028】
図1に示すように、上ケーシング3の上面側には複数の凹部3a(肉盗み部分)が形成されている。上ケーシング3の外周の円周等分複数箇所(この場合4箇所)に、支柱7が形成されている。支柱7は、上ケーシング3と樹脂の一体成形にて形成されている。一方、下ケーシング4を構成する矩形状のモータベース5およびベースプレート6の四隅であって支柱7に対応する箇所には、貫通孔5d,6dがそれぞれ形成されている。これら貫通孔5d,6dに下側からタッピングねじ40(
図2参照)を貫通させ、その先端部を円筒状の支柱7内にねじ込んで締め付けることにより、上ケーシング3と下ケーシング4とが結合されている。なお、締結手段はこれに限定されず、例えば、下ケーシング4側から支柱7内に挿通したボルトを上ケーシング3側からナットで締め込むといった手段であってもよい。
【0029】
図2に示すように、回路基板30上には、モータ21を駆動制御するための部品や制御ICなどの電子部品31が実装されている。このため、限られた空間で電子部品31とインペラ8との接触を防止するために、主板11には傾斜部11aが形成されており、この傾斜部11aの位置に電子部品31の一部を収納することで、電子部品31とインペラ8との接触を防止するとともに薄型化が図られている。
【0030】
遠心ファン1は、薄型ファンであり、回路基板30とロータヨーク18のフランジ部18cとの間の距離が短い。このため、フランジ部18cの下面に対応する位置の回路基板30上には配線パターンは形成されているが、電子部品31は実装されていない。
【0031】
(カシメによる締結構造について)
以下、ピン11cを用いたカシメ固定により、ロータヨーク18と主板11とを締結した構造について説明する。
図4に示すように、主板11の下面には、11本のピン11cが均等配置されている。主板11は、樹脂(例えば、PBT樹脂)の射出成形にて成形され、ピン11cは主板11と一体に成形されている。フランジ部18cのピン11cに対応する位置には、貫通孔18dが設けられている。貫通孔18dは、柱状の貫通孔に座繰り加工により、大径部18d’(
図5参照)が形成された段付き孔である。
【0032】
ロータヨーク18と主板11とは、以下のようにして締結される。まず、
図4と上下を逆にした状態として、ピン11cをロータヨーク18のフランジ部18cに形成した貫通孔18dに挿通させ、インペラ8をロータヨーク18のフランジ部18cに接触させる。この状態が
図5に示されている。
【0033】
図5の状態において、フランジ部18cの貫通孔18dから突出した樹脂製のピン11cの先端部のみを局部加熱手段(図示省略)により溶融あるいは軟化させる。図示省略した局部加熱手段は、例えば赤外線を照射することでピン11cの局所部分を加熱する方式のものが用いられる。局部加熱手段としては、熱風を当てる装置や各種波長のレーザ光を照射する装置が挙げられる。
【0034】
次に、
図6に示すように、パンチ50をピン11cの先端部に軸方向から接触させ、圧力を加えることで、パンチ50によりピン11cの軟化した先端部を押し潰す。ここで、パンチ50は特に加熱されていない。パンチ50によりピン11cの先端部を押し潰したら、パンチ50をピン11cの先端から離し、カシメ加工を終了する。この状態が
図7に示されている。
【0035】
図8のように、パンチ50の中央には半球状の成形用凹部51が形成されており、成形用凹部51の周縁部には段差状の逃げ用凹部52が形成されている。また、成形用凹部51と逃げ用凹部52の間には、環状凸部53が形成されている。
図5の状態において、パンチ50によって適切な押圧力でピン11cの先端部を押圧すると、パンチ50によってピン11cの先端部が半球状に成形されてカシメ固定が行われる(
図6参照)。このとき、パンチ50で押圧された樹脂製のピン11cの先端部の樹脂の一部は、成形用凹部51(
図8参照)の外周側に流れ、パンチ50の逃げ用凹部52に流れ込む。
【0036】
この際、パンチ50の寸法(外径)は、貫通孔18dの径よりも少し大きく設定されているので、
図6の状態において、パンチ50の逃げ用凹部52の外周縁の一部がフランジ部18cの裏面に当接する。そして、パンチ50でピン11cの先端部を所定時間、押圧した後、パンチ50を上昇させると、ピン11cの潰された先端部には、半球状部111と、半球状部111の外側周縁の環状突起部112が形成される(
図7参照)。
【0037】
この状態では、パンチ50の逃げ用凹部52に、ピン11c先端部の樹脂が流れ込み、潰されたピン11cの先端部と貫通孔18dの大径部18d’(
図5参照)の内面(座繰り部分)とが隙間なく密着する。この結果、インペラ8とロータヨーク18とをガタツキが生じることなく固定することができる。特に、環状凸部53に押されることで上記の密着が確実に行われる。
【0038】
パンチ50における半球状の成形用凹部51は、カシメ固定した後の被カシメ固定物(樹脂製のピン11cの先端部)が所定の締結力、所定の高さなどの形状となるよう、その直径と高さが設定される。また、パンチ50の逃げ用凹部52の形状は、逃げ用凹部52に流れ込む樹脂量によって決まるので、その樹脂量を考慮して設定される。この例では、半球状の成形用凹部51の高さは、逃げ用凹部52の高さよりも高く設定されている。したがって、カシメ加工後におけるピン11cの先端部に成形される半球状部111の高さは、環状突起部112の高さよりも高くなる。
【0039】
(優位性)
(1)
ピン11cの先端部のみを溶融する局部加熱のため、その他の個所における熱による樹脂の変形や劣化が生じない。
【0040】
(2)
引用文献2のような加熱体を被カシメ固定物(樹脂ピンの先端部)に直接、押圧する手段では、パンチの上昇時に樹脂の糸引きが発生し易いが、本実施形態によるカシメ固定では、パンチは独立して常温状態にある。このため、糸引きが生じ難い。また、サイクルタイムも短くできる。
【0041】
(3)
パンチ50の環状凸部53に押されることで、ピン11c先端部分の樹脂が貫通孔18dの大径部(座繰り部分)18d’(
図5参照)に押し込まれる。この結果、環状凹部113の底部は、貫通孔18dの内側に位置した状態となる。この構成では、パンチ50の環状凸部53の部分で環状凹部113の部分が押されることで、貫通孔18dの大径部(座繰り部分)18d’に隙間なく樹脂が押し込まれ、隙間の発生が抑えられ、また密着性の弱い部分が形成され難い。
【0042】
(4)
図7に示す半球状部111の外側周縁に形成された環状突起部112はフランジ部18cの裏面から突出せず、半球状部111の一部がフランジ部18cの裏面から突出する構造のため、インペラ8の回転時の負荷とならず、また、半球状部111が風切音の原因となることが防止される。
【0043】
(その他)
フランジ部18cに形成した大径を有する段付き孔(貫通孔18d)は、
図9に示すように、大径の面(座繰り面)71に例えば、複数箇所にスリット72(例えば、十字状に形成)や凹部を形成してもよい(形状、個数は限定されない)。この場合、大径の内面に密接するように充填される樹脂(ピン11c先端の樹脂)が、大径の面71に形成されたスリット72や凹部に入り込むため、よりガタツキを防止できる。
【0044】
図4には、樹脂製のピン11cが11本示されている。ピン11cの数は、カシメ固定による締結の強度確保に必要な数を選択すればよく、その数は11本に限定されない。また、バランスを考慮すればピン11cは均等配置が好適であるが、均等配置に限定されない。