【実施例1】
【0017】
本発明の第1実施例のチャックであるコレットチャック100は、例えば、
図1に示すように、工作機械の主軸Sに装着されて開閉され、着脱自在にワークを把持する。
主軸Sにおける主軸チャック開閉機構10は、主軸外方に設けられたアクチュエータによって作動する揺動レバーにより主軸の軸方向に移動可能な作動カム11と、レバーホルダ12に揺動可能に支持された一対のレバー13とを有している。
上記レバーホルダ12は、主軸Sに螺合装着されているロックナット14によって、位置決めされる。
【0018】
作動カム11は、アクチュエータによってコレットチャック100から離れる方向に移動すると主軸Sとレバー13との間に挿入され、レバー13の各々が揺動して開き、第1スリーブ15aをコレットチャック100の方向に押し、それにより第1スリーブ15aに当接する第2スリーブ15b、さらに、第2スリーブ15bに当接する第3スリーブ15cがコレットチャック100の方向に移動し、第3スリーブ15cによってコレットチャック100が閉じる。
【0019】
一方、作動カム11がアクチュエータによってコレットチャック100の方向に移動することによって、主軸Sとレバー13との間から作動カム11が外れ、レバー13が閉じ、スプリング16の作用で第1乃至第3スリーブ15a、15b、15cがコレットチャック100から離れる方向に移動してコレットチャック100が開く。
コレットチャック100は、作動カム11の移動によって開閉し、コレットチャック100内に挿入されるワークWを着脱自在に把持することができる。
【0020】
図2および
図3に示すように、本実施例のコレットチャック100は、把持部110と、テーパ部120と、スリット130とを有し、把持部110は、スリット130によって一例として周方向に3分割されている。
把持部110は、上述したように第3スリーブ15cがテーパ部120を押圧することによって、弾力的に径方向内側に撓むように移動して閉状態となり、把持部110内に挿入されたワークを把持することができる。
第3スリーブ15cによるテーパ部120の押圧が解除されると、把持部110は径方向外側に弾力的に移動して開き、ワークの把持は解除される。
把持部110の内周面にはネジである雌ねじ111が形成されている。
【0021】
図4Aに示すように、例えば、ワークWが、主軸Sに対向する主軸等からなるワーク保持部20の先端側のチャック20aによって保持され、ワークWにおける主軸S側が、ワーク保持部20用の図示しない工具によって加工される。
これにより、主軸S側端に形成されたネジ部分である雄ねじ部分W1と、雄ねじ部分W1よりワーク保持部20側に雄ねじ部分W1に連続して一体形成されて雄ねじ部分W1の外径より小径な円柱状小径部分W2とを有している棒状のワークWが加工されるものとする。
円柱状小径部分W2は、雄ねじ部分W1より細く形成された杆状部分を構成している。
把持部110の雌ねじ111は、ワークWの雄ねじ部分W1と螺合するように形成されている。
【0022】
ワークWを主軸Sで把持する場合、まず、
図4Bに示すように、主軸Sをコレットチャック100の開状態で、例えば、手動で回転させながらZ軸方向に、コレットチャック100がワークWに対して接近する方向へ移動させ、ワークWの雄ねじ部分W1を、この雄ねじ部分W1と対応関係にある把持部110の雌ねじ111と螺合させてコレットチャック100に挿通させる。
【0023】
なお、この際、主軸Sを自動で回転させてもよい。
また、主軸Sを停止させた状態で、ワーク側(ワーク保持部20)を手動または自動で回転させてもよい。
【0024】
図5Aに示すように、ワークWと把持部110とを相対的に回転させ続けて、把持部110の雌ねじ111が、ワークWの雄ねじ部分W1を通過し、円柱状小径部分W2と対向したとき、相対的な回転を停止する。
図5Bに示すように、制御によりコレットチャック100を閉状態とすることによって、把持部110が、ワークWの円柱状小径部分W2を、雄ねじ部分W1より小径の小径部位である被把持部として把持することができる。
これにより、把持部110はワークWのワーク保持部20側端の近傍を把持部110の長さ全体に亘って安定して把持することができ、ワークWは、主軸Sに把持されたワークを加工する工具に比較的近い箇所が安定的に把持される。
その後、制御によりワーク保持部20のチャック20aを開状態とすることによって、ワーク保持部20を主軸Sに対して相対的に退避させることができる。
【0025】
ワーク保持部20の退避後、
図6に示すように、主軸Sを回転させることによって、所定の工具21によって、例えばワークWにおけるワーク保持部20側端の凸曲面状大径部分W3に穴W3a等を形成することができる。
これによりワークWの加工が完了し、一例としてボーンスクリュの加工をおこなうことができる。
【0026】
なお、加工後のワークWを保持した状態で、制御によりコレットチャック100を開状態とし、ワークWと把持部110とを
図4Bのときと逆方向に相対的に回転させるとともに、主軸SをZ軸方向においてワーク保持部20から離間する方向へ移動させることによって、ワークWの雄ねじ部分W1を把持部110の雌ねじ111と螺合させて、ワークWを主軸Sから脱抜し、ワークWの搬出を行うことができる。
なお、本実施例では、本発明のチャックとしてのコレットチャック100を主軸S側のチャックとして説明したが、主軸S側のチャックに限られるものではなく、例えばワーク保持部20を構成する主軸等に適用することもできる。
【0027】
このように本発明の第1実施例であるチャックとしてのコレットチャック100は、把持部110の内周面のネジである雌ねじ111が、ワークWのネジ部分である雄ねじ部分W1と螺合するように形成され、把持部110が、雌ねじ111と雄ねじ部分W1との螺合によって、雄ねじ部分W1に挿通されて被把持部としての円柱状小径部分W2と対向し、円柱状小径部分W2を把持するように構成されたことにより、コレットチャック100(把持部110)の内径を円柱状小径部分W2の外径や雄ねじ部分W1のねじ谷底径に応じて形成すれば、把持部110の既定の開閉ストロークを拡径するように拡大する必要も無く、ワークWの雄ねじ部分W1を挿通させた後に円柱状小径部分W2を確実かつ安定して把持することができる。
【0028】
また、把持部110が、雄ねじ部分W1を通過し、ワークWの雄ねじ部分W1に連続して一体形成された円柱状小径部分W2を被把持部として把持することにより、加工精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0029】
続いて、本発明の第2実施例であるチャックとしてのコレットチャック200について、
図7Aおよび
図7Bに基づいて説明する。
第2実施例のコレットチャック200は、第1実施例のコレットチャック100がワークWにおける把持する位置を変更したものであり、多くの要素について第1実施例のコレットチャック100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する200番台の符号を付すのみとする。
【0030】
図7Aおよび
図7Bに示すように、第2実施例では、ワークWの雄ねじ部分W1を、この雄ねじ部分W1と対応関係にある把持部210の雌ねじ211と螺合させて挿通させ、雌ねじ211が雄ねじ部分W1と対向した状態で、制御により相対的な回転を停止する。
そして、制御によりコレットチャック200を閉状態とすることによって、把持部210が、雄ねじ部分W1のねじ谷底W1bを被把持部として把持することができる。
これにより、ワークWを主軸Sで把持して加工する加工工程に応じてワークWの把持位置を調節することができる。
【0031】
さらに、雌ねじ211は、ワークWの把持状態で、雌ねじ211のねじ谷底211aが雄ねじ部分W1のねじ山頂W1aから離間するように形成することができる。
また、雌ねじ211を、雄ねじ部分W1のねじ山頂W1aおよびこのねじ山頂W1aからねじ谷底W1bに至るフランク面W1cから離間して雄ねじ部分W1のねじ谷底W1bと当接するように形成してもよい。
これにより、把持部210が雄ねじ部のねじ谷底W1bのみと当接して把持力を発揮する。
なお、本実施例では、把持部210が、雄ねじ部分W1のねじ谷底W1bを被把持部として把持したが、雄ねじ部分W1と円柱状小径部分W2との境界にまたがってねじ谷底W1bおよび円柱状小径部分W2の両方を把持してもよい。
【0032】
本発明の第2実施例であるチャックとしてのコレットチャック200は、把持部210が、雄ねじ部分W1のねじ谷底W1bを被把持部として把持することにより、把持部210がワークWを、雄ねじ部分W1を含めて安定して把持することができる。
【0033】
また、雌ねじ211が、ワークWの把持状態で、雌ねじ211のねじ谷底211aが雄ねじ部分W1のねじ山頂W1aやフランク面W1cから離間するように形成されていることにより、把持部210がワークWに加工された雄ねじ部分W1のねじ山頂W1aおよびフランク面W1cに対して損傷等の悪影響を防止してワークWを安定的に把持することができる。
【実施例3】
【0034】
続いて、本発明の第3実施例であるチャックとしてのコレットチャック300について、
図8Aおよび
図8Bに基づいて説明する。
第3実施例のコレットチャック300は、第2実施例のワークWの円柱状小径部分W2の径を変更したものであり、多くの要素について第1実施例のコレットチャック100および第2実施例のコレットチャック200と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する300番台の符号を付すのみとする。
【0035】
図8Aおよび
図8Bに示すように、第3実施例では、ワークWの雄ねじ部分W1と凸曲面状大径部分W3との間の円柱状中間部分W2’の外径は、雄ねじ部分W1のねじ山頂W1aの箇所の外径と同じである。
なお、円柱状中間部分W2’の外径は、雄ねじ部分W1のねじ山頂W1aの箇所の外径より大きくてもよい。
このような場合であっても、本発明の第3実施例であるチャックとしてのコレットチャック300は、把持部310の雌ねじ311が、雄ねじ部分W1のねじ谷底W1bを被把持部として把持することにより、把持部310がワークWを、雄ねじ部分W1を含めて安定して把持することができる。