特許第6571666号(P6571666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6571666ビタミンD結合タンパク質からビタミンDを解離するための溶液、その関連検出法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571666
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】ビタミンD結合タンパク質からビタミンDを解離するための溶液、その関連検出法及び使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20190826BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   G01N33/53 H
   G01N33/531 B
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-543445(P2016-543445)
(86)(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公表番号】特表2016-531306(P2016-531306A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】FR2014052296
(87)【国際公開番号】WO2015040319
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年8月15日
(31)【優先権主張番号】1358940
(32)【優先日】2013年9月17日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムニエ, ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】モロー, エマニュエル
【審査官】 北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02166153(GB,A)
【文献】 国際公開第2012/136720(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/091569(WO,A1)
【文献】 特表2009−510415(JP,A)
【文献】 特表2002−518474(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/150441(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/104643(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0209468(US,A1)
【文献】 米国特許第05648325(US,A)
【文献】 特表2014−501392(JP,A)
【文献】 Semahat Kucukkolbasi,Simultaneous and Accurate Determination of Water-Soluble Vitamins in Multivitamin Tablets by Using An RP-HPLC Method,Quim Nova,2013年,Vol.36 No.7,Page.1044-1051
【文献】 Mary Bedner,Development and comparison of three liquid chromatography-atomospheric pressure chemical ionization/mass spectrometry methods for determining vitamin D metabolites in human serum,Journal of Chromatography A,2012年,Vol.1240,Page.132-139
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48〜33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンD及び/又はビタミンD代謝物をビタミンD結合タンパク質から解離するための、少なくとも1種のフルオロアルキル界面活性剤及び炭素原子を1〜4個有する少なくとも1種のアルコールの使用。
【請求項2】
前記フルオロアルキル界面活性剤及び前記アルコールは、前記アルコールの体積に対する前記界面活性剤の重量(固体の場合)又は体積(液体の場合)の比に100を乗じた値が、10%〜60%となる量で使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記フルオロアルキル界面活性剤は、パーフルオロカルボン酸、パーフルオロスルホン酸、及びそれらの塩から選択される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記フルオロアルキル界面活性剤は、パーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸、及びそれらの塩から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記アルコールは、炭素原子を1〜3個有し、メタノール、エタノール、n−プロパノール、及びイソプロパノールから選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
パーフルオロヘキサン酸はメタノールと併用される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記解離は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体、ポリソルベート、及びポリエチレングリコールエーテルから選択される他の界面活性剤の存在下で行なわれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
25−ヒドロキシビタミンD及び/又は25−ヒドロキシビタミンDをビタミンD結合タンパク質から解離するための、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
生体試料中のビタミンD及び/又は少なくとも1種のビタミンD代謝物の検出及び定量を試験管内で行う検出及び定量方法であって、
a)少なくとも1種のフルオロアルキル界面活性剤及び炭素原子を1〜4個有する少なくとも1種のアルコールを試料に導入し、検出対象のビタミンD及び/又はその代謝物をビタミンD結合タンパク質から解離させるように試料を処理する工程、及び
b)ビタミンD及び/又はその代謝物の少なくとも1種を検出及び定量する工程
を含む検出及び定量方法。
【請求項10】
前記工程a)の処理は、前記試料を、少なくとも1種のフルオロアルキル界面活性剤と、炭素原子を1〜4個有する少なくとも1種のアルコールとを含有する解離溶液と混合することにより行なわれる、請求項9に記載の検出及び定量方法。
【請求項11】
前記試料の1体積あたり、1〜20体積の前記解離溶液を使用する、請求項10に記載の検出及び定量方法。
【請求項12】
前記生体試料は、血液、血清、又は血漿の試料である、請求項9〜11のいずれか1項に記載の検出及び定量方法。
【請求項13】
前記工程b)において、25−ヒドロキシビタミンD及び/又は25−ヒドロキシビタミンDが検出される、請求項9〜12のいずれか1項に記載の検出及び定量方法。
【請求項14】
前記工程b)において、検出及び定量は免疫測定法によって行なわれる、請求項9〜13のいずれか1項に記載の検出及び定量方法。
【請求項15】
前記工程b)において、検出及び定量は質量分析によって行なわれる、請求項9〜14のいずれか1項に記載の検出及び定量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンDを検出する技術に関する。より詳しくは、本発明は、ビタミンD及び/又はその代謝物の1種をビタミンD結合タンパク質から分離するためのフルオロアルキル界面活性剤とアルコールとの組み合わせの使用、上記組み合わせを含有する溶液、上記組み合わせを使用して、ビタミンD及び/又は少なくとも1種のビタミンD代謝物を検出/定量するインビトロ(in vitro)法、及び、上記組み合わせを利用する免疫測定法により検出/定量を行うためのキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンDは、ヒトや動物の体の生物学的プロセスにおいて多くの意味を持つ重要な物質である。生理的に活性なビタミンDは、特に、腸からのカルシウム吸収及び骨の石灰化を調整することが知られている。また、例えばインスリンシステム等の他の多くの代謝経路にも影響がある。ビタミンDの欠乏症又は過剰症は、様々な結果をもたらす。特にビタミンD欠乏症は、骨粗鬆症やくる病といった重大な疾病に繋がることが知られている。
【0003】
更に、過剰のビタミンD、特に過剰摂取によるものは、毒性がある。具体的には、ビタミンD濃度が高いと、腸からのカルシウム吸収が増加し、高カルシウム血症を引き起こす場合がある。ビタミンDの毒性症状は、その他、血圧の上昇、食欲不振等の胃腸障害、吐き気、それに伴う尿量の増加、多渇症、疲労感、神経過敏、そう痒、そして腎不全等としても現れる。
【0004】
特許文献1に記載されるように、近年、ビタミンDが免疫系を調整し、炎症を抑えることが分かってきている。また、ビタミンDが結腸癌、卵巣癌、及び乳癌を予防できる可能性も示唆されている。
【0005】
このことから、ビタミンDの測定又は定量、つまりその濃度の測定が可能であることは、潜在的な欠乏症又は過剰症を明らかにするために重要である。
【0006】
ビタミンDは、生物中に、2種類の形態、すなわち下記化学式(ビタミンD中の位置番号は、ステロイド命名法に従ったもの)で表されるビタミンD(エルゴカルシフェロール)及びビタミンD(コレカルシフェロール)として存在する。
【0007】
ビタミンD(エルゴカルシフェロール):
【0008】
【化1】
【0009】
ビタミンD(コレカルシフェロール):
【0010】
【化2】
【0011】
ビタミンDは、食物から得られる外因性のビタミンDである。ビタミンDは、日光の紫外線が皮膚に及ぼす作用により、生物が生成する内因性のビタミンDである。皮膚で生成されるビタミンDは、ビタミンD結合タンパク質と結合し、このタンパク質によって肝臓に運ばれる。どちらの形態も、栄養補助食品から摂取可能である。ビタミンDには、様々な代謝物がある。具体的には、2段階の代謝が起こるが、最初の段階で25−ヒドロキシビタミンD(D又はD)が生成され、その後1,25−ジヒドロキシビタミンD(D又はD)が生成される。
【0012】
ビタミンD濃度が食事に応じて大きく変動することを考慮すると、ビタミンD自体の定量に対する関心は限定的である。これは、濃度がかなり低く、同様に変動する1,25−ジヒドロキシビタミンD代謝物についても当てはまる。
【0013】
血中ビタミンDは、主に25−ヒドロキシビタミンDの代謝物である。したがって、患者のビタミンD全濃度に関する情報を得るための好ましい方法は、25−ヒドロキシビタミンDの測定である。
【0014】
25−ヒドロキシビタミンD、より一般的にはビタミンD及びその代謝物が、ビタミンD結合タンパク質(DBP)に結合するため、その構成の分析は複雑となる。適切な分析を行うためには、ハプテンとDBPとを解離することによって、分析対象であるハプテンを分離することが必要である。このことから、DBPからの解離後且つ検出前にビタミンD及びその代謝物を分離するための様々な溶液が提案されてきた。
【0015】
例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の様々な技術が開発されている。そのいくつかを以下に例示する。
【0016】
特許文献3に記載の古い技術は、血漿又は血清の試料を作製し、エタノール沈殿によりビタミンDを測定するものである。沈殿物は除去され、ビタミンDの可溶代謝物を含むエタノール上清が回収される。アルコール又はアセトニトリル等の他の有機溶媒を利用した沈殿は、一般的に使用されてきた技術である。しかしながら、その技術は自動化できず、多くの手動操作(血清への溶媒添加、混合、遠心分離、有機相の回収、カラム等を通した乾燥、液体溶媒への再懸濁)を必要とし、操作する人によって大きく差が出ることから、現在では使用されていない。
【0017】
特許文献2には、ジメチルスルホキシド(DMSO)及び液体有機アミドから選択される1種以上の両親媒性試薬を5〜30体積%含有する溶液であって、任意に短鎖アルコール(C〜C)を0.7〜8体積%含有してもよい溶液の使用が開示されている。この文献に開示される両親媒性化合物は、毒性のある物質であり、DMSOは実際に危険物質である。
【0018】
特許文献4及び特許文献5(いずれもFuture Diagonostics社)は、ビタミンDをその結合タンパク質から分離可能にし、フルオロアルキル界面活性剤を使用する免疫測定法及び薬剤を開示している。本願出願人がその方法を使用したところ、得られた解離は依然として不十分であることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2012/091569号
【特許文献2】国際公開第2007/039194号
【特許文献3】国際公開第99/67211号
【特許文献4】国際公開第2011/122948号
【特許文献5】国際公開第2012/091569号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、ビタミンD結合タンパク質(DBP)からの解離後に、容易に実行でき、ビタミンD及びその代謝物を効果的に分離でき、これらを十分に検出及び定量可能とする、より有効な解離方法を提供することを目的とする。
【0021】
本明細書においては、特許文献4及び特許文献5(Future Diagonostics社)に記載の方法よりも有効な、ビタミンD又はその代謝物の1種をビタミンD結合タンパク質(DBP)から解離するための新規な溶液を提供することを目的とする。また、本願に記載の方法では、特許文献2に開示の溶液にあるような毒性の問題は起こらない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
すなわち、本発明は、ビタミンD及び/又はビタミンD代謝物をビタミンD結合タンパク質から解離するための、少なくとも1種のフルオロアルキル界面活性剤、特にはパーフルオロアルキル界面活性剤、及び炭素原子を1〜4個有する少なくとも1種のアルコールの使用を提供する。これらを併用することにより、ビタミンD又はその代謝物の1種をビタミンD結合タンパク質から解離する解離率を、アルコールを使用しない点でのみ異なる同様の使用と比較して著しく向上することができる。本発明の使用においては、フルオロアルキル界面活性剤、特にはパーフルオロアルキル界面活性剤と、1〜4個の炭素原子を有するアルコールとが、ビタミンD結合タンパク質に結合したビタミンD及び/又はビタミンD代謝物(分析物又はビタミンD分析物とも言う)を含有する液体試料に添加される。つまり、解離対象の分析物は、フルオロアルキル界面活性剤及びアルコールの両方に接触する。これらフルオロアルキル界面活性剤及びアルコールの併用時には、同一のフルオロアルキル界面活性剤の単独使用時よりも、得られる解離状態が良くなる。フルオロアルキル界面活性剤、特にはパーフルオロアルキル界面活性剤と、炭素原子を1〜4個有するアルコールとの併用により、ビタミンD結合タンパク質とビタミンD及び/又はその代謝物の1種とが効果的に解離される。
【0023】
具体的には、上記フルオロアルキル界面活性剤及び上記アルコールは、上記アルコールの体積に対する上記界面活性剤の重量(固体の場合)又は体積(液体の場合)の比に100を乗じた値が、10%〜60%、好ましくは15%〜40%、より好ましくは15%〜30%となる量で使用される。固体又は液体の状態は、周囲温度(具体的には22℃)及び大気圧(具体的には1013ヘクトパスカル(hPa))で評価される。
【0024】
フルオロアルキル界面活性剤は、パーフルオロカルボン酸、パーフルオロスルホン酸、及びそれらの塩から選択されることが好ましく、特にはパーフルオロヘキサン酸、パーフルオロヘプタン酸、パーフルオロオクタン酸、及びそれらの塩から選択される。パーフルオロヘキサン酸は、パーフルオロカプロン酸、又はウンデカフルオロヘキサン酸として知られており、そのCAS(chemical abstract service)登録番号は、307−24−4である。パーフルオロオクタン酸は、パーフルオロカプリル酸、又はペンタデカフルオロオクタン酸として知られており、そのCAS番号は335−67−1である。一般的に、これらのパーフルオロアルキル酸の塩類は固体であり、対応する遊離酸は液体である。
【0025】
パーフルオロヘキサン酸は塩形態である可能性もあるが、より長鎖のフルオロアルキル界面活性剤よりも高い分解性を示すことから、好ましいフルオロアルキル界面活性剤である。
【0026】
使用されるアルコールは、炭素原子を1〜3個有し、メタノール、エタノール、n−プロパノール、及び、イソプロパノールから選択されることが好ましい。本発明において好ましいアルコールは、メタノールである。他のアルコールよりも解離後に行われる分析の結果の再現性が良く、また、解離の向上と得られる結果の再現性との両立を上手く図れるからである。
【0027】
特に好適な方法としては、パーフルオロヘキサン酸及びメタノールを使用して解離が行なわれる。
【0028】
本発明においては、追加の界面活性剤、特にエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体、ポリソルベート、及びポリエチレングリコールエーテルから選択される界面活性剤の存在下で解離が行なわれても良い。
【0029】
例えば、本発明においては、25−ヒドロキシビタミンD、具体的には25−ヒドロキシビタミンD及び/又は25−ヒドロキシビタミンDがビタミンD結合タンパク質から解離される。
【0030】
上記アルコール及び上記フルオロアルキル界面活性剤は、解離の対象となる試料へ別々に導入されてもよく、同時に導入されてもよい。その場合、操作を最小限にするため、解離溶液と呼ぶ単一の溶液を用いる。
【0031】
本発明はまた、少なくとも1種のフルオロアルキル界面活性剤、特にはパーフルオロアルキル界面活性剤と、炭素原子を1〜4個有する少なくとも1種のアルコールとを含有する溶液を提供する。
【0032】
これらの溶液は、水溶液であってもよく、通常は溶液の全体積の80体積%を超える多量の水を含有する。
【0033】
好適には、上記溶液においては、上記溶液の全体積に対するフルオロアルキル界面活性剤の体積パーセント(液体の場合)又は重量パーセント(固体の場合)が、0.1%〜3%、好ましくは1%〜2%である。また、好適には、上記溶液においては、上記溶液の全体積に対するアルコールの体積パーセントが、0.5%〜10%、好ましくは2%〜7%である。
【0034】
アルコールとフルオロアルキル界面活性剤の選択、及び、これらの相対量については、上記使用に関して説明した好ましい条件が本発明の解離溶液にも適用される。
【0035】
好適な変形例としては、本発明の解離溶液は、更に、オキシドエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体、ポリソルベート、及びポリエチレングリコールエーテルから選択される他の界面活性剤を含有する。結果の特定の解釈と結びつけるまでもなく、このような追加の界面活性剤は、分析対象のビタミンD又はその代謝物の溶解度を向上させることができる。追加の界面活性剤、例えばオキシドエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体に相当するポリオールであるPluronic(登録商標)F−127を使用することで、特に結果の再現性が向上する。最終の分析が、より信頼度が高いことが分かっている。例えば、これに限定されないが、Pluronic(登録商標)F−127を、解離溶液中好ましくは0.1%〜3%(解離溶液の最終体積に対する体積基準)で使用することが可能である。
【0036】
通常、本発明の解離溶液は緩衝化されており、具体的にはpH6〜8まで緩衝化されている。
【0037】
pHを所望の範囲にして安定化するために、診断の分野において従来使用される緩衝液を上記溶液に導入してもよい。例えば、リン酸緩衝食塩水(PBS)緩衝液又はトリス緩衝液(トリス−ヒドロキシメチルアミノメタン)を使用してもよい。
【0038】
pHを調整する目的で、塩基を導入してもよい。上記塩基としては、KOH、NaOH、LiOH、又はNaHPO等、この目的で従来使用される塩基であればよい。
【0039】
上記解離溶液は、好ましくは濃度1ミリモル(mM)〜500mMの緩衝液、好ましくは濃度0.1%〜3%(解離溶液の全体積に対する重量%又は体積%、界面活性剤が固体か液体かによる)のフルオロアルキル界面活性剤、及び好ましくは濃度0.5%〜10%(解離溶液の最終体積に対する体積%)のアルコールを脱塩水中で混合することで調製してもよい。解離溶液のpHは選択された緩衝液に合わせて調整され、酸又は塩基を加えることでpH4〜8、好ましくは7とする。解離溶液が追加の界面活性剤を含有する場合、該界面活性剤は、どの段階で導入されてもよい。
【0040】
解離溶液は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミドン、及びヘキサメチルリン酸トリアミドのいずれも含有しないことが好ましい。
【0041】
本発明は、更に、生体試料中のビタミンD及び/又は少なくとも1種のビタミンD代謝物の検出及び定量をインビトロ(試験管内)で行う検出及び定量方法であって、
a)少なくとも1種のフルオロアルキル界面活性剤及び1〜4個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルコールを試料に導入し、これらを利用してビタミンD結合タンパク質からの解離が進むよう試料を処理する工程;及び
b)ビタミンD及び/又はその代謝物の少なくとも1種を検出及び定量する工程、を含む検出及び定量方法を提供する。
【0042】
解離工程a)は、検出及び定量工程b)の前に行なわれるものとする。
【0043】
このような検出および定量方法においては、工程a)の処理は、試料を本発明の解離溶液と混合することで行なわれることが好ましい。通常、試料1体積に対して1〜20体積、好ましくは5〜10体積、より好ましくは6〜8体積、特に好ましくは約7体積の解離溶液が使用される。選択された体積は、検出対象のビタミンD及び/又はビタミンD代謝物(検出対象の分析物ともいう)の推定濃度と相関関係にある。
【0044】
本発明の検出及び定量方法は、血液、血清又は血漿の試料について行なわれることが好ましい。
【0045】
上記検出及び定量方法は、特に25−ヒドロキシビタミンD及び/又は25−ヒドロキシビタミンDの検出及び定量に好適である。
【0046】
上記工程b)において、検出及び定量は、免疫測定法、又は質量分析によって行われることが好ましい。
【0047】
本発明はまた、ビタミンD及び/又は少なくとも1種のビタミンD代謝物を免疫測定法により検出する検出及び定量キットであって、本発明の解離溶液を含む検出及び定量キットを提供する。上記検出及び定量キットは、ビタミンD又はその代謝物の1種の結合パートナーを更に含む、及び/又は、検出対象のビタミンD及び/又はビタミンD代謝物に類似したハプテンが結合する(該ハプテンは標識抗体により認識される)固体相を更に含むものであってもよい。
【0048】
本明細書において、ビタミンD代謝物とは、ビタミンD骨格、又はビタミンD骨格を有する全ての化合物を含む。具体的には、
・25位でヒドロキシ化されたビタミンD代謝物である25−ヒドロキシビタミンD、つまりは25−ヒドロキシビタミンD及び25−ヒドロキシビタミンD;及び
・1位と25位、24位と25位でそれぞれジヒドロキシ化されたビタミンD代謝物である、1,25−及び24,25−ジヒドロキシ型ビタミンD
が挙げられる。
【0049】
本発明の使用方法においては、選択されたフルオロアルキル界面活性剤とC−Cアルコール、好ましくはC−Cアルコールとの両方を、同時又は別々に分析試料に導入することで解離が行われてもよい。この導入後は、分離が不要となり、得られる試料を使って直接検出を行うことができる。操作を制限する目的で、選択されたフルオロアルキル界面活性剤とC−Cアルコール、好ましくはC−Cアルコールとを含有する溶液、特には本発明の溶液、を予め用意し、これを試料に導入することが好ましい。
【0050】
解離を向上させる目的で、選択されたフルオロアルキル界面活性剤、特にはパーフルオロアルキル界面活性剤と、C−Cアルコール、好ましくはC−Cアルコールとを含有する試料を使って混合を行う。上記混合は任意の適切な装置、具体的には、出願人のVidas(登録商標)技術(Vidas(登録商標)Instrument manual、2005、Chapter 2、Functional description、2−1〜2−16、ビオメリューフランス社)の通り、ピペットの役割を果たす反応コーンで行なわれればよい。
【0051】
ビタミンD又はその代謝物の1種は、当業者に公知の技術を利用して検出されればよく、具体的には検出対象である分析物の結合パートナーを利用した検査、特には免疫検査(免疫測定法試験としても知られる)、又は質量分析によって検出される。
【0052】
当然のことながら、本願において、例えば、「免疫測定法」における「免疫」は、結合パートナーが免疫学的起源の結合パートナー(例えば抗体、抗体フラグメント)であることを厳密に示しているとみなされるべきではない。当業者に周知のように、この語が使用される試験及び方法はより広く、結合パートナーは免疫学的起源及び/又は性質のものに限らず、例えば検出及び/又は定量対象である分析物の受容体であっても良く、結合パートナーが対象の分析物に、好ましくは特異的に、結合可能な状態であればよい。したがって、「酵素結合免疫吸着法(Elisa)」は、「免疫」という用語を含んでいるものの、厳密には免疫系とは言えない結合パートナーを利用する測定であることが知られており、より広くは「リガンド結合測定」として知られている。本明細書においては、明瞭性及び一貫性を目的として、結合パートナーが厳密には非免疫性のもの又は非免疫学的起源のものであっても、対象の分析物への結合適性があり、好ましくは特定の方法で該分析物を検出及び/又は定量するのに適した少なくとも1つの結合パートナーを利用する生物的分析であれば、「免疫」との語を使用する。
【0053】
上記免疫検査は、当業者に周知であり、分析物がハプテンである場合に使用される競合アッセイであることが好ましい。これは、試料の分析物と分析物の類似体とを競合させることで、試料内分析物、具体的にはビタミンD及び/又はその代謝物の少なくとも1種を測定するものである。免疫学的反応はトレーサーの存在により示される。
【0054】
分析物類似体は、先行する結合なしに競合反応に使用されても、また、結合体又はトレーサーを形成するための標識との結合後に使用されてもよい。
【0055】
また、競合的免疫アッセイでは、さらに、上記分析物類似体及び上記分析物が競合する対象となる、分析物の結合パートナーを使用する必要がある。上記分析物類似体が標識(トレーサーではなく捕獲パートナー)に結合しない場合は、上記結合パートナーが標識され反応トレーサーを構成する。上記分析物類似体が標識(この場合はトレーサー)に結合する場合は、上記結合パートナーが捕獲パートナーとなる。
【0056】
この時、上記トレーサーが発する測定信号は、試料中の分析物の量に反比例する。
【0057】
「標識」とは、形態によるが、化学的に修飾されずに捕獲パートナー又は分析物類似体と直接反応する基を含有する分子、若しくは、この基を含むように化学修飾された分子を指し、上記分子は、直接的又は間接的に検出可能な信号を生成可能である。このような反応性基は、特には第一級アミンであってよい。上記直接検出標識としては、限定されないが、以下のものを含む:
・例えば比色法、蛍光、発光等により検出可能な信号を生成する、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、及びグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ等の酵素;
・蛍光、発光及び染料等の発色団;
32P、35S及び125I等の放射性分子;
・アレクサ又はフィコシアニン等の蛍光性分子;並びに
・アクリジニウム又はルテニウムに基づく有機金属誘導体等の電気化学発光塩類。
【0058】
また、間接的検出法が使用されてもよく、例えばアンチリガンドと反応可能なリガンドが使用できる。上記リガンドは、分析物類似体と共働する標識、又は、トレーサーを構成する結合パートナーに相当する。
【0059】
リガンド/アンチリガンドペアは、当業者には、例えば以下のペアに当てはまることが周知である:ビオチン/ストレプトアビジン、ハプテン/抗体、抗原/抗体、ペプチド/抗体、糖/レクチン、ポリヌクレオチド/ポリヌクレオチド相補体。
【0060】
これにより、アンチリガンドは、上記直接検出標識により直接検出可能となるか、その他のリガンド/アンチリガンドペア等を利用してそれ自体が検知可能となってもよい。
【0061】
一定の条件下においては、これらの間接検出法により、信号を増幅できる場合がある。この信号増幅技術は当業者に周知であり、本出願人による先行特許出願である仏国特許出願公開第2781802号明細書又は国際公開第95/08000号に記載されている。
【0062】
使用される標識の種類によっては、当業者は、標識が可視化される、又は、信号が発せられるための試薬を添加する。該標識や信号は、例えば分光光度計;蛍光分光光度計;又は高解像度カメラといった、任意の適切な種類の測定器によって検出可能である。
【0063】
ビタミンDやその代謝物の1種、又は、複数のこれら化合物に対する「結合パートナー」とは、ビタミンDやその代謝物の1種、又は、複数のこれら化合物(一般的には「ビタミンD分析物」と呼ばれるもの)に結合可能な任意の分子を意味する。ビタミンD分析物結合パートナーとしては、例えば、抗体、抗体画分、nanofitins、ビタミンD分析物受容体、又は、ビタミンD分析物と相互作用することが知られている他のタンパク質が挙げられる。
【0064】
例えば、結合パートナー抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であってよい。
【0065】
ポリクローナル抗体は、免疫原としての対象ビタミンD分析物で動物を免疫化し、この動物の血清を取得することで精製された対象抗体を回収し、上記血清の他の成分から対象抗体を分離することにより得られてもよい。具体的には、上記抗体に特異的に認識される抗原(具体的には免疫原)を固定したカラム上でアフィニティークロマトグラフィを行う。
【0066】
モノクローナル抗体は、当業者に周知のハイブリドーマ技術によって得られてもよい。モノクローナル抗体はまた、当業者に周知の技術を利用して、遺伝子工学により得られた組み換え抗体であってもよい。
【0067】
抗体フラグメントとしては、Fab、Fab′、F(ab′)2フラグメント、そして単鎖可変領域フラグメント(scFv)及び重鎖可変領域フラグメント(dsFv)が挙げられる。これらの機能性フラグメントは、特に遺伝子工学によって得られてもよい。
【0068】
Nanofitins(商品名)は、小さなタンパク質であり、抗体のように、生物学的標的に結合でき、それにより生物の体内で標的を検出、捕獲、または単に標的として標識することを可能にする。
【0069】
結合パートナーとしては、ビタミンD分析物に対して特異的又は非特異的なものを使用してよい。「特異的」とは、結合パートナーが、ビタミンD分析物と排他的又はほぼ排他的に結合可能であることをいう。「非特異的」とは、ビタミンD分析物との結合選択性が弱く、例えば他のタンパク質や抗体等の他のリガンドとも結合可能であることをいう。本発明を好適に実施するには、特異的結合パートナーが好ましい。
【0070】
抗ビタミンD分析物抗体は公知であり、具体的には、Hollis,Clin.Chem.31/11、1815−1819(1985)、Holis,Clin.Chem.39/3、529−533(1993)、及び、欧州特許第1931711号に記載されている。さらに、Bioventix(英国)等の様々なサプライヤーから入手可能である。
【0071】
結合パートナー又はビタミンD類似体を捕獲に使用する際、当業者に周知の任意の方法で、微量滴定プレート、ラテックス、反応コーン、直径100マイクロメートル〜ナノメートル程度のビーズ等の媒体に結合してもよい。ビタミンD類似体は、固体相に固定されていることが好ましい。
【0072】
具体的には、アビジン及び/又はストレプトアビジンにより官能化された媒体を利用して、ビオチン化された分析物類似体を固体相に固定できる。官能化技術は、それを参照可能な当業者に周知である。
【0073】
従来は、ビタミンD及び/又はその代謝物の少なくとも1種の量を測定するために、試料中の分析物の量に反比例する信号を、当業者に周知の技術により事前に得た検量線と比較する場合があった。したがって、例えば、検量線は、同一の結合パートナーを利用するとともに、ビタミンDの量を増加させて免疫アッセイを行うことで得られてもよい。ビタミンDの濃度を横軸に沿ってプロットし、免疫アッセイ後に得られた対応する信号を縦軸に沿ってプロットすることにより曲線が得られる。
【0074】
本発明の検出/定量方法は、ビタミンDの検出/定量に利用可能な商業用試験フォーマットに直接適用してもよい。そのようなビタミンD及び/又はその代謝物の1種を分析するためのフォーマットは、具体的には、Abbott(Architect 25−OH vitamin D、ref.3L52)、DiaSorin(Liaison(登録商標)25−OH vitamin D total assay、ref.310600)、IDS(IDS−iSYS 25−hydroxy vitamin D assay、ref.IS−2700)、Siemens(Advia Centaur(登録商標)vitamin D total、ref.10491994)、及び、Roche(Elecys vitamin D total)として販売されている。
【0075】
従来の方法では、免疫測定を行なう場合、上述したような免疫学的検出に必要とされる試薬を利用しなくてはならず、これら試薬は試料中に導入されることとなる。好適には、解離、及び、選択されたフルオロアルキル界面活性剤とC〜Cアルコール、好ましくはC〜Cアルコールの両方の測定される試料への導入は、試薬の導入前に行われる。
【0076】
また、一旦解離が成功すれば、検出/定量工程に質量分析を使用することも可能である。この技術は、分析される化合物のモル質量測定を可能にし、該化合物の分子構造を同定可能にし、更には該化合物の定量を可能にする分析技術である。生体液のような複雑な混合物に適用する際には、この液体の複雑性を低減する分離技術と組み合わせる必要がある。それは通常、ガスクロマトグラフィー(GC)又は液体クロマトグラフィー(LC)である。タンデム質量分析(MS/MS)は、2つの分析器を組み合わせることで、検出/定量に使用することができる。第1の分析器で選択されたイオン化合物は、第2の分析器でより精密に分析される。このような二重分析により、上記方法の特異性が著しく向上する。この技術については、具体的にはVan den Broek他、J.Chromatogr.B 929 161−179(2013)に記載されている。
【0077】
本発明の方法を使用することができる生体試料は、分析物(ビタミンD又はその代謝物の1種)を含有する可能性がある動物、好ましくはヒトの生体試料であり、免疫測定又は質量分析を行なうことができるものである。このような試料は、当業者に周知である。上記測定方法において使用される試料は、使用前に任意で修飾されていてもよい。事前に修飾されない試料の例としては、全血等の生体液が挙げられる。試料誘導体としても知られる、事前に修飾される試料の例としては、生体組織検査又は手術により得られ、その後インビトロで培養された血清、血漿及び細胞が挙げられる。その後、ビタミンD又はその代謝物の1種の濃度を、培養上清又は細胞溶解液にて測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
図1】両方の緩衝液(PBS緩衝液及びトリス緩衝液)について、分析物のng/mL範囲に対するB/B0%比測定値を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0079】
以下の実施例により本発明を説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0080】
各実験条件においては、Vidas(登録商標)測定器(ビオメリュー社)によって測定した相対蛍光強度(RFV)信号を、実施例の表に示した。各条件において、独立した測定を複数回行う場合も多くあった。「平均RFV」が、これら独立した測定の算術平均値に相当する。
【0081】
解離溶液の有効性を検証するため、25−OHビタミンDの濃度が異なる2つの生体試料を使用して得られた結果について、得られた2つの信号(RFV試料2/RFV試料1、試料1は25−OHビタミンDの濃度が低いほうの試料)間の%比を算出することにより比較した。独立した測定を複数回行った場合は、平均RFVから比を算出した。この比が小さいほど、良い解離が得られる。
【0082】
変動係数(CV)は、標準偏差と平均値との比として定義される。この比は、パーセント表示(CV%)されることが多い。CV%は、相対的な分散の尺度であり、結果の再現性を反映する。得られた値が低くなると、再現性が向上したことを意味する。
【0083】
記載された実験のうちのいくつかは、Tagushi表を使用して作成された実験最適化方法の一部である。再現性試験(固定信号値)に関しては、最適値が公称値であれば、その値付近での分散はノイズ因子によるものであり、再現性に有害であると考えられる。繰り返し実験データに基づいて信号対雑音比(S/N)を算定してもよく、この比は式10×log10(平均/標準偏差)を使って定義される。タグチ定数としても知られるS/N比は、結果の再現性を示す。得られた値の上昇は、再現性の向上を示す。
【0084】
B/B0%比は、実験したポイント範囲で得られた信号を、分析物が0ng/mLのポイント範囲で得られた信号で除し、100を乗じた値である。
【0085】
下記の表5以外の表では、使用したパーフルオロアルキル酸は液体であり、そのパーセント値は、解離溶液の合計体積に対する体積である。使用されたアルコールのパーセント値については、すべての場合において、解離溶液の全体積に対する体積である。
【0086】
実施例1 パーフルオロヘキサン酸を単独使用する場合と比較したメタノール及びパーフルオロヘキサン酸の混合液を使用した解離の利点
解離溶液の調製
比較用解離溶液:PBS緩衝液調製成分(5mMリン酸水素ナトリウム(NaHPO)、1.5mMリン酸二水素カリウム(KHPO)、131mM NaCl)及び0.75%のパーフルオロヘキサン酸を約30分撹拌して脱塩水に溶解した。pHは、6N NaOHを使用して7.2に調節した。
【0087】
本発明の溶液:PBS緩衝液調製成分(5mMリン酸水素ナトリウム(NaHPO)、1.5mMリン酸二水素カリウム(KHPO)、131mM NaCl)及び0.75%のパーフルオロヘキサン酸、及び5%のメタノールを約30分撹拌して脱塩水に溶解した。pHは、6N NaOHを使用して7.2に調節した。
【0088】
全25−OHビタミンD定量方法
Vidas(登録商標)免疫試験機(ビオメリュー社)を使用して、免疫アッセイを行った。使い捨てコーンは、反応における固体相としての役割と、ピペットシステムとしての役割との両方を果たす。カートリッジには、封をしてラベルされたアルミニウム箔で覆われたウェルが10個設けらていた。第1のウェルには、試料の挿入を容易にするための切り欠き部を設けた。最後のウェルは、基質の蛍光が測定される光学的キュベットとした。その間のウェルは、分析に必要な各種の試薬を含むものとした。試験の工程は、全て自動的に試験機によって行なわれた。これらの工程は、反応媒体の一連の吸引/排出サイクルで構成された。
【0089】
a)コーンの感知と不動態化
コーンは、pH6.1の50mM MES緩衝液中10μg/mLまで希釈した300μLのキャリアー抗タンパク質抗体溶液で感作した。+18/25℃で6時間(h)培養した後、9g/LのNaCL溶液で洗浄をした。その後、ヒトアルブミンを含有するpH6.2の200mMトリス緩衝液で150ng/mLまで希釈した、キャリアータンパク質に結合したビタミンDの溶液を、300μL添加した。
これを、+18/25℃で一晩、感作/不動態化した。コーンを空にし、乾燥させ、次の使用まで湿気から保護しつつ+4℃で保存した。
【0090】
b)試料の前処理
分析用試料(100μL)を、カートリッジの第1のウェルに導入した。試料に含有されるビタミンDを結合タンパク質から分離するために、上記試料及び前処理試薬(比較用解離溶液又は本発明の溶液)をまとめて入れた。Vidas(登録商標)機によって、解離溶液340μLを試料48μLと混合した。得られた混合物を、37℃で5分間培養した。
【0091】
c)免疫測定法反応手順
アルカリホスファターゼによって標識された抗ビタミンD抗体(結合済み、ビオメリュー社)を1体積含有するウェルに、前処理された試料(約0.9体積)を移した。アルカリホスファターゼ抗体結合体を、pH7.1、300mM NaClでヒトアルブミンを含有する100mMトリス緩衝液で約10μg/mLまで事前に希釈した。試料/結合体混合物を、このウェルで約5〜7分間培養した。その後、試料/結合体混合物をコーン中で更に約5〜7分間培養したが、その間に、試料中の抗原とコーンに固定されたビタミンD抗原との間で、結合抗ビタミンDに特異的な抗体部位に対する競合が起こった。その後、pH8.4、300mM NaClの200mMトリス緩衝液、及び0.2%Tween(登録商標)20を使用して、三回連続して洗浄を行い、非固定化合物を除去した。最後の検出工程の間、リン酸4−メチルウンベリフェリル基質が吸い出され、コーンに送達された。結合体の酵素は、基質を4−メチルウンベリフェリルへと加水分解する反応を触媒する。反応により発せられる蛍光は450ナノメートル(nm)で測定された。蛍光信号の値は、試料中の抗原の濃度に反比例する。
【0092】
下記表1は、3種のヒト血清溶液について、Vidas(登録商標)機によって測定された蛍光信号(RFV)を、使用した解離溶液の関数としてまとめたものである。各実験構成ごとに、独立した測定を4回行った。
【0093】
【表1】
【0094】
アルコールを加えることにより、再現性が向上する(信号対雑音比が上昇し、CV%が低下する)とともに、解離性も向上する(%信号比が低下する)ことが分かる。
【0095】
実施例2 各種アルコールの比較
本実施例に使用された解離溶液は、pH7.2のPBS緩衝液中で、実施例1に記載の方法で調製した。フルオロアルキル界面活性剤及びアルコールの性質及び濃度は、表2及び3に記載の通りに変更した。
【0096】
その他の手順は、実施例1と同様であった。
【0097】
表2:パーフルオロヘキサン酸の使用
比較解離溶液:PBS+1%パーフルオロヘキサン酸(アルコールなし)
【0098】
【表2-1】
【0099】
本発明の解離溶液:PBS+1%パーフルオロヘキサン酸+5%メタノール
【0100】
【表2-2】
【0101】
本発明の解離溶液:PBS+1%パーフルオロヘキサン酸+5%エタノール
【0102】
【表2-3】
【0103】
本発明の解離溶液:PBS+1%パーフルオロヘキサン酸+5%イソプロパノール
【0104】
【表2-4】
【0105】
アルコールの種類に関わらず、アルコールを添加することで解離が促進される(%信号比が低下する)ことが分かった。
【0106】
表3:パーフルオロオクタン酸の使用
比較解離溶液:PBS+0.75%パーフルオロオクタン酸(アルコールなし)
【0107】
【表3-1】
【0108】
解離溶液:PBS+0.75%パーフルオロオクタン酸+5%メタノール
【0109】
【表3-2】
【0110】
解離溶液:PBS+0.75%パーフルオロオクタン酸+5%エタノール
【0111】
【表3-3】
【0112】
アルコールの種類に関わらず、アルコールを添加することで解離が促進される(%信号比が低下する)ことが分かった。
【0113】
実施例3 パーフルオロアルキル酸濃度の影響
この実施例で使用される解離溶液は、pH7.2のPBS緩衝液中で、実施例1に記載の方法で調製した。
【0114】
その他の手段は、実施例1と同様であった。
【0115】
【表4】
【0116】
どの条件であっても、アルコールの存在下で解離性が向上することが分かる。パーフルオロアルキル酸の濃度を高くすることで、解離性が更に向上する。
【0117】
実施例4 アルコール濃度の影響
本実施例で使用される解離溶液は、pH7.2のPBS緩衝液中で、実施例1に記載の方法で調製した。フルオロアルキル界面活性剤及びアルコールの性質及び濃度は、表5に記載の通りに変更した。アンモニウムパーフルオロオクタン酸は固体であるので、その割合は、溶液の全体積に対するアンモニウムパーフルオロオクタン酸の重量で表される。
【0118】
その他の手段は、実施例1と同様であった。
【0119】
【表5】
【0120】
メタノール濃度が高くなるほど解離性は向上するが、濃度が高すぎると、再現性が低下する場合があることが分かった。したがって、当業者は、メタノール濃度を調整し、パーフルオロアルキル界面活性剤の量とアルコールの量との妥協点を見出す必要がある。
【0121】
実施例5 Pluronic(登録商標)F−127の添加
本実施例で使用される本発明の解離溶液は、フルオロアルキル界面活性剤が1.5%パーフルオロヘキサン酸であったことと、アルコールが5%メタノールであったこと以外は、実施例1に記載の方法でpH7.5の50mMトリス緩衝液中で調製した。Pluronic(登録商標)F−127は、濃度0.25%のものを使用したか、全く使用されなかった。結果を下記表6に示す。
【0122】
その他の手段は、実施例1と同様であった。
【0123】
【表6】
【0124】
Pluronic(登録商標)F−127等の追加の界面活性剤を添加することで、再現性が向上する(CV%が低下する)ことが分かった。ビタミンDの濃度が高い試料のほうが、再現性の向上が大きかった。
【0125】
実施例6 使用する緩衝液の影響
比較用解離溶液、及び、本実施例で使用されるPBSを含む本発明の解離溶液を、実施例1に記載の方法でpH7.2のPBS緩衝液中で調製した。フルオロアルキル界面活性剤及びアルコールを使用する場合、その性質及び濃度は、表7(比較用溶液)及び表9(本発明の溶液)に記載の通りである。
【0126】
トリス含有と記載の比較用解離溶液及び本発明の解離溶液は、50mMトリスとフルオロアルキル界面活性剤とを含有し、アルコール含有のものもあった。これら成分を、約30分間撹拌して脱塩水に溶解した。pHは、6N NaOHを使用して7.5に調整した。フルオロアルキル界面活性剤及びアルコールを使用する場合、その性質及び濃度は、表8(比較用溶液)及び表9(本発明の溶液)に記載の通りである。
【0127】
比較用解離溶液:PBS+1.5%パーフルオロヘキサン酸
【0128】
【表7】
【0129】
比較用解離溶液:トリス+1.5%パーフルオロヘキサン酸
【0130】
【表8】
【0131】
本発明の解離溶液:PBS緩衝液又はトリス緩衝液+1.5%パーフルオロヘキサン酸+5%メタノール
【0132】
【表9】
【0133】
緩衝液の性質は、RFV比に対して大きな影響はなく、得られる解離にも大きな影響はなかったことが分かる。
【0134】
1つの図面に、両方の緩衝液(PBS緩衝液及びトリス緩衝液)について、分析物のng/mL範囲に対するB/B0%比測定値を示す。B/B0%比は、実験したポイント範囲で得られた信号を分析物0ng/mLのポイント範囲で得られた信号で除し、100を乗じた値である。
【0135】
解離の観点からも、再現性の観点からも、得られた結果が、使用する緩衝液の選択により大きく影響されることはなかったことが分かる。
図1