(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つの弦状平面につき3つの経路を備え、2つの経路上の伝達がトランスデューサ間で直接のものであり、1つの経路が、弦状平面の2つの横断部と1つの反射点とを備える反射経路であり、各横断部は、前記2つの縁部をつなぐ、請求項7に記載の超音波流量計。
【背景技術】
【0002】
本節は、本発明のさまざまな態様に関係し得る技術分野のさまざまな側面を読者に紹介することを意図したものである。以下の論述は、本発明を容易により良く理解できるようにするための情報を提供するよう意図されている。したがって、以下の論述における説明はこの観点で読み取るべきものであって、先行技術を認容するものとして読み取るべきではないということを理解しなければならない。
【0003】
通過時間超音波流量計は、広範囲の適用条件にわたって高精度な性能を有する。このため、炭化水素の管理輸送および原子力給水流量の測定などの利用分野においてこれらの流量計が採用されてきた。
【0004】
高い精度を達成するために、通過時間超音波流量計が複数のトランスデューサ対を用いて、多くの別々の経路上の速度を推定するのが一般的である。次に、複数の速度測定値が幾何形状情報とあわせて組合わされて、容積流速の尺度を生成することができる。
【0005】
多くの利用分野において、超音波測定器の2つの特徴が特に魅力的である。第1に、超音波測定器は、非侵入型となるように、すなわち、流れに対する遮断を全く提示しないように設計することができ、その結果、生成される圧力損失は取るに足らないものである。第2に、超音波測定器の自己診断能力は、実用上またはコスト上の理由から日常的な現場較正が困難である利用分野において、魅力的である。
【0006】
現在、通過時間超音波測定器の自己診断能力は、増幅器利得、信号対雑音比、ならびに、平担度、非対称性および渦流などの速度プロフィールを表す要素などのパラメータの評価に基づいている。[Peterson,S、Lightbody,C、Trail,J、およびCoughlan,L(2008)「On−line condition based monitoring of gas USM’s, Proceedings of the North Sea Flow Measurement Workshop」、Scotland,Oct.2008;Kneisley,G、Lansing,J、Dietz,T.(2009)「Ultrasonic meter condition based monitoring − a fully automated solution,Proceedings of the North Sea Flow Measurement Workshop」、Norway,Oct.2009]。しかしながら、これらのパラメータは、流量測定の不確実性に直接関係付けすることが困難であることから、現在のところ、流量計の確認手段として計測器診断を単独で使用することは不充分であるとみなされている。例えば、英国では、海底油田およびガス田測定調整器の測定指針は、現行の診断技術の利益を認知しながらも、これらの技術には、「診断設備が現在のところ定量的ではなくむしろ定性的である」という欠点があることを指摘している。[Department of Trade and Industry、Licensing and Consents Unit、Guidance Notes for Petroleum Measurement Under the Petroleum(Production) Regulations、December 2003、Issue7.]。この制限を克服するために、2つの流量計を直列で、すなわち一方の流量計の下流側短距離のところに他方の流量計を置いた状態で設置する場合がある。これにより、2つの流量計からの容積流速を互いに比較することができ、その結果、確認は定性的ではなくむしろ定量的なものになる。さらに一歩踏み出してこの概念を取り上げて、単一の測定器本体内に設置された2つの独立したトランスデューサのサブセットを用いて2つの独立した流速測定値を計算することも同様に公知である。
【0007】
このような計測器設計の一例は、
図1に例示されている4経路計測器と単経路計測器の組合せである[Kneisley,G、Lansing,J、Dietz,T(2009)、「Ultrasonic meter condition based monitoring − a fully automated solution,Proceedings of the North Sea Flow Measurement Workshop」、Norway,Oct.2009]。この設計の欠点は、単経路計測器が、4経路計測器に比べて流れの速度場の歪みに対してはるかに感度が高いという点にある。この感度の相違は、差分が検出された場合、4経路計測器に対しては無視できるほどの効果しかない流れの場の歪みにより単経路計測器が影響を受ける可能性があることを意味している。一次測定として4経路計測器が使用される場合、その結果として、誤った警報がもたらされる可能性がある。すなわち検出された相違は、4経路計測器の精度の低下を反映しない。例えば、参照された論文中では、計測器の上流側の流れ調節器の1つの孔が遮断されている場合、4経路計測器には事実上全く影響が無いが、一方、単経路計測器に対する影響は0.85%より大きくなり得ることが示されている。例えば、4経路と単経路との結果間の差分として0.5%の警報閾値を設定した場合、実際には4経路計測器が正確に読取り続けている場合でも警報が告知される結果となる。
【0008】
この概念の他の例としては、
図2a、
図2b、
図3aおよび
図3bに示されているもののような、2つの類似しているものの別個の超音波経路群の使用がある。
図2aおよび
図2bは、4つの経路の1セットが全てパイプ軸に対して第1の角度で設定され、4つの経路の第2のセットが全てこの角度の負の値に設定されており、これにより、上から見たときに経路がパイプ軸を中心にして対称なX字を形成することになる、8つの経路の配置を示している。この例において、4つの経路の第1のセットは、1、2、3および4であり、第2のセットは5、6、7、および8であり得る。
図3では、4つの経路の各々の独立したセットが、パイプ軸に対して交互に選択された経路を有する代替的配置が使用されている。
図3aおよび
図3bにおいて、4つの経路の第1のセットはA1、B1、C1およびD1であり、第2のセットはA2、B2、C2およびD2であり得る。しかしながら、図示された配置は両方共、特に非対称回転などの複雑な非軸流の場が存在する場合に4つの経路の各群がなおも流れの速度場の歪みによって異なる形で影響を受けるという点において、共通の弱点を有している。このような場合に発生するのは、4つの経路の一方の群が、流速を過大評価する結果を生み出し、他方の群が流速を過小評価することである。このことは、流れ条件を診断する上で幾分か有用ではあるものの、測定システム自体の誤差と、流れの速度場により作り出される差異とを区別するのが困難であることから、計測器確認プロセスを複雑にする。
【0009】
この制限は、横断流成分を低減させるために流量計の上流側に設置される機械的流れ調節要素を使用することによって規模を削減できるものの、これによって、非侵入型計測器設計の利益は失われる。
【0010】
図2a、
図2b、
図3aおよび
図3bに示されているものなどの超音波経路の2つの類似の群を用いる概念のさらなる欠点は、流れ調節器が使用される場合であっても、一部の問題は検出または定量化が困難であり得るということにある。例えば、計測器本体の内部に均一な汚染の堆積が発生した場合には、4つの経路の各セットに由来する出力は同等に影響を受け得、問題の検出は、流速の差分が全く標示されないことから、増幅器利得、速度プロフィール形状または音速比較などの定性的診断に頼らなければならなくなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面では、本発明の好ましい実施形態および本発明の好ましい実施方法が例示されている。
【0013】
【
図1】先行技術の1つの本体内の4経路および単経路計測器の組合せを示す。
【
図2a】先行技術の1つの本体内の4経路計測器の2つの異なる組合せを示す。
【
図2b】先行技術の1つの本体内の4経路計測器の2つの異なる組合せを示す。
【
図3a】先行技術の1つの本体内の4経路計測器の2つの異なる組合せを示す。
【
図3b】先行技術の1つの本体内の4経路計測器の2つの異なる組合せを示す。
【
図5a】軸流速度および横断速度の成分が示された状態の、通過時間測定原理の例示である。
【
図5b】軸流速度および横断速度の成分が示された状態の、通過時間測定原理の例示である。
【
図7a】本発明の一実施形態に係る1つの弦状平面内のトランスデューサと反射体の配置を示す。
【
図7b】本発明の一実施形態に係る1つの弦状平面内のトランスデューサと反射体の配置を示す。
【
図8a】本発明の1つの好ましい実施形態に係る1つの弦状平面内で直接経路を形成するトランスデューサの配置を示す。
【
図8b】本発明の1つの好ましい実施形態に係る1つの弦状平面内で直接経路を形成するトランスデューサの配置を示す。
【
図9a】本発明に係る1つの弦状平面内で2つの直接経路と1つの反射経路を形成するトランスデューサおよび反射体の配置を示す。
【
図9b】本発明に係る1つの弦状平面内で2つの直接経路と1つの反射経路を形成するトランスデューサおよび反射体の配置を示す。
図10a〜10fは、ノードの合計数が5、4または3まで削減できるように2つ以上の経路によって一部が共用されている、トランスデューサおよび反射体のさまざまな配置を示す。
【
図10a】3つの経路全てにより共用されている1つのトランスデューサを備える単一の弦状平面内の3つの直接経路を示す。
【
図10b】両方の経路により共用される1つのトランスデューサを備える、2つの反射経路を示す。
【
図10c】両方の経路により共用される反射体を備える、2つの反射経路を示す。
【
図10d】2つの経路により共用される1つのトランスデューサと、別の共用ノードである組合せ型トランスデューサ/反射体とを備える、2つの直接経路および1つの反射経路を示す。
【
図10e】2つの経路により各々共用されている3つのトランスデューサを備える、2つの直接経路および1つの反射経路を示す。
【
図10f】各々2つの経路により共用されている2つのトランスデューサおよび、3つの経路全てにより共用されているノードである組合せ型トランスデューサ/反射体を備える、2つの直接経路と1つの反射経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで複数の図全体を通して同じ参照番号が類似のまたは同一の部品を意味している図面、より特定的にはそのうちの
図4、
図5、
図6、
図7aおよび
図7bを参照すると、導管26内の流体流量を測定するための超音波流量計10が示されている。流量計10は、2つ以上の弦状測定平面16内に共通して配置される音響伝達経路14を形成するように配置された複数のトランスデューサ対12を含み、各平面の長さ対幅比は、2.5未満である。各弦状測定平面内で、弦状測定平面内に位置設定されたトランスデューサ対12は、平面の一方の側18から平面の他方の側20まで少なくとも一回横断する音響伝達経路14を形成するように配置されている。全ての経路14がトランスデューサ対の一方のトランスデューサ22から別のトランスデューサ22までの直接経路である場合には、各弦状平面内には最低3つの横断部が存在し、いずれかの経路14が反射点28を使用する場合には最低4つの横断部が存在し、これにより、いずれの場合においても各弦状平面内の経路14の数および横断部の数の合計が6以上となっている。流量計10は、トランスデューサ22に必要な信号を生成させ、トランスデューサ22により生成された信号を受信し、必要な信号処理および計算を実施するための信号プロセッサ30を有する。このような信号プロセッサ30は、Caldon LEFMシリーズの流量計用に現在Cameron Internationalが生産しているものと類似のものであり得る。
【0015】
超音波流量計10は、弦状平面1つにつき3つの経路14を有していてよく、伝達は個別のトランスデューサ22間の直接経路上で行なわれる。超音波流量計10は、弦状平面1つにつき2つの経路14を有していてよく、各経路は、弦状平面の2つの横断部と2つの経路14の各々の中の1つの反射とを備えた反射経路である。超音波流量計10は、1つの弦状平面につき3つの経路14を有していてよく、2つの経路14上の伝達は、トランスデューサ22間での直接のものであり、1つの経路は、弦状平面の2つの横断部と1つの反射点とを備える反射経路である。
【0016】
本発明は、導管26内の流体流量を測定するための超音波流量計10に関する。流量計10は、導管26の2つ以上の弦状測定平面16内に共通して配置される経路14を形成するように配置された複数のトランスデューサ対12を含む。各弦状測定平面内でトランスデューサ対12のトランスデューサ22は、平面の一方の側18から他方の側まで少なくとも一回横断する音響経路14を形成するように配置されており、少なくとも一方の経路は、その特定の弦状平面内で他方の経路14に対して異なる経路長または角度を有し、そのため、導管26の軸に対する角度の余弦状で除した経路長がその同じ平面内の別の経路と異なるようになっている。
【0017】
本発明は、導管26内の流体流量を測定するための超音波流量計10に関する。流量計10は、経路14が各弦状測定平面内で最低3つの横断部を形成するような形で、導管26の2つ以上の弦状測定平面16内に共通して配置される経路14を形成するように配置された複数のトランスデューサ対12を含む。
【0018】
超音波流量計10は、弦状平面1つにつき3つの直接経路14を有していてよく、これにより、第1の経路14の対(AおよびB)が、平面内の軸流速度測定の計算において使用され、第2の平面内軸流速度測定は、この第1の経路の対に属する経路の1つと第3の経路を用いて行なわれ、そのため第2の経路の対はA+CまたはB+Cとして定義される。
【0019】
超音波流量計10は、弦状平面1つにつき3つの直接経路14を有していてよく、これにより、2つの平面内軸流速度測定は、下記方程式にしたがって各平面内で行なわれる。
【0022】
これらの方程式の他の表現も可能である。したがって、重要なのは、使用される最終方程式の特定の形態ではなく、解の中の横断速度を削除するための連立方程式の解である。
【0023】
本発明は、導管20内の流体流量を測定するための超音波流量計10に関する。流量計10は、2つ以上の弦状測定平面16内に共通して配置される音響伝達経路14を形成するように配置された複数のトランスデューサ対12を含む。経路14を含む弦状平面16の長さは、平面16の幅の2.5倍未満である。各弦状測定平面16内で、弦状測定平面16内に配置されたトランスデューサ対12は、平面16の一方の側から平面15の他方の側まで少なくとも一回横断する音響伝達経路14を形成するように配置されている。各トランスデューサ22または反射点28が1つの経路ノードを画定する。弦状平面16あたりのノード数は6以上である。
【0024】
任意のノードが1つ以上の経路間で共用されている場合、ノードの合計数を相応して削減することができる。このことは、2つ以上の経路14のために共通の反射点28が使用される場合、または、2つ以上の経路14の終りで多方向トランスデューサ22が使用される場合にあてはまり得る。一例としては、3つの直接経路14が形成される弦状平面16であり得、3つの直接経路は、3つの経路14の各々の経路の一方の端部について、平面16の一方の側において1つの共用トランスデューサ22を使用し、3つの経路14の各経路の他方の端部について、平面16の他方の側において別個の複数のトランスデューサ22を使用することによって形成される。この場合、第2および第3の経路14が第1の経路14と1つのノードを共用していることから、ノード数は6から4に削減される。別の例としては、2つの反射経路14が形成される弦状平面16であり得、2つの反射経路は、2つの経路14の各経路の一方の端部について、1つの共用トランスデューサ22を、平面16のもう一方の側において、別個の複数の反射体28を、および各経路14の他方の端部において、別個の複数のトランスデューサ22を使用することによって形成される。この場合、第2の経路14は第1の経路14と1つのノードを共用していることから、ノード数は6から5に削減されることになる。さらに別の例としては、2つの反射経路14が形成される弦状平面16であり得、2つの反射経路14は、平面16の一方の側で2つの経路14の各端部について、4つの別個のトランスデューサ22を、および平面16の他方の側において1つの共用反射体28を使用することによって形成される。この場合、第2の経路14は第1の経路14と1つのノードを共用していることから、ノード数は同様に6から5に削減されることになる。
【0025】
弦状平面16内に3つの経路14が存在し、2つの経路14上の伝達がトランスデューサ22間で直接のものであり、1つの経路14が、弦状平面16の2つの横断部を備える反射経路14である場合、2つの直接経路14が一方の端部で互いの間で1つのトランスデューサノードを共用し、直接経路トランスデューサのもう一方が同様に反射経路のための反射体として機能するならば、ノード数は7から5に削減され得る。
【0026】
弦状平面16内に3つの経路14が存在し、2つの経路14上での伝達がトランスデューサ22間で直接のものであり、1つの経路14が反射経路14である別の場合においては、2つの直接経路14が1方の端部で互いの間で1つのトランスデューサノードを共用し、各々が、平面の他方の側で、反射経路14の一方または他方の端部と1つのトランスデューサノードを共用するならば、ノード数は7から4に削減され得る。
【0027】
弦状平面16内に3つの経路14が存在し、2つの経路14上での伝達がトランスデューサ22間で直接のものであり、1つの経路14が反射経路14である別の場合においては、2つの直接経路14が各々、反射経路14と1つのトランスデューサノードを共用し、第3の共用トランスデューサノードが両方の経路に機能し、反射経路14のための反射体28としても機能するならば、ノード数は7から3に削減され得る。
【0028】
本発明は、超音波流量計10を用いて導管26内の流体流量を測定する方法に関する。方法は、2つ以上の弦状測定平面16内に共通して配置される音響伝達経路14を、導管26に対して配置される複数のトランスデューサ対12を用いて形成するステップを含み、各弦状平面は2.5未満の長さ対幅比を有する。各弦状測定平面内で、弦状測定平面内に位置設定されたトランスデューサ対12は、平面の一方の側18から平面の他方の側20まで少なくとも一回横断する音響伝達経路14を形成するように配置されている。全ての経路14がトランスデューサ対の一方のトランスデューサ22から他方のトランスデューサ22までの直接経路である場合には、各弦状平面内に最低3つの横断部が所望され、いずれかの経路14が1つの反射点28を使用する場合には最低4つの横断部が所望され、これにより、いずれの場合においても各弦状平面内の経路14の数および横断部の数の合計が6以上となる。経路14に沿って伝達した後、トランスデューサ22が受信した信号に基づいて、導管26内の流体流量を決定するステップが存在する。
【0029】
本発明は、導管26内の流体流量を決定するための、自己チェック機能のある流量計10に関する。流量計10は、導管26と係合した複数のトランスデューサ22を備える。流量計10は、トランスデューサ22と電気通信状態にある信号プロセッサ30を備え、この信号プロセッサ30は、流動する流体を通してトランスデューサ22に音響信号を伝達させるか、または、トランスデューサ22が受信する伝達された音響信号に基づいてトランスデューサ22から流量信号を受信させ、音響信号に基づいて、流速測定値と、測定される流速の精度に影響を及ぼし得る変化に起因する関連する不確実性の推定値と、を生成する。
【0030】
信号プロセッサ30は、非対称回転流を含む複雑な非軸流の存在下での正確な自己確認のために流量計10の各弦状測定平面内における軸流速度の確認を提供することができ、かつ、相違がある場合には、どの弦状測定平面が相違の一因となったかの識別を提供する。トランスデューサ22は、軸流速度の2つ以上の測定を流量計10の各々の弦状測定平面内で行なうことができ、これにより、各々の弦状測定平面内で行なわれる2回以上の平面内軸方向測定が、非軸流または横断流の影響とは実質的に独立したものとなるように、配置されている。これが効果的に作用するためには、全ての経路は、密に間隔取りされて、軸方向での流れの回転および発達が有意な効果を及ぼさないようになっていなければならない。換言すると、経路の離隔距離が過度に大きい場合、同じ弦状平面内の別個の経路における速度プロフィールおよび渦流パターンは異なるものとなり、速度の軸方向および横断方向要素が弦状平面内の各経路において同じであることを仮定することができない。したがって、経路は好ましくは重複すべきであるか、または弦状平面の長さがその幅の2.5倍未満でなくてはならない。
【0031】
信号プロセッサ30は、流量計10の内部の汚染堆積の結果としてもたらされ得る経路角度および経路長の変化を検出することができ、これを、別の弦状測定平面由来のデータを参照することなく各弦状測定平面について行なう。トランスデューサ22は、2つ以上の弦状測定平面16内に共通して配置される音響伝達経路14を形成するように配置された複数のトランスデューサ対12を形成してよく、各弦状測定平面内で、弦状測定平面内に位置設定されたトランスデューサ対12は、平面の一方の側18から平面の他方の側20まで少なくとも一回横断する音響伝達経路14を形成するように配置されており、全ての経路14がトランスデューサ対の一方のトランスデューサ22から別のトランスデューサ22までの直接経路である場合には、各弦状平面内には最低3つの横断部が所望され、いずれかの経路14が反射点28を使用する場合には、最低4つの横断部が所望され、これにより、いずれの場合においても各弦状平面内の経路14の数および横断部の数の合計が6以上となる。
【0032】
本発明の測定システムは、複数の超音波トランスデューサ22を収容する導管26の一区分を含み、各トランスデューサ22は、導管の内部で経路14に沿って超音波通過時間を測定するために少なくとも1つの他のトランスデューサ22と併用される。トランスデューサ22は、全ての経路14が一定数の別々の弦状測定平面16内に入るように配置されている。このような状況において、弦状測定平面は、
図4に示されるように、導管の境界上の2つの点と交差し、導管の中心軸24と平行であり、かつ、2.5未満の長さ対幅比を有する平面である。
【0033】
直接経路または反射経路14のいずれかまたはその両方の組合せを使用することができる。直接経路においては、超音波信号は、反射点を介した方向転換無く、トランスデューサ22間を伝わる。反射経路内では、経路は、反射による導管26の内部の2つ以上の横断部で構成されている。反射経路には、導管との交差点における反射体の設置が必要となるかもしれず、または、反射体として導管26の壁を使用してもよい。したがって、直接経路には弦状測定平面を横切る唯一つの横断部が含まれ、一方、反射経路には複数の横断部が含まれる。本発明は、各々の軸流速度値が平面に対する横断方向のいかなる速度成分にも実質的に影響されないような形で導出される、少なくとも2つの軸流速度値を各弦状測定平面について得るために、通過時間測定が使用されるという点において、先行技術と異なっている。このことは、各弦状測定平面内の経路14の構成に対し一定の条件を課す。各弦状平面内に所望される経路14および横断部の数に関しては、反射経路14だけが使用されるのであれば、2つの経路について各々2つの横断部が最小要件である。任意の直接経路が使用される場合には、3つ以上の経路と3つ以上の横断部が所望される。
【0034】
図5aおよび
図5bを参照すると、いくつかの仮定を用いて、1つの超音波経路の単一の横断部に関連付られた通過時間を、以下の通りに表現できることを示すことができる:
【0037】
式中、Lは横断部の長さ、cは音速、v
axialは軸方向の速度成分、v
transverseは弦状測定平面内で軸方向に対し90度の速度成分、および、θは有効経路角度である。1つの個別経路について計算上の速度項νを導入すると、以下のように表わすことができる。
【0039】
ここで、
図6に示されているように3つの直接経路の例を使用すると、以下のように表わすことができる。
【0043】
式中、XおよびZは、断面および軸平面上の投影経路長であり、下付き文字はそれぞれ経路A、BおよびCを意味する。
【0044】
2つの連立方程式および2つの未知数の系を用いて、2つの未知数について解くことが可能である。この場合、3つの方程式が存在し、したがって、データの複数の組合せから特定の弦状平面についてのv
axialとv
transverseを得ることができる。例えば、v
axialABが、経路AおよびBからの測定値を用いて計算された軸流速度を表わすものとして示され、v
axialBCが、経路BおよびCの測定値を用いて計算された軸流速度を表わすものとして示されている場合には、上述の方程式を以下のように解くことができる。
【0047】
これにより、その特定の弦状測定平面内の軸流速度の2つの尺度(これを「平面内軸流」速度と呼ぶ)が得られ、これらは両方共、平面内の横断速度とは独立したものである。このことはすなわち、平面内軸流速度の計算値間のあらゆる差分が、方程式の通過時間測定値の項または幾何学項のいずれかにおける誤差を浮き彫りにするものであり、横断流による影響を受けるものでないということを意味する。この特定の例においては、第3の平面内軸流速度v
axialACも計算できるということに留意されたい。
【0048】
埋め込み式トランスデューサおよび時間遅延補正の内含などの実際的な問題を含み入れるための適応を含むより複雑な仮定についても、類似の成果を得ることができる。さらに、横断流の相殺を個別の経路の内部で行なうことのできる、反射経路についての類似の処理を実施することが可能である。
【0049】
各平面内の軸流速度の計算は、ここで以下のように進められる。
【0051】
式中、f
1は測定値を組合せるために使用される関数を表わす。すなわち弦状測定平面iについての軸流速度は、その特定の平面内で得られる平面内軸流速度測定値の全てから導出され、したがって、その平面内に存在する経路14由来の全ての測定値を使用する。平面内軸流速度を組合せる1つの好ましい方法は、単純平均を実行することである。しかしながら、本発明の趣旨から逸脱すること無く、平面内軸流速度の各々に対して重み付け因子を適用することまたは使用すべき経路組合せを1つだけ選択することなどのより複雑な方法を使用することも可能である。
【0052】
次に、例えば以下のように、任意の所望される幾何学的因子および/または較正因子と共に、測定平面16の各々からの軸流速度測定値(これを今後「平面速度」と呼ぶ)を共に組合せることにより、流速が計算される。
【0054】
式中、k
hは水力学的補正因子を表わし、k
gは幾何学的因子を表わし、f
2は、軸流速度測定値を組合せて代表的平均を得るために使用されるスキームを表わす。これには、例えば、ガウス求積法などのスキームが含まれ得、この場合、測定平面16は、平面16の数によって予め決定された場所に互いに平行に配置され、次に、例えば以下のように、平面速度が適切に重み付けされる。
【0056】
代替的には、平面速度の実験的なまたはモデルに基づく組合せを使用することができる。
【0057】
測定システムの精度に影響を及ぼし得る変化に起因する不確実性を決定するためには、平面内軸流速度間の差分を、各測定平面について計算する。再び1平面につき3つの直接経路14の例を使用すると、例えば以下のように、平面内軸流速度についての3つの差分値を計算することが可能である。
【0061】
したがって平面速度の不確実性は、関数的に差分値に関係づけされる:
【数17】
【0062】
代替的には、差分値を使用する代りに、代替的な計算方法を応用することができ、例えば平面内軸流速度の比率または標準偏差を不確実性の推定に対する入力として使用できる。
【0063】
不確実性の推定は、例により容易に説明できる。この単純な例では、測定平面内の軸流速度は、75、60および45度の角度で3つの直接経路14を用いて計算される。これは、計測器10の1つの平面のみを表わしており、その結果を後で他の平面16と組合せて流速および全体的な不確実性が決定されることになるということに留意されたい。この例についての計算においては、以下のパラメータが使用される。
測定平面内の軸流速度 10m/s
測定平面内の横断速度 1m/s
流体中の音速 1500m/s
測定平面の幅 0.1m
【0064】
以下の表1は、誤差無く作動するシステムの場合の測定結果を示している。平面内軸流速度は、経路A、BおよびCの3つの別個の組合せから計算される。誤差は存在せず、横断速度は平面内速度の計算において削除されることから、組合せAB、BCおよびACについての3つの結果は同じであり、したがって、それらを互いに比較した場合、計算上のデルタは、平面速度内の誤差と同様、ゼロである。
【0066】
ここで、2ナノ秒の誤差を、経路A上で上流側通過時間測定値(tup)に導入することができる。表2に示されているように、ここで、平面内軸流速度AB、ACおよびBCを計算した場合、3つの異なる結果が得られる。今や平面速度結果に誤差が存在することも分かる。平面内軸流速度測定値を比較した場合のデルタを調べてみると、この特定の場合については最大偏差(AB対BC)が平均軸流速度の誤差の2倍の大きさを有することが分かる。したがって、感度係数により不確実性に直接関連付けすることのできる測定上の偏差が存在する。
【0068】
一般的に、平面速度が複数の平面内軸流速度から計算されることの結果として、デルタ値は平面速度内の誤差を上回る。しかしながら、一部の状況下では、2つ以上の誤差が存在する場合、それらが組合わさって、感度係数を改変し得る可能性がある。このような状況に対する追加の情報および幾分かの保護を提供するため、平面内横断速度を計算し、比較し、不確実性の推定において使用することもできる。本明細書の最初の部分から追い続けると、横断速度は、以下のように計算可能である。
【0070】
ここで展開した技術は、当業者によって多くの異なる形で実施可能である。以下の説明では可能な実施のほんの一部が網羅されているにすぎない。
【0071】
図7aおよび
図7bに示された実施においては、弦状平面が2つの経路14を含み、その各々が単一の反射および2つの横断部を有する。本発明に係る共通モード誤差の検出を可能にするため、各経路について異なる角度が選択された。この構成において、各経路は、平面内軸流速度測定値を直接もたらす。したがって、その測定平面内の不確実性を決定するための2つの経路14の比較は、この場合、本発明の目的に役立つ。各反射経路が、流れの非軸方向成分の測定に対する寄与を無効にすることから、この特定の構成が有する1つの相対的欠点は、軸流速度の分析を補足するために利用可能な非軸流の測定値が無いという点にある。
【0072】
図8aおよび
図8bに示された実施においては、弦状平面は、反射無しで、3つの直接単一横断経路を含む。ここでもまた、共通モード誤差の検出を可能にするため、これらの経路について異なる経路角度が選択された。この構成では、任意の経路14対を組合せて、軸流および非軸流速度の両方をもたらすことができ、このことは、
図7aおよび
図7bの実施形態と比べた場合1つの利点であり、したがって、
図8aおよび
図8b中の配置が好ましい。
【0073】
図9aおよび
図9bは、1つの弦状平面内での反射経路と直接経路との組合せを示す。この場合、2つの直接経路と1つの反射経路とが存在する。2つの直接経路を組合せて平面内軸流速度の1つの尺度を提供することができ、反射経路は別の尺度をもたらす。さらに再び、異なる経路角度および経路長を使用することで、共通モード誤差の検出が容易になる。
【0074】
先の実施例の各々において、横断流速度とは実質的に独立したものである最低2つの平面内軸流速度の尺度が導出される。これを達成するためには、弦状平面は、横断の数プラス経路14の数の合計が6以上である経路14の配置を含んでいなければならない。例えば、
図7aおよび
図7bにおいては、各々2つの横断部を備える2つの経路が存在し、したがって横断部プラス経路の合計は6に等しい。同様にして、
図8aおよび
図8bにおいては、各々が単一横断部である3つの経路が存在し、したがって、横断部プラス経路の合計は6に等しい。直接経路および反射経路または複数の反射を含むより複雑な配置も同様に、本発明の趣旨から逸脱することなく可能である。
図9aおよび
図9bにおいては、3つの経路が存在し、そのうちの2つは単一横断部を有し、そのうちの1つは2つの横断部を有し、したがって、その場合の横断部プラス経路の合計は7である。
【0075】
同じ制約を示す代替的方法は、各トランスデューサ22または反射点28を弦状平面内の1つのノードとして考慮することである。その場合、
図7および
図8は、各々6つのノードを備える配置を示し、
図9は、7つのノードの配置を示し、したがって1つの弦状平面についてのノードの最小数は6である。7つ超のノードを備える配置は構想可能であるが、コストおよび複雑性が増す割に得るところは少ない。
【0076】
図10a〜
図10fは、ノードの合計数が5、4または3まで削減できるように2つ以上の経路によって一部が共用されている、トランスデューサ22と反射体28のさまざまな配置を示す。
図10aは、3つの経路14全てにより共用されている1つのトランスデューサ22を備え、所要ノード数を6から4に削減している、単一の弦状平面16内の3つの直接経路14を示す。
図10bは、両方の経路14により共用される1つのトランスデューサ22を備え所要ノード数を6から5に削減している、2つの反射経路14を示す。
図10cは、両方の経路14により共用される反射体28を備え、所要ノード数を6から5に削減している、2つの反射経路14を示す。
図10dは、2つの経路14により共用される1つのトランスデューサ22と、別の共用ノードである組合せ型トランスデューサ/反射体32とを備え、所要ノード数を7から5に削減している、2つの直接経路14および1つの反射経路14を示す。
図10eは、2つの経路14により各々共用されている3つのトランスデューサ22を備え、所要ノード数を7から3に削減している、2つの直接経路および1つの反射経路を示す。
図10fは、各々2つの経路14により共用されている2つのトランスデューサ14および3つの経路14全てにより共用されているノードである組合せ型トランスデューサ/反射体32を備え、所要ノード数を7から3に削減している、2つの直接経路14と1つの反射経路14を示す。
【0077】
単一の弦状平面内の全てのトランスデューサ22の面上の汚染の均一な堆積を検出する目的で、平面内軸流速度が比較される第2の実施例を以下に記す。この実施例では、直径40.64センチメートル(16インチ)の円形導管の半径の0.809倍の距離に位置する弦状平面を考慮している。先の数値例と同様、この実施例では、直線経路のみが使用される。選択された経路角度は45、65および−55度であり、経路長は、トランスデューサ22が、導管の内径に対してわずかに埋め込まれた状態となるように選択された。液体については1380m/sの音速値が仮定され、炭化水素のろう状物質の薄い層を表す汚染物質については2200m/sが仮定された。
【0078】
シミュレーションによって、予め、測定上の横断流の関数として、計算上の平面内速度間の差分と測定誤差とを関係づける感度因子を決定した。以下の表3は、軸流速度が5m/sであり、横断流がゼロであり、測定誤差または汚染堆積が無い場合の結果を示している。この表中、3つの平面内軸流速度が全て一致し、したがって推定不確実性がゼロであることが分かる。
【0080】
表4は、軸流速度が5m/sであり、横断流がゼロであり、各トランスデューサ22の面上に0.0508センチメートル(0.02インチ)のろう状物質堆積が存在する場合の結果を示す。この弦状平面内での速度測定値が0.2%の誤差内であり、平面内速度測定値間の差分を用いて0.19%の不確実性の増大を予測できることが分かる。
【0082】
表5は、軸流速度が5m/sであり、横断流が1m/sであり、測定誤差または汚染堆積が全く存在しない場合の結果を示す。個別に取り上げると、個別の経路(A、BおよびC)上の表示された速度が横断流のために異なっていること、そしてこれら3つの測定値を見ると、誤差が存在するか否かを判定するのが困難であり得ること、ただし、平面内速度を経路組合せAB、BCおよびACから計算した場合、3つの結果が一致し、分析の結果、付加的な不確実性はゼロであると推定されること、が分かる。
【0084】
表6は、軸流速度が5m/sであり、横断流が1m/sであり、各トランスデューサ22の面に0.0508センチメートル(0.02インチ)のろう状物質堆積が存在する場合の結果を示す。個別に取り上げると、横断流とろう状物質堆積との組合せの影響のせいで、個別の経路(A、BおよびC)上の表示された速度が異なっていること、そしてこれら3つの測定値を見ると、誤差が存在するか否かを判定するのが困難であり得ることが分る。しかしながら、平面内速度を経路組合せAB、BCおよびACから計算し比較した場合、3つの結果は正確に一致しておらず、不確実性分析の結果、付加的な不確実性は0.19%であると推定される。同様に、感度因子は、平面内速度間の測定上の差分と対応する測定不確実性との間の正しい関係を維持するために測定上の横断流の関数として調整されるパラメータであることから、表4と表6とにおいて異なっていることも分かる。
【0086】
実際には、本発明は、
図11に示されている各々内部に3つの経路を備える4つの弦状平面16の配置などの、複数の弦状平面16内で本発明を利用し得る高精度の計測器設計において実施される確率が最も高い。この図は、本発明の同じ実施形態が各平面内で使用されている状態(すなわち3つの直接経路)を示しているものの、
図7の配置が1つの平面内で使用され、
図8の配置が別の平面内で使用されている場合など、異なる組合せを使用することも同様に可能である。
【0087】
用語集:
弦状平面16:導管の境界上の2つの点と交差し、導管の中心軸24と平行である方向に延在する平面。
経路14:2つのトランスデューサ間の流体を通した超音波伝達の意図されたルート。
弦状経路:単一の弦状平面に限定された任意の経路。
直接経路:意図された伝達ルートが、直接2つのトランスデューサ間にあり、反射による方向転換を含まない経路。
反射経路:意図された伝達ルートが、1つ以上の反射点を介して2つのトランスデューサを結びつけている経路。反射点は、導管の壁自体であるかまたは、伝達ルートに沿って経路を幾分か方向転換するように設計された反射体のいずれかであり得る。
横断部:2つのトランスデューサ、2つの反射体または1つのトランスデューサと1つの反射体のいずれかである、任意の2つの点の間の弦状経路の直線セグメント。直接経路は、1つの横断部しか有しておらず、1つの反射を備える経路は2つの横断部を有し、2つの反射を備える経路は3つの横断部を有する。
ノード:横断部の一端部を画定するトランスデューサ部位または反射点。
平面内軸流速度:その平面内の任意の横断流成分からは実質的に独立している速度測定値を得るための、単一の弦状平面内での2つ以上の横断部の使用を含む、軸流速度の1つの尺度。
軸流速度:導管の中心軸24と平行な方向における流速の成分。
横断速度:弦状測定平面内の軸方向に対し90度を成す流速の成分。
【0088】
本発明について、以上の実施形態において例示を目的として詳述してきたが、このような詳細は例示のみを目的とするものであり、当業者であれば、以下の特許請求の範囲による本発明の説明を除いて本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、変形形態を作製することができるということを理解すべきである。