(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸性剤が、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、クエン酸、ホウ酸、酒石酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、尿酸、およびバルビツール酸からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
前記混合工程後の遠心分離工程をさらに含み、前記混合卵白を遠心分離にかけて、オボムチン-リゾチーム複合体を含む析出物を上清から分離させる、請求項1に記載の方法。
前記酸性緩衝液が、約8mS/cm〜約40mS/cmの導電率を有する、または卵白1キログラム当たり約0.5重量%〜約5重量%である、請求項17に記載の方法。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、少量の酸性緩衝液を(例えば、単回ボーラス注射で)、工業規模(例えば、少なくとも10リットルの容量を有する)の卵白(例えば、ニワトリ、ウズラおよびシチメンチョウなどの遺伝子組み換え鳥類により産卵された卵から得られる)のプールに添加すると、卵白の希釈なしで、ヒト治療用タンパク質などの組み換えタンパク質の卵白からのバルククロマトグラフ分離用に卵白を調製することができるという予想外の発見に基づいている。そのような方法は、終了段階での単離/精製プロセスにかけられる卵白原料の量(例えば、クロマトグラフ分離において使用されるカラムの量)を大幅に減らすことができ、これにより、組み換えタンパク質を卵白から単離する費用、労力、および時間を大幅に減らすことができる。したがって、本開示に記載される方法は、治療用タンパク質生産の大規模、工業的規模での卵白調製の効率を大幅に向上させることができる。
【0006】
一態様において、本開示は、(1)酸性剤を含む酸性緩衝液を卵白のプールに添加する工程であって、酸性緩衝液は、卵白1キログラム当たり約0.5重量%〜約5重量%である;および(2)酸性緩衝と卵白とを混合し、約5〜約6.5のpHを有する混合卵白を形成する工程を含む、バルククロマトグラフ処理用に卵白を調製する方法を特徴とする。
【0007】
別の態様において、本開示は、(1)組み換えタンパク質を含む卵白のプールを供給する工程であって、プールは少なくとも約10リットルの容量を有する;(2)卵白のpHを約5〜約6.5に調節する工程であって、pH調節卵白の導電率は約8mS/cm〜約20mS/cmである;(3)卵白をろ過し、溶液(すなわち、透明溶液)を形成する工程;および(4)カラムクロマトグラフィーにより、卵白中の組み換えタンパク質を単離する工程を含む、組み換えタンパク質を卵白から単離する方法を特徴とする。
【0008】
さらに別の態様において、本開示は、(1)約8mS/cm〜約20mS/cmの間の導電率を有する前処理緩衝液をフィルターに通過させる工程;および(2)約5〜約6.5のpHを有する卵白をフィルターに通過させ、ろ過卵白を得る工程を含む、酸性化卵白をろ過する方法を特徴とする。
【0009】
実施形態は、以下の特徴の一つ以上を含むことができる。
【0010】
酸性剤を、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、クエン酸、ホウ酸、酒石酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、尿酸、およびバルビツール酸からなる群より選択され得る。
【0011】
酸性緩衝液は、約5M〜約6M(例えば、約5.7M)の酢酸ナトリウムをさらに含むことができる。
【0012】
酸性緩衝液は、卵白1キログラム当たり約0.5重量%〜約2重量%(例えば、約0.7重量%〜約1.5重量%、約0.9重量%〜約1.4重量%、または約1.2重量%〜約1.3重量%)であることができる。
【0013】
酸性緩衝液は、約4〜約6.5のpH(例えば、約4、約4.5、約5、約5.5、約6.0、または約6.5)を有することができる。
【0014】
酸性緩衝液を卵白と混合した後、混合卵白のpHは、約5〜約6.5であることができる。いくつかの実施形態では、混合卵白のpHは5〜約6.3である(例えば、約5.7〜約6.3、約5.8〜約6.2、約5.9〜約6.1、または約6)。いくつかの実施形態では、混合卵白のpHは、混合卵白の粘度が最も低くなるような値である。
【0015】
卵白は、少なくとも約1時間および/または約2℃〜約25℃の温度で混合され得る。
【0016】
卵白プールは、少なくとも約10リットルの容量(例えば、少なくとも約50リットル)を有することができる。
【0017】
酸性緩衝液は、単回ボーラス注射でおよび/または少なくとも約1L/分の速度で卵白プールに添加され得る。
【0018】
酸性緩衝液の卵白への添加および卵白の混合を同時に実施することができる。
【0019】
本方法は、卵白が上層、中間層および下層に分離するように混合卵白を沈降させる工程をさらに含むことができる。そのような実施形態では、本方法は、中間層を単離する工程をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、単離工程後に、中間層をろ過することをさらに含むことができる。ろ過は、中間層の少なくとも一部(例えば、全て)を、約0.1μm〜約100μmの平均孔径を有するフィルターに通過させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、ろ過は、中間層の少なくとも一部を複数のフィルターに通過させることを含むことができる。
【0020】
本方法は、混合卵白を沈降させることなく、混合卵白をろ過することをさらに含むことができる。そのような実施形態では、ろ過工程は、混合卵白を、約0.1μm〜約100μmの平均孔径を有するフィルターに通してろ過することを含むことができる。いくつかの実施形態では、ろ過工程は、混合卵白の最初のろ過の後に続く1つ以上のろ過工程を含むことができ、後続の1つ以上のろ過工程は、約0.1μm〜約40μmの平均孔径を有する1つ以上のフィルターを使用する。
【0021】
本方法は、混合工程後の遠心分離工程をさらに含むことができ、混合卵白を遠心分離にかけて、オボムチン-リゾチーム複合体を含む析出物を上清から分離させる。
【0022】
卵白は、卵白にとって外来の組み換え治療用タンパク質を含むことができる。
【0023】
酸性緩衝液は、約8mS/cm〜約40mS/cmの導電率を有することができる。
【0024】
酸性緩衝液は、卵白1キログラム当たり約0.5重量%〜約5重量%であることができる。
【0025】
前処理緩衝液を使用して、酸性化卵白を通過させるためのフィルターを調製することができる。前処理緩衝液は、卵白のpHと実質的に類似または同じである、約5.0〜約6.5のpHを有することができる。例えば、前処理緩衝液は約5.9〜約6.1(例えば、約6)のpHを有することができる。
【0026】
前処理緩衝液は、リン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムを含むことができる。
【0027】
前処理緩衝液は、約10mS/cm〜約20mS/cmの導電率を有することができる。
【0028】
酸性化卵白は、約8mS/cm〜約20mS/cmの導電率を有することができる。
【0029】
フィルターは、少なくとも約8m
2のろ過媒体面積を有することができる。
【0030】
フィルターは、約0.1μm〜約100μmの平均孔径を有することができる。
【0031】
卵白は、約30psi未満(例えば、約15psi未満)の差圧下でフィルターを通過することができる。
【0032】
実施形態は、以下の利点を有することができる。
【0033】
一般的に、外来タンパク質の卵白からの単離/精製に使用されるクロマトグラフカラムは非常に高価であり、それは卵白からの組み換えタンパク質の商業および工業的規模の生産における大きな制限要因の一つとなり得る。ごく少量の酸性緩衝液を使用して酸性化卵白を得るため、精製された治療用タンパク質を得るのに使用される酸性化卵白の量は大幅に低下する(すなわち、従来の希釈法の少なくとも3〜4倍未満)。その結果、酸性化卵白を後続のカラムに充填するのに要する時間も大幅に短縮され、工業的プロセスにおける迅速なタンパク質産生を可能にする。また、いくつかの治療用タンパク質は、卵白調製および単離/精製プロセスの間に露出する環境に敏感であるため、試料容量を減少させることにより、調製および単離/精製プロセスに費やされる時間を最小限にすることは、通常500L以上の卵白容量を要する商業生産にとって非常に有利である。つまり、本明細書に記載の方法を使用することにより、処理時間、原料および労力を大幅に抑えることができる。
【0034】
その他の特徴、目的、および利点は、明細書および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示は、タンパク質(例えば、組み換えタンパク質)の卵白からのバルククロマトグラフ分離用に、卵白(例えば、遺伝子組み換えニワトリにより産卵された卵から得られる)を調製する効率的な方法、および卵白からタンパク質を単離する方法に関する。本明細書に記載の方法により調製される卵白は、通常、バルククロマトグラフ処理に適した、均質で低粘度の溶液の形態である。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法の出発原料として使用される卵白は、卵白にとって外来の組み換えタンパク質(例えば、組み換え治療用タンパク質)を含むことができる。典型的な組み換えタンパク質には、GC-SF、GM-CSF、エリスロポエチンなどのサイトカイン、およびインターフェロンαまたはインターフェロンβなどのインターフェロン;ヒトリソソーム酵素;免疫グロブリン(例えば抗体);ならびに構造タンパク質が挙げられる。バルククロマトグラフ処理から単離することができるその他の例示的な組み換えタンパク質は、例えば米国特許出願公開第2009/0299037号明細書に記載されている。
【0037】
一般的に、本明細書に記載の卵白調製方法は、(1)酸性剤を含む適切な量の酸性緩衝液(例えば、卵白1キログラム当たり約0.5重量%〜約5重量%)を、卵白のプール(例えば、少なくとも約10リットルの容量を有する)に添加すること;および(2)酸性緩衝液と卵白とを混合し、適切なpHを有する混合卵白(例えば、約5〜約6.5のpH)を形成することを含む。
【0038】
一般的に、本明細書に記載の方法において使用される卵白プールは、工業規模であり、比較的大きな容量を有する。例えば、卵白プールは、少なくとも約10リットルの容量を有することができる(例えば、少なくとも約50リットル、少なくとも約100リットル、少なくとも約200リットル、少なくとも約300リットル、少なくとも約400リットル、少なくとも約500リットル、少なくとも約600リットル、少なくとも約700リットル、少なくとも約800リットル、少なくとも約900リットル、少なくとも約1,000リットル、少なくとも約1,500リットル、少なくとも約2,000リットル、少なくとも約3,000リットル、少なくとも約4,000リットル、少なくとも約5,000リットル、少なくとも約10,000リットル、または少なくとも約20,000リットル)。本明細書に記載の方法において使用される卵白の出発原料としての調製方法は、例えば米国特許出願公開第2009/0299037号明細書に記載されている。
【0039】
酸性緩衝液中の酸性剤は、一般的に、任意の適切な酸(例えば、有機酸または無機酸)とすることができる。例示的な酸性剤には、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、クエン酸、ホウ酸、酒石酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、尿酸、およびバルビツール酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、2つ以上(例えば、3つまたは4つ)の酸の組み合わせを、酸性緩衝液中の酸性剤として使用することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、酸性緩衝液は、1つ以上の塩(例えば、アルカリ塩)を含むことができる。そのような塩の例には、酢酸ナトリウムを挙げることができる。いくつかの実施形態では、酸性緩衝液に使用される塩は、酸性緩衝液中で使用される酸性剤の塩であることができる。その他の実施形態では、酸性緩衝液に使用される塩は、酸性緩衝液中で使用される酸性剤とは異なる酸の塩であることができる。いくつかの実施形態では、酸性緩衝液は、約5M〜約6M(例えば、約5.7M)の塩(例えば、酢酸ナトリウム)を含むことができる。理論に縛られるものではないが、そのような濃度を有する塩を使用して、適切な量の緩衝液量を有する酸性緩衝液をもたらすことができると考えられている。緩衝液量が高すぎる場合、酸性緩衝液は可燃性および/または腐食性になり、緩衝液を維持、処理、および/または保管するのに安全でないものになる。緩衝液量が低すぎる場合、卵白のpHを目標値に調節するためにより多量の酸性緩衝液が必要となる可能性があり、それにより卵白調製プロセスだけでなく、終了段階でのタンパク質単離/精製プロセスの効率を低下させる。
【0041】
一般的に、酸性剤および酸性緩衝液中に使用される塩の量を、所望の酸性緩衝液のpHに応じて変えることができる。いくつかの実施形態では、酸性緩衝液は約4〜約6.5のpHを有することができる(例えば、約4〜約5または約4〜約4.5)。例えば、酸性緩衝液は、約4のpHまたは約4.5のpHを有することができる。
【0042】
酸性緩衝液は、当技術分野で知られている任意の適切な方法により形成することができる。例えば、塩基を含む溶液に酸性剤を添加し、溶液のpHを所望の値に調節することにより、酸性緩衝液を形成することができる。例えば、氷酢酸溶液を、適切な量のNaOHに添加し、5.7M酢酸ナトリウムを含む酸性緩衝液を得ることができる。
【0043】
一般的に、卵白の量に対する酸性緩衝液の量は少ない。例えば、酸性緩衝液は、卵白1キログラム当たり約0.5重量%〜約5重量%であることができる(例えば、約0.5重量%〜約2重量%、約0.7重量%〜1.5重量%、約0.9重量%〜約1.4重量%、約1重量%〜約1.4%、または約1.1重量%〜約1.3重量%)。従来、バルククロマトグラフ処理に適する均質で低粘度の卵白を作成する試みは、卵白容量の2〜5倍(すなわち200%〜500%)の容量を有する酸性緩衝液を添加することを必要とし、それは少量の酸性緩衝剤の添加が卵白のpHを目標値に調節するのに有効となり得るということが予期されていなかったためである。そのようなプロセスは、卵白調製プロセスで使用されるクロマトグラフカラムおよびその他の製造装置のサイズ制限のために、大きな製造規模では経済的に実用的または現実的ではない。思いがけなく、本発明者らは、バルククロマトグラフ処理に適した均質で低粘度の卵白を、卵白の量に対して少量の酸性緩衝液(例えば、卵白1キログラム当たり最大約5重量%)を添加することにより得ることができ、それによりクロマトグラフ分離処理で使用されるカラムの量、これらの処理で使用されるその他の装置のサイズ、ならびに組み換えタンパク質を卵白から単離する費用および時間を大幅に低減することを発見した。
【0044】
理論に縛られるものではないが、卵白の量に対して比較的少量の酸性緩衝液を追加することの付加的な利点には、(1)卵白のごくわずかな希釈、(2)導電率を本質的に変化させないことであって、これはオボムチン-リゾチーム複合体の卵白からの析出を可能にし、ひいてはより低いpH範囲(例えば、pH5〜6.5)で卵白の粘度を減少させ、ろ過およびクロマトグラフ処理の間に、望ましくない物質の卵白からの分離を容易にする、ならびに(3)組み換えタンパク質を損傷する、または卵白原料の不均質なpHをもたらす可能性がある粘性卵白内の低pHポケットの形成を最小限に抑えることが挙げられると考えられている。
【0045】
一般的に、酸性緩衝液は、約8mS/cm〜約40mS/cmの導電率を有することができる。例えば、酸性緩衝液は、少なくとも約8mS/cm(例えば、少なくとも約9mS/cm、少なくとも約10mS/cm、少なくとも約11mS/cm、少なくとも約12mS/cm、少なくとも約13mS/cm、少なくとも約14mS/cm、少なくとも約15mS/cm、少なくとも約16mS/cm、少なくとも約17mS/cm、少なくとも約18mS/cm、少なくとも約19mS/cm、少なくとも約20mS/cm、少なくとも約21mS/cm、少なくとも約22mS/cm、少なくとも約23mS/cm、少なくとも約24mS/cm、少なくとも約25mS/cm)および/または最大約40mS/cm(例えば、最大約39mS/cm、最大約38mS/cm、最大約37mS/cm、最大約36mS/cm、最大約35mS/cm、最大約34mS/cm、最大約33mS/cm、最大約32mS/cm、最大約31mS/cm、最大約30mS/cm、最大約29mS/cm、最大約28mS/cm、最大約27mS/cm、最大約26mS/cm、もしくは最大約25mS/cm)の導電率を有することができる。例えば、酸性緩衝液は、約8mS/cm〜約40mS/cmの間の任意の値の導電率を有することができる。理論に縛られるものではないが、約8mS/cm〜約40mS/cmの導電率を有する酸性緩衝液を使用すると、混合卵白の導電率の変化が最小限に抑えられ、それにより単離工程で使用したカラムクロマトグラフィーの単離条件を変更することなく、およびさらなる析出や凝集を起こすことなく、プロセスが終了段階でのタンパク質単離工程で実施および合理化されると考えられている。
【0046】
いくつかの実施形態では、酸性緩衝液を、卵白プールに単回ボーラス注射で添加することができる。いくつかの実施形態では、酸性緩衝液の添加が適切な時間内(例えば、最大約5分)で添加されることを確実にするために、単回ボーラス注射は適切な注入速度(例えば、少なくとも約1L/分)で実施される。理論に縛られるものではないが、単回ボーラス注射を使用する利点としては、(1)重力で容易に沈降する比較的大きな凝集を形成し、それにより大きなフィルターの必要性を低減すること、および(2)酸または塩基の繰り返し添加を引き起こし、ひいては卵白中の組み換えタンパク質を損傷し、生産された卵白溶液の濁度を増加させる可能性のある誤ったpH解釈を引き起こし得る粘性卵白プールの連続滴定の必要性を回避することが挙げられると考えられている。
【0047】
いくつかの実施形態では、酸性緩衝液が卵白プールに追加された後、卵白は、適切な温度(例えば、約2℃〜約25℃)で、適切な時間(例えば、少なくとも約1時間)で混合され、適切なpHを有する混合卵白を形成する。いくつかの実施形態では、酸性緩衝液の卵白への添加およびその混合は、同時に実施される。
【0048】
一般的に、酸性緩衝液の添加、および酸性緩衝液の卵白との混合は、大量の析出物(例えば、オボムチン-リゾチーム複合体)の形成をもたらす。析出物は、一般的に、溶液中に残っている卵白の粘度を低下させる。
【0049】
いくつかの実施形態では、混合卵白のpHは、混合卵白の粘度が最も低くなるような値である。例えば、混合卵白は、少なくとも約5のpH(例えば、少なくとも約5.2、少なくとも約5.4、少なくとも約5.6、少なくとも約5.7、少なくとも約5.8、もしくは少なくとも約5.9)および/または最大約6.5(例えば、最大約6.3、最大約6.2、もしくは最大約6.1)を有することができる。いくつかの実施形態では、混合卵白は、約6のpHを有することができる。理論に縛られるものではないが、そのようなpH(例えば、約6)は、卵白から重力で沈降する析出物の最大量を形成させることができ、これによりろ過の必要性を低減し、均質で低粘度の卵白溶液の形成を促進すると考えられている。
【0050】
一般的に、混合卵白(すなわち、酸性化またはpH調節された卵白)は、比較的低い導電率を有する(例えば、酸性緩衝液で処理されていない卵白の導電率に類似)。例えば、混合卵白は、少なくとも約8mS/cm(例えば、少なくとも約8.2mS/cm、少なくとも約8.4mS/cm、少なくとも約8.6mS/cm、少なくとも約8.8mS/cm、少なくとも約9mS/cm、少なくとも約9.2mS/cm、少なくとも約9.4mS/cm、少なくとも約9.6mS/cm、少なくとも約9.8mS/cm、少なくとも約10mS/cm、少なくとも約11mS/cm、少なくとも約12mS/cm、少なくとも約13mS/cm、もしくは少なくとも約14mS/cm)および/または最大約20mS/cm(例えば、最大約19mS/cm、最大約18mS/cm、最大約17mS/cm、最大約16mS/cm、最大約15mS/cm、最大約14mS/cm、最大約13mS/cm、最大約12mS/cm、最大約11.8mS/cm、最大約11.6mS/cm、最大約11.4mS/cm、最大約11.2mS/cm、最大約11mS/cm、最大約10.8mS/cm、最大約10.6mS/cm、最大約10.4mS/cm、最大約10.2mS/cm、もしくは最大約10mS/cm)の導電率を有することができる。例えば、混合卵白は、約8mS/cm〜約20mS/cmの間の任意の値の導電率を有することができる。理論に縛られるものではないが、混合卵白を約8mS/cm〜約20mS/cmの導電率で維持することは、混合卵白を終了段階のタンパク質単離工程で使用される条件に適合するようにし、それにより混合卵白を、単離工程において、この工程で使用されるカラムクロマトグラフィーの単離条件を変更することなく常に使用することができると考えられている。
【0051】
混合が完了した後、本明細書に記載される方法は、卵白が上層、中間層および下層に分離するように、適切な時間(例えば、少なくとも約6時間)をかけて混合卵白を沈降させる随意的工程を含むことができる。典型的には、上層は、低密度の特定の不要物質(例えば、リン脂質、トリグリセリド、およびコレステロールを含む変性タンパク質ならびに泡状脂質)を含み、下層は、卵白タンパク質から形成された析出物(例えば、オボムチン-リゾチーム複合体)を含み、そして中間層は、比較的透明な卵白溶液を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、沈降工程の間に、混合卵白のpHが所望の値の範囲外(例えば、5.7±0.1、6.0±0.1、または6.3±0.1)になった場合、酸(例えば、上記の酸性緩衝液)または塩基(例えば、5.7M酢酸ナトリウムまたは1N水酸化ナトリウムの溶液)を用いることにより、所望の値に到達するように調節することができる。そのような実施形態では、pH調節の後に、追加混合(例えば、少なくとも約1時間)および沈降(例えば、少なくとも約3時間)を室温で続けることができる。一般的に、混合および沈降の合計時間は24時間を超えることはなく、卵白中の外来タンパク質が処理環境に露出される時間は最小限に抑えられ、それによりこれらタンパク質の生物活性は維持される。
【0053】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、沈降工程の後に、中間層を混合卵白から単離する工程を含むことができる。一般的に、中間層は、当技術分野で知られている方法を用いて単離することができる。例えば、チューブ(例えば、金属またはポリカーボネートチューブ)を中間層に(好ましくは、中間層の中央に)挿入することにより、混合卵白を含む容器から中間層を吸い上げることができ、それにより、上層および下層を乱すことなく、中間層の内容物を受け入れ容器に送り込むことができる。
【0054】
一般的に、中間層を分離した後、中間層の少なくとも一部分(例えば、中間層の全て)をろ過し、中間層に懸濁した任意の粒子を除去し、均質で低粘度の透明な卵白溶液を得ることができる。この工程は、卵白清澄化としても知られている。いくつかの実施形態では、最大約100μm(例えば、最大約90μm、最大約80μm、最大約70μm、最大約60μm、最大約50μm、最大約40μm、最大約30μm、最大約20μm、最大約10μm、最大約9μm、最大約8μm、最大約7μm、最大約6μm、最大約5μm、最大約4μm、最大約3μm、最大約2μm、もしくは最大約1μm)および/または少なくとも約0.1μm(例えば、少なくとも約0.2μm、少なくとも約0.3μm、少なくとも約0.4μm、少なくとも約0.5μm、少なくとも約0.6μm、少なくとも約0.7μm、少なくとも約0.8μm、少なくとも約0.9μm、少なくとも約1μm、少なくとも約2μm、もしくは少なくとも約3μm)の平均孔径を有する1つ以上のフィルターに、中間層を通してろ過することができる。例えば、フィルターは、約0.1μm〜約100μmの平均孔径(例えば、約0.1μm〜約40μm、約40μm〜約100μm、約3μm〜約6μm、または約0.1μm〜約0.3μm)を有することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、中間層を、互いに直列に接続された複数のフィルターに通してろ過することができ、ここでフィルターの平均孔径は連続的に減少する。例えば、中間層を、直列に接続された3つのフィルターを含むろ過システムに通してろ過することができ、ここで第1フィルターは約40μmの平均孔径を有することができ、第2フィルターは約3μm〜約6μmの平均孔径を有することができ、そして第3フィルターは約0.1μm〜約0.3μmの平均孔径を有することができる。そのようなろ過システムの例は、ポール社から市販されている連続デプスフィルターを含むシステムである(例えば、T2600、K200PおよびBio10デプスフィルターを含む)。随意で、ろ過システムは、第3フィルターの終了段階で、第4フィルター(例えば、約0.2μmの平均孔径を有する)をさらに含むことができる。第4フィルターの例は、ザルトリウス社から入手可能なSartobran Pフィルターである。
【0056】
いくつかの実施形態では、中間層をろ過するのに使用されるフィルターは、大きなろ過媒体面積を有することができる。例えば、フィルターは、少なくとも約1m
2のろ過媒体面積(例えば、少なくとも約2m
2、少なくとも約4m
2、少なくとも約6m
2、または少なくとも約8m
2)を有することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、酸性緩衝液および卵白を混合して混合卵白を形成した後、混合卵白中の析出物を沈降させることなく、混合卵白をろ過することができる。そのような実施形態では、混合卵白(添加/混合工程の間に形成された析出物および残りの卵白溶液を含む)を、混合卵白からの析出物の事前分離なしでろ過することができる。例えば、酸性緩衝液および卵白を混合した後、本明細書に記載の1つ以上のフィルター(例えば、減少する孔径を有する3つの直列に接続されたフィルターを含むろ過システム)の使用により、沈降させることなく、混合卵白をろ過することができる。理論に縛られるものではないが、沈降工程を排除することにより、そのような方法は、バルククロマトグラフ処理用の卵白を調製するための、および卵白からタンパク質を単離するための時間と費用を大幅に削減することができると考えられている。
【0058】
いくつかの実施形態では、酸性緩衝液および卵白を混合して混合卵白を形成した後、混合卵白を遠心分離にかけて、析出物(例えば、オボムチン-リゾチーム複合体)を上清から分離することができる。このようにして得られた上清を、その後、本明細書に記載の1つ以上のフィルターを用いてろ過することができる。
【0059】
一般的に、ろ過卵白溶液を使用して、イオン交換クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用に基づくクロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィーを用いることにより、組み換えタンパク質を単離することができる。そのようなクロマトグラフ法の例は、例えば米国特許出願公開第2009/0299037号明細書に記載されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示は、組み換えタンパク質を卵白から単離する方法を特徴とする。例えば、そのような方法は、(1)組み換えタンパク質を含む卵白のプールを供給する工程であって、プールは少なくとも約10リットルの容量を有する;(2)卵白のpHを約5〜約6.5に調節する工程であって、pH調節卵白の導電率は約8mS/cm〜約20mS/cmである;(3)卵白をろ過し、溶液を形成する工程;および(4)カラムクロマトグラフィーにより、卵白中の組み換えタンパク質を単離する工程を含むことができる。前述の方法と同じように少量の酸性緩衝液(例えば、卵白1キログラム当たり約0.5重量%〜約5重量%)を卵白に添加することにより、調節工程を実施することができる。ろ過および単離工程を、本明細書に記載の方法または当技術分野で知られている方法により実施することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、本開示は、酸性化卵白(例えば、上記の酸性緩衝液により酸性化された卵白)をろ過する方法を特徴とする。例えば、そのような方法は、(1)約8mS/cm〜約20mS/cmの間の導電率を有する前処理緩衝液をフィルターに通過させる工程;および(2)約5〜約6.5のpHを有する卵白(例えば、少なくとも約50リットルの容量を有する)をフィルターに通過させ、ろ過卵白を得る工程を含むことができる。ろ過卵白をその後使用して、カラムクロマトグラフィーを用いることにより、組み換えタンパク質を単離することができる。いくつかの実施形態では、そのような方法で使用されるフィルターは、上述したものと類似のものまたは同じものとすることができる。例えば、フィルターは、上述したものと同じ平均孔径(例えば、約0.1μm〜約100μm)またはろ過媒体面積(例えば、少なくとも約8m
2)を有することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、前処理緩衝液を使用して、卵白(例えば、酸性化卵白)を通過させる前にフィルターを濡らすことができる。前処理緩衝液は、1つ以上の塩(例えば、アルカリ塩)を含むことができる。例示的な塩には、リン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムが挙げられる。いくつかの実施形態では、前処理緩衝液はリン酸ナトリウムと塩化ナトリウムとの組合せを含むことができる。
【0063】
一般的には、前処理緩衝液は、酸を含むことができる。例示的な酸には、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、過塩素酸、クエン酸、ホウ酸、酒石酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、尿酸、およびバルビツール酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、2つ以上(例えば、3つまたは4つ)の酸の組み合わせを、前処理緩衝液中に使用することができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、前処理緩衝液は、卵白のpHと実質的に同じpHを有することができる。例えば、前処理緩衝液は、少なくとも約5(例えば、少なくとも約5.2、少なくとも約5.4、少なくとも約5.6、少なくとも約5.7、少なくとも約5.8、もしくは少なくとも約5.9)および/または最大約6.5(例えば、最大約6.4、最大約6.3、最大約6.2、もしくは最大約6.1)のpHを有することができる。いくつかの実施形態では、前処理緩衝液は、約6のpHを有することができる。理論に縛られるものではないが、卵白のpHと実質的に同じpHを有する前処理緩衝液を使用してフィルターを処理すると、フィルター表面のpHを卵白のpHに類似にするように調節でき、それにより、フィルターに目詰まりを生じさせたり、またはフィルターにせん断応力を生じさせる試料の流れを妨げる可能性があり、それによりフィルターの使用寿命を著しく短くし得るろ過中の卵白の析出が最小限に抑えられると考えられている。
【0065】
一般的に、終了段階の単離/精製プロセスで使用されるカラムクロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー)の特性とろ過された酸性化卵白の相性がよくなるように、前処理緩衝液は、卵白の導電率と両立し得る導電率を有することができる。例えば、前処理緩衝液は、少なくとも約8mS/cm(例えば、少なくとも約9mS/cm、少なくとも約10mS/cm、少なくとも約11mS/cm、少なくとも約12mS/cm、少なくとも約13mS/cm、少なくとも約14mS/cm、少なくとも約15mS/cm、少なくとも約16mS/cm、少なくとも約17mS/cm、少なくとも約18mS/cm)および/または最大約20mS/cm(例えば、最大約19mS/cm、最大約18mS/cm、最大約17mS/cm、最大約16mS/cm、最大約15mS/cm、最大約14mS/cm、最大約13mS/cm、最大約12mS/cm、もしくは最大約11mS/cm)の導電率を有することができる。例えば、前処理緩衝液は、約8mS/cm〜約20mS/cmの間の任意の値の導電率を有することができる。本発明者は、上記の前処理緩衝液で処理されていないフィルターを使用して卵白溶液をろ過すると、ろ過処理中に形成された析出物によりフィルターがすぐに目詰まりする可能性があることを発見した。一方、本発明者らは、上記の導電率を有する前処理緩衝液を使用してフィルターを処理すると、フィルター表面の導電率を卵白の導電率に類似にするように調節でき、それによりろ過中の卵白の析出を最小限に抑え、フィルターの寿命を著しく延長させることを思いがけなく発見した。
【0066】
いくつかの実施形態では、卵白は、比較的小さな差圧下(例えば、約30psi未満、約25psi未満、約20psi未満、約15psi未満、約12psi未満、約10psi未満、または約5psi未満)でフィルターを通過することができる。理論に縛られるものではないが、比較的小さな差圧下で卵白をフィルターに通過させると、フィルターの損傷および/または目詰まりを最小限に抑えることができ、これにより、フィルターは非常に高価であるため、製品費用が削減されると考えられている。
【0067】
本明細書で引用した全ての刊行物(例えば、特許、特許出願公開、および論文)の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
以下の実施例は例示であり、限定することを意図するものではない。
【0069】
実施例1:沈降工程を有する、バルククロマトグラフ処理用に卵白を調製する方法
-20℃で4Lナルゲンボトル中に保存されていた50〜400キロの冷凍卵白を、室温で、21±1℃に設定した水浴中で約5〜7時間かけて解凍した。1時間ごとに、各ボトルを水浴から取り出し、目視検証して解凍の程度を判断し、繰り返し反転させ、解凍が完了するまで水浴に入れた。解凍したボトルを水浴から取り出し、2〜8℃で保存した。最後の卵白ボトルを解凍した後、ボトル中の卵白を無蓋混合容器にプールした。5.7M酢酸ナトリウムを含むpH4.0の酸性緩衝液(卵白の重量に対して、約1.3%wt/wt)を、解凍卵白プールに毎分1キロで、酸性緩衝液の添加時間が5分を超えないように添加し、2〜8℃で最終目標のpH6.0±0.1を得た。卵白混合物を、無蓋混合容器中で、温度制御なしで連続的に1時間攪拌し、次いで密閉使い捨てミキサーにデカントし、2〜8℃で冷蔵し、そして6時間混合した。混合を停止した後、析出物を6時間静置した。必要に応じて、5.7M酢酸ナトリウムまたは1N水酸化ナトリウムのいずれかを使用して、2〜8℃でpHを6.0±0.1にさらに調節し、その後1時間追加混合し、3時間室温で沈降させた(混合および沈降の合計時間は24時間を超えない)。沈降が完了した後、混合卵白は3つの層、すなわち、上層、中間層、および下層を形成した。次にチューブを中間層に配置し、上層と下層を乱すことなく、チューブを介して中間層を吸い上げたまたは送り出した。フィルター(直列のポール社デプスフィルター、それぞれ40ミクロン、3〜6ミクロン、0.1〜0.3ミクロン)を、フィルター面積の平方メートル当たり80リットルの精製水で事前洗浄し、全有機炭素、浸出物、および抽出物を除去し、その後排出した。次いで、事前洗浄したフィルターを、20mMリン酸ナトリウムおよび140mMの塩化ナトリウムを含むpH6.0の前処理緩衝液の1フィルターホールドアップボリュームを用いて処理し、その後排出した。沈降した析出および凝集卵白微粒子を避けながら卵白溶液をデカントし、デッドエンドろ過により、1種類のフィルターについて平方メートル当たり1リットルの流量で、または30psid未満の差圧でろ過し、任意の沈降していない析出物質を除去し、そして滅菌使い捨てミキサーに収集した。卵白ろ過の完了時に、ろ過システムに残留した卵白を、20mMリン酸ナトリウムおよび140mM塩化ナトリウムを含むpH 6.0の前処理緩衝液の1フィルタートレインホールドアップボリュームで洗い流して生成物を回収し、滅菌使い捨てミキサーに収集した。ろ過卵白溶液を酵素活性および紫外線(UV)吸光度測定用にサンプリングし、それを卵白中の組み換えタンパク質のカラムクロマトグラフィーによる単離に使用する前まで、2〜8℃で最長24時間保存した。表1は、上述の酸性緩衝液(すなわち、5.7MのNaOAc、pH4.0、および1.3%wt/wt)を用いた卵白酸性化の結果を示している。
【0071】
実施例2:沈降工程のない、バルククロマトグラフ処理用に卵白を調製する方法
400キロの冷凍卵白(+/-10%)の冷凍卵白(-20℃)を、2〜8℃(ウォークイン冷蔵室内)で約24〜72時間で解凍した。解凍した卵白をジャケット付き使い捨て密閉混合容器内にプールし、2〜8℃に維持した。5.7M酢酸ナトリウムを含むpH4.0の酸性緩衝液(1.08%wt/wt)を、解凍卵白に毎分1キロで、酸性緩衝液の添加時間が5分を超えないように添加し、最終目標のpH6.0±0.5を得た。酸性化卵白溶液を3時間2〜8℃で連続的に撹拌した。次いで酸性化卵白を、ろ過前に、ジャケット付きタンクにより21±3℃に加温した。フィルター(直列のポール社デプスフィルター、それぞれ40ミクロン、3〜6ミクロン、0.1〜0.3ミクロン)を、フィルター面積の平方メートル当たり80リットルの精製水で事前洗浄し、全有機炭素、浸出物、および抽出物を除去した。フィルター廃液の導電率が、前処理緩衝液の許容可能な導電率の範囲内(例えば、10〜15mS/cm)になるまで、フィルタートレイン内の精製水を、20mMリン酸ナトリウムおよび140mM塩化ナトリウムを含むpH6.0の前処理緩衝液で置換した。均質な混合酸性化卵白を、デッドエンドろ過により、1種類のフィルターについて1リットル/分/m
2または10psi?の差圧が生じる流速でろ過し、任意の析出および凝集物質を除去した。フィルタートレインホールドアップボリュームの80%に相当する最初のフィルター廃液量を使用して前処理緩衝液を置換し、そして生成物回収の前に廃棄した。残りのろ過された前処理緩衝液および卵白を、滅菌使い捨てミキサーに収集した。卵白ろ過の完了時に、ろ過システムに残留した卵白を、20mMリン酸ナトリウムおよび140mM塩化ナトリウムを含むpH6.0の前処理緩衝液の1.5フィルタートレインホールドアップボリューム(1ホールドアップボリュームがろ過トレインに残っている間に0.5ホールドアップボリュームが回収される)で洗い流して生成物を回収し、滅菌使い捨て混合タンクに収集した。ろ過卵白を酵素活性および吸光度測定用にサンプリングし、それを卵白中の組み換えタンパク質のカラムクロマトグラフィーによる単離に使用する前まで、2〜8℃で最長24時間保存した。
【0072】
実施例3:深層ろ過性能に対する直接充填および卵白酸性化のロバスト性を評価するための卵白製造プロセスの縮小
原料
清澄化試験に使用される全ての化学物質は、USP/MCグレードのものであった。卵白原料物質を表2に示す。全ての原料物質を-20℃で保存し、使用前に2〜8℃で48〜72時間で解凍した。原料物質をプールし、酸性化工程を通して2〜8℃に維持した。
【0074】
全ての緩衝液調製では、導電率測定を、pH/導電率計を用いて25℃に補正した温度で行った。緩衝液のpHを20℃で測定した。インプロセス緩衝液調製定式を、以下の表3に列挙する。
【0076】
プロセス用機器
プロセススキッド(AKTAエクスプローラー)が、GEヘルスケアにより提供された(予防保全)。プロセス装置(ポールスタックスシャーシおよびAKTAエクスプローラー)は、特性評価試験全体を通じて、シナゲバPD担当者により管理された。下記の表4は、本実施例で使用されている全てのハードウェア機器を挙げている。
【0078】
ポールSTAXシャーシ(部品番号SXLSC02W)を、以下の構成で表5に記載のSTAXのデプスフィルター(40μm、3〜6μm、および0.1〜0.3μm)および追加のSartobran P 0.2μmフィルターを使用して組み立てた。
シャーシ#1:(下)マニホールド→T2600→ベントプレート(上)
シャーシ#2:(下)マニホールド→K200P→ベントプレート→マニホールド→Bio10→ベントプレート(上)
【0079】
各フィルターを、1.5”インレット/アウトレットマニホールド(部品番号:7008225)と上のベントプレートとの間に挟んだ。それぞれ個々のフィルターのホールドアップボリュームを、最初の水での洗い流し中に経験的に決定した。
【0081】
カラムXK 16/20(GEヘルスケア)を、全てのフェニル疎水性相互作用クロマトグラフィー(PHIC)カラム充填に使用した。全てのクロマトグラフィーを、UNICORNソフトウェアバージョン5.31(GEヘルスケア)を備えたAKTAエクスプローラーで実施した。
【0082】
手順
清澄化工程を開始する前に、冷凍卵白アリコート(合計20L)を、2〜8℃で48〜72時間かけて解凍した。解凍卵白を、適切なサイズのポリプロピレンタンク(25L)に、滅菌メディアライナー(サーモサイエンティフィック/Hyclone 部品番号 343050〜0005)でプールした。プールされた卵白を、オーバーヘッドミキサー(330rpm)を用いて2〜8℃で均質になるまで混合した。プールされた卵白を、次いでpH4.0の5.7M酢酸ナトリウムの添加により目標pHに調節した。表6は、目標pHを達成するために実行される各清澄化で加えられる5.7M酢酸ナトリウムの容量を記載する。目標pHを達成したことを確実にするために、pHを2時間を超えて観測した。
【0084】
ろ過の前に、フィルターをろ過したRO/DI水で80L/m
2で個別に洗い流した。水洗い流している間、各フィルター処理のホールドアップボリュームを、経験的に決定した。水での洗い流しが完了すると、フィルターを連続トレインに設置し、16L/m
2のPHIC平衡緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、140mM塩化ナトリウム、pH6.0)で洗い流した。廃液のpHおよび導電率が、洗い流した緩衝液の規格値(例えば、pH6.0±0.1、導電率16.0±2.0)を満たしたときに、緩衝液の洗い流しを終了した。プールされた卵白をフィルタートレインに、3/8”浸漬管(I/P 73チューブ・コール)を使用して、1.0L/分で連続混合(オーバーヘッドミキサー、300rpm)で充填した。測定された累積ホールドアップボリューム(〜13.2L)の80%を収集し、廃棄に向けた。その後、凝固した低密度の析出物が浸漬管に入るまで、ろ液を別々の適切なサイズの容器に収集した。ろ過トレインを、その後、1.5ホールドアップボリューム(〜25 L)で緩衝液平衡緩衝液で洗い流した。サンプリング前に均質性を確保するために、最終ろ液をクリーンタンクパドルを用いてよく混合した。ろ液を2〜8℃で一晩、PHIC分離前に保存した。
【0085】
PHIC分離前に、2〜8℃で保存されたろ液を、室温水浴を使用して温めた。ろ液を、Sartobran 150カートリッジ(0.45um/0.22um、部品番号5231307H4-00)に通して二次ろ過し、最終PHIC充填を得た。表7は、緩衝液および使用されるインプロセスパラメーターを挙げている。
【0087】
結果および考察
(1)酸性化卵白の直接充填(すなわち、沈降工程なし)
最初に、単一中心点の実行(“実行1”;1:20スケール;約6のpHの20L酸性化卵白)を実施し、代表的な実験スケールモデルを確立するために、深層ろ過性能についての直接充填(沈降なし、20L/m
2の充填比)の影響を評価した。各フィルター(すなわち、T2600、K200P、Bio10)では、フィルター内のインレット供給圧力は、酸性化卵白充填の間に直線的に増加したが、差圧は10psidを超えなかった。また、供給圧力は、緩衝液洗い流しの間にさらに増加することはなく、フィルターT2600において劇的な減少を示した。これらの結果は、酸性化卵白のフィルターへの直接充填が、この実行中にフィルターを著しく詰まらせることはなかったことを示唆している。
【0088】
タンパク質回収の結果を、以下の表8にまとめる。表8に示すように、清澄化工程後のタンパク質回収率は、目標期待値を満たした(> 70%)。
【0090】
実行1のPHICのカラム性能は、酸性化卵白の沈降工程を含む実行から得られた結果に匹敵した。また、タンパク質の純度を、4〜20%トリス-グリシンゲルを用いるSDS-PAGE分析により測定した。実行1からのPHICの溶出画分は、沈降工程を含む実行と比較した場合、バンドパターンの違いを示さなかった。これらのデータは、清澄化(すなわちろ過)中の酸性化卵白の直接充填が、タンパク質の回収、または収率および純度の点でのPHIC性能に影響を与えなかったことを示唆した。
【0091】
上記の結果は、沈降工程を経ることなく、清澄化工程の間に、酸性化卵白をフィルターに直接充填することができることを示唆している。この方法を、次いで、次の節で説明されるロバスト性試験の実行(すなわち、実行2および3)に適用した。
【0092】
(2)卵白酸性化のロバスト性
2因子、2レベルの実験計画(高/低、低/高)を使用して、卵白酸性化工程のロバスト性を評価した。実験条件は、表6において定義されている。実行2において、酸性化を24時間行い、5.67の最終pH(すなわち、約5.7)を達成した。実行3において、酸性化を6時間行い、6.25の最終pH(すなわち、約6.3)を達成した。結果は、両方の実行が、同等な線形供給圧の増加、およびT2600汚損の増加に起因する最大供給圧を示したことを示す。低い最大供給圧が実行2で観察され、これは卵白のpHと卵白の粘度との相関関係に起因すると考えられている(すなわち、より低い卵白pHがより低い卵白粘度をもたらす)。供給圧力は決して10psigを超えることはなく、実行1に匹敵する性能を示した。
【0093】
清澄化工程の後、実行2および3のタンパク質回収率は、それぞれ71%および83%であり、目標の期待値(すなわち、≧70%)を満たし、実行1(すなわち、79%)に匹敵した。PHIC分離後、実行2および3のタンパク質収率は、それぞれ59%および68%であり、沈降工程を含む実行から得られたものと同等であった。実行2と3を両方実行1と比較するクロマトグラムオーバーレイは、同等のカラム性能を確認した。
【0094】
上記の結果は、酸性化のpHおよび時間の変化は、酵素活性または収率に対して重大な負の影響をもたらさなかったことを示唆している。したがって、清澄化工程は、2つの試験範囲内(すなわち、酸性化pH5.7〜6.3および6〜24時間の酸性化時間)で行ったとき、ロバストであった。
【0095】
(3)卵白インプロセス安定性
プロセスホールド試験を行い、次の3つのユニット操作ホールドポイントの最大ホールド時間を規定した:(1)解凍卵白(2〜8℃)、(2)酸性化卵白(2〜8℃および周囲温度)、および(3)清澄化卵白(2〜8℃および周囲温度)。生成物の安定性(酵素活性の点で)を、72〜96時間かけて評価した。2つの別々の安定性試験を行い、清澄化パラメーター変動への、酸性化および清澄化した卵白の工程での生成物ホールド時間への影響を評価した。60mlのアリコート(酸性化および清澄化された卵白にそれぞれ2つ)を、上記の2つのロバスト性実験(すなわち、実行2および3)のそれぞれから採取し、2〜8℃または周囲温度のいずれかで保存した。1.5mLの試料を、72時間(pH5.7/24時間)または96時間(pH6.3/6時間)のいずれかまで、24時間毎に採取した。時間の制約のため、安定性試験は、実験1(中心点)では行わなかった。安定性設計パラメーターを、以下の表9にまとめる。
【0097】
結果は、3つの全てのインプロセスホールドポイント(解凍、酸性化、および清澄化卵白)に対する酵素活性が、試験の時間経過全体にわたって(96時間まで)2〜8℃で安定していたことを示す。また、酸性化pHまたは酸性化時間のいずれの変化も、概して酵素活性に負の影響を与えなかった。酸性化卵白ホールドポイントの1組の試験パラメーター(pH5.7、室温)は、酵素活性の〜20%の減少を示した。しかし、現在の商業的方法の酸性化卵白の格納先は2〜8℃であるため、この観察結果は商業的プロセスにとってリスクではない。データに基づいて、解凍/プールされた卵白は168時間(最初の72時間の解凍時間を含む)まで2〜8℃で安定であり、酸性化卵白は、96時間まで2〜8℃で安定であり、そして清澄化卵白段階では、96時間まで2〜8℃または室温で安定であった。
【0098】
(4)補足的DNA除去試験
卵白自体はDNAを含まないが、卵白採取プロセスにより少量の卵黄が卵白プールに入ることで、宿主ゲノムDNAが入ってしまうことがある。上記の実行1〜3の試験から得られた酸性化および清澄化された卵白を、宿主ゲノムDNAについて分析した。分析は、次のことを明らかにした:
1.プールおよび酸性化された卵白において、DNAを検出した
2.清澄化工程の間の有意なDNA除去を確認した。
【0099】
これらのデータは、卵白宿主タンパク質の除去に加えて、清澄化工程は、生成物プールから宿主ゲノムDNAを除去する手段を提供することを示唆した。
【0100】
その他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。