(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
開口上端から下方に向かって略円錐台状をなす内部空間を区画形成し、前記開口上端から順次投入されるコーヒー豆粉末および注液からなる混合物から抽出したコーヒー液を流出させる複数の細孔を形成した網目状の側周壁と、
前記内部空間を区画する下側境界位置に配置され、コーヒー液を流出させない構造をもつ底壁と
を具えるコーヒー用金属フィルタであって、
該金属フィルタは、外形が略円錐状をなし、前記内部空間に前記底壁を形成するための嵩上げ部材を有し、前記抽出したコーヒー液を、前記側周壁の前記細孔を通じ前記側周壁の外面に沿って積極的に流出させて、前記内部空間の下部でよどむことによって生じるコーヒー液の過抽出を抑制するフィルタ構造を有し、
前記側周壁の前記細孔は、略細長の平面形状をなし、前記細孔の、前記側周壁の内面側の周縁は、全周に亘って丸味を帯びて形成されており、
前記金属フィルタにめっきが施されている
ことを特徴とする、コーヒー用金属フィルタ。
前記細孔の長軸を前記金属フィルタの中心軸線を含む平面上に該中心軸線と重なるように垂直投影したときの前記長軸が、前記中心軸線に対して45°以下の角度範囲内になるように形成されることを特徴とする、請求項1に記載のコーヒー用金属フィルタ。
前記底壁の、前記内部空間を区画する表面は、前記金属フィルタの外形の頂点位置から15〜30mm嵩上げされた位置にあることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載のコーヒー用金属フィルタ。
前記スタンドは、前記環状凸部の外形輪郭寸法を前記開口上端に緊密嵌合できる寸法にして蓋としても兼用されることを特徴とする、請求項6に記載のコーヒー液抽出装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、コーヒー液を抽出するフィルタとして、紙製および金属製のフィルタが知られている。例えばもっとも手軽で一般的なドリップ用のフィルタとしては、紙製のペーパフィルタが挙げられる。このペーパフィルタは、使い捨てフィルタであるため、コーヒー液抽出後のフィルタ内に残った使用済みのコーヒー豆粉末を廃棄する作業については便利であるものの、コーヒー豆が本来持つ、香り(アロマ)成分や風味(フレーバ)成分を含有する良質な油分(コーヒーオイル)が、紙フィルタに吸収されてしまい、コーヒー豆本来の持ち味を引き出すことができないという欠点がある。これに対して、金属フィルタは、コーヒー豆から、その良質な油分を吸収することなく、コーヒー液を抽出することができることから、金属フィルタを用いて抽出したコーヒー液は、ペーパフィルタを用いて抽出されたコーヒー液と比べて、その香り、風味等の点において格段に優れており、コーヒーの愛飲家の満足度も高い。
【0003】
コーヒー用金属フィルタとしては、例えば
図1(a)に示すように、コーヒー液を流出させる複数の細孔310を有する側周壁300を具えた、略円錐形をなして形成されている金属フィルタ100が知られている。このような略円錐形の金属フィルタ100の開口上端200から、コーヒー豆粉末、液体(注液)を順次投入すると、金属フィルタ100内部に、コーヒー豆粉末と注液とからなる液状の混合物M(
図1(b)参照)が生成される。図示の金属フィルタ100の側周壁(外周面)300には、開口上端200側から下部(円錐形の頂部)にまで複数の細孔310(点で略示)が形成されている。コーヒー液は、主に下部の細孔310から流出する。従来の金属フィルタ100では、
図1(b)に示すように、注液が、金属フィルタ100内部の液状の混合物M内において、太い矢印F10で概念的に示すように重力の作用および金属フィルタ100の内部空間の形状(円錐形状)に起因して、先細になった金属フィルタ100の下部に集中するように流れ落ちていくように構成されている。この構成は、注液をコーヒー豆粉末にできるだけ長く接触させてコーヒー液を抽出するという概念に基づいている。また、注液(コーヒー液)は、細い矢印F20で概念的に示すように、側周壁300の傾斜している内面330に沿って、金属フィルタ100内を円錐形の頂部に向かって流れる。そして、最終的にフィルタの下部に集中したコーヒー液は、太い矢印F30で概念的に示すように下部の細孔310から流出するまで、金属フィルタ100の内部空間の下側部分にて、旋回矢印F40において概念的に示すように滞留する傾向がある。この結果、
図1(a)および
図1(b)に示すような従来の金属フィルタ100においては、部分的にコーヒー液の過抽出が生じ、コーヒー豆内部のエグ味や、渋み、雑味が余分に抽出されて、コーヒー豆が有する旨味成分を十分に抽出することができず、改善の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、金属フィルタの構造の適正化を図ることにより、注液とコーヒー豆粉末との接触時間が部分的に長くならず、均一になるようにして、コーヒー液の過抽出を抑制したコーヒー用金属フィルタを提供することであり、さらに、このようなコーヒー用金属フィルタを具えるコーヒー液抽出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の要旨構成は以下の通りである。
【0006】
(1)開口上端から下方に向かって略円錐台状をなす内部空間を区画形成し、前記開口上端から順次投入されるコーヒー豆粉末および注液からなる混合物から抽出したコーヒー液を流出させる複数の細孔を形成した網目状の側周壁と、前記内部空間を区画する下側境界位置に配置され、コーヒー液を流出させない構造をもつ底壁とを具え、前記抽出したコーヒー液を、前記側周壁の前記細孔を通じ前記側周壁の外面に沿って積極的に流出させて、前記内部空間の下部でよどむことによって生じるコーヒー液の過抽出を抑制するフィルタ構造を有することを特徴とする、コーヒー用金属フィルタ。
【0007】
(2)前記側周壁の前記細孔は、略細長の平面形状をなし、前記細孔の長軸を前記金属フィルタの中心軸線を含む平面上に該中心軸線と重なるように垂直投影したときの前記長軸が、前記中心軸線に対して45°以下の角度範囲内になるように形成されることを特徴とする、上記(1)に記載のコーヒー用金属フィルタ。
【0008】
(3)前記金属フィルタに、めっきが施されていることを特徴とする、上記(1)または(2)に記載のコーヒー用金属フィルタ。
【0009】
(4)前記めっきは、金めっきであることを特徴とする、上記(3)に記載のコーヒー用金属フィルタ。
【0010】
(5)前記金属フィルタは、外形が略円錐状をなし、前記内部空間に前記底壁を形成するための嵩上げ部材を有することを特徴とする、上記(1)から(4)までのいずれか1つに記載のコーヒー用金属フィルタ。
【0011】
(6)前記底壁の、前記内部空間を区画する表面は、前記金属フィルタの外形の頂点位置から15〜30mm嵩上げされた位置にあることを特徴とする、上記(5)に記載のコーヒー用金属フィルタ。
【0012】
(7)前記金属フィルタの前記側周壁は、複数の細孔を形成した網目状の金属板を、塑性変形させることなく略円錐台状または略円錐状に屈曲させた状態で接合して形成してなることを特徴とする、上記(1)から(6)までのいずれか1つに記載のコーヒー用金属フィルタ。
【0013】
(8)上記(1)から(7)までのいずれか1つに記載の前記金属フィルタと、前記金属フィルタを、コーヒー液を抽出した姿勢のまま載置可能な載置部を有する円板状のスタンドとを具え、前記スタンドは、前記載置部を設けた側の表面であって、かつ前記載置部の外周側に離隔配置され、前記金属フィルタから漏れ落ちてくるコーヒー残液を前記載置部との間に溜めることが可能な環状凸部を有することを特徴とするコーヒー液抽出装置。
【0014】
(9)前記スタンドは、前記環状凸部の外形輪郭寸法を前記開口上端に緊密嵌合できる寸法にして蓋としても兼用されることを特徴とする、上記(8)に記載のコーヒー液抽出装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属フィルタが、抽出したコーヒー液を、側周壁の細孔を通じ側周壁の外面に沿って積極的に流出させて、内部空間の下部でよどむことによって生じるコーヒー液の過抽出を抑制するフィルタ構造を有することにより、過度なエグ味、渋みおよび雑味を伴わない、良質なコーヒー液の抽出を可能にするコーヒー用金属フィルタの提供が可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に従うコーヒー用金属フィルタの一実施形態について、図面を参照しながら以下で説明する。
【0018】
図3(a)は、本発明に係るコーヒー用金属フィルタ1の代表的な実施形態を説明するためのものであり、
図3(b)は、
図3(a)に示す金属フィルタ1を用いて、コーヒー豆粉末および注液からなる混合物Mからコーヒー液を抽出する際に、コーヒー液が、金属フィルタ1の側周壁20の外面22に流出する経路を概念的に示し、
図4は、金属フィルタ1を内面側から見て、
図3(a)に示した金属フィルタ1の側周壁20の一部を細孔21の形状が分かるように拡大し、
図5は、
図4の金属フィルタ1の側周壁20を、I−I線上で切断して示す細孔21の断面である。
【0019】
なお、図面に示されている金属フィルタ1の細孔(線で略示)21の形状および寸法等は、概念的に示したものであって、実際の寸法を正確に示したものではない。
【0020】
また、本明細書において、内部空間が「略円錐台状」とは、完全な円錐台状だけでなく、本発明の金属フィルタが、平面視において真円をなしていない場合等の設計上または製造上の公差を含む状態を意味する。さらに、本明細書において、外形が「略円錐状」とは、側面視で完全な円錐状だけでなく、設計上または製造上の公差として円錐台状も含む状態を意味する。
【0021】
図3(a)に示すコーヒー用金属フィルタ1は、主要な構成部分として、網目状の側周壁20と、コーヒー液を流出させない構造をもつ底壁30とを有する。
【0022】
側周壁20には、開口上端10から下方に向かって略円錐台状をなす内部空間を区画形成し、開口上端10から順次投入されるコーヒー豆粉末および注液からなる混合物Mから抽出したコーヒー液を流出させるための複数の細孔21が形成されている。
【0023】
底壁30は、内部空間を区画する下側境界位置に配置され、底壁30の上面が、内部空間を区画する下面を構成している。底壁30が有する「コーヒー液を流出させない構造」とは、コーヒー液を金属フィルタ1の外部へ底壁30を通って流出させない構造を意味し、底壁30に細孔21等が存在しない。
【0024】
また、図示の金属フィルタ1では、開口上端10の縁部に、補強してその形状維持に寄与する、例えばステンレス材からなる補強環40が全周に亘って取り付けられている。この補強環40には、さらにタブ41が形成されている。金属フィルタ1の使用者は、金属フィルタ1を持ち運んだりして移動させる際に、このタブ41を摘まんで金属フィルタ1を移動させることができる。特に側周壁20に直接触れることなく移動させることができるので、コーヒー液抽出前には衛生を保つことができる。コーヒー液抽出後の金属フィルタ1の片付けは、特に高温になっている側周壁20に触れず行うことができるので、使用者は金属フィルタ1を安全に使用することができる。
【0025】
そして上記構成を有する本発明の金属フィルタは、抽出したコーヒー液を、側周壁20の細孔21を通じ側周壁20の外面22に沿って積極的に流出させて、注液が内部空間の下部でよどむことによって生じるコーヒー液の過抽出を抑制するフィルタ構造を有するようになる。本発明の金属フィルタ1により、抽出されたコーヒー液が、底壁30を通じて流出することなく、側周壁20を通って金属フィルタ1の外部に流出するようになり、その結果、注液(コーヒー液)が金属フィルタ1の下部に滞留しないので、コーヒー液の過抽出は抑制され、良質なコーヒーオイルを含むコーヒー液を抽出することができる。本発明の基本思想は、コーヒー液およびコーヒー豆粉末相互の接触時間が部分的に長くならず、均一になるようにして、コーヒー液の過抽出を抑制することにある。
【0026】
なお、本明細書において「過抽出」とは、注液が過度にコーヒー豆粉末に接触することにより、コーヒー豆内部のエグ味や、渋み、雑味が抽出される現象のことをいう。
【0027】
金属フィルタ1の内部に、注液およびコーヒー豆粉末からなる混合物Mが存在する場合に、従来の金属フィルタ100を用いてコーヒー液の抽出を行なうと、
図1(b)に示すように、金属フィルタ100の中央部にある注液は、重力の作用により金属フィルタ100の開口上端200側から下方中央部(円錐形の頂部)に流れ落ちていく。さらに、金属フィルタ100の周縁側にある注液は、内面330にぶつかる。その後、注液の一部は外面320に流出するが、残りの部分は外面320に流出することなく、そのまま内面330に沿って下方中央部に集まるように流れていく。つまり、従来の金属フィルタ100においては、大部分の注液が、金属フィルタ100の下部中央部に集中することになる。
【0028】
これに対して、本発明の金属フィルタ1を用いてコーヒー抽出を行なうと、
図3(b)に示すように、注液は、金属フィルタ1の径方向外側に側周壁20へと向かい、細い矢印F2を用いて概念的に示すように、側周壁20の細孔21を通じて外面22へと流出していく。さらに、本発明の金属フィルタ1の底壁30は、金属フィルタ1の略円錐台状の内部空間の下端を流体密に閉鎖しているため、底壁30に達した注液が、底壁30を通じて流出することはない。注液は、底壁30にぶつかり、矢印F3で概念的に示すようにその流れの方向を金属フィルタ1の径方向外側に側周壁20へと変える。こうして、側周壁20全体に注液用の複数の流出路が形成されて、コーヒー液が、金属フィルタ1の側周壁20から迅速に流出していく。本発明の金属フィルタ1により、注液とコーヒー豆粉末との過度な接触を回避することができ、
図1(a)に示す従来の金属フィルタ100の下部に滞留することで生じていたコーヒー液の過抽出は抑制される。
【0029】
図示の底壁30は平坦に形成されているが、底壁30が、開口上端10側に向かって凸状に、例えば凸曲面状、円錐状、角錐状等をなして形成されていてもよい。凸状の底壁30により、底壁30まで達した注液の、側周壁20への有利な案内を達成することができる。
【0030】
図3(a)の領域S2を拡大して示す
図4のように、側周壁20の細孔21は、略細長の平面形状をなすように構成されていることが好ましい。金属フィルタ1の細孔21の形状を略細長形状とすることは、
図1(a)に示す従来の金属フィルタ100の領域S1を拡大した
図2に示す、円形の細孔310に対して、コーヒー液の流出速度を高めるという点において有利である。細孔の形状が円形である場合には、コーヒー豆粉末からなる凝集体Pによって細孔310は容易に塞がれる傾向がある。コーヒー液抽出時間の経過に伴い、目詰まりを起こした細孔310の領域が多くなる。その結果、コーヒー液の流出個所は徐々に減少し、注液が、コーヒー豆粉末と接触する時間は長くなり、コーヒー液の過抽出を引き起こすことになる。
【0031】
これに対して、本発明の金属フィルタ1の細孔21の形状は、略細長の平面形状、例えば
図4に拡大して示すような略長方形の両短辺側に曲率をもたせた形状である。このような形状により網目は、コーヒー豆粉末からなる凝集体Pによって部分的に塞がれるだけで、完全な目詰まりが生じることはない。金属フィルタ1の側周壁20に向かって案内された注液は、金属フィルタ1の外面22へと滑らかにかつ迅速にコーヒー液として流出する。その結果、注液とコーヒー豆粉末との接触が部分的に長くならず、金属フィルタ1において均一になるので、エグ味や、渋み、雑味等の含有が極めて少ない、良質なコーヒー液を抽出することができる。金属フィルタ1内部における注液の滞留時間も短いため、高温を維持したコーヒー液の抽出が可能になる。
【0032】
さらに、コーヒー液の過抽出を抑制するように、コーヒー液を金属フィルタ1から迅速に流出させるために、細孔21の長軸を金属フィルタ1の中心軸線2を含む平面上に、中心軸線2と重なるように垂直投影したときの長軸が、中心軸線2に対して45°以下の角度範囲になるように形成されることが好ましい。細孔21の長軸は、本発明の金属フィルタ1の側周壁20の稜線に対して、0°〜45°傾いている。側周壁20には、稜線に対して上記角度範囲内において同じ角度で傾く長軸を有する細孔21からなる列が、開口上端10と底壁30との間に複数存在する。略細長形状の細孔21の長軸が、注液の流れに沿うように配列されることになり、金属フィルタ1の外面22へのコーヒー液の迅速な流出は促進される。
【0033】
理想的には、全ての列の、各列を構成する細孔21の長軸が、金属フィルタ1の稜線に対して0°をなして(側面視で中心軸線2に対して平行に)配列されていることが望ましい。しかし、製造上の理由から列毎に細孔21の長軸が、金属フィルタ1の稜線に対して異なる角度をなして傾いている部分もある。しかし、この傾いた配列は製造公差であり、意図したものではない。製造コストを考慮しなくてもよい場合には、当業者であれば、全ての細孔21の長軸が、金属フィルタ1の稜線に対して平面視で0°をなすように、金属フィルタ1を製造することも可能である。
【0034】
本発明の金属フィルタ1の網目のメッシュの開孔率は、コーヒー液とともにコーヒー豆粉末が、金属フィルタ1の外部に過度に流出することを防止する観点から、25〜45%、好ましくは35〜40%、最適には38%である。
【0035】
また、金属フィルタ1の母材、特に側周壁20の母材50および底壁30の母材には、防食の観点から、例えばステンレスを使用することが有利である。しかし、極めて稀な事象ではあるが、ステンレスに含有されているニッケルや鉄が溶出する場合もあり、本発明の金属フィルタ1に、特に少なくとも側周壁20および底壁30に、めっきを施してめっき層60を形成することが好ましい。特にめっきに使用される金属は、イオン化傾向が小さい金属であることが好ましく、特に金をめっきすることが好ましい。これにより、ステンレスのニッケルや鉄の溶出を確実に防ぐとともに、コーヒー液へ母材のにおいが移ることも防止することができる。なお、本発明の側周壁20の母材50および底壁30の母材は、ステンレス以外に、プラチナ、金、銀、銅、チタンを使用することも可能である。母材に金を使用した場合には、めっき処理は必要ない。金属フィルタ1の母材をステンレスとした場合、めっき材料として金の他に、プラチナ、銀、銅、チタンを選択することもできる。
【0036】
本発明の金属フィルタ1の側周壁20は、好ましくは複数の細孔21を形成した網目状の金属板を、塑性変形させることなく略円錐台状または略円錐状に屈曲させた状態で接合して形成してなる。本発明の金属フィルタ1は、製造容易性の点においても有利である。
【0037】
細孔21の形成方法としては、例えば公知の打抜き加工またはエッチング加工法が可能である。
【0038】
打抜き加工の場合、打抜き加工を、側周壁20の内面23となる側から、外面22となる側へと行うことで、
図5に示すように、細孔21の、側周壁20の内面23側の、細孔21の周縁21aが、全周に亘って丸みを帯びて形成される。周縁21aに丸みを帯びて形成されていることで、コーヒー液は、内面23および周縁21aに沿って、外面22へと積極的にかつ滑らかに流出するようになる。
【0039】
さらに、細孔21のより好ましい加工法としてはエッチング加工である。エッチング加工により、エッチング液を吹き付けた側(金属フィルタ1の内面23となる側)からテーパー状に先細る細孔21が、金属板に形成される。これにより、金属フィルタ1におけるコーヒー液の流れ方向は、外面22へ方向付けられ、コーヒー液を積極的に金属フィルタ1の外部に流出させることができる。
【0040】
金属フィルタ1の側周壁20は、適切な形状を有する1枚の金属板を湾曲させて円錐台状または略円錐状に形成し、金属板の展開状態において直線をなす辺同士を重ねてスポット溶接により、
図3(a)に示すような接合部25を形成してなる。なお、「塑性変形させることなく円錐台状または略円錐状に屈曲させた状態」とは、金属板を、金属板に形成された細孔21の形状を変化させることなく、弾性変形により湾曲させて略円錐台状または略円錐状に加工した状態を意味する。本発明の金属フィルタ1を、金属板を弾性変形させることにより形成することで、側周壁20の全ての細孔21の形状は同一形状を維持することができ、品質の高いコーヒー用金属フィルタ1を提供することができる。
【0041】
図6に、
図3(a)に示した本発明の金属フィルタ1の別の実施形態を示す。
図6においては、金属フィルタ1の実施形態と同じ部分には同じ符号を付し、異なる部分にのみ別の符号を付す。本発明の別の実施形態においては、金属フィルタ1Aの外形が略円錐状をなし、内部空間に底壁71を形成するための嵩上げ部材70を有することが好ましい。また、底壁71の、内部空間を区画する表面は、金属フィルタ1Aの外形の頂点位置から15〜30mm、最適には21mm嵩上げされた位置にあることが好ましい。
【0042】
図6に示す本発明の別の実施形態において、底壁71は、略円錐状の金属フィルタ1Aの頂部の形状に対応した寸法の、略円錐状の外形を有する嵩上げ部材70の底面により構成されてなるが、単に、円板部材(図示せず)によって構成されてもよい。底壁71を形成する部材を、側周壁20の内面23に密に連結することは、当業者であれば可能である。
【0043】
図6においては、金属フィルタ1Aの外形が略円錐形であり、嵩上げ部材70を用いて底壁71を形成している点で、金属フィルタ1と異なり、側周壁20の細孔21の構成、および底壁71の開口上端10側の表面形状については金属フィルタ1と同様の構成が可能である。
【0044】
さらに本発明は、
図7(a)に示すコーヒー液抽出装置90に関する。コーヒー液抽出装置90は、上記金属フィルタ1Aを、コーヒー液を抽出した姿勢のまま載置可能な載置部81を有する円板状のスタンド80を具える。スタンド80は、載置部81を設けた側の表面であって、かつ載置部81の外周側に離隔配置され、金属フィルタ1Aから漏れ落ちてくるコーヒー残液を載置部81との間に溜めることが可能な環状凸部82を有する。
【0045】
本発明の金属フィルタ1Aは、例えばガラス製のコーヒー抽出器を使用してコーヒー液を抽出した場合、コーヒー液の抽出が必要なくなると、速やかに金属フィルタ1Aをガラス製のコーヒー抽出器から取り外す必要がある。この場合、金属フィルタ1Aの外面22からは、金属フィルタ1Aの内部に残ったコーヒー残液が、外面22に滲み出て滴り落ちる。上記スタンド80を金属フィルタ1Aの近傍まで運んでから、金属フィルタ1Aをスタンド80に載せることで、滲み出たコーヒー残液が、例えば使用者の衣服、または床等へ落下することを防ぐことができる。この金属フィルタ1Aを、図示のようにスタンド80の載置部81に設置することで、滲み出たコーヒー残液は、載置部81と環状凸部82との間に形成されたスペース83に溜めることができる。溜まったコーヒー残液は、後に所望の時点で、金属フィルタ1A内に残る混合物M(図示せず)の廃棄や、金属フィルタ1Aの洗浄等の際に処分することができる。
【0046】
図7(b)に示すようにスタンド80は、環状凸部82の外形輪郭寸法を開口上端10に緊密嵌合できる寸法にして蓋としても兼用されることが好ましい。これにより、スタンド80の環状凸部82の径方向外側のスタンド表面が、金属フィルタ1Aの、特に補強環40の縁全体に面接触する。スタンド80の表面と補強環40との面接触により、例えば金属フィルタ1Aの収納時に、外部から埃等の異物が金属フィルタ1A内部に侵入して堆積することを防ぐことができる。
【0047】
さらに、スタンド80を別個に収納する必要がないので収納の煩雑さを回避することができる。金属フィルタ1Aの開口上端10の内径、およびスタンド80の環状凸部82の外径の寸法をそれぞれ適切に設定することによって、開口上端10と環状凸部82とが互いに隙間なく嵌まり合って、スタンド80の金属フィルタ1Aからの容易な落下を防止することができる。
【0048】
図7(a)からさらに分かるように、スタンド80の外周縁には、切欠き84が形成されていて、この切欠き84の位置に、スタンド80を
図7(b)のように金属フィルタ1Aに載着した際、補強環40のタブ41が位置するようになっている。
【0049】
図7(a)、(b)では、
図6に示した金属フィルタ1Aが用いられているが、
図2(a)に示した金属フィルタ1を、本発明に従うコーヒー液抽出装置90に用いることもできる。
【0050】
本発明に従う上記コーヒー用金属フィルタ1,1Aは、ハンドドリップ式のフィルタとして使用することも、また、市販の機械式のコーヒーメーカーにセットして使用することもできる。
【実施例】
【0051】
本発明を以下の実施例に基づき詳細に説明する。なお本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0052】
本発明の金属フィルタ1A(実施例1)、および異なる構成のコーヒーフィルタ(従来例1,2、比較例1,2)を試作し、試作した各供試フィルタを用いて、以下の試験1,2を行った。なお、実施例1、従来例1および2ならびに比較例1および2のフィルタの諸元は、以下に示す通りである。
【0053】
〈実施例1〉
図6に示す金属フィルタ1Aに、金めっきを施したサンプルである。底壁71は、金属フィルタ1Aの円錐の頂点位置から21mm嵩上げされた位置にある。
細孔21は、長さ3mm、幅0.25mmの略長方形である。細孔21は、細孔21の長軸が、金属フィルタ1Aの側周壁20の稜線に対して0°〜45°の角度範囲において傾斜して配列されている。メッシュの開孔率は38%である。
〈従来例1〉
ハリオ社のペーパフィルタ(製品型番:VCF−02−100MK)のサンプルである。
細孔はなく繊維面である。
〈従来例2〉
エイブルブリューイング社製の、略円錐形をなすステンレス製の従来の金属フィルタのサンプルである。底壁は嵩上げされていない。
細孔は、直径0.3mmの円形である。メッシュの開孔率は7.8%である。
〈比較例1〉
略円錐形の金めっきフィルタのサンプルである。底壁は嵩上げされていない。
細孔は、直径0.3mmの円形である。メッシュの開孔率は10%である。
〈比較例2〉
底壁が嵩上げされていない以外は、実施例1と同じ構成を有するフィルタのサンプルである。
【0054】
《試験1》
試験1においては、実施例1、従来例1,2のフィルタをそれぞれ使用してコーヒー液を抽出したときの、抽出時間を比較した。比較に際し使用したコーヒー豆は、上島珈琲オリジナルブレンドの、コロンビア・ブラジル産のコーヒー豆を中挽きしたもので、このコーヒー豆粉末23gをそれぞれの供試フィルタに入れた後、約340mlの熱湯(98℃の水)を、カーティス社製の熱湯ディスペンサ(型番:WB5GT)を用いて供試フィルタ内のコーヒー豆粉末に注いだ。表1にはそのときのコーヒーの抽出速度を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示す結果から、本発明の金属フィルタ1Aを用いた実施例1は、コーヒーの抽出速度が、ペーパフィルタを用いた従来例1に比べて約4.5倍、従来の金属フィルタを用いた従来例2に比べても約1.85倍と速かった。このため、コーヒーの過抽出が最も起こりにくいことが容易に推測することができる。
【0057】
《試験2》
試験2においては、以下の経歴を有する、コーヒーの専門家の評価者A〜Cによる、実施例1、従来例1,2および比較例1,2の供試フィルタを用いて抽出したコーヒー液の官能評価を行った。
〈評価者Aの経歴〉
バリスタ歴8年 日本バリスタチャンピオンシップ最高位1位
〈評価者Bの経歴〉
バリスタ歴9年 日本バリスタチャンピオンシップ最高位3位
〈評価者Cの経歴〉
バリスタトレーナー歴11年 日本バリスタチャンピオンシップ認定審査員
【0058】
官能評価に際して、コーヒー液の抽出温度が93℃に設定されているハリオ社製コーヒーメーカー(型番:EVCM5B)を使用して、中煎り・中挽きしたケニア産の生豆40gから得られたコーヒー豆粉末に対し、750mlの熱湯を注いでコーヒー液を抽出した。抽出後、保温ポットに移し、紙コップに注いだ、実施例1、従来例1,2および比較例1,2のサンプルによりそれぞれ製造されたコーヒー液を、評価者A〜Cが飲み比べをして、順位付けを行った。各評価者A〜Cが、それぞれのコーヒー液を飲んだときの、エグ味、渋み、雑味などの感想(コメント)とともに、コーヒー液が美味しいと感じる順位を記載した結果を表2に示す。なお、順位は、最も美味しいと感じるコーヒー液を抽出した供試フィルタを1位として、1〜5位までの順位を記載してある。
【0059】
【表2】
【0060】
表2の結果から、本発明の金属フィルタを用いた実施例1は、3名の評価者とも、抽出されたコーヒー液が、従来例1,2および比較例1,2と比べて、最も美味しいと感じていることが分かった。