(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記タイミング生成部は、前記制御データに加えて、前記測定データ取得部が取得した前記測定データにも基づいて前記取得タイミングを生成する請求項3に記載の診断用データ取得システム。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の実施形態の概略を説明する。本発明の実施形態は、工作機械等の可動部の駆動を制御するための一般的な制御データを用いて、診断用データの取得タイミングを決定するというものである。そして、このようにして決定した取得タイミングで、診断用データを取得して、取得した診断用データにより診断を行う。
これにより、本発明の実施形態では、テスト運転を行うことなく診断を実施できるので、ユーザの負担を軽減することが可能となる。
【0023】
また、本発明の実施形態では、取得タイミングは、診断用データの取得の都度、同条件下での診断用データを取得できるタイミングとなるようにする。
これにより、本発明の実施形態では、診断においてデータの経時変化から知見を得るのに適したデータを取得することができる。
【0024】
つまり、本発明の実施形態では、[発明が解決しようとする課題]の欄で述べた「工作機械等の診断を行うにあたり、ユーザの負担を軽減しつつも、診断に適したデータを取得する」という課題を解決することができる。
以上が本発明の実施形態の概略である。
【0025】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ここで、以下では、本発明の基本的な実施形態である第1の実施形態と、第1の実施形態の構成を変形した第2の実施形態の2つの実施形態について説明をする。
【0026】
<第1の実施形態>
図1に、第1の実施形態である診断システム1全体の構成を示す。
図1に示すように、本実施形態は、工作機械100、診断用データ取得装置200及び診断装置300を備える。
工作機械100は診断用データ取得装置200と通信可能に接続されている。また、診断用データ取得装置200は診断装置300とも通信可能に接続されている。これらの接続は、接続インタフェースを介した直接接続であってもよいし、またLAN(Local Area Network)等のネットワークを介した中継機器経由の接続であってもよい。
なお、
図1では、診断用データ取得装置200を単一の装置として記載し、以下の説明においても診断用データ取得装置200を単一の装置として説明をするが、これは本実施形態の構成を限定する趣旨ではない。診断用データ取得装置200を、複数の装置と、この複数の装置を接続するネットワーク等を含んだシステム(本発明の「診断用データ取得システム」に相当)により実現するようにしてもよい。
【0027】
工作機械100は、数値制御装置等の制御に基づいて、切削加工等の所定の加工を行う工作機械である。
工作機械100は、可動部110を備えている。可動部110は、ワークを加工するために駆動するモータや、このモータに取り付けられた主軸や送り軸や、これら各軸に対応する治具や工具等を含む。工作機械100は、診断用データ取得装置200から出力される動作指令に基づいて可動部110を駆動させることにより所定の加工を行う。ここで、所定の加工の内容に特に限定はなく、切削加工以外にも、例えば研削加工、研磨加工、圧延加工、あるいは鍛造加工といった他の加工であってもよい。
【0028】
なお、工作機械100は、特に本実施形態特有のものである必要はなく、一般的な工作機械により実現することができる。また、工作機械100を、数値制御による加工用の機械により実現するのではなく、他の装置、例えば、工場内で稼働するロボット等により実現するようにしてもよい。
【0029】
診断用データ取得装置200は、工作機械100を制御することにより、工作機械100に所定の加工を行わせる機能を有している。また、診断用データ取得装置200は、工作機械100を診断するためのデータである診断用データを取得する機能も有している。
【0030】
これらの機能を実現するため、診断用データ取得装置200は、制御部210、タイミング生成部220及び診断用データ取得部230を備える。
【0031】
制御部210は、一般的な数値制御装置としての機能を実現する部分である。制御部210は、制御データに基づいて、各軸に対する移動指令や主軸を駆動するスピンドルモータへの主軸回転指令等を含んだ動作指令を生成し、生成した動作指令を工作機械100に送出することにより、工作機械100の可動部110の駆動を制御する。これにより、工作機械100による所定の加工が実現される。
【0032】
ここで、制御部210は、加工プログラムにより生成される動作指令を、速度フィードバック信号等のフィードバック信号に基づいた比例演算や積分演算を行なうことによって修正するというフィードバック制御を行う。そのために、制御部210は、可動部110の動作に伴い変化するフィードバック信号を工作機械100から受信する。
つまり、本実施形態における制御データには、加工プログラム等の情報に加えて、速度フィードバック信号や、電流フィードバック信号といったフィードバック制御に関する情報も含まれているものとする。
【0033】
ここで、速度フィードバック信号は、例えば、工作機械100に含まれるロータリエンコーダやリニアエンコーダが検出した位置フィードバック信号を微分することにより算出することができる。また、電流フィードバック信号は、例えば、モータに流れる電流を測定することにより検出することができる。
なお、工作機械におけるフィードバック制御については一般的な技術であり、当業者によく知られているので、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0034】
タイミング生成部220は、制御部210から制御データを取得し、取得した制御データに基づいて、診断用データを取得するタイミングである「取得タイミング」を生成する部分である。タイミング生成部220は、例えば、制御データに含まれている加工プログラムに基づいた動作指令値と、速度フィードバック信号の信号値や、主軸に対応するスピンドルモータの電流フィードバック信号の信号値を取得する。
【0035】
そして、タイミング生成部220は、取得タイミングを生成するために必要な情報を算出する。例えば、加工プログラムに基づいた動作指令値と、速度フィードバック信号の信号値に基づいて、主軸又は送り軸の駆動速度を算出する。また、タイミング生成部220は、主軸に対応するスピンドルモータの電流フィードバック信号の信号値に基づいて主軸にかかる負荷トルクを算出する。
【0036】
なお、このようにして算出を行う方法は、必要な情報を得るための一例に過ぎず、タイミング生成部220による算出以外の方法で必要な情報を得るようにしてもよい。例えば、負荷トルクについては、主軸に対応するスピンドルモータを制御するスピンドル制御回路に外乱推定オブザーバを設け、この外乱推定オブザーバによって負荷トルクを検出するようにしてもよい。
【0037】
何れにしても、タイミング生成部220は、取得タイミングを生成するために必要な情報を取得し、この情報に基づいて取得タイミングを生成する。取得タイミングは、上述したように、診断用データの取得の都度、同条件下での診断用データを取得できるタイミングとなるようにする。そして、タイミング生成部220は、生成した取得タイミングは、診断用データ取得部230に対して出力する。なお、取得タイミングの生成方法の詳細については、
図2A及び
図2Bを参照して後述する。
【0038】
診断用データ取得部230は、タイミング生成部220が生成した取得タイミングに基づいて、診断用データを取得する。本実施形態では、診断用データ取得部230は、制御データに含まれている情報の内、診断装置300が診断に利用する情報を診断用データとして取得する。診断に利用するデータは、診断装置300による診断方法により定まる。例えば、取得タイミングを生成するために必要な情報と同じように主軸又は送り軸の駆動速度を算出するための情報であってもよいし、主軸にかかる負荷トルクを算出するための情報であってもよいし、他の情報であってもよい。
診断用データ取得部230は、取得した診断用データを診断装置300に対して出力する。
【0039】
診断装置300は、診断用データ取得部230が出力した診断用データに基づいて診断を行う装置である。診断装置300は、診断を実行するための部分として診断実行部310を備える。
【0040】
診断実行部310による診断は、例えば、故障予知や故障検知を行うための診断である。診断方法は、任意のものであってよく、例えば、診断用データに含まれる値と予め定めた閾値とを比較して、比較結果に基づいて診断を行うという単純なものであってもよい。また、診断実行部310が機械学習を利用した診断を行うようにしてもよい。
【0041】
例えば、診断実行部310が、診断用データを学習用データとして利用することにより機械学習を行って学習モデルを構築し、この構築した学習モデルと新たな診断用データとで診断を行うようにしてもよい。また、診断実行部310が、他の装置により学習を行うことにより構築した学習モデルを利用して診断をするようにするようにしてもよい。
【0042】
機械学習としては、例えば、特許文献1に開示されているようなサポートベクターマシン法によるものでもよく、又は、他の方法であってもよい。
例えば、パーセプトロンを組み合わせて構成したニューラルネットワークにより、教師有り学習を行うようにしてもよい。具体的には、入力データ(例えば本実施形態の診断用データ)に、ラベルを付与することによって教師データを作成し、この教師データをニューラルネットワークに与える。
【0043】
そして、ニューラルネットワークの出力がラベルと同じとなるように、ニューラルネットに含まれる各パーセプトロンについての重み付けを変更する。例えば、フォワードプロパゲーション(Forward-propagation)及びバックプロパゲーション(Back-propagation)という処理を繰り返すことにより重み付けを変更する。
【0044】
このようにして、教師データの特徴を学習し、入力から結果を推定するための学習モデルを帰納的に獲得するようにしてもよい。また、更にディープラーニング等の手法を取り入れるようにしてもよい。
【0045】
あるいは、教師無し学習を行うようにしてもよい。教師無し学習とは、教師データを与えて学習する教師有り学習とは異なり、入力データは与えるが、ラベルは与えないという学習方法である。教師無し学習では、入力データ(例えば本実施形態の診断用データ)に含まれるパターンや特徴を学習してモデル化する。
【0046】
例えば、クラスタリングを行うために、k−means法や、ウォード法といったアルゴリズムを用いて学習モデルを構築する。そして、構築した学習モデルを用いて、与えられた入力データを外的基準なしに自動的に分類するクラスタリングを行う。これにより、例えば不具合や故障の検知を行うようなことができる。
【0047】
また、上述した教師有り学習と教師無し学習との中間的な学習法として、入力データと出力のデータの組と、入力データのみとをそれぞれ利用する半教師有り学習を行うようにしてもよい。
【0048】
更に、工作機械100を例えばロボットで実現する場合には、診断実行部310が、例えば特開2008−32477号公報に開示されている診断方法を利用することにより、ロボットの減速機等の診断を行うようにしてもよい。
【0049】
何れかの診断方法を用いて、診断実行部310は診断結果を出力する。出力の方法としては、例えば、診断装置300や診断用データ取得装置200に備えられたディスプレイ(図示省略)に診断結果が表示されるようにするとよい。また、他にも、診断結果を他の装置に送信したり、診断装置300内部又は外部の記録装置に記録したりするようにしてもよい。また、他にも、例えば診断の結果、故障が発見されたような場合にアラーム音を出力するようにしてもよい。
【0050】
以上診断用データ取得装置200や診断装置300の機能ブロックについて説明した。次に、これらの機能ブロックの実現方法について説明をする。
これらの機能ブロックを実現するために、診断用データ取得装置200や診断装置300のそれぞれは、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置を備える。また、診断用データ取得装置200や診断装置300のそれぞれは、各種の制御用プログラムを格納したHDD(Hard Disk Drive)等の補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)といった主記憶装置を備える。
【0051】
そして各装置において、演算処理装置が補助記憶装置からアプリケーションやOSを読み込み、読み込んだアプリケーションやOSを主記憶装置に展開させながら、これらのアプリケーションやOSに基づいた演算処理を行なう。また、この演算結果に基づいて、各装置が備える各種のハードウェアを制御する。これにより、本実施形態の機能ブロックは実現される。つまり、本実施形態は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
【0052】
具体例として、診断用データ取得装置200は、数値制御装置に本実施形態を実現するためのソフトウェアを追加することより実現できる。また、診断装置300は、パーソナルコンピュータに本実施形態を実現するためのソフトウェアより実現できる。
【0053】
ただし、診断装置300については機械学習に伴う演算量が多いため、例えば、パーソナルコンピュータにGPU(Graphics Processing Units)を搭載し、GPGPU(General-Purpose computing on Graphics Processing Units)と呼ばれる技術により、GPUを機械学習に伴う演算処理に利用するようにすることが好ましい。これにより、高速処理できるようになる。更には、より高速な処理を行うために、このようなGPUを搭載したコンピュータを複数台用いてコンピュータ・クラスターを構築し、このコンピュータ・クラスターに含まれる複数のコンピュータにて並列処理を行うようにしてもよい。
【0054】
次に、
図2A及び
図2Bを参照して、本実施形態における取得タイミングの考え方について説明をする。なお、上述したが、前提として本実施形態では、取得タイミングが、診断用データの取得の都度、同条件下での診断用データを取得できるタイミングとなるようにする。
【0055】
まず、
図2Aに診断用データ、主軸速度、主軸負荷、及び診断用データそれぞれについての時系列に沿った変化を示す。上述したように、タイミング生成部220は、診断用データの生成に必要な情報として、主軸速度及び主軸負荷の値を取得している。また、診断用データ取得部230は、診断用データを取得可能な状態であり、取得タイミングに基づいて診断用データの取得を行う。
【0056】
そして、タイミング生成部220は、主軸速度及び主軸負荷の値に基づいて「主軸速度が一定で無負荷」である場合に、診断用データを取得するように取得タイミングを生成する。ここで、「主軸速度が一定で無負荷」である場合とは、例えば可動部110に取り付けられた工具がワークに切り込む前の瞬間である場合に相当する。
【0057】
具体的には、タイミング生成部220は、まず主軸速度を監視する。そして、主軸速度の速度が一定となった場合に、主軸負荷を監視し、主軸負荷が無負荷である場合に、取得タイミングとなったとして、取得タイミングとなった旨を診断用データ取得部230に通知する。診断用データ取得部230は、この通知に応じて診断用データの取得を開始する。
【0058】
ここで、主軸速度の変化が、予め定められる時間よりも長い時間にわたって予め定められる閾値よりも小さい変化であった場合に、主軸速度が一定であると判定できる。また、主軸負荷が予め定められる閾値よりも小さい負荷であった場合に、主軸負荷が無負荷であると判定できる。
【0059】
その後、タイミング生成部220は主軸負荷の監視を継続し、工具がワークに切り込んだことにより主軸負荷が上昇して、主軸負荷が無負荷でなくなった場合に、取得タイミングが終了したとして、取得タイミングが終了した旨を診断用データ取得部230に通知する。診断用データ取得部230は、この通知に応じて診断用データの取得を終了する。
【0060】
なお、診断用データ取得部230は、通知を受けた時点までに取得した診断用データを全て診断装置300に出力するのではなく、通知を受けた時点よりも所定時間前までに取得した診断用データを診断装置300に出力するようにするとよい。
【0061】
つまり、図示するように、実質的に取得タイミングを主軸負荷が上昇するよりも所定時間前までとするとよい。これにより、負荷が上昇した瞬間、すなわち、工具がワークに切り込んだ瞬間の、急激に変化すると考えられる診断のために不適切な診断用データは、診断に用いられなくなる。
このようにすれば、診断用データの取得の都度、「工具がワークに切り込む前」という同条件下で、診断用データを取得することが可能となる。
【0062】
次に、
図2Bを参照して取得タイミングの生成の他の方法について説明をする。
図2Bには、
図2Aと同様に診断用データ、主軸速度、主軸負荷、及び診断用データそれぞれについての時系列に沿った変化を示す。
【0063】
そして、タイミング生成部220は、主軸速度及び主軸負荷の値に基づいて「主軸速度が一定で負荷一定」である場合に、診断用データを取得するように取得タイミングを生成する。ここで、「主軸速度が一定で負荷一定」である場合とは、例えば可動部110に取り付けられた工具がワークに切り込んでから加工を継続しており、切り込みが終わる前の瞬間(すなわち、加工が終わる前の瞬間)である場合に相当する。例えば、ワークの厚さが均一である場合に、「主軸速度が一定で負荷一定」の状態となりやすい。
【0064】
具体的には、タイミング生成部220は、まず主軸速度を監視する。そして、主軸速度の速度が一定となった場合に、主軸負荷を監視し、主軸負荷が負荷一定である場合に、取得タイミングとなったとして、取得タイミングとなった旨を診断用データ取得部230に通知する。
【0065】
診断用データ取得部230は、この通知に応じて診断用データの取得を開始する。ここで、主軸速度が一定であると判定する方法は、
図2Aを参照して上述した通りである。また、主軸負荷が予め定められる範囲内の負荷となった場合に、主軸負荷が負荷一定であると判定できる。
【0066】
その後、タイミング生成部220は主軸負荷の監視を継続し、工具のワークへの切り込みが終わったことにより主軸負荷が下降して、主軸負荷が負荷一定でなくなった場合に、取得タイミングが終了したとして、取得タイミングが終了した旨を診断用データ取得部230に通知する。診断用データ取得部230は、この通知に応じて診断用データの取得を終了する。
【0067】
なお、
図2Aを参照して説明した場合と同様に、診断用データ取得部230は、通知を受けた時点までに取得した診断用データを全て診断装置300に出力するのではなく、通知を受けた時点よりも所定時間前までに取得した診断用データを診断装置300に出力するようにするとよい。
【0068】
つまり、図示するように、実質的に取得タイミングを主軸負荷が下降するよりも所定時間前までとするとよい。これにより、負荷が下降した瞬間、すなわち、工具のワークへの切り込みが終わった瞬間の、急激に変化すると考えられる診断のために不適切な診断用データは、診断に用いられなくなる。
このようにすれば、診断用データの取得の都度、「工具のワークへの切り込みが終わる前」という同条件下で、診断用データを取得することが可能となる。
【0069】
以上、
図2Aと
図2Bを参照して、取得タイミングの生成方法を2つ説明した。タイミング生成部220は、これら2つの生成方法の何れかの方法で取得タイミングを生成するようにしてもよいし、双方の方法で取得タイミングを生成するようにしてもよい。
【0070】
なお、
図2A及び後述の
図2Bは、説明の理解を容易とするために、模式化した図となっている。例えば、図中では、主軸速度や主軸負荷の変化を直線で表しているが、実際には、微小な変化があるため、多少の曲線を含んで変化する。
【0071】
次に、
図3のフローチャートを参照して、本実施形態の動作について説明をする。
まず、制御部210は、加工プログラムやフィードバック信号に基づいて制御データを生成して、可動部110の駆動を行う(ステップS11)。
【0072】
次に、タイミング生成部220は、制御データに含まれる所定の情報に基づいて取得タイミングの生成を開始する(ステップS12)。取得タイミングの生成方法については、
図2Aと
図2Bを参照して上述した通りである。
【0073】
取得タイミングを生成するため、まず、タイミング生成部220は、主軸速度や主軸負荷の監視を継続する(ステップS13にてNo)。そして、取得タイミングとなった場合に(ステップS13にてYes)、その旨を診断用データ取得部230に通知する。
【0074】
診断用データ取得部230は、通知に応じて診断用データの取得を行う(ステップS15)。その後、タイミング生成部220は主軸速度や主軸負荷の監視を継続し、診断用データ取得部230は診断用データの取得を継続する(ステップS15にてNo)。そして、取得タイミングが終了した場合に(ステップS15にてYes)、その旨を診断用データ取得部230に通知する。
【0075】
診断用データ取得部230は、通知に応じて診断用データの取得を終了し、取得した診断用データを診断装置300に対して出力する(ステップS16)。この場合に、通知を受けた時点よりも所定時間前までに取得した診断用データを診断装置300に出力するようにしてもよい点は上述した通りである。なお、取得タイミングの時間的な長さは、本実施形態を適用する環境によっても変わってくるが、例えば、1秒に満たない長さである。
【0076】
そして、診断用データを受け付けた診断装置300の診断実行部310は、この診断用データに基づいた診断を行う。
【0077】
以上説明した本実施形態によれば、診断用のテスト運転を別途行うことなく診断を実施できるので、ユーザの負担を軽減することが可能となる、という効果を奏する。
また、以上説明した本実施形態によれば、診断用データの取得の都度、同条件下での診断用データを取得できるタイミングとなるように取得タイミングを生成するので、診断においてデータの経時変化から知見を得るのに適したデータを取得することができる、という効果も奏する。
【0078】
<第2実施形態>
次に、
図4を参照して本発明の第2の実施形態について説明をする。ここで、第2の実施形態は、上述した第1の実施形態と基本的な構成及び動作について共通するので、以下では重複する説明は省略する。一方で、第2の実施形態では、センタが測定したセンサデータを取得する機能が追加されているので、この点について詳細に説明をする。
【0079】
図4に示すように、本実施形態の診断システム2は、工作機械101、診断用データ取得装置201及び診断装置300を備える。
【0080】
第2の実施形態における工作機械101は、第1の実施形態における工作機械100と同等の装置であるが、その内部又はその外部に(図中では内部に備えているものとする。)、可動部110の駆動に関する状態を測定するためのセンサ120を備えている点で、第1の実施形態における工作機械100と相違する。
【0081】
センサ120が測定したデータであるセンサデータは、診断用データとして利用するために診断用データ取得装置201に対して出力される。センサ120は、任意のセンサにより実現できるが、例えば、加速度センサ、AE(Acoustic Emission)センサ、温度センサ、電流計、電圧計等のセンサにより実現することが好ましい。
【0082】
第2の実施形態における診断用データ取得装置201は、第1の実施形態における診断用データ取得装置200と同等の装置であるが、その内部又はその外部に(図中では内部に備えているものとする。)、センサ120が出力するセンサデータを取得するための部分であるセンサデータ取得部240を備えている点で、第1の実施形態における診断用データ取得装置200と相違する。また、診断用データ取得装置201は、診断用データ取得部230が231に置き換わっている点においても、診断用データ取得装置200と相違する。
なお、第1の実施形態における診断用データ取得装置200と同様に、第2の実施形態における診断用データ取得装置201を、複数の装置と、この複数の装置を接続するネットワーク等を含んだシステム(本発明の「診断用データ取得システム」に相当)により実現するようにしてもよい。
【0083】
診断用データ取得装置201は、センサ120が出力するセンサデータを取得し、センサデータがアナログ信号である場合には、このアナログ信号を、A/D変換器によりデジタル信号に変換する。そして、診断用データ取得装置201は、変換後のデジタル信号をセンサデータとして診断用データ取得部231に対して出力する。また、仮にセンサデータがデジタル信号である場合に、診断用データ取得装置201は、そのデジタル信号をセンサデータとして診断用データ取得部231に対して出力する。
【0084】
そして、診断用データ取得部231は、診断用データとして、制御部210から制御データを取得するのみならず、センサデータ取得部240が出力するセンサデータも取得する。つまり、本実施形態では、診断用データにセンサデータを含ませる。
【0085】
これにより、診断実行部310がセンサデータを利用した診断を行うことが可能となる。そのため、本実施形態では、診断の精度を高くしたり、各センサデータを利用した多様な診断方法を利用したりすることが可能となる、という効果を奏する。
【0086】
具体例として、例えば、センサ120で、可動部110の駆動に伴い生じる振動を測定するようにすることができる。この場合、センサ120を、それぞれ互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の三軸方向の加速度を測定可能な三軸加速度センサにより実現し、各軸の加速度に相当するアナログ振動波形信号をセンサデータとして出力する。
【0087】
そして、診断用データ取得部230がアナログ振動波形信号をデジタル化したセンサデータとして出力する。また、診断用データ取得部231が取得タイミングに基づいてこのセンサデータを取得する。
更に、診断実行部310が診断用データ取得部231の取得したセンサデータに基づいて診断を行うことにより、可動部110の駆動に伴い生じる振動に基づいた診断を行うことができる。例えば、異常な振動が発生しているので、可動部110が故障していると診断することができる。
【0088】
他にも、例えば、センサ120で、可動部110の駆動に伴い変化する温度を測定するようにすることができる。この場合、センサ120を、例えば可動部110に含まれる主軸モータの温度を測定する温度センサにより実現する。
そして、診断実行部310が診断用データ取得部231の取得したセンサデータに基づいて診断を行うことにより、可動部110の駆動に伴い変化する温度に基づいた診断を行うことができる。例えば、許容可能な温度以上の温度となっているので、可動部110がオーバーヒートしていると診断することができる。
【0089】
なお、上記の各実施形態に含まれる各装置は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。また、上記の各実施形態に含まれる各装置が協働することにより行なわれる診断方法も、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0090】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0091】
また、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。例えば、以下の変形例のような変更を施した形態での実施が可能である。
【0092】
<第1の変形例>
上述した各実施形態では、
図2A及び
図2Bを参照して説明をしたように、主軸速度と主軸負荷に基づいて取得タイミングを生成して診断を行っていた。
これを変形して、例えば送り軸速度と主軸負荷に基づいて取得タイミングを生成して診断を行うようにしてもよい。つまり、工具がワークに切り込む前の瞬間であって、送り軸が一定速度で駆動している場合に診断用データを取得するように、取得タイミングを生成するようにしてもよい。そして、取得する診断用データを、例えば、送り軸の負荷等にすることにより、送り軸について診断を行うことも可能となる。
【0093】
<第2の変形例>
上述した第2の実施形態では、センサデータ取得部240が取得したセンサデータを診断用データとして利用していた。これを変形して、センサデータ取得部240が取得したセンサデータをタイミング生成部220による取得タイミングの生成のために利用するようにしてもよい。
【0094】
例えば、センサ120を加速度センサとして、このセンサ120が測定した加速度に基づいて主軸速度を算出して、取得タイミングの生成のために利用するようにしてもよい。また、センサ120をトルクセンサとして、このセンサ120が測定した主軸のトルク(主軸負荷)を、取得タイミングの生成のために利用するようにしてもよい。
【0095】
<第3の変形例>
上述した各実施形態では、診断用データ取得装置200や診断用データ取得装置201と、診断装置300を別体の装置により実現することを想定していたが、これらを同一の装置により実現するようにしてもよい。あるいは、診断用データ取得装置200や診断用データ取得装置201の機能の一部を診断装置300により実現するようにしてもよく、診断装置300の機能の一部を診断用データ取得装置200や診断用データ取得装置201により実現するようにしてもよい。
更には、診断用データ取得装置200、診断用データ取得装置201、診断装置300のそれぞれについて、1つの装置ではなく、複数の装置で実現するようにしてもよい。