(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<全体構成>
図1に、本実施形態に係る車両10の構成を例示する。なお、
図1の一点鎖線は信号線を表している。
【0017】
車両10は、駆動源として内燃機関12及び回転電機MG1,MG2を備える、いわゆるハイブリッド車両である。なおこの車両10はいわゆるシリーズパラレル式のハイブリッドシステムが搭載されており、内燃機関12及び回転電機MG2を駆動源とするHV走行と、回転電機MG2を駆動源とするEV走行が可能となっている。また
図1では、車両10の構成のうち、本実施形態に係る駆動源制御に関連する構成を特に抜き出して図示しており、その他の構成については図示を省略している。
【0018】
車両10は、内燃機関12、回転電機MG1,MG2の他に、動力分割機構14、リダクション機構16、バッテリ18、DC/DCコンバータ20、インバータINV1,INV2、制御装置22、及び複数のセンサ(後述する)を備える。
【0019】
バッテリ18の直流電圧がDC/DCコンバータ20により昇圧されてインバータINV2に出力される。インバータINV2は、昇圧された直流電力を交流電力に変換して回転電機MG2に供給し、回転電機MG2を駆動させる。
図2を参照し、回転電機MG2から得られた駆動力は、リダクション機構16、カウンタードライブギヤ24に伝達され、さらに図示しないファイナルギヤ、プロペラシャフト、及びディファレンシャルギヤを経て、駆動輪26(後輪)に伝達される。
【0020】
回転電機MG2の駆動軸はリダクション機構16のサンギヤ28に連結される。リダクション機構16のプラネタリキャリア30は固定される。さらにリダクション機構16のリングギヤ32はカウンタードライブギヤ24(出力)に連結される。後述するように、リダクション機構16のギヤ比Grmが回転電機MG1,MG2の動作点算出に用いられる。
【0021】
図1に戻り、内燃機関12から出力された駆動力は、動力分割機構14によって回転電機MG1の駆動力と駆動輪26の駆動力とに分割される。前者の駆動力により回転電機MG1が発電し、これにより得られた電力はインバータINV1,INV2を介して回転電機MG2に送られる。また後者の駆動力は、カウンタードライブギヤ24に伝達され、さらに図示しないファイナルギヤ、プロペラシャフト、及びディファレンシャルギヤを経て、駆動輪26(後輪)に伝達される。
【0022】
図2に示すように、内燃機関12の駆動軸は動力分割機構14のプラネタリキャリア34に連結される。動力分割機構14のサンギヤ36は回転電機MG1の駆動軸に連結される。動力分割機構14のリングギヤ38はカウンタードライブギヤ24(出力)に連結される。後述するように、プラネタリギヤ比ρ(サンギヤ歯数/リングギヤ歯数)が回転電機MG1,MG2の動作点算出に用いられる。
【0023】
図1に戻り、回生制動時には、駆動輪26が回転電機MG2を駆動(発電駆動)し、これにより回生電力が生じる。またバッテリ18のSOC(State Of Charge)が低下しているとき等には、内燃機関12が回転電機MG1を発電駆動させる。前者による回生電力及び後者による発電電力はインバータINV1,INV2により交直変換されて直流電力となり、またDC/DCコンバータ20により降圧され、バッテリ18に供給される。
【0024】
制御装置22は、DC/DCコンバータ20及びインバータINV1,INV2の図示しないスイッチング素子のオン・オフ制御を介して、回転電機MG1,MG2を制御する。また、回転電機MG1の制御を介して、動力分割機構14における、内燃機関12と駆動輪26の回転数の比(変速比)を制御する。この回転電機MG1,MG2の出力制御は、後述するように、最適電力入出力Pb_opt(t)に基づいて行われる。
【0025】
また制御装置22は、内燃機関12の出力制御及び始動可否判定を行う。この出力制御及び始動可否判定は、後述するように、内燃機関最適出力Pe_optに基づいて行われる。
【0026】
制御装置22は、機器・センサインターフェースを介して、種々のセンサからの信号を受信する。具体的には、バッテリ18回りのセンサとして、バッテリ18の電圧VBを検出するバッテリ電圧センサ59、バッテリ18の温度TBを検出するバッテリ温度センサ61、及びバッテリ18の電流IBを検出するバッテリ電流センサ63から、制御装置22は各種信号を受信する。また、二次側電圧VHを検出する二次側電圧センサ65、回転電機MG1の電流を検出するMG1電流センサ67A,67B、回転電機MG1の回転数を検出するMG1回転数センサ68、回転電機MG2の電流を検出するMG2電流センサ71A,71B、及び回転電機MG2の回転数を検出するMG2回転数センサ72からも各種信号を受信する。
【0027】
さらに、制御装置22は、アクセルペダル74の踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ76、駆動輪26の回転数[rpm]に基づいて車速を検出するスピードセンサ80、及び内燃機関12の回転数[rpm]を検出するクランクポジションセンサ78からも各種信号を受信する。
【0028】
制御装置22はコンピュータから構成されてよく、CPU、記憶部、機器・センサインターフェースが内部バスを介して互いに接続されている。これらのハードウェア資源が適宜割り当てられて、制御装置22には
図3に示すような機能ブロックが(仮想的に)構築される。
【0029】
制御装置22は、大きく分けて出力動作点算出部40及び電気価値算出部42を備える。出力動作点算出部40は、内燃機関12及び回転電機MG1,MG2の最適出力を算出する。電気価値算出部42は、最適出力の算出に用いられる電気価値Kを算出する。
【0030】
出力動作点算出部40は、要求駆動力マップ記憶部43、内燃機関動作点マップ記憶部44、内燃機関動作点算出部46、回転電機動作点算出部48、電気系損失算出部50、バッテリ入出力候補算出部52、評価関数記憶部54、及び最適出力探索部56を備える。
【0031】
なお、内燃機関動作点算出部46及び回転電機動作点算出部48をまとめて動作点算出部として捉えてもよい。このように捉えた場合、後述するように、動作点算出部は、所定の算出タイミングにおける車速Vc及びアクセル開度Accから求められる車両要求駆動力Tpを満たす、内燃機関12及び回転電機MG1,MG2の出力の組み合わせを複数パターンに亘って求める。また後述するように、最適出力探索部56を出力設定部として捉えてもよい。
【0032】
電気価値算出部42は、走行パターン予測部58、目標電力積算量設定部60、電力積算量算出部62、電力積算量比較部64、及び電気価値設定部66(電気価値係数設定部)を備える。これらの各機能ブロックの処理については後述する。
【0033】
<出力動作点算出プロセス>
図4には、制御装置22の出力動作点算出部40により実行される、出力動作点算出プロセスのフローチャートが例示されている。このフローチャートは時間管理されており、時刻カウントt=0からt_ENDまで繰り返される。繰り返しのタイミング(算出タイミング)は、例えば制御装置22のCPUクロックによるカウントに基づいて定められる。
【0034】
時刻カウントt=0からt_ENDは、後述する予測区間の始点から終点までに係る時間に対応している。なお、時刻カウントに代えて、パラメータtを車両の位置や走行距離としてもよい。この場合、t=0は予測区間の始点に相当し、t=t_ENDは予測区間の終点に相当する。
【0035】
所定の算出タイミング(例えば所定の時刻カウント)において、内燃機関動作点算出部46に、スピードセンサ80から車速Vcが入力され、また、アクセルポジションセンサ76からアクセル開度Accが入力される。これを受けて内燃機関動作点算出部46は、要求駆動力マップ記憶部43に記憶された要求駆動力マップ(
図5参照)を呼び出す。
【0036】
要求駆動力マップは、横軸に車速Vc(t)、縦軸に要求駆動力Tp(t)[Nm](車両要求駆動力)を取る直交座標系を備える。この座標系に、アクセル開度Accごとの特性カーブがプロットされる。この特性カーブは、内燃機関12や回転電機MG1,MG2のトルク・回転数特性に基づく制約の範囲で車両10の加速特性として設定される。なお、要求駆動力Tp(t)は、車両要求駆動力と言ってもよく、車両10に要求されたトータルの要求駆動力であり、後述するように、HV走行では内燃機関12及び回転電機MG2の要求駆動力(目標駆動力)に分配される。またEV走行では回転電機MG2の要求駆動力(目標駆動力)となる。
【0037】
図5に示されるように、特性カーブはアクセル開度Acc(t)が大きいほど、車速Vc(t)に対する要求駆動力Tp(t)が大きくなるように設定される。さらに個々の特性カーブは、車速の増加に従って要求駆動力が低下するような特性を備えている。
【0038】
内燃機関動作点算出部46は、要求駆動力マップにプロットされた複数の特性カーブの中から、受信したアクセル開度Accに対応するものを選択する。さらに受信した車速Vcに対応する要求駆動力Tp(t)を求める(S10)。
【0039】
なお、車両が追従機能や自動運転等によりアクセル操作が無い場合、例えば現在の車速と目標車速とに基づいて出力動作点算出部40への入力としての(物理的なアクセル開度(操作量)とは異なる)アクセル開度Accを求めても良い。
【0040】
次に内燃機関動作点算出部46は、内燃機関動作点マップ記憶部44から内燃機関動作点マップ(
図6)を呼び出す。内燃機関動作点マップは、横軸に内燃機関回転数(Ne_i)、縦軸に内燃機関トルク(Te_i)を取る直交座標系を備える。この座標系に、燃料消費率fcが面的に分布されている。燃料消費率fcは、例えば単位出力当たりの燃料消費量を示す。以下適宜、fcを単に燃料消費量と呼ぶ。
図6ではfc1が最も燃料消費量が低く(燃費が良く)、fc5が最も燃料消費率が高い(燃費が悪い)。
【0041】
また内燃機関動作点マップには、横軸に沿って燃料消費量(単位燃料消費量、燃料消費率)が最低となる座標を繋いだ最適動作線がプロットされている。さらに同マップには、内燃機関の出力Peごとの等出力線がプロットされている。
【0042】
内燃機関動作点算出部46は、内燃機関動作点マップに基づいて、出力Peの等出力線と最適動作線の交点を求め、その座標(Ne,Te)を求める。これをすべての等出力線に対して実行する(S12)。例えば等出力線Pe(t)_iに対して、回転数Ne、トルクTe、及び燃料消費量fcの組(Ne(t)_i,Te(t)_i,fc(t)_i)が求められる。つまり、任意の内燃機関出力Pe(t)に対する動作点(回転数、トルク、燃料消費量)が求められる。
【0043】
また、内燃機関動作点算出部46は、内燃機関12の出力がゼロ(Pe=0)であるときの動作点(動作点候補)も求める。当然のことながら、回転数、トルク、燃料消費量はいずれもゼロになる。
【0044】
なお、ステップS12の内燃機関の動作点候補の算出プロセスは、内燃機関動作点マップがあれば完結することから、
図4に示すフローチャート内で、つまりオンラインで算出する代わりに、フローチャート外で予め、つまりオフラインで算出しても良い。
【0045】
あるいは、内燃機関の動作点候補(Ne(t)_i,Te(t)_i,fc(t)_i)は、車両要求駆動力Tp(t)や車速Vc(t)によって変化しない定数として捉えることもできる。このことから、一度動作点候補(Ne_i,Te_i,fc_i)を求めた後は、前回値をそのまま利用しても良い。
【0046】
次に回転電機動作点算出部48は、内燃機関12の各動作点に対応する、回転電機MG1,MG2の動作点(動作点候補)を求める(S14)。例えば下記の数式(1)〜(4)を用いて、内燃機関12の動作点候補(Ne(t)_i,Te(t)_i,fc(t)_i)に対応する回転電機MG1の動作点候補(Ng(t)_i,Tg(t)_i)及び回転電機MG2の動作点候補(Nm(t)_i,Tm(t)_i)を求める。なおNg(t)_i,Tg(t)_iはそれぞれ回転電機MG1の回転数及びトルクを示し、Nm(t)_i,Tm(t)_iはそれぞれ回転電機MG2の回転数及びトルクを示す。
【0048】
数式(1)中、Tp(t)は要求駆動力、Tm(t)は回転電機MG2のトルク、Tg(t)は回転電機MG1のトルク、Grmはリダクション機構16の減速比、ρは動力分割機構14のプラネタリギヤ比、Te(t)は内燃機関のトルクを示す。
【0049】
数式(1)の左辺と右辺を参照して、要求駆動力Tp(t)はステップS10にて取得される。減速比Grm及びプラネタリギヤ比ρは既知の定数が与えられている。従って、内燃機関のトルクTe(t)_iを数式(1)に代入すると、これに対応する回転電機MG2のトルクTm(t)_iが得られる。
【0050】
数式(2)では、プラネタリギヤ比ρに既知の定数が与えられている。従って、内燃機関のトルクTe(t)_iを数式(2)に代入すると、これに対応する回転電機MG1のトルクTg(t)_iが得られる。
【0051】
また、数式(4)中、Vc(t)は車速、Grは最終ギヤ比(ディファレンシャルギヤ比)、Rtは駆動輪26の半径を示す。数式(3)のプラネタリギヤ比ρ、数式(4)の最終ギヤ比Gr、及び駆動輪半径Rtは既知の定数が与えられている。また、車速Vc(t)はスピードセンサ80から得られる。したがって、数式(3)(4)を連立させると、内燃機関の回転数Ne(t)_iに対応する回転電機MG1の回転数Ng(t)_iと回転電機MG2の回転数Nm(t)_iが得られる。
【0052】
以上のように、内燃機関12の動作点候補(Ne(t)_i,Te(t)_i,fc(t)_i)、要求駆動力Tp(t)(トータル要求駆動力)、車速Vc(t)に基づいて、内燃機関12の動作点候補(Ne(t)_i,Te(t)_i,fc(t)_i)に対応する回転電機MG1の動作点候補(Ng(t)_i,Tg(t)_i)及び回転電機MG2の動作点候補(Nm(t)_i,Tm(t)_i)が求められる。言い換えると、要求駆動力Tp(t)(トータル要求駆動力)を満たす、内燃機関12の動作点候補(Ne(t)_i,Te(t)_i,fc(t)_i)、回転電機MG1の動作点候補(Ng(t)_i,Tg(t)_i)及び回転電機MG2の動作点候補(Nm(t)_i,Tm(t)_i)が求められる。
【0053】
次に電気系損失算出部50は、回転電機MG1,MG2を動作点候補に従って動作させた際の電気系損失を算出する(S16)。電気系損失は回転電機MG1,MG2における損失(銅損失等)と、バッテリ18の直流電力をDC/DCコンバータ20及びインバータINV1,INV2にて変換する際の変換損失(スイッチング損失や通流損失等)が含まれる。電気系損失算出部50は、回転電機MG1の動作点候補(Ng(t)_i,Tg(t)_i)及び回転電機MG2の動作点候補(Nm(t)_i,Tm(t)_i)に対応する電気系損失を算出する。
【0054】
バッテリ入出力候補算出部52は、回転電機MG1,MG2の動作点候補(Ng(t)_i,Tg(t)_i),(Nm(t)_i,Tm(t)_i)に対応する、バッテリ18の入出力電力候補Pb(t)_i(電力消費量候補)を求める(S18)。具体的には、回転電機MG1の回転数Ng(t)_iとトルクTg(t)_iの積にこれに対応する電気系損失を加えたものと、回転電機MG2の回転数Nm(t)_iとトルクTm(t)_iの積にこれに対応する電気系損失を加えたものを、回転電機系入出力電力候補Pb’(t)_iとする。また、バッテリ18が消費または蓄積される単位時間当たりの電力量である、入出力電力候補Pb(t)_iは、回転電機系入出力電力候補Pb’(t)_iに充放電損失Pb_loss(バッテリ内部抵抗による損失)を加えたものとなる。したがって、Pb(t)=Pb’(t)+Pb_lossとなる。
【0055】
なお、入出力電力候補Pb(t)_iは、正負の値を取り得る。正の場合は放電電力であり、負の場合は充電電力である。したがって、後述する電力積算量ΣPbは、放電後に充電が行われたときはその充電分、電力積算量ΣPbの値が低下することになる。
【0056】
次に、最適出力探索部56(出力設定部)は、時刻tにおける、内燃機関12及び回転電機MG1,MG2の最適出力を探索、設定する。まず最適出力探索部56は、評価関数記憶部54から下記数式(5)で表される評価関数Jを呼び出す。
【0058】
数式(5)において、tは現時刻(現算出タイミング)を示し、Kは電気価値を示す。電気価値Kは電気価値係数とも表され、要するにバッテリ18の入出力電力Pb(回転電機MG1,MG2の出力に伴うバッテリ18の電力消費量)を燃料消費量に変換するための係数である。fc(t)が燃料消費量(燃料消費率)を表していることに対応して、K×Pb(t)を換算燃料消費量と呼んでもよい。また、燃料消費量fc(t)と換算燃料消費量K×Pb(t)の和を、等価燃料消費量と呼んでもよい。
【0059】
ここで本実施形態では、上述の電気価値Kを、予測区間であるt=0からt=t_ENDまで定数として取り扱う。これにより、電気価値を算出タイミングごとに更新する場合と比較して、演算負荷を軽減できる。
【0060】
数式(5)において、最適出力探索部56は、評価関数Jに燃料消費量fc(t)_i及びこれに対応するバッテリ18の入出力電力候補Pb(t)_iを代入する。これにより得られた等価燃料消費量fec(t)_iを比較して、例えば
図7に例示するように、最小となる等価燃料消費量fec(t)_minを求める(S20)。求められたfec(t)_minに対応する内燃機関出力候補を求めてこれを内燃機関最適出力Pe_opt(t)に設定する。
【0061】
なお、数式(5)では、評価関数Jは現時刻tにおける等価燃料消費量fec(t)のみでなく、現時刻t(現算出タイミング)の前の時刻0〜t−1までの等価燃料消費量fec(t)の積算値を含んでいる。つまり各時刻の等価燃料消費量fec(t)の最小値が積算されている。等価燃料消費量fec(t)の積算値を求めることで、予測区間における電力積算量ΣPbを求めることができる。電力積算量ΣPbは後述する電気価値Kの設定時に用いられる。
【0062】
最適出力探索部56によって設定された内燃機関最適出力Pe_opt(t)に基づいて、時刻tにおける内燃機関12が駆動制御される(S22)。例えばPe_opt(t)=0であれば内燃機関12を停止させる。Pe_opt(t)>0である場合、内燃機関最適出力Pe_opt(t)を内燃機関12の目標出力として、既知の駆動制御が実行される。
【0063】
また、内燃機関最適出力Pe_opt(t)より、内燃機関動作点マップを用いてNe_opt(t),Te_opt(t)を求める。さらにこのNe_opt(t),Te_opt(t)、及びTp(t)に基づいて、数式(1)〜数式(5)を用いて、動作点(Ng(t)_i,Tg(t)_i),(Nm(t)_i,Tm(t)_i)が算出され、回転電機MG1,MG2が駆動制御される(S24)。例えば内燃機関最適出力Pe_opt(t)=0のとき、これに対応するトルクTm(t)に基づいて回転電機MG2が駆動され、EV走行が行われる。
【0064】
さらに出力動作点算出部40は、時刻tが予測区間の終点(目標地点)に対応する時刻t_ENDに到達しているか否かを判定する(S26)。時刻t_ENDに未到達の場合、ステップS10まで戻る。時刻t_ENDに到達した場合、本フローは終了となり、電気価値算出部42によって新たに電気価値Kが求められる(再設定される)。
【0065】
なお、
図4において、アクセル開度Acc(t)、車速Vc(t)、電気価値Kを変数とし、評価関数Jを最小にする内燃機関最適出力Pe_opt(t)を、マップ化して予め制御装置22の記憶部に記憶させておいてもよい。このようにすることで、更なる演算負荷の軽減が図られる。
【0066】
<電気価値Kの設定>
図8に、電気価値K(電気価値係数)の設定プロセスのフローチャートを例示する。このプロセスでは、現在地点または過去の通過地点(算出タイミングの地点)から所定の目標地点までを予測区間として設定し、予測区間を仮想的に走行させた場合のシステム動作を車両モデルを用いて計算する。このとき、内燃機関12及び回転電機MG1,MG2の出力は評価関数Jが最小となるような設定とする。このような予測区間における仮想走行を、電気価値Kを変えて複数回試行する。そして、目標地点に到達したときの電力積算量ΣPbをそれぞれ求め、これと目標電力積算量Spbとの差が小さいときの電気価値Kを、予測区間における目標地点までの、実走行時の電気価値Kとして設定する。
【0067】
図3、
図8を参照して、電気価値算出部42の走行パターン予測部58は、
図9のように、現在地点(所定の算出タイミングの地点、0)から所定の目標位置(t_END)までの予測区間の道路勾配と、予測区間における車速変化(推定車速変化)を求める(S30)。
【0068】
予測区間の道路勾配は、例えば車両のナビゲーションシステムの地図情報(目的地、選択ルート、及び選択ルートの道路勾配データ)から得ることができる。また、推定車速変化は、例えば道路勾配と車速の関係について過去の運転実績(ドライバー特性)が制御装置22の記憶部に記憶されており、これを参照することで得られる。また、ナビゲーションシステムから渋滞情報が得られる場合は、これを参照して推定車速変化に反映できる。また、この推定車速変化から、算出タイミングtの終了地点における時刻t_ENDが算出できる。
【0069】
次に、目標電力積算量設定部60は、予測区間の終了時点、つまり目標地点到達時(t=t_END)における、目標電力積算量Spbを設定する(S32)。例えばバッテリ18のSOCに制約を設けない場合、評価関数Jを最小化させるために、予測区間の終了時点でバッテリ18のSOCが下限値に至るような電力管理をすることが考えられる。しかしながら、その次の運転(トリップ)を考慮すると、そのような電力管理が最適であるとは必ずしもいえない。そこでこのステップでは、予測区間の終了時点(終了地点)における目標電力積算量Spbを設定し、いわばバッテリ18の入出電力条件に制約を設けている。目標電力積算量Spbは、例えば0(±0)に設定される。このとき、予測区間の始点と終点でバッテリ18のSOCは同一(増えもしないし減りもしない)となる。この設定は車両の運転者や乗員によって入力されても良いし、予め定数として入力されてもよい。
【0070】
次に、電気価値設定部66は、任意の電気価値K_kを数式(5)に設定する(S34)。予測区間の道路勾配、推定車速変化、及び目標電力積算量Spbについて、過去に類似したものがある場合には、そのときの電気価値K_kを数式(5)に設定しても良い。
【0071】
次に、予測区間における算出タイミングtを0にリセットする(S36)。さらに、
図4のフローと同様の、出力動作点算出プロセスを実行する(S10〜S20、S26)。ステップ記号が同一のものについては説明済みであるため以下では適宜説明を省略する。これらの出力動作点算出プロセスでは、求められた道路勾配及び推定車速変化に基づいて車両10に予測区間を仮想的に走行させる。この際、等価燃料消費量が最小となる内燃機関12及び回転電機MG1,MG2の出力の組み合わせにて仮想走行を実行する。
【0072】
なお、ステップS10の要求駆動力Tpの算出に当たっては、現在時刻の車速と次時刻の車速の差分、及び現在時と次時刻の道路勾配の変化から、車両の運動方程式を用いて直接的に要求駆動力Tpを求めても良い。
【0073】
また、
図4と同様にして、車速Vc(t)、車両要求駆動力Tp(t)、電気価値Kを変数とし、評価関数Jを最小にする最適電力入出力Pb_opt(t)を、マップ化して予め制御装置22の記憶部に記憶させておいてもよい。このようにすることで、更なる演算負荷の軽減が図られる。
【0074】
なお上述したように本実施形態では、ステップS34にて設定された電気価値K_k下で、出力動作点算出プロセスに基づき、仮想的に車両10を走行させる。仮想走行では内燃機関12の駆動制御を行わないため、ステップS22は省略される。
【0075】
予測区間の終了時点t_END(目標地点)に到達する(S26)と、電力積算量算出部62は、予測区間の始点から終点に至るまでの電力積算量ΣPbを求める(S38)。例えば上述したように、数式(5)の入出力電力Pb(t)を積算することで、電力積算量ΣPbを求める。
【0076】
次に電力積算量比較部64は、ステップS38にて求められた電力積算量ΣPbと目標電力積算量Spbとを比較する(S40)。例えば両者の差分の絶対値を求める。
図10に例示するように、この差分の絶対値が所定の閾値幅ε未満である場合、現在設定されている電気価値K(電気価値係数)が予測区間の始点から終点における、実走行時の電気価値Kとして数式(5)の評価関数Jに設定される(S42)。具体的には電力積算量比較部64から電気価値設定部66に電気価値決定指令が送られ、電気価値設定部66では、現在設定されている電気価値Kを予測区間の終点まで定数として維持する。
【0077】
一方、電力積算量ΣPbと目標電力積算量Spbの差分の絶対値が閾値幅ε以上である場合には、電力積算量比較部64は、電気価値設定部66に電気価値Kの変更を指示する。
図8のフローチャートではステップS34まで戻される。このようにすることで、複数の電気価値Kのそれぞれに対応した予測電力積算値が求められる。
【0078】
このように本実施形態では、車両10が今後走行されると予測される区間において仮想的に車両10を走行させたときの結果に基づいて、実走行時の電気価値Kを設定している。このようにすることで、電気価値Kによる換算燃料消費量K×Pb(t)の信頼性(妥当性)の低下を抑制できる。
【0079】
なお、実走行において渋滞が発生する等、仮想走行時には想定されなかった車速変更が生じる場合がある。このような場合は、予測区間の終了地点に到達する前に電気価値Kの再設定を行ってもよい。例えば、実走行時の車速と仮想走行時の車速とを比較して、両者の差が所定の閾値を超過する状態が所定期間継続した場合に、電気価値Kの再設定が行われる。以上で説明したような電気価値Kの算出方法とは別に、予測区間における道路勾配や推定車速データから、統計的あるいは学習的に電気価値Kを求めてもよい。例えば予測区間における平均車速、平均加減速度などから電気価値Kを求めてもよい。
【0080】
<実施例1>
図11には、第1の実施例として、所定の予測区間における道路勾配と推定車速変化のグラフが示されている。上段は推定車速変化を示し、横軸は時間、縦軸は車速を示す。下段は道路勾配を示し、横軸は上段と同期した時間、縦軸は標高を示す。この例における予測区間は、前半平坦路が続き、後半は下り勾配が続く。この道路勾配及び推定車速変化に基づき、電気価値Kを求めた。目標電力積算量Spbは0に設定した。
【0081】
図12には、
図11の区間を、本実施形態に係る出力動作点の算出や電気価値Kの設定を行う条件で実走行させたときの制御結果が示されている。上段から順に、要求駆動出力Pt[kW]、内燃機関12の出力[kW]、燃料消費量[g]、及び、電力消費積算量[kJ]のグラフが示されている。横軸はいずれも同期された時間軸である。また、要求駆動出力Ptと内燃機関12の出力との差が、バッテリ18の入出力に相当する。
【0082】
燃料消費量を示すグラフについて、数式(5)で示される等価燃料消費量の積算値と、内燃機関12の燃料消費量が示されている。走行区間終了地点における等価燃料消費量積算値が低く(30g未満)に抑えられていることが理解される。
【0083】
また、最下段の電力消費積算量を参照すると、区間終了地点における電力消費積算量は0近傍の値に収まっており、目標電力積算量(Spb=0)に近い電力積算量ΣPbが得られていることが理解される。
【0084】
次に、
図13には、本実施形態に係る出力動作点の算出や電気価値Kの設定を行う代わりに、動的計画法を用いて最適制御解を算出した場合の例が比較例として示されている。この例では、推定車速変化及び道路勾配が既知である場合に、Σpb=Spb=0となる制約条件の下で、燃料消費量の積算値が最小となる(minΣfc)大域的最適解を求めた。
図13について、上段から順に、要求駆動出力[kW]、内燃機関12の出力[kW]、燃料消費量[g]、及び、電力消費積算量[kJ]のグラフが示されている。横軸はいずれも同期された時間軸である。
【0085】
図13の特に最下段のグラフ波形を参照すると、
図12の本実施形態に係る波形と類似しており、本実施形態は、相対的に演算負荷の大きい動的計画法と同等の精度を備えることが理解される。
【0086】
<実施例2>
図14には、第2の実施例として、所定の予測区間における道路勾配と推定車速変化のグラフが示されている。このグラフは推定車速変化を示し、横軸は時間、縦軸は車速を示す。道路勾配は0、つまり予測区間の全区間に亘って平坦路を走行するものとした。一方、時刻1000秒付近から終了時点まで渋滞区間が続くものとした。この道路勾配及び推定車速変化に基づき、電気価値Kを求めた。目標電力積算量Spbは0に設定した。
【0087】
図15には、
図14の区間を、本実施形態に係る出力動作点の算出や電気価値Kの設定を行う条件で実走行させたときの制御結果が示されている。上段から順に、要求駆動出力Pt[kW]、内燃機関12の出力[kW]、燃料消費量[g]、及び、電力消費積算量[kJ]のグラフが示されている。横軸はいずれも同期された時間軸である。また、要求駆動出力Ptと内燃機関12の出力との差が、バッテリ18の入出力に相当する。
【0088】
燃料消費量を示すグラフについて、数式(5)で示される等価燃料消費量の積算値と、内燃機関12の燃料消費量が示されている。渋滞区間に入る前に内燃機関12の出力を増加させ、バッテリ18を充電させた後、渋滞区間では内燃機関12を作動させないEV走行が選択されていることが理解される。
【0089】
また、最下段の電力消費積算量を参照すると、区間終了地点における電力消費積算量は0に収まっており、目標電力積算量(Spb=0)と一致した電力積算量ΣPbが得られていることが理解される。
【0090】
次に、
図16には、本実施形態に係る出力動作点の算出や電気価値Kの設定を行う代わりに、動的計画法を用いて最適制御解を算出した場合の例が比較例として示されている。この例では、推定車速変化及び道路勾配が既知である場合に、ΣPb=0の制約条件の下で燃料消費量の積算値が最小となる(minΣfc)大域的最適解を求めた。
図16について、上段から順に、要求駆動出力[kW]、内燃機関12の出力[kW]、燃料消費量[g]、及び、電力消費積算量[kJ]のグラフが示されている。横軸はいずれも同期された時間軸である。
【0091】
図16の特に燃料消費量[g]及び電力消費積算量[kJ]のグラフ波形を参照すると、
図15の本実施形態に係る波形と類似しており、本実施形態は、相対的に演算負荷の大きい動的計画法と同等の精度を備えることが理解される。