特許第6571713号(P6571713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6571713慢性疼痛の管理方法及びHCGを使用する処置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571713
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】慢性疼痛の管理方法及びHCGを使用する処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/24 20060101AFI20190826BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20190826BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   A61K38/24ZMD
   A61P25/00
   A61P25/04
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-83287(P2017-83287)
(22)【出願日】2017年4月20日
(62)【分割の表示】特願2014-505405(P2014-505405)の分割
【原出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2017-206500(P2017-206500A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2017年5月17日
(31)【優先権主張番号】61/475,908
(32)【優先日】2011年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/211,101
(32)【優先日】2011年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/311,250
(32)【優先日】2011年12月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513255070
【氏名又は名称】ニューラライト エイチディー,リミテッド ライアビリティー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Neuralight HD,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ヒックス,エドソン,コンラッド,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ダットン,コンスタンス,ティー.
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/069271(WO,A1)
【文献】 特表2006−504735(JP,A)
【文献】 特表2005−501918(JP,A)
【文献】 Medscape, Steven Fox, "Patients With Intractable Pain Report Relief Using HCG", March 28, 2011, [平
【文献】 Practical Pain Manegument, 2009, vol.9, no.5, p.44-46
【文献】 News Medical, "HCG hormone therapy may benefit patients with intractable pain", Published on March 2
【文献】 Journal of Prolotherapy, 2010, vol.2, no.4, p.489-494
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性疼痛の治療に使用するための、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)を含む医薬組成物であって、120IU/日と170IU/日の間の毎日の皮下投与量で前記HCGが患者に投与されるように用いられることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
患者が、線維筋痛症、過敏性腸症候群、慢性関節症、炎症性疼痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、片頭痛、慢性背部痛及び椎間板ヘルニア、神経障害性疼痛、外傷性神経損傷、外傷後ストレス障害疼痛症候群、外陰部痛並びに慢性術後疼痛症候群のうち少なくとも1つに罹患していることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記HCGの皮下投与量が、140IU/日と160IU/日の間であることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
中枢性感作障害の治療に使用するための、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)を含む医薬組成物であって、120IU/日と170IU/日の間の毎日の皮下投与量で前記HCGが患者に投与されるように用いられることを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
前記HCGの皮下投与量が、140IU/日と160IU/日の間であることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
患者が、オピオイドで併用処置されないことを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
(a)120IU/日と170IU/日の間の量であるヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の皮下投与量を含む、毎日投与のための用量単位の形態であることを特徴とする医薬組成物、
(b)前記医薬組成物の皮下投与のための送達デバイス、及び
(c)慢性疼痛及び中枢性感作のうち少なくとも1つを前記医薬組成物の適応症として表示するラベル
を含むことを特徴とする、慢性疼痛または中枢性感作障害の治療に使用するためのキット。
【請求項8】
前記ラベルが、140IU/日と160IU/日の間のHCGの毎日の投与計画を表示することを特徴とする、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記デバイスが、希釈剤と混合すると注射に好適となる、前記医薬組成物の凍結乾燥製剤を含むチャンバー(複数可)を備えたバイアルまたはカートリッジを含むことを特徴とする、請求項7に記載のキット。
【請求項10】
前記デバイスが、前記医薬組成物を皮下用持効性放出ペレット製剤中に含むことを特徴とする、請求項7に記載のキット。
【請求項11】
患者が、中枢性感作障害を有していることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2011年8月16日に出願された米国特許出願第13/211101号明細書の一部継続出願であり、2011年4月15日に出願された米国仮特許出願第61/475908号明細書の優先権の利益を主張するものでもあり、これらの明細書の各々の内容全体を参照によって本願明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明の分野は慢性疼痛の管理であり、特に、特定の低用量のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の投与である。
【背景技術】
【0003】
医学界において継続中で蔓延している問題として、慢性疼痛症候群の患者の処置がある。慢性疼痛は、今日では、機械的、化学的、代謝性または炎症性の障害が原因で起こる侵害受容性疼痛とも呼ばれる急性疼痛とは根本的に異なることが十分認識されている。
【0004】
慢性疼痛及び急性疼痛の機序及び経路は生理学的に異なるため、これらには処置のために異なる手法が必要であることが一部では認識されてきた。残念ながら、医学界において多くは、慢性疼痛症候群に罹患している患者を急性の侵害受容性疼痛経路に対処するためにデザインされた薬剤で処置することが続けられている。かかる方法は毒性及び依存症の問題を伴うことが多く、結局、疼痛を絶つこと及び/またはクオリティオブライフを向上させることにおいて、概して不十分である。従って、慢性疼痛に対処するために新奇な診断用パラダイム及び処置プロトコールが必要である。
【0005】
中枢性感作は、種々の慢性疼痛及び気分障害を含む広範囲の表現型の症候群の根底にある、新たに認識された診断に用いる本質である。本明細書で使用する場合、中枢性感作とは、神経細胞、並びに中枢の、疼痛の強度、認知及び調節系の回路の機能の異常な状態を意味し、これはシナプスの、化学的な、機能的な及び/または器質的な変化によるものであり、この場合、疼痛はもはや、急性の侵害受容性疼痛のようには、特定の末梢刺激に結びつかない。むしろ、中枢神経系(CNS)が、末梢刺激なしに、疼痛の過敏及び認知の発生を開始し、維持し、その一因となる。従って、本明細書で使用する場合、慢性疼痛及び中枢性感作は、診断に用いる状態及び症候群の重なり合う一群(constellation)を表す。
【0006】
本発明者らは次のものを(原因となる、即ちそれから結果として生じる)中枢性感作と関連する状態の非網羅的な一覧であると考え、これらの各々はヒトまたは他の脊椎動物に当てはまると考えられる。
1.自律神経性ニューロパチー
2.慢性背部痛
3.慢性関節痛に関連した代謝性ニューロパチー
4.炎症を伴う慢性関節痛
5.線維筋痛症
6.過敏性腸症候群
7.片頭痛
8.神経障害性疼痛
9.変形性関節症
10.帯状疱疹後神経痛
11.術後痛症候群
12.外傷後ストレス障害痛症候群
13.リウマチの、関節炎の、乾癬性の及び他の慢性関節症
14.新形成及び/または椎間板ヘルニアを伴う脊髄神経圧迫症候群
15.三叉神経痛
16.外陰部痛症候群
【0007】
中枢性感作は、現在のところ、神経可塑性と呼ばれる特徴が明快な細胞変化の一群によって成立すると考えられている。神経可塑性は神経細胞及びミクログリア細胞の細胞構築の物理的な再構築、例えばシナプスのギャップ結合、イオンチャネル調節による膜興奮性の移動及び遺伝子転写における変化からなる。神経可塑性の変化は双方向性でありうる。換言すると、適切に機能している細胞が再構築をして、それにより機能不全に作動する状態になり、この状態が慢性疼痛及び気分障害の「疾患状態」を作り出すことがある。逆に、この神経可塑性が仲介した機能不全の変化が逆行して「正常な」機能に戻ることがあり、これは臨床的に「疾患」状態の解消に相当しうる。
【0008】
中枢性感作は、一部には、侵害受容及び疼痛調節に関与する遺伝子転写における移動に関係する。Huberらは、この現象が特定のHCG濃度レベルにて子宮内膜症の組織内で発生しているのを明快に示した(1)。この研究において同定された特定の遺伝子の一部はGタンパク質共役受容体(GPCR)官能基をコードする遺伝子であった(2)。以下を参照されたい。
1.Huber A,Hudelist G,Knofler N,Saleh L,Huber JC,Singer CF.Effect of highly purified human chorionic gonadotropin preparations on the gene expression signature of stromal cells derived from endometriotic lesions: potential mechanisms for the therapeutic effect of human chorionic gonadotropin in vivo.October 2007 Fertility and Sterility Vol.88,No.Suppl 2。(非特許文献1)
2. Foukes T,Wood JN.Pain Genes.PLoS Genetics.July 2008(4)7:el000086。(非特許文献2)
【0009】
本明細書に取り上げるこれらの及び全ての他の外部の資料は、その内容全体を参照によって組み込むこととする。組み込まれた参照物の用語の定義または使用が、本明細書に挙げる用語の定義と矛盾するまたは反対である場合、本明細書に挙げる用語の定義が適用され、参照物の用語の定義は適用されない。
【0010】
疼痛とは、一般的に、活動電位発生の増加を伴う神経組織の過度に興奮した状態を表す。活動電位の生成は、電気的シグナル伝達の振幅及び/または頻度の増加に起因する。これは分子のシグナル伝達、イオン勾配及び遺伝子発現における変化の細胞集積によって作り出されるものであり、急性または慢性の不快感の知覚をもたらす。
【0011】
神経細胞及び支持グリア細胞(ミクログリア及びアストロサイト)の中枢神経系ネットワークによる疼痛の伝達及び調節は、主として、Gタンパク質共役受容体(GPCR)として知られる細胞受容体の大ファミリーの制御下にある。この複雑な膜貫通受容体の機能は、細胞外の刺激を細胞内シグナル伝達に変換することであり、遺伝子転写を含む。GPCRは、急性疼痛及び慢性疼痛を含む真核生物における殆ど全ての生理的プロセスを調節及び/または仲介する。既知の全てのGPCRのうち推定90%が中枢神経系に発現する。現在提唱されているGPCRファミリーの80%に、疼痛の調節において既知の役割がある。同様に、疼痛の調節に関与する同定された遺伝子の殆どがGPCR関連遺伝子である。Stone LS,Molliver DC.In search of analgesia:Emerging role of GPCRs in pain.Molecular Interventions.2009(9):5;234−251。(非特許文献3)LH/HCG受容体はGPCRである。同書。
【0012】
LH/HCG受容体複合体は、とりわけ、Gαi/oグループとの複合体に特異的に示されており、神経伝達の調節をする。Hu L,Wada k,Mores N,Krsmanovic LZ,Catt KJ.Essential role of G protein−gated inwardly rectifying potassium channels in gonadotropin−induced regulation of GnRH neuronal firing and pulsatile neurosecretion.Jour Biol Chem.2006:281(35);25231−25240。(非特許文献4)
【0013】
Gαi/oタンパク質は多くの神経伝達物質の広範な阻害効果を仲介し、殆ど全ての鎮痛GCPRアゴニストの効果を仲介する。Stone LS,Molliver DC.In search of analgesia:Emerging role of GPCRs in pain.Molecular Interventions.2009(9):5;234−251。(非特許文献3)
【0014】
中枢性感作を成立させるのに関与する経路が多様であるため、慢性疼痛は、単一経路活性薬剤治療で処置するのが困難となりうる複雑な現象である。Latremoliere A,Woolf CJ.Central sensitization:A generator of pain hypersensitivity by central neural plasticity.J Pain.2009 September;10(9):895−926(非特許文献5)を参照されたい。
【0015】
このことが、慢性疼痛障害を処置するための効果的な医療介入が依然として決定的に不足している理由の説明になる可能性がある。伝統的な薬学的手法は、概して単一で関与する経路を扱っており、このため、理想的な結果は得られない傾向であり、かなりの毒性を伴うことが多い。例えば、これまでに最も広く研究された処置選択は中枢作用薬からなる。これには、ケタミン、デキストロメトルファン、ガバペンチン、プレガバリン、デュロキセチン、ミルナシプラン、ラモトリゲン(lamotrigene)が含まれ、これらの全てが現時点で対ヒト臨床試験に至っているわけではない。各々が試験において示す治療指数は芳しくない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Huber A,Hudelist G,Knofler N,Saleh L,Huber JC,Singer CF.Effect of highly purified human chorionic gonadotropin preparations on the gene expression signature of stromal cells derived from endometriotic lesions: potential mechanisms for the therapeutic effect of human chorionic gonadotropin in vivo.October 2007 Fertility and Sterility Vol.88,No.Suppl 2。
【非特許文献2】Foukes T,Wood JN.Pain Genes.PLoS Genetics.July 2008(4)7:el000086。
【非特許文献3】Stone LS,Molliver DC.In search of analgesia:Emerging role of GPCRs in pain.Molecular Interventions.2009(9):5;234−251。
【非特許文献4】Hu L,Wada k,Mores N,Krsmanovic LZ,Catt KJ.Essential role of G protein−gated inwardly rectifying potassium channels in gonadotropin−induced regulation of GnRH neuronal firing and pulsatile neurosecretion.Jour Biol Chem.2006:281(35);25231−25240。
【非特許文献5】Latremoliere A,Woolf CJ.Central sensitization:A generator of pain hypersensitivity by central neural plasticity.J Pain.2009 September;10(9):895−926
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、慢性疼痛、より一般的にはこの障害に働きかける中枢性感作を多面的に処置する仕組み、システム及び方法が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の主題は、ゴナドトロピンが、慢性疼痛または中枢性感作の他の続発症を多面的に処置するために、驚くほど効果的な狭い範囲内で投与される、仕組み、システム及び方法を提供する。
【0019】
1つの態様において、企図する方法は、対象、個体、非ヒト動物または他の投与対象と意思疎通して、その投与対象が慢性疼痛に罹患しているかどうかを判定し、その後、投与対象がヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、薬学的に活性なHCG類似体及びHCGの薬学的に活性な代謝産物または類似体のうち少なくとも1つを摂取するのを容易にするというものである。好ましくは、投与量は、120IU/日と170IU/日の間のヒト皮下投与量のHCGを提供するように、またはこれと均等であるように選択される。より好ましくは、投与量は、140IU/日と160IU/日の間のヒト皮下投与量のHCGを提供するように、またはこれと均等であるように選択される。
【0020】
企図する意思疎通の仕方は、書面及び/または口頭で症状歴を入手すること、身体検査を実施すること、臨床検査及び他の試験を委託すること、並びに特に、投与対象に線維筋痛症、過敏性腸症候群、慢性背部痛、慢性関節症、炎症性疼痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、神経障害性疼痛、外陰部痛及び片頭痛のうち1つまたは複数があるかどうかに焦点を当てることを含む。かかる意思疎通は、医療従事者と投与対象との間で、例えば診療所でまたは電話でのように同時的に、かつ/または例えば郵便、電子メールなどを使用してのように非同時的に実施することができる。投与対象が罹患している可能性のある侵害受容性疼痛と中枢性感作とを識別する助けとなる身体的試験を実施することも企図される。
【0021】
投与対象が薬物(複数可)を摂取するのを容易にする仕方として企図するものは、薬物(複数可)を投与すること、薬物(複数可)の処方箋を発行すること、本または記事に載録されているように薬物(複数可)の使用を提案すること及び/または投与対象に(直接または間接的に)薬物(複数可)の供給について連絡先情報を提供することを含む。薬物のうち1つまたは複数を投与対象が自己投与できることが企図される。
【0022】
薬物(複数可)は、好ましくは中枢性感作の単剤治療として摂取されるが、他の薬剤及び/または、例えば除去食及び抗炎症食など、生活習慣の変更を含む非薬物処置と組み合わせることができる。薬物(複数可)は、オピオイドによる疼痛処置を併用せず、別のゴナドトロピン物質での処置を併用せずに摂取されることが好ましい。
【0023】
場合により、臨床医または他の提供者は、本明細書において請求しているとおりHCGが慢性疼痛または中枢性感作を改善するのに効果的でありうることに気づかずに、HCGをある他の目的でまたはある他の投与量で投与または推奨してきた可能性がある。かかる例においては、提供者は、HCGが上下限を含めて120IU/日と170IU/日の間にて中枢性感作に対するピーク効果をもちうるという情報を得て、それ以来、本明細書において請求しているとおり、HCG、薬学的に活性なHCG類似体またはHCGの薬学的に活性な代謝産物もしくは類似体を投与または推奨している可能性があるということが考えられる。
【0024】
キットには(a)HCG、薬学的に活性なHCG類似体及びHCGの薬学的に活性な代謝産物または類似体のうち少なくとも1つからなる群から選択された薬物の供給物、(b)送達デバイス及び(c)慢性疼痛及び中枢性感作のうち少なくとも1つを薬物の適応症として表示するラベルを含めることができることが企図される。
【0025】
好ましい実施形態のいくつかの態様において、ラベルは、慢性疼痛の軽減に関して、上下限を含めて120IU/日と170IU/日の間のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の皮下投与量で、またはこれと均等で、毎日の投与計画を表示する。いくつかの好ましい実施形態の他の態様において、ラベルは、慢性疼痛の軽減に関して、上下限を含めて140IU/日と160IU/日の間のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の皮下投与量で、またはこれと均等で、毎日の投与計画を表示する。
【0026】
好ましい実施形態の更に別の態様において、キットには、カートリッジの第2のチャンバー中に含有した希釈剤と混合すると注射に好適となる、薬物の凍結乾燥製剤を有する少なくとも第1のチャンバーを備えたバイアルまたはカートリッジを含めることができる。または、薬物を安定化した液体形態で提供することができる。薬物は、HCG製剤の保管及び送達用の少なくとも第1及び第2のチャンバーのついたカートリッジを備えた自己注射投薬ペンまたはダイヤルアップ投薬ペン(dial up dosing pen)の中に配置することができる。あるいは、更に、キットには、経口投与可能な組成物中にまたはエアロゾル化鼻内噴霧剤として薬物を含む容器を含めることができる。キットは、HCG製剤の持効性放出用の皮下ペレット及び前記ペレットを配置するデバイスからなるものとすることもできる。
【0027】
提供者は投与対象と積極的に意思疎通を図る必要はないが、他の何らかの仕方で投与対象が中枢性感作障害に罹患している可能性があると判定することができる。例えば判定するステップは、(a)動的接触性アロディニア、二次点状/圧痛覚過敏、時間的加重及び感覚の後作用(sensory after effect)からなる第1の群から選択された少なくとも1つの試験及び(b)SMAC25、fMRI、神経−内分泌プロファイル(神経伝達物質及びホルモン)、CSF試験(サブスタンスP、グルタミン酸、NGF、BDNF)、サイトカインプロファイル、遺伝的多型プロファイル、食物アレルギーパネル及び重金属分析パネルからなる第2の群から選択された少なくとも1つの別の試験を含む複数の試験手順を開始することを含むことができる。
【0028】
他の態様において、判定するステップは、(i)対象に外傷による中枢性感作が発生している可能性があると判定すること及び(ii)対象に外傷周囲での薬物の利用を提供することを含む。いくつかの好ましい実施形態の更に他の態様において、外傷は手術であり、薬物は手術に際して投与される。
【0029】
[本発明1001]
個体と対話する方法において、
前記個体が慢性疼痛に罹患している可能性があるかどうかを判定する補助となるように前記個体と意思疎通するステップと、
前記個体が、慢性疼痛の軽減に関して、前記慢性疼痛を改善するという明白な目的で、上下限を含めて120IU/日と170IU/日の間のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の皮下投与量で、またはこれと均等で、薬物を断続的に摂取するのを容易にするステップにおいて、前記薬物が、HCG(uHCG及び/またはrHCG)、薬学的に活性なHCG類似体及び前記HCGの薬学的に活性な代謝産物または類似体のうち少なくとも1つからなる群から選択されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
[本発明1002]
本発明1001の方法において、前記意思疎通するステップが、(a)前記個体から書面及び口頭での症状歴を入手すること及び身体検査のうち少なくとも1つ、並びに(b)試験手順を実施すること及び委託することのうち少なくとも1つの、医療データ及び診断用データを得ることを含むことを特徴とする方法。
[本発明1003]
本発明1002の方法において、前記個体が線維筋痛症及び過敏性腸症候群のうち少なくとも1つに罹患しているかどうかを判定するのを助けるために、前記医療データ及び診断用データを使用するステップを更に含むことを特徴とする方法。
[本発明1004]
本発明1002の方法において、前記個体が慢性関節症及び炎症性疼痛のうち少なくとも1つに罹患しているかどうかを判定するのを助けるために、前記医療データ及び診断用データを使用するステップを更に含むことを特徴とする方法。
[本発明1005]
本発明1002の方法において、前記個体が帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛及び片頭痛のうち少なくとも1つに罹患しているかどうかを判定するのを助けるために、前記医療データ及び診断用データを使用するステップを更に含むことを特徴とする方法。
[本発明1006]
本発明1002の方法において、前記個体が慢性背部痛及び椎間板ヘルニアのうち少なくとも1つに罹患しているかどうかを判定するのを助けるために、前記医療データ及び診断用データを使用するステップを更に含むことを特徴とする方法。
[本発明1007]
本発明1002の方法において、前記個体が神経障害性疼痛、外傷性神経損傷、外傷後ストレス障害疼痛症候群、外陰部痛及び慢性術後疼痛症候群のうち少なくとも1つに罹患しているかどうかを判定するのを助けるために、前記医療データ及び診断用データを使用するステップを更に含むことを特徴とする方法。
[本発明1008]
本発明1001の方法において、前記意思疎通するステップが、医療従事者と前記個体との間で同時的に実施されることを特徴とする方法。
[本発明1009]
本発明1001の方法において、前記意思疎通するステップが、医療従事者と前記個体との間で非同時的に、郵便及び電子通信のうち少なくとも1つを使用して実施されることを特徴とする方法。
[本発明1010]
本発明1001の方法において、前記容易にするステップが、前記個体が前記薬物を使用するための処方箋が発行されることを含むことを特徴とする方法。
[本発明1011]
本発明1001の方法において、前記容易にするステップが、前記個体が前記薬物の供給物を入手することができる連絡先情報を、前記個体に提供することを含むことを特徴とする方法。
[本発明1012]
本発明1001の方法において、前記投与量が、慢性疼痛の軽減に関して、上下限を含めて140IU/日と160IU/日の間の皮下投与量である、またはこれと均等であることを特徴とする方法。
[本発明1013]
本発明1001の方法において、前記個体が罹患している可能性のある侵害受容性疼痛と中枢性感作とを識別する助けとなる試験手順を実施するステップを更に含むことを特徴とする方法。
[本発明1014]
本発明1001の方法において、Gα、i/o、Gタンパク質共役受容体(GPCR)サブユニットに結合するのを容易にし、鎮痛効果を容易にするかつ/または高める前記薬物の補助剤を、前記個体が入手するのを助けるステップを更に含むことを特徴とする方法。
[本発明1015]
本発明1001の方法において、HCGが上下限を含めて120IU/日と170IU/日の間で中枢性感作に対するピーク効果をもちうるという情報を得てから、前記容易にするステップを実施するステップを更に含むことを特徴とする方法。
[本発明1016]
(a)HCG、薬学的に活性なHCG類似体及び前記HCGの薬学的に活性な代謝産物または類似体のうち少なくとも1つからなる群から選択された薬物の供給物、(b)送達デバイス及び(c)慢性疼痛及び中枢性感作のうち少なくとも1つを前記薬物の適応症として表示するラベルを含むことを特徴とするキット。
[本発明1017]
本発明1016のキットにおいて、前記ラベルが、慢性疼痛の軽減に関して、上下限を含めて120IU/日と170IU/日の間のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の皮下投与量で、またはこれと均等で、毎日の投与計画を表示することを特徴とするキット。
[本発明1018]
本発明1016のキットにおいて、前記ラベルが、慢性疼痛の軽減に関して、上下限を含めて140IU/日と160IU/日の間のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の皮下投与量で、またはこれと均等で、毎日の投与計画を表示することを特徴とするキット。
[本発明1019]
本発明1016のキットにおいて、前記デバイスが、希釈剤と混合すると注射に好適となる、前記薬物の凍結乾燥製剤を含むチャンバー(複数可)を備えたバイアルまたはカートリッジを含むことを特徴とするキット。
[本発明1020]
本発明1016のキットにおいて、前記デバイスが、前記薬物を経口投与可能な製剤中に含む容器を含むことを特徴とするキット。
[本発明1021]
本発明1016のキットにおいて、前記デバイスが、前記薬物を皮下用持効性放出ペレット製剤中に含むことを特徴とするキット。
[本発明1022]
本発明1016のキットにおいて、前記デバイスが、前記薬物を鼻腔内投与用のエアロゾル化製剤中に含むことを特徴とするキット。
[本発明1023]
本発明1016のキットにおいて、前記デバイスが、自己注射ペン及びダイヤルアップ投薬ペンのうち1つから選択されることを特徴とするキット。
[本発明1024]
本発明1023のキットにおいて、前記デバイスが、安定化した液体形態の前記薬物を含有する少なくとも第1のチャンバーを備えたカートリッジを有することを特徴とするキット。
[本発明1025]
対象を処置する方法において、
前記対象が中枢性感作障害に罹患している可能性があると判定するステップと、
前記中枢性感作を改善するという明白な目的で、前記対象に薬物を一次治療として提供するステップにおいて、前記薬物が、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(uHCG及び/またはrHCG)、薬学的に活性なHCG類似体及び前記HCGの薬学的に活性な代謝産物または類似体のうち少なくとも1つからなる群から選択されるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
[本発明1026]
本発明1025の方法において、前記判定するステップが、(a)動的接触性アロディニア、二次点状/圧痛覚過敏、時間的加重及び感覚の後作用からなる第1の群から選択された少なくとも1つの試験及び(b)SMAC25、fMRI、神経−内分泌プロファイル(神経伝達物質及びホルモン)、CSF試験(サブスタンスP、グルタミン酸、NGF、BDNF)、サイトカインプロファイル、遺伝的多型プロファイル、食物アレルギーパネル及び重金属分析パネルからなる第2の群から選択された少なくとも1つの別の試験を含む複数の試験手順を開始することを含むことを特徴とする方法。
[本発明1027]
本発明1025の方法において、前記判定するステップが、前記対象に外傷による中枢性感作が発生している可能性があると判定することを含み、前記対象に外傷周囲での前記薬物の利用を提供することを更に含むことを特徴とする方法。
[本発明1028]
本発明1027の方法において、前記外傷が手術を含み、前記薬物が手術に際して投与されることを特徴とする方法。
[本発明1029]
本発明1025の方法において、前記提供するステップが、前記対象に、慢性疼痛の軽減に関して、上下限を含めて120IU/日と170IU/日の間のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の皮下投与量での、またはこれと均等の量の前記薬物を自己投与するように提案すること及び教示することのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする方法。
[本発明1030]
本発明1029の方法において、前記対象をオピオイドによる疼痛処置で併用処置をしないことを更に含むことを特徴とする方法。
本発明の主題の種々の目的、特徴、態様及び利点は、同じ数字が同じ構成成分を表す添付の図面とともに、次の好ましい実施形態の詳細な説明からより明快になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、個体と対話する方法の1つの好ましい実施形態の概略図である。
図2図2は、薬物の供給物、送達デバイス及びラベルを含むキットの1つの好ましい実施形態の斜視図である。
図3図3は、自己注射投薬ペンとしての送達デバイスの斜視図である。
図4図4は、ダイヤルアップ投薬ペンとしての送達デバイスの斜視図である。
図5図5は、対象を処置する方法の1つの好ましい実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には個体と対話する方法の概略図が示されている。この方法は、(i)個体が慢性疼痛に罹患している可能性があるかどうかを判定する補助となるようにその個体と意思疎通するステップと、(ii)その個体が、慢性疼痛の軽減に関して、慢性疼痛を改善するという明白な目的で、上下限を含めて120IU/日と170IU/日の間のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の皮下投与量で、またはこれと均等で、薬物を断続的に摂取するのを容易にするステップにおいて、薬物が、HCG、薬学的に活性なHCG類似体及びHCGの薬学的に活性な代謝産物または類似体のうち少なくとも1つからなる群から選択されるステップとを含む。
【0032】
本明細書で使用する場合、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)という用語は次の供給源のうち少なくとも1つから得られる医薬組成物中の化合物を意味する。妊娠中及び/または閉経後の女性の精製した尿(uHCG)、組換えDNAハイブリダイゼーション法を利用する細菌、酵母、植物及び/または哺乳動物の精製細胞培養物(rHCG)。
【0033】
本明細書で使用する場合、薬学的に活性なHCG類似体という用語は、慢性疼痛または中枢性感作の他の続発症の改善に関して、(i)HCGの少なくとも部分的な生物学的活性を有する(例えば突然変異体、切断型、化学修飾されたもの)または(ii)HCG受容体に結合することができる(アゴニストまたは中性リガンド)化合物を意味する。本明細書で使用する場合、「類似体」という用語はHCGのプロドラッグを含む。
【0034】
本明細書で使用する場合、「プロドラッグ」とは、企図する化合物の修飾物を意味し、修飾された化合物は、薬理学的な活性が低く(企図する化合物と比較して)、標的細胞(例えば肝細胞)または標的器官/解剖学的構造(例えば脊髄)内で転換されて企図する形態に戻る。例えば、企図する化合物のプロドラッグへの転換は、活性薬物の毒性が安全な全身投与には強すぎる場合、または企図する化合物の、消化管もしくは他の区画または細胞による吸収が不十分な場合、または身体が企図する化合物を、その標的に到達する前に分解する場合に有用となることがある。従って、当然のことながら、本発明の主題による化合物は多様に修飾することができ、特に好ましい修飾物は、1つまたは複数の薬物動態学的及び/または薬力学的パラメーターが改善されたものを含む。例えば、1つまたは複数の置換基を追加または置換して、血清中HCVの曲線下面積(AUC)を大きくすることができる。
【0035】
本明細書で使用する場合、薬学的に活性な代謝産物という用語は、HCGまたはHCG類似体のin vivo代謝(例えばタンパク質消化、グリコシル化、ヒドロキシル化、リン酸化、硫化などによる)から得られる任意の化合物を意味し、この代謝産物は、慢性疼痛または中枢性感作の他の続発症の改善に関して効果的である。
【0036】
文脈上否定されない限り、本明細書に記載する全ての範囲は、その端点を含めているものと解釈されるべきであり、限度値が設けられていない範囲は商業上実際的な値を含むものと解釈されるべきである。同様に、文脈上否定されない限り、全ての値の列挙は中間値を含めるものと考えられるべきである。
【0037】
意思疎通するステップには、個体から書面及び口頭での症状歴のうち少なくとも1つを入手すること、身体検査を実施すること、並びに試験及び画像解析を委託することを含む、医療データ及び診断用データを得ることを含めることができる。症状歴は、その個体に、線維筋痛症、過敏性腸症候群、慢性関節症、炎症性疼痛、神経障害性疼痛、慢性背部痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、外陰部痛及び片頭痛のうち少なくとも1つがあるかどうかを判定するのを助けるために使用することができる。
【0038】
意思疎通するステップは、医療従事者と個体との間で同時的に、あるいは、医療従事者と個体との間で郵便または電子通信を使用して非同時的に実施することができる。
【0039】
容易にするステップには、個体が薬物を使用するための処方箋が発行されることを含めることができる。更に、容易にするステップには、個体が薬物の供給物を入手することができる連絡先情報を、その個体に提供することを含めることができる。
【0040】
投与量は、好ましくは、慢性疼痛の軽減に関して、上下限を含めて140IU/日と160IU/日の間の皮下投与量、またはこれと均等である。
【0041】
図1の方法は、個体が罹患している可能性のある侵害受容性疼痛と中枢性感作とを識別する助けとなる身体的試験手順を実施するかつ/または委託するステップを更に含めることができる。
【0042】
本方法は、個体が中枢性感作の単剤治療として薬物を入手するのを助けるステップを含むこともできる。更に、本方法は、薬物の補助剤として、Gα、i/o、Gタンパク質共役受容体(GPCR)サブユニットに結合するのを容易にし、鎮痛効果を容易にするかつ/または高める組成物を個体が入手するのを助けるステップを含むことができる。
【0043】
HCGが上下限を含めて120IU/日と170IU/日の間で中枢性感作に対するピーク効果をもちうるという情報を得てから「容易にする」ステップを実施することができるということも企図される。
【0044】
皮下投与量のHCGの均等物は、全ての好適な投与方式、例えば経筋肉内、経皮下、口腔内溶解錠、液剤として経舌下、経皮、経直腸及び経皮下緩効性放出ペレットを含むことができる。米国特許第6488649号明細書は好適な皮下ペレットインプラントデバイスを教示している。
【0045】
図1に示す方法は、慢性疼痛及び中枢性感作に関する多数の障害を処置するために使用することができる。例えば、線維筋痛症、関節リウマチ、変形性関節症、慢性関節症、新形成及び/または椎間板ヘルニアを伴う脊髄神経圧迫症候群、慢性背部痛、炎症及び/または器質的関節異常を伴う任意の病因の慢性関節痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、慢性疼痛を伴う慢性代謝性ニューロパチー、片頭痛、炎症性疼痛、術後痛症候群、外傷後ストレス障害痛症候群、過敏性腸症候群、自律神経性ニューロパチー、外陰部痛及び中枢性感作経路の活性化に関連する慢性疼痛症候群である。
【0046】
「個体」は、ヒト、ペット及び哺乳動物を含むことができることも企図される。
【0047】
図2キット200の1つの好ましい実施形態。キット200は容器205を含む。容器205は薬物210を収容する送達デバイスであり、外側ラベル220を有する。
【0048】
薬物210は、好ましくは、HCG(uHCG及び/またはrHCG)、薬学的に活性なHCG類似体及びHCGの薬学的に活性な代謝産物または類似体のうち少なくとも1つからなる群から選択される。薬物210は、舌下剤または口腔内溶解錠剤である。薬物210は他の剤形を含みうることも企図される。
【0049】
当然のことながら、全ての製剤が本明細書において使用するのに好適であると考えられ、特に非経腸製剤及び経口製剤を含む。例えば経口投与として、企図する組成物は、錠剤、口腔内溶解錠剤、カプセル剤、懸濁剤または液剤の形態とすることができる。医薬組成物は、好ましくは、特定の量の活性成分を含有する投与単位の形態で作製される。かかる投与単位の例は、錠剤、ドロップ剤またはカプセル剤である。非経腸製剤として、活性成分は、凍結乾燥したまたは安定化した液体組成物として注射によって投与することができ、例えば生理食塩水、スクロース、マルトースまたは水を、好適な担体として使用することができる。特に好ましい態様において、製剤は、くも膜下腔内投与、皮下ペレット、エアロゾルによる投与及び局所投与に好適であることが企図される。従って、化合物がくも膜下腔内投与用(例えば脊髄損傷の処置において)に配合される場合、化合物を注射可能な溶液剤、懸濁剤または乳剤として調製することが好ましい。または、企図する製剤において、企図する化合物をエアロゾル送達用に(例えば微粉化したもの、分散性担体に被膜したもの、霧状化可能な溶媒中に溶解したものなど)及び皮下インプラント用の援効性放出ペレット用に配合することができる。更に、特に好適な製剤は、局所用スプレー用もしくは滴下投与用、またはチンキとしての適用のために滅菌水溶液とすることができる。その上更に、好適な局所用製剤は、クリーム剤、軟膏剤、泡沫剤、ローション剤、エマルション剤などを含むことができる。当然のことながら、特定の製剤及び担体の選択は、少なくとも部分的に、特定の使用及び化合物のタイプに依拠することになる。当該技術分野において公知の多数の製剤方法があり、それらの全てが本明細書において使用するのに好適であると考えられる(例えば以下を参照されたい。Pharmaceutical Preformulation and Formulation:A Practical
Guide from Candidate Drug Selection to Commercial Dosage Form,Mark Gibson著;Informa HealthCare,ISBN:1574911201;またはAdvanced Drug Formulation Design to Optimize Therapeutic Outcomes,Robert O.Williams,David R.Taft及びJason T.McConville著;Informa HealthCare;ISBN:1420043870)。
【0050】
慢性疼痛のためのHCG処置の投与対象の年齢、性別及び体重は、現時点の研究では好ましい治療域に影響しないようにみえるが、投与される治療的に活性な化合物の量と、本発明の化合物及び/または組成物で疾患状態を治療する投与計画とは、対象の年齢、体重、性別及び病状、疾患の重症度、投与の経路及び頻度並びに使用する特定の化合物を含む種々の要因より多いもののうちの1つに依拠する可能性があり、従って、広範に多様である可能性があることが考えられる。
【0051】
ラベル220は、慢性疼痛及び中枢性感作のうち少なくとも1つを薬物の適応症として表示する。ラベル220は、慢性疼痛の軽減に関して、上下限を含めて120IU/日と170IU/日の間のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の皮下投与量で、またはこれと均等で、毎日の投与計画も表示する。または、ラベル220は、慢性疼痛の軽減に関して、上下限を含めて140IU/日と160IU/日の間のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の皮下投与量で、またはこれと均等で、毎日の投与計画を表示してもよい。
【0052】
キット200は、カートリッジの第2のチャンバー中に含有した希釈剤と混合すると注射に好適となる、薬物の凍結乾燥製剤を含有する第1のチャンバーを備えたバイアルまたはカートリッジを含めることもできる。または、キットは、安定化した液体形態の薬物を含有してもよい。薬物は、任意の好適な仕方で、例えば米国特許第006706681(B1)号明細書に記載の方法を使用して安定化させることができる。
【0053】
図3は、自己注射投薬ペン305を含むキット300を示す。ペン305は、薬物310及び外側ラベル320を有する送達デバイスである。薬物310は、これが安定化した液体形態または凍結乾燥形態であることを除いて、薬物210と同様のものである。ラベル320は、これが経口投与ではなく注射に関連する情報を含有することを除いて、ラベル220と同様のものである。
【0054】
図4は、ダイヤルアップ投薬ペン405を含むキット400を示す。ペン405は、安定化した液体形態または凍結乾燥形態の薬物410及び外側ラベル420を有する送達デバイスである。薬物410は薬物310と同様のものである。ラベル420は、これが経口投与ではなく注射に関連する情報を含有することを除いて、ラベル220と同様のものである。
【0055】
図5には、対象を処置する方法の概略図が示されている。本方法は、(i)対象が中枢性感作障害に罹患している可能性があると判定するステップと、(ii)中枢性感作を改善するという明白な目的で、対象に薬物を一次治療として提供するステップとを含む。薬物は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(uHCGまたはrHCG)、薬学的に活性なHCG類似体、またはHCGの薬学的に活性な代謝産物もしくは類似体である。
【0056】
対象が中枢性感作障害に罹患している可能性があると判定するステップには、複数の試験手順を開始することを含めることができる。かかる臨床検査は、(i)動的接触性アロディニア、二次点状/圧痛覚過敏、時間的加重及び感覚の後作用からなる第1の群から選択された少なくとも1つの試験及び(b)SMAC25、fMRI、神経−内分泌プロファイル(神経伝達物質及びホルモン)、CSF試験(サブスタンスP、グルタミン酸、NGF、BDNF)、サイトカインプロファイル、遺伝的多型プロファイル、食物アレルギーパネル及び重金属分析パネルからなる第2の群から選択された少なくとも1つの別の試験を含むことができる。
【0057】
更に、対象が中枢性感作障害に罹患している可能性があると判定するステップには、(i)対象に外傷による中枢性感作が発生している可能性があると判定すること及び(ii)対象に外傷周囲での薬物の利用を提供することを含めることができる。外傷には、手術、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、自動車事故、銃創、産業災害、暴行、鈍的外傷、反復性外傷性スポーツ損傷、重大な心理感情に関わる外傷(強姦、戦争、天災などであるがこの一覧に限定されない)を含めることができる。
【0058】
外傷周囲の投与には周術期の投与を含めることができることが特に企図される。例えば術後にかなり長期の疼痛症候群を伴うことが知られている外科手術処置(即ち開胸術、乳房切除術及び切断術)では、薬物が、中枢性感作が仲介する術後慢性疼痛症候群の発症を防止する目的で周術期に投与され、または、薬物を、中枢性感作が仲介する術後疼痛を発生したものに、鎮痛のため投与することができる。
【0059】
対象に薬物を提供するステップには、対象に、慢性疼痛の軽減に関して、上下限を含めて120IU/日と170IU/日の間のヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)の皮下投与量での、またはこれと均等の量の薬物を自己投与するように提案すること及び/または教示することを含めることができる。
【0060】
図5における方法は、好ましくは、対象を、オピオイドによる疼痛処置によっても別のゴナドトロピン物質によっても併用処置することを含まない。
【実施例】
【0061】
症例研究
材料/方法
従前の疼痛コントロールの診療経験に基づき、またヒトがHCGを使用することに安全性が確立されていることに基づき(The role of hCG in reproductive medicine.BJOG:an International Journal of Obstetrics and Gynaecology.November 2004,Vol.111,pp.1218−1228を参照されたい)、本発明者らは、標準様式での臨床的使用の有効性を患者の代表24名において判定することを狙いとした(患者特性を表1に示す)。
【0062】

【0063】
ここに挙げた患者の大半を、毎日150IU/日のHCGを6週間皮下注射するのに加えて500cal/日の食事を要求するHCG体重減量プログラムに入れた。HCGを、5,000IUまたは10,000IUのバイアルに入れた凍結乾燥粉末形態で患者に提供し、使用する前に再構成し、混合後は効能を維持するために冷蔵するように求めた(HCG5000IUバイアル、KRS Global、Boca Raton、FL;HCG10,000IUバイアル、商標名Abraxis(商標);HCG10,000IUバイアル、商標名Pregnyl(商標))。全てのHCGの供給元は中国の主要な供給業者であり、FDAの承認を受け、CGMP(現行適正製造基準(Current Good Manufacturing Practices))に準拠した施設からのものであった。これらの施設から得たHCGは、妊娠中の女性の尿(u−HCG)由来または組換えDNA(r−HCG)製造プロトコール由来である。
【0064】
本発明者らの研究において、患者#13及び#20はr−HCGに対して初期疼痛反応があり、u−HCGに置換しても同一の持続的な反応が続いた。患者#2はu−HCGに対して初期に疼痛反応があり、次にr−HCGを使用し、u−HCGに戻したが、反応において逸脱はなかった。
【0065】
患者には、食事制限期間中、処方された医薬の全てを続けることを許可し、全員に、総合ビタミン剤、消化酵素、プロバイオティクス、アミノ酸、カリウム、マグネシウム、カルシウム及び1−カルニチンの1日分混合物を含む特別な栄養支援レジメンを施した。
【0066】
ここに挙げた症例のうち2例を除いた他は皆、体重減量プログラム及び毎日のHCG投与を終了後に疼痛を再発し、その後、疼痛コントロールのために150IUのHCGの毎日の皮下注射を再開する必要があった。殆どの患者が体重減量プログラムを終了して数週間後に再来院し、疼痛の再来を報告し、処置の再開を希望した。HCG処置を再開すると例外なく、処置を続けている)限り、全ての患者に同一の臨床反応が持続した。現在までにタキフィラキシーまたは追加の疼痛コントロール処置の必要性が生じた患者はいない。
【0067】
患者に一過性の脱毛及び卵巣過剰刺激症候群(OHS)の徴候または症状を含む何らかの処置毒性がないか、入念に記録管理した。しかし、臨床経験の蓄積(例えばThe role of hCG in reproductive medicine.BJOG:an International Journal of Obstetrics and Gynaecology.November 2004,Vol.111,pp.1218−1228)から、予想されるかかる毒性は、通常、1500IU/日を超えるより高投与量のHCGに関連していると言える。本発明者らは、現在までに、継続処置を受けたどの患者にも毒性の証拠を観察していない。
【0068】
患者の反応をDoloTest(商標)を利用して数値化した。これは疼痛患者用の承認された健康関連クオリティオブライフ(HRQoL)ツールであり、疼痛のみならず、慢性疼痛が厳しく影響することのあるクオリティオブライフの他の領域をも評価するものである。(Kristiansen K,Lyhgholm−Kjaerby P,Moe C.Introduction and Validation of DoloTest:A Health Related Quality of Life Tool Used in Pain Patients.Pain Practice 2010 Sep−Oct;10(5):396−403を参照されたい。]]
【0069】
患者には、HCG曝露前及びHCG処置開始後の両方の機能レベルに関して調査員が提示した質問に答えてもらった。回答に対して経時での評価はせず、2つのエンドポイントのみを評価した。即ち(1)HCG処置をしているとき及び(2)HCG処置をしていないときの2つである。
【0070】
全ての症例において、何らかの追加の疼痛コントロールの介入の必要性はかなりまたは完全に排除された。医療の介入的疼痛管理またはカイロプラクティック治療のために診療所に継続来院する必要性は排除された。最も重要なことに、DoloTest(商標)の指標は全て、ここに挙げた患者全員において大いに向上した。患者全員が全ての質問に回答した。
【0071】
結果
SPSSvl5.0を使用して全ての記述分析及び推測分析を行った。(表2を参照)
【0072】
同一のデータについて複合分析を実施することで、合計10種の分析を実施した。第1種の過誤の危険性が高まるのを是正するため、ボンフェローニの補正を実施して、帰無仮説の棄却に対する有意水準を調整した。この方法を使用して、全ての分析でp値が.005以下の場合に帰無仮説の棄却を決定した。(表2を参照)
【0073】
一連の8つの2×2混合ANOVA分析をデータに対して実施した。全ての分析での群間変数は上記の2つの分類の患者群であり、群内独立変数は時間、即ち(a)処置前DoloTestスコア及び(b)処置後DoloTestスコアの2つの分類であった。
【0074】
両群の全ての患者に対して分析した8つのDoloTest(商標)範囲の各々において、スコアは、分析した各範囲でHCG処置後にp値<.0005にて有意に低下即ち改善した。(表2を参照)
【0075】
疼痛及び気分
最終的に、2つの構成概念をDoloTest(商標)法から得た。即ち(a)身体的局面及び(b)精神的、社会的及び睡眠の局面である。身体的局面は、軽い身体活動の問題、活発な身体活動の問題、仕事に関する問題並びにエネルギー及び体力の低下を含むものであった。社会的、精神的及び睡眠の局面は、気力阻喪、社会生活の減退及び睡眠の問題を含むものであった。
【0076】
各群において、各分類の合計スコアを変数の数で除算して、HCGでの処置前と処置後の両方について平均スコアを得た。次いで、2つの構成概念または群の平均差スコアに対してピアソンの相関を実施して、慢性疼痛の副次的影響であるこれら2つの局面の関連性を評価した。結果は統計学的に有意であり(p<.0005)、予想したとおり、2つの構成概念または群の間に強力な直接相関を示唆していた。即ち、身体的局面でスコアが上昇または下降すると、精神的/社会的/睡眠の構成概念でスコアが相似的に動く。明らかに、疼痛指数と他のDoloTest(商標)項目のスコアとの間の直接相関が、処置前の群と処置後の群の両方に見られた。上記のとおり、特に興味深いのは、これらの患者の殆どについて(91.66%)、継続的なHCG投与の他に疼痛のための継続的な補助剤処置の必要性は排除されたという事実である。
【0077】
ここに挙げた全ての患者について、好ましい臨床反応が表れるのに要した時間は、即時及び1〜2日間以内であった。処置した患者の殆どについて、継続的な反応の維持のために、継続的なHCG投与の必要性があった。これらの患者においてHCGを中止すると、一様に、処置前のレベルと認知されるものとして疼痛症候群が再発している。経皮下にて150IU/日でHCG治療を再開すると、1〜2日以内に素早く疼痛が軽減した。
【0078】
現在までのところ、疼痛コントロールのための継続的なHCG投与を要求している患者からは、いかなる反応の低下も追加の疼痛処置の必要性も報告されていない。このシリーズにおいてかかる安定した反応を伴っている最も長期間の患者は患者#9であり、現在24か月である。
【0079】
患者#11及び#13は双方とも、最初のHCG体重減量サイクルを進める状況において疼痛の軽減反応がはっきりと表れた。このサイクルは、十分持続したという状態まで続け、継続的HCG投与もさらなる疼痛の臨床的介入も必要としなくなった。患者#11には重度の帯状疱疹後神経痛があり、1日複数回用量の麻薬を必要としていたが、6週間HCGに曝露しただけで完全に治癒した。患者#13は線維筋痛症及びRAに罹患し、毎週Enbrel(商標)注射を必要としていたが、その後、最初のHCG曝露以来1年にわたって処置を必要としていない。
【0080】
その他の患者については、140〜170IU/日でのHCGの毎日の投薬を、継続的疼痛コントロールのために必要としている。
【0081】

【0082】
考察
本発明者らの研究の最も興味深い局面の1つは、HCGは慢性疼痛及び中枢性感作の他の続発症の処置において、120〜170IU/日で、より特定すると140〜160IU/日できわめて効果的であるようだが、他の投与量ではそうではないようであるということである。従って、200IU/日、300IU/日及び500IU/日の投与量は全て明らかに効果が劣り、より低い投与量でも明らかに効果が劣る。これは、年齢(少なくとも成人では)、性別、体重及び他の要因に関係なく当てはまるようである。
【0083】
本明細書及び添付の特許請求の範囲は、いかなる特定の理論または作用機序の正当性によっても制約を受けるべきではないが、本発明者らは、本明細書に記載した驚くべき結果を説明する際に重要な正当性を有する可能性のある理論的枠組みを企図した。
【0084】
HCGは、今や、全身に多面的な作用を有することが認識されている。なぜなら、CNSを含む多数の細胞内コンパートメント中にHCGの受容体が存在することが文書化されて立証されているからである。Rao CV. An overview of the
past,present,and future of non−gonadal LH/hCG actions in reproductive biology and medicine.Semin Reprod Med,2001;19:7−17;及びLei ZM,Rao CV.Neural actions of luteinizing hormone and human chorionic gonadotropin.Semin Reprod Med,2001;9:103−109を参照されたい。この受容体の正確な機能は十分に解明されていないが、本発明者らが下記に引用するとおり、推定上の機能に関する指摘は記載されている。
【0085】
成人のCNS内で、HCG受容体は、海馬体、視床下部、大脳皮質、脳幹、小脳、下垂体、神経網膜、脊髄及び上衣領域に存在することがわかっている(Lei ZM,Rao
CV,Kornyei JL,Licht P,Hiatt ES.Novel expression of human chorionic gonadotropin/luteinizing hormone receptor gene in brain.Endocrinology,1993;132:2262−2270)。神経細胞及びグリア細胞の両方がHCGの受容体を発現することが示されている(Lei ZM,Rao CV,Kornyei JL,Licht P,Hiatt ES.Novel expression of human chorionic gonadotropin/luteinizing hormone receptor gene in brain.Endocrinology,1993;132:2262−2270)。更に、HCGは、以下の各期に重要なシグナル伝達の役割を果たす可能性があると仮定されている。胚盤胞期には層をなす生殖細胞からの組織サブセットの分化及び発生において(Gallego MJ, Porayette P, Kaltcheva MM The Pregnancy Hormones HCG and Progesterone Induce Human Embryonic Stem Cell Proliferation and Diferentiation into Neuroectodermal Rosettes.Stem Cell Research
and Therapy 2010;1:28)、胎生期には器官発生に対して(Abdallah MA,Lei ZM,Lix,Greenwold N Human Fetal Non−Gonadal Tissues Contain HCG/LH Receptors.J Clin Endo Metabol 2004;89:952−56)及び成人では、おそらく何らかのより微妙な、しかし臨床的に重要な形においてである。最近の証拠によると、成人のCNS内にHCG受容体の存在が確認され、追加の証拠によると、HCGは組織分化及び成長のためのシグナル伝達ホルモンとして裏付けがされている。Rao CV,Lei ZM The past,present and future of non−gonadal LH/hCG actions in reproductive biology and medicine.Mol Cell Endocrinol.2007 Apr 15;269(l−2):2−8も参照されたい。
【0086】
種々のモデルが、HCGが適切に投薬された場合に提供することができる神経可塑性効果を、本発明者らが慢性疼痛患者に見出す臨床的有益性を促進するものとして指摘している。本発明者らが確認している疼痛コントロール現象に関連するものは、Meng、Wennert及びChanの研究であり(Meng X,Rennert O,Chan,W Human chorionic gonadotropin induces neuronal differentiation of PC12 cells through activation of stably expressed lutropin/choriogonadotropin receptor.Endocrinology 2007;148(12)5765−5873)、彼らはラットの褐色細胞腫由来のPC12細胞株での神経細胞分化について研究を行った。この研究基盤は、ヒトにおける神経細胞の分化及びシグナル伝達の研究に関して、確立され、認められた理論モデルである(Greene LA,Tischler AS Establishment of a noradrenergic clonal line of rat adrenal pheochromocytoma cells which respond to nerve growth factor.Proced Nat
Acad Sci 1976.73:2424−2428)。
【0087】
彼らは、これらの細胞に存在するHCG受容体を刺激すると、神経突起生成及び神経突起伸長、即ち細胞の大きさの増大及び新たなより複雑で機能的なネットワーク結合の樹立を含む、可視的に認められる神経可塑性効果を生むことを示した。神経可塑性とは、機能性を変更し、このケースにおいては新たな結合を形成する、またはおそらく古い結合を再樹立させる、神経細胞の能力を意味する用語である。上記の神経可塑性の変化が進行する状況において、HCGがPC12細胞の神経細胞分化を刺激するのも示された。成人の脳内では、神経細胞の大部分は有糸分裂後であるが、上記のとおり、生涯を通して若い神経細胞を産生する多能性神経幹細胞/前駆細胞がある(Colcci−D’Amato L,Bonavita V,di Porzio U.The end of the central dogma of neurobiology:stem cells and neurogenesis in adult CNS.2006 Neurol Sci.27:266−270)。これらの概念を裏付ける動物モデルは、HCGに刺激された神経可塑性及び神経細胞の再生の証拠を示している。特に、1つのグループは、脊髄損傷の動物にHCGを投与すると、運動機能の回復を大幅に向上させることができると報告した(Patil AA,Nagaraj MP.The effect of
human chorionic gonadotropin (HCG) on functional recovery of spinal cord sectioned rats.Acta Neurochir(Wien)1983(69):205−218を参照されたい)。
【0088】
Mengの研究において更に興味深いのは、これらの効果がはっきりと表れるようにHCG濃度を200〜1000ng/mlの範囲に維持するということであった。初期の研究では初代神経細胞及びグリア細胞に対する上記のHCG効果は、100〜250ng/mlという環境濃度のHCGでのみ顕著であると示されている。本発明者らは、観察された臨床活性を説明することができるこれらの神経可塑性効果がはっきりと表れるのに必要なHCG濃度には重要な範囲があると確信している。濃度が高すぎるとこの効果は弱まる。これは、効果には狭い範囲の濃度が必要であるHCGの作用の他のモデルと一貫性がある(Maymo JL,Perez AP,Sanchez−Margalet V,Duenas JL.Up−regulation of placental leptin by human chorionic gonadotropin.Endocrinology 2009;150(l):304−313)。これは、より高用量のリガンドに反応しての、二次メッセンジャーの産生の一過性の欠損(脱感作)及び/または細胞表面受容体の欠損(ダウンレギュレーション)に付随すると仮定される。例えばこの現象と一致して、きわめてより高用量のHCG(5000IU〜7000IU/週まで)で性腺機能低下症の処置をした男性らにおいて、本発明者らはこの疼痛コントロール現象を観察していない。
【0089】
ホルモンの濃度が異なると、環境の受容体組織密度の特性により、体内で、異なる閾値で、意図された及び起こりうる効果が異なるということが完全に想定される。
【0090】
概念を統合すると、140〜170IU/日の狭い範囲内でHCGを投与すると、イオンチャネル活性、電気的シグナル伝達、細胞内の分子のシグナル伝達及び遺伝子転写における移動を包含する「神経可塑性効果」を開始し、それにより、中枢性感作が仲介する慢性疼痛に罹患しているものを鎮痛する。中枢性感作に特異的に対応するHCGの鎮痛効果は、医学界でこれまでに確認されていない。
【0091】
本発明者らの遡及的なシリーズにおいて観察された反応の速さを考慮すると、本発明者らは、患者の初期反応及びおそらく持続的な反応は、神経可塑性が仲介する即時の効果から得られるものであろうと仮定する。
【0092】
このタイプの即時の神経可塑性効果の1つの局面の例には、次のものを含めることができる。慢性疼痛の「中枢性感作」理論のために提案されたモデルにおいて、グリア細胞は、この設定において、炎症仲介物質(一酸化窒素、活性酸素種、プロスタグランジン、炎症性サイトカイン、神経成長因子)の不適応な分泌の供給源であり、炎症仲介物質はサブスタンスP及びグルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の継続的な放出を容易にするように働き、興奮性神経伝達物質は疼痛伝達神経細胞(PTN)のシナプス後過剰興奮性を亢進するように働き、これが疼痛信号の伝達を増大させ、中枢性感作現象及び慢性疼痛に見られる痛覚過敏反応及びアロディニア反応をもたらす、ということが記録されている。本発明者らの理論は、HCGは、これらのグリア細胞に対して有益な神経可塑性効果を有し、グリア細胞の機能をこれらの仲介物質の放出から、慢性疼痛を抑制するまたは除去することに関与するより正常な生理学的機能の状態へと移行させる可能性がある、というものである。Bradley LA.Pathophysiology of fibromyalgia.Am J Med.2009 December;122(12 Suppl)S22も参照されたい。
【0093】
これは本発明者らが理論化するものの一例または一部を表している。本発明者らが理論化するものは、HCGがCNS及び末梢神経系(PNS)内のいくつかのレベルに働いて、細胞の機能及び指令を回復させ、それによって疼痛を軽減する可能性がある多面的な効果の相乗的パターンである。PNSまたはCNSに対する神経の破損は、侵害受容経路に不適応な神経可塑性反応を誘発し、自発痛及び感覚の増幅を引き起こす。この不適応な可塑性により、変化が継続することになり、これは上記のとおり、真の疾患状態と考えられるべきである。CNSにおいて、脳脊髄幹の多数のレベルでの遺伝子調節異常、シナプスの促通、疼痛抑制経路の損失は、全てが一斉に作用して疼痛シグナル伝達の中枢での増幅を導く。Costgan M,Scholz J,Woolf CJ Neuropathic pain:A maladaptive response of the nervous system to damage.Annu Rev Neurosci.2009;32:1−32を参照されたい。
【0094】
遺伝子、細胞及び分子の要素が多数相互に絡み合い、相互に連絡して慢性神経障害性疼痛を引き起こすことを考慮すると、この多面的な病態生理を調節して、所望の効果が得られるような単一薬剤を作り出すことが困難であるため、目標とする薬物治療は期待外れの結果となることがきわめて多いであろう。
【0095】
より広範なレベルで、本発明者らは、特定の低量投薬範囲でHCGを投与することが、正常な生理機能及び機能を復旧するように我々を若返らせる能力を有し、この場合、より機能的な疼痛伝達経路を回復し、それにより、慢性疼痛を軽減すると考える。本発明者らは、上記のことから、種々のレベルで生理学的な機能を再設定するのに主要な役割を果たすのはHCGであると仮定する。病理学が成熟するとき、機構が−または機能の青写真が−まだ適所にあり利用可能であるなら、臨床的な回答を探すのにこれ以上優れた場があるのであろうか?ただ求められるのは適切な活性化であろう。この適切な活性化は、本発明者らがこれらの報告された症例で観察している可能性があると確信しているものである。HCGは固有の情報またはシグナル伝達能力をもち、これらの細胞可塑性効果が「正常な」恒常性または健康な神経細胞の機能を回復し、同時に疼痛を軽減または排除するのを容易にすることができるようにする。
【0096】
正確に解明された場合に機序が立証するものがどのようなものであれ、本発明者らは、非経腸的に140〜170IU/日の投薬量でHCGを投与することは、HCG処置以前に本発明者らの患者が必要としていた疼痛コントロール介入に伴っていた毒性及びQOLの負荷と比較して、疼痛コントロールのための無毒性の介入であると仮定する。毎日の注射の遵守は100%であった。
【0097】
線維筋痛症は、中心的要素として慢性神経障害性疼痛を伴う複雑であまり解明されていない障害であるが、これについては、FDAが承認した線維筋痛症痛を処置するための医薬でさえ−そのうち2つは実際には抗うつ薬である−、この障害にも関連したうつ病及び不安には効果がない。本発明者らは、HCGが、その多面的で相乗的な神経可塑性効果によって、本発明者らのシリーズ中の対象に対してうつの症状を顕著に改善することを発見した。DoloTest(商標)の精神的/社会的/睡眠の構成概念で見出したことは、この臨床効果を明確に示し、以下の情報によって裏付けがなされている。これは、特にこの患者群にとって注目に値する追加の有益性である。Recla J.New and emerging therapeutic agents for the treatment of fibromyalgia:an update J Pain Res.2010;3:89−103を参照されたい。
【0098】
大うつ病性障害(MDD)及び任意の慢性疼痛症候群は、併存症として存在することが多いことが指摘されてきた(1つの報告書には30〜60%の症例)(Bair MJ,Wu J,Damush TM,Sutherland JM,Kroenke K.Association of depression and anxiety alone and in combination with chronic musculoskeletal pain in primary care patients.Psychosom Med,2008:70(8);890−7)。
【0099】
当面の結果が示唆するのは、HCGは、きわめて類似した感作または「燃え上がり」現象(うつ病の各エピソードがそれに続くうつ病エピソードをより起こりやすくし、ストレスまたは病気などの外部の刺激への依存度を下げることを意味する)を受けやすい、MDDに関与する神経路に同様に作用し、その場合、細胞の構造及び機能は、同じCNSシナプスの、細胞シグナル伝達及び転写経路の多くを通して調節され、変更されて、うつ病に影響を及ぼすということである。正にこのトピックに関する優れたレビューは次のように仮定している。MDD、FM、神経障害性疼痛及び他の慢性疼痛症候群に共通の神経生物学的基盤が真に存在する可能性があり、これがHCG処置の選択肢を更により興味深い概念にしている。その理由は、単一薬剤として、これらの関連した併存症であるCNS障害に、現在利用可能な選択肢と比較して最小限の毒性で併用的に真に対処することができるためである。(Maletic V.,Raison CL Neurobiology
of depression,fibromyalgia and neuropathic pain.Frontiers in Bioscience.June 1,2009;(14):5291−5338)。Robert Postは、「燃え上がり現象」及び感作は、遺伝子発現における神経可塑性による変化及び変更など、同様の神経生物学的基礎を有している可能性があると最初に提起した(Post RM. Kindling and sensitization as models for affective episode recurrence,cyclicity,and tolerance phenomenon,Neurosci Biobehav Rev.2007;31(6):858−73.Epub 2007 Apr 24。
【0100】
疼痛コントロールと称されるもののためのHCGの使用について報告している人々もいるが、本発明者らが使用し、推奨しているものより遙かに上の高投薬量を主張している。Tennantはこの報告書の中で週1〜3回与えられる500〜1000IUを使用することを推奨し、疼痛コントロールを報告している。しかし、参照された1つの数値化した症例は、疼痛コントロールのためのモルヒネを、ベースライン時の3500mgから、なお1400mg必要としていた(Tennant F.Human chorionic gonadotropin:Emerging use in Pain Management.2010 Published on Internet and in
Practical Pain Management,June 1,2009)。また、主張されたこのような高投薬量では、まだ卵巣のある女性においては、卵巣過剰刺激の著しいリスクを負うことになるということに留意すべきである。このようなより多い投与量が著しい鎮痛効果を有するのであれば、この効果は、類似の投薬レジメンで男性の性腺機能低下症を長期間処置している何千人もの患者において、より大きな規模で観察されているであろうと推測することもできる。本発明者らの知るところによれば、かかる報告はない。
【0101】
本発明者らは、HCGが本明細書に記載したように使用されると、中枢性感作経路が働いている任意の慢性疼痛状態の有用な臨床処置となることが判明するであろうと確信している。これが、最初は末梢の障害であったが、PNSまたはCNSの構造の破損または損傷によって永続的になったものが原因であろうと、最初の障害は不明または不明確であるが、それにもかかわらず中枢性感作経路が活性化されている症例においてであろうと、上記のことを確信している。これらの障害には以下を含めることになるが、これらに限定されない。線維筋痛症、変形性関節症、関節リウマチ、突起した椎間板が原因のニューロパチー及び慢性疼痛、術後疼痛症候群、外陰部痛;脳卒中、脊髄損傷及び多発性硬化症などのCNS障害が原因の慢性疼痛、並びに直接的な神経外傷、中毒性ニューロパチー及び代謝性ニューロパチー、帯状疱疹及びAIDSを含むPNS病変または疾患。
【0102】
既に記載したものに加えて更に多くの変更形態が、本明細書の発明の概念から逸脱することなく可能であることが、当業者には明らかであるはずである。従って、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の範囲内を除いて、限定されるべきではない。更に、明細書及び特許請求の範囲の両方の解釈において、全ての用語は、文脈に矛盾しない可能な限り広い意味で解釈されるべきである。
【0103】
明細書及び特許請求の範囲がA、B、C・・・・及びNからなる群から選択された何某のうち少なくとも1つと言及している場合、その文は、その群からの1つの要素のみを必要としているものと解釈されるべきであり、AにNを加えたものでもBにNを加えたものなどでもない。更に、各実施形態が示すものは発明の要素の1つの組合せのみであるが、本発明の主題は、開示した要素の可能な全ての組合せを含むものであると考えられる。従って、1つの実施形態が要素A、B及びCを含み、第2の実施形態が要素B及びDを含む場合には、本発明の主題は、明示的に開示されていない場合でも、やはりA、B、CまたはDの、残る他の組合せを含むものと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5