(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、第n印刷層(nは自然数)が前記特色インク層によって形成されるように設定されているとき、前記特色インクのインクドット全体に所定のマスクを掛けることによって前記特色インクのインクドット全体の一部または全部からなる第n特色ドット群を抽出する第1ドット設定部を備え、
前記印刷制御部は、前記第1ドット設定部によって設定された前記第n特色ドット群を含むインクドットによって前記第n印刷層を形成させる、
請求項1〜6のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
前記制御装置は、第n印刷層(nは自然数)が前記特色インク層によって形成されるように設定されているとき、前記プロセスカラーインクのインクドット全体に所定のマスクを掛けることによって前記プロセスカラーインクのインクドット全体の一部または全部からなる第nプロセスカラードット群を抽出する第2ドット設定部を備え、
前記印刷制御部は、前記特色インクのインクドットに加えて、前記第2ドット設定部によって設定された前記第nプロセスカラードット群を前記第n印刷層に形成させる、
請求項1〜7のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、いくつかの実施形態に係るインクジェットプリンタについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。以下の説明では、インクジェットプリンタを正面から見たときに、インクジェットプリンタから遠ざかる方を前方、インクジェットプリンタに近づく方を後方とする。また、図面中の符号Yは主走査方向を示し、符号Xは主走査方向Yと直交する副走査方向Xを示している。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、インクジェットプリンタの設置態様等を限定するものではない。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る大判のインクジェットプリンタ(以下、「プリンタ」とする。)10の正面図である。プリンタ10は、ロール状の記録媒体5を順次前方(副走査方向Xの下流X2側)に移動させると共に、主走査方向Yに移動するキャリッジ25に搭載されたインクヘッド40、50、60、70、および80(いずれも
図2参照)からインクを吐出することによって、記録媒体5上に画像を印刷する。
【0011】
記録媒体5は、画像が印刷される対象物である。記録媒体5は、例えば、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類であってもよいし、樹脂製やガラス製などの透明なシートであってもよいし、金属製やゴム製等のシートであってもよい。記録媒体5は特に限定されないが、本実施形態の説明にあっては透明シートであるとする。
【0012】
図1に示すように、プリンタ10は、プリンタ本体10aと、プリンタ本体10aを支持する脚11とを備えている。プリンタ本体10aは、主走査方向Yに延びている。プリンタ本体10aは、ガイドレール21と、ガイドレール21に係合したキャリッジ25とを備えている。ガイドレール21は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール21は、キャリッジ25の主走査方向Yへの移動をガイドする。キャリッジ25には無端状のベルト22が固定されている。ベルト22は、ガイドレール21の右側に設けられたプーリ23aおよび左側に設けられたプーリ23bに巻き掛けられている。右側のプーリ23aにはキャリッジモータ24が取り付けられている。キャリッジモータ24は、制御装置100と電気的に接続されている。キャリッジモータ24は、制御装置100によって制御される。キャリッジモータ24が駆動するとプーリ23aが回転し、ベルト22が走行する。それにより、キャリッジ25がガイドレール21に沿って主走査方向Yに移動する。このように、キャリッジ25が主走査方向Yに移動することによって、インクヘッド40〜80も主走査方向Yに移動する。本実施形態では、ベルト22とプーリ23aとプーリ23bとキャリッジモータ24とが、キャリッジ25およびキャリッジ25に搭載されたインクヘッド40〜80を主走査方向Yに移動させる主走査方向移動装置20の一例である。
【0013】
キャリッジ25の下方には、プラテン12が配置されている。プラテン12は、主走査方向Yに延びている。プラテン12には記録媒体5が載置される。プラテン12の上方には、記録媒体5を上から押下するピンチローラ31が設けられている。ピンチローラ31は、キャリッジ25より後方に配置されている。プラテン12には、グリットローラ32が設けられている。グリットローラ32は、ピンチローラ31の下方に配置されている。グリットローラ32は、ピンチローラ31と対向する位置に設けられている。グリットローラ32は、フィードモータ33(
図3参照)に連結されている。グリットローラ32は、フィードモータ33の駆動力を受けて回転可能に形成されている。フィードモータ33は、制御装置100と電気的に接続されている。フィードモータ33は、制御装置100によって制御される。ピンチローラ31とグリットローラ32との間に記録媒体5が挟まれた状態でグリットローラ32が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。本実施形態では、ピンチローラ31とグリットローラ32とフィードモータ33とが、記録媒体5を副走査方向Xに移動させる副走査方向移動装置30の一例である。
【0014】
図2は、キャリッジ25の記録媒体5と対向する側の面(本実施形態では下面)の構成を示す模式図である。
図2に示すように、キャリッジ25の下面には、インクヘッド40、50、60、70、および80が保持されている。複数のインクヘッドは、プリンタ10の左方Lから右方Rに向かって、インクヘッド40、50、60、70、80の順に並んでいる。そのうちインクヘッド50〜80は、副走査方向Xに関して同じ位置に配置されている。インクヘッド40は、インクヘッド50〜80よりも副走査方向Xの上流X1側にずれて配置されている。インクヘッド40の一部は、インクヘッド50〜80よりも副走査方向Xの上流X1側に突出し、他の部分はインクヘッド50〜80と副走査方向Xに関して重なっている。インクヘッド40は、本発明における「第1インクヘッド」の一例である。他の4つのインクヘッド50〜80は、本発明における「第2インクヘッド」の一例である。
【0015】
インクヘッド40は、本実施形態にあっては、カラー画像の色調や意匠性に変化を与えるための、所謂、特色インクを吐出するインクヘッドである。特色インクは、CMYKといったプロセスカラーインク以外のインク、例えば、ホワイトインクや、シルバーインク、ゴールドインクなどのメタリックインクや、透明インクなどである。特色インクの色調は限定されないが、本実施形態の説明においては、インクヘッド40は、ホワイトインクを吐出するものとする。また、本実施形態では、特色インクを吐出するインクヘッドはインクヘッド40の1個であるが、これに限定されない。特色インクを吐出するインクヘッドの数は、例えば2個以上であってもよい。
【0016】
図2に示すように、インクヘッド40は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル41を有している。複数のノズル41は、副走査方向Xに一列に並んでノズル列42を構成している。ただし、ノズル列42は一列とは限らず、例えば2列以上であってもよい。
図2において、インクヘッド40には、10個のノズルが図示されているが、実際にはさらに多数(例えば300個)のノズルが形成されている。ただし、ノズルの個数は何ら限定されるわけではない。
【0017】
インクヘッド50〜80は、それぞれ、カラー画像を形成するためのプロセスカラーインクを吐出するインクヘッドである。本実施形態にあっては、インクヘッド50は、シアンインクを吐出する。インクヘッド60は、マゼンタインクを吐出する。インクヘッド70は、イエローインクを吐出する。インクヘッド80は、ブラックインクを吐出する。ただし、プロセスカラーインクを吐出するインクヘッドの数は4個に限定されず、また、プロセスカラーインクの色調は何ら限定されない。
【0018】
図2に示すように、複数のインクヘッド50〜80は、それぞれ、副走査方向Xに並んだ複数のノズルを有している。各インクヘッドの複数のノズルは、副走査方向Xに一列に並んでノズル列を構成している。より詳しくは、インクヘッド50は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル51を備え、複数のノズル51はノズル列52を構成している。インクヘッド60は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル61を備え、複数のノズル61はノズル列62を構成している。インクヘッド70は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル71を備え、複数のノズル71はノズル列72を構成している。インクヘッド80は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル81を備え、複数のノズル81はノズル列82を構成している。ただし、上記各ノズル列は一列とは限らず、例えば2列以上であってもよい。ノズル列52、62、72、82に属するノズルの個数は、インクヘッド40のノズル列42に属するノズル41の個数と同数である。即ち、
図2においては、上記ノズルの個数は、各インクヘッドにつき10個である。インクヘッド50のノズル51のうち最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた4個は、インクヘッド40のノズル41のうち最も副走査方向Xの下流X2側に設けられた4個と並んでいる。ノズル51のうち残りの6個は、インクヘッド40のノズル41よりも副走査方向Xの下流X2側に位置している。インクヘッド60、70、80についても同様であって、ノズル61のうち最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた4個、ノズル71のうち最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた4個、およびノズル81のうち最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた4個は、インクヘッド40のノズル41のうち最も副走査方向Xの下流X2側に設けられた4個と並んでいる。
【0019】
インクヘッド40のノズル列42は、副走査方向Xに並んだ2つの部分ノズル列43および44に分割されている。以下、符号43で示される部分ノズル列を第1部分ノズル列43、符号44で示される部分ノズル列を第2部分ノズル列44と称することとすると、第1部分ノズル列43は、ノズル41のうち最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた5個のノズル41で構成されている。第2部分ノズル列44は、ノズル41のうち、第1部分ノズル列43のノズル41の次に副走査方向Xの上流X1側(即ち、最も副走査方向Xの下流X2側)に設けられた5個のノズル41で構成されている。第1部分ノズル列43のノズル41の個数と、第2部分ノズル列44のノズル41の個数は同数(ここでは5個)である。ノズル列42は、第1部分ノズル列43と第2部分ノズル列44とによって、副走査方向Xに2等分されている。
【0020】
インクヘッド50のノズル列52は、副走査方向Xに並んだ3つの部分ノズル列53、54、および55に分割されている。部分ノズル列53は、インクヘッド40のノズル列42と副走査方向Xについて重なっている部分ノズル列である。部分ノズル列53に属するノズル51は、後述する多層印刷モードにおいてインクを吐出しない部分ノズル列である。そこで、以下では適宜、符号53で示される部分ノズル列を、第1不使用ノズル列53と称する。部分ノズル列54は、第1不使用ノズル列53よりも副走査方向Xの下流X2側に位置する5個のノズル51で構成されている。部分ノズル列54は、多層印刷モード時、シアンインクを吐出する。部分ノズル列55は、最も副走査方向Xの下流X2側に設けられ、第1不使用ノズル列53にも部分ノズル列54にも属さない1個のノズル51で構成されている。部分ノズル列55に属するノズル51も、多層印刷モードにおいてインクを吐出しないので、以下では適宜、第2不使用ノズル列55と称する。多層印刷モードの詳細については後述する。インクヘッド60、70、80の部分ノズル列の構成は、インクヘッド50の部分ノズル列の構成と同様である。即ち、
図2に示されるように、インクヘッド60のノズル列62は、第1不使用ノズル列63と、部分ノズル列64と、第2不使用ノズル列65とに分割されている。インクヘッド70のノズル列72は、第1不使用ノズル列73と、部分ノズル列74と、第2不使用ノズル列75とに分割されている。インクヘッド80のノズル列82は、第1不使用ノズル列83と、部分ノズル列84と、第2不使用ノズル列85とに分割されている。なお、上記ノズル列の分割は制御上のものであって、機構上の差異があってのものではない。また、上記ノズル列の分割は、上記多層印刷モードに対応したものであって、他の印刷モードにおいては他の分割が実行される(もしくは分割されない)。他の印刷モードの詳細については、多層印刷モード同様、後述するものとする。
【0021】
インクヘッド40、およびインクヘッド50〜80の内部には、圧電素子等を備えたアクチュエータ(図示せず)が設けられている。アクチュエータは、制御装置100と電気的に接続されている。アクチュエータは、制御装置100によって制御される。アクチュエータが駆動することによって、インクヘッド40の複数のノズル41、インクヘッド50の複数のノズル51、インクヘッド60の複数のノズル61、インクヘッド70の複数のノズル71、およびインクヘッド80の複数のノズル81から記録媒体5に向かってインクが吐出される。
【0022】
インクヘッド40、およびインクヘッド50〜80は、それぞれ、図示しないインク供給路によって、図示しないインクカートリッジと連通されている。インクカートリッジは、例えばプリンタ本体10aの右端部に着脱可能に配置されている。なお、インクの材料は何ら限定されず、従来からインクジェットプリンタのインクの材料として用いられている各種の材料を使用することができる。上記インクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性顔料インクであってもよいし、水性染料インク、あるいは、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク等であってもよい。
【0023】
図1に示すように、プリンタ10は、ヒータ35を備えている。ヒータ35は、プラテン12の下方に設けられている。ヒータ35は、グリットローラ32より前方に配置されている。ヒータ35は、プラテン12を加熱する。プラテン12が加熱されることによって、プラテン12上に配置されている記録媒体5および記録媒体5に着弾したインクが加熱され、インクの乾燥が促進される。ヒータ35は、制御装置100に電気的に接続されている。ヒータ35の加熱温度は、制御装置100によって制御される。
【0024】
図1に示すように、プリンタ本体10aの右端部には、操作パネル110が設けられている。操作パネル110には、機器状態を表示する表示部と、ユーザーによって操作される入力キー等が設けられている。操作パネル110の内側には、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置100が収容されている。
図3は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。
図3に示すように、制御装置100は、フィードモータ33、キャリッジモータ24、ヒータ35、各インクヘッド40〜80とそれぞれ通信可能に接続されており、それらを制御可能に構成されている。制御装置100は、変換部101と、印刷モード設定部102と、印刷制御部103と、印刷率設定部104とを備えている。
【0025】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置とを備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ本体10aの内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ本体10aの外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ本体10aと通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0026】
変換部101は、画像データをインクドットのパターンに変換する、所謂スクリーン処理を行う部位である。インクジェットプリンタによる印刷画像は、各プロセスカラーインクのインクドットの集合体として構成されている。本実施形態に係るプリンタ10においては、画像はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色からなるインクドットのパターンに変換される。また、ホワイトによる下地色も、ホワイトインクのインクドットのパターンに変換される。変換部101は、プリンタ本体10aに備えられていてもよいし、あるいは外部のコンピュータ等に備えられていてもよい。なお、以下の説明においては、変換部101で生成されるインクドットの集合体を、適宜、「インクドット全体」と称し、そのうち特定の色のインクのインクドットの集合体を、例えば「ホワイトインクのインクドット全体」、「シアンインクのインクドット全体」、あるいは「プロセスカラーインクのインクドット全体」等と称する。
【0027】
印刷モード設定部102は、印刷モードを設定するとともに、設定された印刷モードを印刷制御部103に指令する部位である。本実施形態においては、印刷モードは「単層印刷モード」、「2層印刷モード」、および「多層印刷モード」の3つの印刷モードに区別される。単層印刷モードでは、プリンタ10は、プロセスカラーインクのインクドットによって構成される印刷層(以下、プロセスカラーインク層と呼ぶ。)だけを記録媒体5上に形成する。単層印刷モードは、通常の画像印刷モードである。2層印刷モードでは、プリンタ10は、インクヘッド40から特色インクを吐出することによって、記録媒体5上に、特色インクのインクドットによって構成される印刷層(以下、特色インク層と呼ぶ。)を形成する。また、インクヘッド50〜80からプロセスカラーインクを吐出することによって記録媒体5上にプロセスカラーインク層を形成する。上記特色インク層とプロセスカラーインク層は重ねて形成される。2層印刷モードにおける印刷層は、1層の特色インク層と、1層のプロセスカラーインク層の計2層である。2層印刷モードは、公知のインクジェットプリンタによる重ね印刷と同様の印刷モードである。多層印刷モードは、上記特色インク層とプロセスカラーインク層を総計で3層以上形成する印刷モードである。多層印刷モードにおける印刷層の層数は限定されないが、本実施形態に係る多層印刷モードでは3層とする。なお、以下では適宜、上記3層の印刷層のうち最も下に印刷される印刷層を第1印刷層、第1印刷層の上に重ねて印刷される印刷層を第2印刷層、さらに第2印刷層の上に重ねて印刷される印刷層を第3印刷層と称する。
【0028】
印刷制御部103は、各部の動作を制御して記録媒体5に対して印刷を行わせる部位である。印刷制御部103は、キャリッジモータ24、フィードモータ33、インクヘッド40、50、60、70、および80に接続されている。印刷制御部103は、それらを制御することによって記録媒体5に対して印刷を行う。印刷制御部103が1つの印刷層に形成させるのは、特色インク層およびプロセスカラーインク層のうちのいずれか一方である。各印刷層にいかなる層を形成するかは、印刷モード設定部102、および後述する印刷率設定部104の指令に従う。また、印刷制御部103は、ヒータ35に接続され、ヒータ35の温度を制御することで、印刷後の特色インクおよび各プロセスカラーインクの乾燥を制御する。
【0029】
印刷率設定部104は、所定のマスクによって、特色インクのインクドット全体から、その一部(または全部)のインクドットを抽出する部位である。より詳しくは、印刷率設定部104は、特色インクのインクドット全体から所定の割合(以下、上記割合を「印刷率」と称する。)でインクドットを抽出する。上記抽出は印刷層単位で行われる。即ち、例えば第1印刷層および第2印刷層が特色インク層に設定されている場合、印刷率設定部104は、第1印刷率が設定されたマスクによって第1印刷層に印刷されるインクドットを抽出する。また、印刷率設定部104は、第2印刷率が設定されたマスクによって第2印刷層に印刷されるインクドットを抽出する。本実施形態では、印刷率は作業者によって設定される。印刷率設定部104は、例えば、操作パネル110や、外部のコンピュータの表示装置などに操作画面を表示する。作業者は上記操作画面等を介して各印刷層の印刷率を設定する。印刷率設定部104による印刷率の設定およびインクドットの抽出の詳細については後述することとする。印刷制御部103は、印刷率設定部104で設定された印刷率に基づいて、各印刷層の印刷を実施する。なお、本実施形態に係る印刷率設定部104においては、印刷率は操作画面等を介して設定されるが、それに限られない。例えば、他の好ましい実施形態では、印刷率は印刷データに予め組み込まれ、印刷率設定部104は、上記予め組み込まれた印刷率に基づき自動的に印刷率を設定するように構成されていてもよい。
【0030】
本実施形態に係るプリンタ10は、上記のような構成を備えている。本実施形態に係るプリンタ10は、単層印刷モードにおいて、以下のように印刷を実行する。単層印刷モードにおいて、印刷制御部103は、キャリッジモータ24を駆動してキャリッジ25を主走査方向Yに移動させるとともに、アクチュエータを駆動してインクヘッド50〜80からプロセスカラーインクを吐出させることによって、記録媒体5上にプロセスカラーインク層による第1印刷層を形成する。上記印刷中、印刷制御部103は、記録媒体5が順次前方F(副走査方向Xの下流X2側)に送り出されるように、フィードモータ33を制御する。フィードモータ33に送り出された記録媒体5上のプロセスカラーインクは、順次ヒータ35によって加熱され乾燥される。印刷制御部103は、例えば、記録媒体5が1回前方Fに送り出されるまでに、キャリッジ25を主走査方向Yに1回または複数回移動させる。
【0031】
2層印刷モードにおいては、インクヘッド50〜80に加えて、インクヘッド40からもインクが吐出される。インクヘッド40から吐出されるインクは、ホワイトインクである。2層印刷モードにおいて、印刷制御部103は、キャリッジモータ24を駆動してキャリッジ25を主走査方向Yに移動させるとともに、アクチュエータを駆動してインクヘッド40の一部のノズル41からホワイトインクを吐出させる。詳しくは、インクヘッド40のノズル41のうち副走査方向Xの上流X1側に設けられた8個のノズル41からホワイトインクを吐出させる。印刷制御部103は、上記ホワイトインクの吐出によって、記録媒体5上に特色インク層による第1印刷層を形成する。上記第1印刷層の印刷の後、印刷制御部103は、フィードモータ33を制御して、記録媒体5を副走査方向Xの下流X2側にフィードする。上記フィード後、印刷制御部103は、インクヘッド50〜80のノズル51〜81のうち副走査方向Xの下流X2側に設けられた8個のノズル51〜81からプロセスカラーインクを吐出させる。上記プロセスカラーインクの吐出によって、記録媒体5上にプロセスカラーインク層による第2印刷層が形成される。ホワイトインクを吐出するノズル41とプロセスカラーインクを吐出するノズル51〜81とは同数(ここでは8個)であり、ホワイトインクを吐出するノズル41の方がプロセスカラーインクを吐出するノズル51〜81よりも副走査方向Xの上流X1側に配置されているため、本実施形態に係るプリンタ10は、2層印刷を連続的に行うことができる。
【0032】
ところで、上記2層印刷モードによる重ね印刷は、従来から実施されてきた公知の重ね印刷と同じものである。重ね印刷は、典型的には、例えば本実施形態の説明におけるように、透明な記録媒体に対して下地層を印刷するために実施される。重ね印刷における下地層は、画像に一定の視覚効果を付与するものである。ここでは、ホワイトインクによる遮光効果などが上記視覚効果に該当する。しかしながら、例えば、プリンタ10の印刷解像度その他の制約条件により、所望の視覚効果が十分に得られない場合がある。本実施形態にあっては、例えばそれは、ホワイトインクのドット密度の不足による遮光効果の不足などである。
【0033】
そこで、本実施形態に係るプリンタ10は、多層印刷モードを設定できる印刷モード設定部102を備え、記録媒体5上に3層以上の印刷層を重ねて形成できるように構成されている。多層印刷モードによる重ね印刷では、特色インク層による印刷層とプロセスカラーインク層による印刷層とが両方形成されるが、印刷層の層数が3層以上であるため、特色インク層およびプロセスカラーインク層のうちの少なくとも一方は、2層以上形成される。本実施形態においては、多層印刷モードにおける印刷層の層数は「3」であり、第1印刷層および第2印刷層が特色インク層である。そして、第3印刷層がプロセスカラーインク層である。
【0034】
本実施形態に係るプリンタ10によれば、特色インク層を2層重ねて形成することにより、特色インクの視覚効果をより高度に発揮させた印刷を実施することができる。例えば本実施形態のように透明シート上にホワイトインクによる特色インク層を形成させる場合には、特色インク層により高い遮光効果を持たせることができる。他の場合であっても、特色インク層を補強したいというニーズがある場合には同様である。例えば、特色インクがメタリックインクである場合であって、メタリックインクの視覚効果が期待よりも弱い場合などに適用できる。
【0035】
以下では、本実施形態に係るプリンタ10において、多層印刷モードによる重ね印刷を実施する際のプロセスについて説明する。
図4は、印刷モード設定部102および印刷率設定部104に係る操作画面の一例を示す図である。
図4に示されるように、本実施形態に係る操作画面は、印刷モードを選択可能なチェックボックスCBを備えている。また、第1印刷層および第2印刷層の印刷率を入力可能な第1入力ボックスBs1、および第2入力ボックスBs2を備えている。チェックボックスCBでは、いずれかのボックスにチェックを入れることにより、単層印刷モード、2層印刷モード、および多層印刷モードのいずれかを選択可能である。本実施形態に係るプリンタ10では、多層印刷モードにおける各印刷層の役割は予め定められている。つまり、本実施形態に係る多層印刷モードにおいては、第1印刷層および第2印刷層は特色インク層、第3印刷層はプロセスカラーインク層と決定されており、それ以外の設定はなされない。上記以外の設定が可能な実施形態については第2実施形態以降の実施形態において説明する。多層印刷モードが選択されると、第1入力ボックスBs1、および第2入力ボックスBs2に印刷率の入力が可能となる。第1入力ボックスBs1は、第1印刷層の印刷率(以下、第1印刷率と呼ぶ。)を入力可能に構成されている。第1印刷率は、特色インクのインクドット全体に対する、第1印刷層に形成される特色インクのインクドットの割合である。第2入力ボックスBs2は、第2印刷層の印刷率(以下、第2印刷率と呼ぶ。)を入力可能に構成されている。第2印刷率は、特色インクのインクドット全体に対する、第2印刷層に形成される特色インクのインクドットの割合である。
【0036】
第1印刷層に印刷されるインクドットは、特色インクのインクドット全体の中から、例えばランダムマスクによって抽出される。
図4に示された例では、第1入力ボックスBs1に入力された第1印刷率は75%である。そこで、印刷率設定部104は、第1印刷層に形成される特色インクのインクドットを、特色インクのインクドット全体の中から、ランダムに75%分抽出する。同様にして、印刷率設定部104は、第2入力ボックスBs2に入力された第2印刷率に基づいて、第2印刷層に形成される特色インクのインクドットを、特色インクのインクドット全体の中からランダムに抽出する。
図4の例では、第2印刷率は50%である。従って、第1印刷率75%と第2印刷率50%を積算した計125%が積算の印刷率として設定される。
【0037】
上記した例では、本実施形態に係るプリンタ10は、75%および50%という「薄い」特色インク層を2層積み重ねて最終的に高密度の下地層を印刷するが、それぞれの印刷層に形成される特色インク層は上記のような「薄い」特色インク層でなくともよい。いずれの印刷層も、印刷率100%に設定されても構わない。また、第1印刷層および第2印刷層に形成されるインクドットを抽出するマスクは、ランダムマスクに限られない。例えば、印刷率設定部104は、第1印刷層に形成されるものとして抽出されなかったインクドットを優先的に第2印刷層用のインクドットとして抽出するように構成されていてもよい。即ち、第1印刷層に形成されるインクドットと第2印刷層に形成されるインクドットとは、相補的な関係であってもよい。また、マスクは、何らかの統計的方法によってインクドットを抽出するマスクであってもよい。
【0038】
第3印刷層に形成されるプロセスカラーインクのインクドットは、プロセスカラーインクのインクドット全体である。つまり、プロセスカラーインクによる画像は、第3印刷層にそのまま印刷される。第3印刷率は100%である。
【0039】
上記のようにして各印刷層に形成されるインクドットの配分がなされた後、記録媒体5に対して印刷が施される。以下では、
図4に示された場合に実施される印刷プロセスについて説明する。
図5Aは、多層印刷モード中のある時点における記録媒体5上を示す模式図である。
図5Aの左端には、キャリッジ25を上方Uから見た平面図が示されている。キャリッジ25の右方には、記録媒体5が示されている。
図5Aにおいては、キャリッジ25の真下に位置する記録媒体5上の領域が、キャリッジ25の右に図示されている。例えば、
図5Aの時点において、インクヘッド40の第1部分ノズル列43の真下に位置する記録媒体5上の領域は、領域A1である。
図5Aにおいて、領域A1上には、第1印刷層L1が形成されている。第1印刷層L1は、第1部分ノズル列43のノズル41から吐出されるホワイトインクのインクドットから形成されている。
図5Aの第1印刷層L1上には、第1印刷層L1に係る第1印刷率P1(ここではP1=75%)が図示されている。これは、ホワイトインクのインクドット全体の75%に当たるインクドットが領域A1上に形成され、第1印刷層L1をなしたことを意味している。第1印刷層L1に形成されるホワイトインクのインクドットは、
図5Aでは、Ds1と表記されている。また、領域A1には、この時点までのホワイトインクの積算の印刷率(
図5Aでは、「total」と表記)が示されている。
図5Aの時点でインクを吐出しているノズルにはハッチングが施されている。これは、後述の
図5B、
図5Cにおいても同様である。
【0040】
図5Bは、
図5Aに示された時点の次のパスにおける記録媒体5上を表す模式図である。
図5Aに示される時点と
図5Bに示される時点との間において、印刷制御部103は、フィードモータ33を制御して、記録媒体5を1回前方Fに送っている。そこで、領域A1は第2部分ノズル列44の真下(
図5Bでは右)に移動され、第1部分ノズル列43の真下には、領域A1の次の領域A2が位置している。
図5Bの領域A1には、第1印刷層L1(第1印刷率P1=75%)と第2印刷層L2(第2印刷率P2=50%)がともに図示され、さらにホワイトインクの積算の印刷率total=125%が図示されている。これは、
図5Bに示される時点において、領域A1に第1印刷層L1および第2印刷層L2が重ねて形成され、この時点の領域A1におけるホワイトインクの積算の印刷率が125%であることを意味している。第2印刷層L2も、ホワイトインクのインクドットによって形成された印刷層である。第2印刷層L2を形成するホワイトインクのインクドットは、
図5Bにおいては、Ds2と表記されている。インクドットDs2は、インクヘッド40の第2部分ノズル列44のノズル41から吐出されたホワイトインクから形成されている。
図5Bの領域A2には、第1部分ノズル列43のノズル41から吐出されたホワイトインクのインクドットDs1によって、第1印刷層L1が形成されている。
【0041】
図5Cは、
図5Bに示された時点のさらに次のパスにおける記録媒体5上を示す模式図である。
図5Bに示される時点と
図5Cに示される時点との間で、印刷制御部103は、フィードモータ33を制御して、記録媒体5を1回前方Fに送っている。そこで、領域A1は、インクヘッド50〜80の部分ノズル列54〜84の真下に移動され、インクヘッド40の第1部分ノズル列43の真下には、領域A2の次の領域A3が位置している。また、インクヘッド40の第2部分ノズル列44の真下には、領域A2が位置している。
図5Cの領域A1には、ホワイトインクによる第1印刷層L1(第1印刷率P1=75%)、ホワイトインクによる第2印刷層L2(第2印刷率P2=50%)、ホワイトインクの積算の印刷率(total=125%)、プロセスカラーインクによる第3印刷層L3(第3印刷率P3=100%)が図示されている。第3印刷層L3は、プロセスカラーインクのインクドットDpによって形成された印刷層である。これは、
図5Cに示される時点において、領域A1に第1印刷層L1、第2印刷層L2、第3印刷層L3が重ねて印刷され、積算で125%の特色インク層と、100%のプロセスカラーインク層とが形成されていることを意味している。インクドットDpは、インクヘッド50〜80の部分ノズル列54、64、74、84のノズルから吐出されたプロセスカラーインクから形成されている。さらに、
図5Cの領域A2には、ホワイトインクのインクドットDs1からなる第1印刷層L1と、ホワイトインクのインクドットDs2からなる第2印刷層L2とが重ねて形成されている。領域A3には、第1部分ノズル列43のノズル41から吐出されたホワイトインクのインクドットDs1からなる第1印刷層L1が形成されている。
【0042】
上記のように、本実施形態に係るプリンタ10は、連続的に実施される3回の重ね印刷によって多層印刷を行うことができるように構成されている。そのために、本実施形態に係るプリンタ10においては、インクヘッド40の第1部分ノズル列43、インクヘッド40の第2部分ノズル列44、およびインクヘッド50〜80の部分ノズル列54〜84は全て同数のノズル(ここでは5個)を有するとともに、第1部分ノズル列43、第2部分ノズル列44、および部分ノズル列54〜84は、キャリッジ25において、副走査方向Xの上流X1側から、この順に配置されている。
【0043】
本実施形態に係る印刷率設定部104では、第1印刷層に係るマスクに任意の第1印刷率を設定でき、また、第2印刷層に係るマスクに任意の第2印刷率を設定できる。本実施形態に係るプリンタ10においては、上記第1および第2印刷率の調整によってインクの乾燥状態を制御することができる。即ち、次の吐出までにインクが十分に乾燥するような印刷率を設定することにより、インクの重なりによる滲みを抑制し、高品質な画像を提供することができる。インクの乾燥が問題となる場合には、各印刷層の印刷率は、ヒータ35の乾燥能力も考慮して決定される。
【0044】
なお、上記した実施形態では、操作画面は
図4のような仕様を備えていたが、操作画面はそれに限られない。例えば、設定操作はもっと単純化され、特色インク層の積算の印刷率だけが入力されるようになっていてもよい。その場合、第1印刷層および第2印刷層に割り当てられる印刷率は、印刷率設定部104が自動設定する。例えばそれは、等分であってもよいし、印刷率設定部104に記憶された所定の分配法則に従うものであってもよい。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態は、特色インク層をプロセスカラーインク層の下に印刷する多層印刷モード(第1実施形態において説明)だけでなく、特色インク層をプロセスカラーインク層の上に印刷する多層印刷モードも備えた実施形態である。第2実施形態に係るプリンタ10においては、特色インク層をプロセスカラーインク層の下に印刷する多層印刷モードと、特色インク層をプロセスカラーインク層の上に印刷する多層印刷モードとは択一的に選択され、選択された印刷モードによる多層印刷が実行される。上記2つの多層印刷モードを実行するために、第2実施形態に係るプリンタ10は、第1実施形態に係るプリンタ10とは異なる配置でノズルが配置されている。なお、第2実施形態に係るプリンタは、上記した仕様に関わる構成を除いて、第1実施形態に係るプリンタ10と共通である。そこで、以下の第2実施形態の説明においては、第1実施形態と同じ部材には同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略または簡略化する。第3実施形態以下の実施形態についても同様である。
【0046】
図6は、本実施形態に係るキャリッジ25の下面の構成を示す模式図である。
図6に示すように、キャリッジ25の下面には、インクヘッド40、およびインクヘッド50〜80が保持されている。第1実施形態と同じく、インクヘッド40は、特色インク(具体的にはホワイトインク)を吐出するインクヘッドである。インクヘッド50〜80は、プロセスカラーインクを吐出するインクヘッドである。より詳しくは、インクヘッド50はシアンインクを吐出するインクヘッドである。インクヘッド60はマゼンタインクを吐出するインクヘッドである。インクヘッド70はイエローインクを吐出するインクヘッドである。インクヘッド80はブラックインクを吐出するインクヘッドである。
図6に示すように、キャリッジ25において、インクヘッド40とインクヘッド50〜80とは主走査方向Yに並んで配置されている。
【0047】
図6に示すように、インクヘッド40は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル41を有している。
図6においては、インクヘッド40は、16個のノズル41を備えている。ただし、実際には、インクヘッド40はもっと多数のノズル41を備えている。複数のノズル41は、インクヘッド40において、副走査方向Xに1列に並んでノズル列42を構成している。ただし、ノズル列42は一列とは限らず、例えば2列以上であってもよい。ノズル列42は、第1部分ノズル列42a、第2部分ノズル列42b、第3部分ノズル列42c、および不使用ノズル列42nから構成されている。第1部分ノズル列42aは、ノズル41のうち最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた5個のノズル41で構成されている。第2部分ノズル列42bは、ノズル41のうち、第1部分ノズル列42aに属するノズル41の次に副走査方向Xの上流X1側に設けられた5個のノズル41で構成されている。第3部分ノズル列42cは、ノズル41のうち、第2部分ノズル列42bに属するノズル41の次に副走査方向Xの上流X1側に設けられた5個のノズル41で構成されている。第1部分ノズル列42aのノズル41の個数、第2部分ノズル列42bのノズル41の個数、および第3部分ノズル列42cのノズル41の個数は同数(ここでは5個)である。不使用ノズル列42nは、第3部分ノズル列42cよりも副走査方向Xの下流X2側(最も副走査方向Xの下流X2側)に設けられた1個のノズル41で構成されている。不使用ノズル列42nは、本実施形態に係る多層印刷モードにおいてインクを吐出しないノズルである。
【0048】
インクヘッド50は、副走査方向Xに並んだ複数のノズル51を有している。インクヘッド40と同様、インクヘッド50は、16個のノズル51を備えている。複数のノズル51は、インクヘッド50において、副走査方向Xに1列に並んでノズル列52を構成している。ただし、ノズル列52は一列とは限らず、例えば2列以上であってもよい。ノズル列52は、第1部分ノズル列52a、第2部分ノズル列52b、第3部分ノズル列52c、および不使用ノズル列52nから構成されている。第1部分ノズル列52aは、ノズル51のうち最も副走査方向Xの上流X1側に設けられた5個のノズル51で構成されている。第2部分ノズル列52bは、ノズル51のうち、第1部分ノズル列52aに属するノズル51の次に副走査方向Xの上流X1側に設けられた5個のノズル51で構成されている。第3部分ノズル列52cは、ノズル51のうち、第2部分ノズル列52bに属するノズル51の次に副走査方向Xの上流X1側に設けられた5個のノズル51で構成されている。第1部分ノズル列52aのノズル51の個数、第2部分ノズル列52bのノズル51の個数、および第3部分ノズル列52cのノズル51の個数は同数(ここでは5個)である。従って、第1部分ノズル列52aの副走査方向Xに関する長さ、第2部分ノズル列52bの副走査方向Xに関する長さ、および第3部分ノズル列52cの副走査方向Xに関する長さは同じである。不使用ノズル列52nは、第3部分ノズル列52cよりも副走査方向Xの下流X2側(最も副走査方向Xの下流X2側)に設けられた1個のノズル51で構成されている。不使用ノズル列52nは、本実施形態に係る多層印刷モードにおいてインクを吐出しないノズルである。
【0049】
インクヘッド50の第1部分ノズル列52aは、副走査方向Xに関して、インクヘッド40の第1部分ノズル列42aと同じ位置に設けられている。また、インクヘッド50の第1部分ノズル列52aは、インクヘッド40の第1部分ノズル列42aと同数のノズルを備えている。インクヘッド40の第1部分ノズル列42aの副走査方向Xに関する長さと、インクヘッド50の第1部分ノズル列52aの副走査方向Xに関する長さは同じである。インクヘッド40の第2部分ノズル列42bと、インクヘッド50の第2部分ノズル列52bとの関係も同様である。インクヘッド40の第3部分ノズル列42cと、インクヘッド50の第3部分ノズル列52cとの関係も同様である。つまり、インクヘッド50の第2部分ノズル列52bは、副走査方向Xに関して、インクヘッド40の第2部分ノズル列42bと同じ位置に設けられ、両者が備えるノズルの数は同数である。インクヘッド50の第3部分ノズル列52cは、副走査方向Xに関して、インクヘッド40の第3部分ノズル列42cと同じ位置に設けられ、両者が備えるノズルの数は同数である。
【0050】
他のプロセスカラーインクを吐出するインクヘッド60、70、80も、インクヘッド50と同じ構成を備えている。即ち、インクヘッド60は、第1部分ノズル列62a、第2部分ノズル列62b、第3部分ノズル列62c、および不使用ノズル列62nからなるノズル列62を備えている。インクヘッド70は、第1部分ノズル列72a、第2部分ノズル列72b、第3部分ノズル列72c、および不使用ノズル列72nからなるノズル列72を備えている。インクヘッド80は、第1部分ノズル列82a、第2部分ノズル列82b、第3部分ノズル列82c、および不使用ノズル列82nからなるノズル列82を備えている。インクヘッド40〜80の第1部分ノズル列同士、第2部分ノズル列同士、および第3部分ノズル列同士は、副走査方向Xに関して同じ位置に設けられ、すべての部分ノズル列は同数のノズルを有している。
【0051】
図示は省略するが、本実施形態に係る印刷モード設定部102は、特色インク層をプロセスカラーインク層の下に印刷する多層印刷モード(以下、「第1多層印刷モード」と呼ぶ。)と、特色インク層をプロセスカラーインク層の上に印刷する多層印刷モード(以下、「第2多層印刷モード」と呼ぶ。)を選択可能に構成されている。言い換えれば、第1多層印刷モードにおいては、最も下に形成される2層の印刷層が特色インク層に設定される。第2多層印刷モードにおいては、最も上に形成される2層の印刷層が特色インク層に設定される。本実施形態に係るプリンタ10においても、多層印刷モードの印刷層の層数は「3」である。また、3層の印刷層のうち、特色インク層は2層であり、プロセスカラーインク層は1層である。従って、第1多層印刷モードにおいては、特色インク層は第1印刷層および第2印刷層に形成され、プロセカラーインク層は第3印刷層に形成される。第2多層印刷モードにおいては、特色インク層は第2印刷層および第3印刷層に形成され、プロセカラーインク層は第1印刷層に形成される。
【0053】
図7A、
図7B、
図7Cに示す第2多層印刷モードでは、第1印刷層L1にプロセスカラーインク層が形成される。第1印刷率P1は、100%である。つまり、第1印刷層L1に印刷されるのは、プロセスカラーインクによる画像そのままである。第2印刷層L2には、第2印刷率P2=75%でホワイトインクが吐出される。また、第3印刷層L3には、第3印刷率P3=50%でホワイトインクが吐出される。
【0054】
図7Aでは、記録媒体5上の領域A1に対して第1印刷層L1の印刷が行われている。第1印刷層L1は、プロセスカラーインクのインクドットDpで構成されている。上記プロセスカラーインクのインクドットDpは、インクヘッド50〜80の第1部分ノズル列52a、62a、72a、82aのノズルから吐出されるプロセスカラーインクからなっている。上記したように、第1印刷率P1は100%である。
【0055】
図7Bには、
図7Aに示された時点の次のパスにおける記録媒体5上が示されている。
図7Aに示される時点と
図7Bに示される時点との間において、印刷制御部103は、フィードモータ33を制御して、記録媒体5を1回前方Fに送っている。
図7Bでは、領域A1に対して第2印刷層L2の印刷が行われるとともに、領域A1の上流側の領域A2に対して第1印刷層L1の印刷が行われている。領域A2に対して実行されている第1印刷層L1の印刷は、
図7Aにおいて領域A1に対して実行された第1印刷層L1の印刷と同様である。領域A1に対して実行されている第2印刷層L2の印刷は、特色インク層の印刷である。より詳しくは、第2印刷率P2=75%で実施される特色インク層の印刷である。第2印刷層L2を構成する特色インクのインクドットDs2は、インクヘッド40の第2部分ノズル列42bのノズル41から吐出されるホワイトインクからなっている。第2印刷層L2の印刷により、領域A1には、プロセスカラーインクによる画像層と、ホワイトインクによる下地層(印刷率は75%)とが形成されている。
【0056】
図7Cには、
図7Bに示された時点のさらに次のパスにおける記録媒体5上が示されている。
図7Bに示される時点と
図7Cに示される時点との間で、印刷制御部103は、フィードモータ33を制御して、記録媒体5を1回前方Fに送っている。
図7Cでは、領域A1に対して第3印刷層L3の印刷が行われるとともに、領域A2に対して第2印刷層L2の印刷が行われ、さらに領域A2の上流側の領域A3に対して第1印刷層L1の印刷が行われている。領域A3に対して実行されている第1印刷層L1の印刷は、
図7Aにおいて領域A1に対して実行された第1印刷層L1の印刷と同様である。領域A2に対して実行されている第2印刷層L2の印刷は、
図7Bにおいて領域A1に対して実行された第2印刷層L2の印刷と同様である。領域A1に対して実行されている第3印刷層L3の印刷は、特色インク層の印刷である。より詳しくは、第3印刷率P3=50%で実施される特色インク層の印刷である。第3印刷層L3を構成する特色インクのインクドットDs3は、インクヘッド40の第3部分ノズル列42cのノズル41から吐出されるホワイトインクからなっている。第3印刷層L3の印刷により、領域A1には、プロセスカラーインクによる画像層と、ホワイトインクによる下地層(積算の印刷率は125%)とが形成される。
【0057】
第1多層印刷モードによる多層印刷は、上記した第2多層印刷モードによる多層印刷に類似したプロセスで実施される。ただし、第1多層印刷モードと第2多層印刷モードとでは、使用されるノズルが異なっている。
図8は、第1多層印刷モードによる印刷プロセスを示す模式図であって、
図7Cに対応する時点を示す図である。即ち、領域A1に対して第3印刷層L3が印刷されるとともに、領域A2に対して第2印刷層L2が印刷され、領域A3に対して第1印刷層L1が印刷されている時点を示す図である。第1多層印刷モードは、第1印刷層L1および第2印刷層L2が特色インク層であり、第3印刷層L3がプロセスカラーインク層である印刷モードである。第1多層印刷モードにおいては、
図8に示されるように、インクヘッド40の第1部分ノズル列42aのノズル41からホワイトインクが吐出されている。上記ホワイトインクは、第1印刷層L1を形成するインクである。同様に、インクヘッド40の第2部分ノズル列42bのノズル41からはホワイトインクが吐出されている。上記ホワイトインクは、第2印刷層L2を形成するインクである。インクヘッド50〜80の第3部分ノズル列52c、62c、72c、82cのノズルからはプロセスカラーインクが吐出されている。上記プロセスカラーインクは、第3印刷層L3を形成するインクである。
【0058】
上記のように、本実施形態に係るプリンタ10によれば、第1多層印刷モード、第2多層印刷モードのいずれの印刷モードによっても連続的に多層印刷を行うことができる。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態は、特色インク層にプロセスカラーインクのインクドットを混入させることができるように構成された実施形態である。具体的には、第1実施形態および第2実施形態において特色インクのインクドット全体からインクドットを抽出したのと同様の手法で、プロセスカラーインクのインクドット全体から一部または全部のインクドットを抽出し、上記抽出された一部または全部のインクドットを特色インク層の中に混入させることを可能に構成された実施形態である。第3実施形態は、上記した仕様に関わる部材を除き、第2実施形態と共通の実施形態である。ただし、上記した仕様は、第1実施形態、あるいはその他の可能な実施形態と組み合わせることも可能である。
【0060】
図9は、本実施形態に係る制御装置100のブロック図である。
図9に示されるように、本実施形態に係る印刷率設定部104は、下地印刷率設定部104aと画像印刷率設定部104bとを備えている。
【0061】
下地印刷率設定部104aは、第1実施形態および第2実施形態における印刷率設定部に相当する部位である。下地印刷率設定部104aは、特色インク層に係る特色インクの印刷率を印刷層ごとに設定する。画像印刷率設定部104bは、特色インク層に係るプロセスカラーインクの印刷率、および、プロセスカラーインク層に係るプロセスカラーインクの印刷率を印刷層ごとに設定する。
【0062】
図10は、本実施形態に係る操作画面の一例を示す図である。
図10に示されるように、本実施形態に係る操作画面は、下地印刷率入力ボックスBsと画像印刷率入力ボックスBpとを備えている。下地印刷率入力ボックスBsは、下地印刷率設定部104aが操作画面上に表示するインターフェイスである。画像印刷率入力ボックスBpは、画像印刷率設定部104bが操作画面上に表示するインターフェイスである。下地印刷率入力ボックスBsは、さらに第1下地印刷率入力ボックスBs1と、第2下地印刷率入力ボックスBs2と、第3下地印刷率入力ボックスBs3とを備えている。画像印刷率入力ボックスBpは、さらに第1画像印刷率入力ボックスBp1と、第2画像印刷率入力ボックスBp2と、第3画像印刷率入力ボックスBp3とを備えている。
【0063】
下地印刷率入力ボックスBsの第1下地印刷率入力ボックスBs1、および画像印刷率入力ボックスBpの第1画像印刷率入力ボックスBp1は、第1印刷層の印刷率が設定されるように構成されている。第1下地印刷率入力ボックスBs1では、第1印刷層に印刷される特色インクの印刷率(以下、適宜「第1下地印刷率」と呼ぶ。)が設定される。第1画像印刷率入力ボックスBp1では、第1印刷層に印刷されるプロセスカラーインクの印刷率(以下、適宜「第1画像印刷率」と呼ぶ。)が設定される。同様に、第2下地印刷率入力ボックスBs2では、第2印刷層に印刷される特色インクの印刷率(以下、適宜「第2下地印刷率」と呼ぶ。)が設定され、第2画像印刷率入力ボックスBp2では、第2印刷層に印刷されるプロセスカラーインクの印刷率(以下、適宜「第2画像印刷率」と呼ぶ。)が設定される。第3下地印刷率入力ボックスBs3では、第3印刷層に印刷される特色インクの印刷率(以下、適宜「第3下地印刷率」と呼ぶ。)が設定され、第3画像印刷率入力ボックスBp3では、第3印刷層に印刷されるプロセスカラーインクの印刷率(以下、適宜「第3画像印刷率」と呼ぶ。)が設定される。設定された各印刷率に基づいてインクドットを抽出する方法は、第1実施形態および第2実施形態と同様である。
【0064】
上記各印刷率入力ボックスのうちのいずれに印刷率を入力できるかは、印刷モードに基づいて決定される。
図10では、印刷モードとして、第1多層印刷モードが選択されている。即ち、第1印刷層には特色インク層が、第2印刷層には特色インク層が、第3印刷層にはプロセスカラーインク層が形成される。上記の場合には、第1下地印刷率入力ボックスBs1および第2下地印刷率入力ボックスBs2と、第1画像印刷率入力ボックスBp1、第2画像印刷率入力ボックスBp2、および第3画像印刷率入力ボックスBp3とに印刷率の入力が可能である。第3印刷層には特色インクが吐出されないので、第3下地印刷率入力ボックスBs3は無効である。
図10では、第1下地印刷率として75%が、第2下地印刷率として50%が設定されている。また、第1画像印刷率として20%が、第2画像印刷率として20%が、第3画像印刷率として100%が設定されている。なお、もしも印刷モードとして第2多層印刷モードが選択されていれば、入力できない印刷率入力ボックスは、第1下地印刷率入力ボックスBs1である。
【0065】
図11は、
図10に示された場合における第1〜第3印刷層を示す模式図である。
図11は、印刷済みの記録媒体5の縦断面を模している。
図11に示されるように、第1印刷層L1は、特色インクのインクドットDs1とプロセスカラーインクのインクドットDp1とで構成されている。特色インクのインクドットDs1は、第1下地印刷率Ps1=75%に基づいて抽出されたインクドットである。プロセスカラーインクのインクドットDp1は、第1画像印刷率Pp1=20%に基づいて抽出されたインクドットである。
【0066】
上記のように、第1印刷層L1には、下地色と画像とがともに薄く印刷されている。第2印刷層L2の構成も、第1印刷層L1の構成と類似である。
図11に示されるように、第2印刷層L2は、特色インクのインクドットDs2とプロセスカラーインクのインクドットDp2とで構成されている。特色インクのインクドットDs2は、第2下地印刷率Ps2=50%に基づいて抽出されたインクドットである。プロセスカラーインクのインクドットDp2は、第2画像印刷率Pp2=20%に基づいて抽出されたインクドットである。
【0067】
第3印刷層L3は、プロセスカラーインクのインクドットDp3で構成されている。インクドットDp3は、第3画像印刷率Pp3=100%に基づくものである。即ち、インクドットDp3は、プロセスカラーインクのインクドット全体に等しい。
【0068】
図11に示されている多層印刷においては、特色インクは積算で125%吐出されている。また、プロセスカラーインクは積算で140%吐出されるとともに、特色インク層に一部混入されている。このようにプロセスカラーインクのインクドットを特色インク層に混入することで、プロセスカラーインクの発色性に対する特色インクの影響を軽減することができる。
図11の場合で言えば、ホワイトインクの影響で画像が不鮮明に見えるのを防ぎ、画像の色域を広げることができる。
【0069】
なお、
図11の例では、第3画像印刷率Pp3は100%であったが、例えば、100%未満であってもよい。プロセスカラーインク層の印刷率は、100%に限定されない。ただし、積算の印刷率は100%以上であることが好ましい。
【0070】
(第4実施形態)
第4実施形態は、操作画面を介して、印刷層の層数および構成を指定できる実施形態である。第4実施形態に係るプリンタ10においては、作業者は印刷層の層数を指定するとともに、各印刷層が特色インク層であるかプロセスカラーインク層であるかを設定する。さらに各印刷層における特色インクおよびプロセスカラーインクの印刷率を設定する。第4実施形態では、最大5層の印刷層を設定可能な実施形態について説明する。ただし、上記最大5層というのは単なる例示であって、設定可能な印刷層の数は5層に限られない。
【0071】
図12は、本実施形態に係る操作画面の一例を示す模式図である。
図12に示されるように、本実施形態に係る操作画面は、印刷率設定テーブルTbを備えている。印刷率設定テーブルTbは、印刷層ごとに特色インクおよびプロセスカラーインクの印刷率が入力されるテーブルである。印刷率設定テーブルTbは、第1印刷層〜第5印刷層の5層の印刷層×特色インクおよびプロセスカラーインクの2種類のインクに対応する10個の入力ボックスBxを有している。10個の入力ボックスBxには、それぞれ印刷率が入力される。
図12に示す例では、第1印刷層の印刷率に関する入力ボックスBxは、印刷率設定テーブルTbの一番下の行に並んでいる。第1印刷層の印刷率に関する入力ボックスBxの上の行には、第2印刷層の印刷率に関する入力ボックスBxが並んでいる。同様に、印刷率設定テーブルTbの以下の行には、第3印刷層の印刷率、第4印刷層の印刷率、第5印刷層の印刷率に関する入力ボックスBxが並んでいる。
【0072】
印刷率設定テーブルTbの左端の列には、下地印刷率に関する入力ボックスBxが並んでいる。下地印刷率に関する入力ボックスBxの右隣りの列には、画像印刷率に関する入力ボックスBxが並んでいる。
【0073】
作業者が印刷率設定テーブルTbに印刷率を入力する際には、印刷率設定テーブルTbをマトリクスとして読みながら入力を行う。例えば、印刷率設定テーブルTbの上から3番目、左から2番目の入力ボックスBxは、第3印刷層の画像印刷率、即ち、第3画像印刷率が入力される。
【0074】
図12の印刷率設定テーブルTbの10個の入力ボックスBxのうち、いくつかの入力ボックスBxには0%が入力されている。そのうち第5印刷層の印刷率に関する入力ボックスBxには、第5下地印刷率Ps5、第5画像印刷率Pp5ともに0%が入力されている。これは、第5印刷層にはいずれのインクも吐出されないことを意味している。つまり、
図12の印刷率設定テーブルTbに設定された印刷は、4層重ね印刷である。
【0075】
図12の印刷率設定テーブルでは、第3下地印刷率Ps3および第4下地印刷率Ps4に0%が入力されている。つまり、第3印刷層および第4印刷層には、プロセスカラーインクのインクドットだけが形成される。よって、第3印刷層および第4印刷層は、プロセスカラーインク層である。一方、第1下地印刷率Ps1および第2下地印刷率Ps2には0%でない印刷率が入力されている。従って、第1印刷層および第2印刷層は、特色インク層である。そこで、
図12の印刷率設定テーブルTbに設定された印刷モードは、4層重ねの多層印刷モードであり、その中でも第1多層印刷モードであり、さらにその中でも第1印刷層および第2印刷層が特色インク層であり第3印刷層および第4印刷層がプロセスカラーインク層である多層印刷モードである。なお、第1印刷層、第2印刷層には、ともにプロセスカラーインクが混入されるように設定されている。このように、本実施形態に係る印刷率設定部104では、各印刷層の各インクに対する印刷率が個別に設定できるとともに、設定された印刷率から印刷モードが自動的に判断される。本実施形態では、印刷モード設定部102と印刷率設定部104とは、一体的に機能している。
【0076】
図示は省略するが、印刷率が
図12に示されたように設定されたとしたとき、インクヘッド40〜80は、それぞれ4つの部分ノズル列に分割される。そして、インクヘッド40は、第1部分ノズル列および第2部分ノズル列のノズル41から、それぞれ75%、50%の印刷率でホワイトインクを吐出する。インクヘッド50〜80は、第1部分ノズル列のノズルから20%、第2部分ノズル列のノズルから20%、第3部分ノズル列のノズルから50%、第4部分ノズル列のノズルから50%の印刷率でプロセスカラーインクを吐出する。連続印刷のプロセスは、これまでの実施形態において説明されたプロセスと同様である。
【0077】
上記のように、本実施形態に係るプリンタ10によれば、印刷層の層数が指定できるとともに、各印刷層が特色インク層であるかプロセスカラーインク層であるかを設定でき、さらに各印刷層における特色インクおよびプロセスカラーインクの印刷率を設定できる。つまり、それだけ画質調整の自由度が向上している。例えば、
図12の印刷条件では、特色インク層の印刷率を100%以上に設定してホワイトインクの遮光性を高めるとともに、プロセスカラーインクによる画像も重ね印刷して画像の鮮明さを向上させている。本実施形態に係るプリンタ10によれば、印刷画質に関わるパラメータを緻密に調整可能である。
【0078】
なお、第4実施形態では、印刷率設定テーブルTbに入力された印刷率から、いずれの印刷層が特色インク層であり、いずれの印刷層がプロセスカラーインク層であるかが判断されたが、直接入力されてもよい。例えば、制御装置100は、
図13に示すようなインターフェイスを備えた印刷層入力部105を備えていてもよい。
図13に示す印刷層入力部105では、印刷層ごとに「不使用」、「特色インク層」、または「プロセスカラーインク層」のいずれかを選択する。
図13では、上記選択は、チェックボックスにチェックを入れることによって行われる。上記のような操作画面によっても、第4実施形態と同等の仕様が実現できる。
【0079】
また、第4実施形態では、4色のプロセスカラーインクは一体的に扱われ、かつ、特色インクとは区別されていた。しかしながら、例えば、印刷率設定テーブルは、
図14に示されるような形態であってもよい(
図14の印刷率設定テーブルは、印刷率設定テーブルTb2とする。)。
図14の印刷率設定テーブルTb2では、列が「下地印刷率」「画像印刷率」(
図12参照)ではなく、インクヘッドによって区分されている。上記のような印刷率設定テーブルTb2の構成によれば、どのインクヘッドにどのインクを吐出させるかを自在に変更でき、また、必要であれば、プロセスカラーインクの中で印刷率を変えることもできる。プロセスカラーインクの中で印刷率を変えれば、出来上がりの画像の色バランスが変化する。そこで、上記のような仕様は、例えば、画像の色バランスの微調整などに有効である。
【0080】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0081】
例えば、上記した実施形態では、ノズル列は副走査方向Xに分割された複数の部分ノズル列に分割され、分割された複数の部分ノズル列のノズルからインクが吐出されていた。しかし、インクの吐出形態は、上記に限定されない。例えば、各ノズル列は部分ノズル列に分割されず、インクの吐出だけが複数回に分割されてもよい。
【0082】
上記した実施形態では、印刷方式はシングルパス方式で説明されたが、マルチパス方式であってもよい。例えば、4パスで1つの画像を印刷するマルチパス印刷の場合には、4パスで1回の走査とみなしてよい。本発明を上記マルチパス印刷に適用する場合、4パスで1層の印刷層が完成する。
【0083】
上記した実施形態では、多層印刷モード中の印刷モードは2つであったが、2つに限定されない。例えば、プロセスカラーインク層が2層以上であり、特色インク層が1層である多層印刷モードが設定されてもよい。上記印刷モードはさらに細分すれば、例えば以下のような印刷モードである。
【0084】
その1つの印刷モードは、第1印刷層に特色インク層を形成させるとともに、第2印刷層、第3印刷層にプロセスカラーインク層を形成させる印刷モードである。上記印刷モードによれば、プロセスカラーインクによる画像を2層重ねて印刷することで画像がより鮮明になり、特色インク層の影響を少なくすることができる。なお、印刷層の数は3層に限定されず、また特色インク層がプロセスカラーインク層よりも上層に形成される印刷モードも実施可能である。
【0085】
また、別の1つの印刷モードは、特色インク層の上層および下層にプロセスカラーインク層を形成する印刷モードである。つまり、上記印刷モードでは、2層のプロセスカラーインク層によって特色インク層を上下から挟み込む。そのように印刷することによって、記録媒体5のどちらの面からも視認可能な画像を印刷することができ、また、印刷された画像もより鮮明になる。この印刷モードにおいても、印刷層は3層に限定されない。
【0086】
あるいは、特色インク層とプロセスカラーインク層とが交互に積層される印刷モードが設定できてもよい。そのような印刷モードによれば、特色インクの遮光性と画像の鮮明さをともに確保しつつ、印刷の仕上がりをより自然なものにできる。本印刷モードでは、例えば、特色インク層−プロセスカラーインク層−プロセスカラーインク層−特色インク層−プロセスカラーインク層というように一部同じ種類の層が連続する重ね方も排除されない。
【0087】
上記した実施形態では、記録媒体5上のインクを乾燥させる乾燥装置は、プラテン12の下に設けられたヒータ35であったが、乾燥装置はそれに限定されない。乾燥装置は、例えば、赤外線照射装置やハロゲンヒータなどの遠隔加熱方式であってもよい。また、ヒータであってもプラテン12を加熱する方式に限られない。さらに、乾燥装置は、プレヒータやアフターヒータを備えていてもよい。
【0088】
上記した実施形態では、インクを吐出させる方式は、いわゆるピエゾ駆動式であった。しかしながら、本発明に係るプリンタのインク吐出方式は、例えば、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、サーマル方式などの各種のオンデマンド方式であってもよい。インク吐出方式は、限定されない。
【0089】
上記した実施形態では、複数のインクは、それぞれ別のインクヘッドから吐出されていたが、それに限られない。1つのインクヘッドは複数のノズル列を備え、1つのインクヘッドから複数のインクが吐出されてもよい。本発明における「第1インクヘッド」および「第2インクヘッド」の概念は、複数のノズル列を備え、複数の色のインクを吐出する1つのインクヘッドも含むものである。
【0090】
上記した実施形態では、キャリッジ25が主走査方向Yに移動し、記録媒体5が副走査方向Xに移動するように構成されていたが、これには限定されない。キャリッジ25と記録媒体5との移動は相対的なものであり、そのどちらが主走査方向Yまたは副走査方向Xに移動してもよい。例えば、記録媒体5は移動不能に配置され、キャリッジ25が主走査方向Yおよび副走査方向Xの両方向に移動可能なように構成されていてもよい。また、キャリッジ25および記録媒体5のいずれもが両方向に移動可能なように構成されていてもよい。
【0091】
さらに、ここに開示される技術は様々なタイプのインクジェットプリンタに適用することができる。上記実施形態で示したロール状の記録媒体5を搬送する、所謂、Roll-to-Rollタイプのプリンタの他、例えばフラットベッドタイプのインクジェットプリンタにも同様に適用することができる。また、プリンタ10は独立したプリンタとして単独で使用されるものに限定されず、他の装置と組み合わせたものであってもよい。例えば、プリンタ10は、他の装置に内蔵されていてもよい。