(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571717
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】オープンシールド機
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20190826BHJP
E21D 9/093 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
E21D9/06 331
E21D9/093 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-122163(P2017-122163)
(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-7190(P2019-7190A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000189903
【氏名又は名称】植村 誠
(73)【特許権者】
【識別番号】501200491
【氏名又は名称】植村 賢治郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(74)【代理人】
【識別番号】100186864
【弁理士】
【氏名又は名称】尾関 眞里子
(72)【発明者】
【氏名】植村 誠
(72)【発明者】
【氏名】植村 賢治郎
(72)【発明者】
【氏名】竹川 廣明
(72)【発明者】
【氏名】日浦 正一
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−092602(JP,A)
【文献】
特開2002−357080(JP,A)
【文献】
特開平01−125496(JP,A)
【文献】
特開平10−153082(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2014−0109009(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
E21D 9/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右側壁板と底板からなる機体を前後方向でフロント部とテール部に分割し、フロント部の後端にテール部の前端を嵌入させ、フロント部に後方へ向けて中折ジャッキを設けてフロント部とテール部が相互の嵌合部で屈曲可能とした中折れ部を形成したオープンシールド機において、テール部の中折れ部外周に沿ってテール部長手方向に移動する掻き取り爪をその先端を後方に向けて前記フロント部後端に突設したことを特徴とするオープンシールド機。
【請求項2】
掻き取り爪は間隔を存して複数併設する請求項1記載のオープンシールド機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンシールド工法に使用するオープンシールド機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のごとくオープンシールド工法は、開削工法(オープン工法)とシールド工法の長所を生かした合理性に富む工法であり、このオープンシールド工法では、シールド機を前方の機体の後端に後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能としてカーブ施工を可能としたり、方向修正を行えるようにしたものがある。
【0003】
その一例を説明すると、オープンシールド機1は、
図5に示すように基本的には左右の側壁板1a,1bとこれら側壁板1a,1bと同程度の長さでその間を連結する底板1cとからなる前面、後面及び上面を開口したシールド機である。
【0004】
該オープンシールド機1は
図6に示すように機体を前後方向で複数に分割し、フロント部2としての前方の機体の後端にテール部3としての後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能とした。
【0005】
フロント部2は主として掘削を行うもので、前端と上面を開放面としてあり、機体内で後部に後方へ向けて中折ジャッキ4を左右によせて、また上下複数段に配設している。
【0006】
これに対してテール部3はコンクリート函体8の設置を行うもので、機体内で前部に後方へ向けてシールドジャッキ5を左右によせて、また上下複数段に配設したジャッキ部17と、その後方でスペースを確保した函体吊下し部18を構成している。
【0007】
図中6はフロント部2の前端に設けた可動分割刃口、7はテール部3の後端に設けた側方土留板、9はストラット、10はプレスバー(押角)である。
【0008】
このようなオープンシールド機1を使用するオープンシールド工法は、
図7〜
図10に示すように、発進坑と到達坑との間で施工される。発進坑11内で前記オープンシールド機を組立て、発進坑11の前の地盤を地上に設置したシャベル系の掘削機12で掘削し、該オープンシールド機1のシールドジャッキ5を伸長して発進坑11内の反力壁に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体8を上方から吊り降し、オープンシールド機1のテール部3内で縮めたシールドジャッキ5の後方にストラット9およびプレスバー10とともにセットする。
【0009】
また、発進坑11はシートパイル等の土留壁で構成し、オープンシールド機1を発進させるにはこの土留壁を一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入等で発進坑11の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
【0010】
次いで、同様に掘削機12でフロント部2の前面又は上面から土砂を掘削し、かつ排土してオープンシールド機1を前進させ、前記第1番目のコンクリート函体8の前に第2番目のコンクリート函体8をテール部3内に吊り降す。
【0011】
以下、同様の掘進及びコンクリート函体8のセット工程を繰返して、順次コンクリート函体8を縦列に地中に埋設し、後方のコンクリート函体8上にダンプ14で埋戻しを施し、オープンシールド機1が到達坑13まで達したならばこれを分解・撤去して工事を完了する。図中15はグラウト機である。
【0012】
ところで、オープンシールド機1の掘進はシールドジャッキ5を伸長だけでなく、このシールドジャッキ5を固定して中折ジャッキ4の伸長でテール部3に対してフロント部2を進めることでも行なわれ、シールドジャッキ5と中折ジャッキ4との2段階で押し進める。
【0013】
その際、中折ジャッキ4のうち、左右いずれかを多く伸長させればフロント部2はその反対側に向きを変え、その方向に曲がる。また、上下いずれかを多く伸長させればフロント部2はその反対側に向きを変え、上向きまたは下向きに曲がる。このようにしたカーブ施工または方向修正が可能である。
【0014】
しかし、前記従来のシールド機では、フロント部の後端にテール部の前端が隙間を存して嵌合するすなわち遊嵌するものであり、隙間から地下水や土砂が入り込み、その結果として屈曲のための余裕空間を無くしたりするおそれがあった。
【0015】
下記特許文献は簡単な構成をシールド機に付加するだけで、地下水や土砂等の浸入を確実に防止できるオープンシールド機として提案されたものである。
【特許文献1】特許第5231508号公報
【0016】
前記特許文献1は、機体を前後方向でフロント部とテール部に分割し、フロント部の後端にテール部の前端が嵌入して、相互の嵌合部で屈曲可能としたオープンシールド機において、フロント部とテール部3が接合する中折れ部にワイヤーブラシを配設したものである。
【0017】
特許文献1によれば、フロント部の後端にテール部3の前端が隙間を存して嵌合するすなわち遊嵌する隙間には、ワイヤーブラシが配設してあり、これが地下水や土砂が入り込みを阻止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
前記特許文献1は、ワイヤーブラシで地下水や土砂が入り込むことを防止するものである。
【0019】
一方、グラウト機15による裏込め注入は、一次注入工はテール部3内に設置したコンクリート函体8の内部よりテール部3の内面とコンクリート函体8の外面との空隙に可塑状の裏込注入材を充填する作業である。
【0020】
また、二次注入工はオープンシールド機1の推進と同時にコンクリート函体8の内部よりテールボイド(テール部底板及び側板の厚み分)に可塑状の裏込注入材を充填する作業で、二次注入工は、一次注入とは異なり地山と一次注入の空隙を充填するものであり、特に、二次注入工ではオープンシールド機1の中折れ部に裏込注入材が付着し、これが硬化することで、フロント部とテール部の相互の嵌合部での動き、例えば、中折ジャッキが縮小して中折れ部が所定位置まで収縮するのを阻害するおそれが生じる。
【0021】
なお、前記特許文献1のようなワイヤーブラシを設けるものでは裏込注入材がワイヤーブラシに付着してこれが硬化し、同様な不都合が生じる。
【0022】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、機体を前後方向で複数に分割し、前方の機体の後端に後方の機体の前端が嵌入して、隙間を存して嵌合する、すなわち遊嵌させて相互の嵌合部で屈曲可能とするのに、裏込注入材が付着してもこれを確実に削り剥がすことができるオープンシールド機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、左右側壁板と底板からなる機体を前後方向でフロント部とテール部に分割し、フロント部の後端にテール部の前端を嵌入させ、フロント部に後方へ向けて中折ジャッキを設けてフロント部とテール部が相互の嵌合部で屈曲可能とした中折れ部を形成したオープンシールド機において、テール部の中折れ部外周に沿って
テール部長手方向に移動する掻き取り爪をその先端を後方に向けて前記フロント部後端に突設したことを要旨とするものである。
【0024】
請求項1記載の本発明によれば、中折ジャッキの伸縮でフロント部とテール部が相互の嵌合割合が変化する場合に、フロント部後端に突設した掻き取り爪で中折れ部に付着した裏込注入材を剥がすことができ、その結果、中折れ部が所定位置まで収縮することができる。なお、中折れ部に付着した裏込注入材の剥がしは、裏込注入材を完全に除去しなくても、その付着厚さを減じればよく、薄くすれば中折れ部が所定位置まで収縮することができる。
【0025】
請求項2記載の本発明は、掻き取り爪は間隔を存して複数併設することを要旨とするものである。
【0026】
請求項2記載の本発明によれば、掻き取り爪は間隔を存して複数併設することで、側部や底部の幅方向を網羅するように掻き取り爪を配置でき、広範囲で付着した裏込注入材の剥がしが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように本発明のオープンシールド機は、機体を前後方向で複数に分割し、前方の機体の後端に後方の機体の前端が嵌入して、隙間を存して嵌合する、すなわち遊嵌させて相互の嵌合部で屈曲可能とするのに、裏込注入材が付着してもこれを確実に削り剥がすことができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明のオープンシールド機の1実施形態を示す要部の部分平面図、
図2は全体の縦断的説明図である。
【0029】
オープンシールド機1の全体は前記
図6に示すように機体を前後方向で複数に分割し、テール部3の前端は縮径してフロント部2の後端に入り込むもので、これによりフロント部2とテール部3との間には隙間が確保され、これが中折れ部16となる。
【0030】
フロント部2は可動分割刃口6を有する前端と上面を開放面としてあり、機体内で後方へ向けて中折ジャッキ4を左右によせて、また上下複数段に配設した。
【0031】
一方、テール部3は機体内で前部に後方へ向けてシールドジャッキ5を左右によせて、また上下複数段に配設したジャッキ部17と、その後方でスペースを確保した函体吊下し部18を構成している。
【0032】
本発明はフロント部2の後端にホルダー20bに先端を鋭利とする刃部20aを保持させた掻き取り爪20を突設した。
【0033】
掻き取り爪20はその先端を後方に向けて設けられ、フロント部2の動きに従うものであり、テール部3の中折れ部外周に沿って
テール部長手方向に移動する。
【0034】
図2、
図4に示すように掻き取り爪20はフロント部2の左右側壁板と底板に間隔を存して複数併設するもので、櫛の歯状として構成される。
【0035】
このようにして、
図3に示すように、オープンシールド機1は機体を前後方向で複数に分割し、前方の機体の後端に後方の機体の前端が嵌入して、隙間を存して嵌合する、すなわち遊嵌させて相互の嵌合部で屈曲可能とするのに、掻き取り爪20があり、中折れ部に付着した裏込注入材21を剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明のオープンシールド機の1実施形態を示す要部の部分平面図である。
【
図2】本発明のオープンシールド機の掻き取り爪の配置を示す縦断的説明図である。
【
図3】本発明のオープンシールド機の掻き取り作用を示す要部の部分平面図である。
【
図4】本発明のオープンシールド機の掻き取り爪の配置を示す側面図である。
【
図5】オープンシールド機の概要を示す縦断正面図である。
【
図6】オープンシールド機の概要を示す縦断側面図である。
【
図7】オープンシールド工法の第1工程を示す側面図である。
【
図8】オープンシールド工法の第2工程を示す側面図である。
【
図9】オープンシールド工法の第3工程を示す側面図である。
【
図10】オープンシールド工法の第4工程を示す側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…オープンシールド機
1a,1b…側壁板 1c…底板
2…フロント部 3…テール部
4…中折ジャッキ 5…シールドジャッキ
6…可動分割刃口 7…側方土留板
8…コンクリート函体 9…ストラット
10…プレスバー 11…発進坑
12…掘削機 13…到達坑
14…ダンプ 15…グラウト機
16…中折れ部 17…ジャッキ部
18…函体吊下し部 20…掻き取り爪
20a…刃部 20b…ホルダー
21…裏込注入材