(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571719
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】経皮的超音波腎神経除去による高血圧症を治療するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
A61B17/00 700
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-125690(P2017-125690)
(22)【出願日】2017年6月27日
(62)【分割の表示】特願2014-255602(P2014-255602)の分割
【原出願日】2010年10月29日
(65)【公開番号】特開2017-196461(P2017-196461A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年7月11日
(31)【優先権主張番号】61/292,618
(32)【優先日】2010年1月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/256,429
(32)【優先日】2009年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512006734
【氏名又は名称】リコール メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ReCor Medical, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】ウォーンキング, レインハード, ジェイ.
【審査官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2001−509415(JP,A)
【文献】
特表2008−515544(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/146834(WO,A2)
【文献】
国際公開第2008/003058(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61N 7/00 ― 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類対象において腎神経伝達を不活性化するための装置であって、
超音波振動子と、
前記超音波振動子に電気的に接続されるアクチュエータと、
前記超音波振動子を包含するように構成された拡張可能なバルーンと、
を備え、
当該超音波振動子は、前記哺乳類対象の腎動脈へ挿入され、非集束超音波エネルギーを、前記腎動脈へ伝達し、
前記アクチュエータは、当該腎動脈の内膜層を損傷させることなく、衝撃容積全体の腎神経伝達を不活性化するために、治療用量の非集束超音波エネルギーを360度の円筒形態で前記超音波振動子に伝達させ、
前記超音波振動子及び前記腎動脈の内面を冷却するために、拡張された前記バルーンを通じる冷却された液体の流れの循環を制御する冷却装置をさらに備える、装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、10〜30ワットの音響出力レベルで前記非集束超音波エネルギーを10〜30秒間前記超音波振動子に伝達させる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記腎動脈壁の温度を65℃未満に維持しながら、前記衝撃容積内の腎神経を含む固形組織の温度が42℃超に達するように、前記超音波振動子を制御する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記超音波振動子は、前記腎動脈の軸に沿った少なくとも2mmの長さに沿って前記腎神経伝達を不活性化するように、前記超音波エネルギーを伝達する、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記超音波振動子は、2〜10mmの長さを有する、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
上部に取り付けられた前記拡張可能なバルーンを備えるカテーテルをさらに備え、前記カテーテルは、前記超音波振動子を前記腎動脈壁に接触せずに保持するように構成及び配置される、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
上部に取り付けられた前記拡張可能なバルーンを備えるカテーテルをさらに備え、前記カテーテルは、前記腎動脈の軸と略平行に前記超音波振動子の軸を保持するように構成及び配置されている、請求項1から5のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記超音波振動子はさらに、超音波エネルギーを受信して、前記受信した超音波エネルギーを表す信号を生成し、
前記アクチュエータはさらに、
前記超音波振動子にある測定レベルで超音波エネルギーを伝達させ、反射された測定用超音波エネルギーを表すエコー信号を前記超音波振動子から受信し、
前記受信したエコー信号を解析し、
前記受信したエコー信号に基づいて前記腎動脈のサイズを決定する、請求項1から7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記アクチュエータは、前記腎動脈の決定サイズに応じ、治療効果のある前記非集束超音波エネルギーを伝達するのに用いられる音響出力を変えるよう、前記超音波振動子を制御する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記衝撃容積は、略円筒状であり、前記腎動脈と略同軸である、請求項1から9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記衝撃容積(V)は、以下の式によって決定される、請求項1から10のいずれかに記載の装置。
式:V=πr22h−πr12h(r1は前記振動子の半径、r2は前記衝撃領域の半径、hは前記振動子の長さ)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮特許出願第61/256429号(2009年10月30日出願)及び第61/292618号(2010年1月6日出願)の出願日の恩恵を主張するものであり、その開示の全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
高血圧症の有効な治療法は、多くの理由で重要である。例えば、高血圧症の有効な治療は、2〜3例を挙げると、腎疾患、不整脈、及び鬱血性心不全などのような高血圧症によって発症される若しくは増悪される病状の予防又は制限において有効な臨床的利点を有する。一方、薬剤療法が高血圧症を治療するために用いられ得るが、常に効果的というわけではない。薬剤療法に抵抗性があり、又は薬剤療法からの副作用を経験する人々もいる。
【0003】
高血圧症は、腎動脈を囲む腎神経の伝導の不活性化によって治療され得る。交感腎神経活性は、高血圧症の開始及び持続において重要な役割を果たす。脳が腎神経活性の増加を認知し、低血液量又は血圧の降下を信号で伝える場合、心臓、肝臓、及び腎臓への交感神経活性を増加させることによって脳が補正を行い、これが心拍出量の上昇、インシュリン耐性、及び最も重要なことは、腎臓によるレニン生成の増加をもたらす。レニンは、血管の狭窄を生じるアンギオテンシンの生成を刺激して、結果的に血圧を上昇させ、またアルドステロンの分泌を刺激する。アルドステロンは、腎臓による血液中へのナトリウム及び水の再吸収を増加させ、血液量を増加させて、これによって更に血圧を上昇させる。
【0004】
外科的に腎神経を切断することが、血圧の低下及び水分保持の通常レベルへの低下をもたらし、これによって患者の心臓、肝臓、及び腎臓をその機能を治癒するよう回復させることができることが長年にわたって確立されてきた。腎神経の破損が重大な有害作用を有さないこともまた示されてきた。しかしながら、外科的な腎神経の切断には、望ましくない副作用の危険を伴う大手術が必要とされる。大手術をしなくても同じ結果を生み出すことが望ましい。
【0005】
他の損傷を生じることなくこのタスクを達成することに関連する困難さを説明するために、腎動脈及び腎神経の解剖学的構造がここに記載されている。
図1に示されたものが、腎臓6に接続された腎動脈10を囲む腎神経8の図である。交感腎神経8は、腎臓6から脳に至る求心知覚腎神経及び脳から腎臓6に至る遠心交感腎神経の両方を含む。更に、
図2は、腎動脈の断面を示している。腎動脈壁は、内皮細胞の内側単一層を含む内膜3、動脈壁の中心にある中膜5、及び外側層である外膜4の層を含む。腎動脈10の表面上に及び腎動脈10に隣接して、外膜4内に存在する腎神経8もまた示されている。これら2つの図から分かるように、腎神経8は腎動脈10を囲んでいる。異なる個々人では、腎動脈周辺の異なる位置に腎神経を有する。従って、腎神経は、腎動脈の中心軸Aからの異なる半径方向距離Rにて存在し、また腎動脈の外周C付近の異なる位置に存在し得る。解剖学的標識点を参照することによって腎神経の位置を決めることは実用的ではない。更に、一般的な生体内画像撮影技術を用いて各人の腎神経を位置決めすることは困難であり又は不可能である。
【0006】
腎神経8を位置決めしかつ標的にすることができないことは、腎動脈10を損傷させることなく又は他の副作用を生じることなく交感腎神経活性を切断することを困難にしている。例えば、腎神経へエネルギーを適用する試みは、狭窄症、内膜過形成、及び壊死などのような影響を生じ得る。他の副作用としては、血栓症、血小板凝固、フィブリン血栓及び血管収縮などが挙げられる。更には、腎神経8を位置決めしかつ標的にすることができないことは、許容される治療の処置を達成するために、交感腎神経活性が十分に断絶されたことを確実にすることを困難にしている。
【0007】
特許文献1は、腎動脈内に挿入されるカテーテルに接続された高周波(「RF」)エミッターの使用を提案している。RFエミッターは内膜に対して配置されて、エミッターのすぐ近くにある腎神経の活性を低減させる温度に腎神経を加熱するように、RFエネルギーが放射される。腎動脈を取り囲むすべての腎神経を処置するために、RFエミッター源は、それぞれの腎動脈の内側周辺に複数回にわたって配置されなくてはならない。エミッターがいくつかの腎神経を見逃して、治療が不完全になることもある。更に、腎神経を加熱することを可能にするために、RFエネルギー源は内膜に接触しなければならず、これが単一層の内皮及び内膜層への損傷又は壊死を引き起こすことがあり、そして内膜過形成、腎動脈狭窄症、及び腎動脈解離を引き起こす可能性がある。
【0008】
特許文献1は、腎神経を非活性化するために、高強度集束超音波の使用も提案している。記載された高強度集束された超音波エネルギー源は、腎動脈の軸の周囲360°パターンで超音波エネルギーを放射し、内膜3に接触させる必要がない。しかし、高強度集束超音波は、動脈を囲む薄い焦点リング内に集中したエネルギーを加える。現在の技術では、腎神経を視覚化及び標的化することは困難又は不可能であるため、そして腎神経が腎動脈の中心軸から異なる半径方向の距離にて存在する可能性があるため、この薄いリングを腎神経に合わせることは困難であり又は不可能である。後者の問題は、形状又は厚さで大きな変動を備えた腎動脈を有するような患者では深刻である。更には、薄い焦点リングは、神経及び動脈の長手方向に沿ったそれぞれの腎神経の小断片のみを包含する。神経は再生する傾向があるために、小さい処置区画は、より短期間で神経が再接続することを許す。
【0009】
長年にわたって、超音波は細胞修復を促進し、骨細胞の成長を刺激し、特定の組織への薬剤の供給を増強し、及び体内の組織を撮像するために用いられてきた。更には、高強度集束超音波は、体内の組織及び腫瘍の加熱及び切除のために用いられてきた。放射された超音波エネルギーは特定の位置に集束されて、超音波エネルギーが通り抜けなければならない周囲組織及び介在構造体に影響を及ぼすことなく正確かつ綿密な組織壊死を与えるので、組織の切除は、高密度焦点式超音波によりほぼ独占的に実行されてきた。
【0010】
特許文献2には、組織を切除するために、高密度焦点式超音波ではなく高度に視準を合わせた超音波エネルギーを利用して、心臓への電気信号の伝達を阻止するために、肺静脈内に傷跡の輪を生成する技術が記述されている。
【0011】
特許文献3では、その開示は参照により本明細書に組み込まれるが、僧帽弁逆流の治療に非集束超音波を利用する。特許文献3では、僧帽弁輪に付随するコラーゲンを加熱及び縮小するために非集束超音波エネルギーを利用する。この装置は、正確な位置に超音波振動子を配置して僧帽弁輪を標的にするために、膨張式バルーンを利用する。この装置では、バルーンの一部は加熱された組織に接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7,617,005号明細書
【特許文献2】米国特許第6,117,101号明細書
【特許文献3】米国特許公開第20100179424号(出願番号第12/684067号)明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る第1の装置は、哺乳類対象において腎神経伝達を不活性化するための装置であって、前記哺乳類対象の腎動脈へ挿入されて非集束超音波エネルギーを伝達する超音波振動子と、前記超音波振動子に電気的に接続され、前記腎動脈を包含する少なくとも0.5cm
3の衝撃容積内に、前記衝撃容積全体の腎神経伝達を不活性化するのに十分な治療レベルで印加される非集束超音波エネルギーを伝達するように、前記超音波振動子を制御する、アクチュエータと、を含む。
【0014】
上記装置において、前記アクチュエータは、10〜30ワットの音響出力レベルで前記非集束超音波エネルギーを10〜30秒間伝達するように、前記超音波振動子を制御することができる。
【0015】
上記各装置において、前記アクチュエータは、前記腎動脈壁の温度を65℃未満に維持しながら、前記衝撃容積全体の温度が42℃超に達するように、前記超音波振動子を制御することができる。
【0016】
上記装置において、前記超音波振動子は、前記腎動脈の軸に沿った少なくとも2mmの長さに沿って前記腎神経伝達を不活性化するように、前記超音波エネルギーを伝達することができる。
【0017】
上記いずれかの装置において、前記超音波振動子は、2〜10mmの長さを有するものとすることができる。
【0018】
上記いずれかの装置において、遠位端部及び近位端部を有するカテーテルを更に含み、前記超音波振動子は、前記遠位端部に隣接して前記カテーテルに取り付けられ、前記カテーテルは、前記超音波振動子を前記腎動脈壁に接触せずに保持するように構成及び配置されるものとすることができる。
【0019】
上記いずれかの装置において、遠位端部及び近位端部を有するカテーテルを更に含み、前記超音波振動子は、前記遠位端部に隣接して前記カテーテルに取り付けられ、前記超音波振動子は軸を有し、前記カテーテルは、前記腎動脈の軸と略平行に前記超音波振動子の軸を保持するように構成及び配置され、前記超音波振動子は、前記超音波振動子の軸の周囲360度の円筒形態で前記超音波エネルギーを伝達するものとすることができる。
【0020】
上記いずれかの装置において、前記カテーテルは、前記超音波振動子に近接する中心配置要素を含み、前記中心配置要素は、前記腎動脈の略中心に前記超音波振動子を保持するように構成されるものとすることができる。
【0021】
上記いずれかの装置において、前記超音波振動子はさらに、超音波エネルギーを受信して、前記受信した超音波エネルギーを表す信号を生成し、前記アクチュエータはさらに、前記治療レベル未満のレベルで測定用超音波エネルギーを伝達するように前記超音波振動子を制御し、反射された測定用超音波エネルギーを表すエコー信号を前記超音波振動子から受信し、前記受信したエコー信号を解析し、前記受信したエコー信号に基づいて前記腎動脈のサイズを決定するものとすることができる。
【0022】
上記装置において、前記超音波システムは、前記腎動脈の決定サイズに応じ、治療効果のある前記非集束超音波エネルギーを伝達するのに用いられる音響出力を変えるよう、前記超音波振動子を制御するものとすることができる。
【0023】
上記いずれかの装置において、前記衝撃容積は、略円筒状であり、前記腎動脈と略同軸であるものとすることができる。
【0024】
上記いずれかの装置において、前記衝撃容積(V)は、以下の式によって決定される、請求項1から11のいずれかに記載の装置。
式:V=πr
22h−πr
12h(r
1は前記振動子の半径、r
2は前記衝撃領域の半径、hは前記振動子の長さ)
【0025】
本発明に係る第2の装置は、哺乳類対象において腎神経伝達を不活性化するための装置であって、超音波振動子と、前記超音波振動子に電気的に接続されるアクチュエータと、を備え、当該超音波振動子は、前記哺乳類対象の腎動脈へ挿入され、治療用量の非集束超音波エネルギーと、前記腎動脈のピングのための低出力超音波エネルギーとを伝達し、前記ピングによって前記腎動脈壁で反射されるエコー信号を生成するように構成され、前記アクチュエータは、前記腎動脈を包含する少なくとも0.5cm
3の衝撃容積内に、当該腎動脈の内面を損傷させることなく、前記衝撃容積全体の腎神経伝達を不活性化するために、治療用量の非集束超音波エネルギーを伝達するように、前記超音波振動子を制御し、前記ピングのための前記低出力レベルの超音波エネルギーを伝達するように,前記超音波振動子を制御し、前記非集束超音波エネルギーの治療用量を調整するように前記エコー信号を受信するように構成されている。
【0026】
上記第2の装置においては、前記エコー信号に基づいて前記治療用量を決定する解析部をさらに備えているものとすることができる。
【0027】
上記第2の装置において、前記解析部は、前記ピングのための前記振動子の作動と、前記エコー信号の返送と、の間の時間遅延を測定するように構成されているものとすることができる。
【0028】
上記第2の装置において、前記解析部は、前記時間遅延と前記治療用量との関係を示すルックアップテーブルを用いることで、前記治療用量を決定するように構成されているものとすることができる。
【0029】
本発明の一つの態様は、ヒト又はヒト以外の哺乳類対象において腎神経伝達を不活性化するための装置を提供する。本発明のこの態様による装置は、哺乳類対象の腎動脈への挿入に適した超音波振動子を含むことが好ましい。超音波振動子は、非集束超音波エネルギーを伝達するように構成されることが好ましい。本発明のこの態様に従う装置は、振動子に電気的に接続されたアクチュエータをさらに含むことが好ましい。アクチュエータは、腎動脈を包含する少なくとも約0.5cm
3の衝撃容積内に、衝撃容積全体の腎神経伝達を不活性化するのに十分な治療レベルである非集束超音波エネルギーを伝達するように超音波振動子を制御できることが最も好ましい。さらに後述するように、このような治療レベルは、組織切除に要求される以下のレベルである。
【0030】
装置は、遠位端部及び近位端部を有するカテーテルをさらに含むことができ、振動子は、遠位端部に隣接してカテーテルに取り付けられ、カテーテル及び振動子は、超音波振動子が腎動脈内に配置された際に、腎動脈を通って血流が十分に流れることができるように構成及び配置される。カテーテルは、振動子を腎動脈壁に接触せずに保持するように構成及び配置され得る。カテーテルは、遠位端部に隣接して取り付けられたバルーン、ワイヤバスケットなどの膨張要素を有し得る。例えば、振動子は、振動子の軸の周囲360度の円筒型で超音波エネルギーを伝達するように構成されることができ、カテーテルは、腎動脈の軸と略平行に振動子の軸を保持するように構成及び配置されることができる。
【0031】
本発明の他の態様は、哺乳類対象において腎神経伝達を不活性化するための方法を提供する。本発明のこの態様による方法は、対象の腎動脈内に超音波振動子を挿入し、振動子を作動させることにより、腎動脈を包含する少なくとも約0.5cm
3の衝撃容積内に、治療効果のある非集束超音波エネルギーを伝達するステップを含むことが好ましい。超音波エネルギーは、衝撃容積内の全ての腎神経伝達を不活性化するのに十分な治療効果のある非集束超音波エネルギーであることが好ましい。例えば、振動子を作動させるステップでは、衝撃容積内の腎神経を含む固形組織を42℃超に加熱しながら、腎動脈壁の温度を65℃未満に維持し得る。
【0032】
衝撃容積が比較的大きく、そして好ましくは衝撃容積全体の組織が神経伝達を不活性化するのに十分な温度に達するので、本発明のこの態様に従う好ましい方法は、腎神経の実際の位置を測定することや、腎神経に標的を合わせたり焦点を当てたりすることなしに、首尾よく実行されることができる。この治療は、組織の温度を測定せずに実行されることができる。さらに、好ましくはこの治療は、腎動脈の狭窄症、内膜過形成、又は医師の介入が必要な他の損傷を引き起こさずに実行されることができる。好ましい方法及び装置では、不活性化部分に沿って伝達を回復する神経回復の可能性を低減するために、腎神経の比較的長い部分を不活性化することができる。
【0033】
本発明の更なる態様は、前述の方法及び装置に用いられ得るプローブ、並びに前述の方法ステップを実行するための手段を組み込んだ装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】典型的な腎動脈及び関連する構造体の解剖図である。
【
図3】本発明の一つの実施形態に従う装置の構成要素を示す図である。
【
図4】
図3に示す装置の一部を示す部分斜視図である。
【
図5】腎動脈に関係して作動する、
図3及び
図4の装置の一部を示す図である。
【
図6】
図3及び
図4の装置に用いられる構成要素の一部を示す機能ブロック図である。
【
図7】本発明の一つの実施形態に従う方法に含まれるステップを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の一つの実施形態に従う装置(
図3)は、シース12を含む。シース12は、近位端部14、遠位端部16及び近位遠位軸15を有する概して伸長管の形状にできる。身体に挿入する伸長要素に関連して本開示に用いられる用語「遠位」は、身体に最初に挿入される端部、すなわち身体内で前進中の要素の先端を意味し、一方、用語「近位」は、それとは反対端を意味する。シース12は可動シースでもよい。そのために、シースは、その近位端部と遠位端部との間を延伸しかつ配置されたステアリング制御17と接続する1つ以上のプルワイヤ(不図示)などの周知の要素を含むことができ、操作者がステアリング制御を作動することで、軸15を横切る方向にシースの遠位端部16を曲げることができる。
【0036】
装置は、近位端部20、遠位端部22及び近位遠位軸を有するカテーテル18をさらに含み、
図3に示す状況では、近位遠位軸は、シースの近位遠位軸15と同じ位置にある。カテーテルの近位端部20は、トルクを伝達できるように比較的堅いことが好ましい。それ故、カテーテル18の近位端部20を回転させることにより、カテーテル18の遠位端部22は、カテーテル18の近位遠位軸の周りを回転する。
【0037】
カテーテル18の遠位端部22は、それがシース12の外側に出た時に、
図3の破線22'に示すかぎ状になるように形成される。この状態では、遠位端部22'の回転運動により、近位遠位軸の周りを湾曲部が回転する。そのため、カテーテル18の近位端部を回転させることにより、カテーテル18の遠位端部22'は、任意の半径方向に配置され得る。
【0038】
カテーテル18は、遠位端部22に取り付けられたバルーン24を有する。バルーン24は、膨張状態(
図4)において非円形の輪郭を有し、部分82は直径において腎動脈よりも小さく、別の部分80は形状において非円形である。非円形な部分の最大直径D
MAJは、腎動脈の内径と等しいか、又はそれよりもわずかに小さく、最小直径D
MINは、最大直径よりも小さい。
【0039】
超音波振動子30(
図3及び
図5)が、バルーン24内においてカテーテル18の遠位端部22に隣接して取り付けられる。振動子30は、セラミック圧電材料から形成されることが好ましく、チューブ状であり、振動子30の近位遠位軸33の周りを回転する柱面状の外側放射面31を有する。軸31に沿った振動子30の軸の長さは、通常、約2〜10mmであり、6mmであることが好ましい。振動子30の外径は、その直径が約1.5〜3mmであり、2mmであることが好ましい。振動子の物理的構造及びそのカテーテルへの取り付け方法は、例えば、米国特許第7,540,846号及び第6,763,722号に記述されており、その開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。振動子30は、その内面及び外面に導電被覆(不図示)を更に有する。それ故、振動子は、金属支持管84(
図5)に物理的に取り付けられ、そして金属支持管84は、カテーテルに取り付けられることができる。被覆は、アース端子及び信号線32に電気的に接続される。線32は、振動子30から管腔34を通り抜けて延伸する。管腔34は、カテーテル18の
近位端部と遠位端部との間を延伸し、線32は、振動子30から管腔34を通り抜けて、カテーテル18の近位端部14まで延伸する。
【0040】
振動子30は、その内部で生成される超音波エネルギーが主に外側放射面から放射されるようにできている。そのため、振動子は、その内側に向かう超音波エネルギーを反射するようにされた特徴を含むことができ、反射したエネルギーは、外面における超音波振動を強める。例えば、振動子30の内面が、隙間(不図示)によって、金属で形成された支持管の外面と離されて、支持管84及び振動子30は配置される。振動子の内面と支持管の外面との間の隙間の距離は、振動子30の効率的な作動を促進するように、振動子が放射する超音波エネルギーの波長の半分であってもよい。この実施形態では、振動子30が生成する超音波エネルギーは、水分が存在する隙間において反射して、振動子30からの超音波エネルギーの伝播を増強し、超音波エネルギーが、振動子30の外面から外側に確実に向けられる。
【0041】
振動子30はまた、外面31に作用する超音波を、線32を通る電気信号に変換するようにも設計される。別の言い方をすれば、振動子30は、超音波エミッター又は超音波受信部のいずれの機能も果たすことができる。
【0042】
振動子30は、例えば、約1MHz〜数十MHz、通常は約9MHzの周波数で作動するように設計される。振動子30の実際の周波数は、通常、製作公差に応じて多少異なり得る。振動子の最適な作動周波数は、カテーテルに取り付けられたデジタルメモリ、バーコードなどの機械可読な又は人間が解読可能な要素(不図示)によりエンコードされ得る。あるいは、可読要素は、製造番号又は個々のカテーテルを識別する他の情報をエンコードすることにより、最適な作動周波数が、インターネットなどの通信リンクを通じてアクセス可能な中央データベースから検索され得る。
【0043】
本明細書においてアクチュエータとも呼ばれる超音波システム20は、プラグコネクタ88(
図3)を通じてカテーテル18及び振動子30に取り外し可能に接続される。
図6に示すように、超音波システム20は、ユーザインターフェース40、プログラマブルマイクロプロセッサ(不図示)などのプログラマブル制御装置を内蔵する制御盤42、超音波励振源44、及び循環装置48を含むことができる。ユーザインターフェース40は、励振源44と相互作用する制御盤42と相互作用することにより、振動子の最適な作動周波数を、電気信号線32を通じて振動子30に送信する。制御盤42及び超音波源44は、電気信号の振幅及びタイミングを制御し、振動子30が生成する超音波信号の出力レベル及び持続期間を制御するように設計される。励振源44はさらに、振動子30によって生成されて線32に生じる電気信号を検出し、このような信号を制御盤42に伝達するように設計される。
【0044】
循環装置48は、カテーテル18内の管腔(不図示)に接続され、そして管腔はバルーン24に接続される。循環装置は、液体、好ましくは水性液体を、カテーテル18を通じてバルーン24内の振動子30に循環するために配置される。循環装置48は、循環冷却剤35、ポンプ37、冷凍コイル(不図示)などを保持するタンクなどの要素を含むことができ、好ましくは体温未満に制御した温度の液体を、バルーン24の内部空間に供給する。制御盤42は、循環装置48と相互作用し、バルーン24に出入りする液体の流れを制御する。例えば、制御盤42は、ポンプ37の作動速度を制御するために、ポンプに用いられる駆動モータに結合するモータ制御装置を含むことができる。このようなモータ制御装置は、例えば、ポンプ37が蠕動ポンプなどの容積型ポンプである場合に用いられ得る。代替的に又は追加的に、制御回路は、流量に関して回路抵抗を変えるために、流体回路に接続された制御可能弁などの構造(不図示)を含んでもよい。超音波システム20は、2つの圧力センサ38をさらに含み、カテーテル18内の液体の流れを監視し得る。一
方の圧力センサが、カテーテル18の遠位に流れる液体を監視して閉塞があるか否かを判定し、他方が、カテーテル18における液漏を監視する。バルーンが膨張状態にある間は、圧力センサ38は、バルーン内を所望の圧力、好ましくは約3ポンド/平方インチ(20KPa)に維持する。
【0045】
超音波システム20は、カテーテル18における機械可読の要素を読み取り、このような要素からの情報を制御盤46に伝える読取装置46を内蔵する。前述のように、カテーテルにおける機械可読の要素は、個々のカテーテル18における振動子30の作動周波数などの情報を含むことができ、制御盤42はこの情報を用いて、振動子を励起するための適切な周波数を設定できる。あるいは、制御盤は、励振源44を作動させて振動子に低出力レベルのエネルギーを供給し、同時に、例えば8.5Mhz〜9.5Mhzの既定範囲の周波数を超えた励起周波数を走査し、このような励起に対する振動子の反応を監視することによって振動子の作動周波数を測定するように構成されることができる。
【0046】
超音波システム20は、米国仮特許出願第61/256002号(2009年10月29日出願)である発明の名称「METHOD AND APPARATUS FOR PERCUTANEOUS TREATMENT OF MITRAL VALVE REGURGITATION (PMVR)」に開示されているものに類似するものでもよく、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0047】
本発明の実施形態に従う方法を、
図7のフローチャートに示す。患者などのヒト又はヒト以外の哺乳類対象を前処理し(ステップ50)、次に、大腿動脈上の位置などの動脈のアクセス部位を前処理し(ステップ52)、カテーテル18と超音波システム20とを接続し(ステップ54)、大動脈内のアクセス部位を通じてシース12の遠位端部を挿入することにより、腎動脈内に超音波振動子30を挿入する(ステップ56)。シースの遠位端部が大動脈内に位置している間、
図8に概略を示すように、カテーテルの遠位端部がシースから突き出るまで、カテーテル18はシース内を前進する。カテーテル18の遠位端部22があらかじめかぎ状に形成されるため、先端が腎動脈10の分岐を向くように大動脈の内部で回転し、その後、前方及び後方にわずかに押し引きされると、カテーテル18の遠位端部22は、腎動脈10内に滑り込むことができる。この作用は、腎動脈/大動脈分岐が標準的な角度で位置するときにより容易になる。カテーテル18の遠位端部22はかぎ状であるため、大動脈内で引き戻されると、腎動脈10の側枝を捕える傾向がある。
カテーテルにおけるバルーン24は、カテーテルの遠位端部が腎動脈内の所望の位置に配置されるまで収縮状態を維持することが好ましい。カテーテル18及び振動子30の挿入中(ステップ56)、医師は、腎臓6又は存在するであろう腎動脈10のあらゆる分岐の前であっても、腎動脈10内での振動子30の配置を確認できる。このような確認は、蛍光透視法などのX線技術を利用して実現され得る。
【0048】
カテーテルの遠位端部が腎動脈内に配置されると、ポンプ37はバルーン24を、
図4及び
図5に示すような膨張状態にする。この状態では、バルーンの非円形部80が動脈壁に係合するため、振動子30は腎動脈内の中心に位置し、振動子の軸33(
図5)は腎動脈の軸Aとほぼ同軸上に配置される。ただし、バルーンは腎動脈内の血流を妨げない。この状況では、循環装置48は、バルーン24に出入りする冷却された水性液体の流れを維持することにより、振動子30を冷却する。冷却されたバルーンはさらに、腎動脈の内面を冷却する傾向がある。腎動脈を流れる継続的な血流が、腎動脈の内面をさらに冷却する。バルーン内を流れる液体はX線造影剤を含んでもよく、これはバルーンの可視化及び適切な配置の確認に役立つ。
【0049】
次のステップ58では、超音波システム20は、振動子30を利用して腎動脈10のサイズを測定する。制御盤42及び超音波源44は振動子30を作動させて、低出力の超音波パルスを利用して腎動脈10を「ピング」(調査)する。この超音波パルスは、エコーとして動脈壁で振動子30に反射される。振動子30は、エコーを線32を通る信号に変換する。超音波システム20は、次に、エコー信号を解析して動脈10のサイズを決定する。例えば、超音波システム20は、「ピング」(調査用の超音波パルス)を生成するための振動子の作動と、エコー信号の返送との間の時間遅延を測定できる。ステップ60では、超音波システム20は、測定した動脈サイズを用いて、後のステップで治療用の超音波エネルギーを加える間に振動子30が供給する音響出力を設定する。例えば、制御盤42は、特定のエコー遅延(したがって動脈直径)と特定の出力レベルとの相関関係を示すルックアップテーブルを利用し得る。通常、動脈直径がより大きいと、当然ながら用いる出力もより大きくなる。腎動脈10の形状の変化又は振動子30の中心位置の変化は、エ
コー信号における時間遅延の幅をもたらすことがある。超音波システム20は、その幅の平均を取得して腎動脈10の平均サイズを決定し、その平均サイズに基づいて出力レベルを調節できる。
【0050】
医師は次に、ユーザインターフェース40を通して治療を開始する(ステップ60)。この治療(ステップ64)では、超音波システム又はアクチュエータ20、特に制御盤42及び超音波源44が、振動子30を作動させて、治療効果のある超音波を衝撃容積11(
図5)に伝達する。振動子30が伝達する超音波エネルギーは、概ね半径方向外向きに振動子30から離れて伝播し、完全な円、又は振動子30の近位遠位軸33及び腎動脈の軸Aの周りの360度の孤を包含する。
【0051】
超音波振動子30の選択された作動周波数、非集束特性、配置、サイズ、及び形状に応じて、腎動脈10及び腎神経の全体を、振動子30の「近傍」領域内に配置することができる。外向きに広がるこの領域内では、振動子30が生成する非集束超音波の全方向(360度)への円筒形ビームは視準を維持する傾向があり、その軸の長さは、振動子30の軸の長さにほぼ等しい。円筒振動子における近傍領域の半径範囲は、式L
2/λにより定義される。この式において、Lは振動子30の軸の長さであり、λは超音波の波長である。L
2/λよりも大きい振動子30の表面からの距離では、ビームは、かなりの程度まで軸方向に広がり始める。ただし、L
2/λよりも短い距離では、ビームは、実質的には軸方向に広がらない。それ故、近傍領域内において、L
2/λよりも短い距離では、非集束ビームが半径方向に広がるにつれて、超音波エネルギーの強度は、振動子30の表面からの距離に比例して直線的に減少する。本開示での使用において、用語「非集束」は、振動子30から離れるビームの伝播方向において強度が増大しないビームを意味する。
【0052】
衝撃容積11は略円筒状であり、腎動脈と同軸である。衝撃容積11は、振動子の表面から衝撃半径39まで広がるが、衝撃半径39では、超音波エネルギーの強度は小さ過ぎて、腎神経8を不活性化するほどの温度範囲に組織を加熱しない。衝撃半径39は、振動子30が伝達する超音波エネルギー量に応じて決まる。衝撃容積11の容積Vは、以下の方程式で求められる。
V=πr
22h−πr
12h
ここで、r
1は振動子30の半径であり、r
2は衝撃領域11の半径であり、hは振動子30の長さである。
【0053】
前述のように、振動子30の長さは2mm〜10mmの範囲で異なり得るが、腎神経の不活性帯を広くするために6mmが好ましい。振動子30の直径は、1.5mm〜3.0mmの範囲で異なり得るが、2.0mmが好ましい。エネルギー量は、その治療効果に加え、腎動脈10を越えた構造に損害を与える超音波エネルギーを伝達することなく、その全ての平均半径が3〜4mmである腎動脈10及び隣接する腎神経を包含するために、衝撃容積11の半径39を好ましくは5mm〜7mmの範囲にできるようにも選択される。これにより、衝撃容積11は少なくとも0.5cm
3となり、腎神経の不活性部分の長さは、振動子32の長さとほぼ一致する。
【0054】
出力レベルは、衝撃容積全体の固形組織が、数秒間以上、約42℃以上に加熱されるが、腎動脈の内膜層を含む固形組織の全てが65℃未満に維持されるように選択されることが好ましい。それ故、衝撃域全体にわたって、固形組織(腎神経の全てを含む)は、神経伝達を不活性化するのに十分であるが、急速な組織壊死を引き起こさない温度に維持される。
【0055】
神経損傷は、組織壊死よりも非常に低い温度で、かつ非常に急速に発生することを研究は示している。Bunch, Jared. T.他による、「Mechanisms of Phrenic Nerve Injury During Radiofrequency Ablation at the Pulmonary Vein Orifice」,Journal of Cardiovascular Electrophysiology,第16巻、第12版、1318〜1325ページ(2005年12月8日)を参照されたい。その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。組織壊死は、通常、65℃以上の温度に約10秒間以上さらされた場合に引き起こされ、一方、腎神経8の不活性化は、通常、それらが42℃以上の温度に数秒間以上さらされた場合に引き起こされる。このため、超音波エネルギー量は、衝撃容積11をそれらの間の温度に数秒間以上維持する量が選択される。超音波エネルギー量はまた、衝撃容積内のコラーゲンの相当量を減少しない程度に少量であることが好ましい。振動子の作動にはそれ故、狭窄症、内膜過形成、内膜壊死、又は医師の介入が必要な他の負傷などの損傷を腎動脈10にもたらすことなく、腎神経8を不活性化する治療用量が供給される。腎動脈10壁の内側を流れる継続的な血流は、腎動脈の層3(
図2)を確実に冷却する。これにより、伝達される治療用量で伝達された超音波エネルギーは放散され、内膜層3でなく、主に腎動脈10の外層で熱に変換される。さらに、振動子30を備えたバルーン24を流れる冷却液体の循環が、振動子30から、内膜層3及び振動子を通り過ぎて流れる血液に移動する熱を減少する効果もある。したがって、伝達される治療用の非集束超音波エネルギーは、内膜層を損傷せず、さらには血栓形成を招かない、より安全な治療を提供する。
【0056】
治療用量の超音波エネルギーを生成するための振動子30の音響出力は、通常は約10〜約100ワットであり、より通常では、約20〜約30ワットである。適用される出力の持続期間は、通常、約2秒〜約1分以上であり、より通常では、約10秒〜約20秒である。所望の温度レベルを達成するための、特定のシステムに用いられる最適なエネルギー量は、数学モデル化又は動物試験により決定され得る。
【0057】
非集束超音波エネルギーのための衝撃容積11は、外膜及び近接する周囲組織を含む腎動脈10全体を包含し、したがって、腎動脈周囲の腎神経のすべてを包含する。そのため、振動子30の腎動脈10内での配置は、対象の腎動脈10周囲の全ての腎神経8の伝達を不活性化するような無差別な配置となる。本開示で用いられる「無差別な」及び「無差別に」は、任意の特定の腎神経に標的を合わせたり、それを位置決めしたり、それに焦点を当てたりしないことを意味する。
【0058】
任意で、医師は次に、腎動脈に沿ってカテーテル18及び振動子30を再配置し(ステップ66)、治療を再開し68、治療効果のある非集束超音波エネルギーを再伝達し得る(ステップ70)。これにより、腎動脈の長さ方向に沿った更なる位置で腎神経が不活性化され、安全かつより信頼できる治療を提供できる。再配置及び再送信ステップは、任意で複数回実行されてもよい。医師は次に、振動子30を含むカテーテル18を他の腎動脈10に動かし、その動脈10の完全な治療を再度実行する(ステップ72)。治療の終了後、カテーテル18は対象の体から取り出される(ステップ74)。
【0059】
前述した特徴の多くの変更及び組み合わせが使用され得る。例えば、超音波システム20は振動子30を制御して、治療用の超音波エネルギーの印加の間に、超音波エネルギーをパルス関数を利用して伝達できる。パルス関数は、デューティサイクルの例えば50%で、超音波振動子30に超音波エネルギーを放射させる。超音波エネルギーのパルス変調は、長い治療時間でも、組織の温度を抑制するのに役立つ。
【0060】
さらなる変更では、腎動脈サイズの測定ステップ、及びエネルギー量の調節ステップ(ステップ58及び72)は省略されてもよい。この例では、振動子は単に、平均的な対象の腎動脈に十分であるプリセット出力レベルにおいて作動する。さらなる変更では、腎動脈直径は、振動子30を作動させる以外の技術、例えば、腎動脈に導入される造影剤を利用したX線画像、磁気共鳴映像法、又は別個の超音波測定カテーテルを利用して測定されてもよい。この例では、個々の測定データが、エネルギー量の設定に用いられてもよい。
【0061】
前述の特定の実施形態では、振動子30は、膨張バルーン24の非円形要素80により腎動脈内の中心に配置されるが、中心に配置する他の方法を用いてもよい。例えば、振動子を取り囲む膨張バルーンは、腎動脈10より直径がわずかに小さい円形断面のバルーンにすることができる。このようなバルーンは、腎動脈10で血流を流し続けながら、振動子30を腎動脈10の略中心に維持できる。この実施形態では、バルーン24周囲の血流がバルーンを多少前後に動かすため、バルーン24は、腎動脈10に取り付けられた場合よりも動的である。この動的性質により、腎動脈10の全ての部分に血液が伝わり続けるため、内膜層3を冷却し、その損傷を最小化できる。他の実施形態では、カテーテルの遠位端部は、バルーン以外の膨張構造、例えば、軸方向に構造を圧縮することにより、半径方向の膨張状態を選択的にもたらし得るワイヤバスケット又はワイヤメッシュ構造などを含んでもよい。ワイヤバスケットは、超音波に対して無反射であっても、又は振動子30から軸方向にオフセットする位置でカテーテルに取り付けられてもよい。
【0062】
さらなる変更では、バルーン24は多孔質膜から形成されるか、又は穴を含む構造でもよく、それにより、バルーン24内を循環する冷却液体が、バルーン24内から腎動脈10内の血流内に流出し、又は排出され得る。血流に入る、バルーン24から流出した又は排出された冷却液体は、血流が接触する腎動脈10の内面をさらに冷却し得る。
【0063】
通常、カテーテル18は、簡単に処分できる使い捨て可能な器具である。カテーテル18又は超音波システム20は、一度使用された後のカテーテル18の再利用を妨げる安全装置を含んでもよい。このような安全装置それ自体は、当業界で周知のものである。
【0064】
更なる別の変更では、医師がカテーテルの遠位端部22を直接操縦可能な操縦機構を、カテーテル18それ自体が備えてもよい。シースは無くてもよい。
【0065】
別の変更として、超音波振動子30を含むカテーテル18の遠位端部におけるエネルギーエミッターユニットは、腎静脈に配置されてもよく、超音波振動子30は、超音波エネルギーを腎静脈内の振動子30から腎動脈10への望ましい方向に選択的に導くために、限定された半径方向の範囲のみで、振動子30から超音波エネルギーを選択的に方向付けるための反射又は遮断構造を含んでもよい。静脈に進入する方法が利用される場合には、振動子30の側焼成配置として周知のように、超音波エネルギーをある部分に導くか、振動子30の外面から離れる方向にビームを伝搬してもよい。例えば、超音波振動子30は、米国仮特許出願第61/256002号(2009年10月29日出願)である発明の名称「METHOD AND APPARATUS FOR PERCUTANEOUS TREATMENT OF MITRAL VALVE REGURGITATION (PMVR)」に開示されたものと同様の構成を有し、指向性超音波エネルギー5を放射するように作動するものでもよく、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。こ
の変更では、カテーテル18が身体内に導かれ、その後、腎臓6に近接して配置される経路は、前述の心房へ近づく経路とは異なる。静脈への進入は、カテーテル18を取り出した後の閉鎖の問題を低減し得るという利点により、利用されることができる。
【0066】
本発明は特定の実施形態を参照にして説明されたが、これら実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示であることが理解される。従って、添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、例示した実施形態に多くの改良が行われ得ること、及び他の配置が考案され得ることを理解されたい。