(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るダイヤフラムポンプを備えたインク供給システム、および、インク供給システムを備えたインクジェットプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
図1は、一実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下、プリンタという。)10の正面図である。プリンタ10は、インクジェット式のプリンタである。以下の説明において、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、プリンタ10を正面から見たときの前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味する。ただし、上記方向は説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0012】
図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体5に対して印刷を行うものである。本実施形態では、記録媒体5はロール状の記録紙である。しかし、記録媒体5は、ロール状の記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5は、樹脂製のシートなどであってもよい。また、記録媒体5は、可撓性を有するシートに限らず、ガラスの基板などの硬い媒体であってもよい。本実施形態では、記録媒体5を形成する材料は特に限定されない。
【0013】
本実施形態に係るプリンタ10は、プリンタ本体12と、プリンタ本体12に固定されたガイドレール22とを備えている。ガイドレール22は左右方向に延びており、ガイドレール22にはキャリッジ24が係合している。キャリッジ24は、ガイドレール22に沿って左右に摺動可能である。キャリッジ24には、無端状のベルト25が固定されている。ガイドレール22の左端側および右端側には、それぞれプーリ23a、23bが設けられ、右側のプーリ23bには、キャリッジモータ26が接続されている。キャリッジモータ26に接続されたプーリ23bは、キャリッジモータ26の駆動によって回転する。プーリ23aおよび23bには、ベルト25が巻き掛けられている。キャリッジモータ26が駆動して、プーリ23bが回転することでベルト25が走行すると、キャリッジ24が左右方向に移動する。このように、キャリッジ24はガイドレール22に沿って左右方向に移動可能に構成されている。
【0014】
プリンタ本体12には、記録媒体5が載置されるプラテン14が設けられている。プラテン14は、記録媒体5に対して印刷を行う際、記録媒体5を支持する部材である。プラテン14には、上下一対のグリットローラ16およびピンチローラ17が設けられている。グリットローラ16には、フィードモータ18が連結されている。グリットローラ16は、フィードモータ18によって回転駆動される。記録媒体5は、グリットローラ16とピンチローラ17との間に挟まれた状態でグリットローラ16が回転することで、前後方向に搬送される。
【0015】
本実施形態に係るプリンタ10は、複数のインク供給システムを有している。
図2は、インク供給システム30とキャッピングシステム60とを示す模式図である。インク供給システム30は、インクタンク34からインクヘッド32に向かってインクを供給するシステムである。インク供給システム30は、1つのインクヘッド32ごとに設けられている。1つのインク供給システム30は、1つのインクタンク34を有している。本実施形態に係るプリンタ10は、複数のインクヘッド32と、インクヘッド32と同数のインク供給システム30とを備えている。インクヘッド32およびインク供給システム30の数は特に限定されない。なお、複数のインク供給システム30は、それぞれ同じ構成を有している。そのため、以下では、1つのインク供給システム30の構成について詳述する。
【0016】
図2に示すように、本実施形態に係るインク供給システム30は、インクヘッド32と、インクタンク34と、導入流路40と、上流側流路42uと、下流側流路42dと、上流側ポンプP1と、下流側ポンプP2と、上流側ダンパ50と、下流側ダンパ52と、導入バルブ54と、循環バルブ56と、エアトラップ70とを備えている。本実施形態に係るインク供給システム30は、流路内でインクを循環させるインク供給システムである。以下では、上流側流路42uと下流側流路42dとで構成される環状の流路のことを循環流路42と称することがある。
【0017】
図2に示すように、インクヘッド32は、キャリッジ24に搭載されている。インクヘッド32は、キャリッジ24を介してガイドレール22に沿って左右方向に移動可能である。インクヘッド32は、プラテン14に載置された記録媒体5にインクを吐出する。インクヘッド32の底面には、インクを吐出するノズル32aが形成されている。各インクヘッド32の内部には、圧電素子等を備えたアクチュエータ(図示せず)が設けられている。アクチュエータは、制御装置80(
図1参照)と電気的に接続されている。アクチュエータは、制御装置80によって制御される。アクチュエータが駆動することによって、インクヘッド32のノズル32aから記録媒体5に向かってインクが吐出される。
【0018】
インクタンク34は、インクを貯留する部材である。インクタンク34は、プリンタ本体12に着脱自在に設けられている。ただし、インクタンク34の位置は特に限定されず、例えば、キャリッジ24に着脱自在に設けられていてもよい。1つのインクタンク34に貯留されているインクは、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、ブラックインクなどのプロセスカラーインクや、ホワイトインク、メタリックインク、クリアインクなどの特色インクなどである。インクタンク34に貯留されるインクの種類は限定されない。
【0019】
導入流路40は、インクタンク34内に貯留されたインクを上流側流路42uに供給するための流路である。そこで、導入流路40は、一端がインクタンク34に接続され、他端が上流側流路42uに接続されている。導入流路40の途中には導入バルブ54が設けられている。導入バルブ54は、導入流路40を開放/閉鎖するバルブである。
【0020】
循環流路42は、インクがその中を循環する環状の流路であって、上流側流路42uと下流側流路42dとで構成されている。上流側流路42uは、一端が接続部CPにおいて導入流路40と接続され、他端がインクヘッド32と接続されている。上流側流路42uは、インクヘッド32にインクを供給する流路である。
図2に示す矢印の方向が、インクの流れ方向である。上流側流路42uを流れるインクの流れは、
図2の矢印方向に一方通行である。上流側流路42uにおいて、接続部CPのすぐ下流には上流側ポンプP1が配置されている。上流側ポンプP1の下流には上流側ダンパ50が設けられ、上流側ダンパ50のさらに下流にはインクヘッド32が設けられている。一方、インクヘッド32の下流側には、下流側流路42dが接続されている。下流側流路42dは、上流側がインクヘッド32に接続され、下流側が導入流路40と上流側流路42uとの接続部CPに接続されている。接続部CPでは、導入流路40、上流側流路42u、および下流側流路42dが分岐している。下流側流路42dには、上流側から順に下流側ダンパ52、下流側ポンプP2、エアトラップ70、および循環バルブ56が設けられている。上流側流路42uおよび下流側流路42dからなる循環流路42を一方通行で流れるインクの流れは、上流側ポンプP1および下流側ポンプP2によって作り出されている。循環バルブ56は、循環流路42を開放または閉鎖するバルブである。循環バルブ56が開放されているとき、循環流路42はインクを循環させる流路として機能する。一方、循環バルブ56が閉鎖されているとき、循環流路42は、接続部CPからインクヘッド32を経由しエアトラップ70に向かう片道の流路を形成する。
【0021】
導入流路40、上流側流路42uおよび下流側流路42dの種類や材質は限定されないが、導入流路40、上流側流路42uおよび下流側流路42dは、例えば、可撓性を有するチューブである。
【0022】
上流側ポンプP1および下流側ポンプP2は、インクを送給するための部材である。上流側ポンプP1は、インクヘッド32に向かってインクを供給するためのポンプであり、インクヘッド32に流すインクの流量を調整する。下流側ポンプP2は、インクヘッド32からインクを回収するためのポンプであり、インクヘッド32から流出するインクの流量を調整する。上流側ポンプP1によってインクの供給流量が調整されることにより、上流側のインク圧力が調整される。下流側ポンプP2によってインクの帰還流量が調節されることにより、下流側のインク圧力が調整される。上流側および下流側のインク圧力が調整されることにより、インクヘッド32内のインクの圧力が調整される。本実施形態では、上流側ポンプP1、下流側ポンプP2は、同じダイヤフラムポンプである。上流側ポンプP1および下流側ポンプP2の内部構造については後述する。
【0023】
上流側ダンパ50および下流側ダンパ52は、キャリッジ24に搭載されている。上流側ダンパ50および下流側ダンパ52は、インクの圧力変動を緩和してインクヘッド32のインク吐出動作を安定させるとともに、インクヘッド32内のインクの圧力を所望の圧力に調整するための部材である。上流側ダンパ50は、上流側ダンパ50に流入するインクの圧力を検出する。上流側ポンプP1の駆動は、上流側ダンパ50による圧力の検出結果に基づいて制御される。下流側ダンパ52は、下流側ダンパ52に流入するインクの圧力を検出する。下流側ポンプP2の駆動は、下流側ダンパ52による圧力の検出結果に基づいて制御される。
【0024】
エアトラップ70は、下流側流路42dにおいて、下流側ポンプP2の下流に設けられている。エアトラップ70は、インク内に含まれる空気を捕獲する装置である。インク内の空気は、主にインクヘッド32から混入する。エアトラップ70は、例えば、気液分離器である。エアトラップ70には、排出流路44が接続されている。排出流路44の途中には排出バルブ58が設けられている。排出バルブ58は、排出流路44を開放/閉鎖するバルブである。排出流路44は、排出バルブ58のさらに先で、廃液タンク68に接続されている。排出流路44を構成する部材の材料や種類もまた限定されないが、排出流路44もまた、例えば、チューブである。
【0025】
本実施形態に係るプリンタ10は、キャッピングシステム60を備えている。キャッピングシステム60は、キャップ62と、キャップ移動機構64と、吸引ポンプ66とを備えている。キャップ62および吸引ポンプ66は、ガイドレール22(
図1参照)の右端部に位置するホームポジション(図示省略)に配置されている。ホームポジションは、印刷待機時、すなわち、印刷が行われていない時に、インクヘッド32が待機する位置のことである。キャップ62は、インクヘッド32のノズル32aに付着したインクが硬化して、ノズル32aが詰まることを抑制するものである。キャップ62は、印刷待機時において、インクヘッド32のノズル32aを覆うようにインクヘッド32に装着される。キャップ移動機構64は、キャップ62に接続されている。キャップ移動機構64は、ホームポジションにおいて、インクヘッド32のノズル面に向かってキャップ62を上下移動させる機構である。キャップ移動機構64の構成は特に限定されないが、例えば、駆動モータを備えている。キャップ移動機構64は、上記駆動モータを駆動することによって、キャップ62を上下移動させる。
【0026】
吸引ポンプ66は、インクヘッド32にキャップ62が装着されている状態において、インクヘッド32内のインクを吸引する部材である。上記吸引も、インクヘッド32のノズル32aの詰まりを予防するための作業である。吸引ポンプ66の吸引口は、キャップ62に接続されている。吸引ポンプ66の排出口は、廃液タンク68と接続されている。吸引ポンプ66によって吸引されたインクは、廃液タンク68に廃棄される。
【0027】
制御装置80は、各部の動作を制御する部材である。制御装置80は、キャリッジモータ26、フィードモータ18、インクヘッド32に内蔵された各アクチュエータ、上流側ポンプP1、下流側ポンプP2、導入バルブ54、循環バルブ56、排出バルブ58、キャップ移動機構64の駆動モータ、および吸引ポンプ66と接続され、それらの動きを制御している。また、制御装置80は、上流側ダンパ50および下流側ダンパ52に接続され、それらが送信する信号を受信している。制御装置80の構成は特に限定されない。例えば、制御装置80は、コンピュータであり、中央演算処理装置(以下、CPUという。)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。また、制御装置80の各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。
【0028】
印刷待機状態において、制御装置80は、キャップ移動機構64を制御して、インクヘッド32に対してキャップ62を装着させている。また、制御装置80は、上流側ポンプP1および下流側ポンプP2を制御して、循環流路42内でインクを循環させている。上記循環は、顔料等を含んだインクが使用されている場合に、顔料等がインク内で沈降するのを防止するために行うものである。同時に、制御装置80は、上流側のインク圧および下流側のインク圧を所定の圧力に制御することによって、インクヘッド32内のインクの圧力を所定の圧力範囲に制御している。待機状態におけるインクヘッド32内のインク圧は、インクが吐出可能であって、かつ、ノズル32aからインクが垂れない圧力に制御されている。上記圧力は、例えば、ゲージ圧で−1kPa程度の負圧である。
【0029】
印刷を行う際には、キャップ62はインクヘッド32から離反され、インクヘッド32は、キャリッジモータ26の駆動によって、ホームポジションからプラテン14上に移動される。インクヘッド32は、プラテン14上に載置されている記録媒体5にインクを吐出しながら、キャリッジ24とともに、左右方向に走査される。このとき、各ノズル32aの吐出タイミングとキャリッジ24の走査とが連動して制御される。これにより1つの印刷ラインの印刷が行われる。その後、フィードモータ18に連結されたグリットローラ16によって記録媒体5が前方にフィードされ、次の位置での印刷が行われる。
【0030】
本実施形態に係るインク供給システム30は、循環流路42内のインクを排出可能に構成されている。インクの排出を行う際、制御装置80は、循環バルブ56を閉鎖させる。また、導入バルブ54および排出バルブ58を開放させる。これらバルブ操作により、インクタンク34から導入流路40、上流側流路42u、インクヘッド32、下流側流路42d、およびエアトラップ70を経由して、排出流路44、廃液タンク68に至る流路が形成される。さらに、制御装置80は、上流側ポンプP1および下流側ポンプP2を駆動させて、循環流路42内のインクを廃液タンク68に向かって送液する。そこで、送出されたインクは、廃液タンク68に廃棄される。上記のようなインクの排出は、インクの交換を行う場合や、プリンタ10を移動させる場合などに実施される。
【0031】
さらに、本実施形態に係るインク供給システム30は、ノズル32aからインクヘッド32の外部に向かってインクを吸引することが可能である。インク吸引時、キャップ62は、インクヘッド32に装着されている。吸引ポンプ66は、キャップ62を介してインクヘッド32のノズル32aからインクを吸引する。
【0032】
(上流側ポンプおよび下流側ポンプの構成)
上流側ポンプP1および下流側ポンプP2は、インクを循環流路42において循環させる部材である。前述したように、本実施形態では、上流側ポンプP1と下流側ポンプP2とは、同じダイヤフラムポンプである。そこで、以下では上流側ポンプP1の内部構造および動作について説明することとし、下流側ポンプP2の内部構造および動作の説明は省略する。
図3は、本実施形態に係る上流側ポンプP1の斜視図である。
図3に示されるように、上流側ポンプP1は、第1部材110と、第2部材120と、第3部材130とを備えている。また、
図4は、上流側ポンプP1の斜視図であって、第1部材110と第2部材120と第3部材130とが分解された図である。
図4に示されるように、本実施形態に係る上流側ポンプP1はさらに、ダイヤフラム140と、流入側弁151と、流出側弁152とを備えている。
【0033】
第1部材110は、平面視において矩形上の部材である。第1部材110は、例えば、樹脂等で構成されている。ただし、第1部材110の平面形状は矩形でなくともよく、また、材料は樹脂に限定されない。第1部材110には、吸引口111と吐出口112とが形成されている。吸引口111および吐出口112は、上流側流路42uのチューブが挿入される部材である。詳しくは、吸引口111には、上流側流路42uの導入流路40(
図2参照)側のチューブが取り付けられ、吐出口112には、上流側流路42uの上流側ダンパ50(
図2参照)側のチューブが取り付けられる。インクは、吸引口111から上流側ポンプP1の内部に吸引され、上流側ポンプP1の内部を通って吐出口112から送出される。
図5は、
図3におけるV−V断面である。
図5に示されるように、第1部品110は、吸引口111と連通した第1流入流路113と、吐出口112と連通した第1流出流路114とを備えている。第1流入流路113および第1流出流路114は、第1部品110の下面まで貫通している。さらに、第1部品110は、下面に第1流入室115と、第1流出室116とを備えている。第1流入室115は、第1部材110の下面に形成された凹部であり、第1流入流路113と連通している。第1流出室116は、第1部材110の下面に形成された凹部であり、第1流出流路114と連通している。
【0034】
第2部材120は、第1部材110、流入側弁151、および流出側弁152とともに流入側逆止機構171、および流出側逆止機構172を構成し、また、第3部材130およびダイヤフラム140とともにポンピング機構160を構成する部材である。ポンピング機構160、流入側逆止機構171、および流出側逆止機構172の詳細については後述する。第2部材120も、例えば樹脂等で形成されている。
図5に示されるように、第2部材120は、上面に第2流入室121と第2流出室122とを備えている。第2流入室121および第2流出室122は、第2部材120の上面に形成された凹部である。第2部材120の下面には、ポンプ室125が形成されている。ポンプ室125は、第2部材120の下面に形成された凹部である。第2流入室121の底面からは、下方に向かって第2流入流路123が延びている。第2流入流路123は、第2流入室121の底面からポンプ室125の天面125aまで貫通する貫通穴である。同様に、第2流出室122の底面からは、下方に向かって第2流出流路124が延びている。第2流出流路124は、第2流出室122の底面からポンプ室125の天面125aまで貫通する貫通穴である。そこで、ポンプ室125は、下面の開口125b(以下、ダイヤフラム取付開口125bと呼ぶ。)、第2流入流路123が貫通した流入側開口125c、および第2流出流路124が貫通した流出側開口125dの3つの開口を備えている。
【0035】
流入側弁151および流出側弁152は、例えば、弾性変形可能なゴム等で形成されている。本実施形態では、流入側弁151と流出側弁152は、同じ部材である。ただし、流入側弁151と流出側弁152とは、異なる部材であっても構わない。
図4に示されるように、流入側弁151は、弁部151aと、シール部151bとから構成されている。弁部151aは、流入側逆止機構171において、外部から上流側ポンプP1内部への流入方向にだけインクの流れを許容する弁の役割を果たす。シール部151bは、流入側弁151において、弁部151aを囲んで環状をなしている。シール部151bは、第1部材110と第2部材120が結合されたとき、流入側逆止機構171の外側をシールする役割を果たす。ただし、シール部151bは、流入側弁151において存在していなくともよく、代わりにガスケットやOリングなどのシール部材が別途使用されてもよい。流出側弁152も、流入側弁151と同様の構成を備えている。
【0036】
第3部材130は、第2部材120との間でダイヤフラム140を挟み込んで固定するとともに、ダイヤフラム140を弾性変形させる部材である。
図5に示されるように、第3部材130は、本体131と、モータ132(
図4参照)と、偏芯カム133と、コネクティングロッド134とを備えている。本体131は、例えば、樹脂等で形成されている。本体131には、ダイヤフラム取付溝131aが形成されている。ダイヤフラム取付溝131aには、ダイヤフラム140が装着されている。
【0037】
ダイヤフラム140は、弾性変形可能なシート状の部材である。
図5に示されるように、ダイヤフラム140は、第3部材130と第2部材120とが結合されたとき、ダイヤフラム取付溝131aと第2部材120とによって挟み込まれて固定される。本実施形態に係るダイヤフラム140は、中心に貫通穴が設けられている。ダイヤフラム140は、平面視においてドーナツ状のシートである。ダイヤフラム140の材質等の詳細については後述する。
【0038】
ダイヤフラム140の中心には、コネクティングロッド134が固定されている。本実施形態に係るコネクティングロッド134の上端は、ダイヤフラム140の中心穴を通ってダイヤフラム140の上方に突出している。コネクティングロッド134の上端は、固定部材134dで構成されている。固定部材134dは、コネクティングロッド本体134aとの間でダイヤフラム140を挟み込むことによって、コネクティングロッド134とダイヤフラム140とを結合させる部材である。固定部材134dとコネクティングロッド本体134aとは、例えば圧入されている。コネクティングロッド134の下端付近には、カム受け部134bが形成されている。カム受け部134bは、左右方向に長い長穴である。カム受け部134bの内周部134cは、摺動グレードの樹脂で形成されている。内周部134cは、コネクティングロッド本体134aと一体に形成されたものであってもよいし、別部品が装着されたものであってもよい。
【0039】
図5に示すように、カム受け部134bには、偏芯カム133が挿入されている。偏芯カム133は、モータ132の回転軸132aに固定されている。偏芯カム133は、半径R1の円形の外周部133aを備えている。外周部133aは、摺動グレードの樹脂で形成されている。そこで、カム受け部134bの内周部134cと、偏芯カム133の外周部133aとは、摺動グレードの樹脂同士の接触によって滑らかに摺動可能となっている。偏芯カム133は、外周部133aの中心とはずれた位置でモータ132の回転軸132aと結合されている。偏芯カム133は、回転軸132aが回転すると、それに伴って回転する。その際、偏芯カム133は、半径R2の回転軌道を描いて回転する。コネクティングロッド134は、偏芯カム133の回転に伴って、L1=2×(R2−R1)で表される振幅L1で上下方向に往復運動する。モータ132と、偏芯カム133と、コネクティングロッド134とは、ダイヤフラム140を上下方向に弾性変形させるダイヤフラム変形機構135を構成している。
【0040】
図4に示されるように、第1部材110と第3部材130とは、4本のネジ117が4つのネジ穴136にそれぞれ締め込まれることよって結合される。第1部材110と第3部材130とは、結合の際、第2部材120、流入側弁151、流出側弁152、およびダイヤフラム140を間に挟み込む。それにより、第2部材120、流入側弁151、流出側弁152、およびダイヤフラム140が固定される。これら部材が結合されることにより、上流側ポンプP1の内部に、ポンピング機構160と、流入側逆止機構171と、流出側逆止機構172とが形成される。
【0041】
ポンピング機構160は、ポンプ室125と、ダイヤフラム140と、ダイヤフラム変形機構135とによって構成されている。
図5に示されるように、ダイヤフラム140は、第2部材120と第3部材130とに挟まれることによって、ポンプ室125のダイヤフラム取付開口125bに取り付けられている。ダイヤフラム取付開口125bがダイヤフラム140に覆われることによって、ポンプ室125内には内部空間125eが構成されている。内部空間125eは、ポンプ室125とダイヤフラム140とによって囲まれた空間である。
【0042】
流入側逆止機構171は、第1流入室115と、第2流入室121と、流入側弁151とで構成されている。
図5に示されるように、第1部材110と第2部材120とが組み合わされると、第1流入室115と第2流入室121とは向かい合うように組み合わされ、流入室を形成する。流入室において、流入側弁151は、第1流入流路113を覆うように固定されている。従って、流入側弁151は、ポンプ室125側からの圧力に対しては蓋の役目を果たし、液体は、ポンプ室125側から吸引口111側に向かう方向には移動できない。一方、流入側弁151は、吸引口111側からの圧力が加わると変形し、流路を開放する。従って、液体は、吸引口111側からポンプ室125側に向かう方向には移動できる。流入側逆止機構171は、このようにして、吸引口111側からポンプ室125側にだけ液体の移動を許容する逆止機構を構成している。
【0043】
流出側逆止機構172は、液体が移動できる向きを除いて、流入側逆止機構171と同様に構成されている。流出側逆止機構172は、ポンプ室125側から吐出口112側にだけ液体の移動を許容するように構成されている。流出側逆止機構172は、第1流出室116と、第2流出室122と、流出側弁152とで構成されている。第1部材110と第2部材120とが組み合わされると、第1流出室116と第2流出室122とは向かい合うように組み合わされ、流出室を形成する。流出室において、流出側弁152は、第2流出流路124を覆うように固定されている。流出側逆止機構172は、流入側逆止機構171と同様の原理によって、ポンプ室125側から吐出口112側にだけ液体の移動を許容する。流入側逆止機構171と流出側逆止機構172とによって、吸引口111からポンプ室125を経由して吐出口112に向かう向きにだけ、液体は移動する。
【0044】
ポンピング機構160は、モータ132を回転させることによって、ダイヤフラム140を上下に往復運動させる。ダイヤフラム140が上下に往復運動されると、それに伴って内部空間125eの体積が増減する。ダイヤフラム140が上に凸に弾性変形され、内部空間125eの体積が減少すると、インク圧によって流出側逆止機構172が開放され、インクは流出側開口125dからポンプ室125外部に送出される。送出されたインクは、第2流出流路124および第1流出流路114を経由して吐出口112から上流側ポンプP1外に吐出される。続いて、ダイヤフラム140が下に凸に弾性変形され、内部空間125eの体積が増加すると、ポンプ室125内の負圧によって流入側逆止機構171が開放され、インクは吸引口111、第1流入流路113、第2流入流路123を経由して流入側開口125cからポンプ室125内に流入する。上流側ポンプP1は、上記のような動作を繰り返して、インクを
図2の矢印の向きに送出する。モータ132の回転のタイミングおよび回転数は、上流側ダンパ50からの信号を受けて、制御装置80が制御する。
【0045】
(空気の混入による送液量の低下)
ところで、一般に、ダイヤフラムポンプを始めとする容積変動型のポンプは、送出する液体の中に気体が混入すると、送出能力が低下する。本実施形態に係る上流側ポンプP1について説明されたように、容積変動型のポンプは、ポンプ室の内部空間の体積を変動させることによって液体を送出する。しかし、送出すべき液体に気体が混入すると、ポンプ室の容積の変化が気体の体積変化によって一部吸収され、液体の送出量が低下する。容積変動型ポンプは、送出する流体が水やインクのような非圧縮性流体であることを前提にしている。従って、非圧縮性流体に空気のような圧縮性流体が混入すると、圧縮性流体の体積変化分だけ送液能力が低下する。
【0046】
インクジェットプリンタのインク供給システムにおいては、インクがノズルから垂れないようにインク圧を負圧に保っている。そこで、ノズルから外気を吸い込んでしまう可能性がある。とりわけ本実施形態に係るインク供給システム30のようにインクを循環流路内で循環させるシステムにおいては、その可能性が高い。そこで、循環式のインク供給システムにおいては、循環流路内に空気を捕獲するエアトラップを設けるのが一般的である。本実施形態に係るインク供給システム30においても、循環流路42中にエアトラップ70が設けられている。しかし、
図2から理解されるように、下流側流路42dの、エアトラップ70より上流側の部分では、インクヘッド32から吸引された空気は除去されない。そこで、インクヘッド32から空気が取り込まれた場合、その空気は、下流側ポンプP2に流入する。また、エアトラップ70の空気除去機能も完全ではない場合があり、上流側ポンプP1にも空気を含んだインクが流入する可能性がある。そこで、上流側ポンプP1および下流側ポンプP2に従来のダイヤフラムポンプを使用すると、送液する液体の中に混入した空気のために送液量が低下する可能性が高い。混入する空気の量によっては送液することができなくなる可能性もある。
【0047】
そこで、本実施形態に係る上流側ポンプP1は、
図5に示されるように、流出側開口125dをポンプ室125の中の最も高い位置に備えている。さらに、ポンプ室125の天面125aは、傾斜面125fを備えている。傾斜面125fは、流出側開口125dの位置において最も高く、そこから流入側開口125c側に向かって低くなるように傾斜している。
【0048】
ポンプ室125内に空気が侵入する場合、空気は、流入側開口125cから侵入する。侵入した空気は、インクよりも比重が小さいため、ポンプ室125の上方に集まる。即ち、侵入した空気は、流出側開口125d付近に集まる。そこで、空気はダイヤフラムポンプの駆動によって直ちにポンプ室125内から排出される。従って、インクに混入された空気は、ダイヤフラムポンプの吐出能力にほとんど影響を及ぼさない。このように、本実施形態に係るダイヤフラムポンプによれば、インク中に空気が混入するような使用条件においても、吐出能力をほとんど低下させることなく送液を続けることができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る上流側ポンプP1は、ポンプ室125の天面125aに傾斜面125fを備えている。傾斜面125fは、流出側開口125dから下方に向かって延びている。そこで、一度ポンプ室125内のインクから浮き上がって傾斜面125fに接した空気は、傾斜面125fに沿って流出側開口125dの方に向かう。本実施形態に係る上流側ポンプP1は、ポンプ室125の天面125aに傾斜面125fを備えることによって、インクに混入した空気を効率よく流出側開口125d付近に集めることができる。従って、インクに混入した空気を効率よくポンプ室125内から排出することができる。なお、
図5において傾斜面125fは平面であるが、曲面であってもよい。
【0050】
ポンプ室125の天面125aは、流出側開口125dを挟んで傾斜面125fと逆側に、第2傾斜面125gを備えている。このように、ポンプ室125の天面125aは、複数の傾斜面を備えていてもよい。第2傾斜面125gは、流出側開口125dよりも左方まで到達した空気を、流出側開口125dの方に誘導する。天面125aが複数の傾斜面を備える場合には、流出側開口125dは、ポンプ室125の一方の端に形成されなくともよく、例えば、天面125aの真ん中付近に形成されてもよい。
【0051】
傾斜面125fの右端付近には、流入側開口125cが開口している。流入側開口125cは、傾斜面125fの途中に形成されている。空気は、流入側開口125cからポンプ室125に侵入する。流入側開口125cが傾斜面125fに形成されていることにより、空気はより効率よく流出側開口125d付近に誘導される。
【0052】
上記のように、本実施形態に係る上流側ポンプP1は、液体の出口である流出側開口125dがポンプ室125内の最も高い場所に設けられるとともに、流出側開口125dに空気を誘導する傾斜面125fを備え、ポンプ室125内に侵入した空気を素早く排出できるように構成されている。さらに、液体の入口である流入側開口125cが傾斜面125fに設けられており、より効率よく空気を排出できるように構成されている。ポンプ室125内に侵入した空気が素早く排出されることにより、ポンプの吐出能力はほとんど損なわれることがない。
【0053】
(劣化による送液量の低下)
ダイヤフラムポンプにおいては、ポンプ室への空気の侵入以外にも送液能力を低下させる要因が存在する。その1つが、ダイヤフラムの劣化である。ダイヤフラムは、送液を行うのに適度な弾性と剛性とを備えるように構成されている。ダイヤフラムポンプでは、ダイヤフラムの弾性変形によってポンプ室の体積を変化させるため、ダイヤフラムの弾性は必須である。一方で、ダイヤフラムの剛性が弱いと、送液すべき液体の圧力に押されてダイヤフラムが伸び、その伸長分だけ送液量が低下してしまう。そこで、ダイヤフラムは、適度な弾性と剛性とを備えるように予め調整されている。
【0054】
ダイヤフラムの剛性は、例えば、ダイヤフラムの表面にコーティングを施すことによって付与される。上記コーティングは、例えば、フッ素樹脂などによるものである。ダイヤフラム表面にフッ素樹脂コーティングを施せば耐薬品性が向上し、多くの薬品に対して使用可能となるとともに、ダイヤフラムに剛性を与えることができるため、この方法は一般に利用されている。しかし、このようなダイヤフラムを使用したダイヤフラムポンプは、ダイヤフラムの弾性変形によって、使用とともにコーティング面の剛性が弱くなってゆき、ある段階から吐出量が急激に減少する。
【0055】
図6は、ダイヤフラム140の縦断面を示す模式図である。
図6に示されるように、本実施形態に係るダイヤフラム140は、ドーナツ状の3枚のシートが接合されて形成されている。詳しくは、ダイヤフラム140は、第1シート140aと、第2シート140bと、補強シート140cとで構成されている。第1シート140aと第2シート140bとは、同じ部材である。第1シート140aおよび第2シート140bの素材は、例えば、弾性変形可能なゴムである。第1シート140aと第2シート140bとは、ダイヤフラム140の上面および下面を構成している。ここでは、第1シート140aがダイヤフラム140の上面を構成し、第2シート140bがダイヤフラム140の下面を構成しているが、逆であってもよい。ダイヤフラム140は、上下対称なシートである。ただし、ダイヤフラム140は、上下の区別があるように構成されていてもよいし、第1シート140aと第2シート140bとは異なる部材であってもよい。
【0056】
補強シート140cは、第1シート140aと第2シート140bとの間に挟まれている。補強シート140cは、ダイヤフラム140に剛性を付与するための部材である。補強シート140cは、例えば、剛性を備えた布によって形成されている。ただし、補強シート140cは、布でなくともよく、例えば薄い金属板などであってもよい。補強シート140cは、ダイヤフラム140が液体の圧力によって伸長することを抑制している。補強シート140cは、コーティングとは違って、ダイヤフラム140を繰り返し変形させることによっても剛性が変化せず、経年劣化に強い。本実施形態に係る上流側ポンプP1は、上記したような補強シート140cを挟み込んだダイヤフラム140によって、長時間使用しても吐出量を維持することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る上流側ポンプP1は、
図5に示されるように、ダイヤフラム140をポンプ室125の天面125aに接触させないように構成されている。
図5は、ダイヤフラム140がポンプ室125の天面125aに最も接近したときを示す図である。
図5の状態でも、ダイヤフラム140とポンプ室125の天面125aとの間には隙間が空いている。往復運動中、ダイヤフラム140をポンプ室125の天面125aに接触させないことにより、ダイヤフラム140の摩耗、損傷を抑制することができる。ダイヤフラム140の摩耗、損傷を抑制することにより、経年劣化による吐出量の減少を抑制することができる。
【0058】
なお、ダイヤフラム140とポンプ室125の天面125aとを接触させない構成の副次的効果として、ダイヤフラムポンプのコストダウンが挙げられる。ダイヤフラム140が往復運動中に他の部材と接触しないため、ダイヤフラム変形機構135(モータ132、偏芯カム133、およびコネクティングロッド134)には高い機械的強度が求められない。通常、モータ132の回転運動をコネクティングロッド134の往復運動に変換する機構にはベアリング等が用いられるが、本実施形態に係る上流側ポンプP1では、摺動グレードの樹脂が用いられている。樹脂によって構成された回転運動の伝達部には機械的強度はあまりないが、コストは安い。ベアリング等の代わりに、樹脂による伝達部を採用することで、ダイヤフラムポンプのコストを抑えることができる。
【0059】
(本実施形態の効果)
上記のように、本実施形態に係るダイヤフラムポンプは、ポンプ室125の最も高い位置に吐出口112と連通した流出側開口125dが設けられ、そこに集まった空気が直ちに排出されるように構成されている。また、ポンプ室125の天面125aは、流出側開口125dから下方に延びる傾斜面125fを備え、空気を効率よく流出側開口125d付近に集めることができるように構成されている。さらに、吸引口111と連通した流入側開口125cは、傾斜面125fに開口されており、流入側開口125cから入ってくる空気は、さらに効率よく流出側開口125d付近に集められる。本実施形態に係るダイヤフラムポンプは、ポンプ室125内に空気が侵入しても直ちに空気を排出することができるため、空気侵入による吐出量の低下がほとんどない。
【0060】
また、本実施形態に係るダイヤフラムポンプは、ゴム製の第1シート140aと第2シート140bとによって補強シート140cを挟み込んだ構造のダイヤフラム140を有し、ダイヤフラムの経年劣化による吐出量の減少を抑制している。補強シート140cによって、本実施形態に係るダイヤフラム140は、長時間使用しても剛性が比較的変化せず、ポンプの送液量をあまり低下させない。
【0061】
さらに、本実施形態に係るダイヤフラムポンプは、ダイヤフラム140をポンプ室125に接触させないため、ダイヤフラム140を摩耗、損傷させにくい。そこで、ダイヤフラム140の摩耗、損傷による吐出量の低下を抑えることができる。ダイヤフラム140がポンプ室125に接触しないため、ダイヤフラム変形機構135に高い機械的強度を持たせる必要がなく、コストダウンも実現できる。本実施形態では、ダイヤフラム変形機構135の摺動部に樹脂を使うことでコストダウンを実現している。
【0062】
上記したダイヤフラムポンプは、循環式のインク供給システム、さらに、そのようなインク供給システムを備えたインクジェットプリンタにおいて特に有効である。循環式のインク供給システムでは、インク内の顔料等の沈降を防ぐためにインクを循環させているが、そのためインクヘッドから空気を吸い込みやすい。上記したダイヤフラムポンプによれば、ポンプ室内に空気が侵入してもほとんど影響を受けることなく送液を続けることができる。
【0063】
以上、好適な一実施形態について説明した。しかしながら、本発明に係るダイヤフラムポンプ、ダイヤフラムポンプを備えたインク供給システム、および、インク供給システムを備えたインクジェットプリンタは、上記した実施形態に限られるものではない。
【0064】
例えば、本発明に係るダイヤフラムポンプは、インクジェットプリンタのインク供給システムに限らず、他の様々な用途で使用可能である。また、本発明に係るインク供給システムは、インクジェットプリンタに搭載されるものに限られず、インクを吐出する装置全般、例えば粉末硬化タイプの三次元造形装置などにも適用できる。
【0065】
上記した実施形態では、ポンプ室への液体の流入口と、ポンプ室からの液体の流出口とは、水平方向に並んでいたが、それに限られない。例えば、ポンプ室において、流入口は下方に、流出口は上方に設けられていてもよい。ダイヤフラム取付開口の位置および向きも、上記した実施形態に限られない。ダイヤフラム取付開口は、例えば、鉛直に開口されていてもよい。また、ポンプ室の天面に対向していなくともよい。ポンプ室における流入口、流出口、およびダイヤフラム取付開口の配置は、流出口が最も高い位置に配置されることを除き、限定されない。
【0066】
上記した実施形態では、ダイヤフラム変形機構は、往復運動するコネクティングロッドを備えていたが、そのような機構に限定されない。ダイヤフラム変形機構は、ダイヤフラムを弾性変形させるあらゆる機構を用いることが可能である。例えば、カムそのものによってダイヤフラムを弾性変形させることも可能である。また、回転を往復運動に変換する場合にも、必ずしもカム機構は必要ではない。例えば、回転を往復運動に変換する機構には、クランク機構などを用いることも可能である。
【0067】
上記した実施形態では、ダイヤフラムポンプは、流入側と流出側とにそれぞれ逆止機構を備えていたが、逆止機構は、ポンプの外に設けられていてもよい。例えば、
図2の循環流路42において、上流側ポンプP1の上流側と下流側、下流側ポンプP2の上流側と下流側にそれぞれ逆止弁を設けても、インク供給システム30に同様の動作を行わせることができる。また、逆止機構は、上記した構成のものに限らず、例えば、片側にだけ開くように構成された機械式の弁を用いたものなど、各種の逆止機構が利用可能である。
【0068】
ダイヤフラムポンプの各部を形成する材料は、上記したものに限定されない。例えば、第1部材、第2部材、および第3部材は、金属、例えばアルミニウム合金などによってできていてもよい。ダイヤフラムの第1シート、第2シートはゴム製でなくともよく、他の各種の弾性材料であってもよい。ダイヤフラムの補強シートは、布や金属でなくともよく、例えば樹脂などであってもよい。
【0069】
上記した実施形態では、ダイヤフラムポンプは、第1部材と第2部材と第3部材とを組み合わせ、その間に弾性体のダイヤフラム等を挟み込む構造を有していたが、それに限られない。ダイヤフラムポンプの構成要素を形成させる具体的構造は限定されない。
【0070】
インク供給システムの循環流路における部材の配置は、上記した実施形態に限定されない。循環流路における部材の配置は適宜変更することができ、部材の追加も適宜可能である。また、本発明に係るインク供給システムは、循環流路を備え、インクを循環流路内で循環させる方式のものに限らず、例えば、インクタンクからインクヘッドに直線的にインクが供給されるシステムであってもよい。本発明に係るダイヤフラムポンプは、ポンプを備えた公知のあらゆるインク供給システムに適用することが可能である。
【0071】
また、本発明に係るインク供給システムにおいてインクを吐出させる方式には、例えば、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、および、ピエゾ駆動方式やサーマル方式などの各種のオンデマンド方式が利用できる。本発明に係るインク吐出方式は、限定されない。