特許第6571731号(P6571731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジャスト ライト サージカル,リミティド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許6571731-外科血管封止用の高周波発生器システム 図000002
  • 特許6571731-外科血管封止用の高周波発生器システム 図000003
  • 特許6571731-外科血管封止用の高周波発生器システム 図000004
  • 特許6571731-外科血管封止用の高周波発生器システム 図000005
  • 特許6571731-外科血管封止用の高周波発生器システム 図000006
  • 特許6571731-外科血管封止用の高周波発生器システム 図000007
  • 特許6571731-外科血管封止用の高周波発生器システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571731
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】外科血管封止用の高周波発生器システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   A61B18/12
【請求項の数】19
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-161123(P2017-161123)
(22)【出願日】2017年8月24日
(62)【分割の表示】特願2015-244121(P2015-244121)の分割
【原出願日】2011年10月21日
(65)【公開番号】特開2017-202385(P2017-202385A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2017年9月4日
(31)【優先権主張番号】13/277,979
(32)【優先日】2011年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/405,761
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512315175
【氏名又は名称】ジャストライト サージカル,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100141254
【弁理士】
【氏名又は名称】榎原 正巳
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ロス
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル ヘルファー
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−086776(JP,A)
【文献】 特表2001−506895(JP,A)
【文献】 特開平08−056955(JP,A)
【文献】 特許第6199949(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科器具に電力を供給する方法であって、
電力供給装置が、駆動周波数を有する非正弦波駆動電圧を発生させるステップと、
該電力供給装置が、前記駆動周波数の2倍の共振周波数を有し電流を制限するインピーダンスを呈するように構成された直列LC回路に、前記非正弦波駆動電圧を供給するステップと、
該電力供給装置が、前記直列LC回路の共振サイクルにおいて前記直列LC回路にエネルギを蓄積するステップと、
該電力供給装置が、前記共振サイクルにおいて、前記直列LC回路に蓄積されている実質的にすべてのエネルギを放電させるステップと、
該電力供給装置が、前記非正弦波駆動電圧から前記直列LC回路内に準正弦波電流を発生させるステップと、
を具備する方法。
【請求項2】
前記の電流を制限することが、前記直列LC回路内の前記準正弦波電流に対してインピーダンスを呈することを具備する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非正弦波駆動電圧が、パルス波形又は矩形波を有するパルス波形のうちの少なくとも一つである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記直列LC回路が、実質的に一定の駆動周波数の実質的に2倍の共振周波数を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記非正弦波駆動電圧がパルス波形であり、
該電力供給装置が、前記直列LC回路に蓄積されている実質的にすべてのエネルギを放電させるステップは、該電力供給装置が、前記直列LC回路内の前記準正弦波電流がパルス波形のスイッチング中に0アンペアに近づくように放電させるステップ、を具備する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記パルス波形が矩形波形を有し、
該電力供給装置が、前記直列LC回路に蓄積されている実質的にすべてのエネルギを放電させるステップは、該電力供給装置が、前記非正弦波駆動電圧のパルスの第2半期及び前記準正弦波電流の期間の第2半期に相当する期間において電力供給器に前記エネルギを放電させるステップ、を具備する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電力供給器がDCバスを具備する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記非正弦波駆動電圧が、電力供給器によって発生せしめられ、
該電力供給装置が、前記直列LC回路に蓄積されている実質的にすべてのエネルギを放電させるステップは、該電力供給装置が、前記エネルギを前記DCバスに放電させるステップ、を具備する、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
該電力供給装置が、前記直列LC回路に前記エネルギを再供給して戻すステップ、
を更に具備する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該電力供給装置が、前記直列LC回路に前記エネルギを再供給して戻すステップ、
を更に具備する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
電気外科器具用の電力供給装置であって、
駆動周波数を有する非正弦波駆動電圧を発生させるように構成された電力供給器と、
前記駆動周波数の2倍の共振周波数を有し、前記非正弦波駆動電圧を受電して準正弦波電流を供給するように構成された直列LC回路であって、
(a)電流を制限するインピーダンスを呈し、
(b)前記直列LC回路の各共振サイクルにおいてエネルギを蓄積し、
(c)前記各共振サイクルにおいて、前記直列LC回路に蓄積されている実質的にすべてのエネルギを放電させ、
(d)前記非正弦波駆動電圧から準正弦波電流を発生させる、
ように構成されている直列LC回路と、
を具備する電力供給装置。
【請求項12】
前記電力供給器が、パルス波形又は矩形波を有するパルス波形のうちの一つを発生させるように構成されている、請求項11に記載の電力供給装置。
【請求項13】
前記電力供給器は、電源と、hブリッジと、該hブリッジにDC電力を供給するように構成された降圧・昇圧変換器と、を包含し、
前記DC電力が、前記降圧・昇圧変換器の可変振幅を制御することによって、制御される、
請求項12に記載の電力供給装置。
【請求項14】
前記hブリッジが、前記電源から前記DC電力を受電し、前記駆動周波数で前記直列LC回路にパルス電圧を供給するように構成されている、請求項13に記載の電力供給装置。
【請求項15】
前記パルス波形が矩形波形を有し、
前記矩形波形のパルスごとの第1半期に、前記電源から前記hブリッジ及び前記直列LC回路にエネルギを移し、
前記矩形波形のパルスごとの第2半期に、前記直列LC回路から前記hブリッジ及び前記電源にエネルギを移す、
ように更に構成されている、請求項14に記載の電力供給装置。
【請求項16】
前記電源がDCバスを具備する、請求項13に記載の電力供給装置。
【請求項17】
前記直列LC回路が、前記非正弦波駆動電圧のパルスの第2半期及び前記準正弦波電流の期間の第2半期に相当する期間において、前記電力供給器に前記実質的にすべてのエネルギを放電させるように構成されている、
請求項16に記載の電力供給装置。
【請求項18】
前記直列LC回路に蓄積されている実質的にすべてのエネルギが、前記DCバスに放電される、
請求項17に記載の電力供給装置。
【請求項19】
前記電力供給器が、前記直列LC回路に前記エネルギを再供給して戻すように構成されている、
請求項18に記載の電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概略、手術装置に関する。本発明は、制限ではないが、特に、電気外科的に血管を封止するためのシステム、方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気外科器具は、最小侵襲外科処置において血管を永続的に閉じるために用いられる。圧力とエネルギとの組合せが、コラーゲンの溶融及び組織融合を生じさせる。この技術はすべてのほかの止血器具に代わって、迅速かつ効率的な血管封止を行う。成人の患者に対しては、いくつかの組織融合エネルギ装置が市場で承認されているが、小血管への応用及び処置のために設計された、類似の使い切り装置はない。
【0003】
従来の血管封止装置は、短絡又は開放されたとき、スパーク及び危険な電流スパイクを生じることがある。スパーク及び電流スパイクは、部分的には、従来装置のLC回路に蓄えられたエネルギだけでなく使用される高電流からも生じる。ここでLC回路は、電気外科器具に供給される正弦波出力を発生させるために用いられる。これらのLC回路はまた、共振周波数で駆動させることが多く、これは、負荷インピーダンスが無くなったときに、LC回路がほとんどインピーダンスとならず、電流スパイクを生じることを意味する。
【0004】
従来の血管封止装置はまた、大きなエネルギを蓄積するLC回路に大きなコンデンサ及びインダクタを用いており、したがって、電気外科手術の終了時にこれらの装置を素早く停止させることを難しくしている。
【発明の概要】
【0005】
図に示した本発明の例示実施例を以降に要約する。これらの実施例については、詳細な説明の項でより詳しく説明する。しかし、本発明を、この発明の概要又は詳細な説明の項で説明する形態に限定する意図はないことを理解されたい。当業者であれば、本願請求項に記載された発明の精神及び範囲の中に入る多くの変形物、均等物及び代替構成物があり得ることを理解するであろう。
【0006】
本発明の一実施例は、LC回路の出力を介して電気外科器具に準正弦波電流を供給する方法として特徴付けてもよい。特に、非正弦波又はパルス電圧は、LC回路の共振周波数の実質的に1/2の周波数でLC回路を駆動するために用いられる。
【0007】
本発明の別の実施例は、電気外科器具に電力を供給する方法として特徴付けてもよい。この方法は、実質的に一定の駆動周波数を有する非正弦波駆動電圧を発生するステップを含む。この方法は、上記の実質的に一定の駆動周波数の実質的に2倍の共振周波数を有するLC回路に非正弦波駆動電圧を供給するステップを更に含む。この方法はまた、非正弦波駆動電圧からLC回路内に準正弦波電流を発生させるステップも含む。最後に、本方法は、電気出力に準正弦波電流を供給するステップを含み、電気出力は、外科器具の電気入力に接続するように構成されている。
【0008】
本発明の別の実施例は、電気外科器具用の電力供給装置として特徴付けてもよい。この電力供給装置は、実質的に一定の周波数かつ可変振幅の非正弦波電圧を供給する電力供給装置を含む。電力供給装置はまた、非正弦波電圧を受電し、準正弦波電流を供給するように構成されたLC回路も含み、このLC直列回路の共振周波数は、上記の実質的に一定の駆動周波数の実質的に2倍である。この電力供給装置は、電気外科器具に準正弦波電流を供給するように構成された電気出力を更に含む。
【0009】
本発明の別の実施例はまた、電気外科器具用の電力供給装置として特徴付けてもよい。この電力供給装置は、可変振幅のDC電力を供給するように構成された電源を含む。電力供給装置はまた、DC電力を受電し、実質的に一定の駆動周波数かつ電源の可変振幅に応じた振幅のパルス電圧を生成するように構成されたパルス発生器も含む。電力供給装置は、誘導性部品及び容量性部品を直列に含むLC回路を更に含み、このLC回路は、パルス発生器からパルス電圧を受電し、パルス電圧と準正弦波電流とが逆極性であるとき、パルス発生器及び電源にエネルギを還流させる準正弦波電流を発生させるように構成される。さらに、電力供給装置は、準正弦波電流を電気外科器具に供給するように構成された電気出力を含む。
【0010】
本発明の別の実施例は、電気外科器具に電力を供給する方法として特徴付けてもよい。この方法は、実質的に一定の駆動周波数を有する非正弦波駆動電圧を発生させるステップを含む。この方法は、LC回路に非正弦波駆動電圧を供給するステップを更に含み、第1の発生ステップ及び供給ステップは、電力供給器によって実行される。この方法はまた、非正弦波駆動電圧から準正弦波電流を発生させるステップと、さらに、エネルギを電力供給器に還流させることによって、LC回路を周期的に放電させるステップと、を含む。最後に、この方法は準正弦波電流を電気出力に供給するステップを含み、電気出力は外科器具の電気入力に接続されるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の種々の目的及び利点、並びにより完全な理解は、以降の詳細な説明及び本願の請求項を、添付の図面と関係づけて参照することによって、明白になり、かつより容易に理解できるであろう。
【0012】
図1】電気外科器具に電力を供給する電力供給装置を示す図である。
図2】電気外科器具に電力を供給する電力供給装置の別の実施例を示す図である。
図3】(A)〜(F)は、LC直列回路内のインダクタ及びコンデンサの6個の代替配置を示す図である。
図4】低負荷インピーダンスに対する、ここで説明したLC回路のうち1又は複数からの電流出力を示す図である。
図5】高負荷インピーダンスに対する、ここで説明したLC回路のうち1又は複数からの電流出力を示す図である。
図6】電気外科器具に電力を供給する方法を示す図である。
図7】計算機システムの例示形態であって、当該計算機システム内で本発明の態様及び/又は方法のうちの任意の1又は複数を装置に実行させる命令集合が実行される形態の機械の一実施例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は電気外科器具用の電力供給装置を示している。電力供給装置100は、電力供給器102と、LC回路108と、電気出力110とを含み、電力供給装置100は電気外科器具114に接続され、電力を供給するように構成される。電力供給器102は、LC回路108(例えば、直列に接続されたコンデンサ及びインダクタ)に、非正弦波電圧(例えば、パルスDC電圧又は有限スイッチング時間を有する矩形波)を供給することができる。非正弦波電圧は、一定又は実質的に一定(例えば、±50ppm(0.005%))の駆動周波数及び可変振幅を有してもよい。
【0014】
LC回路108は非正弦波電圧を受電し、その電圧を準正弦波電流に変換する。非正弦波電圧、すなわち駆動電圧は、LC回路108の共振周波数に実質的に1/2で動作する。例示一定駆動周波数は225KHz〜275KHzの範囲を有し、当該範囲内の任意の一定駆動周波数に関して、±50ppmのジッタを含む。このジッタは電子回路(例えば、水晶発振器)に固有のものである。
【0015】
一定駆動周波数は初期に、LC回路108の共振周波数の1/2並びに寄生インダクタンス及び電気容量に調整してもよいが、外科手術ごとには変わらない(更なる調整は可能であるが、必要ではない)。いくつかの実施例においては、LC回路108の共振周波数は通常調整できない(コンデンサ及びインダクタは固定であると仮定し、種々のケーブル112の電気容量及びインダクタンスの変化は無視する)が、パルス発生器106の一定駆動周波数をLC回路108の共振周波数に揃う(例えば、一定駆動周波数が共振周波数の実質的に1/2である)ように調整することができる。LC回路108の共振周波数の実質的に1/2で動作させることによって、LC回路108は、LC回路108が自身の共振周波数又はその近傍で駆動されたとき観察される、無視できるか実質的に無視できるインピーダンスに比べると、LC回路108を通過する電流(準正弦波電流)に対してインピーダンスを示す。
【0016】
準正弦波電流(例えば、図4〜5の404及び504を参照)は電気出力110に供給される。電気出力110は、ケーブル112を介して電気外科器具114(例えば、バイポーラ器具)に接続され、準正弦波電流を供給するように構成される。準正弦波電流は負荷インピーダンスに応じて変化する。負荷インピーダンスが低い(例えば、6〜25Ω)ときは、準正弦波電流は、サイクルごとに極性反転(flip)(すなわち、180°位相偏移)するLC回路の減衰したリンギングのある出力に似ている。例えば、図4に示された電流404を参照されたい。負荷インピーダンスが(例えば、75〜256Ωに)増加したとき(例えば、電気外科封止の際に血管が加熱されたとき)、準正弦波電流は駆動信号(例えば、パルス波形)に似るようになる。このような高インピーダンスに対する例示準正弦波電流は、図5に見ることができる。
【0017】
以降、一定駆動周波数と呼ぶが、実質的に一定の駆動周波数も含まれることを理解されたい。含まれる一定駆動周波数の範囲は225〜275KHzであり、目標一定駆動周波数に対して、電子回路は±50ppmの周波数安定度すなわちジッタを有してもよい。以降、周波数の純粋な(absolute)倍数(例えば、2倍、3倍及び4倍)と呼ぶが、当業者であれば、周波数の倍数は、±25KHzの隣接周波数(例えば、一定周波数を250KHzとすると、225〜275KHz)を含むことは明らかである。
【0018】
一つの実施例においては、電力供給器102は電源104及びDCバス105を介して接続されたパルス発生器106を含む。電源104は、DCバス105を介してパルス発生器106に可変振幅のDC電力(正電流)を供給することができる。電源104はまた、パルス発生器106からDC電力(負電流)を受電することもできる。パルス発生器106は、可変振幅DC電力を受電して、一定駆動周波数を有し、電源104から受電した可変振幅に応じた振幅を有するパルス電圧に変換することができる。
【0019】
電力供給器102及び/又は含まれる電源104は一定電力モードで動作することができる。一定電力とは、電圧及び/又は電流が、所望の又は設定された電力出力を維持(±20%の誤差範囲内に)するために自動的に調整されることを意味する。例えば、負荷インピーダンスが増加して電流が減少すると、電流の減少を相殺するために電力供給器102の電圧出力が増加し、それによって一定電力を維持する。別の例においては、負荷インピーダンスが低下して電流が増加すると、一定電力出力を維持するために電力供給器102の電圧が低下する。このように、5Wに設定された一定電力に対して、一定電力は4〜6Wを含んでもよい。10Wに設定された一定電力に対しては、一定電力は8〜12Wを含んでもよい。15Wに設定された一定電力に対しては、一定電力は12〜18Wを含んでもよい。いくつかの非制限的例を示すとすれば、一定電力は、0〜20W、2〜15W、5〜10W、10〜14W又は5〜12Wを含んでもよい。負荷インピーダンスは主に、例えば電気外科器具の尖叉(tine)の間に挟まれたときの、電気外科器具によって手術されている組織のインピーダンスである。
【0020】
一つの実施例においては、電源104は、電流及び/又は電圧をアップコンバート又はダウンコンバートできる電力変換器(例えば、降圧・昇圧(buck−boost)変換器)を含む。電力変換器は、例えば、電気出力110又はその近傍の電流、電圧、電力及びインピーダンスのうち1又は複数を検出及び分析する帰還ループを介して、制御できる制御可能振幅を有してもよい。電力変換器は、電流の発生及び吸収双方を行うように構成された種類のものであってよい。例えば、電力変換器の1又は複数のコンデンサは、必要なときエネルギを吸収し、後でそのエネルギをLC回路108へ戻すことができる。エネルギを吸収できることによって、LC回路108は蓄積されたエネルギのいくらか又はすべてを周期的に(例えば、準正弦波電流の各パルスの期間中に)放電してDCバス105に還流させ、したがって、蓄積されたエネルギはほとんど乃至まったく累積しない。このことによって、従来の電力供給装置に比べて重大なスパーク及び電流スパイクを深刻でなくすることができる。
【0021】
電流スパイクは、負荷インピーダンスが急速に低下し、LC部品に蓄積されたエネルギが負荷に流れるときに生じる。このような電流スパイクに利用可能なエネルギは、従来、エネルギがLC回路に蓄積されるため望ましいレベルより多かった。さらに、従来のLC回路は共振周波数又はその近傍で駆動され、LC回路はインピーダンスがほとんどないか、無視できるため、電流は急速に上昇することがある。しかしここで、LC回路108のサイクルごとの期間中にエネルギが放電するときは、一つのサイクルで蓄積されたエネルギだけが、回路が短絡した条件下で放電に使われ、したがって、電流スパイク及びスパークは先行技術よりも深刻ではない。このような事象の深刻さは、LC回路108が共振周波数以外(例えば、共振周波数の1/2)で駆動されることによっても軽減される。その結果、LC回路108が駆動信号に対してインピーダンスとして働き、したがって、電流スパイクの際、絶対電流だけでなく電流の変化も制限することになる。
【0022】
LC回路にエネルギが蓄積されないことの更なる利点は、電気外科装置に送られる電力をより短時間で切断でき、したがって外科医が手術の終了時をより良く管理できるようになることである。さらに、LC回路に、先行技術より小さなインダクタ及びコンデンサを用いることによっても切断時間が短縮される。
【0023】
これに対して、スイッチングがLC回路108の共振周波数で起こったとすると、LC回路108は電流に対して0又は無視できるインピーダンスを呈することになる。その結果、電流スパイク及びスパークはより深刻になり、LC回路108内の実質的にすべてのエネルギを放電してDCバス105に還流することができなくなる。
【0024】
一つの実施例においては、パルス発生器106はhブリッジである。hブリッジは電源104からDC電力を受電し、LC回路108にパルス電圧(例えば、矩形波)を出力することができる。パルス電圧は、LC回路108の特性に基づいた一定駆動周波数(例えば、LC回路108の共振周波数)で供給される。例えば、実質的に一定な駆動周波数は、LC回路108の共振周波数の実質的に1/2に設定してもよい。換言すれば、LC回路108が自己の共振周波数で振動(ring)するように駆動されたとき、駆動パルスはLC回路108の1サイクルおきに極性を反転させてもよい。パルス電力の振幅は、電源104が供給するDC電力の振幅に従う。hブリッジは、電源104が電流を発生及び吸収できるように電流を発生及び吸収でき、LC回路108がサイクルごと1回の期間にエネルギを放電してDCバス105に還流できるようにする。このような期間は駆動電圧の各パルスの第2半期を含んでもよく、準正弦波電流の各周期の第2半期と関連することが望ましい。
【0025】
エネルギを放電してDCバス105に還流させるために、駆動電圧の極性を、純正弦波電流の零交差点に対して180°位相をずらし、かつ共振周波数の1/2に実質的に等しい周波数で切替えてもよい(低インピーダンスの場合)。このように動作させることによって、LC回路108は電流に対して実質的にインピーダンスを呈し、したがって、電流スパイクに対して上限を呈し、電流スパイク中の電流増加を軽減する。また、エネルギがLC回路108に発生及び累積できるようにする代わりに、共振サイクルごとの1/2期間に、蓄積されたエネルギは放電してDCバス105に還流する。
【0026】
例えば、低負荷インピーダンス(例えば、6〜12Ω)の場合、パルス発生器106からの正負の電圧パルスの第1半期に、エネルギはDCバス105からLC回路108及び電気外科器具114へ流れる。DCバス105は正電流を観測し、駆動電圧と準正弦波電流とは同一の極性を有する。電圧パルスの第2半期に、エネルギはLC回路108からDCバス105へ逆に流れ、エネルギは蓄積されて、その後、次の電圧パルスの第1半期にLC回路108及び電気外科器具114へ再供給される。DCバス105は負電流を観察し、エネルギがDCバス105に戻るときには、駆動電圧と準正弦波電流とは反対の極性を有する。
【0027】
LC回路108は、直列に接続された誘導性部品(例えばインダクタ)及び電気容量性部品(例えばコンデンサ)を含んでもよい。LC回路108内の誘導性部品及び電気容量性部品の種々の構成を図3に見ることができる。
【0028】
スイッチング損失を減少させるため、LC回路108の電流が実質的に最小のとき、すなわち電流が0アンペアに近づいたときに、パルスを切り替えてもよい。この方法は通常、電流がLC回路108の共振サイクルごとに1回、0アンペアを横切り、LC回路108の共振サイクルごとに1回、0アンペアに近づく、低インピーダンス時に可能である(図4参照)。スイッチングは、零交差点ではなく、準正弦波電流が0アンペアに近づく点又はその近傍で行うことが望ましい。高インピーダンス時には、準正弦波電流は低インピーダンスのときと同様な程度には0アンペアに近づかず(図5参照)、スイッチング損失は避けることがより困難である。
【0029】
電圧パルスは有限スイッチング時間を有することがあり、その場合、パルス電圧の位相は、有限スイッチング時間の始め、終わり又は中間のある部分が、LC回路108の準正弦波電流が0アンペアに近づくのと同じ瞬間に起きるように選択される(低インピーダンスの場合)。
【0030】
LC回路108は、自己の共振周波数の1/2で駆動してもよく、またパルス若しくは矩形波(又はあるほかの非正弦波駆動波形)で駆動してもよい。駆動電圧パルスの位相は、LC回路108の準正弦波電流が0アンペアに近づく瞬間に実質的に起きるようにしてもよい(低インピーダンスのとき)。この独特な駆動周波数及び位相設定は、エネルギを発生及び吸収できる電力供給器102の使用と共に、サイクルごとの一部期間でLC回路108がエネルギを放電して電力供給器102に還流できるようにし、したがってLC回路108に蓄積されるエネルギを減少させることができる。一つの実施例においては、パルス遷移の際に、LC回路108が当該回路に蓄積されている、実質的にすべてのエネルギを放電して電力供給器102に還流する。
【0031】
図2は、電気外科器具に電力を供給する電力供給装置の別の実施例を示している。電力供給装置200は、電源204と、パルス発生器206(例えばhブリッジ)と、LC回路208とを含む。電源204は、発生源222と、電力変換器(例えば降圧・昇圧変換器220)とを含んでもよく、DCバス205を介してパルス発生器206に接続される。LC回路208は、1又は複数の誘導性素子(例えばインダクタ242)と、1又は複数の電気容量性素子(例えばコンデンサ240)と、トランス246とを含んでもよい。電力供給装置200はまた、電気出力210を介してケーブル212に接続されるように構成され、ケーブル212は電気外科器具214(例えばバイポーラ器具)に接続される。電力供給装置200はまた、電気出力210又はその近傍で種々の電気特性(例えば、電圧、電流、電力、インピーダンス)を監視するための1又は複数の感知器250も含んでよい。1又は複数の感知器250は、電源204が発生したDC電力の振幅を制御するか、又は制御するための命令を与えるように構成された帰還制御器260に帰還信号を供給することができる。任意選択の周波数制御器270はパルス発生器206からのパルスの周波数を制御することができ、帰還によって制御してもよいし、メモリ(例えば、半導体メモリ若しくはディスクドライブメモリ)又はユーザ入力によって制御してもよい。
【0032】
電源204は、発生源222からの電力をアップコンバート及び/又はダウンコンバートできる降圧・昇圧変換器220のような電力変換器を含んでもよい。降圧・昇圧変換器は、可変又は制御可能な振幅を有するDC電力を発生し、振幅は帰還制御器260によって制御される。DC電力の振幅は、電流及び電圧制限のような種々の制限に依存してもよい。電流及び電圧制限は、短絡及び開放の回路異常に対する保護のために設けてもよい。これらの制限は外科医及び患者に対して安全を提供するだけでなく、予期しない電気現象も防ぐ。
【0033】
一つの実施例においては、1又は複数の感知器250は電気出力210又はその近傍の電流及び電圧に関する帰還を行う。帰還制御器260は、測定した電流及び/又は電圧を、電流及び/又は電圧の制限又はしきい値(例えば、最大電圧75ボルト、電流範囲1.3〜1.8アンペア)と比較する。測定した電流又は電圧が制限又はしきい値を超えたときは、帰還制御器260は電源204(又は電源204の降圧・昇圧変換器220)に電流及び/又は電圧を減少させるように指示又は通知してもよい。
【0034】
この減少は予め定めてもよいし(例えば、電流を50%削減)、電流及び/又は電圧の実時間測定値に基づいてもよい。例えば、電流又は電圧のどちらが制限を超えたとしても、電流が制限値以下に低下するまで減少させてもよい。減少率は、1又は複数の感知器250からの電流、電圧、電力及びインピーダンスの実時間測定値に基づいてもよい。例えば、電流又は電圧が一定の割合でしきい値を超えたか、一定の率でしきい値を超えつつあることが観察されたとき、電圧の減少は、電圧又は電流がしきい値を超えたか、電圧又は電流の増加率がそれほど大きくないときよりもより深刻なことがある。
【0035】
また、封止手術の際に組織に印加される所望の電力プロファイル(例えば、対称台形又は非対称台形)に基づいて選択することができる電力プロファイルによって規定された電力制限があってもよい。1又は複数の感知器250は電力を監視し、電力に関する情報を帰還制御器260に提供する。帰還制御器260は、監視した電力と電力プロファイル(例えば、メモリに記憶されている)とを比較して、監視した電力が電力プロファイルを超えているとき、電力を減少するように電源204(又は電源204の降圧・昇圧変換器220)に指示又は通知する。降圧・昇圧変換器220は、帰還制御器260が設定したしきい値又は制限を超えない、可能な限り最大の電力を供給するように、発生源220が供給する最高の電流又は電圧に向かって電力を増加させる傾向を有してもよい。
【0036】
しかし、電源204及び電源204の降圧・昇圧変換器220はDCバス205に一定電力を供給することが好ましいことに注意されたい。換言すれば、電源204又は降圧・昇圧変換器220は電流源(一定電流、可変電圧)であるか、電圧源(一定電圧、可変電流)であるよりも、一定電力出力が得られるように可変電流及び可変電圧を有してもよい。本質的に一定電力源であることの利点は、電圧又は電流のいずれかを制御することによって間接的に電力を制御するための帰還回路に関する臨界要求がないことである。このことは制御回路をより高信頼にし、そうでなければ従来の電圧又は電流源に関して起こる可能性がある過渡的なスパイクを除去することができる。
【0037】
一つの実施例において、帰還制御器260は、発生源222の出力端子間にインダクタを接続するスイッチ(例えばFET)を制御する。この状態で、インダクタの電流は、電流しきい値に達するまで、時間と共に線形に増加する。電流しきい値は、1又は複数の感知器250からの帰還に基づいてもよい。電流が電流しきい値に達すると、インピーダンスが如何に変化しても、電源204は異なる電流及び電圧を供給しつつ、同一の電力出力を維持するようになるため、電源204は一定電力を供給する。電源204の電流及び電圧は、インピーダンス変化の結果だけでなく、帰還制御器260が制御した一定電力出力の変化にも依存して自動的に変化する。
【0038】
帰還についての臨界要求とは、帰還システムが不安定になる前に、如何に早く帰還システムが運転できるかについて制限があることを意味する(例えば、臨界応答時にシステムが不安定になるまでは、応答が速いほど不安定性が大きくなる)。
【0039】
電源204及び降圧・昇圧変換器220はまた、電流を発生し、吸収することができる(電流が吸収されるとき、電圧は上昇する)。この特性はすべての電源に共通ではなく、LC回路208がエネルギをDCバス205に還流できるようにすることによって、LC回路208内にエネルギが蓄積しないようにするため、ここで独特な利点を提供するものである。換言すれば、電流を発生及び吸収できない電源は、電力供給装置200では可能な、電流スパイク及びスパークの軽減、又は急速な切断を達成できない。例えば、電源204は、電流を吸収し、LC回路208に吸収した電流を再供給することができるコンデンサバンク(図示していない)を備えた降圧・昇圧変換器を含んでもよい。吸収された電流は、LC回路208の次の共振サイクルにおいて、LC回路208に再供給することができる。
【0040】
パルス発生器206は、パルス又は矩形波のような非正弦波電圧を発生する。また、パルス発生器はhブリッジ又は任意のほかのスイッチモード電力供給装置の形態を取ることができ、パルス又は矩形波信号を発生することができる。hブリッジは、一つの実施例においては4個の電界効果トランジスタ(FET)を有し、その4個のFETは対角線状にオン・オフして、LC回路208に供給される電力の極性を交番するパルス電力又は矩形波を生成する。FETは、損失を最小化又は減少させるように選択される。パルス発生器206は電流を発生及び吸収することができ、電源204のように、独特な電流スパイク及びスパーク防止、及び電力供給装置200の急速切断を可能にする。パルス発生器206は、任意選択の周波数制御器270が指示した一定駆動周波数(例えば、250KHz±25KHz又は500KHz未満の任意の周波数)、かつ振幅が、電源204が供給するDC電力によって制御される可変振幅でパルスを発生する。一つの実施例においては、パルス発生器206は、恐らく±5ppmのジッタを有する、240KHzの一定駆動周波数を発生する。
【0041】
外科手術の際に、一定駆動周波数(パルスの周波数)は一定に保たれるが、電圧パルスの振幅は電源204を介して調整することができる。パルスの振幅の変化はLC回路208(負荷インピーダンスを含む)の準正弦波電流の形状に影響を与え、したがって、電気外科器具214に届けられる平均電力にも影響を与える。このように、電圧パルスの振幅の変化を用いて、外科手術(例えば、血管封止)の際に適用される電力プロファイルを追跡することができる。電源204が供給するDC電流及び電圧は、降圧・昇圧変換器220が(電力プロファイルの与えられた設定ポイントに関して)一定電力を出力するため、負荷インピーダンス(電気外科手術器具214のインピーダンス)が変化したとき、自動的に調整される。
【0042】
スイッチングは本質的にパルス又は矩形波として説明されるが、実際には、「パルス」は台形の形状を有している。換言すれば、あるパルスから次のパルスへのスイッチング時間は有限である。さらに、電力供給装置の回路はほぼ瞬時のスイッチング(又は純粋な矩形波)が可能であるが、この回路の最大性能はいつも利用できるとは限らず、スイッチングは離散的な跳躍ではなく、電圧及び/又は電流のわずかに傾斜した(ramping)上昇・下降を伴うことがある。スイッチング時間は有限であるから、一定駆動周波数は、パルス間の遷移が、実質的に、LC回路208内の準正弦波電流が(低インピーダンスにおいて)0アンペアに近づく時点又はその近傍で起きるように調整することができる。一つの実施例においては、パルス間の遷移は、LC回路208内の準正弦波電流が0アンペアに近づくのと実質的に同時に起きる。
【0043】
いくつかの実施例においては、任意選択の周波数制御器270は、一定駆動周波数でLC回路208にパルス電圧を供給するように、パルス発生器206に命令又は通知することができる。一定とは、ある組織手術又は血管封止手術の間、LC回路208に届けられるパルスの周波数が一定であることを意味する。別の実施例においては、一定駆動周波数がLC回路208の共振に同調する(例えば、LC回路208の共振周波数の1/2になる)ように、手術の合間に一定駆動周波数を調整してもよい。LC回路208の共振周波数は、LC回路108の誘導性(例えばインダクタ242)及び電気容量性(例えば240)の素子又は部品、並びに(例えば、LC回路208のトランス、及び技術的にはLC回路208の部分ではないケーブル212の)寄生効果に依存する。
【0044】
帰還機構を有するようには描かれていないが、代替実施例においては、任意選択の周波数制御器270は、LC回路208からLC回路208の電気特性(例えば、電圧、電流、電力、負荷インピーダンス、LC回路インピーダンス、コンデンサ240又はインダクタ242のインピーダンス又はリアクタンス、トランス246及びケーブル212の寄生効果のインピーダンス又はリアクタンス)を指示する帰還信号を受信することができる。
【0045】
LC回路208は、1又は複数の電気容量性素子(例えばコンデンサ240)と、1又は複数の誘導性素子(例えばインダクタ242)と、トランス246と、を含んでもよい。コンデンサ240とインダクタ242とは直列に配置してもよい(この配置の変形は図3に示されている)。トランス246もまた、電気外科器具214と電力供給装置200の残りの部分とを電気絶縁するために、LC回路208の二つの導線又は電線間に配置してもよい。トランス246は1:4の巻数比(1次:2次)を有し、表皮効果を最小にするように選択した直径を有する電線(例えば細心電線)を用いて、磁性体コアの周りに巻かれる。一つの実施例においては、トランス246からの漏えいインダクタンスは、5μHを超えない程度である。
【0046】
コンデンサ240は、LC回路208に蓄積される電荷が少ないように、この容量で用いられる従来のコンデンサより少ない電気容量を有するように選択してもよい。LC回路208に蓄積されるエネルギが低いということは、短絡又は開放の際に、電気外科器具214に放電されるエネルギが少ないことを意味する。蓄積されるエネルギが少ないということは、より大きな誘導性部品及び電気容量性部品を用いた装置よりも迅速に電力を切断できることを意味する。特に、コンデンサ240の例示電気容量値は、制限ではないが、0.01〜1μFを含む。
【0047】
インダクタ242は個別インダクタであってもよい。しかし、パルス発生器206が供給するパルス電圧の一定駆動周波数を決定するとき、LC回路208のインダクタンスは、個別インダクタ242並びにトランス246及びケーブル212、更には電気外科器具214からの寄生インダクタンスを含むように考慮してもよい。換言すれば、パルス発生器206が同調しているLC回路208の共振周波数は、ケーブル212の寄生効果及びLC回路208の外部の器具214の寄生効果さえ考慮に入れる。
【0048】
コンデンサ240は個別部品であってよい。そして、インダクタンスのように、LC回路208の共振周波数を決定するために用いられる電気容量は、コンデンサ240並びにLC回路208の内部及び外部の寄生電気容量にも依存することがある。
【0049】
一つの実施例においては、誘導性回路は、互いに直列又は並列に接続された2又はそれ以上の誘導性素子を備える。電気容量性回路は、互いに直列又は並列に接続された2又はそれ以上の電気容量性素子を備える。
【0050】
1又は複数の感知器250は、電流及び電圧センサを含んでもよい。また、電力感知器があってもよいし、電流及び電圧感知器からの信号を用いて電力を計算してもよい(例えば、電圧×振幅)。また、LC回路208のインピーダンスだけでなく、負荷インピーダンスを測定するインピーダンス感知器があってもよいし、電流及び電圧感知器によって測定した電流及び電圧に基づいて、これらのインピーダンスを計算してもよい。測定は、出力210又はその近傍で行うことができる。一つの実施例においては、1又は複数の感知器250は、例えばトランス(図示していない)を用いて電気外科器具214から絶縁してもよい。
【0051】
一つの実施例においては、ケーブル212、電気外科器具214及び/又は手術を行う組織の変化に適応するように、インダクタ242及びコンデンサ240を(例えば、機械的又は電気的いずれかによって)調整して、LC回路208のインピーダンス及びリアクタンスを変更し、それによって更新周波数を変更することができる。例えば、電力供給装置200に接続されている別の電気外科器具214を扱う(account for)ために、電気的に変更してもよい。
【0052】
この電力供給装置200は、低負荷インピーダンスにおいて、電力供給装置200が高電流を組織に供給し、一方、高負荷インピーダンスにおいては(封止が完了に近づいたとき)高電圧を供給するという望ましい動作を本質的に行うため、有利である。特に、電源204のような一定電源を使用すると、電流源又は電圧源が用いられるときには達成されないこれらの電気特性が本質的に得られる。例えば、一定電力が用いられているため、電流に対する電圧の比はインピーダンスに等しい。したがって、負荷が増加すると電流に対する電圧の比が増加する。
【0053】
図3の(A)〜(F)は、LC回路208内のインダクタ242及びコンデンサ240の配置に関する6個の代替案を示している。これらの構成はそれぞれ、インダクタ及びコンデンサを直列に含むLC回路、すなわち直列LC回路(例えば、LC回路208)の本発明における定義内に入るものである。図示した構成はそれぞれ、図2のLC回路208に置き換えてもよく(図3の(A)は、図2のLC回路208と同一である)、パルス発生器206は図3の左側であり、電気出力210は右側である。
【0054】
図4は、低負荷インピーダンスに関して、ここで説明したLC回路のうち1又は複数の電流を示している。このような低負荷インピーダンスは、血管封止のような外科手術の開始時及び初期段階で観察されることがある。LC回路は、図1〜2に示した形態(例えば、108、208)であってもよい。LC回路108、208は直列回路であるから、LC回路108、208に入る電流404と、LC回路108、208内部の電流と、LC回路108、208から出る電流は同一である。同様に、パルス発生器(例えば106、206)とLC回路108、208との間の電流404及び電気外科器具(例えば114、214)に供給される電流もまた、図4の電流404によって表される。低インピーダンスは6〜25Ωの負荷インピーダンスを含んでもよいが、それに限定されない。
【0055】
パルス発生器106、206からLC回路108、208への駆動電圧402は、ここでは矩形波として示されており(ほかの非正弦波も想定されるが)、LC回路108、208の共振周波数の1/2で切り替えられる。電流404は駆動電圧402と同相であり、電流404のサイクルごと、そして駆動電圧402のサイクルごとに2回、180°位相偏移する。180°位相偏移又は極性反転は、およそ96μs、98μs、100μs、102μs及び104μsで起こる。
【0056】
図4の波形の時間及び電流の値は任意に与えられたものであり、したがって、本発明の範囲を制限する意図はないことに注意されたい。駆動電圧402は任意の電圧で示されており、電流404に対して必ずしも正確な縮尺にはなっていない。
【0057】
図から分かるように、電流404は、パルス発生器106、206からの駆動電圧402が切り替えられるごとに、180°位相偏移又は極性反転する、振幅抑圧された(dampened)正弦波に似ている。電流404は、97μs、99μs、101μs及び103μsの近傍で0アンペアを横切る。電流は、96μs、98μs、100μs、102μs及び104μs、又はその近傍で0アンペアに近づく。図示したとおり、電流404は駆動電圧402が切り替えられるとき、0アンペアに達しないが、別の実施例においては、使用された回路は、駆動電圧402が切り替えられるとき、電流が0アンペアに達するようになっている。
【0058】
DCバス(例えば105、205)は、駆動電圧402及び電流404が同一極性のときはいつでも、LC回路108、208及び電気外科器具114、214にエネルギを供給する。例えば、エネルギは、96〜97μs、98〜99μs、100〜101μs、102〜103μs及び104〜105μsの期間に、LC回路108、208及び電気外科器具114、214に供給される。これらの期間中、DCバス105、205内の電流は正である。駆動電圧402と電流404が逆極性を有するときはいつでも、エネルギはDCバス105、205に還流し、LC回路108、208から放電される。例えば、エネルギは、95〜96μs、97〜98μs、99〜100μs、101〜102μs及び103〜104μsの期間にDCバス105、205に還流し、LC回路108、208から放電される。
【0059】
このように、DCバス105、205は、パルス発生器106、206からの駆動電圧402のパルスごとの第1半期に電流及び電圧を供給し、駆動電圧402のパルスごとの第2半期に電流及び電圧を吸収する。その結果、パルス切替え又はその近傍において、LC回路108、208内に蓄積された実質的にすべてのエネルギが放電され、DCバス105、205に戻される。したがって、駆動電圧402のパルスの始めでは、LC回路108、208は実質的に蓄積されたエネルギがない。これに対して通常のLC回路では、LC回路サイクルを通じて、インダクタ及びコンデンサが相当量のエネルギを交互に蓄積している。
【0060】
図5は、高負荷インピーダンスに対する、ここで説明したLC回路のうち1又は複数の電流出力を示している。このような高負荷インピーダンスは、血管封止のような外科手術の終わり近く又は後半に観察されることがある。LC回路は、図1〜2に示した形態(例えば108、208)であってもよい。高インピーダンスは75〜256Ωの負荷インピーダンスを含んでもよいが、それに限定されない。
【0061】
パルス発生器106、206からLC回路108、208への駆動電圧502は、ここでは矩形波として示されており(ほかの非正弦波波形も想定されるが)、LC回路108、208の共振周波数の1/2で切り替えられる。電流504は駆動電圧502と同相であり、電流504のサイクルごと、そして駆動電圧502のサイクルごとに2回、180°位相偏移する。180°位相偏移又は極性反転は、およそ10μs、12μs、16μs及び18μsで起こる。
【0062】
図5の波形の時間及び電流の値は任意に与えられたものであり、したがって、本発明の範囲を制限する意図はないことに注意されたい。駆動電圧502は任意の電圧で示されており、電流504に対して必ずしも正確な縮尺にはなっていない。
【0063】
低インピーダンスの場合の電流404と異なり、LC回路108、208における振動は十分に抑圧され、図4において見られる電流404の正弦波形状は、図5では見られない。むしろ、電流504は、10μs、12μs、14μs、16μs及び18μs、又はその近傍で切り替えられるパルス駆動電圧502により近い。換言すれば、電流504が0アンペアを横切る点又はその近傍でスイッチングが起きる。また、図4に示した低インピーダンスの状況と異なり、より高いインピーダンスでは、エネルギはDCバス105、205からLC回路108、208及び電気外科器具114、214にだけ供給される。図から分かるように、電流504及び駆動電圧502は常に同一極性であり、したがって、エネルギはDCバス105、205には還流しない。
【0064】
図6は、電気外科器具に電力を供給する方法を示している。方法600は、第1の発生動作602において一定駆動周波数を有する非正弦波駆動電圧を発生する第1のステップを含む。方法600はさらに、第1の供給動作604において、駆動周波数の2倍の共振周波数を有する、LC回路に非正弦波駆動電圧を供給するステップを含む。方法はまた、第2の発生動作606において、非正弦波駆動電圧から準正弦波電流を発生する。最後に方法100は、第2の供給動作608において、電気出力に準正弦波電流を供給する。第2の供給動作608において、電気出力は、外科器具の電気入力に接続するように構成されている。
【0065】
発生動作602は、例えば電力供給器102(図1参照)又は電源204とパルス発生器206との組合せ(図2参照)によって行われる。非正弦波駆動電圧は矩形波のようなパルス波形であってもよく、波形は、降圧・昇圧変換器220を含んでもよい電源204からDC電力を受電するパルス発生器206のhブリッジを介して整形される。一定駆動周波数は、動作周波数制御器270のような制御器によって制御してもよい。
【0066】
第1の供給動作604は、非正弦波電圧をLC回路(例えば、LC回路108)に供給してもよい。非正弦波駆動電圧は、外科手術に先立って(例えば、製造時又は技術者による調整期間に)LC回路の共振周波数の1/2に等しい周波数(例えば、共振周波数の1/2)に調整してもよい。LC回路をその共振周波数の1/2の周波数で駆動することによって、LC回路は、駆動信号とLC回路を通過する電流とに対して、電流スパイク及びスパークを軽減するインピーダンスを呈する。LC回路をその共振周波数の1/2で駆動することはまた、LC回路が共振サイクルごとに蓄積されたエネルギを放電して、電源(例えば電源204)に戻すようにし、それによって電流スパイク及びスパークに利用される蓄積されたエネルギより少なくする。蓄積されるエネルギレベルがより低いことはまた、外科手術が終わったとき、より速い切断時間を可能にする。また、電流スパイク及びスパークは、LC回路のインピーダンスが電流変化を制限し、電流に上限を設けるため、先行技術に比べてより深刻ではない。
【0067】
共振周波数は、LC回路の個別コンデンサ及び誘導素子の電気容量及びインダクタンス、並びに寄生電気容量及びインダクタンス(例えば、トランス246及びケーブル212)に基づいて決定される。
【0068】
第2の発生動作606は、LC回路の回路208のような回路を用いて、準正弦波電流を発生する。例えば、LC回路208において、パルス電圧が、図4〜5に示した準正弦波電流に変換される。準正弦波電流は、第2の供給動作608において、出力110、210のような電気出力に供給される。電気出力はケーブル(例えばケーブル212)に接続されるように構成し、ケーブルは外科器具(例えば外科器具214)に接続される。
【0069】
ここで説明したシステム及び方法は、ここで説明した特定の物理的装置に加えて、計算機システムのような機械で実現してもよい。図7は、計算機システム700の例示形態の機械の実施例を表すブロック図であって、当該システムにおいて、本発明の態様及び/又は方法の任意の1又は複数を装置に実行させる命令集合が実行される。計算機システム700はプロセッサ705(又はCPU)及びメモリ740を含み、プロセッサ及びメモリは、バス755を介して互いに、及びほかの構成要素と通信する。例えば、帰還制御器260及び/又は任意選択の周波数制御器270は、プロセッサ705のようなプロセッサを含んでもよい。バス755は、種々のバスアーキテクチャのうち任意のものを用いた、メモリバス、メモリ制御器、周辺機器バス、局所バス及びそれらの任意の組合せを含むが、それに限定されない、いくつかの種類のバス構造のうち任意のものを含んでもよい。
【0070】
メモリ740は、ランダムアクセスメモリ構成要素(例えば、スタチックRAM“SRAM”、ダイナミックRAM“DRAM”、EEPROM、等)、リードオンリメモリ、及びそれらの任意の組合せを含むが、それに限定されない種々の構成要素(例えば、機械可読媒体)を含んでもよい。一つの例においては、例えば起動時に計算機システム700内の要素間で情報を転送することを補助する基本ルーチンを含む基本入出力システム742(BIOS)を、メモリ740に記憶させてもよい。メモリ740はまた、本発明の態様及び/又は方法のうち任意の1又は複数を実現する命令又はコード(例えばソフトウェア)を含んで(例えば、1又は複数の機械可読媒体に記憶して)もよい。別の例においては、メモリ740はさらに、オペレーティングシステム744と、1又は複数の応用プログラム746と、ほかのプログラムモジュール746と、プログラムデータ746と、それらの任意の組合せとを含むが、それに限定されない任意の数のプログラムモジュールを含んでもよい。例えばメモリ740は、帰還制御器260(図2参照)のような制御器が、電源204のような電源を制御するために用いる所望の電力プロファイルを記述したデータを記憶してもよい。メモリ740はまた、一定駆動周波数と、電力供給装置20と共に用いられる電気外科器具214の種別に応じた可変振幅との設定を記述したデータを含んでもよい。メモリ740はまた、帰還制御器260が、電圧及び電流スパイクを軽減し、電力が電力プロファイルに従う(track)ことを支援するために用いる、電圧、電流及び電力のしきい値を含んでもよい。
【0071】
計算機システム700はまた記憶装置720も含む。記憶装置(例えば、記憶装置720)の例は、ハードディスクを読み書きするハードディスクドライブと、着脱可能磁気ディスクを読み書きする磁気ディスクドライブと、光媒体(例えばCD、DVD、等)を読み書きする光ディスクドライブと、半導体メモリ装置と、それらの任意の組合せとを含むが、それに限定されない。記憶装置720は、適切なインタフェース(図示していない)によってバス755に接続される。インタフェースの例は、SCSIと、ATAと、シリアルATAと、USBと、IEEE1394と、これらの任意の組合せと、を含むがそれに限定されない。一つの例においては、記憶装置720は計算機システム700と着脱可能に(例えば、外部ポートコネクタ(図示していない)を介して)接続してもよい。例えば、システム700は計算機可読記憶媒体リーダ725を含んでもよく、関連する機械可読媒体(図示していない)は、計算機システム700のための機械可読命令、データ構造、プログラムモジュール及び/又はほかのデータの不揮発性及び/又は揮発性記憶を提供する。一つの例において、ソフトウェア746は機械可読媒体内に全体又は一部があり、計算機可読記憶媒体リーダ725を介して利用することができる。別の例においては、ソフトウェア746はプロセッサ705内に全体又は一部があってもよい。
【0072】
計算機システム700はまた入力装置710も含んでよい。一つの例においては、計算機システム700の利用者は、入力装置710を介して計算機システム700にコマンド及び/又は別の情報を入力してもよい。入力装置710の例は、英数字入力装置(例えばキーボード)と、指示装置と、ジョイスティックと、ゲームパッドと、音響入力装置(例えば、マイクロホン、音声応答システム、等)と、カーソル制御装置(例えばマウス)と、タッチパッドと、光学スキャナと、映像キャプチャ装置(例えば、スチルカメラ、ビデオカメラ)と、タッチスクリーンと、これらの任意の組合せと、を含むが、それに限定されない。入力装置710は、シリアルインタフェースと、パラレルインタフェースと、ゲームポートと、USBインタフェースと、Firewire(登録商標)インタフェースと、バス755への直接インタフェースと、これらの任意の組合せとを含むがそれに限定されない種々のインタフェースのうち任意のものを介して、バス755に接続してもよい。例えば、利用者は入力装置740を介して任意選択の周波数制御器270に一定駆動周波数を入力することができる。
【0073】
利用者はまた、計算機可読記憶媒体リーダ725(例えば、着脱可能ディスクドライブ、フラッシュドライブ、等)及び/又は通信システム730を介して、計算機システム700にコマンド及び/又はほかの情報を入力することができる。通信システム730は、計算機システム700を種々のネットワークのうち1又は複数及び1又は複数の遠隔装置に接続するために用いてもよい。通信システムの例は、ネットワークインタフェースと、モデムと、これらの任意の組合せと、を含むが、これに限定されない。ネットワーク又はネットワークセグメントの例は、広域網(例えば、インターネット、企業内網)と、構内網(例えば、オフィス、ビル、キャンパス又は比較的小さな地理的空間に関係するネットワーク)と、電話網と、二つの計算装置間の直接接続と、これらの任意の組合せと、を含むが、これに限定されない。ネットワークは有線及び/又は無線モードの通信を利用してもよい。一般に、任意のネットワークトポロジを用いてもよい。情報(例えば、データ、ソフトウェア746、等)は、通信システム730を介して計算機システム700へ及び/又は計算機システムから伝送することができる。
【0074】
計算機システム700はさらに、表示装置のような周辺装置と通信するための出力装置(例えば、ビデオディスプレイアダプタ)を含んでもよい。表示装置の例は、液晶ディスプレイ(LCD)と、陰極線管(CRT)と、プラズマディスプレイと、これらの任意の組合せと、を含むが、これに限定されない。表示装置に加えて、計算機システム700は、スピーカと、プリンタと、これらの任意の組合せとを含むがそれに限定されない1又は複数のほかの出力装置715を含んでもよい。このような出力装置715は、周辺装置インタフェースを介してバス755に接続してもよい。周辺装置インタフェースは、シリアルポートと、USB接続と、Firewire(登録商標)接続と、パラレル接続と、これらの任意の組合せと、を含むがこれに限定されない。一つの例においては、音響装置は、計算機システム700のデータ(例えば、恐らく消費者に起因する汚染の影響及び/又は汚染の相殺に関係する指標を表すデータ)と関係する音響を提供してもよい。
【0075】
必要であれば、手書き入力をデジタル的にキャプチャするためにデジタイザ(図示していない)及び付属するスタイラスを含んでもよい。ペンデジタイザは、表示装置の表示領域とは別個に構成してもよいし、同一領域に構成してもよい。したがって、デジタイザは表示装置と一体であってもよいし、表示装置に被せるか、別様に付加する個別の装置として存在してもよい。
【0076】
結論として、本発明はとりわけ、LC回路をその共振周波数の1/2の周波数で駆動し、電気外科器具が使用するためにLC回路から準正弦波電流を供給する、方法、システム及び装置を提供する。準正弦波電流は、先行技術と比べて電流スパイク及びスパークがより深刻ではない。当業者であれば、ここで説明した実施例が達成するのと実質的に同じ結果を達成するために、本発明と、その使用と、構成とに、多くの変形及び代替を行ってもよいことを容易に理解するであろう。したがって、本発明を開示した例示形態に限定する意図はない。多くの変形と、修正物と、代替構成とは、開示した発明の範囲及び精神の中に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7