特許第6571733号(P6571733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571733
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】回転角を特定するための角度測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/30 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   G01D5/30 A
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-169676(P2017-169676)
(22)【出願日】2017年9月4日
(65)【公開番号】特開2018-87805(P2018-87805A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2018年1月30日
(31)【優先権主張番号】16194205.7
(32)【優先日】2016年10月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504395165
【氏名又は名称】ジック シュテークマン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】SICK STEGMANN GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ホップ
【審査官】 岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平9−203625(JP,A)
【文献】 特開平5−118818(JP,A)
【文献】 特開平4−230802(JP,A)
【文献】 特開2016−76104(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2950056(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26− 5/38
G01B11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転式のシャフト(W)の回転角(φi)を特定するための角度測定装置(10)であって、
光線(1a)を発射するための発光器(1)と、
発射された光線(1a)を通過させて変調するための透明な変調器(2)であって、その法線が前記シャフト(W)の回転軸(A)と非ゼロの角度(α)を成すように該シャフト(W)に取り付けられた変調器と(2)、
前記変調器(2)の回転時に自身の表面上で動く光点(P1〜Pi)を検出してそれに応じた受光器信号を出力するための受光器(3)であって、感光面を備え、入射光点(P1〜Pi)を位置分解的に検出する少なくとも1つの受光器(3)と、
前記受光器信号を評価して回転角(φi)を特定するための評価ユニットであって、前記受光器(3)上における光点(P1〜Pi)の位置からそれに対応するシャフト(W)の回転角(φi)を特定するように構成された評価ユニットとを備える装置において、
前記透明な変調器(2)が所定の厚さ(t)、所定の直径(d)及び所定の相対屈折率(n2)を有する平行平面板を含み、
前記受光器(3)が入射光点(P1〜Pi)を2次元的に位置分解して検出し、該光点(P1〜Pi)が前記受光器(3)上で2次元的な、理想的には円形の軌道(B)を描くこと、及び
前記評価ユニットが、所定の間隔で並ぶ光点(Pi)の列を、少なくとも3つの相前後する光点(P1〜Pi)からそれぞれ成るグループに連続的に区分し、グループ毎に、前記受光器(3)上で該グループに対応する軌道(B)に対応する中心点(M0〜Mm)を計算し、その際、該評価ユニットが、光点(Pi)のグループのうち2つの相前後するグループの2つの計算された中心点(M0〜Mm)の間のずれを回転角(φi)の特定の際に該回転角(φi)の補正値として考慮すること
を特徴とする角度測定装置(10)。
【請求項2】
前記受光器の座標系の参照座標(y0、x0)が出発中心点(M0)として前記評価ユニットに予め設定され、該評価ユニットが前記参照座標(y0、x0)を基準として前記少なくとも3つの光点(P1、P2、P3)から成るグループの1番目の光点(P1)を計算することを特徴とする請求項1に記載の角度測定装置(10)。
【請求項3】
前記回転角(φi)が次の式
φi=arctan[(yi−ym)/(xi−xm)]
で計算可能であること、ただし、ρiは現在の回転角を表し、yi及びxiは現在の光点の現在のy座標及びx座標、ym及びxmは直前の光点グループの中心点(Mm)乃至は出発中心点の座標、そしてi及びm=i−1は自然数であること
を特徴とする請求項2に記載の角度測定装置(10)。
【請求項4】
各グループの光点(P1〜Pi)が互いに所定の幾何学的な間隔を空けており、該間隔が好ましくは2つの光点(P1〜Pi)間のベクトルの最小長に相当することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の角度測定装置(10)。
【請求項5】
前記少なくとも3つの光点(P1〜Pi)から成るグループの列が、次のグループでその前のグループの1番目の光点(P1)を外すとともに該前のグループの3番目の光点(P3)に続く光点(P4)を追加するという操作を連続的に行う、という方法で形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の角度測定装置(10)。
【請求項6】
前記少なくとも3つの光点(P1〜Pi)から成るグループの列に対応して各グループに属する中心点(M0〜Mm)の列を求めることができることを特徴とする請求項5に記載の角度測定装置(10)。
【請求項7】
前記評価ユニットが、検出された光点(P1〜Pi)及び/又は算出された中心点(M0〜Mm)に対し、平均値の計算又は期待値の統計的予測を用いて妥当性検査を実施することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の角度測定装置(10)。
【請求項8】
前記受光器(3)がPSD素子又はフォトダイオードアレイを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の角度測定装置(10)。
【請求項9】
回転式のシャフト(W)の回転角(φi)を特定するための角度測定装置(10)であって、
変調器(2)を平面的に照明するための発光器(1)と、
発せられた光を通過させて変調するための透明な変調器(2)であって、その法線が前記シャフト(W)の回転軸(A)と非ゼロの角度(α)を成すように該シャフト(W)に取り付けられた変調器と(2)、
前記変調器(2)が平面的に照明されることにより生じる、受光器(3)上で動く影を検出してそれに応じた受光器信号を出力するための受光器(3)であって、感光面を備え、前記影を位置分解的に検出する少なくとも1つの受光器(3)と、
前記受光器信号を評価して回転角(φi)を特定するための評価ユニットであって、前記受光器(3)上における前記影の位置からそれに対応する回転角(φi)を特定するように構成された評価ユニットとを備える装置において、
前記透明な変調器(2)が所定の厚さ(t)、所定の直径(d)及び所定の相対屈折率(n2)を有する平行平面板を含み、
前記受光器(3)が前記影を2次元的に位置分解して検出し、該影が前記受光器(3)上で2次元的な、理想的には円形の軌道(B)を描くこと、及び
前記評価ユニットが、所定の間隔で並ぶ前記影の列を、少なくとも3つの相前後する影からそれぞれ成るグループに連続的に区分し、グループ毎に、前記受光器(3)上で該グループに対応する軌道(B)に対応する中心点(M0〜Mm)を計算し、その際、該評価ユニットが、影のグループのうち2つの相前後するグループの2つの計算された中心点(M0〜Mm)の間のずれを回転角(φi)の特定の際に該回転角(φi)の補正値として考慮すること
を特徴とする角度測定装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載の、回転角を特定するための角度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的な回転角を求めるための動作原理、技術及び装置には分解能や精度の異なる多種多様なものがある。角度測定の精度乃至は再現性を保証するためには、機械的な構成要素やその許容誤差、調整に関して少なからぬ費用がかかることがほとんどである。
【0003】
従って、新しい角度測定技術の探求に際しては、できるだけ頑強な、つまり許容誤差に左右されない技術、特に装置の空間内における機械的な自由度が角度測定に及ぼす影響を低減する技術を見出すよう努めることが常に目標の1つとなる。例えば、角度測定では、空間内で考え得る6つの自由度のうち1つ、つまり3通りの回転のうち1つが信号として検出される。この信号は原理的に他の5つの自由度による干渉を受ける。それ故、機械的な許容誤差の影響を最小化する及び/又は補償するために様々な複雑な付加物が設けられる。この付加物にはコストのかかる軸受け又は調整装置もあれば、冗長性を持った信号記録装置もある。例えば、従来のコード板は、2つの読み取りヘッドを直径上で対称に配置することによりその偏心が補償される。ほぼ全ての自由度に対して実際に頑強な装置は対称型の配置で組み立てられることが多く、これもまたコストがかかり、高価である。
【0004】
光学的なセンサの場合、例えば、発光器となる光源を受光器となる検出器又は検出器アレイに対して適切な正確さで位置決めすることが重要であることが多い。これにはもちろん、固定される構成要素(発光器と受光器)同士の正確な位置決めが必要となるのが普通である。加えて、回転式のコード板を発光器及び/又は受光器に対して調整しなければならない。
【0005】
2つのセンサ要素同士の相対位置は、センサの組み立て後、横方向(例えばセンサ要素が配置された回路基板の表面の方向や他の任意の平面の方向)に不正確となることが避けられない。高さ方向のずれ又は傾きが生じ得る場合はそれが不正確さにつながることもある。
【0006】
多くのセンサ用途では、センサ構造の構成要素の能動的な調節により信号の質乃至は精度が高められる。即ち、追加的な機構(例えば光学素子の位置調節装置)によりセンサ要素同士の位置を能動的に調節するのである。これはもちろん、より多くの構造技術や時間、費用の投入が必要であることを意味する。更にセンサのコンパクト性が損なわれる。
【0007】
特許文献1から知られている回転角測定用のセンサ装置では、偏光子がシャフトに取り付けられており、その取り付けが、偏光子の法線がシャフトの回転軸に対して非ゼロの角度を成すように行われている。これにより、シャフトの回転時に偏光子が揺動する。偏光子に対向して発光器と受光器が配置されており、発光器から発射された光線が偏光子により偏光させられ、該偏光子から受光器の表面へ反射される。この偏光した反射光線の光強度は偏光子を経ることで変化しており、受光器はその光強度を検出する。検出された光強度から評価ユニットが偏光子の回転角、つまりシャフトの回転角を求めることができる。
【0008】
このセンサ装置の配置、特に発光器、偏光子及び受光器同士の配置は反射を基礎としているため、回転角の特定は構成要素の正確な配置に非常に強く依存する。即ち、回転角の特定精度がシャフトの横方向の動きに大きく左右される。加えてその精度はシャフトの傾きに左右される。
【0009】
更に、光強度の測定と評価には複雑な設計の評価ユニットが必要となる。
【0010】
特許文献2は、請求項1のプレアンブルに記載の特徴を有する角度測定装置、特に電位差計を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第2657652号明細書
【特許文献2】特開平8−50036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
故に、本発明の課題は、回転式のシャフトの回転角を特定するための角度測定装置であって、機械的な許容誤差、特にシャフトの横方向及び軸方向の動きに対して不変であるように設計された角度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する本発明に係る角度測定装置により解決される。
【0014】
本発明に係る回転式のシャフトの回転角を特定するための角度測定装置は、光線を発射するための発光器と、発射された光線を通過させて変調するための透明な変調器であって、その法線が前記シャフトの回転軸と非ゼロの角度を成すように該シャフトに取り付けられた変調器と、前記変調器の回転時に自身の表面上で動く光点を検出してそれに応じた受光器信号を出力するための受光器であって、感光面を備え、入射光点を位置分解的に検出する少なくとも1つの受光器と、前記受光器信号を評価して回転角を特定するための評価ユニットであって、前記受光器上における光点の位置からそれに対応するシャフトの回転角を特定するように構成された評価ユニットとを備え、前記透明な変調器が所定の厚さ、所定の直径及び所定の相対屈折率を有する平行平面板を含み、前記受光器が入射光点を2次元的に位置分解して検出し、前記光点が前記受光器上で2次元的な、理想的には円形の軌道を描く。
【0015】
このようにすれば、透明な変調器の揺動と透過式の原理により、回転角の特定をシャフトの自由度に左右されずに実行できるという利点がある。また、受光器上の光点の位置から直接回転角を特定するため、評価ユニット用の評価論理回路をより簡素化することができる。更に、本発明に係る角度測定装置には、簡単、安価、そしてコンパクトに製造できるという利点がある。
【0016】
別の好ましい実施例では、評価ユニットが、所定の間隔で並ぶ光点の列を、少なくとも3つの相前後する光点からそれぞれ成るグループに連続的に区分し、グループ毎に、光点がその表面上で動いている受光器上で該グループに対応する軌道に対応する中心点を計算し、その際、評価ユニットが、光点のグループのうち2つの相前後するグループの2つの計算された中心点の間のずれを回転角の特定の際に該回転角の補正値として考慮する。このようにすれば、補正値を考慮して角度測定装置の自動較正を行うことが可能になるため、回転角の特定がより正確になるという利点がある。
【0017】
別の好ましい実施例では、受光器の座標系のゼロ点座標が出発座標として評価ユニットに予め設定され、該ゼロ点座標を基準として、前記少なくとも3つの光点から成るグループの1番目の光点を計算することができる。有利な方法として、ρi=arctan2(yi−ym/xi−xm)という式で回転角を求めることができる。ここで、ρiは現在の回転角を表し、yi及びxiは現在の光点の現在のy座標及びx座標、ym及びxmは直前の光点グループの中心点乃至は出発中心点の座標、そしてi及びm=i−1は自然数である。
【0018】
これには次のような利点がある。電源オフ又はオン状態の間に角度測定装置に機械的な変化が生じると、電源投入又は運転開始後、最初は角度測定装置が角度位置に関して不正確な状態にある可能性があるが、シャフトの回転中に前記中心点を計算してその間のずれを考慮することにより回転角の測定誤差が連続的に最小化される。この自動較正は、特に運転開始時に変調器が最初に1回転する間だけでも十分に行われる。加えて、例えば駆動中にシャフトが発熱により膨張してその相対位置が変わる可能性がある場合、角度測定装置の稼働中に自動較正により回転角の測定誤差を連続的に最小化することもできる。
【0019】
更に、好ましい一実施例では、各グループの光点が互いに所定の幾何学的な間隔を空けており、該間隔が好ましくは2つの光点間のベクトルの最小長に相当する。このようにすれば光点の高精度且つ連続的な計算が可能である。
【0020】
別の好ましい実施例では、少なくとも3つの光点から成るグループの列が、次のグループでその前のグループの1番目の光点を外すとともに該前のグループの3番目の光点に続く光点を追加するという操作を連続的に行う、という方法で形成される。少なくとも3つの光点から成るグループの列に対応して各グループに属する中心点の列を求めることができるようにすれば有利である。
【0021】
更に、好ましい一実施例では、評価ユニットが、検出された光点及び/又は算出された中心点に対し、平均値の計算又は期待値の統計的予測を用いて妥当性検査を実施する。これには、本発明に係る角度測定装置を非常に簡単なやり方で精密に且つ高い信頼性で構成できるという利点がある。
【0022】
別の好ましい実施例では、受光器がPDS素子又はフォトダイオードアレイを含む。このようにすれば角度測定装置を安価に構成できるため有利である。
【0023】
別の好ましい実施例では、前記少なくとも1つの受光器が、前記変調器が平面的に照明されることにより生じる、前記受光器上で動く影を検出するように構成され、前記評価ユニットが、前記受光器上における前記影の位置からそれに対応する回転角を特定するように構成される。これには、光点の検出によってだけでなく影の検出によっても回転角の正確な特定が可能であるという利点がある。
【0024】
以下、本発明について、実施例に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る角度測定装置の実施例の概略図。
図2】実施例の受光器上での光点の動きの模式的な詳細図。
図3】本発明に従い、出発中心点に依拠して光点と回転角を特定する過程をそれぞれ示す概略図(1)〜(3)。
図4】光点と回転角の特定方法の模範例を示す概略図。
図5】光点と回転角の特定方法の模範例を示す概略図。
図6】光点と回転角の特定方法の模範例を示す概略図。
図7】光点と回転角の特定方法の模範例を示す概略図。
図8】光点と回転角の特定方法の模範例を示す概略図。
図9】光点と回転角の特定方法の模範例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、回転式のシャフトWの回転角φを特定するための本発明に係る角度測定装置10の実施例の概略図を示す。図示した角度測定装置10の構成要素は、光線1aを発射するための発光器1、発射された光線1aを通過させて変調するための透明な変調器2、及び変調された光線1aを受光するための受光器3である。
【0027】
透明な変調器2は所定の厚さt、所定の直径d及び所定の相対屈折率n2を有する平行平面板を含んでおり、光線1aは、理想的にはシャフトWの回転軸Aに平行にこの変調器2を通過する。そして該光線は、所定の相対屈折率n2を有する変調器2への入射時と、変調器2から該変調器2を囲む相対屈折率n1の媒体内への出射時に屈折する。
【0028】
変調器2はその法線がシャフトWの回転軸Aと非ゼロの角度αを成すように該シャフトWに取り付けられている。これにより変調器2はシャフトWの回転動作時に受光器3に対して揺動する。そして、変調器2の揺動により、シャフトWの回転に従って、光線方向に直交する横方向の偏向乃至は変位が光線1aに生じる。偏向した光線1aは受光器3に入射し、該受光器3上において光点Piの形で2次元的な軌道Bを描く。この軌道Bはほぼ円形で、理想的には図2に概略的に描いたような真の円軌道である。これについては後で更に説明する。受光器3はその表面で軌道B上を動く光点Piを捕らえ、それに応じた受光器信号を出力する。この信号はシャフトWの回転に直接依存している。
【0029】
受光器3は感光面を備え、シャフトWの回転とともに入射光点Piを2次元的に位置分解して検出する。言い換えれば、受光器3はそれ自身の座標系を基準として2次元的に入射光点Piを検出する。その結果、光点Piの座標xi及びyiが特定される。
【0030】
図2は受光器3上での光点Piの動きを概略的に示している。受光器3の中心点Mmは参照座標xm及びymを有しており、なかでも受光器3の中心点M0は、座標x0及びy0を有する出発中心点として、評価ユニット(図示せず)による光点Piの特定、とりわけ光点Piの軌道Bの中心点Mm(これについては後述)の特定に用いられる。
【0031】
受光器3は理想的には、2次元で測定を行うPSD素子(Position Sensitive Device)又はフォトダイオードアレイから成るものとすることができる。即ち、光線方向乃至はシャフトWの回転軸Aに直交する2つ横方向の座標x及びyが受光器3により別々に検出され、アナログの方向信号乃至は受光器信号として出力される。これには照明強度の検出も可能になるという利点がある。
【0032】
図示せぬ評価ユニット(例えば評価論理回路を備える制御装置)は、受光器3から受光器信号を受け取り、該受光器信号を評価して、受光器3上での光点Piの位置からそれに対応するシャフトWの回転角φiを求める。これにより、受光器3上の1つ又は複数の光点Piの位置を用いてシャフトWの1つ又は複数の回転角φiを簡単に且つ直接特定することができる。変調器2の揺動により、シャフトWの横方向の自由度や軸方向の自由度に左右されずに回転角φiが特定される。従って、シャフトWの横方向の自由度及び軸方向の自由度はいずれも回転角φiの特定に影響を及ぼさない。
【0033】
特に、本発明に係る角度測定装置10の評価ユニットは所定の参照座標x0及びy0を基準として受光器3上での光点Piの位置を求め、その位置から既に述べたように各時点のシャフトWの回転角φiを求める。回転角φiは特にφi=arctan[(yi−ym)/(xi−xm)]という式で計算できる。ここで、φiは現在の回転角を表し、yi及びxiは現在の光点の現在のy座標及びx座標、ym及びxmは直前の光点グループの中心点乃至は出発中心点M0の座標、そしてi及びm=i−1は自然数である。
【0034】
そして評価ユニットは、好ましくは、所定の間隔で並ぶ光点の列を、少なくとも3つの相前後する光点P1〜Piからそれぞれ成るグループに連続的に区分し、図3図9に描いたように(且つ後に詳述するように)、グループ毎に、受光器3上において該グループに対応する軌道Bに対応する中心点M0〜Mmをそれぞれ計算する。その際、評価ユニットは、光点Piのグループのうち相前後する2つのグループの2つの計算された中心点M0〜Mmのずれを回転角φiの特定の際に該回転角φiの補正値として考慮する。このようにすれば、回転角φiの特定の際にシャフトWの傾きによる軌道Bの変位を連続的に考慮することができるため、角度測定装置10の自動較正を達成することができる。
【0035】
以下、光点Piの座標を用いた回転角φiの算出について図3図9に基づいてより詳しく説明する。
【0036】
評価ユニットは、受光器3上において座標x1及びy1を持つ1番目の光点P1の受光器信号を受光器3から受け取る。そして、既知の又は予め設定された出発中心点M0の座標x0及びy0を利用して、前記の式に基づき、出発中心点M0と1番目の光点P1との間のベクトルから1番目の回転角φ1を求める。
【0037】
1番目の光点P1の特定と同様に、後続の全ての光点Pi、特に2番目の光点P2と3番目の光点P3が求められる。そして、それらに対応する回転角φi、特に図3(2)及び(3)に示したように2番目及び3番目の回転角φ2及びφ3が特定される。
【0038】
評価ユニットは前述のような光点Piの特定を連続的に実行するため、それに従って、各光点Piに対応する軌道Bに対する回転角φiを特定することができる。
【0039】
好ましくは、評価ユニットが、少なくとも3つの光点、本実施例では光点P1、P2及びP3を1番目の光点グループに区分する。1番目のグループの光点P1、P2及びP3は互いに所定の幾何学的な間隔を空けていることが有利であり、その間隔は2つの光点P1とP2、P2とP3の間のベクトルVの最小長に相当することが好ましい(図4)。
【0040】
1番目のグループの光点P1、P2及びP3の座標に基づき、評価ユニットは、図5に示したように、そのグループに対応する中心点M1を計算する。実際には角度測定装置10に許容誤差があるため、この中心点は軌道Bの出発中心点M0からずれることがある。光点P1、P2及びP3の軌道の「真の」中心点M1を特定するために、光点P1、P2及びP3の座標を用いた連立一次方程式を解く。その結果、光点P1、P2及びP3のグループの真の中心点M1の座標x1及びy1が得られる。
【0041】
光点P3に続く全ての光点Pi(例えば図6のP4)は中心点M1の座標x1及びy1を基準として計算される。従って、後続の回転角φ4〜φiは真の中心点M1の座標を基準として特定される。ここで、出発中心点M0と次の真の中心点M1との間のずれを、回転角φ4乃至は回転角φiの特定の際に補正値として考慮することが有利である。これにより、角度測定装置10に存在する許容誤差に起因する回転角の測定誤差が連続的に回避される。
【0042】
光点P4と回転角φ4が評価ユニットにより求められたら、評価ユニットは直ちに別の少なくとも3つの光点(図6では光点P2、P3及びP4)を別の光点グループに区分する。その際、その別のグループの光点P2、P3及びP4もやはり互いに所定の幾何学的な間隔を空けていることが好ましい。言い換えれば、少なくとも3つの光点P1、P2及びP3、P2、P3及びP4、…、から成るグループの列が、次のグループでその前のグループの1番目の光点(図6のP1)を外すとともに該前のグループの3番目の光点に続く光点P3(図6のP4)を追加するという操作を連続的に行う、という方法で連続的に形成される。
【0043】
本実施例に従い、光点P2、P3及びP4から成る新たなグループに対応する中心点M2が評価ユニットによって算出される。この新たな中心点M2を基準として評価ユニットが光点P5の回転角φ5を算出する。このとき、評価ユニットが光点P5の回転角φ5の特定の際に中心点M1とM2の間のずれを考慮することが有利である。即ち、図8に示した中心点M2を持つ軌道Bの真の位置を光点P5の回転角φ5の算出に利用することで、先に計算された中心点M1を持つ軌道Bに基づいて計算した場合に生じる回転角の測定誤差を回避する。
【0044】
上述の好ましい実施例とは別の実施例では、受光器3が、光点Piではなく、変調器2が平面的に照明されることにより生じる、受光器3上で動く影を検出するように構成される。このようにすれば、例えば安価な発光器1を用いることができる。また、変調器2を平面的に照明すれば、変調器2を「点的に」照明する場合とは異なる形で発光器1、変調器2及び受光器3を互いに配置することができるため、配置の選択の幅が広がる。
【0045】
この場合、評価ユニットは、受光器3上における前記影の位置からそれに対応する回転角φiを特定するように構成される。即ち、光点Piではなく影を用いてシャフトWの回転角φiが求められる。
【0046】
そして評価ユニットは、光点P1〜Piの場合と同様、連続的に、所定の間隔で並ぶ影の列を、少なくとも3つの相前後する影からそれぞれ成るグループに区分し、グループ毎に、それに対応する軌道Bに対応する中心点M0〜Mmをそれぞれ計算する。その際、評価ユニットは、影のグループのうち相前後する2つのグループの2つの計算された中心点M0〜Mmのずれを回転角φiの特定の際に該回転角φiの補正値として考慮する。なお、影の幾何学的な形状は点や円など任意であり、軌道B上で影が動く間にその形状が受光器3の感光面内に留まりさえすればよい。
【0047】
少なくとも3つの光点P1〜Pi又は影から次々に作られる新たなグループから次々に新たな中心点Mmを算出すると、1つ又は複数の回転角φiの特定のための基準を永続的に追跡することになる。即ち、光点Piの軌道Biが、例えば組み立て時、停止中又は稼働中に静的又は動的な機械的影響によってずれたりその半径が変化したりしても、本発明に係る角度測定装置10によれば、それにより生じる回転角の測定誤差がその発生後すぐに後続の回転角φiに及ぶことを回避できる(図9)。
【0048】
また、評価ユニットが、検出された光点Pi及び/又は算出された中心点Mmに対し、平均値の計算又は期待値の統計的予測を用いて妥当性検査を実施することで、1つ又は複数の回転角φiの特定をより正確でより信頼性の高いものにすることが好ましい。
【符号の説明】
【0049】
10…角度測定装置
1…発光器
1a…光線
2…透明な変調器
3…受光器
A…回転軸
B…光点の軌道
d…直径
n1、n2…相対屈折率
M0…出発中心点
M1〜Mm…軌道の中心点
P1〜Pi…光点
t…厚さ
x0、y0…出発中心点の座標
xm、ym…中心点の座標
xi、yi…光点の座標
W…シャフト
α…傾斜角
φ…回転角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9