(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571780
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】RGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス装置
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20190826BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20190826BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20190826BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20190826BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
H05B33/22 D
H01L27/32
H05B33/12 B
H05B33/14 A
G09F9/30 365
G09F9/30 349Z
C09K11/06 690
【請求項の数】9
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-535351(P2017-535351)
(86)(22)【出願日】2015年12月29日
(65)【公表番号】特表2018-507538(P2018-507538A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】CN2015099376
(87)【国際公開番号】WO2016107537
(87)【国際公開日】20160707
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】201410853953.2
(32)【優先日】2014年12月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】504337718
【氏名又は名称】北京維信諾科技有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】515179314
【氏名又は名称】昆山工研院新型平板顕示技術中心有限公司
【氏名又は名称原語表記】KUNSHAN NEW FLAT PANEL DISPLAY TECHNOLOGY CENTER CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】515179325
【氏名又は名称】昆山国顕光電有限公司
【氏名又は名称原語表記】KUNSHAN GO−VISIONOX OPTO−ELECTRONICS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲りゅう▼ 嵩
(72)【発明者】
【氏名】李 維維
(72)【発明者】
【氏名】何 麟
【審査官】
岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0361257(US,A1)
【文献】
特表2013−522864(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0044639(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第103187537(CN,A)
【文献】
特開2000−323277(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102782084(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C09K 11/06
G09F 9/30
H01L 27/32
H05B 33/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に順に形成された第1の電極層(1)、複数の有機層及び第2の電極層(8)とを含み、前記
複数の有機層は、第1の電極層(1)上に設置された第1の有機機能層(12)、発光材料層及び第2の有機機能層(13)を含み、前記発光材料層は、赤色発光層(4)、緑色発光層(5)及び青色発光層(6)を含む、RGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、
前記赤色発光層(4)及び緑色発光層(5)と前記第1の有機機能層(12)との間に、それぞれ光学補償層が設置され、前記光学補償層は、第1の正孔輸送材料及び第2の正孔輸送材料で製造され、前記第1の正孔輸送材料の三重項エネルギーレベルが2.48eV以上であり、HOMOエネルギーレベルが−5.5eV以下であり、前記第2の正孔輸送材料のHOMOエネルギーレベルが−5.5eVより大であり、かつ前記第1の正孔輸送材料と第2の正孔輸送材料のHOMOエネルギーレベル差が0.2eV以下であ
って、
前記第1の正孔輸送材料は、式(1)又は式(2)に示す構造であり、
【化1】
式(1) 式(2)
ここで、式(1)において、AとBは、それぞれ独立してフェニル基、ナフチル基又はアニリノ基から選択され、
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R15、R16、R17及びR18は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立して水素元素、ハロゲン元素、CN、NO2、アミノ基、C6−C30の縮合環アリール基、C6−C30の縮合複素環アリール基、C6−C20のアルキル基又はC6−C30のアルコール基から選択され、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立してC6−C30のアリール基から選択され、式(2)において、A1とA2は、それぞれ独立してC6−C30のアリール基又はC6−C30の複素環式アリール基から選択され、R1’は、水素、アルキル基、アルコキシ基又は塩基であり、また、式(2)は同時にA1又はA2の少なくとも1つは環状縮合構造である、
ことを特徴とする、RGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記光学補償層は、前記赤色発光層(4)と前記第1の有機機能層(12)との間に設置された赤色光学補償層(10)と、前記緑色発光層(5)と前記第1の有機機能層(12)との間に設置された緑色光学補償層(11)とを含むことを特徴とする請求項1に記載のRGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記赤色光学補償層(10)における第1の正孔輸送材料と第2の正孔輸送材料の質量比は1:99〜99:1であることを特徴とする請求項2に記載のRGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
前記緑色光学補償層(11)における第1の正孔輸送材料と第2の正孔輸送材料の質量比は5:95〜50:50であることを特徴とする請求項2に記載のRGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
前記緑色光学補償層(11)における第1の正孔輸送材料と第2の正孔輸送材料の質量比は10:90〜30:70であることを特徴とする請求項4に記載のRGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
前記第1の正孔輸送材料は、式(HTL1−1)
から(HTL1−10)に示す
構造群から選択される構造を有することを特徴とする請求項
1に記載のRGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス装置。
【化2】
【化3】
【請求項7】
第2の正孔輸送材料は、
式(3)に示す構造のインデノフルオレン誘導体、または、式(4)、式(5)又は式(6)に示す構造の誘導体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のRGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス装置。
【化4】
式(3)
【化5】
式(4)
【化6】
式(5)
【化7】
式(6)
前記AとBは、それぞれ独立してフェニル基、ナフチル基又は
アニリノ基から選択され、R
9、R
10、R
11及びR
12は同一でも異なってもよく、それぞれ独立して
水素またはC
6−C
30のアリール基から選択され、
R
13は、
水素、C
1−C
6のアルキル基又はヒドロキシ基から選択される。
【請求項8】
前記R13は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、n−アミル基又はn−ヘキシル基であることを特徴とする請求項7に記載のRGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス装置。
【請求項9】
前記第2の正孔輸送材料は、式(HTL2−1)
から(HTL2−18)に示す
構造群から選択される構造を有することを特徴とする請求項
7に記載のRGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス装置。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス装置の技術分野に関し、特に光学補償層を有する有機エレクトロルミネッセンス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス装置OLEDの発光層は、主に、蛍光材料のみを用いるか、燐光材料のみを用いるか、又は蛍光材料と燐光材料の混合物を用いて製造される。LED表示装置は、赤、緑、青の3種類の画素で構成され、トップエミッションOLEDデバイス構造を採用する場合、3種類の画素の発光波長が異なるので、発光層の厚さには一定の差が存在し、一般的には、1層の光学補償層を用いて各発光層の厚さを変更し、最も厚いときに該厚さが100nm以上であるため、デバイスが低電圧及び高効率の特徴を有するように保証するために、該層は非常に高い電荷移動度を有する必要がある。
【0003】
従来の光学補償層に用いた材料は、三重項エネルギーレベルが高いが、一般的に移動度が低いので、厚くすることができず、光学補償層とすると、駆動電圧が高く、また、移動度が高い材料は、三重項エネルギーレベルが低いため、緑色光デバイスの効率に影響を与える。現在、用いられる光学補償層は、HILとHTLとの間に位置し、高い正孔移動度(NPBの移動度の1.5〜2倍)の材料を光学補償層として用いるが、このような設置方式は、ある程度で有機層の厚さの増加を改善し有機発光デバイスの駆動電圧に影響を与えないが、様々な発光材料の特別な電気的特性要件を考慮せず、有機発光デバイスの効率を効果的に向上させて、表示装置の消費電力を低減することができない。
【0004】
サムスン株式会社のCN201210395191.7にはエレクトロルミネッセンスデバイスが開示されており、
図1に示すように、順に基板110、第1の電極120、正孔注入層130、正孔輸送層140、バッファ層150、発光層160、電子輸送層170、電子注入層180及び第2の電極190を含む。前記正孔輸送層140は、順に堆積された第1の電荷発生層141、第1の混合層142、第2の電荷発生層143及び第2の混合層144を含む。第1の電荷発生層141の材料は、第1の化合物と第2の化合物を含んで第1の電荷発生材料を混合した混合物を用いることができ、第1の混合層142の材料は、第1の化合物と第2化合物を含む混合物を用いることができ、第2の電荷発生層143の材料は、第3の化合物と第4の化合物を含んで第2の電荷発生材料を混合した混合物を用いることができ、第2の混合層144の材料は、第3の化合物と第4の化合物を含む混合物を用いることができ、この面では、第3の化合物と第4の化合物の重量比が6:4〜8:2である。該特許において、電荷発生層が有効な励起子阻止作用を果たすことができいため、バッファ層を用いる必要がある。
【0005】
CN200510077967.0にはエレクトロルミネッセンスデバイスが開示されており、
図2に示すように、該デバイスは、緑色光画素領域200及び第1の正孔輸送層18−1の上に第2の正孔輸送層18−2が設置され、赤色光画素領域300及び第1の正孔輸送層18−1の上に第2の正孔輸送層18−2及び第3の正孔輸送層18−3が設置されている。前記第1の正孔輸送層18−1、第2の正孔輸送層18−2及び第3の正孔輸送層18−3は、それぞれ異なる材料で製造することができるが、各層の正孔輸送層は同じ材料で製造される。該特許では混合構造の正孔輸送層を用いて発光効率を向上させ、このような設置方式はある程度で発光層の厚さを改善したが、緑色光学補償層に適用されるHTL材料に対して高い三重項エネルギーレベルT1を有しHOMOエネルギーレベルが≦−5.5eVである必要があり、このような材料の移動度は一般的に低く、厚くすることができないため、デバイスの駆動電圧が高い。
【発明の開示】
【0006】
そのために、本発明は、従来の技術における赤色光及び緑色光学補償層に用いられる材料に移動度が低いか又は材料の励起子阻止作用が低いという技術的問題を解決するために、光学補償層がエネルギーレベル差が異なる2種類の正孔輸送材料を用いて製造され、発光装置の消費電力を大幅に低減し、発光効率を向上させることができる有機エレクトロルミネッセンス装置を提供する。
【0007】
本発明は、上記有機エレクトロルミネッセンス装置の製造方法をさらに提供する。
【0008】
上記技術的問題を解決するために、本発明は以下の技術手段を採用する。
RGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、基板と、前記基板上に順に形成された第1の電極層、複数の有機層及び第2の電極層とを含み、前記有機層は、第1の電極層上に設置された第1の有機機能層、発光材料層及び第2の有機機能層を含み、前記発光材料層は、赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層を含み、前記赤色発光層及び緑色発光層と前記第1の有機機能層との間に、それぞれ光学補償層が設置され、前記光学補償層は、第1の正孔輸送材料及び第2の正孔輸送材料で製造され、前記第1の正孔輸送材料の三重項エネルギーレベルが≧2.48eVであり、HOMOエネルギーレベルが≦−5.5eVであり、前記第2の正孔輸送材料のHOMOエネルギーレベルが>−5.5eVであり、かつ前記第1の正孔輸送材料と第2の正孔輸送材料のHOMOエネルギーレベル差が≦0.2eVである。
【0009】
前記光学補償層は、前記赤色発光層と前記第1の有機機能層との間に設置された赤色光学補償層と、前記緑色発光層と前記第1の有機機能層との間に設置された緑色光学補償層とを含む。前記赤色光学補償層における第1の正孔輸送材料と第2の正孔輸送材料の質量比は1:99〜99:1である。前記緑色光学補償層における第1の正孔輸送材料と第2の正孔輸送材料の質量比は5:95〜50:50であり、好ましくは10:90〜30:70である。
【0010】
前記第1の正孔輸送材料は、式(1)又は式(2)に示す構造である。
【化12】
式(1) 式(2)
ここで、式(1)において、前記AとBは、それぞれ独立してフェニル基、ナフチル基又は
アニリノ基から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
15、R
16、R
17及びR
18は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立して水素元素、ハロゲン元素、CN、NO
2、アミノ基、C
6−C
30の縮合環
アリール基、C
6−C
30の縮合複素環
アリール基、C
6−C
20のアルキル基又はC
6−C
30のアルコール基から選択され、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立してC
6−C
30のアリール基から選択され、
式(2)において、A
1とA
2は、それぞれ独立してC
6−C
30のアリール基又はC
6−C
30の複素環式アリール基から選択され、R1’は、水素、アルキル基、アルコキシ基又は塩基であり、また、式(2)は同時に以下の条件を満たし、A
1又はA
2の少なくとも1つは、環状縮合構造を有する。
【0011】
前記第1の正孔輸送材料は、式(HTL1−1)から(HTL1−10)に示す
構造群から選択される構造を有する。
【化13】
【化14】
【0012】
第2の正孔輸送材料は、
式(3)に示す構造のインデノフルオレン誘導体、または、式(4)、式(5)又は式(6)に示す構造の誘導体である。
【化15】
式(3)
【化16】
式(4)
【化17】
式(5)
【化18】
式(6)
前記AとBは、それぞれ独立してフェニル基、ナフチル基又は
アニリノ基から選択され、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立してC
6−C
30のアリール基から選択され、
R
13は、C
1−C
6のアルキル基又はヒドロキシ基であり、好ましくは、前記R
13は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、n−アミル基又はn−ヘキシル基である。
【0013】
前記第2の正孔輸送材料は、式(HTL2−1)
から(HTL2−18)に示す
構造群から選択される構造を有する。
【化19】
【化20】
【化21】
【0014】
本発明の上記技術手段は、従来の技術に比べて、以下の利点を有する。本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置では、光学補償層が発光層と正孔輸送層との間に設置され、このような構造を用いる光学補償層は、蒸着過程で、赤色光学補償層と赤色発光層が同一グループのマスクを用いて製造され、緑色光学補償層と緑色発光層が同一グループのマスクを用いて製造され、マスクMaskの繰り返し位置合わせを避け、ある程度でプロセス精度を向上させることができる。これは、マスクの毎回の位置合わせには一定の誤差が存在するので、位置合わせ回数が少なくなれば、誤差が少なくなり、製品の歩留まりが高くなるためである。
【0015】
また、本発明の発明者は、創造的な研究により、三重項エネルギーレベルの高い材料と移動度の高い材料との組み合わせを本発明の光学補償層として用い、かつHOMOエネルギーレベル差が≦0.2eVであるように要求するので、必要に応じて光学補償層を様々な厚さに製造することにより、発光効率もデバイスの駆動電圧も影響されない。両者のHOMOエネルギーレベル差が大きすぎる場合、第1の正孔輸送材料は、緑色光励起子を阻止するという作用を果たすことができない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の内容をより明瞭に理解しやすくするために、以下、本発明の具体的な実施形態及び図面を組み合わせて、本発明をさらに詳細に説明する。
【
図1】従来の技術の発光デバイスの概略構造図である。
【
図2】別の従来の技術の発光デバイスの概略構造図である。
【0017】
図面符号の説明:
1−第1の電極層、2−正孔注入層、3−正孔輸送層、4−赤色発光層、5−緑色発光層、6−青色発光層、7−電子輸送層、8−第2の電極層、9−光学的結合層、10−赤色光学補償層、11−緑色光学補償層、12−第1の有機機能層、13−第2の有機機能層
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の目的、技術手段及び利点をより明らかにするために、以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。本発明は、ここで記載される実施例に限定されるものではなく、様々な形態で実施することが可能であると理解すべきである。逆に、これらの実施形態を提供することにより、本開示は、徹底し完全になり、かつ、当業者に本発明の思想を十分に伝達することができ、本発明は、特許請求の範囲にのみ限定される。図面において、明瞭化のために、層及び領域のサイズ及び相対的サイズを誇張している場合がある。素子、例えば層、領域又は基板が別の素子の「上」に「形成される」又は「設置される」と記載される場合、該素子は、前記別の素子に直接設置されても、それらの間に介在している素子が存在してもよいと理解すべきである。逆に、素子が別の素子に「直接形成される」又は「直接設置される」と記載される場合、それらの間に介在している素子が存在しない。
【0019】
図3は、本発明のRGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス装置の概略構造図である。前記RGB画素領域を有する有機エレクトロルミネッセンス装置は、基板(図示せず)と、前記基板上に順に形成された第1の電極層1(陽極層)、複数の有機層、第2の電極層8(陰極層)及び光学的結合層9とを含み、前記有機層は、第1の電極層1上に設置された第1の有機機能層12、発光材料層及び第2の有機機能層13を含み、前記発光材料層は、厚さがそれぞれH
R、H
G、H
Bの赤色発光層4、緑色発光層5及び青色発光層6を含み、H
B>H
G>H
Rであり、前記赤色発光層4及び緑色発光層5と前記第1の有機機能層12との間に光学補償層が設置され、前記光学補償層は、第1の正孔輸送材料及び第2の正孔輸送材料で製造され、前記第1の正孔輸送材料の三重項エネルギーレベルが≧2.48eVであり、HOMOエネルギーレベルが≦−5.5eVであり、前記第2の正孔輸送材料のHOMOエネルギーレベルが>−5.5eVであり、かつ前記第1の正孔輸送材料と第2の正孔輸送材料のHOMOエネルギーレベル差が≦0.2eVである。
【0020】
前記光学補償層は、前記赤色発光層4と前記第1の有機機能層12との間に設置された赤色光学補償層10と、前記緑色発光層5と前記第1の有機機能層との間に設置された緑色光学補償層11とを含む。前記赤色光学補償層10における第1の正孔輸送材料と第2の正孔輸送材料の質量比は1:99〜99:1であり、好ましくは10:90〜30:70である。前記緑色光学補償層11における第1の正孔輸送材料と第2の正孔輸送材料の質量比は5:95〜50:50であり、好ましくは10:90〜30:70である。
【0021】
前記第1の正孔輸送材料は、式(1)又は式(2)に示す構造である。
【化22】
式(1) 式(2)
ここで、式(1)において、前記AとBは、それぞれ独立してフェニル基、ナフチル基又は
アニリノ基から選択され、
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
15、R
16、R
17及びR
18は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立して水素元素、ハロゲン元素、CN、NO
2、アミノ基、C
6−C
30の縮合環
アリール基、C
6−C
30の縮合複素環
アリール基、C
6−C
20のアルキル基又はC
6−C
30のアルコール基から選択され、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立してC
6−C
30のアリール基から選択され、
式(2)において、A
1とA
2は、それぞれ独立してC
6−C
30のアリール基又はC
6−C
30の複素環式アリール基から選択され、R1’は、水素、アルキル基、アルコキシ基又は塩基であり、
また、式(2)は同時に以下の条件を満たし、
A
1又はA
2の少なくとも1つは、環状縮合構造を有する。
【0022】
前記第1の正孔輸送材料は、式(HTL1−1)〜(HTL1−10)に示す
構造群から選択される構造を有する。
【化23】
【化24】
【0023】
第2の正孔輸送材料は、
式(3)に示す構造のインデノフルオレン誘導体、または、式(4)、式(5)又は式(6)に示す構造の誘導体である。
【化25】
式(3)
【化26】
式(4)
【化27】
式(5)
【化28】
式(6)
前記AとBは、それぞれ独立してフェニル基、ナフチル基又は
アニリノ基から選択され、
R
9、R
10、R
11及びR
12は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立してC
6−C
30のアリール基から選択され、
R
13は、C
1−C
6のアルキル基又はヒドロキシ基であり、好ましくは、前記R
13は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、n−アミル基又はn−ヘキシル基である。
【0024】
前記第2の正孔輸送材料は、式(HTL2−1)
から(HTL2−18)に示す
構造群から選択される構造を有する。
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【0025】
前記基板は、ガラス基板又は可撓性基板を選択することができる。前記第1の電極層(陽極層)は、無機材料又は有機導電性ポリマーを用い、無機材料は、一般的に酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛等の金属酸化物、又は金、銅、銀等の仕事関数が高い金属であり、好ましくは酸化インジウムスズ(ITO)であり、有機導電性ポリマーは、好ましくはポリチオフェン/ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(以下、PEDOT:PSSと略称する)、ポリアニリン(以下、PANIと略称する)のうちの1種の材料である。
【0026】
前記第2の電極層8(陰極層)は、一般的にリチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、インジウム等の仕事関数が低い金属、金属化合物又は合金を用い、本発明では、好ましくは電子輸送層7にLi、K、Cs等の活性金属をドープし、該活性金属は、好ましくはアルカリ金属化合物を蒸着する方法で得られる。
【0027】
前記正孔注入層2(HIL)の基質材料は、好ましくはHAT又は4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4’’−トリス[2−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(2−TNATA)である。
【0028】
前記正孔輸送層3(HTL)の基質材料は、芳香族アミン系及びグラフトポリマー系の低分子材料を用い、好ましくはN,N’−ジ−(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)である。
【0029】
前記電子輸送層7の材料は、Alq
3、Bphen、BAlqから選択されたが、以下の材料から選択されてもよい。
【化33】
【0030】
青色発光層6は、一般的に、そのホスト材料がADN及びその誘導体から選択され、その染料が式(BD−1)又は式(BD−2)に示す材料から選択される。
【化34】
【0031】
赤色発光層4は、一般的に、Ir(piq)
3、Ir(piq)
2(acac)、Btp
2Ir(acac)、 Ir(MDQ)
2(acac)、Ir(DBQ)
2(acac)、Ir(fbi)
2(acac)、Ir(2−phq)
3、Ir(2−phq)
2(acac)、 Ir(bt)
2(acac)又はPtOEP等を用いる。
【0032】
緑色発光層5は、一般的に、Ir(ppy)
3、Ir(ppy)
2(acac)等を用いる。
【0033】
本発明の主な化学物質の構造式を以下のとおり説明する。
【表1】
【0034】
以下、複数の実施例を挙げて、図面と組み合わせて本発明の技術手段を具体的に説明する。以下の実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明を理解しやすくするために例示したものに過ぎないことを注意すべきである。実施例1〜14における有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、以下の構造を用い、それらは、赤色光補償層10と緑色光補償層11の材料が異なるという点で相違する。
【0035】
青色発光領域15(
図3における最も左側の点線枠内)は、
ITO/HAT(10nm)/MTDATA(100nm)/NPB(20nm)/ADN(30nm):BD−1/ETL−1(35nm)/Mg:Ag(20nm)/MTDATA(50nm)であり、
緑色発光領域14(
図3における中央の点線枠内)は、
ITO/HAT(10nm)/MTDATA(100nm)/NPB(20nm)/HTL1:HTL2(60nm)/CBP(30nm):Ir(ppy)3/ETL−1(35nm)/Mg:Ag(20nm)/MTDATA(50nm)であり、
赤色発光領域13(
図3における最も右側の点線枠内)は、
ITO/HAT(10nm)/MTDATA(100nm)/NPB(20nm)/HTL1:HTL2(110nm)/ CBP(30nm):Ir(mdq)2(acac)/ETL−1(35nm)/Mg:Ag(20nm)/MTDATA(50nm)である。
【0036】
実施例1
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−1に示す構造であり、第2の正孔輸送材料は、HTL2の式HTL2−1に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−1と第2の正孔輸送材料HTL2−1の質量比は50:50である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−1と第2の正孔輸送材料HTL2−1の質量比は50:50である。
【0037】
実施例2
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−2に示す構造であり、第2の正孔輸送材料はHTL2の式HTL2−2に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−2と第2の正孔輸送材料HTL2−2の質量比は1:99である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−2と第2の正孔輸送材料HTL2−2の質量比は50:50である。
【0038】
実施例3
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−3に示す構造であり、第2の正孔輸送材料は、HTL2の式HTL2−3に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−3と第2の正孔輸送材料HTL2−3の質量比は99:1である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−3と第2の正孔輸送材料HTL2−3の質量比は95:5である。
【0039】
実施例4
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−4に示す構造であり、第2の正孔輸送材料は、HTL2の式HTL2−18に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−4と第2の正孔輸送材料HTL2−18の質量比は90:10である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−4と第2の正孔輸送材料HTL2−18の質量比は5:95である。
【0040】
実施例5
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−5に示す構造であり、第2の正孔輸送材料は、HTL2の式HTL2−16に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−5と第2の正孔輸送材料HTL2−16の質量比は70:30である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−5と第2の正孔輸送材料HTL2−16の質量比は15:85である。
【0041】
実施例6
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−6に示す構造であり、第2の正孔輸送材料はHTL2の式HTL2−15に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−6と第2の正孔輸送材料HTL2−15の質量比は40:60である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−6と第2の正孔輸送材料HTL2−15の質量比は40:60である。
【0042】
実施例7
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−7に示す構造であり、第2の正孔輸送材料は、HTL2の式HTL2−14に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−7と第2の正孔輸送材料HTL2−14の質量比は50:50である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−7と第2の正孔輸送材料HTL2−14の質量比は30:70である。
【0043】
実施例8
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−8に示す構造であり、第2の正孔輸送材料はHTL2の式HTL2−13に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−8と第2の正孔輸送材料HTL2−13の質量比は35:65である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−8と第2の正孔輸送材料HTL2−13の質量比は25:75である。
【0044】
実施例9
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−9に示す構造であり、第2の正孔輸送材料は、HTL2の式HTL2−12に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−9と第2の正孔輸送材料HTL2−12の質量比は90:10である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−9と第2の正孔輸送材料HTL2−12の質量比は45:55である。
【0045】
実施例10
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−10に示す構造であり、第2の正孔輸送材料は、HTL2の式HTL2−11、HTL2−6に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−10と第2の正孔輸送材料HTL2−11の質量比は45:55である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−10と第2の正孔輸送材料HTL2−6の質量比は10:90である。
【0046】
実施例11
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−1に示す構造であり、第2の正孔輸送材料は、HTL2の式HTL2−10に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−1と第2の正孔輸送材料HTL2−10の質量比は95:5である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−6と第2の正孔輸送材料HTL2−10の質量比は5:95である。
【0047】
実施例12
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−3に示す構造であり、第2の正孔輸送材料は、HTL2の式HTL2−9、HTL2−17に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−3と第2の正孔輸送材料HTL2−17の質量比は55:45である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−3と第2の正孔輸送材料HTL2−9の質量比は20:80である。
【0048】
実施例13
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−5に示す構造であり、第2の正孔輸送材料は、HTL2の式HTL2−8、HTL2−4に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−5と第2の正孔輸送材料HTL2−8の質量比は55:45である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−5と第2の正孔輸送材料HTL2−4の質量比は20:80である。
【0049】
実施例14
ここで、第1の正孔輸送材料は、HTL1の式HTL1−8に示す構造であり、第2の正孔輸送材料は、HTL2の式HTL2−5、HTL2−7に示す構造である。赤色光補償層10では、第1の正孔輸送材料HTL1−8と第2の正孔輸送材料HTL2−7の質量比は30:70である。緑色光補償層11では、第1の正孔輸送材料HTL1−8と第2の正孔輸送材料HTL2−5の質量比は40:60である。
【0050】
比較例
青色発光領域15(
図3における最も左側の点線枠内)は、ITO/HAT(10nm)/MTDATA(100nm)/NPB(20nm)/ADN(30nm):BD−1/ETL−1(35nm)/Mg:Ag(20nm)/MTDATA(50nm)であり、緑色発光領域14(
図3における中央の点線枠内)は、ITO/HAT(10nm)/MTDATA(160nm)/NPB(20nm)/CBP(30nm):Ir(ppy)3/ETL−1(35nm)/Mg:Ag(20nm)/MTDATA(50nm)であり、
赤色発光領域13(
図3における最も右側の点線枠内)は、ITO/HAT(10nm)/MTDATA(210nm)/NPB(20nm)/CBP(30nm):Ir(mdq)2(acac)/ETL−1(35nm)/Mg:Ag(20nm)/MTDATA(50nm)である。
【0051】
デバイスの性能テストは以下のとおりである。
【0052】
テスト結果から示すように、本発明の光学補償層は、エネルギーレベルの高い正孔輸送材料と移動度の高い正孔輸送材料の組み合わせを用いることにより、赤色発光層及び緑色発光層の発光効率を大幅に向上させることができる。
【0053】
明らかに、上記実施例は、実施形態を限定するものではなく、明確に説明するために例示したものに過ぎない。当業者であれば、上記説明を基に種々の変形又は変更を行うことができる。ここで、全ての実施形態を列挙する可能性も必要性もない。これから導出した明らかな変形又は変更は、すべて本発明の保護範囲内に含まれるべきである。