(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571787
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】減衰要素を備えるプラグコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/533 20060101AFI20190826BHJP
H01R 24/38 20110101ALI20190826BHJP
【FI】
H01R13/533 D
H01R24/38
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-543745(P2017-543745)
(86)(22)【出願日】2016年2月4日
(65)【公表番号】特表2018-507518(P2018-507518A)
(43)【公表日】2018年3月15日
(86)【国際出願番号】EP2016000184
(87)【国際公開番号】WO2016131526
(87)【国際公開日】20160825
【審査請求日】2019年1月8日
(31)【優先権主張番号】202015001331.7
(32)【優先日】2015年2月19日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506333314
【氏名又は名称】ローゼンベルガー ホーフフレクベンツテクニーク ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ツェプハウザー
(72)【発明者】
【氏名】ノルベルト プラッシュベルガー
(72)【発明者】
【氏名】パウル タイヒマン
【審査官】
鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−509051(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第02269806(FR,A1)
【文献】
独国特許出願公開第10140177(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0203674(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102009043516(DE,A1)
【文献】
特開2009−252682(JP,A)
【文献】
特開2014−123446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/533
H01R12/00−12/91
H01R24/00−24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を伝搬するための内部導体接点(20,120)と、外部導体部(40,140)と、前記内部導体接点(20,120)を前記外部導体部(40,140)から離間させておく絶縁部(30,130)とを包含するプラグコネクタ(10,10′,10″)、特に高電流プラグコネクタにおいて、弾性的に圧縮可能な減衰要素(50,51)が、相補的な相手方プラグコネクタ(100,100′)が前記プラグコネクタ(10,10′,10″)に挿入方向(S)に挿嵌される時に、弾性的に圧縮可能であるように前記プラグコネクタに設けられるプラグコネクタであって、前記相手方プラグコネクタ(100)が挿嵌される時に、前記減衰要素(50,51)が、前記内部導体接点(20)におよび/または前記絶縁部(30)に前記挿入方向(S)の圧力を直接的にまたは間接的に印加することにより、前記内部導体接点(20,120)に対するおよび/または前記外部導体部(40,140)に対する前記絶縁部(30,130)の可動性を低減させることを特徴とするプラグコネクタ。
【請求項2】
前記相手方プラグコネクタ(100)が挿嵌される時に、前記減衰要素(50)が、前記内部導体接点(20)に前記挿入方向(S)の圧力を間接的に印加し、好ましくは前記絶縁部(30)に前記挿入方向(S)の圧力を直接的に印加することを特徴とする、請求項1に記載のプラグコネクタ。
【請求項3】
前記内部導体接点(20)と前記絶縁部(30)との間のおよび/または前記絶縁部(30)と前記外部導体部(40)との間の軸方向遊び(21,22)を包含し、少なくとも前記内部導体接点と前記絶縁部との間の前記遊び(21)が、好ましくは前記絶縁部と前記外部導体部との間の前記遊び(22)も、前記減衰要素(50)への前記挿入方向(S)での圧力の印加により低減または除去されうることを特徴とする、請求項1または2に記載のプラグコネクタ。
【請求項4】
前記減衰要素(50)の軸方向材厚が可変であり、材厚の大きい部分(55)が前記内部導体接点への圧力の印加のために設けられ、材厚の小さい部分(56)が前記絶縁部への圧力の印加のために設けられることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のプラグコネクタ。
【請求項5】
前記減衰要素(50)が、前記相手方プラグコネクタが挿嵌される時に前記相手方プラグコネクタ(100)に向く前記プラグコネクタ(10,10′)の前方境界面を形成することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載のプラグコネクタ。
【請求項6】
前記減衰要素(50)が前記相手方プラグコネクタ(100)の接触要素(101)の挿入のために設けられる前記プラグコネクタの挿入開口を環状方式で囲繞することを特徴とする、請求項5に記載のプラグコネクタ。
【請求項7】
前記プラグコネクタが、前記相手方プラグコネクタの挿嵌時に前記減衰要素(50)の前記相手方プラグコネクタとは反対に向く側に設けられる摺動要素(60,60′)を包含し、前記摺動要素が、前記プラグコネクタのガイド(32)に沿って軸方向に変位可能であるように配置され、前記内部導体接点(20)に当接する軸方向後端部(61)を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載のプラグコネクタ。
【請求項8】
前記摺動要素(60,60′)が、剛性で好ましくは少なくとも部分的に環状のプラスチック体であり、前記摺動要素の前端部に、噴霧により形成される前記減衰要素(50)が設けられることを特徴とする、請求項7に記載のプラグコネクタ。
【請求項9】
前記摺動要素(60)が少なくとも部分的に前記絶縁部(30)の少なくとも部分的に円環状のガイド溝に配置され、前記ガイド溝の床部が前記内部導体接点(20)により形成されることを特徴とする、請求項7または8に記載のプラグコネクタ。
【請求項10】
弾性的に圧縮可能な前記減衰要素(51)が、前記絶縁部(130)と前記外部導体部(140)との間に配置され、前記相手方プラグコネクタ(100′)の挿嵌時に前記絶縁部(130)が前記外部導体部(140)の方向に押圧されることで圧縮可能であることを特徴とする、請求項1に記載のプラグコネクタ。
【請求項11】
前記減衰要素(51)が、好ましくはほぼ丸い輪郭を持つ実質的に平面状の形態を有し、前記外部導体部(140)の実質的に平坦な接触面(142)と前記絶縁部(130)の対圧面(131)との間に作用することを特徴とする、請求項10に記載のプラグコネクタ。
【請求項12】
前記減衰要素(51)の前記挿入方向(S)での寸法が可変であり、前記減衰要素の中央領域が前記減衰要素の縁領域より厚いことを特徴とする、請求項10または11に記載のプラグコネクタ。
【請求項13】
前記プラグコネクタ(10″)がアングルコネクタであり、そこでは前記内部導体接点のおよび/または前記絶縁部の主軸(H)が前記挿入方向(S)に対して横向きに、特にほぼ垂直に延び、前記内部導体接点(120)および/または前記絶縁部(130)が、少なくとも部分的に、前記減衰要素(51)により前記主軸(H)に対して少なくとも部分的に偏向され、前記減衰要素(51)の圧縮を伴う前記相手方プラグコネクタ(100′)の挿嵌により逆向きに偏向されうることを特徴とする、請求項10から12のいずれかに記載のプラグコネクタ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載のプラグコネクタ(10,10′,10″)と、前記プラグコネクタに挿嵌される時に、前記プラグコネクタの前記減衰要素(50,51)が圧縮されることにより、前記内部導体接点(20,120)に対するおよび/または前記外部導体部(40,140)に対する前記絶縁部(30,130)の可動性が低減されるように構築される相補的な相手方プラグコネクタ(100,100′)とを備えるプラグコネクタ構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部導体接点と、外部導体部と、内部導体接点を外部導体部から離間させておく絶縁部とを包含するプラグコネクタ、特に高電流プラグコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
内部導体接点は、電流を伝搬するのを目的とするのに対して、外部導体部は、ハウジング、例えば外部導体ハウジングの形態で設計されうる、および/または、接地されてそれにより内部導体をシールドしうる。そのような同軸プラグコネクタは同軸ケーブルに結合されうるが、同軸ケーブルの外部導体はプラグコネクタの外部導体部と電気的に接触し、同軸ケーブルの内部導体はプラグコネクタの内部導体接点と電気的に接触する。
【0003】
プラグコネクタは概して、接続時に電流および/または電気信号を伝送するために、電気ケーブルの着脱可能な接続に使用される。したがって、ソケット部の形態の第一プラグコネクタがプラグ部の形態の第二プラグコネクタと結合されてプラグ接続を形成する。高電流プラグコネクタは、例えば50Aまたは100Aを超える電流の強さを持つ高電流を伝送するのに使用され、例えば電気またはハイブリッド駆動装置を備える自動車で使用される。したがって、相手方プラグコネクタの内部導体接点は、挿入方向Sに突出してプラグコネクタの受容開口に挿入方向に挿嵌される一つ以上の接触ピンを有しうる。ソケット部の内部導体接点は、受容開口に配設される。
【0004】
内部導体接点が外部導体部との電気的接触状態になれるのを防止するために、内部導体接点が概してプラスチックのような非導電材料で製作される絶縁部により保持され、絶縁部が内部導体接点と外部導体部との間に配置される。プラグコネクタの組立時には、まず例えばスナップロック接続あるいは他のフォームまたはフォースロック接続によって絶縁部が内部導体接点に装着され、その後やはり例えばスナップロック接続あるいは他のフォームまたはフォースロック接続によって絶縁部と内部導体接点とから成る組立品が外部導体部に固定される。
【0005】
しかし、こうした構造のプラグコネクタは高い機械的ストレスを受ける場合に摩耗の増大を被りやすいことが分かっている。この理由から、従来の高電流プラグコネクタは概してメンテナンスを必要とし、内部導体接点または絶縁部のような摩耗に影響される部品は概して交換される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の問題を考慮して、本発明の目的は、強力な振動のような高い機械的ストレスを受けても被る摩耗を可能な限り小さくもする高電流の伝送に適したプラグコネクタを提供すること、および、こうして高電流プラグコネクタの耐久性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴を持つプラグコネクタにより解決される。本発明の有利なさらなる展開は、従属請求項に記載される。
【0008】
本発明によるプラグコネクタでは、弾性的に圧縮可能な減衰要素が、相補的な相手方プラグコネクタがプラグコネクタに挿入方向に挿嵌される時に、それが弾性的に圧縮されることにより、内部導体接点に対するおよび/または外部導体部に対する絶縁部の可動性が低減されるように設けられる。言い換えると、例えば弾性的に圧縮可能な軟性部品の形態の減衰要素が、プラグコネクタのプラグ側端部に圧力が印加される時にそれが圧縮され、内部導体接点が絶縁部に緩衝方式で押圧される、および/または、絶縁部が外部導体部に緩衝方式で押圧されるようにプラグコネクタに設けられる。
【0009】
本発明は、従来のプラグコネクタでは、製造プロセスの結果として概して内部導体接点と絶縁部との間のまたは絶縁部と外部導体部との間の大きな軸方向遊びがあるという知識に基づいている。この軸方向遊びは、振動のような機械的ストレスを受けて外部導体部に対するまたは内部導体接点に対する絶縁部のかなりの相対移動につながりうるものであり、上述のプラグコネクタでの摩耗の増大という結果を招く。
【0010】
絶縁部と内部導体接点および/または外部導体部との間の接続がより安定したものまたはより強固なものになるようにすることで絶縁部のこの可動性を制限しようとする試みがすでに行われている。しかし、絶縁部と内部導体接点および/または外部導体部との間の非常に強固で移動不能な接続は、プラグコネクタを迅速にかつ簡単に設置するのを困難にする。対照的に、本発明によるプラグコネクタの絶縁部は(相手方プラグコネクタとの結合前に)外部導体部に対するおよび/または内部導体接点に対する指定の軸方向可動性を呈しうるが、そのため、プラグコネクタの特に簡単で迅速な設置が可能である。本発明によれば、観察される摩耗を引き起こす絶縁部の可動性は、相手方プラグコネクタのプラグコネクタとの結合および関連するプラグコネクタへの軸方向圧力の印加によりのみ低減されるまたは完全に除去される。本発明によれば、弾性の減衰要素が、相手方プラグコネクタが挿嵌される時に、それで印加される圧力の結果として挿入方向に圧縮され、それにより絶縁部と内部導体接点および/または外部導体部とを一緒に軸方向に押圧するようにプラグコネクタに設けられることで、これが達成される。
【0011】
それ故に、本発明によるプラグコネクタは、迅速にかつ簡単に設置されうると同時に、一緒の挿嵌時に内部導体接点と外部導体部との間における絶縁部の高い安定性と良好な軸方向固定とを保証し、そのため、外部導体部から伝達される振動は、個々のプラグコネクタ部品の間の相対移動につながりえない。
【0012】
本発明の好適な態様では、相手方プラグコネクタの挿嵌時に、減衰要素が内部導体接点におよび/または絶縁部に挿入方向の圧力を直接的にまたは間接的に印加し、そのため、内部導体部が絶縁部の方向に強制的に押される、および/または、絶縁部が外部導体部の方向に強制的に押される。相手方プラグコネクタの挿嵌動作の結果として、プラグコネクタがそれにより弾性の減衰要素により提供される緩衝を伴って軸方向に(挿入方向に)圧縮され、結果的にその内部可動性が制限される。
【0013】
好ましくは、プラグコネクタには、挿嵌時に相手方プラグコネクタがプラグコネクタの十分に近くまで引かれてまたはプラグコネクタの十分に奥まで押されて減衰要素を圧縮するのを可能にする、相手方プラグコネクタと相互作用するフォームまたはフォースロック接続手段、例えばネジ、クランプクリップまたは同等物が設けられる。接続手段による減衰要素の過剰な圧縮を回避するために、対応するリミットストップがプラグコネクタに設けられうる。
【0014】
弾性の減衰要素が内部導体接点のような電流伝搬要素との直接的な接触状態にないと好都合であることが実証されている。代わりに、相手方プラグコネクタの挿嵌時に減衰要素が間接的に内部導体接点に挿入方向に圧力を印加してこれを絶縁部に軸方向に押圧するだけでよい。このために、剛性材料で製作される軸方向に移動可能な中間要素が減衰要素と内部導体接点との間に設けられうる。他方で、減衰要素が直接的に絶縁部に挿入方向に圧力を印加する場合に特に有利であることが実証されている。本発明の特に好適な態様では、減衰要素の挿入方向での圧縮により、まず間接的に内部導体接点に圧力が印加され、減衰要素の圧縮の指定の状態に達すると、間接的におよび/または直接的に絶縁部に圧力が追加で印加される。
【0015】
そのような圧力の段階的な印加を可能にするために、減衰要素の軸方向材厚が可変であり、材厚の大きい部分が内部導体接点への圧力の印加のために設けられ、材厚の小さい部分が絶縁部への圧力の印加のために設けられると好都合であることが実証されている。この場合、嵌入動作中に、材厚の大きい部分と材厚の小さい部分との間の差異により減衰要素がすでに圧縮されている時にのみ絶縁部に圧力が印加される。これは、プラグコネクタおよびこれと接続される相手方プラグコネクタの特に安定した剛性の全体的構成につながる。好ましくは、相手方プラグコネクタに向く減衰要素の前面は、凸曲面の、特に丸みを帯びた輪郭を有する。
【0016】
減衰要素の非圧縮状態において、本発明によるプラグコネクタは好ましくは、内部導体接点と絶縁部との間のおよび/または絶縁部と外部導体部との間の軸方向遊びを有し、少なくとも内部導体接点と絶縁部との間の遊びが、好ましくは絶縁部と外部導体部との間の遊びも、減衰要素への挿入方向での圧力の印加により低減または除去されうる。ある程度の遊びを可能にするプラグコネクタの構造は、プラグコネクタのより簡単でより急速な設置を可能にする。
【0017】
本発明の特に好適な態様によれば、減衰要素は、相手方プラグコネクタが挿嵌される時に相手方プラグコネクタに向くプラグコネクタの前方境界面を形成する。この場合、相手方プラグコネクタが挿嵌される時に、相手方プラグコネクタの対圧面が減衰要素に圧力を直接的に印加しうる。
【0018】
プラグコネクタの前部に装着されて好ましくは外側に露出される減衰要素は、外部導体ハウジングへの内部導体接点および絶縁部の設置後にプラグコネクタに装着されてもよい。特に、減衰要素の装着により従来のプラグコネクタの改造も可能である。好ましくは、挿嵌動作中に減衰要素がプラグコネクタの先頭境界面を形成する。
【0019】
内部導体接点へのおよび/または絶縁部への圧力の均一に分散された印加を達成することに関して、減衰要素が相手方プラグコネクタの接触要素の挿入のために設けられるプラグコネクタの挿入開口を環状方式で囲繞する場合に有利であることが実証されている。好ましくは、減衰要素は、環状形状の軟性ゴム部またはエラストマ部である。
【0020】
挿嵌時に圧力がプラグコネクタの内側に配置される内部導体接点に確実に印加されるのを可能にするために、減衰要素の挿嵌時に相手方プラグコネクタとは反対に向く側における、プラグコネクタのガイドに沿って軸方向に変位可能であるように配置され、内部導体接点に当接する軸方向後端部を備える摺動要素を設けると好都合であることが実証されている。この場合、相手方プラグコネクタが挿嵌される時に、減衰要素が、中間要素としての摺動要素を介して間接的に内部導体接点に圧力を印加し、内部導体接点を絶縁部の接触面の方向に強制的に押す。
【0021】
摺動要素は好ましくは剛性で好ましくは少なくとも部分的に環状のプラスチック体で形成され、プラスチック体の前端部にエラストマまたはゴム材料から成る減衰要素がスプレーされる。
【0022】
好ましくは、絶縁部は少なくとも部分的に円環状のガイド溝をその前側に有し、ガイド溝の床部は内部導体接点により形成される。ガイド溝は、実質的に軸方向に延び、そのため、摺動要素は、軸方向に変位可能な方式でそれに収容されうることになり、内部導体接点に寄り掛かるようになる。ガイド溝は保持機構を有しうるが、そのため、摺動要素はガイド溝に軸方向に変位可能に保持されて外れえない。保持機構はスナップロック機構の形態で設計されうるが、摺動要素はスナップロック突出部を有しうるものでありガイド溝はスナップロック凹部を有しうるものである、または、その逆である。
【0023】
以下において本発明の第二の好適な態様が説明される。この第二態態では、弾性的に圧縮可能な減衰要素が絶縁部と外部導体部との間に配置される。相手方プラグコネクタが挿嵌される時に、絶縁部が外部導体部の方向に押圧され、その結果として、減衰要素が挿入方向に圧縮され、結果的に、絶縁部と外部導体部との間の可動性が制限される。
【0024】
圧力の均一な印加を達成することに関して、減衰要素が、実質的に平面状の形態を有し、外部導体部の実質的に平坦な接触面と絶縁部の対圧面との間に配置されると好都合であることが実証されている。挿入方向に対して横向きに延びる断面では、減衰要素の実質的に丸い輪郭が特に有利であることが実証されている。一つ超の内部導体接点を備えるプラグコネクタが一つ超の減衰要素を有してもよい。
【0025】
減衰要素の寸法が挿入方向Sにおいて可変であり、減衰要素の中央領域が減衰要素の縁領域より厚いことで、圧力の過剰な印加による絶縁部の損傷が効果的に防止されうる。これは、相手方プラグコネクタの挿嵌時に、まず中央領域が圧縮され、その後初めて減衰要素の縁領域も追加で圧縮され、そのため、減衰要素によりもたらされる対圧作用が挿嵌動作の過程で増大することを意味する。これは、プラグコネクタと相補的な相手方プラグコネクタとの間の接続を形成するために設けられるネジのような接続手段を接続するのに必要な力の慎重な印加を容易にする。
【0026】
第二態様によれば、本発明によるプラグコネクタは好ましくはアングルコネクタであり、そこでは内部導体接点のおよび/または絶縁部の主軸Hは挿入方向に対して横向きに、特にほぼ垂直に延び、そのため、電流を伝搬する内部導体は相手方プラグコネクタの挿入方向に対して横向きに引き出されうる。好ましくは、内部導体接点は、一方では相手方プラグコネクタの相手方接触要素と接触するための接触要素を有し、他方では接触要素を始点として主軸Hに沿って延在して同軸ケーブルの内部導体と接続されうるロッド形の導体部を有する。
【0027】
減衰要素は好ましくは、非圧縮状態において、内部導体接点および/または絶縁部が少なくとも部分的に減衰要素により主軸に対して偏向されるのに十分なほど大きい挿入方向の寸法を有する。減衰要素の圧縮を伴う相手方プラグコネクタの挿嵌によりのみ、外部導体部に対する内部導体接点のおよび/または絶縁部の可動性が制限される非偏向位置に内部導体接点および/または絶縁部が戻る。
【0028】
さらなる側面によれば、本発明は、本発明によるプラグコネクタと、プラグコネクタに挿嵌される時に、プラグコネクタの減衰要素が弾性的に圧縮されることにより、内部導体接点に対するおよび/または外部導体部に対する絶縁部の可動性が低減されるように構築される相補的な相手方プラグコネクタとを包含するプラグコネクタ構成に関する。
【0029】
以下の記載において添付の図面を参照して本発明が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明によるプラグコネクタの第一実施形態を長手断面図で示す。
【
図2a】相手方プラグコネクタが
図1に示されるプラグコネクタと挿入方向Sに結合される挿嵌動作を示す。
【
図2b】相手方プラグコネクタが
図1に示されるプラグコネクタと挿入方向Sに結合される挿嵌動作を示す。
【
図3a】
図1に示されるプラグコネクタの絶縁部30をそれに装着されうる減衰要素50と一緒に斜視図で示す。
【
図3b】
図1に示されるプラグコネクタの絶縁部30をそれに装着されうる減衰要素50と一緒に長手断面図で示す。
【
図4】本発明によるプラグコネクタの代替的実施形態を長手断面図で示す。
【
図5】本発明によるプラグコネクタの第二実施形態を断面図で示す。
【
図6a】相手方プラグコネクタが
図5に示されるプラグコネクタと挿入方向Sに結合される挿嵌動作を示す。
【
図6b】相手方プラグコネクタが
図5に示されるプラグコネクタと挿入方向Sに結合される挿嵌動作を示す。
【
図7】絶縁部と内部導体接点とがない
図5に示されるプラグコネクタの斜視図を示す。
【
図8】
図5に示されるプラグコネクタの組立の中間ステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明によるプラグコネクタの第一実施形態10を長手断面図で示している。プラグコネクタ10は、プラスチックのような非導電材料で製作される絶縁部30により囲繞される内部導体接点20から成る。絶縁部30は、内部導体接点20がプラグコネクタ10の外部導体部40との電気的接触状態になるのを防止する。
【0032】
プラグコネクタ10は同軸ケーブル70と接続され、同軸ケーブル70のシールド71はプラグコネクタの外部導体部40と電気的に結合され、同軸ケーブル70の内部導体72は例えばはんだ付けまたは圧着によりプラグコネクタ10の内部導体接点20と電気的に結合される。
【0033】
内部導体接点20は、電気的接触を確立するために接触ピンの形態の相手方プラグコネクタ100の接触要素101が挿入されうる接触バネを備えるソケットとしてプラグ側に設計される。
図2aおよび2bは、プラグコネクタ10とそれに接続される相手方プラグコネクタ100とから成るプラグ接続全体を示している。
【0034】
プラグコネクタ10の組立中に、まず、内部導体接点20が例えばはんだ付けにより同軸ケーブル70の内部導体72と接続される。その後、絶縁部30の突出部が内部導体接点20の凹部25にスナップ止めされるまで、内部導体接点20が絶縁部30に押される。凹部25の軸方向寸法は、絶縁部30と内部導体接点20との間の相対移動が指定の軸方向遊び21の範囲内で可能であるようなものである。これは、内部導体接点20への絶縁部30の装着を容易にする。その後、プラグコネクタ10の外部導体部40が例えば押圧または圧着によりこのケーブル構成に装着され、そのため、外部導体部40がケーブル70の外部導体71と電気的に接触する。外部導体部40は、指定の軸方向遊び22の範囲内で絶縁部30に対して移動可能である。
【0035】
従来のプラグコネクタでは、軸方向遊び21,22により相補的な相手方プラグコネクタとの結合後にも内部導体接点20と絶縁部30と外部導体部40との間の相対移動がまだ可能であり、プラグ接続が振動のような高い機械的ストレスを受ける場合には特に材料摩耗の増大という結果を招く。
【0036】
この理由から、本発明によるプラグコネクタ10には、弾性的に圧縮可能な減衰要素50が設けられる。減衰要素50に挿入方向Sに圧力が印加される時に、これが圧縮され、その結果として、絶縁部30に対する内部導体接点20の可動性および/または外部導体部40に対する絶縁部の可動性が低減されるまたは全面的に除去される。
図2bには、軸方向遊び21,22が完全に除去された最終接続状態が図示されているのに対して、
図2aには、相手方プラグコネクタ100の挿嵌の過程での位置が図示されており、そこでは、相手方プラグコネクタ100の対圧面105が、すでに減衰要素50に当接しているが、まだこれを完全には圧縮していない。
【0037】
図1に図示される実施形態では、間接的に内部導体接点20におよび直接的に絶縁部30に挿嵌時に相手方プラグコネクタ100により印加される圧力を伝達するように、減衰要素50がプラグコネクタ10に設けられる。結果的に、内部導体接点20と絶縁部30と外部導体部40とが挿嵌動作の過程で一緒に押され、そのため、軸方向遊び21,22が除去され、内部導体接点20と絶縁部30と外部導体接点との間の剛性で移動不能な接続が確立される。
【0038】
図3aおよび3bに特に明確に図示されるように、絶縁部30のガイド32内に変位可能に収容されうる摺動要素60を形成する剛性のプラスチック体の前端部に、減衰要素50が実質的に環状の形態でスプレーされる。減衰要素50への挿入方向Sでの圧力の印加の際に、それに装着される摺動要素60が、ガイド32に押圧されることにより、それに寄り掛かる内部導体接点20を絶縁部30のリミットストップ33の方向に変位させる。
【0039】
相手方プラグコネクタの挿嵌時に、減衰要素50は、
図2aおよび2bに示される相手方プラグコネクタ100の対圧面105により圧力が印加されうるプラグコネクタの先頭前面を形成する。減衰要素50の前面が平坦ではなく凸曲面を形成し、そのため、挿嵌動作の過程で高材料密度の部分55が対圧面105との接触状態になり摺動要素
60を内部導体接点20の方向に強制的に押す。そして、絶縁部30に直接的に寄り掛かる低材料密度の部分56が対圧面105との接触状態になり絶縁部を外部導体部40の方向に押圧する。代替的にまたは付加的に、絶縁部30は、内部導体部20を介して間接的に外部導体部40の接触面の方向に押圧される。
【0040】
挿嵌動作の開始時には、内部導体接点20と絶縁部30と外部導体部40との間に軸方向遊び21,22がまだ存在するが(
図2a参照)、挿嵌動作の完了後には、内部導体接点20と絶縁部30と外部導体部40との径方向に配向された接触面が遊びなしで互いに密接に接触する(
図2b参照)。
【0041】
挿嵌動作を容易にし、より一層安定した結合を可能にするために、プラグコネクタ10または相手方プラグコネクタ100には、ネジ、クリップまたはクランプのようなフォームまたはフォースロック接続手段が設けられうるが、それによって、
図2aに示される位置を始点として、相手方プラグコネクタが
図2bによる位置に引かれうる。接続手段はまた、プラグ接続の偶発的な切断を防止する。
【0042】
図4は、前端部に減衰要素50がスプレーされる摺動要素60′が、絶縁部30のガイド溝に軸方向に変位可能な方式で保持されないが、摺動要素60′の外側に径方向に寄り掛かる径方向ガイド32′に保持される、本発明によるプラグコネクタのわずかに変形された実施形態10′を示している。ここでも、摺動要素60′の後端部61は内部導体接点20に当接するのに対して、軟性部品として形成される減衰要素50は電流伝搬部との直接的な電気的接触状態になりえない。
【0043】
図5は、本発明によるプラグコネクタの第二実施形態10″を示している。このプラグコネクタは、内部導体接点120のまたは絶縁部130の主軸Hが挿入方向Sに対して横向きに、特に垂直に延びるアングルプラグまたはアングルソケットとして設計される。こうして、内部導体は挿入方向Sに対して垂直に引き出されうる。第二実施形態の内部導体接点120は、一方では相手方プラグコネクタ100′の一つ以上の接触ピン101′と接触するための接触バネを備える接触要素122を有し、他方では接触要素122を始点として主軸Hに沿って延在して同軸ケーブル70の内部導体72と接続されうるロッド形の導体部121を有する。
【0044】
内部導体接点120の接触要素122は、非導電材料の絶縁部130により保持される。内部導体接点120と絶縁部130とから成る構成は、シールドを形成する外部導体ハウジング140に収容される。
【0045】
図8に示されるように、プラグコネクタ10″を製造するために、まず内部導体接点120が同軸ケーブルの内部導体72と接続され、その後絶縁部130が内部導体接点120に装着される。絶縁部130と内部導体接点120とから成る構成は、挿入方向Sに対して垂直に延びる主軸Hに沿って外部導体部140の管状部分141に導入される(
図8参照)。弾性的に圧縮可能な軟性部品の形態の減衰要素51は、外部導体部140の実質的に平坦な後壁部に配置される。
図7に示されるように、プラグコネクタはまた、一つ超、例えば二つまたは三つの減衰要素51を有しうる。減衰要素51は、実質的に円板形であり、減衰要素51の縁部分より大きい挿入方向Sの寸法を持つ中央部分を有する。言い換えると、減衰要素51の凸面は、絶縁部130の収容を目的とする外部導体部140の設置空間に突出する。
【0046】
内部導体接点120と絶縁部130とから成る構成が
図8に示される位置から
図5に示される位置に押される場合に、絶縁部130の前端部と内部導体接点120の前端部とは、設置空間に突出する減衰要素51により挿入方向Sとは逆に偏向される。その時、減衰要素は、絶縁部130の内部導体接点120とは反対に向く側で外部導体部140の平坦な接触面142と絶縁部の対圧面131との間に配置される。この位置において、内部導体接点120および絶縁部130の前端部は、外部導体部140に対して挿入方向Sに移動可能である。
【0047】
相補的な相手方プラグコネクタ100′の挿入方向Sでの挿嵌の際に、絶縁部130が相手方プラグコネクタ100′によりもたらされる圧力を受けて減衰要素51の付勢に反して外部導体部の接触面142の方向に緩衝方式で押圧されることで、この可動性が制限される。したがって、減衰要素51は、最初はわずかに圧縮されるだけである(
図6a参照)。挿嵌動作の最終部でのみ、すなわち、プラグコネクタの外部導体部140が相手方プラグコネクタ100′と一緒にネジ止めされる時に、減衰要素51が強く圧縮され、その結果、主軸Hに対する内部導体接点120のおよび絶縁部130の偏向が反転される。
図6bに示される接続位置では、絶縁部130が外部導体部140に対して実質的に移動不能に配置される。この接続位置では、減衰要素51により強力な振動が減衰され、その結果として、絶縁部130および外部導体部140での摩耗が確実に最小限に抑えられる。
【0048】
本発明の明示的に説明された二つの実施形態は、単なる例示である。例えば、減衰要素50,51は必ずしも形態が環状であるものまたは円板形のものであるとは限らない。また、内部導体接点の大きさおよび数に応じて、プラグコネクタは一つ超の減衰要素を有しうる。本発明によれば、重要なのは、減衰要素が、プラグコネクタが相手方プラグコネクタと一緒に挿嵌される時にのみそれが弾性的に圧縮され、摩耗につながる絶縁部と内部導体接点と外部導体部との間の可動性がそれにより最終プラグ接続の形成の際にのみ除去されるようにプラグコネクタに設けられることである。