(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571804
(24)【登録日】2019年8月16日
    
      
        (45)【発行日】2019年9月4日
      
    (54)【発明の名称】ワークの機械加工のための工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q   1/54        20060101AFI20190826BHJP        
   B23Q   1/70        20060101ALI20190826BHJP        
【FI】
   B23Q1/54
   B23Q1/70
【請求項の数】12
【全頁数】25
      (21)【出願番号】特願2017-566310(P2017-566310)
(86)(22)【出願日】2016年6月22日
    
      (65)【公表番号】特表2018-522745(P2018-522745A)
(43)【公表日】2018年8月16日
    
      (86)【国際出願番号】EP2016064428
    
      (87)【国際公開番号】WO2016207223
(87)【国際公開日】20161229
    【審査請求日】2018年4月26日
      (31)【優先権主張番号】102015211496.1
(32)【優先日】2015年6月22日
(33)【優先権主張国】DE
    
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】508268090
【氏名又は名称】デッケル  マホ  プフロンテン  ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】DECKEL  MAHO  Pfronten  GmbH
          (74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】クシアー,ウヴェ
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】ガイスラー,    アルフレッド
              
            
        
      
    
      【審査官】
        津田  健嗣
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          国際公開第2005/002786(WO,A1)    
        
        【文献】
          特開平02−256408(JP,A)      
        
        【文献】
          特開平04−269139(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2000−176776(JP,A)      
        
        【文献】
          特開昭59−175986(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q      1/50
B23Q      1/54        
B23Q      1/70
B25J    17/00          
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  ワーク(2)の機械加工のための工作機械(1)であって、工具(35)または前記ワーク(2)を受容するためのスピンドル(34)を有するスピンドルアーム(30)を備え、前記スピンドルアーム(30)は、加工スペース内での前記スピンドル(34)の位置決めのために動き得るよう、マシンベース(20)に配置されたスピンドルアーム受容セクション(21)に取り付けられており、
  前記スピンドルアーム(30)は、前記スピンドル(34)の旋回のために、
  細長い要素として形成され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)にヒンジ結合され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)に対して第1回転軸(R1)の周りを回転可能な第1スピンドルアームセクション(31)と、
  細長い要素として形成され、前記第1スピンドルアームセクション(31)にヒンジ結合され、前記第1スピンドルアームセクション(31)に対して第2回転軸(R2)の周りを回転可能な第2スピンドルアームセクション(32)と、を備え、
  前記第1回転軸(R1)は、前記スピンドルアーム受容セクション(21)の第1エンドセクション(215)及び前記第1スピンドルアームセクション(31)の第1エンドセクション(315)に配置され、
  前記第2回転軸(R2)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の第2エンドセクション(316)及び前記第2スピンドルアームセクション(32)の第1エンドセクション(325)に配置されており、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)は、前記スピンドルアーム(30)を受容するために前記マシンベース(20)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(211)及び第2サブセクション(212)を備え、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)の前記第1サブセクション(211)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1回転軸(R1)周りの回転運動のための第1回転トルクを前記第1スピンドルアームセクション(31)に伝達する第1の張力付与駆動装置(213)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)を受容するために前記スピンドルアーム受容セクション(21)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(311)及び第2サブセクション(312)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1サブセクション(311)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)の前記第2回転軸(R2)周りの回転運動のための第2回転トルクを前記第2スピンドルアームセクション(32)に伝達する第2の張力付与駆動装置(313)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1エンドセクション(315)が、前記スピンドルアーム受容セクション(21)の前記2つのサブセクション(211,212)の間に配置されることにより、前記スピンドルアーム受容セクション(21)の前記2つのサブセクション(211,212)の間の距離は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記2つのサブセクション(311,312)の間の距離より大きいことを特徴とする工作機械(1)。
【請求項2】
  ワーク(2)の機械加工のための工作機械(1)であって、工具(35)または前記ワーク(2)を受容するためのスピンドル(34)を有するスピンドルアーム(30)を備え、前記スピンドルアーム(30)は、加工スペース内での前記スピンドル(34)の位置決めのために動き得るよう、マシンベース(20)に配置されたスピンドルアーム受容セクション(21)に取り付けられており、
  前記スピンドルアーム(30)は、前記スピンドル(34)の旋回のために、
  細長い要素として形成され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)にヒンジ結合され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)に対して第1回転軸(R1)の周りを回転可能な第1スピンドルアームセクション(31)と、
  細長い要素として形成され、前記第1スピンドルアームセクション(31)にヒンジ結合され、前記第1スピンドルアームセクション(31)に対して第2回転軸(R2)の周りを回転可能な第2スピンドルアームセクション(32)と、を備え、
  前記第1回転軸(R1)は、前記スピンドルアーム受容セクション(21)の第1エンドセクション(215)及び前記第1スピンドルアームセクション(31)の第1エンドセクション(315)に配置され、
  前記第2回転軸(R2)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の第2エンドセクション(316)及び前記第2スピンドルアームセクション(32)の第1エンドセクション(325)に配置されており、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)は、前記スピンドルアーム(30)を受容するために前記マシンベース(20)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(211)及び第2サブセクション(212)を備え、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)の前記第1サブセクション(211)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1回転軸(R1)周りの回転運動のための第1回転トルクを前記第1スピンドルアームセクション(31)に伝達する第1の張力付与駆動装置(213)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)を受容するために前記スピンドルアーム受容セクション(21)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(311)及び第2サブセクション(312)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1サブセクション(311)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)の前記第2回転軸(R2)周りの回転運動のための第2回転トルクを前記第2スピンドルアームセクション(32)に伝達する第2の張力付与駆動装置(313)を備え、
前記第1の張力付与駆動装置(213)及び前記第2の張力付与駆動装置(313)は、それぞれ4つの機械的に張力を付与された駆動エレメント(213A−213D,313A−313D)、及び、それぞれ1つの駆動エレメント(213E,313E)を備える、ことを特徴とする工作機械(1)。
【請求項3】
  前記第1の張力付与駆動装置(213)の前記4つの駆動エレメント(213A−213D)は、前記スピンドルアーム受容セクション(21)に、最大180°の中心角を有する円弧に沿って配置され、前記第2の張力付与駆動装置(313)の前記4つの駆動エレメント(313A−313D)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)に、円弧に沿って均等に配置されている、ことを特徴とする請求項2に記載の工作機械(1)。
【請求項4】
  ワーク(2)の機械加工のための工作機械(1)であって、工具(35)または前記ワーク(2)を受容するためのスピンドル(34)を有するスピンドルアーム(30)を備え、前記スピンドルアーム(30)は、加工スペース内での前記スピンドル(34)の位置決めのために動き得るよう、マシンベース(20)に配置されたスピンドルアーム受容セクション(21)に取り付けられており、
  前記スピンドルアーム(30)は、前記スピンドル(34)の旋回のために、
  細長い要素として形成され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)にヒンジ結合され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)に対して第1回転軸(R1)の周りを回転可能な第1スピンドルアームセクション(31)と、
  細長い要素として形成され、前記第1スピンドルアームセクション(31)にヒンジ結合され、前記第1スピンドルアームセクション(31)に対して第2回転軸(R2)の周りを回転可能な第2スピンドルアームセクション(32)と、を備え、
  前記第1回転軸(R1)は、前記スピンドルアーム受容セクション(21)の第1エンドセクション(215)及び前記第1スピンドルアームセクション(31)の第1エンドセクション(315)に配置され、
  前記第2回転軸(R2)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の第2エンドセクション(316)及び前記第2スピンドルアームセクション(32)の第1エンドセクション(325)に配置されており、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)は、前記スピンドルアーム(30)を受容するために前記マシンベース(20)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(211)及び第2サブセクション(212)を備え、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)の前記第1サブセクション(211)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1回転軸(R1)周りの回転運動のための第1回転トルクを前記第1スピンドルアームセクション(31)に伝達する第1の張力付与駆動装置(213)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)を受容するために前記スピンドルアーム受容セクション(21)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(311)及び第2サブセクション(312)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1サブセクション(311)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)の前記第2回転軸(R2)周りの回転運動のための第2回転トルクを前記第2スピンドルアームセクション(32)に伝達する第2の張力付与駆動装置(313)を備え、
  前記第2スピンドルアームセクション(32)に対して第3回転軸(R3)の周りを回転可能な、前記スピンドル(34)を受容するための第3スピンドルアームセクション(33)をさらに含み、当該第3スピンドルアームセクション(33)は前記第2スピンドルアームセクション(32)にヒンジ結合されており、
  前記第3回転軸(R3)は前記第2スピンドルアームセクション(32)の第2エンドセクション(326)に位置しており、
  前記第2スピンドルアームセクション(32)は、前記第3スピンドルアームセクション(33)の前記第3回転軸(R3)周りの回転運動のための第3回転トルクを前記第3スピンドルアームセクション(33)に伝達する第3の駆動装置(323)を備える、ことを特徴とする工作機械(1)。
【請求項5】
  前記第1回転軸(R1)、前記第2回転軸(R2)及び前記第3回転軸(R3)は互いに平行に方向付けられており、
  前記工作機械(1)は、さらに、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1回転軸(R1)周りの回転運動、前記第2スピンドルアームセクション(32)の前記第2回転軸(R2)周りの回転運動、及び、前記第3スピンドルアームセクション(33)の前記第3回転軸(R3)周りの回転運動を同時に生じさせることにより、前記第3スピンドルアームセクション(33)の前記スピンドル(34)のエンドセクション(345)が、前記平行な回転軸(R1,R2,R3)に垂直な平面内において矩形のパスを描くように、前記スピンドルアーム受容セクション(21)の前記第1の張力付与駆動装置(213)、前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第2の張力付与駆動装置(313)及び前記第2スピンドルアームセクション(32)の前記第3の駆動装置(323)を制御するように設計された数値制御装置(40)を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の工作機械(1)。
【請求項6】
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)及び前記第1スピンドルアームセクション(31)に配置された前記張力付与駆動装置(213,313)は、サイクロイド伝動装置として構成されており、
  前記第2スピンドルアームセクション(32)に配置された前記第3の駆動装置(323)は、冷却されたトルク駆動装置として構成されている、ことを特徴とする請求項4または5に記載の工作機械(1)。
【請求項7】
  ワーク(2)の機械加工のための工作機械(1)であって、工具(35)または前記ワーク(2)を受容するためのスピンドル(34)を有するスピンドルアーム(30)を備え、前記スピンドルアーム(30)は、加工スペース内での前記スピンドル(34)の位置決めのために動き得るよう、マシンベース(20)に配置されたスピンドルアーム受容セクション(21)に取り付けられており、
  前記スピンドルアーム(30)は、前記スピンドル(34)の旋回のために、
  細長い要素として形成され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)にヒンジ結合され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)に対して第1回転軸(R1)の周りを回転可能な第1スピンドルアームセクション(31)と、
  細長い要素として形成され、前記第1スピンドルアームセクション(31)にヒンジ結合され、前記第1スピンドルアームセクション(31)に対して第2回転軸(R2)の周りを回転可能な第2スピンドルアームセクション(32)と、を備え、
  前記第1回転軸(R1)は、前記スピンドルアーム受容セクション(21)の第1エンドセクション(215)及び前記第1スピンドルアームセクション(31)の第1エンドセクション(315)に配置され、
  前記第2回転軸(R2)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の第2エンドセクション(316)及び前記第2スピンドルアームセクション(32)の第1エンドセクション(325)に配置されており、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)は、前記スピンドルアーム(30)を受容するために前記マシンベース(20)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(211)及び第2サブセクション(212)を備え、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)の前記第1サブセクション(211)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1回転軸(R1)周りの回転運動のための第1回転トルクを前記第1スピンドルアームセクション(31)に伝達する第1の張力付与駆動装置(213)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)を受容するために前記スピンドルアーム受容セクション(21)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(311)及び第2サブセクション(312)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1サブセクション(311)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)の前記第2回転軸(R2)周りの回転運動のための第2回転トルクを前記第2スピンドルアームセクション(32)に伝達する第2の張力付与駆動装置(313)を備え、
  前記スピンドルアーム(30)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)が前記第1スピンドルアームセクション(31)にヒンジ結合されている位置に、導管を案内するためのガイドエレメント(36)を含み、当該ガイドエレメント(36)は、複数の導管(70)を別々に案内するための複数のセグメントを備える、ことを特徴とする工作機械(1)。
【請求項8】
  さらに、ターンテーブル回転軸(R5)の周りを回転可能な、前記ワーク(2)または前記工具(35)を受容するためのターンテーブル(50)を、前記マシンベース(20)に備える、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の工作機械(1)。
【請求項9】
  さらに、前記ターンテーブル(50)を受容するための第1直線軸(61)を含み、前記ターンテーブル(50)は前記第1直線軸(61)に沿って移動可能であり、前記ターンテーブル回転軸(R5)は前記第1直線軸(61)に対して0°と90°の間の角度で方向付けられている、ことを特徴とする請求項8に記載の工作機械(1)。
【請求項10】
  ワーク(2)の機械加工のための工作機械(1)であって、工具(35)または前記ワーク(2)を受容するためのスピンドル(34)を有するスピンドルアーム(30)を備え、前記スピンドルアーム(30)は、加工スペース内での前記スピンドル(34)の位置決めのために動き得るよう、マシンベース(20)に配置されたスピンドルアーム受容セクション(21)に取り付けられており、
  前記スピンドルアーム(30)は、前記スピンドル(34)の旋回のために、
  細長い要素として形成され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)にヒンジ結合され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)に対して第1回転軸(R1)の周りを回転可能な第1スピンドルアームセクション(31)と、
  細長い要素として形成され、前記第1スピンドルアームセクション(31)にヒンジ結合され、前記第1スピンドルアームセクション(31)に対して第2回転軸(R2)の周りを回転可能な第2スピンドルアームセクション(32)と、を備え、
  前記第1回転軸(R1)は、前記スピンドルアーム受容セクション(21)の第1エンドセクション(215)及び前記第1スピンドルアームセクション(31)の第1エンドセクション(315)に配置され、
  前記第2回転軸(R2)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の第2エンドセクション(316)及び前記第2スピンドルアームセクション(32)の第1エンドセクション(325)に配置されており、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)は、前記スピンドルアーム(30)を受容するために前記マシンベース(20)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(211)及び第2サブセクション(212)を備え、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)の前記第1サブセクション(211)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1回転軸(R1)周りの回転運動のための第1回転トルクを前記第1スピンドルアームセクション(31)に伝達する第1の張力付与駆動装置(213)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)を受容するために前記スピンドルアーム受容セクション(21)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(311)及び第2サブセクション(312)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1サブセクション(311)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)の前記第2回転軸(R2)周りの回転運動のための第2回転トルクを前記第2スピンドルアームセクション(32)に伝達する第2の張力付与駆動装置(313)を備え、
  さらに、前記スピンドルアーム受容セクション(21)を受容するための第2直線軸(62)を含み、前記第2直線軸(62)は前記第1回転軸(R1)に平行に方向付けられ、前記スピンドルアーム受容セクション(21)は、前記第2直線軸(62)に沿って移動可能に前記マシンベース(20)に配置されている、ことを特徴とする工作機械(1)。
【請求項11】
  ワーク(2)の機械加工のための工作機械(1)であって、工具(35)または前記ワーク(2)を受容するためのスピンドル(34)を有するスピンドルアーム(30)を備え、前記スピンドルアーム(30)は、加工スペース内での前記スピンドル(34)の位置決めのために動き得るよう、マシンベース(20)に配置されたスピンドルアーム受容セクション(21)に取り付けられており、
  前記スピンドルアーム(30)は、前記スピンドル(34)の旋回のために、
  細長い要素として形成され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)にヒンジ結合され、前記スピンドルアーム受容セクション(21)に対して第1回転軸(R1)の周りを回転可能な第1スピンドルアームセクション(31)と、
  細長い要素として形成され、前記第1スピンドルアームセクション(31)にヒンジ結合され、前記第1スピンドルアームセクション(31)に対して第2回転軸(R2)の周りを回転可能な第2スピンドルアームセクション(32)と、を備え、
  前記第1回転軸(R1)は、前記スピンドルアーム受容セクション(21)の第1エンドセクション(215)及び前記第1スピンドルアームセクション(31)の第1エンドセクション(315)に配置され、
  前記第2回転軸(R2)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の第2エンドセクション(316)及び前記第2スピンドルアームセクション(32)の第1エンドセクション(325)に配置されており、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)は、前記スピンドルアーム(30)を受容するために前記マシンベース(20)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(211)及び第2サブセクション(212)を備え、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)の前記第1サブセクション(211)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1回転軸(R1)周りの回転運動のための第1回転トルクを前記第1スピンドルアームセクション(31)に伝達する第1の張力付与駆動装置(213)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)を受容するために前記スピンドルアーム受容セクション(21)において互いに隔てて配置された第1サブセクション(311)及び第2サブセクション(312)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)の前記第1サブセクション(311)は、前記第2スピンドルアームセクション(32)の前記第2回転軸(R2)周りの回転運動のための第2回転トルクを前記第2スピンドルアームセクション(32)に伝達する第2の張力付与駆動装置(313)を備え、
  前記第1スピンドルアームセクション(31)は、前記第1スピンドルアームセクション(31)へ向けての前記第2スピンドルアームセクション(32)の回転運動を止めるためのバッファセクション(317)を備える、ことを特徴とする工作機械(1)。
【請求項12】
  前記マシンベース(20)は、前記スピンドルアーム受容セクション(21)を受容するための受容面(200)を備え、
  前記工作機械(1)のための据付スペースの天井面から前記工作機械(1)のベース面への方向によって上下方向が定義され、
  前記スピンドルアーム受容セクション(21)は、前記受容面(200)の上方、下方及び側方のうちいずれかに配置されている、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の工作機械(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、ワークの機械加工のための工作機械に関し、当該工作機械は、工具またはワークを受容するためのスピンドルを有するスピンドルアームを備え、当該スピンドルアームは、加工スペース内でのスピンドルの位置決めのために動き得るよう、マシンベースに配置されたスピンドルアーム受容セクションに取り付けられている。
 
【背景技術】
【0002】
  先行技術において、ワークの機械加工のための工作機械であって、スピンドルの旋回運動を直線並進運動と組み合わせたものが知られている。
【0003】
  特許文献1には、ワークの機械加工のための工作機械であって、マシンベースの上を若しくはマシンベースに沿ってモータにより並進可能な工具スライドを、1つの加工スピンドル及び加工対象ワークを受容するための1つのワークキャリアを少なくとも備える加工ユニットのキャリアとして備えるものが記載されている。工具スライドは、マシンベースの上を若しくはマシンベースに沿って並進可能に案内され、その長手方向にモータにより移動可能な2つのクロススライドを備えるクロスキャリアを含み、当該2つのクロススライドの間には、加工ユニットが、加工スピンドルの軸方向運動のために、少なくとも2つの剛な旋回アームを備えるカップリング機構によるヒンジ結合を介して配置されている。
【0004】
  これらの機械は、そのスピンドルの限られた可動性のため、角張った若しくは湾曲したワーク表面の走査には向いていない。
【0005】
  複数の部分から成り、細長い形状で、したがってねじり抵抗に劣る、比較的大きなリーチを有する旋回アームの場合、旋回運動のために必要な回転トルクをスピンドルの位置決め精度を損なうことなく伝達し、同時に、機械加工時に発生する荷重を受容可能な構造を選択するという問題が生じる。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1188511号明細書
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
  したがって、本発明の1つの課題は、個々のスピンドルアームセクションの回転運動のための回転トルクを、スピンドルアーム端部のスピンドルの位置決めが高精度で実現されるように伝達することが可能な、ワークの機械加工のための工作機械を提供することである。
【0008】
  さらに、本発明の1つの課題は、スピンドルの1つの連続的な並進運動の間に、ワーク表面の可能な限り大きな部分を加工することができる工作機械を提供することである。
 
【課題を解決するための手段】
【0009】
  これらの課題は、請求項1に従う工作機械によって解決される。従属請求項は、本発明による工作機械の有利な実施例に関連している。
【0010】
  ワークの機械加工のための本発明による工作機械は、工具またはワークを受容するためのスピンドルを有するスピンドルアームを備え、当該スピンドルアームは、加工スペース内でのスピンドルの位置決めのために動き得るよう、マシンベースに配置されたスピンドルアーム受容セクションに取り付けられている。
【0011】
  ここで、スピンドルアームは、スピンドルの旋回のために、細長い要素として形成され、スピンドルアーム受容セクションにヒンジ結合され、スピンドルアーム受容セクションに対して第1回転軸の周りを回転可能な第1スピンドルアームセクションと、細長い要素として形成され、第1スピンドルアームセクションにヒンジ結合され、第1スピンドルアームセクションに対して第2回転軸の周りを回転可能な第2スピンドルアームセクションと、を備え、第1回転軸は、スピンドルアーム受容セクションの第1エンドセクション及び第1スピンドルアームセクションの第1エンドセクションに配置され、第2回転軸は、第1スピンドルアームセクションの第2エンドセクション及び第2スピンドルアームセクションの第1エンドセクションに配置されている。
【0012】
  スピンドルアーム受容セクションは、スピンドルアームを受容するためにマシンベースにおいて互いに隔てて配置された第1サブセクション及び第2サブセクションを備え、スピンドルアーム受容セクションの第1サブセクションは、第1スピンドルアームセクションの第1回転軸周りの回転運動のための第1回転トルクを第1スピンドルアームセクションに伝達する第1の張力付与駆動装置を備えている。
【0013】
  第1スピンドルアームセクションは、第2スピンドルアームセクションを受容するために互いに隔てられてスピンドルアーム受容セクションに配置された第1サブセクション及び第2サブセクションを備え、第1スピンドルアームセクションの第1サブセクションは、第2スピンドルアームセクションの第2回転軸周りの回転運動のための第2回転トルクを第2スピンドルアームセクションに伝達する第2の張力付与駆動装置を備えている。
【0014】
  これにより、スピンドルアームは、全体として旋回することができるが、同時に、そのセクションごとに旋回することもできる。第1及び第2スピンドルアームセクションを細長い要素として形成することにより、スピンドルアームを同時に動かす際、スピンドルアームを折り畳む動き、または、展開する動きが可能となる。このようにして、少数の単独並進運動によって加工スペースの大きな範囲への到達が可能であり、それにより、スピンドルは、その最終調整位置へ迅速に移動することができる。
【0015】
  個々のスピンドルアームセクションを、それぞれの基端側にあるスピンドルアームセクションの2つのサブセクションの間に装着すること、もしくは、第1スピンドルアームセクションをスピンドルアーム受容セクションの2つのサブセクションの間に装着することにより、吊り下げの際の高い安定性及び長いスピンドルアームの高いねじり剛性が達成される。
【0016】
  第1及び第2スピンドルアームセクションの回転のための駆動装置を、それぞれの継手部に直接的に装着することにより、必要とされる回転トルクを過不足なくそれぞれの先端側にあるスピンドルアームセクションに伝達することができる。それによって、スピンドルは、その運動が、スピンドルアームセクションの他方の端部において、したがってスピンドルから比較的遠く隔たった位置で生じる第1スピンドルアームセクションの回転運動の結果としても生じるにもかかわらず、スピンドルアームの一端において正確に位置決めされ得る。1つの継手部における駆動装置の数は、1つに限定されることはなく、それぞれの継手部においてどれだけの荷重が伝達されなければならないか、即ち、例えばスピンドルアームセクションの重量や、機械加工の方式、もしくは加工対象の材料に依存する。スピンドルアーム受容セクション及びスピンドルアームセクションのそれぞれの第2サブセクションにも、それぞれ1つの駆動装置が装着され得る。スピンドルアーム受容セクション及びスピンドルアームセクションの全てではないがいくつかの第2サブセクションに1つの駆動装置を装着することも、同様に可能である。
【0017】
  駆動装置への張力付与は、伝動装置内のバックラッシュを低減させ、したがってスピンドルの正確な位置決めに寄与する。
【0018】
  好ましくは、本発明による工作機械においては、第1スピンドルアームセクションの第1エンドセクションが、スピンドルアーム受容セクションの2つのサブセクションの間に配置されることにより、スピンドルアーム受容セクションの2つのサブセクションの間の距離が、第1スピンドルアームセクションの2つのサブセクションの間の距離より大きい。
【0019】
  したがって、スピンドルアームセクションの幅方向の寸法は、段階的に小さくなっている。そのような配置により、第1及び第2スピンドルアームセクションの間に非常に小さな角度を形成すること、即ちスピンドルアームをほぼ完全に折り畳んで、第1及び第2スピンドルアームをほぼ平行にすることが可能である。それによって、スピンドルを、第1スピンドルアームセクションの近くに位置付けることも可能である。こうして、スピンドルのための旋回範囲が全体として拡大される。
【0020】
  好ましくは、第1の張力付与駆動装置及び第2の張力付与駆動装置は、それぞれ4つの機械的に張力を付与された駆動エレメント及びそれぞれ1つの駆動エレメントを備えている。
【0021】
  これにより、大きな駆動エレメントによって、必要とされる回転トルクを伝達するための大型の駆動装置を実現することができ、にもかかわらず、この駆動装置は、4つの駆動装置のうちそれぞれ2つが機械的に張力を付与されることができ、したがってバックラッシュがほぼ完全に除去されるため、非常に正確に作動するという利点が得られる。
【0022】
  好ましくは、第1の張力付与駆動装置の4つの駆動エレメントは、スピンドルアーム受容セクションに、最大180°の中心角を有する円弧に沿って配置され、第2の張力付与駆動装置の4つの駆動エレメントは、第1スピンドルアームセクションに、円弧に沿って均等に配置されている。
【0023】
  スピンドルアーム受容セクション及び第1スピンドルアームセクションに関する異なる配置は、第1回転軸の継手部及び第2回転軸の継手部における駆動エレメントの異なる大きさを、その根拠としている。利用可能な旋回領域を制限することなく、駆動エレメント(複数)を駆動エレメントの周りに均等に配置し得るよう、第2回転軸の駆動エレメントが十分に小さいのに対して、これは、第1回転軸の大きな駆動エレメントにおいては、もはや可能ではない。
【0024】
  好ましくは、工作機械は、さらに、第2スピンドルアームセクションに対して第3回転軸の周りを回転可能な、スピンドルを受容するための第3スピンドルアームセクションをさらに含み、第3スピンドルアームセクションは第2スピンドルアームセクションにヒンジ結合されており、第3回転軸は第2スピンドルアームセクションの第2エンドセクションに位置しており、第2スピンドルアームセクションは、第3スピンドルアームセクションの第3回転軸周りの回転運動のための第3回転トルクを第3スピンドルアームセクションに伝達する第3の駆動装置を備えている。
【0025】
  第3回転軸という形態での第3の自由度によって、加工スペースにおけるスピンドルの位置決めに加えて、例えばスピンドルに受容された工具を用いてワークの表面の輪郭を走査し加工できるようスピンドルを調整することも可能となる。その際、本発明による工作機械は、3つのスピンドルアーム回転軸に限定されることはなく、スピンドルアームは3つより多くの(例えば4つの)個々に動き得るセクションを備えることができる。
【0026】
  好ましくは、第1回転軸、第2回転軸及び第3回転軸は互いに平行に方向付けられており、好ましくは、工作機械は、第1スピンドルアームセクションの第1回転軸周りの回転運動、第2スピンドルアームセクションの第2回転軸周りの回転運動、及び、第3スピンドルアームセクションの第3回転軸周りの回転運動を同時に生じさせることにより、第3スピンドルアームセクションのスピンドルのエンドセクションが、平行な回転軸(複数)に垂直な平面内において矩形のパスを描くように、スピンドルアーム受容セクションの第1の張力付与駆動装置、第1スピンドルアームセクションの第2の張力付与駆動装置及び第2スピンドルアームセクションの第3の駆動装置を制御するように設計された数値制御装置をさらに含んでいる。
【0027】
  即ち、スピンドルアームの前方に位置決めされた例えば立方体形状のワークについて、当該ワークのスピンドルアームの方を向いた表面及び後方を向いた表面を、スピンドルの連続的な運動において、スピンドルアームセクションをそれぞれの回転軸の周りに同時に回転させることにより、走査することができる。スピンドルの相応する連続的な走査運動が、ワークの丸みが付けられた縁部または球形のワークにおいても可能である。ワークが追加的に回転させられた場合、それにより、スピンドルの全周加工運動が可能である。
【0028】
  好ましくは、スピンドルアーム受容セクション及び第1スピンドルアームセクションに配置された張力付与駆動装置はサイクロイド伝動装置として構成されており、また、第2スピンドルアームセクションに配置された第3の張力付与駆動装置は冷却されたトルク駆動装置として構成されている。
【0029】
  サイクロイド伝動装置は、とりわけ耐摩耗性に優れ、長寿命であり、長いスピンドルアーム及び機械加工に関して十分に高い荷重を伝達することができるという長所を備えている。トルク駆動装置は、大きな加速性及びシステムの高いダイナミクスを可能にし、機械要素がないためにメンテナンスに手がかからないという長所を備えている。冷却は、トルク駆動装置において、増大した熱発生の補償に寄与する。
【0030】
  好ましくは、スピンドルアームは、第2スピンドルアームセクションが第1スピンドルアームセクションにヒンジ結合されている位置に、導管を案内するためのガイドエレメントを含み、ガイドエレメントは、複数の導管を別々に案内するための複数のセグメントを備えている。
【0031】
  スピンドルアームの駆動装置へのエネルギ供給のため、及び、冷却されたトルク駆動装置への冷却媒体供給のため、電流ケーブルまたは流体案内チューブのような供給導管が、スピンドルアームの様々な位置へ、もしくは、スピンドルまで、導かれなければならない。これらは、好ましくはスピンドルアームの内部を導かれる。第2スピンドルアームセクションの旋回運動の際の、第2回転軸の継手部における導管の曲げ荷重を回避するために、当該継手部にはガイドエレメントが設けられ、様々な供給導管がガイドエレメントの様々なセグメントを通じて導かれる。その際、供給導管は、継手部に若しくはその内部に固定されておらず、浮遊した状態でガイドエレメントを通じて導かれている。スピンドルアームは複数のガイドエレメントを備えることができ、それにより、複数の継手部またはスピンドルアームの各継手部に、対応するガイドエレメントを備える。
【0032】
  好ましくは、本発明による工作機械は、さらに、ワークまたは工具を受容するために、ターンテーブル回転軸の周りを回転可能なターンテーブルを、マシンベースに備えている。
【0033】
  通常、加工対象のワークはターンテーブル上に固定され、加工工具はスピンドル内に受容されている。しかしながら、ワークをスピンドルに、工具をターンテーブル上に固定することも可能である。以上で説明したスピンドルアームの可動性は、ワーク表面が加工可能となるために必要な距離に達するまでスピンドルをターンテーブルに接近させ、また、ワークを空中で走査するのに役立つ。上方を向いたワークの表面の加工も、スピンドルアームの運動によって可能である。しかしながら、スピンドルアームと反対側を向いたワークの面を加工可能とするために、ターンテーブルが必要であり、当該ターンテーブルによって、スピンドルアームを必要に応じてワークの他の面に向けることができる。
【0034】
  好ましくは、本発明による工作機械は、さらに、ターンテーブルを受容するための第1直線軸を含み、ターンテーブルは第1直線軸に沿って移動可能であり、ターンテーブル回転軸は第1直線軸に対して0°と90°の間の角度で方向付けられている。
【0035】
  ワークを、高さ方向及び長さ方向に加えて、幅方向においても加工可能とするために、その位置は、スピンドルアーム受容セクションまでの距離を一定に保ったまま、スピンドルに対して横方向に移動可能でなければならない。これは、例えば移動可能なターンテーブルによって実現される。これにより、テーブル上におけるワークの固定面を除いて、ワークの表面の全体が、スピンドルヘッドによって到達可能となる。さらに、ターンテーブルは、旋回可能(即ち、ターンテーブル回転軸以外の別の軸の周りに)であってもよく、それにより、例えばワークをスピンドルアームの方へ傾けることができる。(第1及び第2スピンドルアームセクションをほぼ一杯に伸ばした場合の)スピンドルアームの大きなリーチ、並びに、第3スピンドルアームセクションをスピンドルアーム受容セクションに接近させることが可能なことにより、小さなワークも大きなワークも、全周加工することが可能である。
【0036】
  好ましくは、本発明による工作機械は、さらに、スピンドルアーム受容セクションを受容するための第2直線軸を含み、第2直線軸は第1回転軸に平行に方向付けられ、スピンドルアーム受容セクションは、第2直線軸に沿って移動可能にマシンベースに配置されている。
【0037】
  とりわけ、長いワークの場合、ターンテーブルの代わりに、スピンドルアーム、または、ターンテーブル及びスピンドルアームの両方が移動可能であることは、有利であり得る。
【0038】
  好ましくは、第1スピンドルアームセクションは、第1スピンドルアームセクションへ向けての第2スピンドルアームセクションの回転運動を止めるためのバッファセクションを備えている。
【0039】
  これにより、とりわけスピンドルアームが急速なまたは制御されない運動をする場合に、第1及び第2スピンドルアームセクションの損傷が回避されるという利点が得られる。
【0040】
  好ましくは、マシンベースは、スピンドルアーム受容セクションを受容するための受容面を備え、工作機械のための据付スペースの天井面から工作機械のベース面への方向によって上下方向が定義され、スピンドルアーム受容セクションは、受容面の上方、下方及び側方のうちいずれかに配置されている。
【0041】
  これにより、必要に応じて、または、スペースの状況に合わせて、旋回アームを、マシンベースの上に立てた状態で、または、横に吊り下げた状態で、取り付けることができるという利点が得られる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明による工作機械の一実施例を、斜め前方から示す図である。
【
図2A】本発明による工作機械の一実施例を、斜め前方から断面で示す図である。
【
図2B】本発明による工作機械のガイドエレメントの一実施例を示す図である。
【
図3A】本発明による工作機械の一実施例を側方から示す図である。
【
図3B】本発明による工作機械の一実施例を側方から断面で示す図である。
【
図4】本発明による工作機械の一実施例を他の側方から示す図である。
【
図5】本発明による工作機械の一実施例を、斜め後方から示す図である。
【
図6】本発明による工作機械の一実施例を、前方から示す図である。
【
図7】本発明による工作機械の一実施例を、後方から示す図である。
【
図8A】本発明による工作機械の一実施例を、長い工具のためのスピンドルの位置決め運動の1つの位置において示す図である。
【
図8B】本発明による工作機械の一実施例を、スピンドルの位置決め運動の他の位置において示す図である。
【
図8C】本発明による工作機械の一実施例を、スピンドルの位置決め運動の他の位置において示す図である。
【
図8D】本発明による工作機械の一実施例を、スピンドルの位置決め運動の他の位置において示す図である。
【
図8E】本発明による工作機械の一実施例を、スピンドルの位置決め運動の他の位置において示す図である。
【
図9A】本発明による工作機械の一実施例を、短い工具のためのスピンドルの位置決め運動の1つの位置において示す図である。
【
図9B】本発明による工作機械の一実施例を、スピンドルの位置決め運動の他の位置において示す図である。
【
図9C】本発明による工作機械の一実施例を、スピンドルの位置決め運動の他の位置において示す図である。
【
図10】本発明による工作機械の他の実施例を示す図である。
【
図11】本発明による工作機械の他の実施例を他の視点から示す図である。
 
【発明を実施するための形態】
【0043】
  以下において、実施例及び例示的な図面に基づいて、本発明が詳細に記述・説明される。
 
【0044】
  図1は、本発明による工作機械1の一実施例を、斜め前方の視点から示している。マシンベース20の受容面200の上には、第1サブセクション211及び第2サブセクション212の2つの部分から成るスピンドルアーム受容セクション21が取り付けられているが、
図1においては、第1サブセクション211のみが見えており、第2サブセクション212はスピンドルアーム30によって隠されている。
 
【0045】
  スピンドルアーム30は3つの部分により構築されており、第1スピンドルアームセクション31、第2スピンドルアームセクション32及び第3スピンドルアームセクション33から成っている。第1スピンドルアームセクション31は、スピンドルアーム受容セクション21のサブセクション211,212の間に配置された第1エンドセクション315と、第1サブセクション311及び第2サブセクション312の2つの部分により構築された第2エンドセクション316とを備える細長い部材である。第2スピンドルアームセクション32は、同様に、第1スピンドルアームセクション31のサブセクション311,312の間に配置された第1エンドセクション325と、この実施形態では第1サブセクション321及び第2サブセクション322の2つの部分により構築された第2エンドセクション326とを備える細長い部材である。第3スピンドルアームセクション33は、第2スピンドルアームセクション32のサブセクション321,322の間に配置され、スピンドル34を支持している。このように、スピンドルアーム30のいずれのセクションも、厳密にスピンドルアーム30の他の1つのセクションに取り付けられており、細長い要素の1つの端部における互いに隔てられたサブセクションの分岐形状は、スピンドルアーム受容セクション21を起点として、スピンドルアーム30の全体(第1、第2及び第3スピンドルアームセクション31,32,33)を経て、スピンドル34が受容されるスピンドルアーム30の端部まで延びている。その際、スピンドルアーム受容セクション21のサブセクション211,212は互いに連結されておらず、他方、第1スピンドルアームセクション31のサブセクション311,312、第2スピンドルアームセクション32のサブセクション321,322は、それぞれ細長い形状のスピンドルアームセクションの中央へ向かう方向において連結されている。
 
【0046】
  スピンドルアーム30の3つの部分から成る形状によって、スピンドルアーム30の3つの全てのセクション31,32,33は独立して旋回することができ、このときスピンドル34は、スピンドルアームセクション31,32,33の旋回運動の和を実現する。詳細には、そのために第1スピンドルアームセクション31の第1エンドセクション315がスピンドルアーム受容セクション21の第1エンドセクション215にヒンジ結合されており(スピンドルアーム受容セクション21の第2エンドセクション216は、マシンベース20の受容面200の上に取り付けられている)、それにより、第1スピンドルアームセクション31(及び、したがってスピンドルアーム30の全体)は第1回転軸R1の周りを回転可能である。第1スピンドルアームセクション31への回転運動の伝達のための伝動装置の配置を、
図3に基づいて、より詳細に説明する。同様に、第2スピンドルアームセクション32の第1エンドセクション325が第1スピンドルアームセクション31の第2エンドセクション316にヒンジ結合されており、それにより、第2スピンドルアームセクション32は(第3スピンドルアームセクション33及びスピンドル34と共に)第2回転軸R2の周りを回転可能である。第3スピンドルアームセクション33は、第3回転軸R3の周りを回転可能な状態で第2スピンドルアームセクション32の第2エンドセクション326に取り付けられており、長手方向においてスピンドル回転軸R4(
図2A参照)の周りを回転可能なスピンドル34の受容に用いられる。このように、スピンドルアームの3つの継手部の全てはヒンジとして形成されており、3つの回転軸R1,R2,R3は互いに平行に、かつ、工作機械1のベース面に平行に方向付けられている。
 
【0047】
  さらに、本発明による工作機械1のマシンベース20は、第1直線軸61の2本のガイドレールを備えており、当該ガイドレールの上を1つのスライド51が回転軸R1,R2,R3と平行に並進可能である。スライド51の上には、1つのターンテーブル50が取り付けられており、当該ターンテーブル50は、工作機械1のベース面に垂直なターンテーブル回転軸R5(
図2A参照)の周りを回転可能である。ターンテーブル50は、さらにスライド51の上で旋回可能に形成されていてもよい。
 
【0048】
  図2Aは、本発明による工作機械1の、スピンドルアーム30の長手方向に沿った断面を示している。一方では、幅方向における第1スピンドルアームセクション31及び第2スピンドルアームセクション32の補強部材、並びに、第2スピンドルアームセクション32の第2エンドセクション326におけるスピンドル34の配置が、他方では、スピンドルアームセクション31,32,33の平行な回転軸R1,R2,R3、スピンドル回転軸R4、及び、ターンテーブル回転軸R5の位置が、良好に見て取れる。
 
【0049】
  第1回転軸R1の空間における位置は、固定されている。第2回転軸R2及び第3回転軸R3の方向も同様に不変、即ち第1回転軸R1と平行であるが、その床からの高さは、第1スピンドルアームセクション31の方向(R2について)、若しくは、第1スピンドルアームセクション31及び第2スピンドルアームセクション32の方向(R3について)に依存する。スピンドル回転軸R4の方向は、スピンドル34の配向と一致しており、3つのスピンドルアームセクション31,32,33の全ての方向に依存する。ターンテーブル回転軸R5の方向は、スピンドルアーム30から独立しており、旋回可能ではないターンテーブル50にあっては、床面と垂直である。
 
【0050】
  第2回転軸の継手部にはガイドエレメント36が示されており、当該ガイドエレメント36を通じて導管70(冷却流体のための供給配管及び電流ケーブル)が案内される。ガイドエレメント36の1つの例示的な形態が
図2Bに示されている。ガイドエレメント36は円形であり、円形のカバー361、及び、ガイドエレメント36を複数のセグメント363に分割するウェブ362を有している。導管70は、それぞれセグメント363を通じて案内され、第2回転軸R2の周りを第2スピンドルアームセクション32が回転する際の曲げ荷重を回避するために、ガイドエレメント36には固定されていない。
 
【0051】
  ガイドエレメント36は、第2スピンドルアームセクション32と相互回転不能に結合されており、それにより、第2スピンドルアームセクション32の旋回運動に際し、対応して共に回転する。したがって、第2スピンドルアームセクション32の第2エンドセクション326まで案内される導管70は、第2スピンドルアームセクション32の内部において、その長手方向に真っ直ぐに案内され得る。
 
【0052】
  第1回転軸R1の継手部及び第3回転軸R3の継手部も、対応するガイドエレメント36を備えていてよい。
 
【0053】
  図3Aは、本発明による工作機械1の一実施例を側方から示している。この図において、3つの回転軸R1,R2,R3は紙面に垂直である。第1スピンドルアームセクション31への回転運動の伝達のために、スピンドルアーム受容セクション21の第1サブセクション211は、第1の張力付与駆動装置213を備えており、当該第1の張力付与駆動装置213は、4つの円形の駆動エレメント213A−213Dと、駆動エレメント213A−213Dの半径と比較してより大きな、例えば6倍の半径を有する1つの円形の駆動エレメント213Eとから成っている。駆動エレメント213A−213Dは、駆動エレメント213Eの周囲に配置されており、協働して回転トルクを駆動エレメント213Eに伝達する。バックラッシュの除去及びそれによるスピンドル34のより精密な位置決めのための駆動エレメント213A−213Dへの張力付与は、例えば、4つの駆動エレメント213A−213Dのうちそれぞれ2つに、それぞれ2つの駆動エレメント213A,213Bもしくは213C,213D及び駆動エレメント213Eの円形平面内の1つの第3の固定点の周りを延びて2つの三角形を形成するベルトによって機械的に張力を付与することによって実現され得る。スピンドルアーム受容セクション21における駆動エレメント213A−213Dは、駆動エレメント213Eの周囲に均等に配置されているのではなく、第1スピンドルアームセクション31の旋回範囲を制限することがないよう、駆動エレメント213Eの下半分の円弧上にのみ配置されている。スピンドルアーム受容セクション21における第1の張力付与駆動装置213は、他の伝動装置と比較して特に高い剛性において際立っているサイクロイド伝動装置として構成することができる。張力付与されたサイクロイド伝動装置を用いて、比較的重く長いスピンドルアーム30を正確に動かすことができ、それにより、スピンドル34の位置決めのための3つの回転運動のうち1つがスピンドル34から離れたスピンドルアーム30の反対側の端部において生じ、第2の回転運動がスピンドルアーム30のほぼ中央において生じるにもかかわらず、スピンドル34を正確に位置決めすることができる。
 
【0054】
  第1スピンドルアームセクション31の回転運動とは独立して生じる回転運動の第2スピンドルアームセクション32への伝達のために、第1スピンドルアームセクション31の第1サブセクション311は、第2の張力付与駆動装置313を備えており、当該第2の張力付与駆動装置313は、4つの円形の駆動エレメント313A−313Dと、駆動エレメント313A−313Dの半径と比較してより大きな、例えば2倍の半径を有する1つの円形の駆動エレメント313Eとから成っている。駆動エレメント313A−313Dは、駆動エレメント313Eの周囲に配置されており、協働して回転トルクを駆動エレメント313Eに伝達する。バックラッシュの除去及びそれによるスピンドル34のより精密な位置決めのための駆動エレメント313A−313Dへの張力付与は、例えば、4つの駆動エレメント313A−313Dのうちそれぞれ2つに、それぞれ2つの駆動エレメント313A,313Bもしくは313C,313D及び駆動エレメント313Eの円形平面外の1つの第3の固定点の周りを延びて2つの三角形を形成するベルトによって機械的に張力を付与することによって実現され得る。第1スピンドルアームセクション31における駆動エレメント313A−313Dは、駆動エレメント213Eの周囲に均等に配置されている。第1スピンドルアームセクション31における第2の張力付与駆動装置313は、同様に、サイクロイド伝動装置として構成することができる。
 
【0055】
  第1及び第2スピンドルアームセクション31,32の回転運動とは独立して生じる回転運動の第3スピンドルアームセクション33への伝達のために、第2スピンドルアームセクション32の第2エンドセクション326は第3の駆動装置323を備えている。
図3Aに示された実施例において、第2スピンドルアームセクション32の第2エンドセクション326、並びに、対応するスピンドルアーム受容セクション21及び第1スピンドルアームセクション31のエンドセクション215及び316は、2分割された、もしくは分岐した形状として形成されており、それにより、この実施例においては、第3の駆動装置323が第2スピンドルアームセクション32のサブセクション321,322の間に位置している。第3の駆動装置323は、冷却されているが故に熱的安定性において、高いダイナミクスにおいて、また、高い駆動剛性において際立っている冷却されたトルク駆動装置として構成することができる。
 
【0056】
  スピンドルアーム30の可動性を、
図3Bに基づいてさらに説明する。
図3Bには、本発明による工作機械の一実施例の、
図3Aにおけるものと同一の視点からの断面図が示されている。スピンドルアーム30の回転軸R1,R2,R3は、紙面に垂直である。スピンドルアーム受容セクション21は、マシンベース20の受容面200の上に配置されているが、
図3Bにおいては、スピンドルアーム受容セクション21の空間的に分離された2つのサブセクション211,212のうち1つのみを見ることができる。スピンドルアーム受容セクション21において、スピンドルアーム30は第1スピンドルアームセクション31の第1エンドセクション315においてヒンジ結合されており、それにより、スピンドルアーム受容セクション21の第1エンドセクション215及び第1スピンドルアームセクション31の第1エンドセクション315は1つのヒンジを形成している。関連する要素(即ち、スピンドルアーム受容セクション21の第1エンドセクション215、第1スピンドルアームセクション31の第1エンドセクション315、及び、大きな車輪状の駆動エレメント213E)の大きさにより、第1の張力付与駆動装置213のモータは、この継手部において、その中空シャフト内に場所を取ることなく収容され得る。第1スピンドルアームセクション31にはバッファセクション317があり、当該バッファセクション317は、第1スピンドルアームセクション31へ向けての第2回転軸R2周りの第2スピンドルアームセクション32の運動を止める。
 
【0057】
  いくらか小さな形態の同様の構造が、第2回転軸R2の継手部にもある。そこでは、第2スピンドルアームセクション32が、そのエンドセクション325によって、第1スピンドルアームセクション31の第2エンドセクション316にヒンジ結合されている。駆動エレメント213Eと比較してより小さな第2の張力付与駆動装置313の駆動エレメント313Eも示されている。ここでも再び、第1スピンドルアームセクション31の第2エンドセクション316の2つのサブセクション311,312のうち1つのみが示されている。
 
【0058】
  第3回転軸R3の継手部には、第3スピンドルアームセクション33にスピンドル34があり、当該第3スピンドルアームセクション33は、第2スピンドルアームセクション32の第2エンドセクション326のサブセクション311,312の間に収容され、第3回転軸R3の周りを回転可能である。スピンドル34内に受容された工具35(図示せず)は、機械加工を実行するために、単独でまたはスピンドルヘッドと共に、軸R4の周りを回転可能である。
 
【0059】
  同様に、スライド51の上にパレットを備え軸R5の周りを回転可能なテーブル50が示されており、当該スライド51は第1直線軸61のガイドレールの上に並進可能に搭載されている。
 
【0060】
  図4は、本発明による工作機械1の一実施例の構造を、
図3Aとは反対側から示している。この実施例において、工作機械1の両側における駆動装置の配置は対称ではない。スピンドルアーム受容セクション21の第2サブセクション212においては、第1サブセクション211(
図3A参照)と全く同様に、4つの駆動エレメント214A−Dが1つの駆動エレメント214Eを回転させる一方、第1スピンドルアームセクション31の第2サブセクション312には、第1サブセクション311とは対照的に、駆動エレメントがない。駆動装置の配置は、それぞれの継手部において伝達されるべき回転トルクの大きさに依存し、本発明による工作機械1の他の実施例においては、対称、または、他の態様で非対称であり得る。
 
【0061】
  図5,6及び7は、本発明による工作機械1の実施例を他の視点から(
図5は斜め後方から、
図6は前方から、
図7は後方から)示しており、そこでは、2つのサブセクション211,212を備えるスピンドルアーム受容セクション21、並びに、それぞれ2つのサブセクション311,312及び321,322をその2つのエンドセクション316及び326に備えるピンドルアームセクション31及び32の構造における2部分形態もしくは分岐形態が明らかになる。
 
【0062】
  図8A−Eは、立方体形状のワーク2の全方位加工中における、長い穴開け工具35を備えたスピンドルアーム30の様々な加工姿勢を示しており、スピンドルアーム30の工具35は、以下においてワーク2の前面及び上面と称される立方体の2つの隣接する表面に沿ったパスをたどっている。
図8A−Cにおいてスピンドル34は前面に向けられており、
図8Dは上面への移行を示している。
図8Eにおいてスピンドル34は上面に向けられている。
 
【0063】
  図8Aには、工具35を備えるスピンドル34のワーク2の前面の下縁への位置決めが示されており、
図8Bには、スピンドル34(工具35は示されていない)のワーク2の前面の中央領域への位置決めが、
図8Cには、スピンドル34(工具35は示されていない)のワーク2の前面の上縁への位置決めが示されている。
図8A−Cによれば、ワーク2の前面に沿うスピンドルの並進または加工運動において、スピンドルアーム受容セクション21と第1スピンドルアームセクション31の間の角度が、下から上へ大きくなり、第1スピンドルアームセクション31と第2スピンドルアームセクション32の間の角度βに大きな変化がないことが明白である。第2スピンドルアームセクション32と第3スピンドルアームセクション33の間の角度γも同様に大きくなる。しかしながら、角度の変化は、ワーク2の大きさ及びスピンドルアーム受容セクション21からの距離に依存する。さらに、ある特定のスピンドルの配向が達成される角度の組み合わせ(α;β;γ)は必ずしも一義的なものではない。なぜなら、例えば、同時により大きな角度αが選択される場合、より小さな角度βにおいても、同一の配向が達成されるからである。したがって、複雑な演算の故に、スピンドルアームセクション31,32,33の旋回運動の制御に、ある特定のスピンドルの配向に適した角度の組み合わせ(α;β;γ)を算出するCNC制御が用いられることが好ましい。
図8A−Cに示されたワーク2よりも大きな高さを有するワーク2の加工のためには、第1スピンドルアームセクション31はさらに右方へ旋回させられ、角度αは180°よりも大きくなる。
 
【0064】
  第1スピンドルアームセクション31の旋回を通じて、スピンドルアーム受容セクション21と第1スピンドルアームセクション31の間の角度α>180°が形成される可能性は、しかしながら、
図8Dにおいて明白なように、
図8A−Eに示されたワーク2においても既に用いられている。そこには、前面の加工から上面の加工へのスピンドルアームの運動の推移が示されている。長い加工工具35の故に、工具の先端は、ワーク上面から十分遠くに保持される。しかしながら、この位置においても、例えば球形のワーク2の加工が可能である。
 
【0065】
  図8Eは、長い工具35による立方体形状のワーク2の上面の加工のためのスピンドルの位置を示している。この位置においては、第2スピンドルアームセクション32と工具35の長手軸は、直角をなしている。
 
【0066】
  図9A−Cには、
図8Eと同様に立方体形状のワーク2の上面加工が示されているが、スピンドル34に取り付けられた短い工具35が用いられている。
図9Aはワーク2の上面の前縁の加工を示し、
図9Bは上面の中央領域の加工を示し、
図9Cはワーク2の上面の後縁の加工を示している。長い工具を用いた上面加工と比較して、角度βは、上面に沿った並進パスの全体を通じて、より小さい。
 
【0067】
  図10及び11は、本発明による工作機械1のさらなる実施例を、斜め前方からの2つの異なる視点から示している。
図1−9とは異なり、
図10及び11においてマシンベース20は長いマシンベッドの形態を有しており、スピンドルアーム30を備えるスピンドルアーム受容セクション21は、3つの回転軸R1,R2,R3に平行に延びる第2直線軸62の2つのガイドレールの上を並進可能である。
 
【0068】
  さらに、第2スピンドルアームセクション32の第2エンドセクション326は、2分割された、もしくは分岐した形状としては形成されておらず、スピンドル34を備える第3スピンドルアームセクション33に隣接して配置された1つの部材のみから成っている。
 
【0069】
  加えて、ターンテーブル50は、もはや並進可能ではなく、回転のみ可能であるようにマシンベース20の内部に組み込まれている。
 
【0070】
  回転運動のための駆動装置は、この実施例においては、第1回転軸R1の継手部の中空シャフトの内部(第1の張力付与駆動装置213)、第1スピンドルアームセクション31の第1サブセクション311の内部(第2の張力付与駆動装置313)及び第2スピンドルアームセクション32の第2エンドセクション326の内部(第3の張力付与駆動装置323)に収容されている。
 
【0071】
  本発明は、以上で説明された実施例に限定されることはなく、本発明のさらなる実施例を提供すべく、以上で説明された実施例の個々の観点もしくは個々の特徴を組み合わせることが可能である。
 
【0072】
  特に、本発明による工作機械1は、2つの直線軸61及び62を含んでいてもよい。さらに、本発明による工作機械1は、工作機械1の反対側にある2つの加工ステーションを含んでいてもよく、その際、一方の加工ステーションから他方の加工ステーションへの交換のために、第2スピンドルアームセクション32が360°旋回可能であることが利用される。本発明による工作機械1は、それぞれが独立して回転可能な3つより多いスピンドルアームセクション31,32,33から(例えば4つのスピンドルアームセクションから)構成されていてもよい。さらに、ワーク2をスピンドル34に取り付け、工具35をターンテーブル上に組み付けることも可能である。
 
 
【符号の説明】
【0073】
1                  工作機械
2                  ワーク
20                マシンベース
200              受容面
21                スピンドルアーム受容セクション
211              スピンドルアーム受容セクションの第1サブセクション
212              スピンドルアーム受容セクションの第2サブセクション
213              第1の張力付与駆動装置
213A−213D  第1の張力付与駆動装置の駆動エレメント
213E            第1の張力付与駆動装置の駆動エレメント
214              第4の張力付与駆動装置
214A−214D  第4の張力付与駆動装置の駆動エレメント
214E            第4の張力付与駆動装置の駆動エレメント
215              スピンドルアーム受容セクションの第1エンドセクション
216              スピンドルアーム受容セクションの第2エンドセクション
30                スピンドルアーム
31                第1スピンドルアームセクション
311              第1スピンドルアームセクションの第1サブセクション
312              第1スピンドルアームセクションの第2サブセクション
313              第2の張力付与駆動装置
313A−313D  第2の張力付与駆動装置の駆動エレメント
313E            第2の張力付与駆動装置の駆動エレメント
315              第1スピンドルアームセクションの第1エンドセクション
316              第1スピンドルアームセクションの第2エンドセクション
317              バッファセクション
32                第2スピンドルアームセクション
321              第2スピンドルアームセクションの第1サブセクション
322              第2スピンドルアームセクションの第2サブセクション
323              第3の駆動装置
325              第2スピンドルアームセクションの第1エンドセクション
326              第2スピンドルアームセクションの第2エンドセクション
33                第3スピンドルアームセクション
34                スピンドル
345              スピンドルのエンドセクション
35                工具
36                ガイドエレメント
361              カバー
362              ウェブ
363              セグメント
40                数値制御
50                ターンテーブル
51                スライド
61                第1直線軸
62                第2直線軸
70                導管
R1                第1回転軸
R2                第2回転軸
R3                第3回転軸
R4                スピンドル回転軸
R5                ターンテーブル回転軸