特許第6571808号(P6571808)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6571808電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571808
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法。
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20190826BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   B62D5/04
   B62D6/00
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-7224(P2018-7224)
(22)【出願日】2018年1月19日
(65)【公開番号】特開2019-123475(P2019-123475A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2018年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】596016557
【氏名又は名称】上銀科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】王俊凱
(72)【発明者】
【氏名】廖益圍
(72)【発明者】
【氏名】黄鈞▲イク▼
(72)【発明者】
【氏名】顏銘賜
(72)【発明者】
【氏名】王信富
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−105604(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0097625(KR,A)
【文献】 特開2010−101582(JP,A)
【文献】 特開2016−120893(JP,A)
【文献】 特開2003−211995(JP,A)
【文献】 特開平04−252823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04−6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動パワーステアリングシステムに応用され、ステップa)からステップ)を含み、
前記電動パワーステアリングシステムは、ピニオンステアリング機構、小歯車、ナットおよびモーターを備え、
前記ピニオンステアリング機構は、ハウジングおよびステアリングラックを有し、前記ハウジングは第一開口部および第二開口部を有し、前記ステアリングラックは第一開口部および第二開口部を貫通するようにハウジング内に装着され、歯部およびねじ部を有し、
前記小歯車は、ステアリングコラムに連結され、前記ステアリングラックの前記歯部と噛み合うように装着され、
前記ナットは、前記ハウジング内の前記ステアリングラックの前記ねじ部に螺合され
前記モーターは、前記ハウジングに固定され、少なくとも一つの回転子、出力軸、主動輪、被動輪およびベルトを有し、前記回転子は前記出力軸を回転させ、前記主動輪は前記出力軸に接続され、前記被動輪は前記ナットに被さり、前記ベルトは前記主動輪および前記被動輪に被さり、
前記ステップa)即ち情報の測定は、第一センサーによって前記ステアリングコラムの運転時間当たりの回転数を測定し、第一測定データを作成し、第二センサーによって前記回転子の時間当たりの回転数を測定し、第二測定データを作成することであり、
前記ステップb)即ち情報の判読は、前記回転子と前記ステアリングコラムとの相対的な回転関係および判断基準がデータベースに予め保存してある電子制御ユニット(ECU)によって前記第一測定データおよび前記第二測定データを読み取ることであり、
前記ステップc)即ちずれ状態の判断は、前記第一測定データまたは前記第二測定データおよび前記データベース内の前記回転関係に基づいて前記電子制御ユニットが対比データを作成し、前記第二測定データまたは前記第一測定データと前記対比データとを比較し、両者の差が閾値より小さい場合を正常と判定し、両者の差が前記閾値より大きい場合をずれ現象と判定することであり、
前記ステップd)即ち健康状態の診断は、前記電子制御ユニットがずれ現象の発生した時間を記録し、予め設定した2秒間の時間帯において、あらかじめ前記電子制御ユニットに保存された2回/2秒の頻度閾値よりずれ現象の発生頻度が小さい場合を警戒状態と判定し、ずれ現象の発生頻度が前記頻度閾値より大きい場合を危険状態と判定することであり、
前記ステップd)において、さらに前記ステアリングコラムに位置するトルクセンサーによって運転手の出力を測定するか、電流センサーによって前記モーターの出力を測定し、出力信号を前記電子制御ユニットに出力し、続いて高出力条件を設定し、前記出力信号、即ち出力値が前記高出力条件より大きい場合は高出力状態と判定され、ずれ現象が発生しない場合は正常状態と判定され、非高出力状態下でずれ現象が発生した場合は危険状態と判定され、高出力状態下でずれ現象が発生し、前記発生頻度が前記頻度閾値より小さい場合は警戒状態と判定され、高出力状態下でずれ現象が発生し、前記発生頻度が前記頻度閾値より大きい場合は危険状態と判定され、
前記電子制御ユニットはユーザーにベルトドライブの健康状態を知らせるために前記正常状態または警戒状態をランプで表示し、
前記電子制御ユニットは危険状態と判定された場合にユーザーにベルトライブの健康状態が危険状態にあることを警告するために、文字、音声等の警告手段を通じて警告情報を発信することを特徴とする、
電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法。
【請求項2】
前記第一測定データおよび前記第二測定データは、回転角度、角速度および角加速度のいずれか一つまたはその組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法。
【請求項3】
前記ステップc)において、ずれ現象が発生した際、前記電子制御ユニットは警告情報を発信することによって注意を呼びかけることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリングシステムの測定方法に関し、詳しくは電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車技術が発展し、環境保護の意識が高まるのに伴って電動パワーステアリングシステムが油圧式パワーステアリングシステムの代わりに自動車に応用されるようになった。その理由は下記の通りである。
【0003】
1、エンジンが回転する際、油圧式パワーステアリングシステムの場合には油圧ポンプが稼働状態を維持し、エンジンの部分的な動力を消耗するため、燃料油の消費量を増加させる。電動パワーステアリングシステムの場合にはバッテリーがエネルギーのもとになり、稼働方式がエンジンと異なり、独立するため、エンジンの動力を消耗することがない。一方、電動パワーステアリングシステムは油圧式パワーステアリングシステムより稼働効率が高いため、燃料油を削減できる。
【0004】
2、油圧式パワーステアリングシステムは機能の異なる部品が異なる位置に配置され、配線を配置することによってパワーステアリング機能を構成する。それに対し、電動パワーステアリングシステムは同じ装置に統合されることができるため、取付およびメンテナンスの便をはかることができる。
【0005】
3、油圧式パワーステアリングシステムに対し、電動パワーステアリングシステムは油圧作動オイルを交換する必要がなく、環境に比較的優しい。
【0006】
4、油圧式パワーステアリングシステムは補助パワーが一定に維持されるため、自動車の走行状況に応じて補助パワーを変えることができない。それに対し、電動ステアリングシステムはソフトウェアの制御によって異なる運転状況に応じて補助パワーを調整し、運転時の安定性および快適性を改善することができる。
【0007】
電動ステアリングシステムは、コラム型電動ステアリングシステム(Column−Type EPS)、ピニオン型電動ステアリングシステム(Pinion−Type EPS)およびラック型電動ステアリングシステム(Rack−Type EPS)に分かれる。
【0008】
ラック型電動ステアリングシステム(Rack−Type EPS)の場合、稼働方式は下記の通りである。
ユーザーがハンドルを回すと、ステアリングコラムは歯車とステアリングラックの歯部とを噛み合わせてステアリングラックを移動させる。同時にステアリングコラムに装着されたトルクセンサーは電子制御ユニットに情報を伝達する。続いて、モーターは電子制御ユニットの指令によって主動輪を駆動するとともにベルトを作動させる。ベルトはナットに被さる被動輪を駆動するとともにナットを回転させる。続いてナットはステアリングラックのねじ部を移動させる。上述した稼働方式により、パワーステアリング機能をユーザーに提供する。
【0009】
ラック型電動ステアリングシステムにおいて、ベルトは異なる張力下で耐える最大限のトルクがベルトパラメータおよび装着方式によって予測される。しかし、ベルトが長期にわたって使用された場合、機構およびベルトは緩くなったり、変形または老化したりするため、ベルトの張力、即ち耐える最大限のトルクは低下し、主動輪、ベルトまたは被動輪との間の回転は一致せず、ずれ現象が生じる。
ずれ現象に伴ってベルトドライブの老化が進行するため、電動パワーステアリングシステムは補助パワーを十分に生じることができなくなる。或いは、ベルトが断裂したうえで方向転換を行う際、補助パワーが急になくなるため、危険を招く。従って、ずれ現象を測定することによって電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を確実に把握することは重視すべきである。
【0010】
電動パワーステアリングシステムの健康状態(State of Health, SOH)を測定する方法について、特許文献1は下記のステップを開示している。まず動態モードによって一つ目のタイヤの復元トルクを計算する。続いて状態センサーによって二つのタイヤの復元トルクを検知する。続いて、一つ目のタイヤの復元トルクと二つ目のタイヤの復元トルクとの差を計算する。続いて、両者の差を持続的に観察し、0から1の間の健康状態数値を算出する。続いて、健康状態数値に基づいて電動パワーステアリングシステムを制御する。
しかしながら、上述した特許文献1の測定方法に基づいて求めた健康状態数値、即ち電動パワーステアリングシステム全体に対する健康状態数値から、単一部品を対象に健康状態を探ることはできない。つまり、稼働中のベルトを対象に健康状態を測定することによってベルトが突然に断裂してドライバーを危険に巻き込むことを避けることはできない。
【0011】
それに対し、特許文献2は角度センサーが失効した時の対応方法と、システムに異常が発生したか否かを診断する方法とを開示している。しかしながら、該案は突然発生した異常状態しか検知できないため、電動パワーステアリングシステムの健康状態を把握できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US8634986A1号公報
【特許文献2】WO2017061257A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法を提供することを主な目的とする。電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法は、ずれ現象を判断することによって電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を把握し、電動パワーステアリングシステムを失効させるリスクを低減する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するための電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法は、電動パワーステアリングシステムに応用される。
前記電動パワーステアリングシステムはピニオンステアリング機構、小歯車、ナットおよびモーターを備える。ピニオンステアリング機構はハウジングおよびステアリングラックを有する。ハウジングは第一開口部および第二開口部を有する。ステアリングラックは第一開口部および第二開口部を貫通するようにハウジング内に装着され、歯部およびねじ部を有する。小歯車はステアリングコラムに連結され、ステアリングラックの歯部と噛み合うように装着される。ナットはハウジング内のステアリングラックのねじ部に螺合される。モーターはハウジングに固定され、少なくとも一つの回転子、出力軸、主動輪、被動輪およびベルトを有する。回転子は出力軸を回転させる。主動輪は出力軸に接続される。被動輪はナットに被さる。ベルトは主動輪および被動輪に被さる。電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法は下記のステップを含める。ステップa)即ち情報の測定は、第一センサーによってステアリングコラムの運転時間当たりの回転数を測定し、第一測定データを作成し、第二センサーによって回転子の時間当たりの回転数を測定し、第二測定データを作成することである。ステップb)即ち情報の判読は、回転子とステアリングコラムとの相対的な回転関係および判断基準がデータベースに予め保存してある電子制御ユニット(ECU)によって第一測定データおよび第二測定データを読み取ることである。ステップc)即ちずれ状態の判断は次の通りである。第一測定データまたは第二測定データおよびデータベース内の回転関係に基づいて電子制御ユニットは対比データを作成し、第二測定データまたは第一測定データと対比データとを比較する。両者の差が閾値より小さい場合が正常と判定される。両者の差が閾値より大きい場合がずれ現象と判定される。
【0015】
ずれ現象が発生すると、電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態が低下することをユーザーに伝達し、電動パワーステアリングシステムを失効させるリスクを低減する。
【0016】
第一測定データおよび第二測定データは回転角度、角速度および角加速度のいずれか一つまたはその組み合わせである。
【0017】
ステップc)において、ずれ現象が発生した際、電子制御ユニットは警告情報を発信することによってユーザーに警告する。
【0018】
電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法はさらにステップd)を含む。ステップd)即ち健康状態の診断は次のとおりである。電子制御ユニットはずれ現象の発生した時間を記録し、予め設定した時間帯において、あらかじめ電子制御ユニットに保存された頻度閾値よりずれ現象の発生頻度が小さい場合を警戒状態と判定し、ずれ現象の発生頻度が頻度閾値より大きい場合を危険状態と判定する。ステップd)において、危険状態が判明した場合、電子制御ユニットは警告情報を発信することによってユーザーに警告する。
【0019】
或いは、ステップd)において、ステアリングコラムに位置するトルクセンサーによって運転手の出力を測定するか、電流センサーによってモーターの出力を測定し、出力信号を電子制御ユニットに出力し、続いて高出力条件を設定する。出力信号、即ち出力値が高出力条件より大きい場合は高出力状態と判定される。ずれ現象が発生しない場合は正常状態と判定される。非高出力状態下でずれ現象が発生した場合は危険状態と判定される。高出力状態下でずれ現象が発生し、発生頻度が頻度閾値より小さい場合は警戒状態と判定される。高出力状態下でずれ現象が発生し、発生頻度が頻度閾値より大きい場合は危険状態と判定される。上述したステップにより、使用状況を詳細に切り分け、ユーザーの要望に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態においての電動パワーステアリングシステムを示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態においての電動パワーステアリングシステムを示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態においての電動パワーステアリングシステムの一部分を示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態においての電動パワーステアリングシステムの構築を示す模式図である。
図5】本発明の第1実施形態による電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法を示すプロセスである。
図6】本発明の第2実施形態による電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法を示すプロセスである。
図7】本発明の第2実施形態による電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法に高出力状態の判断条件が追加された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明による電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法を図面に基づいて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1から図3に示すように、第1実施形態による電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法は電動パワーステアリングシステム10に応用される。電動パワーステアリングシステム10はピニオンステアリング機構11、小歯車12、ナット13およびモーター14を備える。
【0023】
ピニオンステアリング機構11は、ハウジング111およびステアリングラック112を有する。ハウジング111は第一開口部111aおよび第二開口部111bを有する。ステアリングラック112は第一開口部111aおよび第二開口部111bを貫通するようにハウジング111内に装着され、歯部112aおよびねじ部112bを有する。複数の車輪を連結するタイロッド21はステアリングラック112に別々に接続され、駆動される。
【0024】
小歯車12は、ステアリングコラム121に連結され、ステアリングラック112の歯部112aと噛み合うように装着されるため、ステアリングコラム121の駆動力によって回転するとともにステアリングラック112の歯部112aを回転させる。ステアリングラック112は歯部112aの回転に伴って移動する。
【0025】
ナット13は、ハウジング111内のステアリングラック112のねじ部112bに螺合される。ナット13が回転するとステアリングラック112のねじ部112bを移動させる。
【0026】
モーター14は、ハウジング111に固定され、少なくとも一つの回転子(周知の技術のため図面未表示)、出力軸142、主動輪143、被動輪144およびベルト145を有する。主動輪143は出力軸142に接続される。被動輪144はナット13に被さる。ベルト145は主動輪143および被動輪144に被さる。モーター14が回転子によって出力軸142を回転させる際、動力は主動輪143を介してベルト145を運動させ、被動輪144を介してナット13へ伝達されることによってステアリングラック112のねじ部112bを移動させる。
【0027】
図1から図5に示すように、電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法は下記のステップを含む。
【0028】
ステップa)即ち情報の測定は、第一センサー15によってステアリングコラム121の運転時間当たりの回転数を測定し、第一測定データを作成し、第二センサー16によって回転子の時間当たりの回転数を測定し、第二測定データを作成することである。
【0029】
ステップb)即ち情報の判読は、電子制御ユニット(Electronic Control Unit,ECU)17によって第一測定データおよび第二測定データを読み取ることである。電子制御ユニットはデータベースDを有する。回転子とステアリングコラム121との相対的な回転関係および判断基準はデータベースDに予め保存される。電動パワーステアリングシステムが健康状態に維持される場合、回転関係は回転子とステアリングコラム121との間の回転比である。
【0030】
【数1】
【0031】
図4に示すように、ベルト145が伝動する際、主動輪143の歯の数Nm、回転子の回転角度θm、被動輪144の歯の数Nbsおよびナット13の回転角度θbsの間の関係は式1によって表示される。
【0032】
【数2】
【0033】
被動輪144がナット13を回転させる際、ナット13の回転数およびステアリングラック112の移動距離の比例関係は一定である。ステアリングラック112が移動すると、小歯車12はステアリングラック112のねじ部112bの駆動力によって回転する。式2に示すように、小歯車12の回転角度θswおよびステアリングラック112の移動距離の比例関係(線角伝達比)は一定である。小歯車12の回転角度はステアリングコラムの回転角度θswに等しい。
【0034】
主動輪143の歯の数Nmは48である。被動輪144の歯の数Nbsは148である。ナット13が360度回転すると、ステアリングラック112を8mm移動させる。小歯車12が360度回転すると、ステアリングラック112を48.68mm移動させる。上述した関係により、式3から式5を推知できる。
【0035】
【数3】
【0036】
式3に示すように、主動輪143および回転子の回転角度がθmである場合、ナット13の回転角度は0.3243θmである。
【0037】
【数4】
【0038】
式4に示すように、ナット13の回転角度が0.3243θmである場合、ステアリングラック112の歯部112aの移動距離は7.207*10−3θm(mm)である。
【0039】
【数5】
【0040】
【数6】
【0041】
式5に示すように、ステアリングラック112の歯部112aの移動距離が7.207*10−3θm(mm)である場合、小歯車12およびステアリングコラム121の回転角度θswは0.0533θm(deg)である。つまり、回転子およびステアリングコラム121の回転比例は式6によって表示される。
【0042】
ステップc)即ち、ずれ状態の判断は次の通りである。第一測定データまたは第二測定データおよびデータベースD内の回転関係に基づいて電子制御ユニット17は対比データを作成する。本実施形態は第二測定データを例として挙げるが、これに限らず、第一測定データを採用してもよい。電子制御ユニット17は第二測定データまたは第一測定データと対比データとを比較する。
両者の差が閾値より小さい(例えば閾値の10%)場合が正常と判定される。両者の差が閾値より大きい場合がずれ現象と判定される。
【0043】
ずれ現象が発生すると、電動パワーステアリングシステムにおいてベルト145、主動輪143および被動輪144からなる結合体の健康状態が低下することをユーザーに伝達し、電動パワーステアリングシステムを失効させるリスクを低減することができる。
【0044】
第一測定データおよび第二測定データは回転角度、角速度および角加速度のいずれか一つまたはその組み合わせである。
【0045】
本実施形態のステップc)において、ずれ現象が判定された際、電子制御ユニット17は警告情報を発信することによってユーザーに警告する。警告情報は文字、音声またはそれ以外の方式で表示される。
【0046】
(第2実施形態)
図1から図4および図6に示すように、本発明の第2実施形態による電動パワーステアリングシステムのベルトドライブの健康状態を測定する方法は第1実施形態に対し、さらにステップd)を含む。
ステップd)即ち健康状態の診断は次のとおりである。電子制御ユニット17はずれ現象の発生した時間を記録し、予め設定した時間帯(例えば2秒間)において、あらかじめ電子制御ユニット17に保存された頻度閾値(2回/2秒)よりずれ現象の発生頻度が小さい場合を警戒状態と判定し、ずれ現象の発生頻度が頻度閾値より大きい場合を危険状態と判定する。ステップd)において危険状態が判明した場合、電子制御ユニット17は警告情報を発信することによってユーザーに警告する。つまり、健康状態の判断結果は異なるランプで表示され、ユーザーに注意を促す。
【0047】
図7に示すように、ステップd)において、ステアリングコラム121に位置するトルクセンサー18(torque sensor)によって運転手の出力を測定するか、電流センサー19によってモーター14の出力を測定し、出力信号を電子制御ユニット17に出力する。続いて高出力条件を設定する。
出力信号、即ち出力値が高出力条件より大きい場合は高出力状態と判定される。ずれ現象が発生しない場合は正常状態と判定される。非高出力状態下でずれ現象が発生した場合は危険状態と判定される。高出力状態下でずれ現象が発生し、発生頻度が頻度閾値より小さい場合は警戒状態と判定される。高出力状態下でずれ現象が発生し、発生頻度が頻度閾値より大きい場合は危険状態と判定される。上述したステップにより、使用状況を詳細に切り分け、ユーザーの要望に近づけることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 電動パワーステアリングシステム
11 ピニオンステアリング機構(pinion steering mechanism)
111 ハウジング
111a 第一開口部
111b 第二開口部
112 ステアリングラック(steering rack)
112a 歯部(toothed portion)
112b ねじ部(screwed portion)
12 小歯車(pinion)
121 ステアリングコラム(steering column)
13 ナット
14 モーター
142 出力軸
143 主動軸
144 被動軸
145 ベルト
15 第一センサー
16 第二センサー
17 電子制御ユニット
18 トルクセンサー
19 電流センサー
21 タイロッド(tie rod)
D データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7