特許第6571814号(P6571814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6571814
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】布地における開口部の作製方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/00 20060101AFI20190826BHJP
   A41D 27/08 20060101ALI20190826BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   A41D27/00 A
   A41D27/08 B
   A41D13/002
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-17860(P2018-17860)
(22)【出願日】2018年2月5日
(65)【公開番号】特開2019-135334(P2019-135334A)
(43)【公開日】2019年8月15日
【審査請求日】2018年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】518041766
【氏名又は名称】株式会社東源
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】王 麗
【審査官】 長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−059568(JP,A)
【文献】 特開2018−066100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00 − 13/12
27/00 − 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地の表側又は裏側のいずれか一方に当て布を配置する当て布配置工程、前記布地及び前記当て布に設定した枠線に沿って前記布地及び前記当て布を縫合する第一の縫合工程、前記枠線よりも内側が内縁となるように前記布地及び前記当て布のそれぞれに開口を形成する開口形成工程、前記布地の表側又は裏側のいずれか他方であって前記開口の周囲に補強リングを配置する補強リング配置工程、前記開口を介して前記当て布を前記布地の表側又は裏側のいずれか他方に引き出し、前記当て布を前記布地の表側又は裏側のいずれか他方に反転させる当て布反転工程、前記枠線と同一又は相似形ないし略相似形となるように前記当て布反転工程後の前記開口の周囲を縫合する第二の縫合工程、及び、前記当て布の外縁部に沿って前記布地及び前記当て布を縫合する第三の縫合工程を、この順序で又は順序を一部変えて行う布地における開口部の作製方法であって、
前記枠線と相似形ないし略相似形の外縁を有する整形板を前記当て布に配置する整形板配置工程と、
前記整形板の前記外縁からはみ出る前記当て布を前記整形板の前記外縁にて折り返して、前記当て布の前記外縁部を前記枠線と相似形ないし略相似形に整形する整形工程と
をさらに含む
布地における開口部の作製方法。
【請求項2】
前記整形工程は、前記当て布の折返し部分が前記枠線に到達する手前までの長さとなるように、前記当て布の折返し部分の端部を切り揃えることを含む
請求項1に記載の布地における開口部の作製方法。
【請求項3】
前記整形工程は、前記当て布の前記外縁部を整形するに際し、アイロン処理を含み、前記補強リング配置工程よりも先に行われる
請求項1又は2に記載の布地における開口部の作製方法。
【請求項4】
前記補強リングとして、前記補強リングの前記内縁が前記当て布反転工程後の折り返された前記開口の前記内縁と一致する大きさのものが用いられる
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の布地における開口部の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地における開口部の作製方法に関し、特に、ファン付き衣服におけるファン取付用の開口部の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、作業服などの衣服の分野において、衣服内環境の向上を目的として、衣服の所定箇所に開口部を設け、この開口部にファンを取り付け、外気を衣服内に取り込んで、衣服内を冷却するファン付き衣服が提供されている。この種のファン付き衣服においては、取り付けたファンがその重量によって倒れて傾いたり、ファンを取り付けることで開口部が傷むことがないよう、開口部に補強がなされる。
【0003】
補強された開口部を作製する方法としては、特許文献1〜5に記載されたものが知られている。これらに共通しているのは、衣服の布地の表側に当て布を配置する当て布配置工程、布地及び当て布に設定した枠線に沿って布地及び当て布を縫合する第一の縫合工程、枠線よりも内側が内縁となるように布地及び当て布のそれぞれに開口を形成する開口形成工程、布地の裏側であって開口の周囲に補強リングを配置する補強リング配置工程、開口を介して当て布を布地の裏側に引き出し、当て布を布地の裏側に反転させる当て布反転工程、当て布反転工程後の開口の周囲を縫合する第二の縫合工程、及び、当て布の外縁部に沿って布地及び当て布を縫合する第三の縫合工程を、この順序で又は順序を一部変えて行うという点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5672642号公報
【特許文献2】特許6108327号公報
【特許文献3】特許6159047号公報
【特許文献4】特許6229915号公報
【特許文献5】特許6230037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の方法においては、開口部の内縁は、ファンの形状に合わせて円形であるため、第二の縫合工程により形成される縫合線は円形であるのに対し、当て布は矩形であるため、第三の縫合工程により形成される縫合線は矩形である。このため、ファン付き衣服を外部から見ると、ファンの周りを第二の縫合工程により形成される円形の縫合線が取り囲み、この円形の縫合線の周りを第三の縫合工程により形成される矩形の縫合線が取り囲むというデザインになり、この不統一感によって開口部周りの見た目が美しくないといった問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、見た目を美しく仕上げることができる布地における開口部の作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る布地における開口部の作製方法は、
布地の表側又は裏側のいずれか一方に当て布を配置する当て布配置工程、布地及び当て布に設定した枠線に沿って布地及び当て布を縫合する第一の縫合工程、枠線よりも内側が内縁となるように布地及び当て布のそれぞれに開口を形成する開口形成工程、布地の表側又は裏側のいずれか他方であって開口の周囲に補強リングを配置する補強リング配置工程、開口を介して当て布を布地の表側又は裏側のいずれか他方に引き出し、当て布を布地の表側又は裏側のいずれか他方に反転させる当て布反転工程、枠線と同一又は相似形ないし略相似形となるように当て布反転工程後の開口の周囲を縫合する第二の縫合工程、及び、当て布の外縁部に沿って布地及び当て布を縫合する第三の縫合工程を、この順序で又は順序を一部変えて行う布地における開口部の作製方法であって、
枠線と相似形ないし略相似形の外縁を有する整形板を当て布に配置する整形板配置工程と、
整形板の外縁からはみ出る当て布を整形板の外縁にて折り返して、当て布の外縁部を枠線と相似形ないし略相似形に整形する整形工程と
をさらに含む。
【0008】
かかる構成によれば、開口部に補強リングが設けられることにより、開口部が補強されるとともに、開口部の剛性が高められる。これにより、開口部に取り付けたファンがその重量によって倒れて傾いたり、ファンを取り付けることで開口部が傷むことがない。
【0009】
しかも、当て布反転工程において、当て布が反転されることにより、開口部の内縁は、枠線に沿ったものとなるが、第二の縫合工程において、枠線と同一又は相似形ないし略相似形となるように当て布反転工程後の開口の周囲を縫合することにより、第二の縫合工程により形成される縫合線は、開口部の内縁と相似形ないし略相似形となり、また、整形工程において、当て布の外縁部を枠線と相似形ないし略相似形に整形するとともに、第三の縫合工程において、当て布の外縁部に沿って布地及び当て布を縫合することにより、第三の縫合工程により形成される縫合線も、開口部の内縁と相似形ないし略相似形となる。これにより、開口部の内縁を取り囲む、第二の縫合工程により形成される縫合線と、この縫合線を取り囲む、第三の縫合工程により形成される縫合線とは、それぞれ開口物の内縁と相似形ないし略相似形となるとともに、互いに相似形ないし略相似形となるため、統一感のある外観となる。
【0010】
ここで、本発明に係る布地における開口部の作製方法の一態様として、整形工程は、当て布の折返し部分が枠線に到達する手前までの長さとなるように、当て布の折返し部分の端部を切り揃えることを含むことができる。
【0011】
かかる構成によれば、開口部の周縁部は、布地、補強リング、折り返した当て布の二層の合計四層となり、開口部の剛性が増すとともに、当て布の折返し部分が当て布の折り返さない部分や補強リングと略同形状となり、開口部の周縁部の厚みが均一となる。
【0012】
また、本発明に係る布地における開口部の作製方法の他態様として、整形工程は、当て布の外縁部を整形するに際し、アイロン処理を含み、補強リング配置工程よりも先に行われるようにすることができる。
【0013】
かかる構成によれば、アイロン処理により、当て布の外縁部(特に折返し部のエッジ)をきれいに仕上げることができ、しかも、補強リングがアイロンの熱に弱い素材で構成されている場合であっても、補強リングが熱損傷を受けることはない。
【0014】
さらに、本発明に係る布地における開口部の作製方法の別の態様として、補強リングとして、補強リングの内縁が当て布反転工程後の折り返された開口の内縁と一致する大きさのものが用いられるようにすることができる。
【0015】
かかる構成によれば、折り返された開口の内縁における端面と、補強リングの内縁における端面とが当接した状態となり、開口部における補強リングの位置ずれが生じにくくなる。
【発明の効果】
【0016】
以上の如く、本発明に係る布地における開口部の作製方法によれば、第二の縫合工程により形成される縫合線と、第三の縫合工程により形成される縫合線とは、それぞれ開口部の内縁と相似形ないし略相似形となるとともに、互いに相似形ないし略相似形となるため、統一感のある外観となるため、開口部を見た目を美しく仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、ファン付き衣服の外観図である。
図2図2(a)は、衣服の開口部にファンを取り付けた状態の側面図、図2(b)は、図2(a)の部分拡大断面図である。
図3図3は、本実施形態に係る布地における開口部の作製方法のフロー図である。
図4図4は、同作製方法における当て布配置工程の説明図であって、図4(a)は、布地の表側に当て布を配置した状態の平面図、図4(b)は、図4(a)の部分拡大断面図である。
図5図5は、同作製方法における第一の縫合工程の説明図であって、図5(a)は、布地及び当て布に設定した枠線に沿って布地及び当て布を縫合した状態の平面図、図5(b)は、図5(a)の部分拡大断面図である。
図6図6は、同作製方法における整形板配置工程の説明図であって、図6(a)は、補強リングの外縁よりも大きくかつ枠線と相似形の外縁を有する整形板を当て布に配置した状態の平面図、図6(b)は、図6(a)の部分拡大断面図である。
図7図7は、同作製方法における整形工程の説明図であって、図7(a)は、整形板の外縁からはみ出る当て布を整形板の外縁にて折り返して、当て布の外縁部を枠線と相似形に整形した状態の平面図、図7(b)は、図7(a)の部分拡大断面図である。
図8図8は、同作製方法における開口形成工程の説明図であって、図8(a)は、枠線よりも内側が内縁となるように布地及び当て布のそれぞれに開口を形成した状態の平面図、図8(b)は、図8(a)の部分拡大断面図である。
図9図9は、同作製方法における補強リング配置工程の説明図であって、図9(a)は、布地の裏側であって開口の周囲に補強リングを配置した状態の平面図、図9(b)は、図9(a)の部分拡大断面図である。
図10図10は、同作製方法における当て布反転工程の説明図であって、図10(a)は、開口を介して当て布を布地の裏側に引き出し、当て布を布地の裏側に反転させた状態の平面図、図10(b)は、当て布を反転する様子を示す部分拡大断面図、図10(c)は、図10(a)の部分拡大断面図である。
図11図11は、同作製方法における第二の縫合工程の説明図であって、図11(a)は、枠線と相似形となるように当て布反転工程後の開口の周囲を縫合した状態の平面図、図11(b)は、図11(a)の部分拡大断面図である。
図12図12は、同作製方法における第三の縫合工程の説明図であって、図12(a)は、当て布の外縁部に沿って布地及び当て布を縫合した状態の平面図、図12(b)は、図12(a)の部分拡大断面図である。
図13図13(a)ないし(e)は、同作製方法の各種変更例のフロー図である。
図14図14(a)及び(b)は、第三の縫合工程における縫合形態の各種変更例の平面図である。
図15図15(a)ないし(c)は、他実施形態に係る第二の縫合工程の説明図であって、図15(a)は、補強リング上を縫合した状態の平面図、図15(b)は、図15(a)の部分拡大断面図、図15(c)は、合計三か所を縫合した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る布地の開口部及びこの開口部の作製方法の一実施形態として、ファン付き衣服におけるファン取付用の開口部及びこの開口部の作製方法について、図1ないし図12を参酌して説明する。
【0019】
図1に示す如く、ファン付き衣服(空調服と呼ばれたり、冷却服と呼ばれることもある)1は、例えば腰あたりの例えば左右二箇所に開口部11を設け、ここにファン2を取り付け、ファン2の駆動により外気を衣服の内側に取り込み、あるいは、衣服の内気を外部に排出して、衣服内を冷却するという構造のものである。
【0020】
図2に示す如く、ファン2は、ファン本体3と、ファン本体3に外嵌される短筒状の環状部材6とを備える。ファン本体3は、ファン翼(図示しない)やモータ(図示しない)を内蔵した胴体部4と、胴体部4の一端側に設けられた鍔部5とを備える。胴体部4は、短円柱状であることで、断面が円形であり、その直径は、同じく円形である開口部11の開口12の内径よりもわずかに小さいものである。
【0021】
環状部材6は、内面に雌ネジを有し、胴体部4の外面に形成された雄ネジと螺合することで、ファン本体3に外嵌される。環状部材6は、一端側に平坦部7を備える。平坦部7は、環状部材6がファン本体3に外嵌された状態で、ファン本体3の鍔部5と対向する。
【0022】
ファン2を開口部11に取り付けるには、まず、衣服1の布地10の表側から、開口部11の開口12にファン本体3の胴体部4を通す。次に、布地10の裏側に突出するファン本体3の胴体部4に環状部材6を外嵌する。そして、環状部材6をねじ込むことにより、開口部11の外縁部13をファン本体3の鍔部5と環状部材6の平坦部7とで挟み込む。これにより、ファン2は、開口部11に取り付けられる。外すときは、環状部材6を緩めてファン本体3から外して、ファン本体3を開口部11から引き抜く。なお、ファン本体3に対する環状部材6の外嵌構造は、ネジによる螺合構造に限られず、その他の公知となっている一般的な構造を採用することができる。
【0023】
開口部11は、ファン本体3の胴体部4を通す開口12と、開口12の周縁部13とで構成される。周縁部13は、布地10と、当て布14との間に、樹脂製、金属製あるいは紙製の補強リング15を配置した構造である。より詳しくは、周縁部13は、布地10、補強リング15、当て布14を折り返して二層にした、合計四層構造である。
【0024】
次に、この開口部11の作製方法について説明する。図3に示す如く、本実施形態に係る開口部11の作製方法は、当て布配置工程S1、第一の縫合工程S2、整形板配置工程S3、整形工程S4、開口形成工程S5、補強リング配置工程S6、当て布反転工程S7、第二の縫合工程S8、及び、第三の縫合工程S9からなる。
【0025】
当て布配置工程S1は、図4に示す如く、布地10の表側と当て布14の表側とが重なるようにして、布地10の表側に当て布14を配置する工程である(図4(b)において、左側の一点鎖線は、布地10において開口部11の中心となるところを表す。以下、同様。)。当て布14の配置箇所は、衣服1のうちで開口部11を設けたい箇所に設定する。当て布14は、本実施形態では、矩形のものを用い、布地10において開口部11の中心となるところに、当て布14の矩形の中心を合わせて、配置する。当て布14の大きさは、開口部11の周縁部13の多層構造を実現できる大きさであればよい。また、そのため、当て布14の形状は、必ずしも矩形に限定されず、例えば四角形以上の多角形であってもよく、円形であってもよい。また、当て布14は、布地10と同素材であってもよく、あるいは異素材であってもよい。開口部11の設計に合わせて適宜の材質が選ばれる。
【0026】
第一の縫合工程S2は、図5に示す如く、布地10及び当て布14に設定した枠線16に沿って布地10及び当て布14を縫合する工程である。これにより、布地10及び当て布14には、環状に閉じた第一の縫合線17が形成される。本実施形態においては、円形の開口部11を作製するため、枠線16及び第一の縫合線17は円形となっている。枠線16は、開口部11の開口12よりも小さめに設定する。縫合は、手縫いでもミシン縫いでも構わない。また、縫合は、一重縫いでもよいが、縫合強度を高めるために、二重縫い、三重縫いでもよい。また、縫合ピッチも適宜選ぶことができる。
【0027】
整形板配置工程S3は、図6に示す如く、補強リング15の外縁15aよりも大きくかつ枠線16と相似形の外縁18aを有する整形板18を当て布14の裏側に枠線16と同心に配置する工程である。整形板18は、金属製あるいは硬質樹脂製の板で、薄くて剛性が高いものが用いられる。本実施形態においては、枠線16より僅かに大きい内縁18bを有するリング状の整形板18を用いることで、整形板18を枠線16と同心に配置することを容易にしている。ただし、整形板18は、円板であってもよい。
【0028】
整形工程S4は、図7に示す如く、整形板18の外縁18aからはみ出る当て布14を整形板18の外縁18aにて折り返して、当て布14の外縁部を枠線16と相似形に整形する工程である。本実施形態においては、円形の開口部11を作製するため、当て布14の外縁14aは円形に整形される。また、整形工程S4では、必要に応じて、当て布14の折返し部分が枠線16に到達する手前までの長さとなるように、当て布14の折返し部分の端部を切り揃えることも行う。これにより、当て布14の折返し部分が当て布14の折り返さない部分と同形状となり、折り返した当て布14の厚みが均一となる。
【0029】
ここで、当て布14を折り返すにあたっては、当て布14の折返し部分が径の大きな状態から径の小さい状態になるため、余剰部分が発生する。そこで、この余剰部分については、(周方向における)両側を例えばV字状に折り込むことにより、解消され、折返し部分全体を平坦に仕上げることができる。図7(a)において、中心側ほど幅が狭くなる一対の線が複数、放射線状に描かれているが、これは、両側を例えばV字状に折り込んだことによりできる罫線を表している。
【0030】
整形工程S4は、例えばアイロンを用いて行われる。これにより、当て布14の外縁部(特に折返し部のエッジ)や、上記余剰処理部分がきれいに仕上げられる。そして、整形工程S4を終えると、整形板18は取り外される。
【0031】
開口形成工程S5は、図8に示す如く、枠線16よりも内側が内縁となるように布地10及び当て布14のそれぞれに開口10a,14bを形成する工程である。本実施形態においては、円形の開口10a,14bを形成しているが、開口部11の開口12の形状を画するのは、後述の理由により、枠線16であるため、円形の開口部11を作製するからといって、開口10a,14bの形状が円形である必要はない。ただし、布地10及び当て布14を部分切除して開口10a,14bを形成することから、円形であるのが作業性の観点で好ましい。
【0032】
補強リング配置工程S6は、図9に示す如く、布地10の裏側であって開口10a,14bの周囲に補強リング15を同心に配置する工程である。補強リング15は、当て布14の外縁(折返し部のエッジ)14aより小さい外縁15a及び枠線16よりも大きい内縁15bを有する環状のリングである。本実施形態においては、円形の開口部11を作製するため、補助リング15の外縁15a及び内縁15bは円形となっている。
【0033】
当て布反転工程S7は、図10に示す如く、開口10a,14bを介して当て布14を布地10の裏側に引き出し、当て布14を布地10の裏側に反転させる工程である。当て布14が反転することで、布地10の裏側と当て布14の折返し部分の表側とが重なる。また、当て布14が反転することで、布地10及び当て布14の開口10a,14bが折り返され、枠線16に沿って開口部11の開口12が形成される。さらに、当て布14が反転することで、折り返された開口10a,14bの内縁における端面と、補強リング15の内縁15bにおける端面とが当接した状態となり、補強リング15が同心円状に位置決め、固定される。
【0034】
第二の縫合工程S8は、図11に示す如く、枠線16と相似形となるように当て布反転工程S7後の開口12の周囲(開口部11の周縁部13)を縫合する工程である。これにより、布地10及び当て布14であって開口12の周りには、環状に閉じた第二の縫合線19が形成される。本実施形態においては、円形の開口部11を作製するため、第二の縫合線19は円形となっている。また、本実施形態においては、枠線16よりもわずか外側であって、補強リング15にはかからない箇所(布地10の開口10aにおける折返し部分と、当て布14の開口14bにおける折返し部分の合計四層が重なり合った箇所)を縫合している。あるいは、枠線16上の箇所を縫合し、第一の縫合線17と第二の縫合線19とが重なるようにしてもよい。縫合は、手縫いでもミシン縫いでも構わない。また、縫合は、一重縫いでもよいが、縫合強度を高めるために、二重縫い、三重縫いでもよい。また、縫合ピッチも適宜選ぶことができる。
【0035】
第三の縫合工程S9は、図12に示す如く、当て布14の外縁部に沿って布地10及び当て布14を縫合する工程である。これにより、布地10及び当て布14であって第二の縫合線19の周りには、環状に閉じた第三の縫合線20が形成される。本実施形態においては、円形の開口部11を作製するため、第三の縫合線20は、第二の縫合線19とともに円形となっている。縫合は、手縫いでもミシン縫いでも構わない。また、縫合は、一重縫いでもよいが、縫合強度を高めるために、二重縫い、三重縫いでもよい。また、縫合ピッチも適宜選ぶことができる。
【0036】
本実施形態に係る開口部11の作製方法は以上の工程からなり、この方法によれば、開口部11に補強リング15が設けられることにより、開口部11が補強されるとともに、開口部11の剛性が高められる。これにより、開口部11に取り付けたファン2がその重量によって倒れて傾いたり、ファン2を取り付けることで開口部11が傷むことがない。
【0037】
しかも、当て布反転工程S7において、当て布14が反転されることにより、開口部11の内縁は、枠線16に沿ったものとなるが、第二の縫合工程S8において、枠線16と相似形となるように当て布反転工程S7後の開口12の周囲を縫合することにより、第二の縫合工程S8により形成される第二の縫合線19は、開口部11の内縁と相似形となり、また、整形工程S4において、当て布14の外縁部を枠線16と相似形に整形するとともに、第三の縫合工程S9において、当て布14の外縁部に沿って布地10及び当て布14を縫合することにより、第三の縫合工程S9により形成される縫合線20も、開口部11の内縁と相似形となる。これにより、開口部11の内縁を取り囲む、第二の縫合工程S8により形成される第二の縫合線19と、この縫合線19を取り囲む、第三の縫合工程S9により形成される第三の縫合線20とは、それぞれ開口物11の内縁と相似形となるとともに、互いに相似形となり、統一感のある外観となる。このため、本実施形態に係る開口部11の作製方法によれば、開口部11を見た目を美しく仕上げることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る開口部11の作製方法によれば、整形工程S4において、当て布14の折返し部分が枠線16に到達する手前までの長さとなるように、当て布14の折返し部分の端部を切り揃えることにより、開口部11の周縁部13は、布地10、補強リング15、折り返した当て布14の二層の合計四層となり、開口部11の剛性が増すとともに、当て布14の折返し部分が当て布14の折り返さない部分や補強リング15と同形状となり、開口部11の周縁部13の厚みが均一となる。このため、本実施形態に係る開口部11の作製方法によれば、ファン2の取付安定性を増すことができる。
【0039】
また、本実施形態に係る開口部11の作製方法によれば、整形工程S4において、当て布14の外縁部をアイロンを用いて整形するが、整形工程S4は、補強リング配置工程S6よりも先に行われる。このため、本実施形態に係る開口部11の作製方法によれば、アイロン処理により、当て布14の外縁部(特に折返し部のエッジ)や、当て布14の折返しに伴って必要となる余剰処理部分をきれいに仕上げることができ、しかも、補強リング15がアイロンの熱に弱い素材で構成されている場合であっても、補強リング15が熱損傷するのを好適に防止することができる。
【0040】
また、本実施形態に係る開口部11の作製方法によれば、補強リング15として、補強リング15の内縁15bが当て布反転工程S7後の折り返された開口10a,14bの内縁と一致する大きさのものが用いられることにより、折り返された開口10a,14bの内縁における端面と、補強リング15の内縁15bにおける端面とが当接した状態となる。しかも、当て布反転工程S7において反転された当て布14が第三の縫合工程S9により布地10と結束されることにより、当て布14が補強リング15の外縁15aを抑え込んだ状態となる。このため、本実施形態に係る開口部11の作製方法によれば、開口部11の周縁部13内で補強リング15が不用意に動くのを拘束し、補強リング15を開口部11の周縁部13内の適正位置に固定することができる。
【0041】
なお、本発明に係る布地における開口部の作製方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態においては、整形工程を行ってから、開口形成工程を行うようにしているが、図13(a)に示す如く、整形板配置工程及び整形工程の前に開口形成工程を行うようにしてもよい。
【0043】
また、図13(b)に示す如く、最初に、布地10に開口10aを形成するとともに、当て布14に開口14bを形成しておき(開口形成工程)、両開口10a,14bが一致するようにして当て布14を布地10に配置する(当て布配置工程)ようにしてもよい。また、この場合、図13(c)、(d)に示す如く、当て布配置工程の前に整形板配置工程及び整形工程を行うことで、開口14bが形成されかつ外縁部が整形された当て布14を布地10に配置するというようにしてもよい。
【0044】
あるいは、図13(e)に示す如く、当て布配置工程の前に整形板配置工程及び整形工程を行うことで、外縁部が整形された当て布14を布地10に配置し、この後、開口形成工程を行うようにしてもよい。
【0045】
さらには、第二の縫合工程よりも先に第三の縫合工程を行う等、順序の変更が物理的に可能な工程については、順序を変更することができるのはいうまでもない。
【0046】
また、上記実施形態においては、第二の縫合工程S8において、枠線16と相似形となるように当て布反転工程S7後の開口12の周囲を縫合することにより、第二の縫合工程S8により形成される第二の縫合線19は、開口部11の内縁と相似形となり、また、整形工程S4において、当て布14の外縁部を枠線16と相似形に整形するとともに、第三の縫合工程S9において、当て布14の外縁部に沿って布地10及び当て布14を縫合することにより、第三の縫合工程S9により形成される縫合線20も、開口部11の内縁と相似形となり、これにより、開口部11の内縁を取り囲む、第二の縫合工程S8により形成される第二の縫合線19と、この縫合線19を取り囲む、第三の縫合工程S9により形成される第三の縫合線20とは、それぞれ開口物11の内縁と相似形となるとともに、互いに相似形となるようにしたが、本発明においては、厳密に相似形であることは必要ない。例えば、図14(a)に示す如く、第三の縫合線20が多角形であったり、図14(b)に示す如く、第三の縫合線20がジグザグであったり、あるいは第二の縫合線19がそういったものであったりと、外観上、略相似形であっても、統一感のある外観となるため、これらは本発明が意図するところである。
【0047】
また、上記実施形態においては、開口部11の形状は円形であるが、開口部の形状は必ずしも円形に限定されるものではない。取付対象物の形状に応じて適宜変更が可能である。
【0048】
また、上記実施形態においては、第二の縫合工程S8において、枠線16よりもわずか外側であって、補強リング15にはかからない箇所を縫合するようにしている。しかし、これに限定されない。例えば、図15(a)、(b)に示す如く、補強リング15のある箇所を縫合することも可能であり、これにより、開口部11の周縁部13内で補強リング15が不用意に動くのを拘束し、補強リング15を開口部11の周縁部13内の適正位置に固定する効果をさらに高めることができる。ただし、補強リング15に縫い針を通すことで、補強リング15の耐性が落ちるようであれば、避けるべきである。あるいは、図15(c)に示す如く、これら両方の箇所を縫合することも可能である。
【0049】
また、上記実施形態においては、ファン付き衣服とし、ファン2を取り付けるための開口部11について言及するものであった。しかし、本発明が意図する範囲は、ファン取付用の開口部に限定されるものではない。また、ファン取付用の開口部であっても、ファンの種類は冷却用に限定されるものではない。例えば、暖房用、換気用、空気清浄用などのファンであってもよい。
【0050】
また、上記実施形態においては、布地10の表側に配置した当て布14を布地10の裏側に反転して、開口部11を仕上げることで、開口部11を外部から見ると、当て布14は見えないようになっている。しかし、これに限定されるものではない。当て布14を布地10の裏側に配置し、当て布14を布地10の表側に反転して、開口部11を仕上げることで、当て布14が開口部11の正面にくるデザインであってもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、整形板配置工程S3は、補強リング15の外縁15aよりも大きくかつ枠線16と相似形の外縁18aを有する整形板18を用いるものであった。しかし、整形板18の外縁18aは、補強リング15の外縁15aよりも大きいものに限定されるものではなく、補強リング15の外縁15aと同じあるいは小さいものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…ファン付き衣服、2…ファン、3…ファン本体、4…胴体部、5…鍔部、6…環状部材、7…平坦部、10…布地、10a…開口、11…開口部、12…開口、13…周縁部、14…当て布、14a…外縁、14b…開口、15…補強リング、15a…外縁、15b…内縁、16…枠線、17…第一の縫合線、18…整形板、18a…外縁、18b…内縁、19…第二の縫合線、20…第三の縫合線
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