(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エレベーターのかごの中に設けられた子機と前記かごの外に設けられた親機との間の信号線列に対して接続された検出部であって、前記子機から前記親機へ送られる呼出信号の発生及びその後の消失を検出する呼出信号検出回路と、前記親機から前記子機へ送られる応答信号の発生及びその後の消失を検出する応答信号検出回路と、を有する検出部と、
前記呼出信号の発生、前記呼出信号の発生後の消失、前記応答信号の発生、及び、前記応答信号の発生後の消失を含むイベント群の中のいずれかのイベントが検出された場合に、当該イベントの内容を示すイベント情報をネットワーク経由で外部装置へ送信するイベント管理部と、
を含むことを特徴とする、エレベーター用インターホンの監視装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
(1)監視装置の構成
図1には、インターホンシステムを含むエレベーター管理システムが示されている。建物10にはエレベーターが設置されており、図示の例において、そのエレベーターは昇降運動する複数のかご12,14を有する。建物10には、エレベーターと共にエレベーター用インターホンシステムが設置されている。そのインターホンシステムは、インターホンと監視装置28とからなる。インターホンは、図示の例において、複数のかご12,14内に設置された複数の子機18,20と、管理人室16内に設置された親機26と、からなる。親機26が他の場所に設置されてもよい。また、複数の親機が並列に設置されてもよい。複数の子機18,20と親機26は、複数の信号線からなる信号線列によって接続されている。各かご12,14内には、呼出釦(非常呼出釦)22,24が設けられており、それらは複数の子機18,20に個別的に接続されている。親機26に対して、1台の子機のみが接続されてもよく、また3台以上の子機が接続されてもよい。
【0020】
監視装置28は、信号線列に対して接続されるものであり、親機26と並列に設けられている。監視装置28は、既に設置されたインターホンに対して後から接続可能なものである。信号線列に対して監視装置28を接続しても、インターホンの動作には影響が及ばず、インターホンが普通に動作する。信号線列から監視装置28を切り離してもインターホンの動作には影響が及ばない。監視装置28は、かごの外側における所定の場所、例えば管理人室16、機械室等に設置される。
【0021】
監視装置28は、インターホンシステムを外部装置に接続するためのインターフェイス装置であり、それはゲートウエイ(GW)と言い得る。監視装置28は、多数の機能を備えており、それらには監視機能及び点検機能が含まれる。すなわち、監視装置28は、信号線列を流れる各種の信号(親機子機間で授受される信号)を常時監視し、その監視結果を外部装置へ報告すると共に、その監視結果をログとして記録する監視機能を有する。また、監視装置28は、後に詳述する呼出信号生成回路を自動的に点検する点検機能を有する。その点に着目するならば監視装置28は点検装置である。
【0022】
監視装置28に対してエレベーター制御盤(エレベーター制御装置)31を接続し得る。それらが接続された状態において、必要に応じて、監視装置28とエレベーター制御盤31との間で信号のやり取りを行える。監視装置28の動作条件の設定又は変更に際しては、符号43で示すように、監視装置28に対してパーソナルコンピュータ(PC)が接続される。外部装置により、監視装置28の動作条件の設定及び変更がリモートで行われてもよい。
【0023】
例えば、かご14内において、乗客により、呼出釦24が操作されると、その呼出釦24から、それが接続された子機(以下、場合により「呼出子機」と言う。)20へ、操作信号(オン信号)が出力される。子機20の中には、入力された操作信号をトリガとして呼出信号を生成する呼出信号生成回路が設けられている。子機20において生成された呼出信号が、子機20から親機26へ、特定の信号線を介して、出力される(符号29を参照)。親機26において、呼出信号が入力されると、ブザーが鳴動し、同時に、呼出子機20に対応した発光素子が点灯する。その状態において、選局操作(子機選択操作)を行うと共に、送受話器(ハンドセット)を取り上げると(オフフック)、親機26と呼出子機20との間でインターホン通話を行うことが可能となる。具体的には、選局かつオフフックで、親機26から呼出子機20へ応答信号が出力される(符号30を参照)。
【0024】
各子機18,20内の呼出信号生成回路は、呼出釦22,24の操作があれば、呼出信号を生成し続ける保持機能を有している。応答信号が入力されると、呼出信号の生成状態の保持が解除される。もっとも、そのような構成は一例であり、後に
図16を用いて説明するように、インターホン仕様に応じて、保持機能を有しない呼出信号生成回路が設けられてもよい。
【0025】
子機18,20及び親機26の構成の詳細については後に
図2を用いて説明する。監視装置28の構成の詳細については後に
図3を用いて説明する。なお、各子機18,20内の呼出信号生成回路を点検する際に、監視装置28から各子機18,20へ疑似呼出信号が送られる。信号線32は疑似呼出信号を伝送するための特別な信号線である。各呼出信号生成回路の点検に関しては、後に
図9以降の各図を参照しながら詳述する。
【0026】
図1に示されるように、監視装置28は、ネットワーク33を介して、管理センター34に接続されている。ネットワーク33にはインターネットが含まれる。監視装置28は、無線通信又は有線通信により、ネットワーク33に接続される。管理センター34は、例えば、エレベーター保守会社において運営される遠隔管理装置であって、それにはエレベーター運行管理部36及び通話機器38が含まれる。
【0027】
エレベーター運行管理部36は、例えば情報処理装置により構成され、それによってエレベーターの運行状況が管理される。エレベーター運行管理部36は、必要に応じて、エレベーター制御盤31からの状態信号を処理し、また、エレベーター制御盤31に対して制御信号を出力する。エレベーター運行管理部36は、図示の構成例において、インターホンを管理する機能も備えている。その管理を行うために、監視装置28における監視結果が管理センター34へリアルタイムで報告される(符号40を参照)。
【0028】
通話機器38は、IP(Internet Protocol)電話を行うための機器である。実施形態においては、監視装置28がIP電話のための呼び出し機能及び中継機能を備えており、これにより、子機(呼出子機又は管理センター34で選択された子機)と通話機器38との間で通話を行うことが可能である。呼出子機から出力された呼出信号に対して親機26が不応答の場合、監視装置28は、管理センター34を呼び出す処理を実行する。接続成立後、監視装置28は、呼出子機と通話機器38との間での通話をサポートする。管理センター34側から、管理センター34が選択した子機へ電話をかけることも可能である。その場合にも、監視装置28は、通話機器38と選択された子機との間での通話をサポートする。
【0029】
なお、監視装置28とエレベーター運行管理部36との間でのデータの送受がサーバー41経由で行われてもよい。同様に、子機18,20と通話機器38の間での通話がサーバー42経由で行われてもよい。
【0030】
図2には、インターホンシステムの構成例が示されている。複数の子機18,20は、互いに同じ構成を有するので、子機18を代表させて、その構成を説明する。子機18は、通常、かごにおける壁面の中に埋設される。子機18は、マイク44、スピーカ46、通話回路48、呼出信号生成回路50等を有する。親機26(又は管理センター)との間での通話の際には、マイク44及びスピーカ46が利用される。通話回路48は、マイク44で生成された音声信号を親機26へ出力し、また、親機26からの音声信号をスピーカへ出力する回路である。なお、呼出信号の生成中及び親機26からの選局信号の入力中において、通話回路48に電力が供給される。それ以外の期間において通話回路48には電力が供給されず、それは動作しない。
【0031】
呼出信号生成回路50は、既に説明したように、呼出信号を生成する機能及び呼出信号の生成状態を保持する機能を有する。呼出信号生成回路50の入力側(例えば入力端子)に呼出釦22が接続されている。呼出信号生成回路50の入力側には、信号線32も接続されている。その信号線32は、監視装置28で生成された疑似操作信号を呼出信号生成回路50へ与えるためのものである。このように、呼出信号生成回路50の入力側には、呼出釦22と信号線32が並列に接続されている。
【0032】
親機26は、ブザー52、表示器54、通話回路56、選局回路58、送受話器59、フックスイッチ64等を有する。表示器54は複数の表示素子からなるものであり、その個数は親機26に対して接続可能な子機台数に等しい。個々の表示素子は例えばLEDで構成される。呼出信号が親機26に入力されると、呼出子機が識別され、それに対応する表示素子が点灯する。それと同時にブザー52が鳴動する。
【0033】
送受話器59は、カールコード等によって親機本体に接続される。送受話器59は、スピーカ60及びマイク62を有する。親機本体に対して送受話器59が装着されている状態がオンフック状態であり、親機本体から送受話器59が取り外された状態がオフフック状態である。オンフック操作及びオフフック操作はフックスイッチ64によって検出される。
【0034】
通話回路56は、親機26において選択された子機(以下、場合により「選択子機」という。)に対して、マイク62で生じた音声信号を出力し、選択子機からの音声信号をスピーカ60へ出力する回路である。選局回路58は、複数の選択釦を含み、その個数は親機26に対して接続可能な子機台数に等しい。いずれかの選択釦が押されると、その選択釦に対応する子機が選択子機となる。通常、呼出子機から呼出信号が出力されると、親機26においてその呼出子機に対応した表示素子が点灯し、管理者において呼出子機が特定される。その後、呼出子機に対応する選択釦が押され、また送受話器59が取り上げられると、呼出子機に対して、呼出子機の通話回路を動作させる信号として且つ呼出信号の生成状態の保持を解除する信号として、応答信号が出力される。これにより、呼出子機と親機26との間で通話が可能となる。
【0035】
通常、選択子機は呼出子機であるが、呼出信号の入力の有無にかかわらず、親機26側の操作により、特定の子機との間で通話を行うことも可能であり、その場合にも上記同様の操作がなされる。上記で説明した各回路はいずれもアナログ回路で構成されている。それらの一部又は全部をデジタル回路として構成してもよい。
【0036】
次に、親機26と複数の子機18,20との間に設けられた信号線27について具体的に説明する。
図2において、個々の信号線にはラベルが付されている。図示された構成例において、信号線L1,L2は、親機26から子機18,20に対して、平衡方式で、音声信号を伝送するための信号線ペアであり、それは複数の子機18,20に対して共通に(並列に)接続され、それらは共通線である。信号線L1,L2以外の以下に説明する各信号線は、非平衡方式で、信号を伝送するための信号線である。
【0037】
信号線1Aは、親機26から1番目の子機18へ応答信号(選局信号と同一であり、直流信号)を出力するためのものであり、1番目の子機18のための専用線である。当該信号線1Aは、親機26から1番目の子機18へ音声信号(交流信号)を出力する信号線としても利用されている。同様に、信号線2Aは、親機26から2番目の子機20へ応答信号を出力し、且つ、親機26から2番目の子機20へ音声信号を出力するための専用線である。例えば、4つの子機が親機26に接続されている場合、親機26に対して信号線1A,2A,3A,4Aが接続される。
【0038】
信号線1Bは、1番目の子機18から親機26へ呼出信号(直流信号)を出力するためのものであり、1番目の子機18のための専用線である。同様に、信号線2Bは、2番目の子機20から親機26へ呼出信号を出力するための専用線である。例えば、4つの子機が親機26に接続されている場合、親機26に対して信号線1B,2B,3B,4Bが接続される。
【0039】
なお、信号線+にはDC電源のプラス端子が接続され、信号線−にはDC電源のマイナス端子が接続されている。実際には、信号線−は接地されている。更に、親機26と複数の子機18,20との間には、子機18,20ごとに、疑似操作信号伝送用の信号線32が設けられている。それを共通線とすることも可能である。
【0040】
監視装置28は、信号線列27に対して、親機26と並列に接続されている。換言すれば、親機26に接続されている複数の信号線の全部が監視装置28にも接続されている。なお、監視装置28には、上記のインターホン通話以外で用いられる複数の信号線70,72が接続され得る。その中には、双方向シリアル通信用の信号線、映像信号入力用の信号線、映像信号出力用の信号線、制限信号入力用の信号線、多目的信号入力用の信号線、多目的信号出力用の信号線、等が含まれる。
【0041】
監視装置28は、信号線列27を流れる複数の信号を常時、個別的に監視している。例えば、子機18において、呼出釦22が押され、これに起因して、子機18から親機26へ呼出信号が出力されると(符号66を参照)、その呼出信号が監視装置28において検出される(符号66aを参照)。親機26から子機18へ応答信号(選局信号)が出力されると(符号68を参照)、その応答信号(選局信号)が監視装置28において検出される(符号68aを参照)。監視装置28は、個々の信号の発生のみならず、個々の信号の消失も監視している。これにより、インターホンにおける通信の詳細を把握することが可能となっている。監視対象となっている何らかのイベントが生じた場合、そのイベントが監視装置28で検出され、その後、そのイベント内容を示すイベント情報つまり監視結果がネットワークを経由してリアルタイムで管理センターへ報告される。
【0042】
図3には、監視装置28の具体的な構成例が示されている。インターホン用の信号線列は回路74に接続されている。回路74は、アナログ回路であり、図示の構成例において、電源監視回路76、呼出信号検出回路78、応答信号検出回路80、及び、応答信号出力回路82を有している。電源監視回路76は、信号線+と信号線−との間の電位差をモニタリングしており、具体的には、その電位差を閾値と比較することにより、電源の復旧及び消失を検出している。各時刻の電位差を具体的に検出するようにしてもよい。
【0043】
呼出信号検出回路78は、信号線1B,2B,・・・を流れる信号を監視しており、具体的には、呼出信号の発生及び消失を検出するために、個々の信号線1B,2B,・・・の電圧を閾値と比較している。その比較結果がプロセッサ92に入力され、プロセッサ92において、子機ごとに呼出信号の発生及び消失が判定されている。プロセッサ92は、呼出信号を出力した呼出子機を識別する機能も有する。
【0044】
応答信号検出回路80は、信号線1A,2A,・・・を流れる信号を監視しており、具体的には、応答信号(選局信号)の発生及び消失を検出するために、個々の信号線1A,2A,・・・の電圧を閾値と比較している。その比較結果がプロセッサ92に入力され、プロセッサ92において、子機ごとに、応答信号の発生及び消失が判定されている。
【0045】
応答信号出力回路82は、管理センターといずれかの子機との間で通話を行う場合に、当該子機に対して応答信号を出力する回路である。呼出信号生成回路の点検時において、応答信号出力回路82は、各子機に向けて、呼出信号の生成状態を解除するために、疑似応答信号を出力する。
【0046】
制限信号入力回路84は、制限信号入力端子を有し、エレベーター制御盤その他から出力された制限信号を受け入れる回路である。制限信号は、例えば、かごにおけるドアが開状態にある場合や、インターホン又はエレベーターの点検時に生成される信号である。制限信号が入力された場合、監視装置28における一部の動作が制限される。実施形態においては、管理センターの呼び出しが制限される。その呼び出しは、呼出信号に対して親機が不応答の場合に実行されるものである。制限信号入力回路84は、制限信号入力端子に入力される信号を閾値と比較しており、その比較結果に基づいてプロセッサ92が制限信号の入力及び消失を判定する。制限信号の入力及び消失のいずれもイベントとして管理され、いずれかのイベントが生じた場合、イベント情報が管理センターへ送信される。接続可能な子機の台数に等しい数の制限信号を入力可能なように、制限信号入力回路84が構成され得る。すなわち、かご単位で監視装置28の一部の動作が制限されてもよい。
【0047】
疑似操作信号出力回路86は、呼出信号生成回路の点検時において、各子機に向けて疑似操作信号を出力する回路である。シリアル通信回路88は、例えば、エレベーター制御盤との間で、双方向シリアル通信を行うための回路である。入出力回路90は、汎用回路として機能し、複数の入力信号及び複数の出力信号を処理するものである。
【0048】
プロセッサ92は、制御プログラムを実行するCPUにより構成される。プロセッサ92によって上記各回路の動作が制御される。
図3においては、プロセッサ92が有する代表的な機能が複数のブロックによって表現されている。プロセッサ92は、イベント管理部94、動作制限部96、点検制御部98、判定部(検査部)100及びタイマー102を有する。
【0049】
イベント管理部94は、報告対象イベントの発生を判定し、それが発生した場合に、その内容を示すイベント情報を管理センターに対してリアルタイムで報告(送信)するモジュールである。報告対象イベントリストの例を後に
図5を用いて説明する。イベント管理部94は、個々のイベント情報を記憶部104上に記録する機能も有している。その記録内容がログを構成する。このログの例を後に
図4を用いて説明する。
【0050】
動作制限部96は、制限信号の入力状態において、監視装置28の動作の一部を制限する制御を実行するモジュールである。制限信号が消失した時点で、それまで制限されていた動作の実行が可能となる。図示の構成例では、制限信号の入力により、上記のように管理センターへの呼び出しが制限される。
【0051】
点検制御部98は、呼出信号生成回路の点検時における一連の工程を制御するモジュールである。判定部100は、呼出信号生成回路の点検時において、呼出信号が適時に正しく生成されたこと、及び、呼出信号が適時に正しく消失したことを判定するものであり、検査部又は評価部に相当する。タイマー102は、親機不応答期間の計測その他において利用される。通信部106はネットワークに接続される。無線通信方式及び有線通信方式のいずれも採用し得る。電話回線経由でインターネットに接続されてもよい。
【0052】
図4には、ログが例示されている。ログ108は複数のレコード110により構成され、個々のレコード110は、記録時刻、レコード種別、イベント内容(イベント時刻、イベント類型、値、等)を示す複数のデータからなる。例えば、呼出信号の発生の場合、それが検出された年月日時刻、呼出信号発生を示すコード、呼出子機の識別子、等が記録される。管理センターへ送信された情報がそのまま記録されてもよい。ログ108を参照及び分析することにより、インターホン動作の健全性を確認でき、あるいは、故障を診断でき、あるいは、故障を予見することが可能となる。それを自動的に行うプログラムを監視装置に搭載してもよい。
【0053】
図5には、報告対象イベントのリスト112が示されている。図示されるように、報告対象イベントには、呼出信号発生114、呼出信号消失114、応答信号発生116、応答信号消失116、電源復帰118、電源喪失118、点検120、制限信号入力122、制限信号消失122、等が含まれる。この他、各種のイベントを含め得る。点検120においては、点検結果(OK又はNG等)が管理センターに報告される。
【0054】
(2)監視装置の動作
図6には、上記インターホンシステムの動作が示されている。
図6において、左側には子機18の動作が示され、中央には親機26の動作が示され、右側には監視装置28の動作が示されている。S10において、子機18に接続された呼出釦が乗客によって操作されると、S12において、子機18で呼出信号が生成され、それが親機26へ出力される。その後、子機18においては呼出信号の生成状態が保持される。親機26では、S14において、ブザーが鳴動し、且つ、表示器が点灯する。それと並行して、監視装置28において、S16で、呼出信号の発生が検出され、それを示すイベント情報が管理センターへ送信される。それと共に、イベント情報が記録される。
【0055】
一方、S18では、管理者により、応答(選局)操作が行われ、それと共に、送受話器が取り上げられる。これにより、親機26から子機18へ応答信号が出力される。これにより、子機18においては、S20で、呼出信号の生成状態の保持が解除され、また、通話回路が機能して、親機26との間での通話が可能となる。S22では、監視装置28において、応答信号発生が検出され、それを示すイベント情報が管理センターへ送信される。それと共にそのイベント情報が記録される。S24では、監視装置28において、呼出信号消失が検出され、その内容を示すイベント情報が管理センターへ送信され、また記録される。S22に続いてS24が実行されるが、両者が同時に実行されてもよい。
【0056】
S26では、子機18と親機26との間でインターホン通話が行われる。その後、S32において、親機側で送受話器が親機本体へ戻されてオンフックが生じると、応答信号が出力されなくなる。それに連動して、S34において、子機18の通話回路がその動作を停止する。S36では、監視装置28において、応答信号消失が検出され、そのイベント情報が管理センターに送信され、またそれが記録される。
【0057】
図7には、呼出信号に依らないインターホン通話の際の動作が示されている。なお、
図6に示した工程と同様の工程には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
S18Aでは、親機26において、選局操作及び受話器の取り上げが行われる。ここでは子機18が選択されており、親機26から子機18へ選局信号(応答信号と同じ信号)が出力される。S20Aでは、子機18において、通話回路が動作し、その後、親機26と子機18との間でインターホン通話が可能となる。監視装置28において、S22で、選局信号発生が検出されると、それが管理センターへ報告され、また、それが記録される。同様に、S36で、選局信号消失が検出されると、それが管理センターへ報告され、また、それが記録される。管理センターには呼出信号発生及び消失が報告されないので、管理センターにおいて、親機26側の子機選択に起因する通話であることを判定できる。なお、音声信号が監視対象となってもよい。例えば、音声認識技術や音声評価技術を用いて、緊急度等が判断されてもよい。
【0059】
図8には、管理センター呼び出しの際における監視装置の動作が示されている。S40において、呼出信号が検出されると、S42では、タイマーが始動する。S44で、センターへの呼出しを行う所定条件が満たされたか否かが判断される。所定条件には、タイマーにより計測された経過時間が一定時間を超えたことが含まれる。S46では、制限信号が入力されている状態か否かが判断される。制限信号入力中であれば、管理センターの呼び出しは行われない。制限信号入力中でなければ、S48においてIP電話機能を利用して管理センターが呼び出される。S50では、呼出子機と管理センターとの間で、IP電話(及びインターホンシステム)を介した通話が行われる。その際、監視装置は電話中継装置として機能する。S52では、S50の処理を継続するか否かが判断される。
【0060】
以上のように、実施形態に係る監視装置によれば、親機子機間でやり取りされる各信号の発生及び消失を外部装置へリアルタイムで報告できる。同時に、監視装置28内にそれらを記録することが可能である。よって、インターホン動作の健全性を常に確認することができ、また故障が生じた場合にその原因を究明することが容易となる。更には、故障が生じる前の予兆を特定することも可能となる。これはインターホンの信頼性を高め、ひいてはエレベーターの安全性をより一層高めるものである。
【0061】
特に、実施形態においては、呼出信号の消失まで判定されているので、呼出信号生成回路において保持機能が解除されない故障を検知することが可能である。また、応答信号の発生及び消失が判定されているので、インターホン通話後においてオンフックが正しく実行されなかった(送受話器外れ等)事態を推定することが可能である。例えば管理センターにおいて応答信号発生後の経過時間を監視し、その経過時間が一定時間を超える場合(一定時間以内に応答信号消失が生じなかった場合)、監視装置側へアラーム信号が出力されるようにしてもよい。あるいは、管理者へ電話をかける等の措置がとられてもよい。
【0062】
また、上記実施形態によれば、点検の結果が管理センターに報告され、制限信号の入力及び制限信号の消失も管理センターに報告されるので、管理センターにおいてインターホンの動作及び状態を総合的に把握することが可能である。
【0063】
(3)呼出信号生成回路の点検
図9に基づいて、呼出信号生成回路の点検のための構成について説明する。既に説明したように、点検時においては監視装置28が点検装置として機能する。なお、
図9には、点検に関わる構成つまり点検モードで動作する構成が示されており、それ以外の構成は図示省略されている。
【0064】
点検モードにおいては、点検制御部98により一連の点検動作が制御される。疑似操作信号出力回路86は、点検モードにおいて機能するものであり、疑似操作信号を生成し、その疑似操作信号を信号線1C,2Cに並列的に出力する。例えば、インターホンシステムが更に2台の子機を有する場合、疑似操作信号が信号線3C,4Cにも同時に出力される。
【0065】
呼出信号検出回路78は、通常モード及び点検モードの両方で機能するものである。呼出信号検出回路は、信号線1B,2Bの電圧を常時、閾値と比較している。具体的に説明すると、信号線1Bの電圧が閾値以上であれば、High信号(ON信号)がプロセッサ92へ出力され、一方、信号線1Bの電圧が第1閾値未満であれば、Low信号(OFF信号)がプロセッサ92へ出力される。プロセッサ92においては、Low信号からHigh信号への切り替わりにより呼出信号発生を判定でき、LowからHigh信号の切り替わりにより呼出信号消失を判定できる。点検モードにおいて、それらの信号は、プロセッサ92内の判定部100に入力される。その動作については後に説明する。同様に、信号線2Bの電圧が閾値以上であれば、High信号がプロセッサ92へ出力され、一方、信号線2Bの電圧が閾値未満であれば、Low信号がプロセッサ92へ出力される。監視装置28に対して更に信号線3B,4Bが接続されている場合においても同様である。
【0066】
応答信号出力回路82は、通常モード及び点検モードの両方で機能するものである。点検モードにおいて、点検制御部98の制御の下、応答信号出力回路82は、点検開始後における所定タイミングで、疑似応答信号を信号線1A,2Aへ出力する。疑似応答信号は応答信号と同一の信号であり、それは呼出信号保持状態を解除する機能を有する。監視装置28に対して更に信号線3A,4Aが接続されている場合においても同様である。
【0067】
判定部100は、検査部として機能するものであり、呼出信号検出回路78から、信号線1B,2Bごとに出力される信号(High信号又はLow信号)を参照することにより、点検開始後における第1点検タイミングで、各呼出信号が発生していることを検査し、また、第1点検タイミング後の第2点検タイミングで、各呼出信号が消失していること(保持状態が正しく解除されたこと)を検査する。具体的な検査方法については後に
図10を用いて詳述する。なお、点検モードを定期的に自動実行させることが可能であり、点検の実行タイミングを管理者において定め得る。点検モードにおける一連の過程が終了した段階で、通常モードに復帰する。
【0068】
点検時の動作について説明する。以下の説明はインターホンシステムが2台の子機18,20を有することを前提とするものである。
【0069】
点検モードの実行が開始されると、疑似操作信号出力回路86から信号線1C,2Cへ疑似操作信号160,162が出力される。疑似操作信号160,162は、例えば、電圧信号である。信号線1C,2Cとして、例えば、各かごから引き出されているケーブル中の予備信号線が利用されてもよい。子機18,20において、呼出信号生成回路50の入力側に疑似操作信号160,162が与えられる。疑似操作信号160,162は、呼出釦22,24を操作した場合に生じる操作信号に等しい信号である。
【0070】
呼出信号生成回路50に疑似操作信号160,162が入力されると、呼出信号生成回路50は呼出信号164,166を生成する。その呼出信号164,166が信号線1B,2Bを介して親機26へ向けて出力される。
【0071】
これにより、親機26においては、ブザーが鳴動し、子機18,20に対応する2つの表示素子が点灯することになる。定時点検であれば、管理者は、点検中であることを当然に認識しているので、それに対する応答操作は見送られる。その際、管理者又は点検者により、ブザーの鳴動等から、親機動作が点検されてもよい。あるいは、親機動作を自動点検する仕組みを監視装置28に設けてもよい。点検中においては、ブザーの鳴動等を自動的に停止させてもよい。
【0072】
子機18,20から出力された呼出信号164,166は、親機26と並列に設けられた監視装置28にも入力され、それらの信号は呼出信号検出回路78に入力される(符号164a,166aを参照)。呼出信号検出回路78は、子機18,20からの呼出信号を常時、モニタリングしており、既に説明したように、個々の子機18,20ごとに、呼出信号の有無を示すHigh信号又はLow信号を出力している。それらは判定部100に与えられる。
【0073】
一方、応答信号出力回路は、疑似操作信号160,162の立ち下がり後の所定タイミング(具体的には呼出信号生成回路50が呼出信号の生成状態を保持している状態)において、信号線1A,2Aへ疑似応答信号を出力する(符号168,170を参照)。子機18,20において、疑似応答信号が入力されると、呼出信号生成回路50による呼出信号の生成状態が解除される。これにより、呼出信号164,166は消失する。呼出信号164,166が消失すると、呼出信号検出回路78からプロセッサ92へ出力される2つの信号がいずれもLow信号となる。判定部100は、以下に説明するように、点検モード実行開始後における第1点検タイミング及び第2点検タイミングで、呼出信号検出回路78から子機18,20ごとに出力される信号(High信号/Low信号)を参照し、これによって、各呼出信号生成回路の動作が適正であるか否かを判定している。
【0074】
図10には、点検動作が示されている。横軸は時間軸である。図示した点検動作は、インターホンシステムが4台の子機を有することを前提としている。(A)には4台の子機に並列的に出力される疑似操作信号が示されている。(B)には第1子機から出力された呼出信号1が示されており、(C)には第2子機から出力された呼出信号2が示されており、(D)には第3子機から出力された呼出信号3が示されており、(E)には第4子機から出力された呼出信号4が示されている。(F)には親機から4台の子機へ並列的に出力される疑似応答信号が示されている。なお、(G)には親機に設けられたブザーの動作が示されている。
【0075】
t1は点検モード実行開始タイミングを示しており、そのt1は疑似操作信号の立ち上がりタイミングである。t3が疑似操作信号の立ち下がりタイミングである。t1とt3との間の期間d1内における第1点検タイミングt2において、4台の子機から出力される4つの呼出信号1〜4の有無が検査される。具体的には、
図9に示した呼出信号検出回路78の4つの出力信号がそれぞれHigh信号であることが検査される。Low信号の出力があった場合、それに対応する子機内の呼出信号生成回路の動作不良が判定される。
【0076】
立ち下がりタイミングt3の後、一定期間をおいて、4台の子機に向けて疑似応答信号が並列的に出力される。これにより、4台の子機において呼出信号生成状態の保持が解除される。t4は、4つの呼出信号1〜4の立ち下がりタイミングである。4つの疑似応答信号の出力期間がd2であり、t5は4つの応答信号の立ち下がりタイミングである。t5の後のt6が4つの呼出信号1〜4が消失したことを確認する第2点検タイミングである。第2点検タイミングt6において、呼出信号検出回路から出力されている4つの信号がいずれもLow信号であることが検査される。High信号の出力があった場合、それに対応する子機内の呼出信号生成回路の動作不良が判定される。
【0077】
t7は点検モードの終了タイミングである。第2点検タイミングを、例えば期間d3内のいずれかのタイミングt8としてもよい。期間d3は、保持解除後の不安定期間よりも後であって、疑似応答信号の立ち下がりタイミングt5よりも前の期間である。点検も1つのイベントとして管理され、点検モード終了時点で、点検結果を示すイベント情報が管理センターへ報告される。
【0078】
図11には、点検モードを実行するための他の構成例が示されている。
図9に示した構成と同一の構成には同一符号を付し、その説明を省略する。以下の説明は、インターホンシステムが1台の子機18を有することを前提とする。
【0079】
図11に示す構成例では、監視装置は、監視装置本体28Aと子機18に取り付けられたアダプタ186とにより構成される。複数の子機が設けられる場合、それと同数のアダプタが設けられる。監視装置本体28Aは、信号線列に対して接続され、それはアダプタ制御回路180を有する。アダプタ制御回路180は、アダプタ186の動作を制御するものであり、具体的には、既存の信号線L2を介してアダプタ186へ制御信号を送るものである(符号182を参照)。制御信号は、子機18内での疑似操作信号の生成を指示する信号であり、つまりアダプタ186内のアナログ電子回路を動作させる信号である。
【0080】
具体的には、後述のように、平衡関係にある信号線L1及びL2の内、図示の例では、信号線L2が電源線−に接続される。アダプタ186は、電源線+と信号線L2との間に接続されており、通常、信号線L2は浮いているために、アダプタ186は動作しない。一方、信号線L2が信号線−に接続されると、アダプタ186内に電流が流れ、それが動作する。信号線L2は共用線であり、インターホンシステム内に2台以上の子機が存在している場合でも、個々のアダプタ186が上記同様に動作する。
【0081】
アダプタ186は、子機18に対して後付け設置可能なものであり、それは、アダプタ制御回路180の制御下において、呼出信号生成回路50の入力側192に疑似呼出信号を与える電子回路である。具体的には、アダプタ186は、フィルタ回路188及び疑似操作信号生成回路190を有している。符号184は、かご12内における信号線L2の分岐点を示しており、その分岐点から引き出された信号線がフィルタ回路188に接続されている。フィルタ回路188は、直流信号を通過し、音声信号を抑圧する特性を有する。すなわち、信号線L2及び信号線L1には音声信号が流れるため、その音声信号によって疑似操作信号生成回路190が誤動作しないように、フィルタ回路188により音声信号がフィルタリングされている。疑似操作信号生成回路190は疑似操作信号としてのパルスを生成する回路であり、そのパルスが呼出信号生成回路50の入力側に与えられている。
【0082】
図11に示した構成によれば、既存の信号線を利用して(予備信号線を利用することなく)、各子機に疑似操作信号を与えることが可能となる。
図11に示した構成では、信号線L2を電源線−に接続することにより、疑似操作信号が生成されるようにしたが、信号線L2ではなく信号線L1を利用してもよい。あるいは、いずれかの信号線に制御信号を重畳するようにしてもよい。無線通信によりアダプタ制御回路からアダプタへ制御信号が伝送されてもよい。
【0083】
図12には、
図11に示したアダプタ制御回路180の構成例が示されている。符号28Aは監視装置本体を示している。アダプタ制御回路180は、信号線L2と電源線−とを接続するための経路を有し、その経路上にはリレー200及びダイオード202が直列に設けられている。コントロール信号204により、リレー200がオン動作すると、信号線L2が電源線−に接続される。なお、信号線−は電源監視回路に接続されている。信号線L1,L2はトランス206を介して受話回路に接続されている。このように、極めて簡易な構成で、アダプタの動作をオンオフ制御することが可能である。
【0084】
図11及び
図12に示した構成の動作例が
図13に示されている。この動作例は1台の子機を前提とするものである。横軸は時間軸である。(A)には信号線L2の状態が示されており、それは制御信号を示すものである。(B)には疑似操作信号が示されている。(C)には呼出信号が示されている。(D)には疑似応答信号が示されている。なお、(E)には親機におけるブザーの動作が示されている。
【0085】
t1は点検モードの開始タイミングであり、そこからタイミングt3の期間d1にわたって、信号線L2が電源線−に接続される。つまり、通常、浮いている信号線L2が期間d1においては所定電位(Low電位)とされる。これにより、子機に接続されたアダプタが動作し、呼出信号が生成される。第1点検タイミングt2において、呼出信号の電位が参照され、つまり、その電位がHighであるかLowであるかが検査される。Highであれば正常であり、lowであれば故障と判断される。点検開始タイミングt1から一定時間経過後のタイミングt4が疑似応答信号の立ち上がりタイミングである。そこから、立ち下がりタイミングt5までの期間d2が疑似応答信号の時間長である。図示の動作例では、タイミングt5の後の第2点検タイミングt6において、呼出信号の電位が参照されている。その電位がLowであれば正常であり、その電位がHighであれば故障と判断される。t7は点検モードの終了タイミングである。呼出信号の消失状態をより早いタイミングで検査するようにしてもよい。例えば、呼出信号の生成状態の保持が解除され、呼出信号の安定的消失を期待できるタイミングで、その電位を検査するようにしてもよい。
【0086】
図14には、点検モードの実行開始時の動作が示されている。定期的に点検モードを自動実行させることができ、例えば、毎日の点検時刻を設定しておくことが可能である。S60では、現在時刻が設定時刻になったか否かが判断され、設定時刻になったと判断された場合、S62において、呼出信号が既に発生している状態にあるか否かが判断される。呼出信号が生じている場合、緊急事態である可能性があり、点検モードの実行を控えるべきだからである。同様の理由から、S64では親機と通話中であるか否か、S66では管理センターと通話中であるか否か、S68では管理センターへのリダイヤル中であるか否か、が判断される。所定の点検中止条件(例外条件)に該当せず、点検モードの実行が可能であれば、S70において点検モードが実行され、その点検結果が管理センターへ報告される。所定の点検中止条件に該当する場合には、S72において、点検モードの実行が見送られる。このように、点検モードの実行に先立って、点検モードの実行可否を判断し、実行可能な状況である場合のみその実行が許容される。
【0087】
図15には、管理センターからの指令に基づく点検時の動作が示されている。S80で、管理センターからの点検指令があったと判断された場合、S82において、所定の点検中止条件(例外条件)に該当するか否かが判断される。該当しない場合にはS84で点検モードが実行され、その実行結果が管理センターへ報告される。一方、所定の点検中止条件に該当した場合、S86において、点検が見送られる。それも管理センターへ報告される。
【0088】
親機子機間の接続方式(電気的仕様)として複数の方式が存在している。例えば、上記において詳述した方式、以下の
図16に示す方式、等がある。そこで、複数の方式に対応可能な監視装置を構成するのが望ましい。その場合、実際に適用される方式に応じて、点検タイミングや点検シーケンスが変更される。例えば、呼出信号生成回路が呼出信号の生成状態を保持する機能を有するか否かに応じて、第2点検タイミングが変更される。
【0089】
以上のように、実施形態に係る監視装置によれば、点検作業員を各かご内に配置しなくても、各子機内の呼出信号生成回路、つまり非常時に信号を生成する重要な回路を定期的に自動的に点検することが可能である。個々の呼出信号生成回路の点検時には、結果として、呼出信号生成回路の出力から監視装置の接続箇所までの経路も検査される。複数の呼出信号生成回路を同時に並列的に点検すれば、点検時間を短縮できる。また、上記実施形態では、呼出信号生成状態の保持が解除された後の状態も検査できるので、呼出信号生成回路を総合的に検査することが可能となる。
【0090】
(4)変形例
図16には、他の実施形態に係るインターホンシステムが示されている。インターホンシステムは、
図1等に示した実施形態と同じく、インターホンと監視装置256とにより構成され、インターホンは、図示の例では、複数の子機250,252と親機254とにより構成される。監視装置256は、基本的に
図1等に示した監視装置と同様の機能を有する。
【0091】
子機250,252には、それぞれ呼出釦258,260が接続されている。子機250,252は、互いに同一の構成を有する。子機250,252は、一部の機能を除いて、
図1に示した子機と同様の機能を有している。除外された一部の機能は、呼出信号の生成状態を保持する機能である。すなわち、子機250,252においては、呼出釦258,260が押されている期間のみ呼出信号が生成される。
【0092】
親機254は、ブザー262、通話回路264、選局回路266、送受話器268、フックスイッチ274等を有する。送受話器268はスピーカ270及びマイク272を有している。親機254は、基本的には、
図1等に示した親機と同様の機能を有している。もっとも、表示器は有していない。
【0093】
親機254と複数の子機250,252との間には信号線列276が設けられている。その構成を具体的に説明する。信号線Lは、複数の子機250,252から親機254へ直流信号かつ音声信号(交流信号)を伝送するための共通線である。信号線Rは、親機254から複数の子機250,252へ応答信号(直流信号)かつ音声信号(交流信号)を伝送するための共通線である。図示された構成では、応答信号と選局信号は別々のものとして構成されている。すなわち、複数の子機250,252は、信号線R,Lに対して並列に接続されている。
【0094】
信号線Cは、子機250,252から親機254へ呼出信号を伝送するための共通線である。いずれかの子機250,252において、呼出釦258,260が操作されると、それにより呼出信号が生成され、その呼出信号が信号線Cを介して親機254に入力される。親機254は、呼出子機を識別する機能を備えていない。もちろん、その機能を親機254に設けるようにしてもよい。
【0095】
信号線S1,S2,・・・は子機単位で選局信号が伝送される専用線である。親機254において、通話先として子機250が選択された場合、信号線S1に選局信号が流される。選局信号は直流信号である。通話先として子機252が選択された場合、信号線S2に選局信号が流される。3台目の子機が存在する場合、その子機と親機254とが信号線S3を介して接続される。同様に、4台目の子機が存在する場合、その子機と親機254とが信号線S4(図示せず)を介して接続される。
【0096】
選局信号は親機254側において選択された特定の子機250,252との間で通話を行うための信号である。子機250,252からの呼出信号に対する応答としてインターホン通話を行う場合には親機254から選択信号は出力されない。なお、信号線列276は、更に、電源線+及び電源線−を有する。例えば、電源線+は直流6V電源に接続されており、電源線−は接地されている。
【0097】
個々の子機250,252においては、呼出釦258,260の操作中又は親機254からの選局信号の入力中に限り、通話回路が動作する。また、各子機250,252は、呼出釦258,260の操作中において、自身に接続された信号線S1,S2,・・・の電位を所定レベル(例えば6V)に引き上げる回路を有している。親機254において、そのレベル変化は検出されていないが、監視装置256は、子機単位でそのレベル変化を検出する回路を有している。すなわち、監視装置256は、呼出信号が流される信号線Cを監視すると共に、信号線S1,S2,・・・も監視しており、両者の監視によって、呼出信号の検出及び呼出子機の識別を行っている。呼出子機識別機能が親機254に搭載されてもよい。
【0098】
上記構成の動作を説明する。例えば、子機250に接続された呼出釦258が操作されると、子機250において呼出信号280が生成され、それが信号線Cを介して、親機254に出力される。その際、子機250の作用により、信号線S1の電位が上がる。監視装置256は、信号線Cを流れる呼出信号を検出し(符号280aを参照)、且つ、信号線S1の電位変化を検出する。それらの検出により、呼出信号発生の判定し、また呼出子機を識別する。
【0099】
親機254において、呼出信号280が入力されると、ブザー262が鳴動し、その後、送受話器268を取り上げると(オフフック)、ブザーの鳴動が終了し、同時に子機250と親機254との間での通話が可能となる。その際の選局操作は不要である。オフフック時点で、親機254から信号線Lへの応答信号が出力される。その応答信号が監視装置256において検出される。応答信号はオンフック時点まで継続的に出力される。なお、子機250と親機254との間での通話中において、他の子機252が呼出信号を出力した場合、複数の子機250,252及び親機254において三者通話が可能となる。
【0100】
親機254において、例えば子機250と通話を行いたい場合、上記のように、親機において選局操作がなされる。すると、信号線S1の電位が上がり、子機250内の通話回動が動作し、両者間で通話を行うことが可能となる。その場合には、信号線Rには応答信号と同じ信号が流される。
【0101】
以上のように、
図16に示した構成では、子機250,252内の呼出信号生成回路は、呼出信号の生成状態を保持する機能を有していないものの、基本的には、第1実施形態の子機と同様の動作を行う。監視装置256は、呼出信号発生、呼出信号消失、応答信号発生及び応答信号消失の各イベントを検出しており、いずれかのイベントが発生した時点で、その内容を示すイベント情報を外部装置へ送信する。監視装置256は、上記のように、呼出子機を識別する機能も備えており、呼出信号発生及び呼出信号消失に対応するイベント情報には呼出子機を識別する情報が含まれる。
【0102】
また、監視装置256は、第1実施形態に係る監視装置と同様、各呼出信号生成回路を点検する点検モードを備えている。点検モードにおいては、監視装置256から各子機250,252に対して、信号線278を介して、疑似呼出信号が出力される。具体的には、各子機250,252において、疑似呼出信号が呼出信号生成回路の入力側に与えられる。各子機250,252は、疑似呼出信号が入力されている期間だけ、呼出信号を出力する。各子機250,252から出力された呼出信号が監視装置256において検査される。
【0103】
呼出信号の検査に関しては、2つの検査方法が考えられる。第1の検査方法は、複数の子機250,252に対して順番に疑似呼出信号を与え、これにより複数の子機250,252から順次出力される呼出信号を時分割で検査する方法である。この第1の検査方法は、各子機から出力される呼出信号それ自体を直接的に検査する方法である。
【0104】
第2の検査方法は、複数の子機250,252に対して同時に複数の疑似呼出信号を与え、その後において信号線Cのレベルと各信号線S1,S2のレベルの両方を参照する方法である。具体的には、両レベルともHighの場合に呼出信号の発生を判定するものである。複数の子機250,252が共通の信号線Cへ呼出信号を流した場合、信号線C上の呼出信号を検査しても、複数の呼出信号生成回路の動作を個別的に点検したことにはならないが、更に複数の信号線(専用線)S1,S2のレベルを参照することにより、個々の呼出信号生成回路が正しく動作したことを判定することが可能となる。例えば、信号線S1のレベルに変化がなかった場合、あるいは、レベル変化後においてそのレベルが復帰しなかった場合、子機250内の呼出信号生成回路の動作不良を特定できる。この第2の検査方法は、各子機から出力される呼出信号を間接的に検査する方法であるとも言える。なお、各子機250,252に上記アダプタを設け、各子機250,252において疑似操作信号が生成されるようにしてもよい。
【0105】
図17には、上記の第1の検査方法が示されている。横軸は時間軸である。図示されたタイミングチャートは、4台の子機を有するインターホンを前提とするものである。(A)には、n番目の子機に送られる疑似操作信号が示されている。nは1,2,3,4であり、nの値が順次インクリメントされる。(B)には、n番目の子機から出力される呼出信号が示されている。なお、(C)には、親機におけるブザーの動作が示されている。
【0106】
t1は、点検モードの開始タイミングを示している。そのタイミングで疑似操作信号が立ち上がる。t3は疑似操作信号の立ち下がりタイミングを示している。それらの間の期間がd1で示されている。期間d1内における第1点検タイミングt2において、呼出信号のレベルが判定される。そのレベルがHigh(ON)レベルであれば適正と判断され、そうでなければ不適正と判断される。タイミングt3以降(立ち下がり後の安定期)の第2点検タイミングt4において、呼出信号のレベルが判定される。そのレベルがLow(OFF)レベルであれば適正と判断され、そうでなければ不適正と判断される。t5は点検モードの終了タイミングを示している。以上の工程がn台の子機に対して子機単位で繰り返し実行される。
【0107】
図18には、上記の第2の検査方法が示されている。横軸は時間軸である。図示されたタイミングチャートは、4台の子機を有するインターホンを前提とするものである。(A)には、4台の子機に同時に送られる疑似操作信号が示されている。(B)には第1子機からの第1呼出信号が示されている。(C)には第2子機からの第2呼出信号が示されている。(D)には第3子機からの第3呼出信号が示されている。(E)には第4子機からの第4呼出信号が示されている。なお、(F)には、親機におけるブザーの動作が示されている。
【0108】
図18において、t1〜t5は
図17に示したt1〜t5と同じである。第1点検タイミングt2では、信号線Cのレベルと信号線S1のレベルの両方がHigh(ON)であることが検査され、両方ともHighであれば、呼出信号1が適正に発生したと判定され、そうでなければ呼出信号1が適正に発生しなかったと判定される。続いて、第2点検タイミングt4では、信号線Cのレベルと信号線S1のレベルの両方がLow(OFF)であることが検査され、両方ともLowであれば、呼出信号1が適正に消失したと判定され、そうでなければ呼出信号1が適正に消失しなかったと判定される。呼出信号2〜4についても、第1点検タイミングt2及び第2点検タイミングt4において、上記同様に検査及び判定がなされる。
【0109】
図19には、2チャンネル型の操作釦292が示されている。操作釦292は、操作子198及び複数の接点300a〜300dを有する。2つの接点300a,300bが第1接点対を構成しており、2つの接点300c,300dが第2接点対を構成している。第1接点対には子機290が接続されている。第2接点対には外部警報装置294が接続されている。操作釦292を操作すると、第1接点対がON動作し、且つ、第2接点対がON動作する。これにより、子機290において呼出信号が生成され、同時に、外部警報装置294において警報音が生じる。外部警報装置294は、通常、かごの外側に設けられるものである。
【0110】
疑似操作信号が流れる信号線296は子機290の入力側に接続されており、具体的には、第1接点対と子機290の間に接続されている。よって、
図19に示した構成によれば、点検モードの際に、外部警報装置294が不用意に動作してしまうことを防止できる。
【0111】
図20には、監視装置28において実行可能な通話点検モードが示されている。これは監視装置28を利用して各子機における通話系統を自動的に点検するものである。図示された内容は複数の子機を順番に点検するものであるが、複数の子機が同時に点検されてもよい。
【0112】
S80では、子機変数nに初期値として1が与えられる。S82では、監視装置が有するエコーキャンセル機能がOFFにされる。エコーキャンセル機能は、スピーカから出た音がマイクに入力されて生じるエコーをキャンセルする機能である。S84では、通話可能な状態が形成された上で、監視装置からn番の子機へテスト音信号が出力される。テスト音信号は音声信号用の信号線に流される。これにより、n番の子機において、スピーカからテスト音が出力され、そのテスト音がマイクに入力される。これによりマイク信号が生じる。S86では、n番の子機で生じたマイク信号が評価される。監視装置において、適正なマイク信号が得られた場合、通話系統が適正に動作していると判定され、そうでない場合には異常が判定される。S88では、全子機を点検したか否かが判断され、そうでなければS90においてnがインクリメントされた上で、S82以降の各工程が実行される。S92では、エコーキャンセル機能がONされる。
【0113】
以上により、各子機における通話系統を自動的に点検できる。更に他の点検モードを監視装置に組み込むようにしてもよい。
【0114】
上記実施形態においては、監視装置がモニタリング機能及び点検機能を有しており、エレベーター用インターホンにおいて異常が生じた場合、その事態を早期に認識することが可能である。これはエレベータシステムの安全性を高めることに寄与するものである。